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2021-06-22 19:00

BC014 アフタートーク&倉下メモ

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『How to Take Smart Notes』

倉下メモ

全体的にねじれた印象を覚えた本でした。まず、きわめて有用な本という印象。それでいてなんだか読みにくいという印象。目次を見ても、何が書いてあるのかはわかるのですが、それら一つひとつの文章が全体においてどういう位置づけを持ってくるのかがわかりませんし、また実際に読んでいてもこの話は全体の趣旨にどう貢献しているのかが掴みづらい感じがずっとしていました。

逆に、これらの章がWebに置かれていて、目次がindex.htmlだったらそこまで違和感はなかったかもしれません。興味があるページのリンクを踏んで読んでいく、というスタイルならむしろ抜群にハマりそうな気がします。

でもってこれが、「ネットワーク型」ということの意義であり、たぶん私たちの脳の自然なスタイルでもあるのでしょう。言い換えれば、情報に構造を与えるというのは「人工的」な行為なわけです。

しかし倉下は、(一応プロの物書きとして)そうした人工さが必要ではないかと感じた次第です。

でももしかしたら、それは古い考えなのかもしれません。全体の中から興味がある部分を読み、それ以外の部分は簡単に済ませる、というのが「技術書」にとっては必要な形式なのかもしれません。むしろ、著者が強い構造を作ってしまうのは──つまり、はじめからおわりまで読まなければ意味が取れない文章を作るのは──ひどい押しつけなのかもしれません。

とはいえ個人的には、少しずつ読み進めていくうちに、読み手の脳内に構造ができてきて、おおぉそうか!と楽しめるような、一種小説的な本が(技術書であっても)好きだったりします。これはもう、サガというか欲求にすぎないので普遍性を論じるものではありませんが。

でもまあ、「考える上で、書くことは欠かせない」という話はとても大切だと思います。英語なので若干近寄りがたいと思われる人は、2021年7月に発売予定の倉下の新刊にも似た話が出てきますので、そちらもご期待ください(突然の宣伝)。

ちなみに「Zettelkasten」は、カードボックス、という意味でした(倉下の勘違いでした)。

次の本の候補

『実力も運のうち 能力主義は正義か?』

前回も候補として挙げましたが、読み終えた上でやっぱり紹介したい気持ちが強まっていますので、こちらにしようかと思います。

『理不尽な進化』

ただこの本もめっちゃ面白いですし、サンデル本と共時するようなテーマもあるので可能なら両方に言及してみたいと思います。無理なら、この本だけでも一回使いたいくらい面白い本であることは書いておきます。



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ブックカタリスト アフタートーク 今回は、How to take smart notesについての話をした後です。
話をしていて思ったんですけど、読みにくいですよね、この本。
そうですね。コンテンツは素晴らしいんだけど、構成が素晴らしかったかと言われると、やっぱり結構悩ましい意見にはなりますね。
だから、この本を読んで確信したのは、やっぱりボトムアップだけではダメなんだなっていうのを、僕は一番感じましたね。
言いづらいけど、そうなんですよね。ポジショントーク的にはそんなことはないという方を言った方がいい気がするんだけど、この人の方法を真ん真ん真似するだけでは、いいものができないですね。
ちょっとそれは思うんで、やっぱり物書きとして良いものを受け取ってもらいたいなって思った時に、書けたからいいでしょう的な、そんな風には思ってないですけど、これよりももっと読みやすい形に構成できたはずやなという予感がどうしてもつきまとってしまうんで、
だから、それはやっぱりそういうための技法っていうのは別軸に持っておきたいなというのを改めて強く感じましたね、この本は。
エッセンスオブハウトゥーテイクスマートノーツっていう感じの本が500円ぐらいで売られてて評価高いんですよね。
だから、もしかしたら別の人の仕事なのかもしれない。ルーマンの一般社会システムも難しいんですけど、それを解題して解説する人たちがまた別にいるわけで、それぞれ仕事の役割分担が行われていると考えることもできます。
でも、本を書こうということを生業にしようと思うと、もう一つここだけでは足りないというのはありますよね。
プロダクトとしてお金を払ってもらえるものができるかどうかっていう、キラリと光るアイデア、他が書いてないからっていうので売れる本ももちろんあるんですけど、
そこまで自信のあるものを毎回出せるかどうかっていうよりも、そんなことを悩むぐらいだったら、ちゃんと面白い本を読みやすくて、面白い本を書くスキルを身につけた方が良いのではないかという気はしますね。
あと、さらに難しいのが、これが1年で成果が出るものじゃないので、これを信じて3年やれる人は100人で1人いないんじゃないかと思うんですよね。
そうじゃないですかね。梅沢の情報カートでも挫折した人の方が多いっぽいですからね、話を聞く限りは。
俺も初戦で半年と言えないレベル、こういうことをやろうとしてやり始めて、ほぼ欠かさず毎日こういうことをしていると思うんですけど、初戦半年でちょっとずつ成果が見える気配が見え始めてきたぐらいの言い方しかできないので。
でもまだこうやってアウトプットの場があるだけで全然マシじゃないですか。昔のあの本、知的精査の技術を読んだ人って、カードを取ってもパブリッシュする場がなかったわけで。
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そうですね。世に問うことができなかったですからね、ほとんどの人はそれを。
だからフィードバックがないわけで、それはやっぱり続かないだろうなと。今やったらブログでもいいし、セルフパブリッシュ組んでもいいし、こうやってポッドキャストで読んだ本について喋ることもできるんで、だいぶ優位というか続けやすい環境ではありますよね。
そうですね。まずこれを書いて、この本を読んでこれについて語るというだけで全然違うし、人に説明するだけで、もう書くではないけど自分の言葉にしないとできないですからね。読み上げる以外の方法だったら。
だからまあ、続けられるかどうかっていうのに関してはクリアは多分できてますし、具体的なプロダクトの成果が作れるかどうかは、これから作るカード次第、つまりこれから読む本次第ということですね。
自分の中で興味深いのが、例えば生命科学の話を読んでいて、哲学みたいなことを読んでいて、どう繋がるんだろうっていうような、何らかの共通点みたいなものがどこから見つけられるんだろうっていう。
そういうことを期待して読んだら、たぶんボトムアップではないし、別に期待しているわけではないんだけど、まあでも何らかの成果を出さないと、そのすごいもんだぞっていうふうにも証明できないですからね。
真のボトムアップではない問題っていうのは以前僕考えたんですけど、真のボトムアップ、つまりテーマ性を持ってしまうと真のボトムアップじゃないみたいな話なんですけど、テーマ性がないなんてことありえないんですよ。
人が本を何かの基準で選んでる時点で、内なるテーマっていうのがあるんですよ。そういうテーマ性が全くないランダムに集まったメモって骨格が生まれるはずもなく、だからテーマっていうのはいいんですよ。だから分類がダメなだけで。
分類は後からできるものである。テーマっていうのは関心の方向性だから、関心の方向性を持っておくのはむしろ良いと思いますね。
そうですね。実際そうなっているかな。今の話で言っても確かに。
そのテーマを持ってないと逆に読みたい本が多すぎて選べないっていう逆向きの問題も出てくるんで、ある程度の関心を持つトピックいくつかっていうのは持っておくのは良いと思いますね。
まあそれもそうか。自分で意識して考えたこと。でもあれですね。生命科学生命科学って俺はしょっちゅう言ってますね。そういう話で言うと。最近の自分で言ったら。
だから完全にノンテーマで選んでるわけじゃなくて、日々の関心事っていうのがあって。その関心事はもちろん時間的に移り変わっていくから、いわゆるトップダウンで固定されているものではないですけど、その時その時の軸っていうのは絶対あって。
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それをそこまで拒否すると僕は行き過ぎだと思うんで、それぐらいの緩い感じでいいんじゃないかな。
多分人間の性質としてそこは多分無理にバラバラにしようとしなくても勝手にそうなるんではないのかな。
それこそトップダウンで会社から読めって命令されるとかではないパターンであれば。
そうですね。
自然と興味があるものとかっていうのは出てくるのかもしれないですね。
関係ないことはないんですけど、ノートつながりで言うと、来月の末ぐらいかな、20何日ぐらいに新刊が出るんですけど、ノートの本なんですよ。
全てはノートから始まるっていうタイトル、タイトル決まったんですけど、っていう本で、大体書いてる画像も同じですね、この本と。
あとあれですか、これより構成はわかりやすいですか?
面白いと思うよ、読み物としては面白いと思うけどなと。すごい手前ミスだけど。
内容の比較とかとして問題意識は全く一緒だったなと。本をほぼ書き上げてから読んだからちょっとびっくりしてるけど。
そう、だから同じことを考えてる人っていうのはもうすでに世の中に大体いるっていうことでもありますよね。
あとは表現の形式とか、主要なトピックをどこに置くかっていうだけの違いで、でもやっぱりそれがプロジェクトとしての違いになってくるから、
言ってることがちょっと重なってても、本としての出来栄えって切り口によってだいぶ変わってくるんで。
その切り口って何かっていうと、ボトムアップじゃないんですよね。トップダウンなんですよ。
あれですよね。なんかね、メタ視点なんじゃないかと思うんですけど、トップダウンというよりも。
だからそうやな。コンテンツを一つ上から眺める視点っていうので、この表現はトップダウンは適切じゃないかもしれないけど、一応触りのいい言葉で言うとトップダウン。
あるテーマ性においてそのコンテンツが整えられてるかどうかという視点が必要で、だからやっぱりトップダウン的な、ボトムアップじゃない視点的なものがやっぱりいるよなと。
それが個性というか、その商品の性質を作っていくようなところがあるんですよね、というのをちょっと感じた次第です。
この本、そういえばなんですけど、メタの視点で物事を見るみたいなことは、やっぱりあんまりどころか全く書いてなかったんじゃないかっていう気がして。
小さく考えるのと関連付けろのスタートしか言ってないかな。
そう、コネクトみたいなのはあるけど、メタっていう用語は多分ないですよね。
一応情報と情報の繋がりを考えるということは、言ってみればややメタな視点に立つということではあるんですが、あまりフォーカスは当てられてないですね、それを考える。
多分そうすると分類が先に立つからじゃないですか、きっと。
ってなってしまうからなのか。
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そう、今思い立って検索ができると思って電子書籍ならばやってみたんですけど、4件メタっていうフレーズは出てきてますね。
だからないわけではないんですけど、やっぱりあまり、しかもあれだ、文献だ、文章中には1個しかない。
しかも、メタヒエラリカルレベルしか書かれていない。
しかも、ノットオンはヒエラリカルレベルなので。
だから、やっぱりメタっていう言葉から連想されるトップダウン的な分類は要素としては弱めてあるというかね。
書きたくなかったのはありそうですね。
基本的にボトムから考えてもいいんですよね。
ボトムから考えていった後に、トップとかメタな視点でコンテンツを整えればいいだけの話で。
メタを先に持ってくる必要は全然なくて。
多分メタを先に持ってくる考え方が一般的やから、この本ではあえてもっとボトムを強調しているということだと思いますけども。
そうですね。なので、1冊の本をしっかり読んだ後、ちゃんと他の本も読みましょうですね。
逆に言うと、この本と反対のことを書いている本と合わせて読むとより良くて。
考える技術、書く技術っていう、新書じゃない方の執筆法の方があって、
それはトップダウンとボトムアップの両方の話が出てくる本なんですけど。
これはテーマを考えて、そのテーマを補佐する中テーマを考えてみたいな、いわゆるトップダウンの書き方が書かれてますね。
それを合わせて読むと、ふむふむという感じになるかと思います。
久しぶりに昔のノートとかも、このブックカタリストのための台本とかも見てみたんですけど、
すごい自分で見ても上達したなって思いましたね。
なるほど。
それもメタな視点でできるようになったのか、10回近く話しているフィードバックのおかげなのか。
でしょうね、きっと。
話すことによって、こうした方が本番で話す時に話しやすいぞ、みたいなノートの取り方みたいなのもちょっとずつわかってきて。
面白いのが、結局やってることはノートを細かく分けることなんですよね。
そうでしょうね、きっと。
ノートを取ることと話すためのノートのネタを揃えるということは、本質として同じ行為で。
なるほど。
部分部分に分けて理解をするということが、結局全体を統括して話しやすくなっているんですよね。
それはわかります。
面白いな。さらに言うと、その部分部分をもう1回詰めてみると、また全体が見えてくるんですよね、よく。
はいはいはい。
これを繰り返すことなんだなっていうのはやっていて思って、この本もおっしゃる通りっていう感じの本でしたね、そういう意味で。
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だから本来はその部分と全体の相互の理解を深めていくっていうことを、さっき言った論文を書くっていうことの中実践でも行うべきで。
それがセイクなんですけど、そこの言及がまるっとないっていうことなんですね。
そうですね。絶対と言えば言わんけど、やっぱりわざと書かなかったんだと思います。
それはまあ、これ以上話を膨らませてもなんだし。
実際に小さいノートを取ることがこの本のテーマですかね、基本的には。
だからやっぱりタイトルなんですよね。
まあテイクなのはやっぱりテイクであるべきだと思うんですけど、ハウトゥーではない。
確かに。
まあそれによって、結局ネガティブなレビューが上に来てしまうというのはちょっと悲しいですからね。
まあでもこのタイトルからここまで読まれたということもあるわけで、これはまあ口座にありそうですね。
正解がどちらかというのは結局構成になって評価するしかない。
まあでも広く読まれたほうが勝ちでしょ、これは。
そうですね。それは確かにそうだと思います。
嘘ではないですからね、タイトルは。
ちょっと誤解を招きやすいタイトルだと思うけど。
次、次回。次回は私のターンで。
まあもうこの本についてはいいかなという感じはしてるんですが。
えーと、どっちかな。
2つありまして、候補が。
実力も運のうち、マイケル・サンデルか。
はいはい。
理不尽な進化っていう、ちくま文庫の本がありまして。
あの、なんかもう一回書かれたやつとかでしたっけ?
もう一回じゃない、もう一回、改訂版とか。
そうそう、同法新版っていって、単行本で出てたのがちくま文庫に入ったっていう本で、
吉川ひろみつさんが書かれてる本なんですけど、
これね、両方面白いんですよね。
面白かったんですよ。両方読み終えたんですけど。
で、ちょっとどっちにしようかなと。
ストレートにつながるのは、今まで話してきたマイケル・サンデルさんのやつですよね。
まあ、話し、公理主義から始まっていろいろその辺の話はしてたんで、
一つの現代的な問題提起として、サンデルさんの本を取り上げるというのはありますね。
で、まあ非常に売れてる本らしいので、その人気にあやかろうという思いもないわけではないですが、
あとね、これもタイトルが上手いなって思うんですよね。
ある程度、今までのサンデルさんの主張からこういうことを言っているのではないかという想像はできるんですけど、
それをちゃんと日本語に当て込んで、運も実力の内をあえて逆にしてくる。
これは編集者のセンスですね。
優秀ですよね、これは。
はい、優秀です。
早川さん、早川のいちのせさんという編集者さんなんですけど、タイムライン見る限りは東大卒の方らしいですが、とりあえずネーミングセンスが抜群ですね。
不思議なのが、編集の人というのはなぜ自分で書かないんだろうっていうのを思ったりもして、
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たくさん書けないみたいなのは言っているのを聞いた気がするな。
たくさんは書けないですし、自分が書きたいけど書ききれないテーマ、でもこの話を世に説いたいみたいな問題意識がある人の場合は編集者の方が向いているんじゃないですか。
まあ、それこそあれですね。人の興味、思考というのは人によってみんな違うので、それはそれでみんな違ってみんな良いってことですね。
書き手をしながら編集者さんをしている人もいますし、松岡静吾さんなんて両方やってありますからね。
数は、絶対数は少ないだからもそうですね。そういう人ももちろんいますね、そういえば。
だから、仕事として全然役割が違う。自分で書いた方が早いと思ってしまう人は書き手向きでしょうけども、もちろん。
俺は自分で書きたいと思うだからな、早いっていうよりは。
なるほどね。陸人な進化は一瞬、進化の話というか進化論の話が始まるんかなと思うんですけど、ちょっと違うんですよね。
進化論の話なんですけど、こういう生物がいて進化してきましたよみたいな話の入門書ではないんですよ。
サイエンスではない?
サイエンスの本でもアートの本でもない。ないしは、サイエンスの本でもあり、アートの本でもあるような本を目指したと。
だからどちらかに偏った本ではない、アートです。人文と言ってももっといいんですけど、アートかな、哲学の。
ほぼどちらかというと総書に位置づけられるのではないかなと僕は思うんですが、非常に論立ても面白いし、著者の拍手気振りもものすごいで面白い本なんですけど、
どちらかにしようかなと。一回やると次1ヶ月後になるんで、この本のチョイスってね、もう1ヶ月後には別の本に興味を持てる可能性があるんで、
これ結構ね、セレクトが難しいんですが、ただ、理不尽な進化をより多くの人に知ってもらいたいという意味で1個なんですけど、実力も運のうちはね、これ結構難しい本なんですよ。
ああ、また難しいんだ。
ハーバードの抗議を書き起こした本はまだちょっとわかりやすかったですけど、これかなり本格的な論述になってるんで、ちょっとそこは読み解かないといけないかなという気もしてて、
結構勘違いされてる人も、内容を勘違いされてる人もいるんじゃないかなっていうのをTwitterでもちらほら見たんで、これを取り上げてもいいかなという思いは高まっております。
むしろというか、そっちの方がいいんじゃないですか、その話を聞く限りで言うと。
じゃあ運も実力も運のうちではないな方にしましょうか。
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僕は今のところ結構揺れてます。どっちも読み終えてるんで対応はできるんですが、この2つの本がリンクしてるんですよ。内容的に通じ合ってるんですよね。
両方でもいいですよ。
両方か、両方か。
両方の共通点っていう。
前も確か闇の自己啓発と人文的・アマリン自分的。
タイトルは闇の自己啓発だったけど、両方だった。
両方だったっていう回もありましたよね。
実力も運のうちだけど、そこの話も出てくるか、出したかったら出してもいいぐらいでいいんじゃないですかね。
一応そのぐらいの心づもりでいきましょう。
分かりました。
ということで次回は、実力も運のうちとちょっと理不尽な進化ということについて語りたいと思います。
では次回もお楽しみに。
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