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goryugo 161 Episodes
goryugo
倉下忠憲
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面白かった本について語るポッドキャスト&ニュースレターです。1冊の本が触媒となって、そこからどんどん「面白い本」が増えていく。そんな本の楽しみ方を考えていきます。

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BC042『超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解』

BC042『超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解』

Jul 19, 2022 1:05:51 goryugo

今回取り上げたのは、『超没入 メールやチャットに邪魔されない、働き方の正解』。タイトルはノウハウ書っぽい響きですが、実際は「デジタル時代のナレッジワークに必要なこと」を提言する一冊です。書誌情報* 著者:カル・ニューポート* 翻訳:池田真紀子* 原題:『A World Without Email: Reimagining Work in an Age of Communication Overload』* 出版社:早川書房* 出版日:2022/5/24概要大きく二つの部で構成されている。第一部は「メールが持つ問題」が指摘されるが、別段電子メールを使わないようにしようと著者は主張したいわけではない。そうではなく、メールによる常時接続性、不要なタスクの発生、返信しなければならないという心理的圧力が、働き手のポテンシャルを抑えてしまう点を問題視している。電子メールはあっという間に、私たちの「仕事」に入り込んだが、電子メールがどのような機能を持ち、私たちのワークフローにどのような影響を与えるのかがそれぞれの職場で検討された後はあまりうかがえない。むしろちょっとした会話はおしゃべりの代替として「するっと」入り込んできた、というのが実態に近いだろう。そんな運用では、いずれ破綻するのは目に見えているし、運用を変えないままにツールを替えたとしても状況は変わらず、むしろ悪化することも懸念される。電子メールを起点とした、「注意散漫な集合精神」はナレッジワーカーにとって百害あって一利くらいしかない(メールはなにしろ手軽なのだ)。その百害を理解した上で、変化を呼び込んでいかなければならない。そこで第二部では、どのようなワークフローを構築していけばいいのかについての原則が四つ示される。注意資本の原則知識産業の生産性は、人間の頭脳が持つ、情報に継続して価値を付け加える能力をこれまで以上に最適に活用できるようなワークフローを確立することにより、大幅な向上を望める。工程(プロセス)の原則洗練された生産工程のナレッジワークへの導入は、業績を大幅に向上させるとともに、ストレスを軽減する。プロトコルの原則職場で業務の調整をいつどのように行うかを最適化するルールの設計は、短期的には労力をようするが、長期的にははるかに生産的な行身という成果を生む。専門家の原則* ナレッジワークでは、取り組む仕事の数を減らし、一つひとつの仕事の質を上げて結果に責任を負うことが、生産性を大幅に向上させるための土台になりうる。また、「効果的な生産工程に共通する特徴」として以下の三点を挙げる。* 作業ごとの担当者と進捗を容易に確認できる。* 散発的なコミニケーションが最小限でも作業が進む。* 工程の進行に合わせて担当者を更新する際の手続きがあらかじめ決められている。さて、皆さんの職場(あるいは自分の働き方)において、これらの原則や特徴はどの程度備わっているだろうか。もし備わっていないとしたら、何をどう買えれば、働き手が自らの注意を活用できるようになるだろうか。などと、考えるフックがたくさん含まれている本である。シン・ドラッカー私はドラッカーが大好きなので、著者が本書内でドラッカーをやや批判的に取り上げようとしているのを感じて、「ほほぅ、お手並み拝見」と挑発的な感じで読み進めていたが、著者の指摘は至極もとっともなものであった。ようは、知識労働者の「仕事の仕方」は管理者がコントロールすることはできないが、しかしすべての裁量を与えなければいけない、というわけではなく、むしろそうすると全体の生産性が下がってしまうことが十分に起こりえる、という点だ。「業務の遂行とワークフローを区別する」と著者は述べる。この場合の「業務の遂行」が、いわゆる知識労働者の領分であり、マネージャーが口出しすべきないものだ。アイデアを考えるのに、紙を使ってもいいし、散歩してもいいし、雑談してもいいし、本を読んでもいい。そんなことをいちいち管理するのは筋が悪い。一方で、組織の中で仕事がどう流れていくのかについては、マネージャーが全体的な視点で統括した方がいい。むしろそれがマネージャーという「知識労働者」の仕事であろう。こうした区別を設けるだけで、仕事の見通しはぐっとつきやすくなるだろう。でもってこれは実はフリーランスにおいても言えることだと思う。たとえば倉下は、「一冊の本を書き上げる」という行為をテンプレート的に進めていくことは毛嫌いするが、かといって一日のタスクをどう割り振り、進めるかということまで非管理的になってしまったらすぐさま破綻する。これまでこの二種類の異なる進め方をどう考えれば整合性を持たせられるかを考えていたが、上記のように捉えればずいぶんとスッキリする。書き手の私と、マネージャーの私は「異なるやり方」で仕事(執筆/マネジメント)に向かえば良いのだ。というわけで、基本的には組織の仕事向けの話ではあるが、もっと広く「ナレッジワークをどうデザインすればいいのか」という大きな視点で問題提起が為されている本である。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC041 『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』

BC041 『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』

Jul 5, 2022 1:11:12 goryugo

今回の本は、なんだかこれまで紹介してきた本を全部まとめて一冊にしたかのような、すごくいろんなことが「THINK AGAIN」という一つのテーマにまとめられた本でした。個人的には書いてあったことはだいたい知ってたことではありました。ただ「ブックカタリストで紹介した本から一冊だけお勧めを選べ」と言われたら『独学大全』かこの『THINK AGAIN』を選ぶのではないか、というくらい網羅性が高い本でした。ざっと思いつく範囲で、以下の回で語った内容と大きく関連した話が出てきます。* BC037『現代思想入門』 - by 倉下忠憲@rashita2 - ブックカタリスト* BC036『CONFLICTED 衝突を成果に変える方法』 - by 倉下忠憲@rashita2 - ブックカタリスト* BC030 『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』 - by goryugo - ブックカタリスト* BC029『NOISE: 組織はなぜ判断を誤るのか?』 - by 倉下忠憲@rashita2 - ブックカタリスト* BC023 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 - by goryugo - ブックカタリスト* BC014 『How to Take Smart Notes』 - by goryugo - ブックカタリスト* BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 - by goryugo網羅性だけでなく、本の中に出てくる事例は素晴らしいものが多く、本編でも長々と語った「学習」についてのエピソードは、様々な場面に応用できそうな素晴らしいものでした。「再考」というものがベースのテーマにあるんですが、たとえば「決めつけてはいけない」(バイナリーバイアスに気をつける)だとか「リレーションシップ・コンフリクトとタスク・コンフリクト」という2種類の人間関係の衝突についてなど、事例や考え方に対する名付けの上手さも注目できる内容でした。たくさんの理由を連ねるより一つだけの理由の方が効果が高い、なんていうのもなかなかに興味深い話。1冊で450ページもあって、正直これは「長いわ」とは思うんですが、それでも10冊分くらいのブックカタリストで紹介してきた本の中身が凝縮されてる、と考えれば長くはないと言えるのかもしれないです。(これまで紹介してきた本を全部読まれている方であれば、興味深いところだけ読むような読み方で十分だとも言えます) This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BCB040『脳は世界をどう見ているのか 知能の謎を解く「1000の脳」理論』

BCB040『脳は世界をどう見ているのか 知能の謎を解く「1000の脳」理論』

Jun 21, 2022 1:04:02 goryugo

今回は、『脳は世界をどう見ているのか 知能の謎を解く「1000の脳」理論』最近読んだ脳関係の本では抜群に面白い一冊でした。書誌情報* 著者* ジェフ・ホーキンス* 神経科学者でりながら、起業家でもあるいかにもアメリカっぽい人。1992年にパーム・コンピューティングを設立して、「パームパイロット(PalmPilot)」を開発したすごい人でもある。* 翻訳者* 大田直子* 出版社* 早川書房* 出版日* 2022/4/20ちなみに、序文はあのリチャード・ドーキンスが書いている。構成大きく三部立て。第一部は「1000の脳理論」(座標系理論)について。第二部は機械知能について。第三部は脳と知能から見る人類の未来について。及び遺伝子 VS 知能の構図。実際の目次は、以下の通り。目次 序文(リチャード・ドーキンス) 第1部 脳についての新しい理解  第一章 古い脳と新しい脳  第二章 ヴァーノン・マウントキャッスルのすばらしい発想  第三章 頭のなかの世界モデル  第四章 脳がその秘密を明かす  第五章 脳のなかの地図  第六章 概念、言語、高度な思考  第七章 知能の一〇〇〇の脳理論 第2部 機械の知能  第八章 なぜAIに「I」はないのか  第九章 機械に意識があるのはどういうときか  第十章 機械知能の未来  第十一章 機械知能による人類存亡のリスク 第3部 人間の知能  第十二章 誤った信念  第十三章 人間の知能による人類存亡のリスク  第十四章 脳と機械の融合  第十五章 人類の遺産計画  第十六章 遺伝子VS.知識 おわりに 脳科学、あるいは認知科学の話題としては第1部がすこぶる面白い。AIの現状と未来については第2部で展開され、SF的な「人類が進む道とは?」という大きな問いが提示されるのが第3部。どれも面白い。「1000の脳」理論本書に登場する「1000の脳」理論について簡単にまとめる。まず、脳は増築された建物のように、(進化的に)古い部分の上に新しい部分が作られている。しかし、新皮質と呼ばれる高い知性を司ると言われる部分は、少し構造が異なっている。その全体が「似たような構造」ででき上がっているというのだ。視覚を司る部分と、聴覚を司る部分は「結構似ている」(もちろん、違いもある)。そのように同じものを大量に作るならば、進化的に長い時間は必要ない。コピペで作っていける。そのような大量の似た脳の部分(コラムと呼ばれる)が、さまざまな機能を担当している。しかし、その機能は「刺激に反応して運動を起こす」という単純なものではない。そうではなく、新皮質は「予測」をしている。こういう動きをしたら、こうなるだろうと予測し、実際にその通りになっったときに、非常に素早く行動を起こせるようになっている。そのような状態は進化論的に適応であろう。その予測を支えるのがモデルである。世界についてのモデル。「こうしたらこうなる」という理路があるからこそ、予測が可能となる。モデルなしでは予測はできない。私たちの脳は、常にそのモデルを学習している。適切に予測するために。そのモデルが「座標」を使っている、というのが本書の大きな胆。座標があるからこそ、多様な動きに応えるモデルが構築できる。この座標は物理的な存在の理解だけでなく、概念的なものの理解にも関わっている。私たちの概念的なものの学習においても「座標」が重要だ、という点からいろいろなことが考えられるだろう。改めて知能とは?私たち人間は、知的生命体である。生きている限り、私たちの脳は外界について学習し続けている。生きている限り、変化が起こりうるからだ。脳は学び続ける。よって知能とは、「変化し続ける世界に対応する能力」だとプラグマズティックに定義することもできるだろう。今「独学」が盛んであるが、そのように「強いて」行わなくても、脳は学習しているのだ。勉強が不得意だといっても、大きなスーパーに何度か通えば配置を覚えるし、人の性格なども把握するし、何をしたら起こられるのかも学んでいく。人間は学ぶ動物なのだ。その意味で、「生きる上で特別に必要というわけではないことを学ぶ」というのが"人間"にとっての学習であり、引いてはそれこそが「贅沢な学び」であるとも言えるだろう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC039「現代のインターネット環境と退屈の哲学」

BC039「現代のインターネット環境と退屈の哲学」

Jun 7, 2022 1:16:54 goryugo

今回は三冊の本を紹介しました。* 『退屈とポスト・トゥルース SNSに搾取されないための哲学 (集英社新書)』* 『暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)』* 『何もしない』書誌情報はAmazonなどで確認してもらうとして、話の要旨をまとめておきます。導入なぜ「退屈」に注目するのか?「どう生きるのか」とは、「どう時間を使うのか」にパラフレーズできる。そして現代では「有意義なこと」に時間を使ったほうが言い、という風潮がある。でも、はたして本当にそうなのだろうか。そんな天の邪鬼な観点から「退屈」に注目する。一つの前提として、この社会は「資本主義」にどっぷり浸かっており、それ以外の社会をうまく想像できなくなっている、という点がある。ITツールやネットメディアは私たちに「環境」を提供してくれているが、それが「正しい」のか(あるいは適切なものなのか)は、判然としない。むしろ、あまり良くないのではないか、という懸念も多い。その観点も含めて、退屈の哲学を用いて考えていきたい。『退屈とポスト・トゥルース SNSに搾取されないための哲学 (集英社新書)』簡単にまとめれば、これまでの「退屈の哲学」を振り返りながら、現代に特有の「退屈」状況を考察し、その問題点を指摘する一冊。ポイントは、退屈にいくつかの区分を設定したこと。* 哲学の起源としての退屈* 精神分析的退屈* 政治的退屈* 「創造的」退屈* ネオリベラル的退屈一番最後の」「ネオリベラル的退屈」は、著者が本書で設定した用語。その中核をなすのが「インターフェース」という概念。IT用語としては一般的だが、著者は「入り口(しかないもの)」という含意で用いている。人を誘い込む入り口でありながら、そこからはどこにもいくことができない。人はその場所に留まり続けることになる。TwitterやYouTubeなどでも、特に何かを見たいわけではないのに、延々とスクロールしているときがある。そうしたとき、私たちはネオリベラル的退屈にはまりこんでいる。その退屈は、実際は「手持ちぶさた」なわけではない。何かをしているし、ちょっと興奮もしている(ドーパミンが出ている)。しかし、深い満足感も納得感もそこにはなく、むしろ少しのいらだちや妬みが心に忍び込んでくる。それを解消するために、再び新しい投稿を求めてスクロールしたり、いらないものをスワイプで消したりしていく。まさに現代的な「退屈」の在り方であり、そういう退屈に入り込んでいるとき、「退屈とは何か」「自分とは何か」「人生とは何か」という(哲学的な)問いに人は向き合うことがない。その意味でも、「どこにも出口がない」退屈である。『暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)』今回の中核をなす本で、面白いのでぜひ読んでいただきたい。著者はさまざまな考察を繰り広げるが、一番のポイントはハイデッガーの退屈論を引き受けながらも、それをさらに展開させている部分。ただし、そこに至るまでに「退屈」に関する前提をいくつか押さえておく必要がある。* 人類は最初移動していたが、途中から定住するようになった* 移動する生活では毎日新しい風景に出会い、認知的処理を行わなければならなかったが、定住生活ではそれが不要になった* つまり、定住生活では認知エネルギーが余ってしまう→退屈が感じられる* 私たちは「退屈」を気晴らしでやり過ごそうとする* 気晴らしは熱中できるものであれば何でも構わない(苦しいものであっても人は選択する)* むしろ、楽しいものを選ぶためには訓練された能力が必要かもしれない* かつての有閑階級はそうした能力を持っていた(暇はあるが退屈ではない生き方があった)* そうした能力を持たない人は、苦しいものを選ぶしかなくなる* ただ、どちらにせよどんな気晴らしも効果がない根源的な退屈がある* 「なんとなく退屈だ」がそれだ* それは根源的であるがゆえに気晴らしでやり過ごすことはできず、私たちはその問いに直面せざるを得なくなる* そこから哲学的な思考が始まる* だから、そうした退屈を通り抜けて決断せよ、それが人間が自由であることだとハイデッガーは言った* しかし、著者はその点を問題視した上で、さらに退屈についての論を深めていくここからの展開が非常にスリリングである。環世界と人間の自由の話も面白いので通読されたし。『何もしない』時間の関係であまり取り上げられなかったが、本書も非常に面白く、「奇妙」な一冊。「何もしない」というタイトルであるが、本当に何もしないことを(つまりサボタージュを)進めているわけではない。ある種の「効果的」な行為を行わない、というくらいのニュアンス。結局のところ「効果的」とは、ある基準で測定可能な行為であり、そういう単純な行為は容易に資本主義にとらわれてしまう。だからこそ、「何もしない」。意義ある行為をしないことで、結果的に意義ある行為にたどり着く、というちょっと禅的な感じもある。「生産性」ばかりを求めると、私たちは失敗する。考え方が単純化し、二項対立にとらわれてしまうからだ。だから、そこから距離をとる必要がある。資本主義に投げやりになるのではなく、かといってそのゲームに従順になるわけでもない。資本主義の中にいながらも、その外を想像できるようになるために。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC038 『悪い言語哲学入門 』

BC038 『悪い言語哲学入門 』

May 24, 2022 1:00:32 goryugo

今回の本は、ブックカタリストで語ることで、ようやく全体が理解できた、という感じでした。まさに「話すことで頭が整理できる」「アウトプットが理解のための最善の方法である」というのを実感した本です。「言語哲学」と言われる、20世紀初めに起こった哲学の中でも比較的「新しい」哲学でしかもわりと「細かい」「厳密」な分野でもあるので、ざっくりと理解する、イメージするというのが難しい、ということもあるかもしれません。とは言え「言語行為論」だとか「表出型の言語行為」「真理条件的内容」みたいな難しい言葉が、最後のキレイに回収されていく流れは実に見事で、いろいろ難しい言葉がいっぱい出てきたのはこのためだったか!という納得感が高く、満足して読み終えられました。『悪い言語哲学入門 』今回の本では(全部を上手に説明できる気がしないので)テーマを絞って、主に本書の5章にある「言語行為論」と、7章の「総称文」について話しました。惣流・アスカ・ラングレーの言う「あんたバカぁ?」は言語行為としてどういう行為なのか。真面目なんだか不真面目なんだかわからないこの視点が大変素晴らしく、エヴァンゲリオンを新しい視点で楽しむためにも哲学が使える!というのは哲学を一般に広げていくにはすごく重要な視点に思えました。あの「あんたバカぁ?」ってなんなん?って議論とか、けっこうありそうな気がするんですよね。そこで哲学的知識をバックグラウンドに分析を語れれば、より深い、一段上のオタクになれる!少なくとも自分の場合、こういう視点を得たことで、マンガや小説を読むときの楽しみ方は一段深まったような気がします。もう一つ、7章の総称文に関しては、視点を変えると「英語を学ぶときにも役立つ」という実例付き。Maryl is blonde, but not a blonde.こういう文章って、英語の理解を深める、みたいな本に出てきそうな話ですが、言語哲学的にも題材になる、というのは興味深く、これまた「哲学」と「外国語学習」がつながる面白さが経験できた気がします。「左手でボールを投げた」と「左投げ」はまったくうける印象が違う。これもまた読んでみて確かにその通り、と深く納得。総称文にはこういう「怖さ」があるというのは、是非本書を実際に手に取って考えてみてほしいと思う内容です。正直、自分にはすごく難しい本で、読むのにものすごく苦労した本なんですが、だからこそ「独学した」っていう実感は強く、読みおえた満足感は非常に高い本でした。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC037『現代思想入門』

BC037『現代思想入門』

May 10, 2022 1:16:32 goryugo

『現代思想入門』(千葉雅也)今回は、二人とも読了していた『現代思想入門』(千葉雅也)について二人で語りました。現代思想?フランス現代思想。1960年代〜1990年代。ポスト構造主義とも。まず「現代思想」と言うが、2020年的な現代の思想ではない。2000年よりも前である。にもかかわらず、その思想はまさしく現代を射程に捉えている。哲学者が、その時代の「現象」を深く思考している証左であろう。また、フランス現代思想は「ポスト構造主義」として説明されて、(ポストは「後の」という意味なので)、この手の本は「まず、構造主義について説明します」という段取りが一般的なのだが、本書ではずばりとデリダから説明に入っている。実に潔い。時系列を追いかける「史」の形ではなく、思想を直接的に追いかけているイメージ。また、この時系列に縛られない話の組み立ては、「ツリー構造」からの逸脱としても捉えられる。本の内容(構造)自体が、その思想を体現している、というわけだ。その意味で、非常に実践的。中心的な三人本書ではフランス現代思想を中心として、その周囲の人たちもたくさん登場するが、やはりメインに据えたいのはデリダ、ドゥルーズ、フーコー、の三人。この三人の思想は、まず「面白い」。倉下があまのじゃくなせいもあるだろうが、「脱構築視点」は実にしっくりくる。というか、この三人の思想を「脱構築」という概念で括ってみせた(因数分解のようだ)著者の手腕は圧巻と言わざるを得ない。これまでバラバラに位置づけられていた概念が、ある「図」(座標)のもとに統一されたかのような感覚がある。きりきりに冷えた炭酸のような爽快感。「知的生産の技術」の観点で言えば、デリダの脱構築は新しい概念の創出に役立つ。ドゥルーズのリゾームはネットワーク型の情報ツールの可能性を(あるいは、一人の人が多用な属性のもとで情報発信していく可能性を)提示し、フーコーはテクノロジーが持つ監視力が、個人に内面化される危険性と、それとナチュラルに寄り添う「自己啓発」の危うさを示してくれる。デカルトの『方法叙説』はライフハック本として読める、という話があるが、上記を踏まえればこの三人も実にライフハック的である(本書でも同様の視点が語られる)。個人的に特に重要だと感じるのはフーコーである。「自己のテクノロジー」は、ますます現代で重宝されるようになっている。しかしそれは手放しで喜べるものではない。拙著で「ノートを不真面目に使う」と説いたのは、自己のテクノロジーをまったく決別して生きるのではなく、しかしそれと一定の距離感を置くための一つの方策である。応用性のありかたごりゅごさんのお話を聞いて、書き手として一番「ほぉ〜」と思ったのが、具体例を提示してくれているおかげで、自分でも他のことに応用できるのではないかと考えられた、という話です。詳しく書くと長くなるのではしょりますが、この「抽象性と応用」というのは個人的な課題の一つです。つまり、ある知識はそれが抽象的であるほど応用しやすいので、できれば抽象的に伝えたいが、それではわかりにくい。しかし、具体的に伝えるとわかりやすいかもしれないが応用性がなくなる、というジレンマがあるわけです。でも、上記のジレンマは間違った構図というか、間違った問題化だったのでしょう。読み手の発想を刺激する具体性の提示の仕方があるわけです。というか、徹底的に具体的であるからこそ到達できる抽象性というのがあると捉えた方がいいかもしれません(その意味で、単に具体的であればいいわけでもない)。なんにせよ、千葉雅也さんの本には、毎回書き手として強い刺激を受けます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC036『CONFLICTED 衝突を成果に変える方法』

BC036『CONFLICTED 衝突を成果に変える方法』

Apr 26, 2022 1:09:18 goryugo

『CONFLICTED(コンフリクテッド) 衝突を成果に変える方法』書誌情報* 著者* イアン・レズリー* 『子どもは40000回質問する あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力』* 翻訳* 橋本篤史* 出版社* 光文社* 出版日* 2022/2/22概要現代は、意見の対立が多い時代である。インターネットによって、コンテキストが異なる人と交わる機会も増え、統一的な価値観が崩壊しつつあるので、すべての人が同じ意見である、という状態は少なくなっている。一方で、私たちはそうした状況で「うまくやる」ための方法をほとんど知らない。日常的に訓練されることはないし、進化論的にそうした能力が獲得できるという機体も持ちがたい。意識的に取り組む必要がある。異なる意見がぶつかりあう状況(=衝突)は重要である。それはお互いの価値観を明らかにし、状況を改善し、事態を一歩前に進めるためには避けては通れない状況とも言える。むしろ、異なる意見を押さえ込んでしまうと、「問題」をただ先送りにするだけでなく、完成そのものを壊してしまう可能性すらある。お互いに率直に意見を交換できるようにすること。そのためには、以下の原則が重要だと著者は述べる。* 原則1 つながりを築く* 原則2 感情の綱引きから手を放す* 原則3 相手の"顔"を立てる* 原則4 自分の"変わっている"ところに気づく* 原則5 好奇心を持つ* 原則6 間違いを利用する* 原則7 台本なんていらない* 原則8 制約を共有する* 原則9 怒るときはわざと* 原則10(鉄則) 本音で語る大切なのは、相手を「対等な人間である」と肝に銘じておくこと。自分も感情があるように、相手も感情がある。侮辱されたら理屈なんてどうでもよくなるし、自分が正しいと思うことを目一杯主張したい気持ちを抑えるのも難しい。お互いにそういう存在なのだ、ということを理解して「コンフリクテッド」な話し合いに臨むこと。その意味で、上記の10の原則は、インターネット時代の基礎コミュニケーション技術と言えるかもしれない。倉下メモさすがにツイッター歴も長いので、いまさら「ツイッターを議論のできる場所にしよう!」という夢は抱いていませんが、かといってそれがそのままインターネットを諦めることになってしまうのはもったいないなとも感じています。文脈が異なる人が集まって、「率直な」意見交換ができる場所を作ること。これまでは、そうした活動は「できる人はできて、できない人はできない」と割り切っていたところがあるのですが、本書で「原則」としてまとめられているのをみて、少なくともある「訓練」を経ることでその能力が身に付くのではないか、という気持ちになっています。また、単に人を集めるだけでなく、「有益な意見交換(衝突を含む)」を可能にするためには、その場の方向性を明示する「ルール作り」も重要なのだと感じました。しばらくは、このテーマについて考えていきたいと思っています。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC035 『情動はこうして作られる』

BC035 『情動はこうして作られる』

Apr 12, 2022 53:46 goryugo

今回は、ごりゅごがブックカタリストで紹介した本の中で最も分厚い本。Amazonの表記では697ページにもなる極太本でした。(片手で本が開けない厚さ。ちなみに独学大全は1064ページ)とは言っても、内容とか概念とかがすごく難しいというわけではなく、著者が言いたいことを全部盛り込んだら、何だかこんな分厚い本になってしまったぞ、というようなイメージで、正直「もうちょっとスリムにできるはず」だとは感じています。(本編でも語っているが、終盤はかなり蛇足感漂っていて、ほとんど飛ばし読みだった)序盤と終盤はわりと「かったるい」と感じた部分があるのは事実ですが、それでもやっぱりブックカタリストできちんと紹介したくなるくらい面白い本で、ごりゅごの「哲学と心理学と脳神経科学」の3つの視点から「こころ」に関する本をいろいろ読み始めるきっかけになった本でもあります。構成主義的情動理論本書で語られている内容を簡単に説明するならば、我々には「怒り」「悲しみ」なんていう本質論的な感情などというものは存在せず、脳の様々な反応を元に、後天的に学習した「情動」に当てはめているだけだ、という主張と、それに付随する情動の制御のコツなどが語られたもの。情動はそこに「ある」のではなく「構成」されるものである、という話です。そして、情動というものが後天的なものだからこそ、学習によって情動の解像度は高めることができ、解像度が高まるとこんないいことがあるぞ、というところまで話が広がっていくところが実用的な意味でも興味深いものでした。実際のところ、ごりゅごはこの本を読んでから、可能な限り感情、情動を言語化するということを意識するようになっており、それによって日ごろの日記なども少しずつ書く内容が変化してきています。BC030『パーソナリティを科学する』とも通じる内容ですが、人間の性格、特性は「いきなり大きくは変わらないけれどある程度コントロールできる」という点は希望が持てるところで、心のケアのような観点からも役に立つ本でした。また、ブックカタリストサポーターの方向けに、今回の配信に使用した台本(PDF)を同時にお送りしています。あくまでも「俺用メモ」なので、きちんと見せられる品質のものではありませんが、ごりゅごは基本的にこれだけを見て喋っています。(引用一つ一つは個別のObsidianのノートになっていて、カーソルを合わせると中身がポップアップする、という仕組み)へー、こういうの見ながら喋ってるんだっていう感じで、一つメタな視点でPodcastを楽しむのにご活用ください。(台本は存在していますが、耳で聞いて楽しんでもらうことを前提にしています。台本など見なくてもちゃんと楽しめるはず、です) This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC034『啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために』

BC034『啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために』

Mar 29, 2022 1:06:56 goryugo

『啓蒙思想2.0』もうすぐ発売の文庫版『啓蒙思想2.0〔新版〕: 政治・経済・生活を正気に戻すために (ハヤカワ文庫NF)』今回は、これまで紹介してきた本の総まとめというかHub的な位置づけとして本書を紹介しました。書誌情報* 著者:ジョセフ・ヒース*  『反逆の神話』*  『資本主義が嫌いな人のための経済学』* 翻訳:栗原百代* 出版社:NTT出版* 出版日:2014/10/24概要かつての啓蒙思想を1.0と位置づけて、あたかも図書館モデルからグーグルモデルにインターネットが転換したかのように、啓蒙思想もまた2.0へのバージョンアップを果たそう、という提言が為されている。あらためて「理性」の力やその特徴を確認し、その上で現代の環境を検査し、「理性的なもの」が力を取り戻すためには何が必要なのかが提示される。倉下メモ18世紀に盛り上がった啓蒙思想は、一定の成果を挙げたものの現代では若干不利な立場にある。その時代の啓蒙思想は「理性至上主義」とでも呼べるものであり、個人が理性の力を発揮させれば物事は合理的にすべてうまくいく、という考えを持っていたが、実際はその通りにはいかなかった。一つには、理性というものがそこまで大きな力を持っていなかったことにある。その点は、昨今の認知科学や行動経済学において確認されている。とは言え、私たちの文明は理性によって作られてきたものであり、感情的判断ではなく理性による合理的な合意がない限り成立しないものである。理性を捨てるわけにはいかない。では、どうするか。著者が目をつけるのは「クルージ」という概念だ。根本的な問題解決ではなく、その場しのぎの「うまくやる方法」。それがクルージなわけだが、たとえば私たちの記憶力を根本的に向上しなくても、ノートを使えば「あたかもそれを覚えていたかのように」振る舞うことができる。脳を変えなくても、ある種の「合理性」を手にできるわけだ。同様に、私たちそのものをどうこうするのではなく、その環境や道具(それらを外部足場と呼ぶ)を整えることで、力が発揮されにくくなっている理性を復興していこう、という計画が本書の重要なポイントになる。人を教育して理性の力を高めることもたしかに重要だろうが、それ以上に環境に意識を向ける必要があるという問題意識を著者は持っているわけだ。実際、現代の私たちの身の回りの環境は、理性の力をはぎ取るために躍起になっているといってもいい。まるで魑魅魍魎が取りついて、少しずつ衣服をはがされ、やがては皮膚すらも強奪されてしまうかのような勢いで、注意や認知資源が「ターゲット」になっている。意識的な防壁作りも必要だろうし、またメディアの情報とは距離を置いた対話空間の成立も必要になるだろう。重要なポイントは、理性は個人に宿るものではない、という点にある。『知ってるつもり』で確認したように、私たち人類は認知的分業によって発展してきた。啓蒙思想1.0が見逃してきたのもその点である(スティーブン・ピンカーも同じ点を見過ごしている)。私たちは、新しい「理性」の理解と共に、その付き合い方もまた構築していかなければならない。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC033『積読こそが完全な読書術である』

BC033『積読こそが完全な読書術である』

Mar 15, 2022 1:09:30 goryugo

『積読こそが完全な読書術である』(永田希)取り上げた本今回は主題の本に加えて、本の中で紹介されている以下の4冊を挙げながら「本を読むこと」について二人で話をしてみました。* 『本を読む本』* 『読書について』* 『読んでいない本について堂々と語る本』あと、以下の二冊にも軽く触れております。* 『知的生産の技術』* 『独学大全』完全な読書など存在しないどうせなら本はちゃんと読みたい、という気持ちが私たちにはある。「真面目」に読書しようとすればするほどその気持ちは強まる。しかし、「ちゃんと本を読む」とは具体的にどういうことだろうかと考えてみると、途端にあやふやゾーンに突入してしまう。ざっと速読することが「ちゃんとしていない」のはわかるにせよ、一字一句飛ばすことなく読み終えたらそれで「ちゃんとしている」と言えるのは心ともない。なんといっても、一ヶ月もすればその内容をすっかり忘れているかもしれないからだ。本書は、その「ちゃんと本を読まなければ」という呪縛のような思い込みに反抗を企てる。ちゃんと本を読む必要はないし、なんならちゃんと読んでいない方がいいことすらある、と。積読バンザイ。さまざまな読書法・読書術の書籍をひも解きながら、著者は積読の良さを組み立てていく。加えて、現代における積読の有用性をも指摘する。情報過多な時代だからこそ、本を積み上げろ、と。ばかばかしいように聞こえるかもしれない。あるいは、一種の強がりのような響きもある。しかし、そこにはたしかに真実がある。何もしなくても情報が流れ込んでくる時代においては、自らの手で壁を作り上げる必要があるのだ。村上春樹は、とあるスピーチで壁に挟まれた卵の話をした。そこでの壁は、巨大なシステムを表すものであった。当然それは、可能であれば打破されるべき存在である。しかし、私たちが作ろうとしている壁はそんなに強固な(あるいはソリッドな)ものではない。本書では「ビオトープ的積読環境」という概念が提出されているが、私たちが作る壁/囲いは、強固なシステムというよりも、ところどころに穴の空いた、フラジャイルな存在である。風を通し、水が流れ、生き物が行き来する領域である。完全ではなく、不完全な領域。それを「自分の手」で作ることが、肝要なのである。なぜなら、自分の手で作ったものであれば、自分の手で作り替えていけるからだ。それはつまり──著者のもう一冊の言葉を借りれば──、その壁を「ブラックボックス」にはしない、ということである。手作りの壁。意志を持った壁作り。それこそが私たちを自由と不自由の狭間に導いてくれる。ちゃんとしていなくてよい「その本について何かを言うならば、ちゃんと読んでおきたい」という気持ちは真摯なものであり、また誠実さの一つの現れであろう。しかし、それがあまりにも強くなり、視野を狭めると困った事態になる。つまり、「ちゃんと」読んでいない人間は何一つ発言すべきではないし、「ちゃんと」読んだ自分は正しいことを言っている(そうでない意見は間違っている)、といった態度に陥ってしまうわけだ。その上、あらゆる読書が不完全なものとなると、誰も本について言及できなくなる。はたしてそれは楽しい(あるいは豊かな)世界の在り方であろうか。本についての「話題」が起こったとき、会話に参加しようとする人間を殺伐と疎外してしまうよりは、その話題が盛り上がるようにうまく立ち回るのが別の形での誠実さかもしれない。さいごに私自身は、なるべく頭から終わりまで、一字一句飛ばさず読書するタイプである。その本の著者が冒頭で好きな順番で読めばいいとか、これがわかっている人間は飛ばしてよいと書いてあってすら、極力まっすぐに(シーケンスに)読書をしていく。それはたぶん梅棹忠夫の姿勢に影響されているからだろう。著者は自分の言いたいことをうまく伝えるために、適切な順番を考えて文章を書いている。だから、読むほうもその「お膳立て」に乗っかっていく。そんな気分だ。しかしながら、本の読み方は多様である。唯一の正解など存在しない。だからこそ、読書は面白いわけだ。さて、皆さんは「本を読むこと」をどのように捉えているだろうか。どんな定義をあたえ、どんな分類をし、どんなノウハウをそこに充てるだろうか。よければお聞かせいただきたい。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC032 『隷属なき道』

BC032 『隷属なき道』

Mar 1, 2022 1:13:52 goryugo

今回の本は、BC026 『Humankind 希望の歴史』著者の前作にあたるものです。Humankindに大変感銘を受けたごりゅごは、その影響でもう一冊、さらに著者のルーツをたどろうと手にしたものでしたが、これが自分の心を直撃。Humankindは「人間っていいものだよね」って話だったんですが『隷属なき道』はもっとどストレートに「おれたちが変えていこう」という熱いメッセージが込められたものでした。本編では本書の一通りの部分に触れたんですが、特に印象的だったのがGDPについて書かれた5章の部分。自分がいかにGDPという「常識」に凝り固まっていたのかということを痛感させられ、この本をきっかけに資本主義や現代社会を無条件に受け入れていた自分の認識を改めることができました。あなたのような人はたくさんいる。連携しよう。図太くなろう。ほとんどの人は優しい心を持っているはずなのだ。常識に流されないようにしよう。本書の最後に書かれていたこの言葉を胸に刻み、より多くの方にこういった考えをブックカタリストを通じて「連携」を生み出していくことを、ごりゅごの今後の目標としていきたいと思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC031『読書会の教室 本がつなげる新たな出会い 参加・開催・運営の方法』

BC031『読書会の教室 本がつなげる新たな出会い 参加・開催・運営の方法』

Feb 15, 2022 1:03:38 goryugo

『読書会の教室 本がつなげる新たな出会い 参加・開催・運営の方法』今回は、この本をきっかけにして「読書」や「読書会」についてさまざまに考えてみました。書誌情報著者:竹田信弥*  双子のライオン堂店主*  文芸誌『しししし』編集長*  8年間で500回の以上の読書会を主宰著者:田中佳祐*  ライター、ボードゲームプロデューサー*  共著『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』出版社:晶文社 (2021/12/21) ISBN:479497289X目次* はじめに* 第1章 読書会とは?* 第2章 読書会にはどんな種類がある?* コラム はじめての海外文学(谷澤茜)* 第3章 読書会に参加するには?* コラム ビブリオバトルとは他人に本を探してもらうことである(岡野裕行)* 第4章 読書会を開催・運営するには?* コラム ビブリオバトル必勝法(安村正也)* ◇なぜ読書会を開くのか?──主催者に聞く!* ◇読書会では何が起きているか?──紙上の読書会* ◇読書と読書会について本気出して考えてみた* 付録 必携・読書会ノート──コピーして活用しよう* おわりに概要読書会に興味がある人に向けて、そもそも読書会とは何か、どんな種類の読書会があるのかを解説し、その上で参加者としての注意点や主催者として気をつけた方がよいポイントなどがまとめられている。「二人いればもう読書会」という言葉も登場するが、本を読むことを題材とした集まりならばひろく「読書会」と言える。では、その読書会の魅力とは何か。倉下らの活動を振り返っても、いくつかの点を列挙できる。* 自分が読んだ本について、自分以外の視点に触れられる* 自分が見つけられないような本と出会える* 自分だけでは興味を持たなかった本に興味を持てる* 本を読む動機づけになる* 他の人に説明しようとする中で、その本の理解が深まるこれらは一人の人間に内在する「読む」という行為をより豊かにしてくれるものだと言える。読書は基本的に孤独な行為だが、それだけで終わるものではない、ということだ。『目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)』の中で紹介されている「ソーシャル・ビュー」は、そのような豊かさを別の視点から説明してくれる例である(この本もたいへん面白い)。「本」は、お題になり、触媒になり、テーブルになってくれる。一つの「場」を生み出すきっかけとなる。そこで生み出される交流は、殺伐としがちなインターネットの交流をも変えてくれるのかもしれない。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC030 『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』

BC030 『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』

Feb 1, 2022 1:03:33 goryugo

面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第30回の本日は『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』について語ります。「ビッグファイブ」という概念(人間のパーソナリティは5種類に分類できる、という心理学分野での一つの発見)を知り、その定番本がこの本だということで読んだ本でした。ちょっと古い(10年くらい前。こういう分野は10年で大きく変化してそう)ことを心配し、あまり大きな期待をせずに読んだ本だったんですが、これがものすごく興味深い内容。「本」としても「こういう研究結果がある」ということを紹介するだけでなく、私たちはこういう特性があると知った上で、それでも「主観的なストーリーは受け取り方次第で変わる」「時代遅れの概念に自分のあるべき姿を映しださないようにする」などの後半のポジティブなメッセージが素晴らしく、そういった点でも是非多くの人に読んで欲しい、と感じた本でした。電子版が存在せず、書籍の単価はわりと高い(約3000円)のですが、図書館なども駆使してみれば、案外容易に手に取ることは可能なので、是非皆様も図書館等も駆使してご覧いただけましたら幸いです。血液型診断や占いは存在自体が有害なんじゃないかくらいの感情しか持てないごりゅごですが、この本は「脳神経科学」的な脳内物質との反応性、というところまで踏み込んであって納得感が高いです。分野としてはまだまだ発展途上で、今後も楽しみなもの。次回のアフタートークでも語っているんですが、過去の価値観から脱却し、自分の読書ワールドを一つ新しい世界に持っていってくれた本にもなってくれました。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC029『NOISE: 組織はなぜ判断を誤るのか?』

BC029『NOISE: 組織はなぜ判断を誤るのか?』

Jan 18, 2022 1:07:22 goryugo

今回は、三人の行動経済学者による『NOISE: 組織はなぜ判断を誤るのか?』を紹介します。『NOISE 上: 組織はなぜ判断を誤るのか?』『NOISE 下: 組織はなぜ判断を誤るのか?』上下巻の本ですが、話題が巧みなのでさくさく読める本になっています。概要行動経済学では、これまでずっとバイアス(認知バイアス)がフォーカスされてきた。しかし、ヒューマン・エラーを構成するのはバイアスだけではない。ノイズもある。バイアスが「偏り」だとすれば、ノイズは「ばらつき」となる。そのノイズも、悪影響を及ぼすし、その大きさは想定されているよりもずっと大きい。にもかかわらず、ノイズにはあまり注目が集まっていない。それはまずプロフェッショナルが下す判断が、統計的に検証されることが少ないので、そもそもノイズが見いだされにくいのと、もう一つには、後から振り返ったときに、私たちは判断が適切であったのだとという物語(因果論的思考)を作りやすいからである。本書は、そうしたノイズの性質を解き明かすと共に、その具体的な測定方法を明示し、その上でどうすればノイズが減らせるのかの施策を提示している。論調としては、著者らは「人間らしい」判断ではなく、シンプルなルール、アルゴリズム、機械学習などの判断を用いることを進めている。そうした判断にも課題はあるが、少なくともノイズがない、という点では大きな意義がある。しかしながら、組織にそうした機械的判断を導入するのは簡単ではない。特に、マネジメント層が行う判断であればあるほどその傾向が出てくる。よって、著者らは人間が判断を下すことを前提とした上で、ノイズの提言に役立つ方法を紹介する。目次* 二種類のエラー* 第1部 ノイズを探せ(犯罪と刑罰;システムノイズ ほか)* 第2部 ノイズを測るものさしは?(判断を要する問題;エラーの計測 ほか)* 第3部 予測的判断のノイズ(人間の判断とモデル;ルールとノイズ ほか)* 第4部 ノイズはなぜ起きるのか(ヒューリスティクス、バイアス、ノイズ;レベル合わせ ほか)* 第5部 よりよい判断のために(よい判断はよい人材から;バイアスの排除と判断ハイジーン ほか)* 第6部 ノイズの最適水準(ノイズ削減のコスト;尊厳 ほか)* まとめと結論 ノイズを真剣に受け止める* ノイズの少ない世界へ倉下メモポイントは、人間が判断を下すと、避けがたくノイズが生まれる、という点。判断のための具体的な指針が定まっていない対象について、人間は恣意的な重みづけを行うのですが、それが「揺れる」ことによってノイズが生じてしまう。機械的(あるいは官僚的)と呼ばれるような判断でない限り、常にその危険性はつきまといます。そこで第一として、「人間が判断しない。あるいは機械的に人間が判断する」という方策が出てくるのですが、個人的にはあまり楽しくない方向性です。効率的かつコストも安いでしょうが、逆に言えばわくわくするような面白さがそこにはありません。また、本書でも簡単に触れられていますが、『あなたの支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』で指摘されているような怖さもあります。今後、プロフェッショナルの判断領域に機械的な判断がどんどん導入されていくだろう流れは止められないでしょうが、そうではない判断領域、もっと言えば個人の人生における判断において、そうした機械的なものを導入するのではない方向性も考えておきたいところ。その視点から言うと、本書の後半で提示される「尺度」を定めることはおそらく有効でしょう。また、「積極的に開かれた思考態度」は、日常的な情報処理や知的生産活動においても活用できるものだと思います。どういう施策を取るにせよ、人間の判断にはノイズが入り込む、ということを前提として、まさに本書が提示するように「手洗い」のようにノイズ削減に取り組む、という姿勢が大切なのでしょう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC028 『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』

BC028 『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』

Jan 4, 2022 57:28 goryugo

面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第28回の本日は『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』について語ります。(オープニングで27回って間違えてました)お酒をやめた自分に喪失感を感じるなら依存症の手前ここ2〜3年、なんとなくい「お酒飲まないほうがいいこと多いよなあ」って思いながらも変化がない人生を送っていたごりゅごを大きく変えてくれたきっかけになる本でした。特に最初にインパクトを感じたのが、以下のように感じるならばすでにアルコール依存症の一歩手前だという説明。* 「大事な何かを失ったような気がする」* 「晩酌しないと、1日が終わった気がしない」* 「人生の楽しみが半減しそうで味気ない やはり禁酒は無理だ」わたくし、見事に「お酒を飲まないのは人生の彩りが減ってしまう」と感じていた人間でした。序盤のそういった導入から、お酒に強い、弱いとはどういう状態なのか。アルコールとアセトアルデヒドの作用の違いといった基本的なお酒の知識を身に付ける段階を経て、最終的にはお酒やめられるといいよね、という感じの、ある意味きわめて普通の本です。たまたま手に取ったタイミングと、自分の思いが一致しただけ、という言い方もできそうなんですが、少なくともこれを読んでから明確に酒量を減らせています。別に、この本を読んだからって「お酒をやめるべきである」なんて思う必要はないと思いますが、知ってて飲むのと、知らずに飲むのは大違い。このままいけば「ここ数年でもっとも人生を変えた本」になるかもしれないです。「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC027 2021年を振り返る

BC027 2021年を振り返る

Dec 21, 2021 1:33:06 goryugo

今回は、2021年に配信した回を二人で振り返ってみます。プロトタイプ回まずはお試しで行ったのが以下の二回。それぞれ自分のポッドキャスト番組で試験放送しております。Nov 24, 2020 ◇【ブックカタリスト 】愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学 by ごりゅごcastNov 10, 2020 ◇第四十九回:ごりゅごさんと『フードテック革命』について by うちあわせCastBC001 ~ 005スタート近辺の回。進め方など探り探りな感じがうかがえます。Dec 11, 2020◇BC001 『ダーウィン・エコノミー』 - ブックカタリストDec 25, 2020◇BC002『独学大全』 - ブックカタリストJan 8, 2021◇BC003『功利主義入門』 - ブックカタリストJan 22, 2021◇BC004『ゲンロン戦記』 - ブックカタリストFeb 5, 2021◇BC005『これからの「正義」の話をしよう』 - ブックカタリストBC006 ~ 010少し慣れてきたあたり。『闇の自己啓発』 の回で『人文的、あまりに人文的』を紹介するなど、アレンジも出てきています。Feb 19, 2021◇BC006『闇の自己啓発』 - ブックカタリストMar 5, 2021◇BC007 『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』 - ブックカタリストMar 19, 2021◇BC008『ヒューマン・ネットワーク』 - ブックカタリストApr 2, 2021◇BC009 『妄想する頭 思考する手』 - ブックカタリストApr 16, 2021◇BC010『世界は贈与でできている』 - ブックカタリストBC011 ~ 015録音環境が徐々に整いつつあるところ。ゲスト回を行うなど、さらなる模索が進んでいます。Apr 30, 2021◇BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 - ブックカタリストMay 14, 2021◇ゲスト回BC012『思考のエンジン』 - ブックカタリストJun 1, 2021◇BC013『コンヴァージェンス・カルチャー』 - ブックカタリストJun 15, 2021◇BC014 『How to Take Smart Notes』 - ブックカタリストJun 29, 2021◇BC015『実力も運のうち 能力主義は正義か?』 - ブックカタリストBC016 ~ 020だいぶ整い出した頃。ゲスト回二回目があり、倉下の本を紹介するイレギュラー回もあり。だいたい慣れてくると、そこにアレンジを加える傾向がありますね。Jul 13, 2021◇BC016 『英語独習法』 - ブックカタリストJul 27, 2021◇BC017『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』 - ブックカタリストAug 10, 2021◇BC018 『WILLPOWER 意志力の科学』 - ブックカタリストAug 24, 2021◇ゲスト回BC019『心の仕組み 上』 - ブックカタリストSep 7, 2021◇BC020『理不尽な進化』 - ブックカタリストBC021 ~ 026直近。新書三冊回や、一年学習レポート回など変化球あり。Sep 21, 2021◇BC021 『幸せをお金で買う5つの授業』 - ブックカタリストOct 12, 2021◇BC022『英語の読み方』『英語の思考法』『伝わる英語表現法』 - ブックカタリストOct 26, 2021◇BC023 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 - ブックカタリストNov 9, 2021◇BC024『知ってるつもり: 無知の科学』 - ブックカタリストNov 23, 2021◇BC025 『生命はデジタルでできている』『LIFESPAN』『LIFE SCIENCE』ほかDec 7, 2021◇BC026『Humankind 希望の歴史』 - ブックカタリスト倉下メモこうして眺めてみると、基本的にパターンを繰り返しているようで、ところどころでアレンジやら変化球が入っていますね。これは基本的に、倉下が飽きっぽい(同じことを繰り返すのが苦手)からなんですが、たぶんごりゅごさんも同じような傾向をお持ちなのでしょう。また、オープンになっていないところでは、clubhouseにおける読書会なども実施されていて、それを含めての変化もこれらか少しずつ起きてきそうな気がします。楽しみですね。では、来年もまたよろしくお願いいたします(倉下)。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC026『Humankind 希望の歴史』

BC026『Humankind 希望の歴史』

Dec 7, 2021 1:12:42 goryugo

今回はオランダのジャーナリスト:ルトガー・ブレグマンによる『Humankind 希望の歴史』を紹介します。ハードカバーで上下巻と若干手に取るハードルが高い本ですが、それに見合う価値がある本です。概要目次は以下。上巻* 序章 第二次大戦下、人々はどう行動したか* 第1章 あたらしい現実主義* 第2章 本当の「蝿の王」* Part 1 自然の状態(ホッブズの性悪説 VS ルソーの性善説)* 第3章 ホモ・パピーの台頭* 第4章 マーシャル大佐と銃を撃たない兵士たち* 第5章 文明の呪い* 第6章 イースター島の謎* Part 2 アウシュヴィッツ以降* 第7章 「スタンフォード監獄実験」は本当か* 第8章 「ミルグラムの電気ショック実験」は本当か* 第9章 キティの死下巻* Part 3 善人が悪人になる理由* 第10章 共感はいかにして人の目を塞ぐか* 第11章 権力はいかにして腐敗するか* 第12章 啓蒙主義が取り違えたもの* Part 4 新たなリアリズム* 第13章 内なるモチベーションの力* 第14章 ホモ・ルーテンス* 第15章 民主主義は、こんなふうに見える* Part 5 もう一方の頬を* 第16章 テロリストとお茶を飲む* 第17章 憎しみ、不正、偏見を防ぐ最善策* 第18章 兵士が塹壕から出るとき* エピローグ 人生の指針とすべき10のルール全体を通して「人間とは何か」が考察されていく。肝となるのは、"ほとんどの人間は本質的にかなり善良だ"という主張なのだが、しかし現代社会はそれとは逆の想定で制度が作られている。それはなぜか。その疑問についてさまざまな領域を渡り歩きながら論考していく。* 本書が手を伸ばしている領域は実に広い。* 思想/哲学* ホッブズ VS ルソー* ジャーナリズム* 第二次世界大戦* リアル「蝿の王」* 文明論* イースター島の歴史* 進化生物学* ホモ・パピー* 心理学/行動経済学* スタンフォード監獄実験* ミルグラムの電気ショック実験* キティの死(都会の傍観者)* 経営・統治論* テイラー* マキアヴェリ簡単に列挙しただけでもこれだけある(実際はもっと多い)。しかも、単にさまざまな領域を論じているだけでなく、これまであたり前だと思われていた認識について、「それは本当なのか?」という問いを行い、著者自らが反論している。それはたいへん勇気がいる言論であろう。倉下メモ二つ大切な話があります。まず「なぜ私たちは人間を悪者だと考えるのか?」という点。これは、人間が「ネガティブな情報」に反応するからでしょう。ポジティブな情報よりもネガティブな情報の方が、私たちの注意を強く引きつけますが、「人間が悪しき存在である」という情報ほどネガティブな情報はないでしょう。根源的であり、再帰的な情報です。だから私たちはニュースメディアをつい見てしまう傾向がありそうです。そうして自分の「信念」を強固にしていくのです。そうして確立された「信念」が、現実的に力を持ってしまう、というのが二つ目の大切な話です。本書ではプラセボ効果/ノセボ効果やピグマリオン効果/ゴーレム効果などが紹介されていますが、「信じたことが、結果に影響を与える」というのは(いささかスピリチュアルな響きがあるものの)無視できない話でしょう。緊張しすぎて力が発揮できない、心身症、疑心暗鬼によるコミュニケーションの不成立……こうした出来事は、「行動」だけを見る視点ではまったく見えてきません。どんな信念を持っているのかが、つまり「心」が重要な意味を持つ、ということです。行動主義は科学的な分析には秀でていますが、しかしそれは現実の状況を過剰にモデル化する経済学と同じ危うさがあるのかもしれません。『知っているつもり』の回でも紹介しましたが、人間は自分の「外」にある情報を利用して思考します。他人の知識が使えるのもそうですし、他者に共感を覚えるのもそうです。もうこの時点で、利己主義が想定する「自分のことしか考えない」はまったく当てはまりません。むしろ私たちは、常に自分以外のことを考えている生き物とすら言えるでしょう。しかし、資本主義、あるいは過剰な個人主義は、そのような人間の思考の傾向をまったく無視しています。人間観がかなり偏ってしまっているのです。人間の行動が「心」に影響を受けるのだとしたら、「人間が人間のことをどう考えているのか」はきわめて重い意味を持つでしょう。そうした「人間に関する認識」の再構築がこれから始まっていくのかもしれません。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC025 『生命はデジタルでできている』『LIFESPAN』『LIFE SCIENCE』ほか

BC025 『生命はデジタルでできている』『LIFESPAN』『LIFE SCIENCE』ほか

Nov 23, 2021 1:02:37 goryugo

面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第25回の本日は『生命科学に関係する本たくさん』について語ります。1年の総括として複数の本を語る今回のブックカタリストは、ごりゅごの1年の総括、今年興味を持った分野の本を複数まとめて整理する、ということをやってみました。意識したのは「できるだけたくさんの分野にまたがる話にすること」あらゆる学問分野はすべて「つながって」いるもので、ほかの分野のことを知っていれば必ずなにかの役にたつ。今回で言えば、生命科学、有機化学、コンピュータサイエンス、長寿によって生まれる社会問題など、ごりゅごがこの1年で学んだことがどう繋がって面白かったのかを伝えるのが目標でした。正直、本を1冊紹介するのと違って、構成の段階から考えないといけないのはすごく大変だったんですが、これはこれで非常に有意義な体験でした。今回の話に関しては、私が勘違いしている点や、伝わりやすくするために正確ではない表現なども含まれているかと思います。参考にした書籍は複数ありますが、内容に関してはすべてごりゅごの責任です。何か問題があれば、できるだけ優しく、そっとご指摘いただけましたら幸いです。主な参考書籍(参考にした要素が多い順) This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

お便りコーナー(第一回)

お便りコーナー(第一回)

Nov 16, 2021 39:38 goryugo

今回は、Twitterのハッシュタグ「#ブックカタリスト」に頂いたコメントをご紹介します。しばらく読み上げをしていなかったので、かなりのストックがあり、今回はすべてをご紹介できませんでしたが、倉下&ごりゅごはすべてのコメントをありがたく拝読させていただいております。感謝です。引き続き、感想、コメント、思ったこと、考えたこと、関連する本、リクエスト、本会参加希望、などなどを募集中です。ブックカタリストの年間割引は11月21日で終了します。気になっている方はお早めに!ブックカタリストのサポータープランについて This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC024『知ってるつもり: 無知の科学』

BC024『知ってるつもり: 無知の科学』

Nov 9, 2021 1:05:10 goryugo

今回は、最近文庫版が発売になった『知ってるつもり: 無知の科学』を紹介します。 『知ってるつもり: 無知の科学 (ハヤカワ文庫 NF 578) 』ちなみに、『知ってるつもり~「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方~』ではないのでご注意を。書誌情報単行本は2018年4月、文庫は2021年9月に発売。著者のスティーブン・スローマンとフィリップ・ファーンバックは共に認知科学者。原題は「The Knowledge Illusion:why we never Think Alone」。「知識幻想:なぜ私たちは"独り"で考えられないか」あたりか。邦題はすばらしくキャッチーに仕上がっている。主題は「なぜ人類は原爆などの高度な技術を持つにもかかわらず、愚かしい行動を取るのだろうか」。あるいは「私たちは愚かであるにもかかわらず、なぜ高度な技術を持てているのか」。非常に興味深い主題。その主題を「無知」「知識の錯覚」「知識のコミュニティ」という観点から読み解いていく。まず人間は無知である。たくさんの情報を保有していない。それで別段困ることはないのだが、「自分がどれくらい無知なのか」についても無知である。それが知識の錯覚を引き起こす。実際の程度以上に自分は知っていると思ってしまう。「知ってるつもり」になる。それが、ときに愚かしい判断を引き起こす。一方で著者らはそれを「愚かしさ」だけでは片づけない。そうした「知っているつもり」になれることで、私たちは他者が有する知識にアクセスできるルートを持てる。また、むやみやたらに複雑な現実に直面しなくても済むようになっている(おそらく真なる複雑さに直面したら精神が壊れる)。人間が「思考」を行うのは、「行動」のためであり、よき行動を出せることが(進化的に)よい思考だと言える。無駄に複雑な現実に直面して何も決定できなくなるのは(進化的に)望ましくはない。詳細にすべてを正確に把握するのではなく、行動を決定するに足りる情報だけが得られればよい。抽象的な特徴だけを把握できれば、長い人類の歴史において困ることはなかった。また人間は社会生活を行うように発展してきたので、他者が「知っている」ことを利用できる。これは認知的分業と呼ばれる。それが可能であるからこそ、私たちは「高度なテクノロジーが集まることでしか実現できないテクノロジー」の恩恵を受けている。これらの事実が示すのは、私たちはフラスコの中の「脳」だけで思考しているわけではない、ということ。むしろ私たちは外界(脳の外)にある情報をうまく利用して思考を行っている。これはもともと思考が外界とのインタラクションのために生み出されたと考えればごく自然なこと(動物と植物の違いは動くこと=外界が変化すること)。私たちは"他者"を使って考えている。だから"we never Think Alone"。物を使って考え、他人を使って考え、文字を使って考える(だからノートを書こう)。よって、「知性」の捉え方も変わらざるを得ない。フラスコの中の「脳」の情報処理能力だけを見ても「知性」はわからない。そうではなく、外界とのインタラクションをどれだけうまく行えるのかが鍵を握る。知識がコミュニティにあるとしたら、そのコミュニティといかなる関係性を結べるのかが「知性」の在り方だと言える。ピーター・F・ドラッカーは、知識労働者は他者に貢献してはじめて仕事が為せると喝破したが、見事な指摘である。あらゆる知識は、「他者と共にある」。"we never Think Alone"。また、知識のコミュニティはそこに所属する個人の考えや価値観に強い影響を与えるので、個人を「事実」で説得してもほとんど効果がない(BC023参照)。一番レバレッジがかかるのが、知識のコミュニティを変えることだ。だからこそメディア(マスメディア)は第四の権力と呼びうるし、情報プラットフォームは第五の権力と呼びうる。どちらも知識のコミュニティに強くかかわっているから。以上のように、私たちと「知識/情報」がいかなる関係性を築いていけばいいのかに強い示唆を与えてくれる一冊。倉下メモこの本はいろいろな話のハブになるので、枝を広げていけばキリがありません。それはまたどこかでまとめてみたいと思います。ちなみに、「行動と思考」の関係を考えると、「幸福と思考」の関係もぼんやり見えてきます。人が幸福な状態でいるときは変化(行動)を必要としないので、思考は要請されません。逆に言えば、思考が要請されないなら幸福な状態といえるのです。とは言え、思考を抑制すれば、それが幸福といえるかは別の話でしょう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

りびぃの「もの技ラジオ」

りびぃの「もの技ラジオ」

生産設備の現役設計者であるりびぃが、ものづくりや技術に関する様々な話をお届けする番組です。 LISTEN https://listen.style/p/rivi-m-susume?HC0gtzEE

Over Realism Radio

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「生きながら、好きなことをやっていく」ために考える会です。 ▼ここで喋る人たち にくきゅう(https://twitter.com/nikuniku9) 影織(https://twitter.com/kageori_ar) にっとメガネ(https://twitter.com/nitmegane) ▼お便り・質問フォーム https://over-realism-club.blogspot.com/p/contact.html

iPad Workers

iPad Workers

iPad活用のヒントになる情報をお届けするポッドキャスト番組 ■LISTENで文字起こしも見られます https://listen.style/p/ipadworkers ipadworkers.substack.com

レイマシキャスト

レイマシキャスト

またよし れいのポッドキャスト。海外のことや仕事のことをお話します。 https://listen.style/p/raymashi?muFyW3np

耳ヨリな音の話-音マーケティング情報-

耳ヨリな音の話-音マーケティング情報-

様々なゲストと共に、音を使ったマーケティング情報を発信していきます。リスナーとのエンゲージメントを高め、ブランドの理解や共感をつくりやすい「音を使ったマーケティング」について、楽しくそしてわかりやすく、皆様にお届けします。<Twitterハッシュタグ>#ミミヨリ<音マーケティング (note)>https://note.com/d2cradmimi/

元学長の 体験的大学論

元学長の 体験的大学論

“Where raw voice becomes shape — Podcast 2.0.” 【元学長の体験的大学論】 A former university president discusses Japanese universities. Based on my 12 years of experience as president of two private universities, I will frankly and boldly discuss the difficulties and issues faced by private universities in Japan, including the internal circumstances. A must-read for those involved in private schools. 有料エピソードは試し聴き(プレビュー)ができます。LISTENで購入・フォローすると音声とともに文字起こしされたテキストを読むことができます。 YouTube https://www.youtube.com/@Camp_us_6214 note https://note.com/takahashihajime LISTEN Profile https://listen.style/u/campus Camp@Us Map https://listen.style/pl/10/Camp@Us+Map Membership Patreon https://www.patreon.com/campus6214/chats note https://note.com/takahashihajime/membership