面白かった本について語るポッドキャスト&ニュースレターです。1冊の本が触媒となって、そこからどんどん「面白い本」が増えていく。そんな本の楽しみ方を考えていきます。
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番組の魅力・推薦
BC022『英語の読み方』『英語の思考法』『伝わる英語表現法』
今回は、近年発売された英語学習に関する新書を三冊セットでご紹介します。* 『英語の読み方-ニュース、SNSから小説まで (中公新書 2637)』* 『英語の思考法 ――話すための文法・文化レッスン (ちくま新書)』* 『伝わる英語表現法 (岩波新書)』『英語の読み方-ニュース、SNSから小説まで (中公新書 2637)』発売は2021年3月25日。著者は北村一真(きらむらかずま)さん。大学受験塾講師をやっておられて、現在は杏林大学外国語学の準教授とのこと。目次は以下。* 第1章 英文を読む前に―日本人に適した英語の学び方* 第2章 英文に慣れる―インターネットを活用したリーディング* 第3章 時事英文を読む―新聞、ニュースに挑戦* 第4章 論理的文章を読み解く―スピーチ、インタビュー記事から論文まで* 第5章 普段使いの英文解釈―SNS、コミック、小説を読みこなす* 巻末付録 「一歩上」に進むための厳選例文60タイトルの通り「英語の読み方」を提示した一冊で、英語をどう読解していくのかが実況中継的に語られている。文法の解説というよりは、文読解の理路とその手がかりが提示されていて、「そうそう、まさにこういうのが知りたかったんだよ」と膝を打った。基礎的な文法などを理解しているのが前提の本だが、そこからの次の一歩にちょうどよい一冊。『英語の思考法 ――話すための文法・文化レッスン (ちくま新書)』発売は2021年7月8日。著者は井上逸兵(いのうえいっぺい)さん。慶応大学文学部教授で社会言語学や英語学が専門とのこと。NHKのEテレ「おもてなしの基礎英語」という番組を担当されていた(倉下は未視聴)。目次は以下。* 序章 英語の核心* 第1章 英語は「独立」志向である* 第2章 英語は「つながり」を好む* 第3章 英語にも「タテマエ」はある* 第4章 英語の世界は奥深い“応用編”* 第5章 英語を使ってみる“実践編”英語の核を「独立」「つながり」「対等」の三つに据えて、英語話者のマインド(価値観)を紹介していく。Excuse me/usの使い分けの例示が非常にビビッドで、以下に英語が「個」を大切にしているのかが伝わってくる。 『伝わる英語表現法 (岩波新書)』発売は2001年12月20日なのだが最近復刊されてネットで大人気になっている本(今はかなり入手しやすい状況)。著者は長部三郎(オサベサブロウ)さん。アメリカ国務省言語部勤務で日本語通訳担当という経歴をお持ちの方。文法を解剖して、正確に意味を移していく、という「訳す」姿勢ではなく、話者の言いたいことを、適切に聴衆に伝えるという本書を貫く姿勢は、その業務で育まれたのではないかと推測。目次は以下。* 第1章 英語と日本語の違い* 第2章 日本語は名詞、英語は動詞―日本語の名詞から英語を考える* 第3章 日本語は抽象的、英語は具体的―日本語の文(センテンス)から英語を考える* 第4章 「一事一文」の原則―日本語の文章から英語を考える* 第5章 英語の構造と日本語* 終章 体験的英語教育―私の提言とにもかくにも「英語と日本語は、まったく異なる言語である」というひとつの大きなメッセージが貫かれている。その異なる言語の移動において、いかに「言いたいこと」を「伝える」のかの方法が解説されている。倉下メモこの三冊は、 倉下の「英語観」を刷新してくれました。言い換えれば、「英語的感覚」というものがどういったもので、それが日本語といかに異なっているのかがじんわりと感じさせてくれた三冊です。本書らのおかげで、英語を読むときにまず単語/品詞ごとに注目して意味を「分解」していくのではなく、まず文全体を捉えるように意識が切り替わりました。また、たとえば自分の原稿について考えているときに「 1章、2章の見通しが立った」という「思い」があるときに、それを英語で言おうとするときに「見通し」という言葉を辞書で引くのではなく、「この見通しってどういうことだろう?」と考え、たとえば「I got a way I would go.」などと言えば私の伝えようとしていることが伝わりそうだな、などと考えるようにもなりました。この表現が文法的・単語的にどれだけ適切なのかはわかりませんが、それでも「言わんとすること」を伝えられる文にはなっていると想像します。そういうマインドセットの切り替えを後押ししてくれた本たちでした。その後買った英語学習本ついでに新しく買い足した本もご紹介。『シンプルな英語』『英文解釈のテオリア~英文法で迫る英文読解入門』 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC021 『幸せをお金で買う5つの授業』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第21回の本日は『幸せをお金で買う5つの授業』について語ります。今回の本は、色々な点で『Learn Better』を思い出す本でした。BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 - by goryugo - ブックカタリスト書いてある内容自体は、全然知らなかった!みたいな驚きはほとんどないです。どれも読んでて、うん!確かにその通り!という話が多くを占めています。ただ、書いてあることを言語化して整理してまとめると、すごく色々身に沁みる内容ばかり。結果的に、この本からは大きな影響を受けて、日常生活の意識が大きく変わっています。(具体的なエピソードなどはPodcast内で語っています)どんなことにお金を使うと「幸福」になれるのか本書で書かれている「幸福になれるお金の使い方」は以下の5つ。* 経験を買う* ご褒美にする* 時間を買う* 先に支払う* 他人に投資する最後の「他人に投資する」という項目だけは「へえそうなんだ」という感覚がありますが、あとは大抵「どこかで聞いたことがありそうなもの」に感じます。ただ時短を目指せばいいというわけではない5つの章の中で最も興味深かったのが3章の「時間を買う」という項目でした。⏱時間が貴重だと思うほど時間に追われる感覚になる - by goryugo - ナレッジスタック↑にも少しまとめたのですが、まず興味深いのは「どうすれば時間があると感じることができるのか」たとえば、人には「ファストフードのロゴを見るだけでせっつかれた気分になる」という性質があり、早くする、ということを考えるだけで何もかもを「急がねばならない」という感覚になってしまう、とのこと。時間がないという感覚で「早くしないと」と考えることが脳に「急いだ感情」をもたらし、これがさらに「時間がない」という感覚を生み出す。「ファストフードのロゴを見るだけでせっつかれた気分になる」のと同じように、時短製品を買って時短を目指す場合でも、同じように「せっつかされた気分になる」可能性は極めて高いわけです。そう考えると、単純に「時間を買う」という行為一つを考える場合でも「がむしゃらに時短製品を買うことが正解ではない」ということを教えてくれます。その他、時間がお金に変わっていることを意識すればするほど、目の前の時間が楽しめなくなるということ。時給労働者は、より時間をお金だと感じやすくなるので、そういった感覚になりやすいこと。この効果は、仕事をやめても2年続くというような、興味深い話も多数ありました。ブックカタリストのサポーターの方には、この本についての読書メモや、本編で利用した台本などもお送りいたします。(別のメールでお届けします)サポーターについての詳細は、下記をご覧ください。ブックカタリストのサポータープランについて - by goryugo - ブックカタリスト This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC020『理不尽な進化』
今回は吉川浩満さんの『理不尽な進化 増補新版』を。すごく面白い本なのですが、あまりにも土俵が広いので、倉下の説明ではぜんぜんその面白さが伝え切れていない感がいっぱいです。これはもう、本当に読んでみてください。概要などよりも、まずこの本の論旨を追いかけていく体験そのものが Good & Happy です。著者は?著者は、文筆業・編集者さんです。現在は晶文社にお勤めとのこと。以前『闇の自己啓発』を紹介した回の後半で言及した、『人文的、あまりに人文的』の共著者の一人。「哲学の劇場」という動画番組も。https://www.youtube.com/tetsugekiこの本は?本書は「進化論」の本ですが、進化論の一般向け解説書ではありません。むしろ、私たちと「進化論」という概念との関係を扱った本です。本書は絶滅に目を向けますが、これまでに滅んでいった注目すべき(ないしはひどく奇妙な)生物を紹介する本ではありません。むしろ「絶滅」という現象の方にまなざしを向けています。まず、この点だけイメージしておいてください。「進化論」の本と聞いたときに、イメージする本とはずいぶん違っていると思います。目次* まえがき* 序章 進化論の時代* 進化論的世界像――進化論という万能酸* みんな何処へ行った――?種は冷たい土の中に* 絶滅の相の下で――敗者の生命史* 用語について――若干の注意点* 第一章 絶滅のシナリオ* 絶滅率九九・九パーセント* 遺伝子か運か* 絶滅の類型学* 理不尽な絶滅の重要性* 第二章 適者生存とはなにか* 誤解を理解する* お守りとしての進化論* ダーウィン革命とはなんだったか* 第三章 ダーウィニズムはなぜそう呼ばれるか* 素人の誤解から専門家の紛糾へ* グールドの適応主義批判――なぜなぜ物語はいらない* ドーキンスの反論――なぜなぜ物語こそ必要だ* デネットの追い討ち――むしろそれ以外になにが
BC019 アフタートーク
今回は、2回目の「ゲストの方に来ていただいて、その人に本を紹介してもらう」という形でした。まだまだこの形に慣れず、3人でうまくやる方法をどうするか?あるいはゲスト回の聞き役は、どちらか一人でもいいのでは?なんてことも考えたりもしています。なお、アフタートークは次回以降、サポータープランに加入いただいている方限定の配信になります。もしアフタートークで聞きたい話題、ごりゅごや倉下への質問などがありましたら、このメールに返信していただくか、コメント欄などに質問をお寄せください。サポータープラン限定の場所であれば、ある程度踏み込んだ話などもできると思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
ゲスト回BC019『心の仕組み 上』
ゲストはPADAone(パダワン)さん。* Twitter:@pd1xx* Site:アンキヨリハジメヨ『心の仕組み 上』について著者は、スティーブン・ピンカー。この界隈ならまず外せないほどの有名人。代表作は『言語を生みだす本能』。ノーム・チョムスキーというこれまた著名な言語学者の影響を受け、「言語」が進化的に獲得された能力(本能)だと説きつつ、しかしそれが他の脳の機能の「副産物」ではなく、言語機能そのものがメインだったと主張しているのが彼の言説の特徴。その著者が、心(というよりも精神)の働きに注目したのが本書。原題は『How the Mind Works』で1997年に出版されている。日本語訳はNHKブックスの単行本と、ちくま学芸文庫の二種類がある。共に上下巻。今回はちくま学芸文庫バージョンを取り上げる。上巻の目次は以下。* 第1章 心の構造―情報処理と自然淘汰(ロボットをつくるための課題 精神活動を逆行分析する ほか)* 第2章 思考機械―心を実感するために(宇宙のどこかに知的生命体はいないのか 自然演算 ほか)* 第3章 脳の進化―われら石器時代人(賢くなる 生命の設計者 ほか)* 第4章 心の目―網膜映像を心的記述に転じる(ディープ・アイ 光、影、形 ほか)放送では上巻のみが取り上げられているが、下巻の目次もついでに。第5章 推論―人は世界をどのように理解するか(生態学的知能 カテゴリー化 ほか)第6章 情動―遺伝子の複製を増やすために(普遍的な情熱 感じる機械 ほか)第7章 家族の価値―人間関係の生得的動機(親類縁者 親と子 ほか)第8章 人生の意味―非適応的な副産物(芸術とエンタテインメント 何がそんなにおかしいのか? ほか)ざっと目次を眺めると、精神のメカニズム(それが何をしていて、なぜそうするのか)が論考されているのがわかる。逆に、脳という物質からどのようにして精神現象が立ち上がっているのか(なぜ立ち上がったのかではなく、どのようにして立ち上がっているのか)については言及されていないように見えるので、まさに「Mind」がいかに「Work」しているのかを考える本なのだろうと推測できる。進化心理学ある意味では、極めてシンプルな主張をする学問。以下は日本語版ウィキペディアからの引用。進化心理学(しんかしんりがく、英語:evolutionary psychology)は、ヒトの心理メカニズムの多くは進化生物学の意味で生物学的適応であると仮定しヒトの心理を研究するアプローチのこと。適応主義心理学等と呼ばれる事もある。 人間が持つ「心理メカニズム」は自然淘汰の結果獲得されたものである、ということ。人の心は、白紙の状態で生まれて、成長の中でそこにいろいろ「書き込まれていく」というスタンスとは異なるというのがポイントになる。前者は生得論的な捉え方で、後者は経験論的な捉え方と言える。後者はたとえば、ジョン・ロックのタブラ・ラサが代表例である。正直この二つのどちらが「正しいのか」という議論は生産的ではないだろう。生得的な部分があり、文化的に獲得される部分があり、その二つ以外によって獲得される部分がある、と捉えるほうが自然である。一方で、どの部分がどれほどの割合を持つのか、あるいは強さを持つのか、という主張はありえるし、それによって「人間の心」をどのように扱うのかも変わってくる。でもって、それは政治的なスタンスに関わるので、これは結構議論を呼ぶ分野である。付言もし、「進化」について知識の枝を伸ばしていくならば、まずリチャード・ドーキンスは欠かせないし、分厚い本がお好みならダニエル・デネットに手を伸ばすのもありだろう。心身問題(心脳問題)であれば、古くはデカルトを起点として、新しくは脳科学を起点として(たとえば『意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論』など)、枝を伸ばすのが面白い。とにかくこの分野は話題がいろいろ出てくるので、結構沼である。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC018 アフタートーク&倉下メモ
『WILLPOWER 意志力の科学』倉下メモ意志力のお話です。認知資源という言い方をしてもよいでしょう。倉下はその概念を伝えるためにMP(エムピー)というたとえをよく使います。メンタルポイントでも、マジックポイントでも、その他その人がイメージしやすい何かであればよい、というゆるい意味でのMPです。それは使ってしまうとなくなってしまう。なくなってしまうと「思うようにできない」。それがHPとは別にある。そういうイメージです。これは、総合的な意味での体力の一部なのですが、一方で体は動くけれども判断力が摩耗している状態というのがあって(仕事終わりにスーパーに行くと実感します)、その辺の感覚を捉えるためにMPという概念を錬成したわけです(MPと聞くとゲームに親しんでいる人は自然とHPと別のパラメータだと認識するからです)。いろいろ厳密に考えていくとMPというたとえでは無理な部分もでてきますが、そもそもたとえは厳密に一致するものではないからたとえなわけですから、個人的にはそれで十分だろうと考えています。とにかく「難しい問題に判断力をつかうと、その後はその力が弱ってしまう」ということが伝わればOKかな、と。で、ゲームのイメージでもわかりますが、それって夜寝て朝起きると回復しているんですね。実は仮眠しても戻る感覚があります。つまり、MPのイメージを持てば、具体的にどのように対処すればいいのかのイメージもわきやすい、というわけです。だいたいのゲームでは、HPを回復するアイテムは入手しやすくてもMPとなると途端に難しくなるので、そういう「希少性の高さ」みたいなものもMPというメタファーには潜んでいるのがお得です。ようするに、MPというメタファーはそれを(デカルト的な)心身二元論に持ち込みたいのではなく、「個人のパラメータの一部であり、使えば減少していくようなところがある(だから無理をするな)」というメッセージを伝えたいために作った次第です。そこさえ伝わればだいたいOKです。近隣の本さて、この手の話は実はいろいろリンクしている話があります。その中でも近隣性が高いのはいかの本。『マシュマロ・テスト――成功する子・しない子』『いつも「時間がない」あなたに (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 』『なぜ意志の力はあてにならないのか―自己コントロールの文化史』2hop先まで提示すると莫大に膨れ上がりますので、まずはこのあたりから探索されるのがよろしいでしょう。次の本の候補紹介する、紹介すると言って先送りになっていた『理不尽な進化』を取り上げます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC018 『WILLPOWER 意志力の科学』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第18回の本日は『WILLPOWER 意志力の科学』について語ります。今回の本は「決断疲れ」というキーワードを掘り下げていく過程でごりゅごが知った心理学者ロイ・バウマイスター氏の「意志力」に関する成果をまとめた本。この意思力関連の話は、ニュースレター「ナレッジスタック」でもたくさん取り上げています。🧘♂️選択肢は少ない方がいい - by goryugo - ナレッジスタック🧘♂️「あとでやる」を戦略的に使い分ける - by goryugo - ナレッジスタック🧘♂️意志力を高める方法は「お金持ちになる方法」と同じ - by goryugo - ナレッジスタック意志の力は「脳の筋力」今回の本は、倉下さんと一緒に話してたくさんの発見をすることができた本でした。話す内容に関しては事前の準備を(結構たくさん)しているんですが、それでも自分一人ではなかなか気がつけないことは多く、人と話すことで新しい発見ができるという体験は貴重です。一人では思いつかなかったであろう内容が、一緒に喋っている本番で見つかるというのは、やはり「やっててよかった」という感覚がありますね。意志の力に関しては「ドラクエのMPにたとえるとわかりやすいけど、細かい点ではちょっと違う」というような話を最初の話として準備していました。そこからの話で「意志の力というものも人間から出てくるもの」という話題になり「意志の力というのは脳の筋肉と言えるかもしれない」という「思いつき」が出てきたのは1つの成果と言えるのかもしれません。脳も筋肉と同じように「動かすためのエネルギー」が必要。さらに、ずっと強い負荷をかけ続けるとだんだん力を出せなくなっていく。ただし、使わなければ弱っていくし、強くするためには負荷をかけて「鍛える」必要がある。この辺りの感覚は、意志力は脳の筋力、という喩えを持ってくると非常にわかりやすくなるイメージがあります。意志の力は「投資」に使うまた、もう1つ「意志の力は消費ではなく投資に使うことが重要」という話。これもまた、話していたその場で思いついた「発見」でした。事前に「意思は無駄に消費しないようにする」というところまでは考えていましたが、それってお金と一緒だね、というのもまた話し相手がいたからこそのこと。高い意思力を持っている人は意志の力を「無駄遣いしない」じゃあその貴重な意志の力をなにに使うのかっていうと「よい習慣」というものに投資する。あ、それって「よいお金の使い方」と一緒だね。人に話すことで考えがまとまる、というのはずっと前から考えいることですが、今回は特に「まとまる」を一歩越えた、新しいアイデアが出てくる、という体験が多かったような気がしています。今回のアフタートークでは、そこをもう一歩広げて、みんなが参加できる「読書会」を開催したいねという話と、それに関わる「サポータープラン」というものについて話していますので、興味をお持ちいただけたら次回も楽しみにお待ちください。参考リンクたすくまの使い方を見てたらタスクシュートの考え方がすごくしっくり来たのでちょっと使ってみることにした – ごりゅご.comたすくまというタスク管理アプリを200日ほど使い続けてわかったこと – ごりゅご.com🧘♂️4時間以上働いたら「生産性が下がる」 - by goryugo - ナレッジスタック今回の書籍、残念ながら日本語の電子版がありません。WILLPOWER 意志力の科学 | ロイ・バウマイスター, ジョン・ティアニー, 渡会圭子 |本 | 通販 | AmazonAmazon | Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength (English Edition) [Kindle edition] by Baumeister, Roy F., John Tierney | Behavioral Sciences | Kindleストア This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC017 アフタートーク
参考リンクブックカタリスト - アープラノート(ブックカタリストについて言及してくれていたScrapbox)Apple Podcast内のゆる言語学ラジオごりゅごcast: 🎙668 NGSLという英単語リスト2800語を一通り学習できたのでコツや感想を語る on Apple PodcastsAnkiを使った英語学習が紙より20倍以上効率がいいので是非試してみて欲しい – ごりゅご.com This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC017『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』
今回は『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』を取り上げます。というか、倉下の新刊です。著者が自分の本をテーマに取り上げる。まるで『ロラン・バルトによるロラン・バルト』みたいですね。ただ、著者による本の解説というよりは、「そういう風に読める」という一つの視点として聞いていただければと思います。この本は?ノートの本です。ただし、「ノート術」として連想される本とはちょっと違っているかもしれません。むしろ「ノート論」(ノート論考)が近いかも。とは言え、小難しい議論を展開してはいません。だいたい言いたいことは、「みんなもっとノートを書こうぜ(いろいろな場面で利用しようぜ)ってことです。第一章で、記録という「テクノロジー」の話をし、そこから情報と記録と私たち人間の関係を論じています。第二章からはいよいよノートの話で、第三章と合わせて「実行」に関するノーティング(ノートを書くこと)を紹介しています。いわゆるタスク管理系の話題です。で、第四章からはいわゆる知的生産系の話題に移るわけですが、この辺から本の展開が「妙な具合」になってきます。転調が始まるのです。つまり、一般的なビジネス書・自己啓発書が奏でるメロディーとは変わってくるのです。続く第五章では読書におけるノートの使い方で、片方は「本の読み方」を紹介する章であり、もう片方ではこれまでの章で紹介してきた技法の実際例を検討する章でもあります。第六章では、自分のために書くノートから他の人に向けて書くノートへと話題が移り、ここまで論じてきた話が有機的に接合します。つまり、自分=他人、書くこと=読むこと、ノート=本、という概念の連続性が見出されます。最後を飾る第七章では、いわゆる自己啓発的なものへの超克が試みられています。簡単に言えば、「人生を誤配させようぜ」というメッセージです。だいぶヤバイこと言っている自覚はありますが、自分の人生を振り返ってみても、そしてたくさんの人の話を聞いても、やっぱり人生にとって重要なことの多くって、そういう形で起こるのだという感覚があります。自分で自分の人生を支配するなんて、つまらないですよね。というような(なかなか複雑な)話が展開されている本です。万人受けするのかどうかはまったくわかりませんが、それでも著者自身が星5をつけられる本になりました。よろしければチェックしてみてください。目次* はじめに ノートをめぐる冒険* 第一章 ノートと僕たち 人類を生みだしたテクノロジー* 第二章 はじめるために書く 意志と決断のノート* 第三章 進めるために書く 管理のノート* 第四章 考えるために書く 思考のノート* 第五章 読むために書く 読書のノート* 第六章 伝えるために書く 共有のノート* 第七章 未来のために書く ビジョンのノート* 補章 今日からノートをはじめるためのアドバイス* おわりに 人生をノートと共に関連ページ◇『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』 - 倉下忠憲の発想工房 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC016 アフタートーク&倉下メモ
『英語独習法』倉下メモ倉下も読んでいた本ですが、ほとんどすっかり内容を忘れておりました。今回はいい感じで復習できたと思います。* 言語を使うことにおいては「スキーマ」がメチャ重要* 言葉(知識)は関係性を持っている(共起・似た言葉)* ともかく語彙を増やそう* 勉強は目的とコストを考えてたとえば、「Zettelkasten」という言葉があるのですが、いまだに倉下はこの言葉が覚えられません。なぜかというと発音できないからなんですね。これはドイツ語に限らず、読みづらい英単語とか漢字とかでも起きます。逆に言うと、読めるものは思い出しやすい。つまり、文字・意味・音という三つの記憶が結びついていると覚えやすい(あるいは思い出しやすい)のです。一つの単語レベルでも、複数の情報が組み合わさっています。また、共起語のように、ある言葉とよく一緒に使われる言葉というのもあって、ズボンは履くで、服は着るというのは本編でも出てきましたが、他にもそのニュアンスならこの言い方といったチョイスもすべてこの共起関係にあると言えます。イディオムなんかは固定化された共起性とも言えるでしょう。文の構成レベルでも似たようなことはあって、「Aは少々高い。しかし、」という文があったら、読み手は必然的に「性能も高いのでそれでも満足できる」とか「Bはもっと高いので比較的お得である」のような文が来るだろうと(無意識に)予想します。この無意識の予想がスキーマなわけですが、それは「Aは少々高い。しかし、明日の天気は晴れだ」という文章があまりにも不自然に感じられることからもわかるでしょう。文法的に何一つ誤りがなくても、文章としてはヘンだと感じる何かがあるわけです。この例はかなり極端ですが、そういう「ヘンな感じ」を避けようと思ったら、逆に「どういう文ならヘンとは感じられないのか」を体感するしかありません。知識としてではなく、実感としてそれがわかるようになる必要がある、ということです。この辺の話は、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の話にも通じているでしょう。でもって、類似の単語レベルでも関係性があります。「歩く」と「ふらふら歩く」と「ちょこまかと歩く」という言葉の(あるいはそのニュアンスの)違いが知覚できるのは、そうした類似の言葉があるからです。「赤」という色が認識できるのは、赤い以外の色を知っているから、というのに近しいでしょう。類似する言葉との差異の中で、その言葉の意味が際立つ。そんな風に言えるかもしれません。だからまあ、語彙を増やすのは、特にネットワークとして語彙を増やすのは大切なのだと思います。それは何も類義語を覚えよというだけの話ではなく、一つの文(あるいは文章)もまた言葉のネットワークを形成していると考えれば、文(文章)に触れることも大切なのだ、という話に接続します。ちなみに、中公新書の『英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで』(北村一真)では、英文の「こういう文の構造がきたら、次はこう来るよね、ほらやっぱり」という本来言語化されていないスキーマ的予想が、非常にわかりやすく言語化されているので、まさに「英語の読み方」の参考書として有用です。あと、ちくま新書の『英語の思考法 ――話すための文法・文化レッスン』は最近買って、これから読むところです。この三つを、英語学習新書御三家と呼ぶ……かどうかは、読み終えてから判断するとします。次の本の候補『理不尽な進化』がすごく面白かったのでぜひ取り上げようとも思いましたが、倉下は著作業を営んでおり、ちょうど新刊が発売されるので、その本を著者自らが紹介する、という試みをやってみようと思います。『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC016 『英語独習法』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第16回の本日は『英語独習法』について語ります。今回の本は、読み終えてから比較的時間が経ったものでした。ただ最近は「読書メモを整理して1ノート1要素にまとめる」ということをやっているおかげで、読んでから時間が経った本の方が中身についてじっくり考えを深められるようになっています。実はこれ、『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』も同じような状態で収録したもので、そういう意味でもLearn Betterと同じようにうまく話せたのではないか、という自負もあったりします。英語学習版『Learn Better』でありつつ「世界の見え方が変わる本」『英語独習法』大きく2つの点が素晴らしかったです。1つは英語に特化した『Learn Better』のような、どのように学習をすることが、英語を学ぶのに有効な手法なのか、というのを学術的な観点で話してくれるところ。特に最も痛快だったのは「目標を決める」ことの重要さを語った上で、できるようになりたいは目標ではないという言葉でぶった斬ってくれたこと。世の中にある英語学習コンテンツの多くが「これだけでいい」「簡単」というようなお手軽感満載のタイトルで溢れていることに対して、『英語独習法』では以下のように「覚悟を決めろ」と迫ってきます。できるようになりたい、というのは目標ではなくただの願望。どのレベルまで、どこまで時間と労力を使う覚悟があるか、ということをきちんと考えて、自分の目指すものを考える。『Learn Better』でも出てくるんですが、学びを深めるための基本は「価値を見出し」「目標を決める」こと。これを「どこまで時間と労力を使う覚悟があるか」と語ってくれる本は信頼できる。そしてもう1つ、この本が興味深いのは「英語という言語での世界の捉え方」を教えてくれること。Did you see "the" broken headlight?Did you see "a" broken headlight?本編でも語った話ですが、ネイティブの人は"the"なのか"a"なのかで答えが変わる、という話などなど、英語を話している人が感じている世界、というものがいかに自分と異なるものなのか、という実例を見せてくれた、大変興味深いものでした。この部分に関して言えば、英語に興味がなくとも、言語というものがいかに興味深いものなのか。それを知ることができる点だけでも一読の価値はあると感じています。いろんな本が自分の中でNo1判定されているんですが、これは「今年一番短い期間で読み終えた本」No1です。本編中に紹介した本* 英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで (中公新書) | 北村一真 | 英語 | Kindleストア | Amazon This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC015 アフタートーク
おたよりコーナーを始めました最近、非常にたくさんのコメントなどをいただけるようになってきて嬉しかったので、お便りコーナー的なものをアフタートークで話すようにしてみました。ハッシュタグ#ブックカタリスト をつけてTwitterで呟いていただいたコメントは全て確認させていただいております(ありがとうございます)試しにやってみたお便りコーナーなんですが、これのおかげで前回紹介した本を再度振り返ることができるようになり、これまでよりもさらにもう1段階1つの本について掘り下げることができるようになったと感じています。今後も#ブックカタリスト付きのタグは可能な限り紹介させていただきます。また、Twitterでのコメント以外にも、このページにコメントをつけていただいたり、このメールに返信していただくことでも、ごりゅごと倉下にご連絡いただけます。ご活用ください。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC015『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
今回はマイケル・サンデルの『実力も運のうち 能力主義は正義か?』を取り上げます。ちなみに、すごく売れている本ですが、結構難しいというか噛みごたえのある本です。関連情報本書の内容の序盤に関しては、以下の動画をみれば掴めると思います。ただし、本書の一番の論点は後半部分にあるので、できればそちらも押さえておきたいところです。TED:能力主義の横暴倉下の読み日本語のタイトルは『実力も運のうち 能力主義は正義か?』ですが、原題は『The Tyranny of Merit: What’s Become of the Common Good?』です。* Tyranny:専制政治,横暴* Merit:値する,優れた価値、功績、* Meritism:実力主義・能力主義* Common Good:共通善イギリスの社会学者のマイケル・ヤングが1958年の『The Rise of the Meritocracy』ですでに予見していた「能力主義」(Meritism)が持つ弊害を、現代の状況において確認し、その打開策を探る、というのが本書のテーマです。で、原題に注目してみると、「Common Good」(共通善)という言葉が出てきます。倉下の読みでは、この言葉こそが本書の鍵です。日本語のタイトルに引きつければ、「能力主義は正義か。もし正義でないとしたら、何が正義になりうるのか」を論じた本、ということ。その点を見過ごして、能力主義が良くないものだと主張しているだけの本だと捉えると、本書の大切な部分を読み過ごしていることになります。でもって、そこから論じられる展開こそが、コミュニタリアニズムを主張する著者の思想に合流するものです。そして、もっとつっこんだことを言えば、「能力主義は正義ではない。実はこれこそが正義なのだ」という議論しかできないならば、それは王様の首をすげ替えているにすぎません。そうではなく、「私たちにとっての正義とは何だろうか」という議論を始めるためのきっかけを提供することが本書の一番の贈り物だと思います。なので、「この本では具体的な代替が提示されていない」のような批判はまったく読み落としです。そうではなく、そうした代替がトップダウンで提示されてしまう状況そのものが、私たちの協同的な議論を棄損してしまっているというのが、現代的な状況なのだと倉下は考えます。目次* 序論―入学すること* 第1章 勝者と敗者* 第2章 「偉大なのは善良だから」―能力の道徳の簡単な歴史* 第3章 出世のレトリック* 第4章 学歴偏重主義―何より受け入れがたい偏見* 第5章 成功の倫理学* 第6章 選別装置* 第7章 労働を承認する* 結論―能力と共通善著者の他の著作と関連回* 『これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』* 『完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理』* 『公共哲学 政治における道徳を考える (ちくま学芸文庫)』* 『それをお金で買いますか 市場主義の限界』* ◇BC005『これからの「正義」の話をしよう』 - ブックカタリスト This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC014 アフタートーク&倉下メモ
『How to Take Smart Notes』倉下メモ全体的にねじれた印象を覚えた本でした。まず、きわめて有用な本という印象。それでいてなんだか読みにくいという印象。目次を見ても、何が書いてあるのかはわかるのですが、それら一つひとつの文章が全体においてどういう位置づけを持ってくるのかがわかりませんし、また実際に読んでいてもこの話は全体の趣旨にどう貢献しているのかが掴みづらい感じがずっとしていました。逆に、これらの章がWebに置かれていて、目次がindex.htmlだったらそこまで違和感はなかったかもしれません。興味があるページのリンクを踏んで読んでいく、というスタイルならむしろ抜群にハマりそうな気がします。でもってこれが、「ネットワーク型」ということの意義であり、たぶん私たちの脳の自然なスタイルでもあるのでしょう。言い換えれば、情報に構造を与えるというのは「人工的」な行為なわけです。しかし倉下は、(一応プロの物書きとして)そうした人工さが必要ではないかと感じた次第です。でももしかしたら、それは古い考えなのかもしれません。全体の中から興味がある部分を読み、それ以外の部分は簡単に済ませる、というのが「技術書」にとっては必要な形式なのかもしれません。むしろ、著者が強い構造を作ってしまうのは──つまり、はじめからおわりまで読まなければ意味が取れない文章を作るのは──ひどい押しつけなのかもしれません。とはいえ個人的には、少しずつ読み進めていくうちに、読み手の脳内に構造ができてきて、おおぉそうか!と楽しめるような、一種小説的な本が(技術書であっても)好きだったりします。これはもう、サガというか欲求にすぎないので普遍性を論じるものではありませんが。でもまあ、「考える上で、書くことは欠かせない」という話はとても大切だと思います。英語なので若干近寄りがたいと思われる人は、2021年7月に発売予定の倉下の新刊にも似た話が出てきますので、そちらもご期待ください(突然の宣伝)。ちなみに「Zettelkasten」は、カードボックス、という意味でした(倉下の勘違いでした)。次の本の候補『実力も運のうち 能力主義は正義か?』前回も候補として挙げましたが、読み終えた上でやっぱり紹介したい気持ちが強まっていますので、こちらにしようかと思います。『理不尽な進化』ただこの本もめっちゃ面白いですし、サンデル本と共時するようなテーマもあるので可能なら両方に言及してみたいと思います。無理なら、この本だけでも一回使いたいくらい面白い本であることは書いておきます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC014 『How to Take Smart Notes』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第14回の本日は『How to Take Smart Notes』について語ります。今回の本は、デジタルガーデン、エバーグリーンノートなど、最近ごりゅごが注目している新しいデジタルノートの手法に大きく影響を与えた、と言われている2017年の書籍。日本語版がなく、DeepLと一緒になって苦労しながら読んだ本でした。なぜ書くか どうやって書くか どういう事を書くかこの本を一言で説明するならば「書く」ことについての本。書くことにどんな効果があるのか。それによってどんなメリットがあるのか。どういうことを書いたらいいのか。それらについてひたすらに掘り下げた本で、ある意味では前回紹介した『Learn Better』の「ノート特化本」とも言えます。BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 - ブックカタリストまた、あえて別のタイトルをつけるのならば『ニクラス・ルーマンのノート術』38冊の本と数百の論文を書いた社会学者ニクラス・ルーマンの「Zettelkasten(本書ではスリップボックスと呼ばれる)」という手法について徹底的に解説した本、という見方もできます。書くことは「勘違い」されている本書冒頭では、まず「書く」という行為の前提条件から話が始まります。世の中は「書く」ということを見下しすぎており、同時に「書く」ということを神聖視しすぎている。ノートを書くということはスキルが必要な「高度な行為」であるにも関わらず、書くということについて論じた本は少ない。また、小説や本の書き方などが議論になることはあっても、普段のノートについて書かれた本はほとんどない。そして、これらの本というのは、いつも必ず「白紙の状態」から本を書く、ということになっている。まず、この前提条件がおかしい。書くということは、白紙からスタートするものではない、というところから話が始まります。その上で、書くということをはどういう効果があるのか、なぜ書くのか。そしてそれを「習慣にする」ことがいかに重要なのか、ということをひたすらに論じているのがこの本のほぼ全て。本の影響で6章までの読書メモを作り直したちなみにごりゅごは、主にこの本の影響を受けて、6章くらいまでの読書メモを一旦放棄。引用ばかりだった6章までの読書メモは、もう1回その部分を読みなおし、読書メモを「自分の言葉で書きなおす」ということをやりました。自分の言葉で書くことがいかに重要なのか、という本を読んでいるくせに、ブックカタリストのようの読書メモが「引用」になっていてはなんの意味もないだろう。そう思ってやり直してみたんですが、改めて「自分の言葉で」「書く」ということがいかに読書や学習で重要なのかということを痛感させられました。(これだけでも、この本を読んだ価値はあったと言える)まとめノートの効能などの詳細まではここで触れませんが、ごりゅごが重要だと感じたことは以下の3点。* 自分の言葉でノートを書く* それだけ読んでわかるように書く* ちょっとずつ進める(習慣にする)正直、1冊の本としての構成は非常にごちゃごちゃでわかりにくいです。これは、本に書かれていることが難解というわけではなく、ただ単純に構成が悪いとしか思えないもの。また、書かれている英語も(著者がドイツ圏の人だからか)非常に理解しづらい部分が多く、そういった意味でもなかなかに読むのに骨が折れる本でした。ただ、ごりゅごは確かに間違いなくこの本からも大きく影響を受けてるんですよね。『Learn Better』と同じく、読み終えてノートにまとめていくうちに『How to Take Smart Notes』の評価は上がってきています。この本のおかげで自分がまとめるノートというものは「よくなった」と実感しているし、ノートの書き方というものが1段階上のレベルに到達できたような感じはします。本当にこの本が素晴らしいのかと言われると悩ましいところで「わかりにくいものを苦労しながら読んだ」おかげで多くのものが得られた、と考えることもできてしまいます。仮にそうだったとしても、それはそれで「独学テキスト」として素晴らしいものだったということもできるわけで、やっぱりいい本だったという結論になるのかな。好きか嫌いかの意見は分かれそうですが、たくさんの影響を受けた、ということだけは間違いないものになりそうです。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC013アフタートーク
次回紹介予定の本『英語独習法』なんだかんだ、この本はすごく面白かったです。英語学習用の『Learn Better』という感じ。『How to take smart Notes』いまのごりゅごの興味の大半を占める「エバーグリーンノート」その流れを作り出したと言われている本。まだ半分くらいしか読んでなくて、しかも英語の本でいろいろ大変なんですが、今日興味ど直球の本なので、こういう機会を生かしてなんとか読んで、次回話せるようにしたいと思います。『生命はデジタルでできている』遺伝子系の本は色々読んでいます。その中で、一番最初に読み終えることができた本がこれ。まだまだ難しいし、わからないことは多いんですが、この本で「最低限の基礎」みたいなことが少し理解できたものでした。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC013『コンヴァージェンス・カルチャー』
今回は『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』について。『コンヴァージェンス・カルチャー』原題『Convergence Culture:Where Old and New Media Collide』Convergenceは、「一点に集まること」のイメージ。集約する、集合する、収斂する、収束する。Collideは、「ぶつかる、衝突する」のイメージ。新旧メディアがどこで衝突するのか。これは二つのニュアンスがあり、「どの場所で出会うのか」と、「どの利害でぶつかり合うのか」という二つの観点が含まれていると感じる。著者ヘンリー・ジェンキンズ南カリフォルニア大学教授。コミュニケーション&ジャーナリズム研究科、映画芸術研究科、ならびに教育研究科で、デジタル時代の参加型文化やファンダム、若者教育などを教えている。同校着任以前はマサチューセッツ工科大学(MIT)にて比較メディア研究プログラムを立ち上げ、ディレクターを長らく務めた。注意点原著は2006年であり、現代から見て最新の話題を扱っているわけではない。また、メディア研究の事例が基本的にアメリカなので、日本と合わない部分も当然出てくる。その点は留意が必要。主要なテーマインターネットが登場して、メディアが変化した。双方向になっただけではなく、これまで単なる受信者であった人々が発信者としての役割も担いはじめた。その変化によって、単に古いメディアが死に、新しいメディアが台頭するという単純な変化ではなく、コンテンツがどのように流通し、生産され、消費されるのか、そして利益をどのような形で作っていけばいいのか、というメディアを取り巻く全体像に大きな変化が訪れている。その変化は、拒絶しようと思ってもできるものではなく、考えられるのは「それとどう付き合うか」だけであろう。本書では、実際のメディア研究をベースにしながら、いかなる行動が情報の送り手(トップダウンの主体者)と情報の受け手(草の根の実践者)の間で生まれていたのかを考察している。2006年からみた「新しいメディア」との付き合い方を考える上で非常に示唆に富むであっただろうし、現代においても示唆に富む内容ではある。コンバージェンスの転換一つの端末にあらゆるコンテンツが集まるという意味での「コンバージェンス」ではなく、メディア企業がコングリマットになったり、一つのコンテンツがさまざまなプラットフォーム&流通ルートを持ったり、コンテンツのもとに多様な視聴者が集まったりするような、ある種の多様性が生まれる状況が「コンバージェンス」であると、見方の転換が提示されている。実際のメディアの状況から言っても、この見立ては極めて正しいと言える目次* イントロダクション「コンヴァージェンスの祭壇で祈ろう」* 第1章 『サバイバー』のネタバレ* 第2章 『アメリカン・アイドル』を買うこと* 第3章 折り紙ユニコーンを探して* 第4章 クエンティン・タランティーノの『スター・ウォーズ』?* 第5章 どうしてヘザーは書けるのか* 第6章 民主主義のためのフォトショップ* 結論 テレビを民主化する? ──参加の政治学* あとがき ──YouTube時代の政治を振り返る倉下の見立て日本では「メディアミクス」という考え方がもうあたり前であり、さらには情報の受け手を巻き込んだコンセプトも珍しくなくなっている。その意味で、本書が描いたレールは、たしかに現代にまで続いていると言える。言い換えれば、現代の「あたり前」がどのように生まれてきたのかを巡る旅にも本書はなる。一方で、現代のインターネット with メディアが全般的にうまくいっていない部分もあり、一体そこで何が損なわれてしまったのかを考える起点にもなる。その意味で、『遅いインターネット』や『ゲンロン戦記』などと合わせて読んでもよさそうである。最後にはそうしたメディアが民主主義→社会にもたらしうるインパクトも考察されているのだが、やはりこの点も現状は厳しいと言わざるを得ない。むしろゲームの中ですら「政治」や「社会」を体験する場が減っていると感じられる。この点は、おそらく目に見えている状況よりも、一段深いところに問題があるのだろう(日常の中から、政治的な煩わしいものが徹底的に排除されつつある、ということだと思われる)。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC012アフタートーク
今回は、はじめて「ゲストの方に来ていただいて、その人に本を紹介してもらう」という形でした。3人でPodcast、というのもほとんど経験がなく、なかなかにチャレンジングなものではありましたが、結果として「いつもと違う感じのもの」が作れて、良い刺激になりました。個人的には、よく名前をきいていて、でも良くわかってなかった「フリーライティング」というものについて本編中に話が聞けたおかげで、これに刺激を受けて「書く練習」という行為についてよく考えています。機会があればまたゲストの方に登場していただく、ということもやってみたいと考えているので、自薦、他薦問わず、リクエストなどあれば #ブックカタリストでツイートしていただくか、コメント欄などにコメントをよろしくお願いします。メールで届いている方ならば、このメールに返信していただくことでもご連絡いただけます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
ゲスト回BC012『思考のエンジン』
思考のエンジン オンデマンド (ペーパーバック)ゲストはTak.さん。* Twitter:@takwordpiece* Blog:Word Piece* Amazon著者ページ『思考のエンジン』について著者は奥出直人さん。青土社の思想系雑誌『現代思想』の連載を書籍化したもの。同じ著者の本に『物書きがコンピュータに出会うとき―思考のためのマシン』もあるが、こちらは入手が若干難しい。目次は以下の通り。* 思考の道具としてのタイプライター* ライティング・エンジンとしてのワードプロセッサー* エクリチュールとライティング・エンジン* パレルゴンとエルゴン* 論理的ディスコースのダイナミズム* コンピュータ上のソクラテス―「ソウトライン」を使う* 情報を俯瞰する装置―アウトライン・プロセッサーを使う* プロセスとしてのテクスト* 迷宮としてのデータベース* 補遺の連鎖とハイパーテキスト―ハイパーメディア・ライブラリーとライティング* 思考のエンジンとしてのハイパーテキスト* マニエリスムとアカデミズム今回は主に前半部分に関してお話いただきました。タイプライター的思考『思考のエンジン』にはこうあります。タイプライター的思考とは、タイプライターをペン代わりに使う思考のことではない。タイプライターを含む一九世紀末的な効率と生産性を可能にする思考を意味している。部分をつなぎ全体を考え、資料はファイルにきちっと整理され、巨大な辞書が備えられている、そんな環境がタイプライター的思考の場所である。つまり、物事をきわめてシステマチックに進めていくアプローチであり、それをエンハンスするのがタイプライターという機械です。もう一ヶ所引用します。また、書くという問題を考えるとき、全体の統一性を考えながらばらばらな部分を寄せ集め、つないでいくタイプライター的思考の限界についても考えておく必要がある。人間の思考はもっと複雑なものである。これらの記述でなんとなくタイプライター的思考の輪郭線が見えてくるでしょう。タイプライターからの逸脱では、タイプライター的思考ではない思考(およびそこに付随する執筆)とはどのようなものでしょうか。以上の手書きのエクリチュールにこだわる作家の意見をまとめてみると、書くという作業を創造的な行為とみなし、分かりきった意識を前もって準備した構造に合わせて説明するのではなく、明確に意識化できていないことを書くという作業、すなわちエクリチュールによって意識化しようとしていることが分かる。さらに、一度書き上げた原稿を推敲して仕上げていく楽しみも強調している。おおむねここが一番の力点でしょう。でもって、シェイクに象徴されるTak.さんが提示されるプロセスが強調しているのもこのような行い(あるいは営み)です。あらかじめ構造をしっかり作りそこに向かって書いていくことは、「分かりきった」ことを扱う行為であり、「明確に意識化できていないことを書くという作業」──つまり、発見や創造とはひどく違っていて、そしておそらく楽しみも少ないのではないか。そのような疑問を『思考のエンジン』を読んでいると感じられますし、まさにその問題意識を持ってTak.さんの著作を読んでみると、「なるほど、そういうことか」と腑に落ちることが多く出てきます。なので、Tak.さんの本を好ましいと感じる方ならば、よりディープに踏み込むために『思考のエンジン』はぜひとも読んでみたいところです。難しい言葉とは言え、この本は一筋縄ではいきません。すでに登場していますが、「エクリチュール」も知らないと意味が取りづらいですし、「パレルゴン」やら「ヘゲモニー」やら各種哲学者の用語がばんばん登場します。文章自体は晦渋ではないのですが、用語の感触を把握していないと、「うっ」と気後れする部分は間違いなくあります。それを乗り越えるのが知的トレーニングである、というといかにもマッチョな発想にも思えますが、それでも自分が知らない世界から流れ込んでくる空気を一度胸いっぱい吸い込んでみるのは悪くない体験です。それに用語がわからないからといって全体の意味が汲み取れないこともありません。ですので、そういう本だと思ってチャレンジされると良いでしょう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC011 アフタートーク&倉下メモ
『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』倉下メモ話を聞いている間、ずっと「そうだよな〜」という思いでいっぱいの回でした。納得fullな一冊。でもって、ちょうど倉下が今書いている本も「書くことを通して考える」ことの大切さに言及しているので、重複感がハンパなかったです。本書が提示する学び方に関しては、『独学大全』や『How to Take Smart Notes』も類書としてあげられると思います。あと、今井むつみさんの学習に関する本も同様のことを論じています。結局、自分の手を動かし、頭を動かさないと前には進めない、という点では、『妄想する頭 思考する手』にも通じるものがあるかもしれません。ちなみに、本書がKindleでセール対象になっていたので、倉下もさっそく買いました。また読んでみたいと思います。次の本の候補『実力も運のうち 能力主義は正義か?』最近話題の本。サンデルさんの本は以前も取り上げたので、その流れとして(あるいは話題に乗っかっていく意味で)。『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』『ゲンロン戦記』や『ヒューマン・ネットワーク』などで、「あるグループを作るとはどういうことか、インターネットでいかにそれを実践するのがよいのか」という問題意識が出ているので、その流れで買った本です。かなり分厚いのでなかなか手ごわそうですが、次回の倉下のターンはこちらにしようと思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
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