面白かった本について語るポッドキャスト&ニュースレターです。1冊の本が触媒となって、そこからどんどん「面白い本」が増えていく。そんな本の楽しみ方を考えていきます。
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BC018 アフタートーク&倉下メモ
『WILLPOWER 意志力の科学』倉下メモ意志力のお話です。認知資源という言い方をしてもよいでしょう。倉下はその概念を伝えるためにMP(エムピー)というたとえをよく使います。メンタルポイントでも、マジックポイントでも、その他その人がイメージしやすい何かであればよい、というゆるい意味でのMPです。それは使ってしまうとなくなってしまう。なくなってしまうと「思うようにできない」。それがHPとは別にある。そういうイメージです。これは、総合的な意味での体力の一部なのですが、一方で体は動くけれども判断力が摩耗している状態というのがあって(仕事終わりにスーパーに行くと実感します)、その辺の感覚を捉えるためにMPという概念を錬成したわけです(MPと聞くとゲームに親しんでいる人は自然とHPと別のパラメータだと認識するからです)。いろいろ厳密に考えていくとMPというたとえでは無理な部分もでてきますが、そもそもたとえは厳密に一致するものではないからたとえなわけですから、個人的にはそれで十分だろうと考えています。とにかく「難しい問題に判断力をつかうと、その後はその力が弱ってしまう」ということが伝わればOKかな、と。で、ゲームのイメージでもわかりますが、それって夜寝て朝起きると回復しているんですね。実は仮眠しても戻る感覚があります。つまり、MPのイメージを持てば、具体的にどのように対処すればいいのかのイメージもわきやすい、というわけです。だいたいのゲームでは、HPを回復するアイテムは入手しやすくてもMPとなると途端に難しくなるので、そういう「希少性の高さ」みたいなものもMPというメタファーには潜んでいるのがお得です。ようするに、MPというメタファーはそれを(デカルト的な)心身二元論に持ち込みたいのではなく、「個人のパラメータの一部であり、使えば減少していくようなところがある(だから無理をするな)」というメッセージを伝えたいために作った次第です。そこさえ伝わればだいたいOKです。近隣の本さて、この手の話は実はいろいろリンクしている話があります。その中でも近隣性が高いのはいかの本。『マシュマロ・テスト――成功する子・しない子』『いつも「時間がない」あなたに (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 』『なぜ意志の力はあてにならないのか―自己コントロールの文化史』2hop先まで提示すると莫大に膨れ上がりますので、まずはこのあたりから探索されるのがよろしいでしょう。次の本の候補紹介する、紹介すると言って先送りになっていた『理不尽な進化』を取り上げます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC018 『WILLPOWER 意志力の科学』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第18回の本日は『WILLPOWER 意志力の科学』について語ります。今回の本は「決断疲れ」というキーワードを掘り下げていく過程でごりゅごが知った心理学者ロイ・バウマイスター氏の「意志力」に関する成果をまとめた本。この意思力関連の話は、ニュースレター「ナレッジスタック」でもたくさん取り上げています。🧘♂️選択肢は少ない方がいい - by goryugo - ナレッジスタック🧘♂️「あとでやる」を戦略的に使い分ける - by goryugo - ナレッジスタック🧘♂️意志力を高める方法は「お金持ちになる方法」と同じ - by goryugo - ナレッジスタック意志の力は「脳の筋力」今回の本は、倉下さんと一緒に話してたくさんの発見をすることができた本でした。話す内容に関しては事前の準備を(結構たくさん)しているんですが、それでも自分一人ではなかなか気がつけないことは多く、人と話すことで新しい発見ができるという体験は貴重です。一人では思いつかなかったであろう内容が、一緒に喋っている本番で見つかるというのは、やはり「やっててよかった」という感覚がありますね。意志の力に関しては「ドラクエのMPにたとえるとわかりやすいけど、細かい点ではちょっと違う」というような話を最初の話として準備していました。そこからの話で「意志の力というものも人間から出てくるもの」という話題になり「意志の力というのは脳の筋肉と言えるかもしれない」という「思いつき」が出てきたのは1つの成果と言えるのかもしれません。脳も筋肉と同じように「動かすためのエネルギー」が必要。さらに、ずっと強い負荷をかけ続けるとだんだん力を出せなくなっていく。ただし、使わなければ弱っていくし、強くするためには負荷をかけて「鍛える」必要がある。この辺りの感覚は、意志力は脳の筋力、という喩えを持ってくると非常にわかりやすくなるイメージがあります。意志の力は「投資」に使うまた、もう1つ「意志の力は消費ではなく投資に使うことが重要」という話。これもまた、話していたその場で思いついた「発見」でした。事前に「意思は無駄に消費しないようにする」というところまでは考えていましたが、それってお金と一緒だね、というのもまた話し相手がいたからこそのこと。高い意思力を持っている人は意志の力を「無駄遣いしない」じゃあその貴重な意志の力をなにに使うのかっていうと「よい習慣」というものに投資する。あ、それって「よいお金の使い方」と一緒だね。人に話すことで考えがまとまる、というのはずっと前から考えいることですが、今回は特に「まとまる」を一歩越えた、新しいアイデアが出てくる、という体験が多かったような気がしています。今回のアフタートークでは、そこをもう一歩広げて、みんなが参加できる「読書会」を開催したいねという話と、それに関わる「サポータープラン」というものについて話していますので、興味をお持ちいただけたら次回も楽しみにお待ちください。参考リンクたすくまの使い方を見てたらタスクシュートの考え方がすごくしっくり来たのでちょっと使ってみることにした – ごりゅご.comたすくまというタスク管理アプリを200日ほど使い続けてわかったこと – ごりゅご.com🧘♂️4時間以上働いたら「生産性が下がる」 - by goryugo - ナレッジスタック今回の書籍、残念ながら日本語の電子版がありません。WILLPOWER 意志力の科学 | ロイ・バウマイスター, ジョン・ティアニー, 渡会圭子 |本 | 通販 | AmazonAmazon | Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength (English Edition) [Kindle edition] by Baumeister, Roy F., John Tierney | Behavioral Sciences | Kindleストア This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC017 アフタートーク
参考リンクブックカタリスト - アープラノート(ブックカタリストについて言及してくれていたScrapbox)Apple Podcast内のゆる言語学ラジオごりゅごcast: 🎙668 NGSLという英単語リスト2800語を一通り学習できたのでコツや感想を語る on Apple PodcastsAnkiを使った英語学習が紙より20倍以上効率がいいので是非試してみて欲しい – ごりゅご.com This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC017『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』
今回は『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』を取り上げます。というか、倉下の新刊です。著者が自分の本をテーマに取り上げる。まるで『ロラン・バルトによるロラン・バルト』みたいですね。ただ、著者による本の解説というよりは、「そういう風に読める」という一つの視点として聞いていただければと思います。この本は?ノートの本です。ただし、「ノート術」として連想される本とはちょっと違っているかもしれません。むしろ「ノート論」(ノート論考)が近いかも。とは言え、小難しい議論を展開してはいません。だいたい言いたいことは、「みんなもっとノートを書こうぜ(いろいろな場面で利用しようぜ)ってことです。第一章で、記録という「テクノロジー」の話をし、そこから情報と記録と私たち人間の関係を論じています。第二章からはいよいよノートの話で、第三章と合わせて「実行」に関するノーティング(ノートを書くこと)を紹介しています。いわゆるタスク管理系の話題です。で、第四章からはいわゆる知的生産系の話題に移るわけですが、この辺から本の展開が「妙な具合」になってきます。転調が始まるのです。つまり、一般的なビジネス書・自己啓発書が奏でるメロディーとは変わってくるのです。続く第五章では読書におけるノートの使い方で、片方は「本の読み方」を紹介する章であり、もう片方ではこれまでの章で紹介してきた技法の実際例を検討する章でもあります。第六章では、自分のために書くノートから他の人に向けて書くノートへと話題が移り、ここまで論じてきた話が有機的に接合します。つまり、自分=他人、書くこと=読むこと、ノート=本、という概念の連続性が見出されます。最後を飾る第七章では、いわゆる自己啓発的なものへの超克が試みられています。簡単に言えば、「人生を誤配させようぜ」というメッセージです。だいぶヤバイこと言っている自覚はありますが、自分の人生を振り返ってみても、そしてたくさんの人の話を聞いても、やっぱり人生にとって重要なことの多くって、そういう形で起こるのだという感覚があります。自分で自分の人生を支配するなんて、つまらないですよね。というような(なかなか複雑な)話が展開されている本です。万人受けするのかどうかはまったくわかりませんが、それでも著者自身が星5をつけられる本になりました。よろしければチェックしてみてください。目次* はじめに ノートをめぐる冒険* 第一章 ノートと僕たち 人類を生みだしたテクノロジー* 第二章 はじめるために書く 意志と決断のノート* 第三章 進めるために書く 管理のノート* 第四章 考えるために書く 思考のノート* 第五章 読むために書く 読書のノート* 第六章 伝えるために書く 共有のノート* 第七章 未来のために書く ビジョンのノート* 補章 今日からノートをはじめるためのアドバイス* おわりに 人生をノートと共に関連ページ◇『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』 - 倉下忠憲の発想工房 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC016 アフタートーク&倉下メモ
『英語独習法』倉下メモ倉下も読んでいた本ですが、ほとんどすっかり内容を忘れておりました。今回はいい感じで復習できたと思います。* 言語を使うことにおいては「スキーマ」がメチャ重要* 言葉(知識)は関係性を持っている(共起・似た言葉)* ともかく語彙を増やそう* 勉強は目的とコストを考えてたとえば、「Zettelkasten」という言葉があるのですが、いまだに倉下はこの言葉が覚えられません。なぜかというと発音できないからなんですね。これはドイツ語に限らず、読みづらい英単語とか漢字とかでも起きます。逆に言うと、読めるものは思い出しやすい。つまり、文字・意味・音という三つの記憶が結びついていると覚えやすい(あるいは思い出しやすい)のです。一つの単語レベルでも、複数の情報が組み合わさっています。また、共起語のように、ある言葉とよく一緒に使われる言葉というのもあって、ズボンは履くで、服は着るというのは本編でも出てきましたが、他にもそのニュアンスならこの言い方といったチョイスもすべてこの共起関係にあると言えます。イディオムなんかは固定化された共起性とも言えるでしょう。文の構成レベルでも似たようなことはあって、「Aは少々高い。しかし、」という文があったら、読み手は必然的に「性能も高いのでそれでも満足できる」とか「Bはもっと高いので比較的お得である」のような文が来るだろうと(無意識に)予想します。この無意識の予想がスキーマなわけですが、それは「Aは少々高い。しかし、明日の天気は晴れだ」という文章があまりにも不自然に感じられることからもわかるでしょう。文法的に何一つ誤りがなくても、文章としてはヘンだと感じる何かがあるわけです。この例はかなり極端ですが、そういう「ヘンな感じ」を避けようと思ったら、逆に「どういう文ならヘンとは感じられないのか」を体感するしかありません。知識としてではなく、実感としてそれがわかるようになる必要がある、ということです。この辺の話は、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の話にも通じているでしょう。でもって、類似の単語レベルでも関係性があります。「歩く」と「ふらふら歩く」と「ちょこまかと歩く」という言葉の(あるいはそのニュアンスの)違いが知覚できるのは、そうした類似の言葉があるからです。「赤」という色が認識できるのは、赤い以外の色を知っているから、というのに近しいでしょう。類似する言葉との差異の中で、その言葉の意味が際立つ。そんな風に言えるかもしれません。だからまあ、語彙を増やすのは、特にネットワークとして語彙を増やすのは大切なのだと思います。それは何も類義語を覚えよというだけの話ではなく、一つの文(あるいは文章)もまた言葉のネットワークを形成していると考えれば、文(文章)に触れることも大切なのだ、という話に接続します。ちなみに、中公新書の『英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで』(北村一真)では、英文の「こういう文の構造がきたら、次はこう来るよね、ほらやっぱり」という本来言語化されていないスキーマ的予想が、非常にわかりやすく言語化されているので、まさに「英語の読み方」の参考書として有用です。あと、ちくま新書の『英語の思考法 ――話すための文法・文化レッスン』は最近買って、これから読むところです。この三つを、英語学習新書御三家と呼ぶ……かどうかは、読み終えてから判断するとします。次の本の候補『理不尽な進化』がすごく面白かったのでぜひ取り上げようとも思いましたが、倉下は著作業を営んでおり、ちょうど新刊が発売されるので、その本を著者自らが紹介する、という試みをやってみようと思います。『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC016 『英語独習法』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第16回の本日は『英語独習法』について語ります。今回の本は、読み終えてから比較的時間が経ったものでした。ただ最近は「読書メモを整理して1ノート1要素にまとめる」ということをやっているおかげで、読んでから時間が経った本の方が中身についてじっくり考えを深められるようになっています。実はこれ、『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』も同じような状態で収録したもので、そういう意味でもLearn Betterと同じようにうまく話せたのではないか、という自負もあったりします。英語学習版『Learn Better』でありつつ「世界の見え方が変わる本」『英語独習法』大きく2つの点が素晴らしかったです。1つは英語に特化した『Learn Better』のような、どのように学習をすることが、英語を学ぶのに有効な手法なのか、というのを学術的な観点で話してくれるところ。特に最も痛快だったのは「目標を決める」ことの重要さを語った上で、できるようになりたいは目標ではないという言葉でぶった斬ってくれたこと。世の中にある英語学習コンテンツの多くが「これだけでいい」「簡単」というようなお手軽感満載のタイトルで溢れていることに対して、『英語独習法』では以下のように「覚悟を決めろ」と迫ってきます。できるようになりたい、というのは目標ではなくただの願望。どのレベルまで、どこまで時間と労力を使う覚悟があるか、ということをきちんと考えて、自分の目指すものを考える。『Learn Better』でも出てくるんですが、学びを深めるための基本は「価値を見出し」「目標を決める」こと。これを「どこまで時間と労力を使う覚悟があるか」と語ってくれる本は信頼できる。そしてもう1つ、この本が興味深いのは「英語という言語での世界の捉え方」を教えてくれること。Did you see "the" broken headlight?Did you see "a" broken headlight?本編でも語った話ですが、ネイティブの人は"the"なのか"a"なのかで答えが変わる、という話などなど、英語を話している人が感じている世界、というものがいかに自分と異なるものなのか、という実例を見せてくれた、大変興味深いものでした。この部分に関して言えば、英語に興味がなくとも、言語というものがいかに興味深いものなのか。それを知ることができる点だけでも一読の価値はあると感じています。いろんな本が自分の中でNo1判定されているんですが、これは「今年一番短い期間で読み終えた本」No1です。本編中に紹介した本* 英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで (中公新書) | 北村一真 | 英語 | Kindleストア | Amazon This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC015 アフタートーク
おたよりコーナーを始めました最近、非常にたくさんのコメントなどをいただけるようになってきて嬉しかったので、お便りコーナー的なものをアフタートークで話すようにしてみました。ハッシュタグ#ブックカタリスト をつけてTwitterで呟いていただいたコメントは全て確認させていただいております(ありがとうございます)試しにやってみたお便りコーナーなんですが、これのおかげで前回紹介した本を再度振り返ることができるようになり、これまでよりもさらにもう1段階1つの本について掘り下げることができるようになったと感じています。今後も#ブックカタリスト付きのタグは可能な限り紹介させていただきます。また、Twitterでのコメント以外にも、このページにコメントをつけていただいたり、このメールに返信していただくことでも、ごりゅごと倉下にご連絡いただけます。ご活用ください。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC015『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
今回はマイケル・サンデルの『実力も運のうち 能力主義は正義か?』を取り上げます。ちなみに、すごく売れている本ですが、結構難しいというか噛みごたえのある本です。関連情報本書の内容の序盤に関しては、以下の動画をみれば掴めると思います。ただし、本書の一番の論点は後半部分にあるので、できればそちらも押さえておきたいところです。TED:能力主義の横暴倉下の読み日本語のタイトルは『実力も運のうち 能力主義は正義か?』ですが、原題は『The Tyranny of Merit: What’s Become of the Common Good?』です。* Tyranny:専制政治,横暴* Merit:値する,優れた価値、功績、* Meritism:実力主義・能力主義* Common Good:共通善イギリスの社会学者のマイケル・ヤングが1958年の『The Rise of the Meritocracy』ですでに予見していた「能力主義」(Meritism)が持つ弊害を、現代の状況において確認し、その打開策を探る、というのが本書のテーマです。で、原題に注目してみると、「Common Good」(共通善)という言葉が出てきます。倉下の読みでは、この言葉こそが本書の鍵です。日本語のタイトルに引きつければ、「能力主義は正義か。もし正義でないとしたら、何が正義になりうるのか」を論じた本、ということ。その点を見過ごして、能力主義が良くないものだと主張しているだけの本だと捉えると、本書の大切な部分を読み過ごしていることになります。でもって、そこから論じられる展開こそが、コミュニタリアニズムを主張する著者の思想に合流するものです。そして、もっとつっこんだことを言えば、「能力主義は正義ではない。実はこれこそが正義なのだ」という議論しかできないならば、それは王様の首をすげ替えているにすぎません。そうではなく、「私たちにとっての正義とは何だろうか」という議論を始めるためのきっかけを提供することが本書の一番の贈り物だと思います。なので、「この本では具体的な代替が提示されていない」のような批判はまったく読み落としです。そうではなく、そうした代替がトップダウンで提示されてしまう状況そのものが、私たちの協同的な議論を棄損してしまっているというのが、現代的な状況なのだと倉下は考えます。目次* 序論―入学すること* 第1章 勝者と敗者* 第2章 「偉大なのは善良だから」―能力の道徳の簡単な歴史* 第3章 出世のレトリック* 第4章 学歴偏重主義―何より受け入れがたい偏見* 第5章 成功の倫理学* 第6章 選別装置* 第7章 労働を承認する* 結論―能力と共通善著者の他の著作と関連回* 『これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』* 『完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理』* 『公共哲学 政治における道徳を考える (ちくま学芸文庫)』* 『それをお金で買いますか 市場主義の限界』* ◇BC005『これからの「正義」の話をしよう』 - ブックカタリスト This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC014 アフタートーク&倉下メモ
『How to Take Smart Notes』倉下メモ全体的にねじれた印象を覚えた本でした。まず、きわめて有用な本という印象。それでいてなんだか読みにくいという印象。目次を見ても、何が書いてあるのかはわかるのですが、それら一つひとつの文章が全体においてどういう位置づけを持ってくるのかがわかりませんし、また実際に読んでいてもこの話は全体の趣旨にどう貢献しているのかが掴みづらい感じがずっとしていました。逆に、これらの章がWebに置かれていて、目次がindex.htmlだったらそこまで違和感はなかったかもしれません。興味があるページのリンクを踏んで読んでいく、というスタイルならむしろ抜群にハマりそうな気がします。でもってこれが、「ネットワーク型」ということの意義であり、たぶん私たちの脳の自然なスタイルでもあるのでしょう。言い換えれば、情報に構造を与えるというのは「人工的」な行為なわけです。しかし倉下は、(一応プロの物書きとして)そうした人工さが必要ではないかと感じた次第です。でももしかしたら、それは古い考えなのかもしれません。全体の中から興味がある部分を読み、それ以外の部分は簡単に済ませる、というのが「技術書」にとっては必要な形式なのかもしれません。むしろ、著者が強い構造を作ってしまうのは──つまり、はじめからおわりまで読まなければ意味が取れない文章を作るのは──ひどい押しつけなのかもしれません。とはいえ個人的には、少しずつ読み進めていくうちに、読み手の脳内に構造ができてきて、おおぉそうか!と楽しめるような、一種小説的な本が(技術書であっても)好きだったりします。これはもう、サガというか欲求にすぎないので普遍性を論じるものではありませんが。でもまあ、「考える上で、書くことは欠かせない」という話はとても大切だと思います。英語なので若干近寄りがたいと思われる人は、2021年7月に発売予定の倉下の新刊にも似た話が出てきますので、そちらもご期待ください(突然の宣伝)。ちなみに「Zettelkasten」は、カードボックス、という意味でした(倉下の勘違いでした)。次の本の候補『実力も運のうち 能力主義は正義か?』前回も候補として挙げましたが、読み終えた上でやっぱり紹介したい気持ちが強まっていますので、こちらにしようかと思います。『理不尽な進化』ただこの本もめっちゃ面白いですし、サンデル本と共時するようなテーマもあるので可能なら両方に言及してみたいと思います。無理なら、この本だけでも一回使いたいくらい面白い本であることは書いておきます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC014 『How to Take Smart Notes』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第14回の本日は『How to Take Smart Notes』について語ります。今回の本は、デジタルガーデン、エバーグリーンノートなど、最近ごりゅごが注目している新しいデジタルノートの手法に大きく影響を与えた、と言われている2017年の書籍。日本語版がなく、DeepLと一緒になって苦労しながら読んだ本でした。なぜ書くか どうやって書くか どういう事を書くかこの本を一言で説明するならば「書く」ことについての本。書くことにどんな効果があるのか。それによってどんなメリットがあるのか。どういうことを書いたらいいのか。それらについてひたすらに掘り下げた本で、ある意味では前回紹介した『Learn Better』の「ノート特化本」とも言えます。BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 - ブックカタリストまた、あえて別のタイトルをつけるのならば『ニクラス・ルーマンのノート術』38冊の本と数百の論文を書いた社会学者ニクラス・ルーマンの「Zettelkasten(本書ではスリップボックスと呼ばれる)」という手法について徹底的に解説した本、という見方もできます。書くことは「勘違い」されている本書冒頭では、まず「書く」という行為の前提条件から話が始まります。世の中は「書く」ということを見下しすぎており、同時に「書く」ということを神聖視しすぎている。ノートを書くということはスキルが必要な「高度な行為」であるにも関わらず、書くということについて論じた本は少ない。また、小説や本の書き方などが議論になることはあっても、普段のノートについて書かれた本はほとんどない。そして、これらの本というのは、いつも必ず「白紙の状態」から本を書く、ということになっている。まず、この前提条件がおかしい。書くということは、白紙からスタートするものではない、というところから話が始まります。その上で、書くということをはどういう効果があるのか、なぜ書くのか。そしてそれを「習慣にする」ことがいかに重要なのか、ということをひたすらに論じているのがこの本のほぼ全て。本の影響で6章までの読書メモを作り直したちなみにごりゅごは、主にこの本の影響を受けて、6章くらいまでの読書メモを一旦放棄。引用ばかりだった6章までの読書メモは、もう1回その部分を読みなおし、読書メモを「自分の言葉で書きなおす」ということをやりました。自分の言葉で書くことがいかに重要なのか、という本を読んでいるくせに、ブックカタリストのようの読書メモが「引用」になっていてはなんの意味もないだろう。そう思ってやり直してみたんですが、改めて「自分の言葉で」「書く」ということがいかに読書や学習で重要なのかということを痛感させられました。(これだけでも、この本を読んだ価値はあったと言える)まとめノートの効能などの詳細まではここで触れませんが、ごりゅごが重要だと感じたことは以下の3点。* 自分の言葉でノートを書く* それだけ読んでわかるように書く* ちょっとずつ進める(習慣にする)正直、1冊の本としての構成は非常にごちゃごちゃでわかりにくいです。これは、本に書かれていることが難解というわけではなく、ただ単純に構成が悪いとしか思えないもの。また、書かれている英語も(著者がドイツ圏の人だからか)非常に理解しづらい部分が多く、そういった意味でもなかなかに読むのに骨が折れる本でした。ただ、ごりゅごは確かに間違いなくこの本からも大きく影響を受けてるんですよね。『Learn Better』と同じく、読み終えてノートにまとめていくうちに『How to Take Smart Notes』の評価は上がってきています。この本のおかげで自分がまとめるノートというものは「よくなった」と実感しているし、ノートの書き方というものが1段階上のレベルに到達できたような感じはします。本当にこの本が素晴らしいのかと言われると悩ましいところで「わかりにくいものを苦労しながら読んだ」おかげで多くのものが得られた、と考えることもできてしまいます。仮にそうだったとしても、それはそれで「独学テキスト」として素晴らしいものだったということもできるわけで、やっぱりいい本だったという結論になるのかな。好きか嫌いかの意見は分かれそうですが、たくさんの影響を受けた、ということだけは間違いないものになりそうです。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC013アフタートーク
次回紹介予定の本『英語独習法』なんだかんだ、この本はすごく面白かったです。英語学習用の『Learn Better』という感じ。『How to take smart Notes』いまのごりゅごの興味の大半を占める「エバーグリーンノート」その流れを作り出したと言われている本。まだ半分くらいしか読んでなくて、しかも英語の本でいろいろ大変なんですが、今日興味ど直球の本なので、こういう機会を生かしてなんとか読んで、次回話せるようにしたいと思います。『生命はデジタルでできている』遺伝子系の本は色々読んでいます。その中で、一番最初に読み終えることができた本がこれ。まだまだ難しいし、わからないことは多いんですが、この本で「最低限の基礎」みたいなことが少し理解できたものでした。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC013『コンヴァージェンス・カルチャー』
今回は『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』について。『コンヴァージェンス・カルチャー』原題『Convergence Culture:Where Old and New Media Collide』Convergenceは、「一点に集まること」のイメージ。集約する、集合する、収斂する、収束する。Collideは、「ぶつかる、衝突する」のイメージ。新旧メディアがどこで衝突するのか。これは二つのニュアンスがあり、「どの場所で出会うのか」と、「どの利害でぶつかり合うのか」という二つの観点が含まれていると感じる。著者ヘンリー・ジェンキンズ南カリフォルニア大学教授。コミュニケーション&ジャーナリズム研究科、映画芸術研究科、ならびに教育研究科で、デジタル時代の参加型文化やファンダム、若者教育などを教えている。同校着任以前はマサチューセッツ工科大学(MIT)にて比較メディア研究プログラムを立ち上げ、ディレクターを長らく務めた。注意点原著は2006年であり、現代から見て最新の話題を扱っているわけではない。また、メディア研究の事例が基本的にアメリカなので、日本と合わない部分も当然出てくる。その点は留意が必要。主要なテーマインターネットが登場して、メディアが変化した。双方向になっただけではなく、これまで単なる受信者であった人々が発信者としての役割も担いはじめた。その変化によって、単に古いメディアが死に、新しいメディアが台頭するという単純な変化ではなく、コンテンツがどのように流通し、生産され、消費されるのか、そして利益をどのような形で作っていけばいいのか、というメディアを取り巻く全体像に大きな変化が訪れている。その変化は、拒絶しようと思ってもできるものではなく、考えられるのは「それとどう付き合うか」だけであろう。本書では、実際のメディア研究をベースにしながら、いかなる行動が情報の送り手(トップダウンの主体者)と情報の受け手(草の根の実践者)の間で生まれていたのかを考察している。2006年からみた「新しいメディア」との付き合い方を考える上で非常に示唆に富むであっただろうし、現代においても示唆に富む内容ではある。コンバージェンスの転換一つの端末にあらゆるコンテンツが集まるという意味での「コンバージェンス」ではなく、メディア企業がコングリマットになったり、一つのコンテンツがさまざまなプラットフォーム&流通ルートを持ったり、コンテンツのもとに多様な視聴者が集まったりするような、ある種の多様性が生まれる状況が「コンバージェンス」であると、見方の転換が提示されている。実際のメディアの状況から言っても、この見立ては極めて正しいと言える目次* イントロダクション「コンヴァージェンスの祭壇で祈ろう」* 第1章 『サバイバー』のネタバレ* 第2章 『アメリカン・アイドル』を買うこと* 第3章 折り紙ユニコーンを探して* 第4章 クエンティン・タランティーノの『スター・ウォーズ』?* 第5章 どうしてヘザーは書けるのか* 第6章 民主主義のためのフォトショップ* 結論 テレビを民主化する? ──参加の政治学* あとがき ──YouTube時代の政治を振り返る倉下の見立て日本では「メディアミクス」という考え方がもうあたり前であり、さらには情報の受け手を巻き込んだコンセプトも珍しくなくなっている。その意味で、本書が描いたレールは、たしかに現代にまで続いていると言える。言い換えれば、現代の「あたり前」がどのように生まれてきたのかを巡る旅にも本書はなる。一方で、現代のインターネット with メディアが全般的にうまくいっていない部分もあり、一体そこで何が損なわれてしまったのかを考える起点にもなる。その意味で、『遅いインターネット』や『ゲンロン戦記』などと合わせて読んでもよさそうである。最後にはそうしたメディアが民主主義→社会にもたらしうるインパクトも考察されているのだが、やはりこの点も現状は厳しいと言わざるを得ない。むしろゲームの中ですら「政治」や「社会」を体験する場が減っていると感じられる。この点は、おそらく目に見えている状況よりも、一段深いところに問題があるのだろう(日常の中から、政治的な煩わしいものが徹底的に排除されつつある、ということだと思われる)。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC012アフタートーク
今回は、はじめて「ゲストの方に来ていただいて、その人に本を紹介してもらう」という形でした。3人でPodcast、というのもほとんど経験がなく、なかなかにチャレンジングなものではありましたが、結果として「いつもと違う感じのもの」が作れて、良い刺激になりました。個人的には、よく名前をきいていて、でも良くわかってなかった「フリーライティング」というものについて本編中に話が聞けたおかげで、これに刺激を受けて「書く練習」という行為についてよく考えています。機会があればまたゲストの方に登場していただく、ということもやってみたいと考えているので、自薦、他薦問わず、リクエストなどあれば #ブックカタリストでツイートしていただくか、コメント欄などにコメントをよろしくお願いします。メールで届いている方ならば、このメールに返信していただくことでもご連絡いただけます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
ゲスト回BC012『思考のエンジン』
思考のエンジン オンデマンド (ペーパーバック)ゲストはTak.さん。* Twitter:@takwordpiece* Blog:Word Piece* Amazon著者ページ『思考のエンジン』について著者は奥出直人さん。青土社の思想系雑誌『現代思想』の連載を書籍化したもの。同じ著者の本に『物書きがコンピュータに出会うとき―思考のためのマシン』もあるが、こちらは入手が若干難しい。目次は以下の通り。* 思考の道具としてのタイプライター* ライティング・エンジンとしてのワードプロセッサー* エクリチュールとライティング・エンジン* パレルゴンとエルゴン* 論理的ディスコースのダイナミズム* コンピュータ上のソクラテス―「ソウトライン」を使う* 情報を俯瞰する装置―アウトライン・プロセッサーを使う* プロセスとしてのテクスト* 迷宮としてのデータベース* 補遺の連鎖とハイパーテキスト―ハイパーメディア・ライブラリーとライティング* 思考のエンジンとしてのハイパーテキスト* マニエリスムとアカデミズム今回は主に前半部分に関してお話いただきました。タイプライター的思考『思考のエンジン』にはこうあります。タイプライター的思考とは、タイプライターをペン代わりに使う思考のことではない。タイプライターを含む一九世紀末的な効率と生産性を可能にする思考を意味している。部分をつなぎ全体を考え、資料はファイルにきちっと整理され、巨大な辞書が備えられている、そんな環境がタイプライター的思考の場所である。つまり、物事をきわめてシステマチックに進めていくアプローチであり、それをエンハンスするのがタイプライターという機械です。もう一ヶ所引用します。また、書くという問題を考えるとき、全体の統一性を考えながらばらばらな部分を寄せ集め、つないでいくタイプライター的思考の限界についても考えておく必要がある。人間の思考はもっと複雑なものである。これらの記述でなんとなくタイプライター的思考の輪郭線が見えてくるでしょう。タイプライターからの逸脱では、タイプライター的思考ではない思考(およびそこに付随する執筆)とはどのようなものでしょうか。以上の手書きのエクリチュールにこだわる作家の意見をまとめてみると、書くという作業を創造的な行為とみなし、分かりきった意識を前もって準備した構造に合わせて説明するのではなく、明確に意識化できていないことを書くという作業、すなわちエクリチュールによって意識化しようとしていることが分かる。さらに、一度書き上げた原稿を推敲して仕上げていく楽しみも強調している。おおむねここが一番の力点でしょう。でもって、シェイクに象徴されるTak.さんが提示されるプロセスが強調しているのもこのような行い(あるいは営み)です。あらかじめ構造をしっかり作りそこに向かって書いていくことは、「分かりきった」ことを扱う行為であり、「明確に意識化できていないことを書くという作業」──つまり、発見や創造とはひどく違っていて、そしておそらく楽しみも少ないのではないか。そのような疑問を『思考のエンジン』を読んでいると感じられますし、まさにその問題意識を持ってTak.さんの著作を読んでみると、「なるほど、そういうことか」と腑に落ちることが多く出てきます。なので、Tak.さんの本を好ましいと感じる方ならば、よりディープに踏み込むために『思考のエンジン』はぜひとも読んでみたいところです。難しい言葉とは言え、この本は一筋縄ではいきません。すでに登場していますが、「エクリチュール」も知らないと意味が取りづらいですし、「パレルゴン」やら「ヘゲモニー」やら各種哲学者の用語がばんばん登場します。文章自体は晦渋ではないのですが、用語の感触を把握していないと、「うっ」と気後れする部分は間違いなくあります。それを乗り越えるのが知的トレーニングである、というといかにもマッチョな発想にも思えますが、それでも自分が知らない世界から流れ込んでくる空気を一度胸いっぱい吸い込んでみるのは悪くない体験です。それに用語がわからないからといって全体の意味が汲み取れないこともありません。ですので、そういう本だと思ってチャレンジされると良いでしょう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC011 アフタートーク&倉下メモ
『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』倉下メモ話を聞いている間、ずっと「そうだよな〜」という思いでいっぱいの回でした。納得fullな一冊。でもって、ちょうど倉下が今書いている本も「書くことを通して考える」ことの大切さに言及しているので、重複感がハンパなかったです。本書が提示する学び方に関しては、『独学大全』や『How to Take Smart Notes』も類書としてあげられると思います。あと、今井むつみさんの学習に関する本も同様のことを論じています。結局、自分の手を動かし、頭を動かさないと前には進めない、という点では、『妄想する頭 思考する手』にも通じるものがあるかもしれません。ちなみに、本書がKindleでセール対象になっていたので、倉下もさっそく買いました。また読んでみたいと思います。次の本の候補『実力も運のうち 能力主義は正義か?』最近話題の本。サンデルさんの本は以前も取り上げたので、その流れとして(あるいは話題に乗っかっていく意味で)。『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』『ゲンロン戦記』や『ヒューマン・ネットワーク』などで、「あるグループを作るとはどういうことか、インターネットでいかにそれを実践するのがよいのか」という問題意識が出ているので、その流れで買った本です。かなり分厚いのでなかなか手ごわそうですが、次回の倉下のターンはこちらにしようと思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第11回の本日は『Learn Better』について語ります。今回の本は、副題が「頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ」というもの。本書では、この6つのステップそれぞれに1章ずつ割り当て、それぞれの要素を深掘りしていきます。人は、短期記憶が少ない6つのステップを順に解説するよりも何よりも、本書を読んで1番のキモであると私が感じたのが「人は、短期記憶が少ない」ということ。この事実が、この本で出てくるありとあらゆる「学びが深まる方法」と繋がっています。そもそもの「6つのステップ」すら、1回でスムーズに覚えることはほとんど無理。人間の短期記憶というのはその程度のものであり、これを長期記憶へと変換する行為こそが「学びが深まる」ことを意味しているとも言えます。学びが深まる6つのステップ一応念のため6つのステップを書いておきます。* 価値を見出す* 目標を決める* スキルと知識を伸ばす* 発展させる* 関連付け* 再考する目を瞑ってこの6個をすぐに暗唱できるか確かめてみると、自分の短期記憶がどんなものなのか理解しやすくなるかもしれません。もちろん「覚えておくことだけ」に全力を注げば、この6つを覚えるだけならば無理ではないと思いますが、もちろんこれを丸暗記したところで「学びが深まる」わけではないし「頭の使い方が変わる」とは思えません。以下の3つを意識して行動する上記6つのそれぞれについての内容は、本を読んでください、Podcast聴いてみてください、という感じなのですが、チャチャッと要点だけ知りたい方向けにまとめると、以下の3つのことを意識する(&行動する)というのが重要なことだと考えます。* 自分の言葉で書く* 1つずつ確実にやっていく* 間隔を空けて何回もやるこの本、何回も色んなところで語ってるんですが、とにかく言ってることは「ごもっとも!!!」ということの連発。全然知らなかった!みたいな驚きはほとんどないんですが、それでも自分がこれまでブックカタリストで紹介してきた中で一番影響を受けた本です。ひょっとしたら人生で一番影響を受けた本、くらいになるかもしれないという、噛めば噛むほど味が出る本です。自分がこれまでブックカタリストで話した中でも一番面白い話ができたと思うし、これまで紹介した中で一番読んでみてほしいと思う本です。そして、読んだ本について「自分の言葉で書く」是非ともそこまで試してみて欲しいと思います。Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ🌱読んだ本の内容を「ずっと使えるノート」としてまとめる - ナレッジスタック This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC010アフタートーク 贈与を受け取ってしまったら語りたくなる
ブックカタリスト収録後のフリートーク&次回の本をどうするか、の打ち合わせトークです。アフタートークで出てきた本のリストもこちらでご紹介します。じわじわ効いてくるラーンベターいろんなところで何回も話しているんですが、最近とにかく『ラーンベター』から影響を受けたことが多いです。どれもこれも書いてある内容は「普通」の、それは確かにそうだよね、ってことばかりなんですが、あらゆることが「確かにそうだ」と感じる。ここまでブックカタリストで紹介してきた本の中で一番「あらゆることがつながるようになった」本です。遺伝子ブックカタリスト007 『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』 - ブックカタリストこれを読んでから生命科学に興味が出てきて、新しくこの本を読み始めました。前半は、簡単で面白いけど、だんだんわからんことが増えて難しくなってきています。フィンガードラム入門ブックカタリストも10回続き、ちょっと毛色が違うものもありなのではないか、というところで思い出した「本」これも紹介するのもアリかもね、なんて話してましたが、結局ボツ(というかラーンベターを紹介したい)ここで話してて、自分には「ゲームや音楽を公開したい意欲がない」これは何故だろう、と考えたときに今回の『世界は贈与でできている』と繋がって、自分は「受け取った贈与を返したい」が情報発信欲求の根底にあることがわかったのでした。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC010『世界は贈与でできている』
今回は『世界は贈与でできている』について。副題:資本主義の「すきま」を埋める倫理学著者:近内悠太(ちかうち・ゆうた)1985年神奈川県生まれ。教育者。哲学研究者。慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了。専門はウィトゲンシュタイン哲学。リベラルアーツを主軸にした統合型学習塾「知窓学舎」講師。教養と哲学を教育の現場から立ち上げ、学問分野を越境する「知のマッシュアップ」を実践している。デビュー著作となる本書『世界は贈与でできている』(NewsPicksパブリッシング刊)で第29回山本七平賞・奨励賞を受賞。倉下が見た本書のテーマ資本主義に抗する倫理学* 「お金では買えないもの」を語る言葉を求める。贈与とは何か──現代的な意義の確認* 贈与の原理を見出す。ピックアップキーワード* 贈与論 (マルセル・モース)* 贈与* “お金で買うことができないもの、およびその移動”* エマニュエル・レヴィナス/内田樹* 贈与の失敗としての『ペイ・フォワード』* デリダの誤配(「行方不明の郵便物」)* 贈与の象徴としてのサンタクロース* レヴィ=ストロース『火あぶりにされたサンタクロース』* ウィトゲンシュタインの言語ゲーム* 小松左京のSF* 想像力* 逸脱的思考と求心的思考* アンサング・ヒーロー概要人間は社会的な動物として(他者の存在を前提として)進化してきた。しかし、資本主義=交換の理論は他者の存在を必要としない。その理論は、自分もまた他者から必要とされないことを意味する。一方で、贈り物はそのような交換の理論には当てはまらない。経済学はこの贈与を語るための言葉を持たない。では、その言葉とは何なのか。「お金では買えないもの」という否定の表現ではない言葉を本書は探究する。贈与は、非時間的な交換とは違い、時間的な要素を生み出す。それはつながりを生み出すということ。しかし、贈与であるかのように見える親から子への呪いもある。その呪い性は「これは贈与である」と告げられることで発生してしまう。つまり、贈与とは贈与としての名乗りを持たないものでなければならない。贈与だとラベル付けされない贈与は、受け取った者が、その「意味」に後から気がつくことで成立する。そして、「意味」を扱う行為は、言語であり、コミュニケーションである。哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、言語活動をゲームとして捉えた。言語の「意味」を、特定のゲームにおける機能として理解せよ、という主張である。そうしたゲームを念頭に置かず、ただ「意味」だけを議論しても詮無いことである、と。私たちは言葉を扱うとき、何かしらのゲームに参加している。私たちの日常は、何かしらのゲームの内側で行われている。「意味」はそのゲーム内で規定される。ここで、贈与という行為の「意味」に後からが気がつく、という話に返ってみる。贈与は、名乗りを持たずに行われる。よって、私たちは通常であればその行為に気がつかない。しかし、自分が参加しているゲームにおいて、どうしても説明のつかない行為が目に入ったとしたら? そのような異物を本書ではアノマリーと呼び、その性質こそが「あれは贈与だった」と気がつける起点になると述べる。資本主義=交換の理論が支配的な中で暮らしている私たちにとって、明らかに異質に見える行為はそれだけで「目を引く」。そこから想像力が働けば、「あの行為は贈与だったのだ」と気がつくことができる。名乗りを持たないものの価値を、見出すことができる。→価値とは見出されるものであるそのとき、私たちは「すでに受け取ってしまったもの」となり、負債を背負って生きていくことになる。その負債感は、資本主義=交換の理論ではどうしても説明のつかない行為を引き起こし、それがまだ別の誰かにとっての贈与となり、世界は贈与で埋め尽くされてく。本書のポイントは、贈与とは「贈与として贈られたもの」を指すのではなく、後から振り返ったときに「あれは贈与だったのだ」と思えるものが贈与になる、という物の見方のシフトである。そのシフトを経験すれば、この世界そのものが、「あれは贈与だったのだ」と思えるもので満ちてくる。本書のタイトルが示すものは、おそらくそういういことだろう。これはただ受動的に生きているだけでは、贈与は見つからないことも意味する。贈与を見つけるための、違和感に気がつくための、そこから行為について想像するための、ある知的な能力が必要である。もし何かを教養と呼ぶならば、そうした能力こそがふさわしいと言えるだろう。関連コンテンツ* 映画『ペイ・フォワード』* 『それをお金で買いますか?』* 『火あぶりにされたサンタクロース』* 『復活の日』* 『存在論的、郵便的』* 『ゲンロン戦記』 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC009 アフタートーク&倉下メモ
『妄想する頭 思考する手』(暦本純一)倉下メモ本書の妄想とは何か。たとえば、「被害妄想」のようなネガティブなものではない。今この社会には存在していないものであり、それを他者に語ると「はあ?」とあきれられるくらいに今の価値観から乖離してしまっているもの、というくらいのニュアンス。他人に語ったときに、「ああ、それって便利だよね」と共感されるならば、既存のものの改良でしかなく(それはそれですごいわけだが)、イノベーションには至れない。言い換えれば、そのときの価値観を書き換えてしまうようなプロダクトこそがイノベーションと言える。私たちは自分が持つ価値観=世界観=パラダイムをフレームにして物事を考え判断するので、それが世間様と完璧に合致するならば、新しいものは何も生まれてこない。逆に世間様と完全に違っているなら話が通じない。だからこそ少しだけ「ズレ」ているものを思いつく価値観は貴重である。「はあ?」とあきれられる妄想を抱けるのは一つの希有な力なのだ。日本の画一的な教育と、単一指標による評価は、そうした希有な力の持ち主を貶め、規格化しようとする点でイノベーティブな芽を刈り取っているのではないか、とまでは本の中で直接書かれていないが、そういうニュアンスは受け取れる。すごく良かった箇所の引用同じようなアイデアは、自分以外にも思いつくことができる。でもその妄想を阻む壁を乗り越えられるのは自分しかいないかもしれないし、乗り越え方に自分らしさが出せるかもしれない。そう思うと、一回やってみて失敗するぐらいのほうが、やり甲斐のある面白いアイデアのように思えるのだ。失敗が重要なのは、それが「自分が取り組んでいる課題の構造を明らかにするプロセス」だからだ。次の本の候補『世界は贈与でできている』『クララとお日さま』 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC009 『妄想する頭 思考する手』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第9回の本日は『妄想する頭 思考する手』について語ります。著者は、東京大学大学院情報学環教授、ソニーコンピュータサイエンス研究所フェロー・副所長という肩書きを持つ、いわゆる研究職での最強エリートとも言える暦本純一さんの「アイデアの作り方」について書かれた本。iPhoneの誕生に大きくヒントを与えたとされているマルチタッチシステムSmartSkinの発明者でもある著者が語った本というだけでも、注目に値する書籍だと言えます。とは言え内容的にすごく難しいことが書かれている本というわけではなく、書かれている言葉も、コンテンツ自体も素直で読みやすいものです。少なくともごりゅごがブックカタリストで紹介してきた本の中では、今までで一番素早く読み終えることができた本でした。妄想と言語化じゃあすぐに読み終えることができたから簡単な本なのか、というと決してそういうわけでもなく、ちゃんと紹介しようと思うと無数の読みどころがあり、逆に紹介しようと思っても仕切れない、という感じの本でもあります。例えばごりゅごが一番影響を受けたのは「それはなにか」ということを1行で説明するクレームというものの重要性。(日本語でクレーム、というと「文句をいう」と言うニュアンスがあるが、Claimは英語では「主張」という意味を持つ)クレームというのは検証できる、決着が想定できる形で書かないといけないし、高機能、次世代、効率的、効果的、新しいというような正しいけれど曖昧な表現はダメ。この本では「クレーム」というのはアイデアに対してのこととして書かれていますが、これはいくらでも自分のことに応用できるな、と思いいろんなことを考えています。たとえばこのブックカタリストにしても、1行で、人が興味を持ってもらえるようにするにはどう言う説明がいいだろうか、みたいな感じ。人間が作る妄想の未来から希望と楽しさまたこの本は、ごりゅごが前回紹介した『2030年』とある意味で同じ「未来について語った本」でもあるんですが『2030年』に比べてなんか未来、というのが明るく楽しい、夢と希望に満ち溢れる気持ちにさせてくれる本でもありました。ブックカタリスト007 『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』 - ブックカタリストこれは、一体何が違うんだろう、というようなこともPodcastの中で語っていたりもするので、是非ともPodcast本体の妄想トークも一緒にお楽しみ下さい。参考リンクHuman Augmentation人間拡張のScrapboxNeil Harbisson: ニール・ハービソン:「僕は色を聴いている」 | TED Talkカメラを人体にくっつけた人のTEDトーク。「人間拡張」というものが人間の感覚まで変えうる、という体験を語ってくれていて、非常に面白い。妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方 (単行本) | 暦本 純一 |本 | 通販 | Amazon This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
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