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病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。

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中医協が明らかにした外来診療の最新動向|診療報酬構成と医療費の変化を徹底解説

中医協が明らかにした外来診療の最新動向|診療報酬構成と医療費の変化を徹底解説

Nov 7, 2025 07:02 岡大徳

令和7年7月16日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会第612回において、外来診療の診療内容と医療費に関する重要なデータが報告されました。この報告は、外来医療の実態を把握し、今後の診療報酬改定の基礎資料とする目的で作成されました。社会医療診療行為別統計と医療費の動向調査を基に、病院と診療所における外来診療の診療報酬構成の変化、診療科別の医療費動向、令和6年度診療報酬改定後の影響が明らかになりました。報告の要点は3つあります。第一に、病院の外来診療では診療報酬点数が平成30年の1,516点から令和6年には1,891点へと大きく増加した一方、診療所では898点から932点へとわずかな増加にとどまり、ほぼ横ばいで推移しています。第二に、診療科別では整形外科の1施設あたり月額医療費が約1,000万円と最も高く、令和6年度改定後にさらに増加しました。第三に、診療報酬構成では病院で注射が約225点増加するなど大幅に増加し、診療所では検査と在宅医療が増加する一方で注射は大きく減少しています。外来診療における診療報酬点数の推移と病院・診療所の違い外来診療の診療報酬点数は、病院と診療所で異なる推移を示しています。病院の入院外1日あたりの診療報酬点数は、平成30年の1,516点から令和6年には1,891点へと約375点増加しました。この増加は、主に注射が291点から516点へと約225点増加、在宅医療が103点から141点へ約38点増加、検査が293点から349点へ約56点増加したことによります。診療所の診療報酬点数は、平成30年の898点から令和6年には932点へと約34点増加し、ほぼ横ばいで推移しています。診療所では、検査が116点から142点へ約26点増加、在宅医療が46点から66点へ約20点増加、医学管理等が80点から98点へ約18点増加した一方で、投薬が210点から182点へ約28点減少、注射が72点から31点へ約41点減少しました。この違いは、病院と診療所の機能分化を反映しています。病院では高度な医療技術を要する注射や在宅医療が大きく増加し、診療所では日常的な検査と在宅医療の提供が強化される一方、投薬や注射は減少しています。診療科別にみる1施設あたり月額医療費の動向診療科別の1施設あたり月額医療費では、整形外科が最も高い水準を示しました。令和6年6月から令和7年2月までのデータによると、整形外科は約1,000万円、内科は約500万円、眼科は約500万円でした。令和6年度診療報酬改定後の変化では、診療科による違いが明確になりました。整形外科、皮膚科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科では医療費が増加し、内科、小児科、外科、その他では減少しました。整形外科の医療費が高い理由は、1施設あたり月間受診延日数が約2,500日と最も多く、リハビリテーションや処置などの診療報酬点数が高いためです。内科は受診延日数が約1,000日と整形外科の半分以下ですが、投薬や検査が診療報酬の主要な構成要素となっています。診療所における診療科別の診療報酬構成の特徴診療所の診療科別診療報酬構成は、各診療科の特性を反映した特徴的なパターンを示しています。令和6年のデータでは、内科の1日あたり診療報酬は約730点で、投薬が約180点、検査が約140点、医学管理等が約100点を占めました。精神科は約880点と診療所全体の平均より高く、精神科専門療法が約280点、投薬が約180点と特徴的な構成です。小児科は約610点で、医学管理等が約170点と他の診療科より高い割合を占め、小児かかりつけ診療料などが含まれています。泌尿器科は約1,050点と高い水準で、処置が約420点と診療報酬の約4割を占めます。この処置には人工腎臓及び特定保険医療材料等が含まれており、透析医療を反映した特徴的な構成となっています。整形外科は約940点で、リハビリテーションが約270点、処置が約140点と、機能回復を重視した診療内容が示されています。診療所の入院外受診延日数の診療科別分布診療所の入院外受診延日数を診療科別に分析すると、外来医療需要の構造が明らかになります。令和5年度のデータでは、総受診延日数約12億日のうち、内科が38%、整形外科が17%、眼科が8%、皮膚科と耳鼻咽喉科がそれぞれ7%、小児科が6%でした。内科の受診延日数が最も多い理由は、高血圧症や糖尿病などの慢性疾患患者が継続的に受診するためです。整形外科は腰部脊柱管狭窄症や変形性膝関節症などの患者が定期的なリハビリテーションや処置のために受診します。令和6年度診療報酬改定後、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科では受診延日数が増加し、その他の診療科では横ばいから微減となりました。この変化は、改定による評価の見直しが診療行動に影響を与えたことを示唆しています。まとめ中医協第612回総会で報告された外来診療の診療内容と医療費のデータから、3つの重要な動向が明らかになりました。病院では診療報酬点数が平成30年の1,516点から令和6年には1,891点へと約375点増加し、特に注射が約225点増加するなど大幅な伸びを示しました。診療所では898点から932点へとわずか34点の増加にとどまり、ほぼ横ばいで推移しています。診療科別では整形外科の1施設あたり月額医療費が約1,000万円と最も高く、令和6年度改定後も増加を続けました。診療報酬構成では病院で注射と在宅医療が大きく増加し、診療所では検査と在宅医療が増加する一方で注射は大幅に減少しています。これらのデータは、外来医療における病院と診療所の機能分化の進展と、各診療科の特性に応じた診療内容の変化を示しており、今後の診療報酬改定における重要な基礎資料となります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

2025年外来医療改革の全貌|かかりつけ医機能報告制度が変える地域医療

2025年外来医療改革の全貌|かかりつけ医機能報告制度が変える地域医療

Nov 6, 2025 09:03 岡大徳

令和7年7月16日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第612回)で、外来医療をとりまく環境について議論されました。日本の外来医療は2025年をピークに患者数が減少局面に入り、既に224の医療圏では2020年までにピークを迎えています。この現状に対応するため、令和7年4月から「かかりつけ医機能報告制度」が施行されます。医療機関は都道府県知事にかかりつけ医機能を報告し、地域の協議の場で不足する機能を確保する方策を検討します。本記事では、外来医療改革の3つの柱を説明します。第一は、かかりつけ医機能報告制度の創設です。第二は、医師偏在対策の強化です。第三は、医療資源の少ない地域への配慮です。各医療機関が自らの機能を報告し、地域で連携しながら必要な医療を提供する体制が構築されます。かかりつけ医機能報告制度が構築する新たな外来医療体制かかりつけ医機能報告制度は、令和7年4月から施行される外来医療改革の中核となる制度です。慢性疾患を有する高齢者等を地域で支えるために必要なかかりつけ医機能について、医療機関から都道府県知事に報告を求めます。報告を受けた都道府県知事は、医療機関がかかりつけ医機能の確保に係る体制を有することを確認し、外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告するとともに公表します。報告を求めるかかりつけ医機能の内容は、大きく3つに分類されます。第一は「日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」です。継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療を総合的に実施します。第二は「通常の診療時間外の診療、入退院時の支援、在宅医療の提供、介護等と連携した医療提供」です。時間外診療や入退院支援などの機能を担います。第三は「健診、予防接種、地域活動、教育活動、今後担う意向等」です。地域全体での医療提供体制の充実に貢献します。都道府県知事による確認を受けた医療機関は、慢性疾患を有する高齢者に在宅医療を提供する場合など外来医療で説明が特に必要な場合であって、患者が希望する場合に、かかりつけ医機能として提供する医療の内容について電磁的方法又は書面交付により説明するよう努めます。説明内容は、疾患名や治療計画、当該医療機関の連絡先等に加えて、当該患者に対する機能の内容、連携医療機関等を含みます。患者は自らのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるようになります。医師偏在対策が推進する地域医療の最適化医師偏在対策は、地域偏在と診療科偏在の両面から総合的に実施されます。令和6年12月25日に厚生労働省が公表した「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」では、医師養成過程を通じた取組、医師確保計画の実効性の確保、地域偏在対策における経済的インセンティブ等、診療科偏在の是正に向けた取組が示されています。重点医師偏在対策支援区域の設定により、優先的・重点的に対策を進めます。今後も定住人口が見込まれるが人口減少より医療機関の減少スピードが速い地域等を「重点医師偏在対策支援区域」と設定します。重点区域は、厚生労働省の示す候補区域を参考としつつ、都道府県が可住地面積あたり医師数、アクセス、人口動態等を考慮し、地域医療対策協議会・保険者協議会で協議の上で選定します。医師確保計画の中で「医師偏在是正プラン」を策定し、重点区域、支援対象医療機関、必要な医師数、取組等を定めます。経済的インセンティブの導入も検討されています。令和8年度予算編成過程で重点区域における支援について検討し、診療所の承継・開業・地域定着支援、派遣医師・従事医師への手当増額、医師の勤務・生活環境改善、派遣元医療機関へ支援などが含まれます。診療科偏在の是正に向けては、必要とされる分野が若手医師から選ばれるための環境づくり等、処遇改善に向けた必要な支援を実施します。外科医師が比較的長時間の労働に従事している等の業務負担への配慮・支援等の観点での手厚い評価について必要な議論を行います。医療資源の少ない地域における診療報酬上の配慮医療資源の少ない地域に配慮した診療報酬上の評価は、平成24年度改定から段階的に拡充されてきました。平成28年度改定では、対象地域に関する要件を見直し、患者の流出率についての要件を緩和するとともに、医療従事者が少ないこと自体を要件化しました。令和2年度改定では、医師に係る要件を緩和し、「人口当たり医師数が下位3分の1」から「人口当たり医師数が下位2分の1」に変更しました。令和6年度改定では、回復期リハビリテーション病棟に相当する機能を有する病室について、届出を病室単位で可能な区分を新設しました。地域包括ケア病棟入院料2及び4の施設基準における、「自院の一般病棟からの転棟患者の割合」に関する要件を緩和しました。在宅療養支援病院・診療所に係る24時間の往診体制の要件について、D to P with N(医師と看護師が連携して患者に対応する体制)の実施体制を整備することで要件を満たすこととする緩和を実施しました。二次医療圏の人口規模は多様であり、中央値は約22万人です。人口規模が20万人未満の二次医療圏は157、100万人以上の二次医療圏は25あります。2040年には、人口規模が20万人未満の二次医療圏は182、10万人未満の二次医療圏は109となると推計されます。人口の少ない二次医療圏では、総合入院体制加算や急性期充実体制加算の件数要件の達成が困難な場合があるため、地域の実情を踏まえた基準緩和や代替的な評価の検討が必要です。まとめ令和7年4月施行のかかりつけ医機能報告制度は、外来医療改革の中核となる制度です。医師偏在対策の強化により、重点医師偏在対策支援区域への優先的な支援が実施されます。医療資源の少ない地域への診療報酬上の配慮は、段階的に拡充されてきました。各医療機関が自らの機能を報告し、地域で連携しながら必要な医療を提供する体制が構築され、複数の慢性疾患や医療・介護の複合ニーズを有する高齢者が増加する中で、地域の医療機関等や多職種が機能や専門性に応じて連携して、効率的に質の高い医療を提供する体制が確保されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

令和8年度診療報酬改定の基本方針を解説│医療機関の賃上げと持続可能性を両立する4つの視点

令和8年度診療報酬改定の基本方針を解説│医療機関の賃上げと持続可能性を両立する4つの視点

Nov 5, 2025 07:33 岡大徳

令和7年10月27日に開催された第120回社会保障審議会医療部会で、令和8年度診療報酬改定の基本方針に関する議論が行われました。この基本方針は、医療機関等が直面する厳しい経営環境に対応しながら、2040年頃を見据えた持続可能な医療提供体制を構築するための方向性を示すものです。本稿では、基本認識、基本的視点、具体的方向性について解説します。基本方針は4つの基本認識と4つの基本的視点で構成され、特に物価高騰・賃金上昇への対応を重点課題としています。基本認識では、日本経済がコストカット型から脱却し新たなステージに移行する中で、医療機関の経営安定と医療従事者の賃上げが急務であることを明確にしました。基本的視点では、視点1として「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」を重点課題に位置づけ、医療従事者の処遇改善と人材確保を最優先としています。視点2では2040年頃を見据えた医療機関の機能分化と地域包括ケアシステムの推進、視点3では医療DXやイノベーションによる質の高い医療の実現、視点4では後発医薬品の使用促進など効率化・適正化による制度の持続可能性向上を掲げています。基本認識:医療を取り巻く4つの環境変化基本認識は、令和8年度診療報酬改定を検討する上で前提となる医療を取り巻く環境変化を整理したものです。この基本認識に基づいて、基本的視点と具体的方向性が展開されます。第一の基本認識は、日本経済が新たなステージに移行する中での物価・賃金の上昇と人材確保の課題です。現下の日本経済は持続的な物価高騰・賃金上昇の中にあり、30年続いたコストカット型経済から脱却しつつあります。医療分野は公定価格であるために経済社会情勢の変化に機動的な対応が難しく、サービス提供や人材確保に大きな影響を受けています。経済財政運営と改革の基本方針2025では、高齢化による増加分に経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算することが示されており、医療機関等の経営安定と現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる対応が必要です。第二の基本認識は、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築です。2040年頃に向けては、全国的に生産年齢人口は減少する一方で、医療・介護の複合ニーズを有する85歳以上人口が増加します。65歳以上の高齢者人口については、増加する地域と減少する地域で地域差が生じることが見込まれます。こうした人口構造や地域ごとの状況変化に対応するため、限りある医療資源を最適化・効率化しながら、「治す医療」と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、地域完結型の医療提供体制を構築する必要があります。第三の基本認識は、医療の高度化や医療DX、イノベーションの推進です。安心・安全で質の高い医療を実現するため、医療技術の進歩や高度化を国民に還元するとともに、ドラッグ/デバイス・ラグ/ロスへの対応が求められています。デジタル化された医療情報の積極的な利活用を促進し、医療現場においてAI・ICT等を活用して医療DXを進めることが、個人の健康増進に寄与するとともに、より効果的・効率的かつ安心・安全で質の高い医療を実現するために重要です。第四の基本認識は、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保です。制度の安定性・持続可能性を確保しつつ国民皆保険を堅持し次世代に継承するためには、経済・財政との調和を図りつつ、限られた人材の中でより効率的・効果的な医療政策を実現するとともに、国民の制度に対する納得感を高めることが不可欠です。経済財政運営と改革の基本方針2025や新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版等を踏まえ、適正化、医療資源の効率的・重点的な配分、医療分野におけるイノベーションの評価等を通じた経済成長への貢献を図る必要があります。基本的視点:改定を方向づける4つの柱基本的視点は、基本認識を踏まえて令和8年度診療報酬改定の方向性を示す4つの柱です。この4つの視点に基づいて、具体的方向性が検討されます。視点1は「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」で、今回の改定の重点課題です。医療機関等は現下の持続的な物価高騰により、事業収益の増加以上に人件費、委託費や医療材料費等の物件費が増加し、事業利益が悪化しています。2年連続5%を上回る賃上げ率であった春闘などにより全産業において賃上げ率が高水準となる中、医療分野はこれに届いておらず人材確保も難しい状況です。医療機関等が資金繰り悪化等により必要な医療サービスが継続できない事態は避けなければならないことから、物価高騰による諸経費の増加を踏まえた対応や、必要な処遇改善等を通じた医療従事者の賃上げ・人材確保のための取組を進めることが急務です。視点2は「2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」です。中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据えた上で医療提供体制を構築していく必要があります。医療機関の機能に着目した分化・連携、病床の機能分化・連携等の入院医療を始めとして、外来医療・在宅医療、介護との連携を図ることが重要です。更なる生産年齢人口の減少に伴って医療従事者確保の制約が増す中で、ICT・AI・IoT等の利活用の推進等により業務効率化・負担軽減を行うこと、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進等により多職種が連携して医療現場を支えることが必要です。視点3は「安心・安全で質の高い医療の推進」です。患者の安心・安全を確保しつつ、医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえ、第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、イノベーションを推進し、新たなニーズにも対応できる医療の実現に資する取組の評価を進めます。患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制評価、医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制評価、救急医療・小児・周産期医療・がん医療・精神医療の充実など、重点的な対応が求められる分野への適切な評価が必要です。視点4は「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」です。高齢化や技術進歩、高額な医薬品の開発等により医療費が増大していくことが見込まれる中、国民皆保険を維持するため、医療資源を効率的・重点的に配分するという観点も含め、制度の安定性・持続可能性を高める不断の取組が必要です。医療関係者が協働して医療サービスの維持・向上を図るとともに、効率化・適正化を図ることが求められます。具体的方向性:視点を実現する取組の例示具体的方向性は、4つの基本的視点をそれぞれ実現するための取組を例示したものです。この具体的方向性に基づいて、中央社会保険医療協議会で個別の診療報酬点数や算定要件が検討されます。視点1「物価や賃金、人手不足などの医療機関等を取りまく環境の変化への対応」の具体的方向性には、3つの柱があります。第一は、医療機関等が直面する人件費、委託費や医療材料費等の物件費の高騰を踏まえた対応です。第二は、医療従事者の処遇改善で、賃上げや業務効率化・負担軽減等の業務改善による人材確保に向けた取組を進めます。第三は、業務の効率化に資するICT・AI・IoT等の利活用の推進、タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進、医師の働き方改革の推進、診療科偏在対策、診療報酬上求める基準の柔軟化などです。視点2「2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」の具体的方向性には、患者の状態及び必要と考えられる医療機能に応じた入院医療の評価、「治し、支える医療」の実現、かかりつけ医・かかりつけ歯科医・かかりつけ薬剤師の機能の評価、外来医療の機能分化と連携、質の高い在宅医療・訪問看護の確保、人口・医療資源の少ない地域への支援、医師偏在対策の推進などが含まれます。「治し、支える医療」の実現では、在宅療養患者や介護保険施設等入所者の後方支援機能を担う医療機関の評価、円滑な入退院の実現、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進が重要です。視点3「安心・安全で質の高い医療の推進」の具体的方向性には、患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価、アウトカムにも着目した評価の推進、医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価、質の高いリハビリテーションの推進などがあります。重点的な対応が求められる分野として、救急医療の充実、小児・周産期医療の充実、質の高いがん医療の評価、質の高い精神医療の評価、難病患者等に対する適切な医療の評価、感染症対策や薬剤耐性対策の推進が挙げられています。視点4「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」の具体的方向性には、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、OTC類似薬等の薬剤給付の在り方の検討、費用対効果評価制度の活用、市場実勢価格を踏まえた適正な評価が含まれます。医薬品の適正使用等の推進では、電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組により、重複投薬、ポリファーマシー、残薬への対応、医学的妥当性や経済性の視点も踏まえた処方の推進が求められています。まとめ:コストカット型からの転換と2040年を見据えた改定令和8年度診療報酬改定の基本方針は、30年続いたコストカット型経済からの脱却という大きな転換点に立っています。視点1を重点課題として物価高騰・賃金上昇への対応を最優先としながら、視点2で2040年頃を見据えた地域完結型医療提供体制の構築、視点3で医療DXやイノベーションによる質の向上、視点4で制度の持続可能性の確保をバランスよく推進する方針です。医療機関の経営安定と医療従事者の賃上げを実現しつつ、地域包括ケアシステムの推進と制度の持続可能性を両立させる改定が期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

医療法人の経営状況が深刻化:令和6年度は病院の6割が医業赤字に

医療法人の経営状況が深刻化:令和6年度は病院の6割が医業赤字に

Nov 4, 2025 07:33 岡大徳

令和7年10月27日に開催された第120回社会保障審議会医療部会で、医療法人経営情報データベースシステム(MCDB)に基づく最新の経営状況が報告されました(資料2-1:令和7年7月末時点、資料2-2:令和7年8月末時点速報版)。医療法人の経営悪化は医療提供体制の持続可能性に直結する重要課題です。本報告では、最新データから明らかになった医療法人の深刻な経営実態を分析します。令和6年度決算では、医療法人の経営状況が全施設種別で悪化しました。病院の医業赤字割合は59.7%に達し、約6割の病院が本業で赤字を計上しています。無床診療所の医業赤字割合は40.8%に上昇し、令和5年度の32.1%から8.7ポイント悪化しました。有床診療所も医業赤字割合が50.6%となり、半数以上が赤字です。経常収支でも病院の赤字割合が49.4%に達し、経常利益率は病院の中央値が0.0%まで低下しました。病院類型別では精神科病院の医業赤字割合が65.9%と最も深刻です。医業収支の悪化が顕著:病院・診療所の赤字割合が軒並み上昇令和6年度決算における医業収支は、全施設種別で赤字割合が上昇しました。医業収支は医療機関の本業である診療活動から得られる収益と費用の差を示す指標です。病院の医業赤字割合は令和5年度の55.4%から令和6年度には59.7%へと4.3ポイント悪化しました。この数値は、医療法人立病院の約6割が診療活動だけでは収支を維持できない状況を示しています。病院の医業利益額は中央値で▲13,724千円となり、赤字幅が拡大しました。無床診療所の経営悪化はさらに深刻です。無床診療所の医業赤字割合は令和5年度の32.1%から令和6年度には40.8%へと8.7ポイント上昇しました。令和5年度時点では約3分の2の無床診療所が医業黒字を維持していましたが、令和6年度には黒字施設が6割を下回る事態となりました。無床診療所の医業利益額は中央値で2,713千円に減少し、令和5年度の5,249千円から半減しています。有床診療所も経営環境が厳しくなっています。有床診療所の医業赤字割合は令和5年度の49.9%から令和6年度には50.6%へと0.7ポイント上昇し、半数を超えました。有床診療所は入院機能と外来機能を併せ持つため、両方の収支悪化の影響を受けやすい構造にあります。病院類型別分析:精神科病院の経営が最も厳しい状況に病院を一般病院、療養型病院、精神科病院の3類型に分けて分析すると、経営状況に差異が見られます。病院類型の定義は、療養病床比率60%未満を一般病院、60%以上を療養型病院、精神病床比率100%を精神科病院としています。精神科病院の経営悪化が最も顕著です。精神科病院の医業赤字割合は令和5年度の55.8%から令和6年度には65.9%へと10.1ポイント悪化しました。精神科病院の約3分の2が医業赤字を計上している計算になります。精神科病院の医業利益額は中央値で▲28,375千円となり、3類型の中で最も大きな赤字幅です。一般病院も経営環境が厳しくなっています。一般病院の医業赤字割合は令和5年度の58.2%から令和6年度には60.6%へと2.4ポイント悪化しました。一般病院は急性期医療を中心に担っており、診療報酬の影響を受けやすい特性があります。一般病院の医業赤字割合は3類型の中で2番目に高い水準です。療養型病院の医業赤字割合は令和5年度の49.6%から令和6年度には53.7%へと4.1ポイント上昇しました。療養型病院は3類型の中では相対的に赤字割合が低いものの、それでも半数以上が医業赤字を計上しています。療養型病院は長期入院患者を中心に診療しており、診療報酬の安定性が比較的高い特性がありますが、人件費や物価上昇の影響は避けられません。経常収支も全面的に悪化:経常利益率の大幅低下が示す経営圧迫経常収支は医業収支に医業外収益と医業外費用を加えた総合的な経営指標です。経常収支の悪化は、医療機関が補助金などの医業外収益でも赤字をカバーできない状況を示します。病院の経常赤字割合は令和5年度の41.5%から令和6年度には49.4%へと7.9ポイント悪化しました。病院の約半数が経常ベースでも赤字を計上しています。病院の経常赤字割合が5割に迫る水準は、医療提供体制の持続可能性への警鐘です。無床診療所の経常赤字割合は令和5年度の25.4%から令和6年度には34.4%へと9.0ポイント上昇しました。無床診療所は医業外収益が相対的に少ないため、医業収支の悪化が経常収支に直結しやすい構造です。無床診療所の約3分の1が経常赤字を計上する事態は、地域医療の最前線を担う診療所の経営基盤の脆弱化を示しています。有床診療所の経常赤字割合は令和5年度の38.9%から令和6年度には40.8%へと1.9ポイント上昇しました。有床診療所は無床診療所より経常赤字割合が高く、入院機能を維持するコストの重さが経営を圧迫しています。経常利益率の推移は経営悪化の深刻さを端的に示します。令和5年度から令和6年度にかけて二期連続で決算を提出した医療法人のデータ(資料2-1、令和7年7月末時点)によると、病院の経常利益率は平均値が2.0%から0.3%へ、中央値が1.7%から0.0%へと大幅に低下しました。病院の経常利益率の中央値が0.0%という数値は、半数の病院が経常収支でも利益を出せていないことを意味します。無床診療所の経常利益率も平均値が9.6%から5.7%へ、中央値が6.8%から2.9%へと大幅に低下しました。有床診療所の経常利益率は平均値が5.6%から4.2%へ、中央値が2.8%から1.3%へと低下しました。医療法人経営悪化の要因と今後の課題医療法人の経営悪化には複合的な要因が作用しています。人件費の上昇、物価高騰、光熱費の増加などのコスト増が医療機関を直撃しています。人件費の上昇圧力が継続しています。医療・介護分野では人材確保が喫緊の課題となっており、賃上げは避けられない状況です。令和7年6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2025では、医療・介護等の現場で働く幅広い職種の賃上げに確実につながる対応が明記されました。人件費は医業費用の大部分を占めるため、賃上げは医療機関の経営に直接影響します。物価上昇の影響も深刻です。医療材料費、医薬品費、光熱費などが上昇しており、医療機関の費用構造を圧迫しています。診療報酬は公定価格であるため、市場価格の上昇を即座に転嫁できない構造的な問題があります。控除対象外消費税等負担額比率のデータからも、税負担が医療機関の経営を圧迫していることが読み取れます。診療報酬改定の影響を検証する必要があります。令和6年度診療報酬改定では、医療従事者の賃上げや物価上昇への対応が図られましたが、今回のデータは改定の効果が十分でなかった可能性を示唆しています。経済財政運営と改革の基本方針2025では、令和6年度診療報酬改定による処遇改善・経営状況等の実態を把握・検証し、令和7年末までに結論を得るよう検討することが明記されました。医療機関の機能分化と連携の推進が求められます。病床機能の適正化、地域医療構想の推進、医師の適正配置などを通じて、効率的で質の高い医療提供体制を構築する必要があります。個々の医療機関の経営改善努力だけでなく、医療制度全体の最適化が不可欠です。まとめ:医療提供体制の持続可能性確保に向けた政策対応が急務医療法人の経営状況は令和6年度決算で全面的に悪化しました。病院の医業赤字割合は59.7%、経常赤字割合は49.4%に達し、約6割の病院が本業で赤字を計上する深刻な事態です。無床診療所の医業赤字割合は40.8%に上昇し、有床診療所も医業赤字割合が50.6%と半数を超えました。病院類型別では精神科病院の医業赤字割合が65.9%と最も厳しい状況です。経常利益率も病院の中央値が0.0%まで低下し、経営環境の厳しさを浮き彫りにしています。医療提供体制の持続可能性を確保するため、診療報酬の適切な設定、医療機関の経営効率化支援、地域医療構想の着実な推進が求められます。政府は令和6年度診療報酬改定の効果検証を進め、令和7年末までに結論を得る方針です。医療経済学の視点からは、医療の質を維持しながら効率性を高める制度設計が重要であり、エビデンスに基づいた政策立案が期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進策と具体的論点【2025年最新】

医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進策と具体的論点【2025年最新】

Nov 3, 2025 06:58 岡大徳

令和7年10月27日に開催された第120回社会保障審議会医療部会では、医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する重要な論点が示されました。2040年に向けて医療従事者不足が深刻化する中、医療機関が持続可能な体制を構築するための具体的な方策が議論されています。本稿では、社会保障審議会が提示した現状認識と課題、業務DX化の推進策、タスク・シフト/シェアの促進策について、医療機関の経営者や医療政策に関心をお持ちの方に向けて詳しく解説します。社会保障審議会医療部会は、医療機関における2つの重要な論点を提示しました。第1の論点は、業務のDX化推進に関するもので、先進的医療機関の成功事例を医療界全体に広げるための支援策や制度的枠組みの必要性が指摘されています。第2の論点は、タスク・シフト/シェアの推進等に関するもので、看護師の特定行為研修制度の見直しやオンライン診療の適切な普及が検討されています。これらの施策により、超過勤務時間の減少や職場満足度の向上といった効果が期待されており、医療機関勤務環境改善支援センターなどの支援体制も活用可能です。2040年問題と医療従事者不足の深刻化2040年に向けて高齢者人口がピークを迎える一方、15歳から64歳の生産年齢人口は減少していきます。この人口構造の変化により、医療従事者の確保は現在よりもさらに困難となることが見込まれています。特に、人口減少のスピードは地域によって大きく異なるため、早晩、これまでと同じ医療提供が難しくなる地域も出てきます。この人口減少の影響は地域差が顕著です。現在の人口規模が15万から20万人の二次医療圏であっても、2040年に向けた人口減少率は地域によって大きく異なります。約30%減少する地域から、数%の減少にとどまる地域まで様々であり、地域の実情に応じた対応が必要です。我が国では、十分な省力化投資やデジタル化が進んでおらず、他の先進国と比べて医療福祉業の実質労働生産性の上昇率が低水準であるとの分析があります。現在の医療機関には、物価や建築単価の上昇等により、医療従事者の賃上げや省力化投資を行うだけの余力がないとの指摘も多くあります。ただし、先行投資を行い業務のDX化やタスク・シフト/シェア等を積極的に実施している医療機関では、超過勤務時間の減少や職場満足度の向上といった結果につながっている事例があります。厚生労働省では、2040年時点で単位時間当たりのサービス提供を5%以上改善することを目標としており、医師については7%以上の改善を目指しています。業務のDX化推進に関する具体的論点と支援策業務のDX化については、物価や賃金の上昇等の影響でDX化投資を行う余力がない医療機関もあると考えられ、医療界全体での取組とはなっていません。一方で、積極的な投資を行い、ICT機器の導入や生成AIサービスの活用等によって、文書や記録作成等の業務のDX化を進めている医療機関が出てきています。これらの先進的な医療機関では、超過勤務時間の減少や経費の節減等につなげている実績があります。業務効率化を実現した場合の人員配置基準の緩和の検討が必要ではないかとの指摘や、医療機関が適正な価格でICT機器等を導入できるような環境整備が必要との指摘もあります。既に業務効率化を実施してきた医療機関がその取組をさらに加速化させるとともに、業務効率化に取り組む医療機関の裾野を広げ、医療界全体での実効ある取組とするためには、どのような支援や制度的枠組みが必要かが論点となっています。国や自治体による更なる支援体制の構築も必要との指摘があります。医療DXの推進は医療の質の向上や効率化、働き方改革に大いに貢献するものと考えられます。医療部会では、ICTやAIを活用した医療DXの推進が重要であるとの意見が多く出されました。ただし、これらを導入するには多大なコストがかかり、現状の病院の経営状況では多くの病院が導入できないという課題があります。十分な財政支援、あるいは診療報酬での評価が必須との指摘がありました。タスク・シフト/シェア推進と特定行為研修制度の見直し看護師の特定行為研修制度については、令和7年9月に「看護師の特定行為研修制度見直しに係るワーキンググループ」が設置され、見直しに向けた議論が開始されました。特定行為研修を修了した看護師の活躍促進に向けて、どのような取組が必要かが検討されています。医師の働き方改革の推進に伴い、タスク・シフト/シェアの取組を進めてきています。これまでの取組の定着化が必要ではないかとの指摘があります。医療部会では、業務負担の軽減に向けて、医療職一人一人が専門性を十分に発揮できるよう、タスク・シフト/シェアや、チーム医療に加えて、多職種連携も促進することが必要との意見が出されました。医療の質や安全の確保を前提に、医療従事者の業務効率化という観点から、いわゆる「D to P with N」等によるオンライン診療などを適切に普及・推進するためにどのような対応が考えられるかも論点となっています。限られた人材で安全かつ効率的な医療を提供するにあたっては、タスク・シフト/シェア、ICTの活用、多職種連携等が必要です。医療機関における配置基準について、引き続き合理的に見直しを図っていくことも検討されています。人員配置基準が足かせになっているならば、人員配置基準の見直し、緩和ということを検討すべきとの意見もありました。省力化・DXへの投資は、持続性を高める上では必要であり、エビデンスを重ねて、さらにルールの見直しなども今後視野に入れていくべきではないかとの指摘があります。医療勤務環境改善支援センターの活用と省力化投資促進プラン医療勤務環境改善支援センターは、医療従事者の勤務環境改善を促進するための拠点として、各都道府県が設置しています。平成29年3月までに全都道府県に設置され、都道府県の直接運営や県医師会、病院協会等の団体への委託により運営されています。同センターには、医療労務管理アドバイザーや医業経営アドバイザーが配置され、医療機関からの相談に応じて、医療機関の勤務環境改善や医師の働き方改革の取組を支援しています。相談に基づく助言や支援に加えて、医療機関の状況に応じたプッシュ型の助言や支援も実施しています。省力化投資促進プラン(医療分野)では、多面的な促進策が示されています。看護業務の効率化の推進に資する機器等の導入支援、医師の労働時間短縮に資する機器等の導入支援、医療DXの推進のための情報基盤の整備などが含まれています。医療分野における適切で有効な機器等の開発・実装、オンライン診療に関する総体的な規定の創設、タスク・シフト/シェアの推進も盛り込まれています。同プランでは、具体的な目標とKPIも設定されています。地域医療確保暫定特例水準適用医師の時間外労働について、現状の上限1,860時間から2029年度までに上限1,410時間への削減を目指しています。看護職員の月平均超過勤務時間についても、現状の5.1時間から2029年度までに2027年度比での減少を目指すこととされています。まとめ社会保障審議会医療部会が示した医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進に関する論点は、2040年問題への対応として極めて重要な意味を持ちます。業務のDX化推進については、先進的医療機関の成功事例を医療界全体に広げるための支援策や制度的枠組みの整備が必要です。タスク・シフト/シェアの推進については、看護師の特定行為研修制度の見直しやオンライン診療の適切な普及が検討されています。医療勤務環境改善支援センターや省力化投資促進プランなどの支援体制を活用しながら、医療機関全体で業務効率化と職場環境改善を進めていくことが求められています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

令和8年度診療報酬改定に向けた中長期的検討課題3選:持参薬・重症度評価・包括医療の見直しポイント

令和8年度診療報酬改定に向けた中長期的検討課題3選:持参薬・重症度評価・包括医療の見直しポイント

Nov 2, 2025 08:07 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会では、次期診療報酬改定に向けた評価・分析を進める中で、データ解析の技術的限界や委員間の見解相違により即座に結論を出せない課題が明らかになりました。中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織である同分科会は、これらの課題について中長期的な検討が必要と判断しました。本稿では、来年度以降に実施される実態調査や厚生労働科学研究等での検討が求められる3つの重要課題の内容を説明します。中長期的検討が必要な課題は、持参薬ルールの明確化、重症度・医療・看護必要度の在り方の整理、包括期入院医療における患者別評価の実現の3つです。持参薬ルールについては、DPC/PDPSでの公平な支払いを実現するため、医療機関間で大きなばらつきがある持参薬使用割合の統一的運用に向けた検討が必要です。重症度・医療・看護必要度については、平成20年度の導入から約20年が経過し、入院患者の高齢化や医療環境の変化に伴う指標の妥当性検証が求められています。包括期入院医療における患者別評価については、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟において、疾患・ADL・診療行為等に応じた適切な評価の実現が課題となっています。持参薬ルールの明確化が求められる背景持参薬ルールの明確化が必要となった背景には、DPC/PDPSにおける公平な支払いの実現という課題があります。DPCデータによると、入院中の持参薬使用割合は医療機関間で大きなばらつきが認められており、統一的な運用が行われていない実態が明らかになりました。統一的な運用を推進するための持参薬ルールの明確化には、医療安全を確保する観点、病棟における持参薬の確認業務の負担の観点、患者が薬剤を持参する負担の観点など、多角的な検討が必要です。具体的には、当該持参薬の処方元が自院であるか他院であるかの別、予定入院と緊急入院の別、入院中の診療内容と当該持参薬の関係性の別、薬剤の特性別など、具体的な場面を想定した妥当性の検討が求められます。併せて、DPC/PDPS以外で薬剤費が包括される入院料を算定する病棟における持参薬の取扱いについても、検討を進めることが望ましいとされています。重症度・医療・看護必要度の在り方の整理重症度・医療・看護必要度の在り方の整理が必要となった理由は、指標導入から約20年の経過における医療環境の変化です。重症度・看護必要度は平成20年度改定で、病棟のタイムスタディ調査等の研究成果をもとに「入院患者へ提供されるべき看護の必要量」を予測する指標として導入されました。平成26年度改定では「重症度・医療・看護必要度」に名称変更され、急性期患者の医学的特性を測る目的が重視されました。平成28年度改定では医学的状況を測るC項目が加わり、平成30年度改定では病棟の看護職員の測定負担を軽減する観点から、A項目及びC項目をレセプト電算コードにより評価する「重症度・医療・看護必要度Ⅱ」が選択可能とされました。このような経緯を踏まえると、よりよい入院医療の診療報酬評価を実現するための重症度・医療・看護必要度の在り方を検討する前提として、2つの考え方の整理が必要です。「入院患者へ提供されるべき看護の必要量を予測すること」と「急性期患者の医学的な特性を測ること」という2つの考え方をどのように勘案すべきかについて、整理する必要があります。入院患者の高齢化や、電子カルテ等のICT技術の進展、インフォームド・コンセント等患者本位の医療の普及等による病棟看護業務の変化に伴って、現在の指標が実際の病棟の看護の必要量を適切に推測できているのか、検証する必要があります。最新の病棟のタイムスタディ調査によると、病棟看護業務の約25%を「診療・治療」が占め、約25%を「患者のケア」が占めている実態が明らかとなりました。このうち「診療・治療」の定量的評価は、診療行為のレセプト電算コードを用いて表現可能であり、A項目・C項目、医療資源投入量はレセプト電算コードを活用した評価方法となっています。「患者のケア」については、要介護度、ADL、B項目などで測定されうるが、これらの評価項目は重複があり、一定の類似性があるという分析結果となっています。特にB項目については、患者の高齢化に伴う近年の看護業務の増加を証明することに有用ではないかという意見がありますが、B項目のこうした観点での有用性の検証は、レセプトデータや診療行為情報が主体のDPCデータでは限界があることに留意する必要があります。重症度・医療・看護必要度に関するこうした検討は、あくまで適切な診療報酬の支払いを実現する観点で行われるべきものです。しかし、測定した結果を、医療現場において入退院時の医療・介護連携の推進、病棟内の多職種連携の推進、病棟の人員マネジメントの向上等に用いることが有用である可能性もあることから、こうした観点も含め検討することが考えられます。包括期入院医療における患者別評価の実現包括期入院医療における患者別評価の実現が求められる理由は、患者選別による病棟機能低下の懸念です。患者ごとに医療・看護ケアの必要量に応じた適切な費用が償還されない仕組みの場合、入棟させる患者の選別を引き起こし、結果として病棟の機能の低下につながる懸念があります。現在、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟などの主として高齢者を受け入れる機能を担う病棟には、急性期病棟のDPC/PDPSのような仕組みはありません。DPC/PDPSでは、疾患・ADL・診療行為等に応じて患者別に包括評価の支払額及び標準的な在院日数を変化させる仕組みですが、地域包括医療病棟等では基本的にすべての患者が一律の支払額及び標準的な在院日数により算定する仕組みとなっています。こうした機能を担う病棟の、より適切な患者別の評価の実現に向けて検討を行った結果、特に地域包括医療病棟においては、緊急入院や手術の有無等による「医療資源投入量(包括範囲出来高実績点数)」に一定の違いがあることが明らかとなりました。一方で、「医療資源投入量(包括範囲出来高実績点数)」が同程度でも、高齢者のADLや要介護度は様々であり、これらに要する看護ケアの必要度は「医療資源投入量」という考え方のみでは推し量れない部分がある、という意見があることに留意する必要があります。高齢者は、複数疾患を併存している場合が多いこと、症状が非典型的に表れやすいことから、DPC/PDPSのように「医療資源を最も投入した傷病名」を一意に定めて区分を決める支払い方式はなじみにくく、予定入院と緊急入院の別や手術実施等の客観的事実に着目した評価がよいのではないか、という意見がありました。地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟に期待される機能が連続的であることを踏まえた評価方法とすることや、高齢者の介護の必要性を反映することができる評価方法とすることも考えられます。いずれにしても、より適切な患者別の評価の実現に向けて、引き続き最新の診療データを用いた分析を行う他、別途実態調査等の実施の要否も含め、現行の評価方法の課題の明確化や妥当性の検証を行いつつ、更に検討する必要があります。まとめ:来年度以降の検討に向けて中長期的に検討すべき3つの課題は、いずれも入院医療の質の向上と公平な診療報酬の支払いを実現するために重要な論点です。持参薬ルールの明確化は、DPC/PDPSにおける統一的な運用を推進し、公平な支払いを実現するために不可欠です。重症度・医療・看護必要度の在り方の整理は、入院患者の高齢化や医療環境の変化に対応した適切な評価指標の確立に必要です。包括期入院医療における患者別評価の実現は、高齢者の多様な医療・看護ケアの必要量を適切に反映し、病棟機能の低下を防ぐために求められます。これらの課題について、来年度以降に実施される入院・外来医療等における実態調査や厚生労働科学研究等により、更に検討が進められることが期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

診療報酬における業務簡素化の最新動向【2026年度改定に向けた検討内容】

診療報酬における業務簡素化の最新動向【2026年度改定に向けた検討内容】

Nov 1, 2025 06:40 岡大徳

医療現場では、計画書作成や署名・押印といった診療報酬上の書類業務が大きな負担となっています。入院・外来医療等の調査・評価分科会の実態調査では、施設の44.2%が計画書作成の簡素化を求めており、病棟では61.8%がこの業務負担を感じています。規制改革推進に関する答申でも、医療機関の負担軽減の観点から署名・押印の不要化検討が求められる状況です。こうした現状を踏まえ、診療報酬上の書類や手続きを見直し、医療現場の業務効率化を図ることが急務となっています。業務簡素化に向けた具体的な対策が、令和7年度の検討で明らかになりました。計画書作成と署名・押印の簡素化が最優先課題として位置づけられています。リハビリテーション計画書の様式統合やDPCデータ入力の見直しも検討されています。電子署名やIT機器を活用した効率化の推進も、導入費用への配慮とともに議論されています。医療現場が求める簡素化の実態実態調査が示す簡素化ニーズは、施設全体と病棟で異なる特徴を持ちます。施設全体の調査では、「計画書作成」を簡素化すべきとする回答が44.2%で最多でした。入院診療計画書、退院支援計画書、リハビリテーション総合実施計画書などの作成業務が、医療機関全体の負担となっています。次いで「DPCデータ(様式1)の作成」が38.2%を占めており、データ入力の負荷が課題です。病棟における簡素化ニーズは、より明確な傾向を示しています。「計画書作成」の簡素化を求める声が61.8%に達しました。病棟は患者と直接向き合う現場であり、計画書作成の実務負担が特に大きいことがわかります。「患者や家族等による署名・記名押印」の簡素化を求める回答も45.1%に上りました。入院時には患者が何度も署名を求められる実態があり、形式的な署名手続きが患者・医療者双方の負担となっています。署名・押印見直しの背景と方向性署名・押印の見直しは、規制改革の文脈で推進されています。規制改革推進に関する答申では、医療機関等又は医師等の負担軽減の観点から具体的な要請がありました。診療報酬上の書面について、署名又は記名・押印を不要とすることの可否を検討すべきとされています。この答申を受けて、中央社会保険医療協議会の入院・外来医療等の調査・評価分科会で議論が進められました。現在の様式では、医師・患者双方の署名が必要なものが多数存在します。入院診療計画書、リハビリテーション実施計画書、目標設定等支援・管理シート、職場復帰の可否等についての主治医意見書、短期滞在手術等同意書では、医師と患者・家族の双方の署名が求められています。医師のみの署名が必要なものとして、診療情報提供書、訪問看護指示書、介護職員等喀痰吸引等指示書があります。患者・家族のみの署名が必要なものには、緩和ケア実施計画書、生活習慣病療養計画書、認知症療養計画書、地域包括診療加算に関する同意書などがあります。分科会での議論では、署名の必要性を慎重に検討する姿勢が示されました。入院すると患者は何度も署名を求められますが、形式的なものも多いため、患者負担軽減の観点から検討すべきとの意見がありました。ただし、訪問看護指示書のような医師の署名は入院診療計画書等とは性質が異なるため、各様式の趣旨を考慮しながら簡素化を検討する必要があるとの指摘もありました。具体的な簡素化の対象と課題簡素化の対象として、3つの重点項目が浮かび上がっています。入院診療計画書は、入院後7日以内に患者に説明を行う文書です。病名、症状、治療計画、検査内容及び日程、手術内容及び日程、推定される入院期間等を記載する必要があります。入院診療計画書等の様式には署名欄が設けられており、主治医や患者又はその家族等の署名が必要です。また、入院支援計画書は全ての入院患者に作成し、説明に用いた文書は患者に交付するとともに、その写しを診療録に添付する必要があります。リハビリテーション計画書は、様式の複雑さが課題となっています。リハビリテーションに関する計画書の様式は複数存在し、重複する項目が多いのが実態です。いずれの様式においても署名欄が設けられており、説明者や患者又はその家族等の署名が必要となっています。分科会では、リハ計画書の説明は重要であるものの、適時に医師が患者や家族に説明するのは難しい場合も多いとの意見がありました。医師の指示を受けた療法士等が説明して同意を得る仕組みも必要ではないかとの提案もなされています。DPCデータの様式1は、入力負荷が特に大きい項目が存在します。DPCデータ等の様式1において入力を求めているデータのうち、主として診療報酬改定のために必要な情報には課題があります。入院全期間の評価が必要な項目や検査値等、入力の負荷が特に大きいと考えられるものが一定数存在しています。今後の改善に向けた論点業務簡素化の推進には、複数の視点からの検討が必要です。分科会では、業務の簡素化を積極的に進めるべきとの基本方針が示されました。患者負担軽減の観点からも、形式的な署名の必要性は見直すべきとの認識が共有されています。電子化・IT活用の推進は、効率化の重要な手段として位置づけられています。電子署名やIT機器を活用した業務の簡素化は重要ですが、導入費用がかかることも認識して検討する必要があるとの意見がありました。医療機関の規模や経営状況に応じた、実現可能な方策を検討することが求められます。各様式の趣旨を考慮した段階的な見直しが、現実的なアプローチとなります。訪問看護指示書の医師の署名は入院診療計画書等とは性質が異なるため、各様式の趣旨を考慮しながら簡素化を検討する必要があるとの指摘は重要です。医療安全や患者の権利保護といった本来の目的を損なわない範囲で、実務負担を軽減する方策を探ることが求められています。まとめ診療報酬における業務簡素化は、医療現場の切実な要望を受けて具体的な検討段階に入りました。計画書作成と署名・押印の簡素化を最優先に、リハ計画書の様式統合やDPCデータ入力の見直しが進められています。電子署名やIT活用による効率化も、導入費用への配慮とともに推進されます。各様式の趣旨を踏まえた段階的な改善により、医療従事者と患者双方の負担軽減が期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

小児・周産期医療の転換点:MFICU届出減少と移行期医療の課題を分析【令和7年度分科会報告】

小児・周産期医療の転換点:MFICU届出減少と移行期医療の課題を分析【令和7年度分科会報告】

Oct 31, 2025 07:16 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会は、小児・周産期医療における重要な課題を明らかにしました。分科会は、出生数の減少が続く中で小児の受療率が増加している現状を報告しました。同時に、周産期医療体制では母体・胎児集中治療室管理料の届出施設数が令和6年に減少に転じたことを指摘しました。さらに、医療の進歩により長期経過をたどる小児患者が増加し、成人医療への移行を支える体制整備の必要性を強調しました。分科会の分析により、小児・周産期医療では3つの重要課題が浮かび上がりました。第1に、周産期医療体制では母体・胎児集中治療室管理料の届出施設が減少しており、医師の配置要件を満たせないことが主な要因となっています。第2に、母体搬送受入件数や多胎妊娠分娩件数には地域差があり、一部の地域では実績が少ない施設が存在します。第3に、小児慢性特定疾病に該当するが指定難病に含まれない疾患では、成人医療への移行時に診療報酬上の評価がなく、適切な紹介先が見つからないケースがあります。小児受療の増加と周産期医療を取り巻く環境変化小児の受療動向は、成人と対照的な様相を示しています。15歳以上の受療率が横ばいから減少傾向である一方、0-14歳の受療率はやや増加傾向にあります。分科会は、医療の進歩により長期経過をたどる小児患者が増加していることを指摘しています。周産期医療を取り巻く環境は、大きく変化しています。出生数は減少しており、分娩を取り扱う医療機関も減少しています。この減少傾向により、周産期医療体制の維持が課題となっています。さらに、妊婦の高齢化に伴い、合併症の頻度が増加しています。母体・胎児集中治療室管理料の届出減少と医師配置要件の課題母体・胎児集中治療室管理料の届出状況は、近年横ばいから減少に転じました。届出治療室数・病床数は近年横ばいで推移していましたが、令和6年に減少しました。この減少は、周産期医療体制の維持における課題を示す重要な変化です。届出変更の背景には、医師の配置要件の課題があります。全国周産期医療(MFICU)連絡協議会のアンケート調査によると、令和6年度改定以降に届出変更を行った医療機関では、「医師の配置要件を満たせない」ことが主な理由となっています。この要件により、周産期医療を提供する意欲がある医療機関でも、人員体制の維持が困難になっています。母体・胎児集中治療室管理料の届出施設における実績には、地域差が見られます。母体搬送受入件数が0件の施設は関東信越に所在しており、1-9件の施設はそれぞれ関東信越、東海北陸、近畿に1施設ずつ所在していました。多胎妊娠分娩件数が0件の施設は関東信越に所在しており、1-9件の施設はそれぞれ北海道、東北、九州に1施設ずつ所在していました。帝王切開実施件数が49件以下である施設はなく、50-99件である施設は北海道、東海北陸、近畿に1施設ずつ所在していました。分娩時週数33週以下の分娩件数が0件である施設はなく、1-9件である施設は北海道、東海北陸に1施設ずつ、近畿に2施設所在していました。これらの地域差は、周産期医療体制における地域の実情を反映しています。移行期医療における診療報酬評価のギャップと受入体制の課題成人医療への移行時における診療報酬評価には、重要なギャップが存在します。小児科を標榜する医療機関において、小児慢性特定疾病等の患者に対して必要な生活指導を継続して行った場合には小児科療養指導料を算定します。一方、指定難病等の患者に対して計画的な医学管理等を実施した場合は難病外来指導管理料を算定します。小児慢性特定疾病の指定疾病数と比較して、指定難病の指定疾病数は少ないため、小児科療養指導料の算定対象となる患者と比較して、難病外来指導管理料の算定対象となる患者は少なくなっています。移行期医療における診療報酬上の課題は、具体的な形で現れています。小児科医療機関において小児科療養指導料を算定していた患者が、成人移行期となり小児科以外の医療機関に紹介された場合、その患者が難病外来指導管理料の算定対象でない限り、紹介先医療機関においては同様の管理料を算定することができません。この評価のギャップにより、受入医療機関における診療報酬上の評価がない状態が生じています。小児科以外の医療機関における受入状況は、課題の深刻さを示しています。小児科以外の医療機関における、定期的に小児科に受診していた患者を紹介により受け入れた人数及び小児慢性特定疾病に罹患している患者数は、いずれの区分においても、その人数は少数でした。この少なさは、分科会が指摘する移行が困難となるケースの存在を裏付けています。分科会では、移行期医療の体制整備の必要性が強調されました。医療の進歩により長期経過をたどる小児患者が増加しており、成人医療への円滑な移行を支える移行期医療の体制整備が求められています。特に、小児慢性特定疾病に該当するが指定難病に含まれない疾患については、適切な紹介先が見つからず、移行が困難となるケースがあるとの意見が出されました。成人移行期に相当する小児について、小児慢性特定疾病に該当するが、指定難病には含まれていない疾患については、受入医療機関における診療報酬上の評価がない等の課題があるとの意見も示されました。まとめ分科会の分析により、小児・周産期医療では周産期医療体制の維持と移行期医療の体制整備が急務であることが明らかになりました。母体・胎児集中治療室管理料の届出施設減少への対応、地域差の解消、移行期医療における診療報酬評価のギャップ解消が、今後の診療報酬改定における重要な検討課題となります。医療の進歩により長期経過をたどる小児患者の増加に対応し、成人医療への円滑な移行を支える制度設計が求められています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

災害時の医療提供体制を守る3つの課題と解決策|入院・外来医療等調査分科会

災害時の医療提供体制を守る3つの課題と解決策|入院・外来医療等調査分科会

Oct 30, 2025 06:54 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会で災害医療についての検討が行われました。この検討では、令和6年能登半島地震での医療支援における課題が明らかになりました。具体的には、派遣時の情報収集や交通手段確保の困難さ、労務管理の複雑さ、施設基準維持の問題が指摘されています。加えて、診療所における事業継続計画(BCP)の策定率が約30%にとどまっている現状も明らかになりました。分科会では、災害時の施設基準の取扱いを事前に明確化すべきとの意見や、BCPの義務化を含めた検討が必要との提言がなされています。この検討結果から、災害時の医療提供体制を維持するための制度改善の方向性が見えてきました。本記事では、災害派遣における実態と課題、施設基準の柔軟運用の必要性、BCPの策定推進という3つの重要なポイントを詳しく解説します。さらに、医療機関における具体的な対応状況と、今後求められる制度整備についてお伝えします。医療機関の経営者や管理者の方々にとって、災害対応力を高めるための重要な情報となるでしょう。災害派遣の現状と課題災害派遣医療チームの設置状況は医療機関の種別によって大きく異なっています。分科会の調査によると、特定機能病院で90.7%と最も高い設置率を示し、次いで急性期一般入院料1算定病院で59.1%となっています。この設置率の差は、医療機関の規模や機能、人員体制の違いを反映したものです。令和6年能登半島地震支援では、実際のスタッフ派遣において多くの課題が浮き彫りになりました。派遣を検討した医療機関が困難と感じた事項は、「現地の状況把握と情報収集」「派遣にあたっての交通手段の確保」「派遣中の労務管理」「派遣中に自施設のスタッフ配置基準が満たせなくなること」などでした。これらの課題は、急性期一般入院料1算定病院では、施設基準の維持が16.4%、情報収集が31.3%、交通手段確保が46.4%、労務管理が50.4%の医療機関で困難であったと報告されており、迅速な災害対応を困難にする要因となっています。派遣された職種については、看護師、医師、事務職員、薬剤師が多くを占めました。これらの職種は医療提供の中核を担う人材であり、派遣による自施設への影響も大きいものです。新型コロナウイルス感染症対応での他施設への派遣においても、同様の課題が報告されており、災害時だけでなく感染症対応においても共通の構造的な問題が存在することが明らかになっています。施設基準の柔軟運用の必要性大規模災害発生時には、被災者の受け入れや被災地への職員派遣により、入院基本料等の施設基準を満たすことができなくなる場合があります。この事態に対して、厚生労働省は適宜、事務連絡を発出して対応しています。しかし、この事務連絡は発災から数日後に発出されることが多く、迅速な災害対応の妨げになる可能性が指摘されました。分科会では、施設基準の緩和内容を事前に明確にしておくべきとの意見が出されました。この意見は、被災地支援には迅速かつ継続的な対応が求められるという認識に基づいています。災害の規模などの一定の要件を定めた上で、災害発生時に一時的に施設基準を満たせなくなる場合の対応について、事前に整理・提示しておくことが重要であるとの提言がなされています。現行制度では、新型コロナウイルス感染症の影響により夜勤時間数や看護要員数に一時的な変動があった場合、最初の月から3か月以内に限り、施設基準の届出区分の変更を不要としています。この特例措置の考え方を、災害時にも適用できるよう制度化することが求められているのです。事業継続計画(BCP)の策定推進診療所における災害に備えた事業継続計画(BCP)の策定状況は、「策定している」と回答した割合が約30%にとどまっています。この低い策定率は、医療提供体制の継続性確保の観点から大きな課題です。災害拠点病院以外の医療機関においても、BCPの作成に努めることとされていますが、実際の策定は十分に進んでいない状況が明らかになりました。BCPは、平常時の組織内の対応能力では応急対応できない事態を想定して、診療の継続や復旧を目指して行うための対応策です。医療機関のBCPは、震災などの災害によって損なわれる病院機能を、実行可能な事前準備と発災後のタイムラインに乗せた行動計画の遂行により維持・回復するとともに、発災によって生じた新たな医療ニーズにも対応するための計画とされています。分科会では、診療所においてもBCPの策定を推進すべきであり、義務化を含めた対応が検討されるべきとの意見が出されました。この提言は、地域医療を支える診療所の災害対応力を高め、医療提供体制全体の強靭性を向上させることを目指しています。今後、BCPの策定を支援する施策や、策定を促進するインセンティブの設計が重要な政策課題となるでしょう。まとめ災害時の医療提供体制を維持するためには、3つの重要な取組が必要です。第一に、災害派遣における情報収集、交通手段確保、労務管理、施設基準維持などの課題を解決する具体的な仕組みづくりです。第二に、施設基準の柔軟運用を事前に明確化し、迅速な災害対応を可能にする制度整備です。第三に、診療所を含むすべての医療機関におけるBCPの策定を推進し、義務化も視野に入れた政策展開です。これらの取組により、医療機関の災害対応力が強化され、国民の生命と健康を守る医療提供体制の強靭性が向上することが期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

透析医療の質向上へ:患者QOL重視した制度見直しの方向性

透析医療の質向上へ:患者QOL重視した制度見直しの方向性

Oct 29, 2025 07:53 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、透析医療に関する検討結果がとりまとめられました。慢性維持透析患者数は約34万人で2022年から減少傾向にあり、透析患者全体の高齢化が進んでいます。この患者動向の変化に対応し、災害対策の強化、シャントトラブルへの連携促進、腹膜透析の推進、情報提供の充実、緩和ケアの実施といった医療提供体制の課題が明らかになりました。分科会では、患者のQOLを考慮した質の高い透析医療を推進する観点から、人工腎臓の評価方法を見直すべきという意見が示されています。分科会での検討により、透析医療における5つの重要課題が浮き彫りになりました。第一に、透析患者数は減少傾向にありながら新規導入患者の平均年齢は71.6歳と高齢化が進み、日本では諸外国に比べて血液透析患者の割合が高い状況が続いています。第二に、災害対策の取組状況にばらつきがあり、災害時情報ネットワークへの登録や自治体等との連携体制を確保している医療機関は76.1%にとどまっています。第三に、シャント閉塞等への対応として事前に連携していない医療機関に紹介している医療機関が5.9%存在し、患者への不利益が懸念されます。第四に、腹膜透析の導入や診療を実施している医療機関は19.5%にとどまり、全ての患者に腎代替療法の3つの選択肢を提示している医療機関は51.2%です。第五に、緩和ケアを実施している医療機関は17.6%にとどまり、患者の意思決定支援も十分とはいえない状況です。透析患者の動向と治療選択の現状慢性維持透析患者数は343,508人で、2021年まで緩徐に増加していましたが2022年から減少傾向に転じています。この患者数減少の背景には、新規導入患者数が年間約3.9万人で推移する一方、高齢化の進展により透析中止や死亡が増加していることがあります。新規導入患者の平均年齢は71.6歳、慢性透析患者全体の平均年齢は70.1歳となっており、透析患者の高齢化が顕著です。この高齢化は治療選択にも影響を及ぼしています。腹膜透析患者数は10,585人で2021年より増加傾向ですが、新規導入患者数は2,350人で2019年のピーク(2,657人)から減少しています。腹膜透析は在宅で実施できる利点がありますが、導入には患者本人や家族の協力が必要なため、高齢化により導入が難しくなっている可能性があります。日本の透析医療は諸外国と比較して特徴的な状況にあります。腎代替療法のうち血液透析患者の割合が諸外国に比べて高く、腹膜透析や腎移植の割合が低い状況が続いています。この状況は医療提供体制の課題とも関連しており、患者の治療選択肢を広げる取組が求められています。医療提供体制における3つの課題血液透析の提供体制には3つの重要な課題があります。第一に災害対策、第二にシャントトラブルへの対応、第三に腹膜透析の導入です。災害対策については、国や地方自治体と日本透析医会が連携して取組を進めています。しかし各医療機関の災害対策の取組状況にはばらつきがみられ、災害時情報ネットワークへの登録や自治体等との連携体制を確保していると回答した医療機関は76.1%にとどまっています。透析患者は定期的な透析治療を必要とするため、災害時でも治療を継続できる体制整備が不可欠です。シャントトラブルへの対応には連携体制の課題があります。シャント閉塞等は発生頻度が高く、透析患者の入院理由としても最も多い疾患です。自院で治療している医療機関が23.4%、事前に連携している医療機関に紹介している医療機関が70.2%である一方、事前に連携していない医療機関に紹介している医療機関が5.9%存在します。事前連携がない場合、患者は迅速な治療を受けられず大きな不利益を被る可能性があります。腹膜透析の導入には大きな課題があります。血液透析を実施する医療機関のうち、腹膜透析の導入や診療を実施している医療機関は19.5%にとどまり、77.1%の医療機関は腹膜透析を自院で実施していません。実施していない理由として、対象となる患者がいないが59.5%と最も多く、次いで対応できる器具設備を備えていないためが38.6%でした。また、緊急時や入院時のバックアップ体制に不安があるという意見もあり、医療機関間の連携体制整備が必要です。患者支援の充実に向けて患者への情報提供と意思決定支援には改善の余地があります。全ての患者に対し、血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの選択肢を提示している医療機関は51.2%にとどまり、情報提供の取組をしていない医療機関が35.6%存在します。患者が自身の状況に応じた最適な治療法を選択するには、十分な情報提供が不可欠です。通院困難な患者への対応も課題です。対応方法として、透析医療を提供する療養病床への案内が77.1%、介護施設への案内が63.9%である一方、腹膜透析の導入を含めた在宅医療への案内は5.4%にとどまっています。腹膜透析は通院負担を軽減できる治療法ですが、十分に活用されていない状況です。緩和ケアの実施も十分とはいえません。医療用麻薬を用いた疼痛緩和を実施している医療機関は32.2%、緩和ケアを実施している医療機関は17.6%にとどまっています。透析患者の高齢化が進む中、終末期や透析医療中止に関する意思決定支援を含めた緩和ケアの充実が求められます。評価方法の見直しと今後の方向性分科会では、患者のQOLを考慮した質の高い透析医療を推進する観点から、人工腎臓の評価方法を見直すべきという意見が示されました。慢性維持透析を行った場合2及び3の算定回数は減少傾向で、人工腎臓全体の2.1%であることから、透析用監視装置の台数や透析用監視装置一台当たりの患者数による評価方法の見直しが検討されています。シャントトラブルへの対応では、治療施設と事前に連携していないと患者への不利益が大きいことから、事前に連携することを促す評価方法の検討が提案されました。この評価により、医療機関間の連携体制が強化され、患者が迅速に適切な治療を受けられる環境整備が期待されます。腹膜透析を増やしていくためには、導入期だけでなく血液透析からの切り換えも促していくことが考えられます。腹膜透析は在宅で実施でき、通院負担を軽減できる利点があります。医療機関が腹膜透析を導入しやすい環境を整備し、患者に十分な情報提供を行うことで、患者の治療選択肢を広げることができます。通院困難な患者への対応として、療養病床や介護施設を案内すると回答した割合が高い一方、地域によってはこのような対応が難しい地域もあります。分科会では、医療機関へのアクセス確保の対応も検討すべきという意見が示されており、地域の実情に応じた対応が求められています。まとめ透析医療は患者数減少と高齢化という転換期を迎えており、質の高い医療提供体制の確立が急務です。分科会では、災害対策の強化、シャントトラブルへの連携促進、腹膜透析の推進、情報提供の充実、緩和ケアの実施という5つの課題が明らかになりました。患者のQOLを考慮した質の高い透析医療を推進するため、人工腎臓の評価方法を見直し、医療機関の取組を促す仕組みづくりが進められる見込みです。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

データ提出加算の外来拡大と医療の質評価|入力負担軽減への課題と展望

データ提出加算の外来拡大と医療の質評価|入力負担軽減への課題と展望

Oct 28, 2025 05:32 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、データ提出加算と退院患者調査に関する検討結果が示されました。この検討は、令和4年度診療報酬改定で外来・在宅・リハビリテーション医療に拡大されたデータ提出加算について、医療機関における運用実態と課題を明らかにすることを目的としています。現状では、外来データ提出加算を算定していない理由として、病院・診療所ともに「入力のための人員が確保できない」が最も多く挙げられています。特に外来様式1で求められる検査値等の入力については、負担が大きいという指摘があります。この文章では、データ提出加算の制度拡充の経緯から外来データ提出の課題、そしてデータ活用による医療の質評価の可能性まで、分科会での検討内容を詳しく解説します。分科会の検討により、データ提出加算制度の拡充経緯と現状の課題が明らかになりました。外来データ提出では人員確保が最大の障壁となっており、病院・診療所の双方で深刻な問題として認識されています。一方、収集されたデータを活用した外来医療の質評価では、糖尿病や脂質異常症の検査実施割合に医療機関ごとのばらつきが確認されました。分科会では、調査項目の見直しによる医療機関負担の軽減とともに、収集されたデータの活用範囲拡大について、施設基準届出における負担軽減や医療機関のベンチマーク、医療の質評価への活用を含めて検討すべきとの意見が示されました。データ提出加算制度の拡充経緯と評価の仕組みデータ提出加算は、診療データに基づく適切な評価を推進するために設けられた制度です。この加算は、入院医療について診療等のデータを継続的に厚生労働省に提出している医療機関を評価するものとして始まりました。制度開始当初は入院医療のみが対象でしたが、収集するデータの内容は段階的に拡充されてきました。この拡充は、MDC(主要診断群)ごとの診断群分類見直し技術班での検討や、データ提出加算を要件とする入院料の範囲拡大に伴って進められました。診療報酬上の評価は、一部について医療機関で集計された診療実績データを基に行われていますが、DPCデータ等による評価が可能なものも存在することが指摘されています。令和4年度診療報酬改定では、データに基づく適切な評価をさらに推進する観点から、対象範囲が大きく拡大されました。この改定により、外来医療、在宅医療、リハビリテーション医療についても、診療等のデータを継続的に厚生労働省に提出している場合の評価が新設されました。外来様式1では、検査値等を含む多様な項目の入力が求められるようになり、医療機関における業務負担の増加が懸念されています。この制度拡充により、入院から外来まで切れ目のないデータ収集が可能となった一方で、医療機関の運用体制整備が新たな課題として浮上しました。外来データ提出の現状と医療機関が直面する課題外来データ提出加算の運用実態を調査したところ、医療機関が直面する課題が明確になりました。外来データ提出加算を算定していない理由を尋ねた調査では、病院・診療所ともに「入力のための人員が確保できない」が最も多い回答でした。すでに算定している医療機関においても、同様に人員確保の困難さを感じているケースが多く見られました。この人員確保の問題は、外来様式1で求められる入力項目の多様性と関連しています。外来様式1では、診療行為や処方内容に加えて、検査値等の詳細なデータ入力が必要とされています。検査値等の入力については、特に負担が大きいとの指摘が分科会でありました。医療機関では日常診療業務に加えて、これらのデータ入力業務を担当する専任スタッフの配置が求められますが、人材確保や人件費の面で制約があります。この状況に対して、分科会では調査項目の見直しを求める意見が出されました。データ入力が医療機関の負担となっている現状を踏まえ、真に必要な項目に絞り込むことで、医療機関の参加を促進できる可能性があります。ただし、データの質と量のバランスをどのように取るかは、今後の検討課題として残されています。データ活用による外来医療の質評価の可能性収集された外来データを活用した医療の質評価について、具体的な分析結果が示されました。厚労科研「DPC制度の適切な運用及びDPCデータの活用に資する研究」研究班から提出された資料を基に、外来データによる集計が行われました。この分析では、外来医療の質を評価する指標として、「外来で糖尿病の治療管理をしている症例に対し、HbA1C検査を実施している割合」と「外来で脂質異常症の投薬治療管理をしている症例に対し、脂質異常症に関する検査を実施している割合」が用いられました。この分析の結果、これらの指標について医療機関ごとに大きなばらつきがあることが明らかになりました。糖尿病や脂質異常症は、定期的な検査による適切な管理が重要な疾患です。検査実施割合のばらつきは、医療機関によって診療の質に差がある可能性を示唆しています。このようなデータを可視化することで、各医療機関が自施設の診療状況を客観的に把握し、改善につなげることができます。この分析結果を受けて、分科会では外来データ提出加算の重要性を再確認する意見が出されました。医療の標準化において外来データは重要な役割を果たすため、積極的にデータを収集すべきとの指摘がありました。収集されたデータについては、医療機関のベンチマークや、データを用いた医療の質評価への活用も含めて検討すべきとの意見も示されました。分科会で示された今後の方向性と期待される展開分科会での議論を通じて、データ提出加算制度の今後の方向性が示されました。医療機関の負担軽減と、データ活用の推進という二つの課題について、バランスの取れた対応が求められています。調査項目の見直しについては、特に外来データ提出加算における検査値等の入力負担を軽減する方向での検討が必要との認識が共有されました。データ活用の観点からは、提出されたデータを施設基準の届出等における医療機関の負担軽減に活用する可能性が指摘されました。現在、施設基準の届出では、医療機関が独自にデータを集計して提出する必要がありますが、データ提出加算で収集されたデータを活用できれば、この作業負担を大幅に削減できます。このような活用方法は、医療機関にとってデータ提出のメリットを実感しやすくする効果も期待できます。医療の標準化とベンチマーク評価についても、積極的な意見が出されました。外来データ提出加算は、医療の標準化において重要な役割を果たすため、より多くの医療機関からデータを収集することが望ましいとの指摘がありました。収集されたデータを用いて、医療機関が自施設の診療状況を他施設と比較できるベンチマーク機能や、医療の質を客観的に評価する仕組みの構築についても、今後検討を進めるべきとの方向性が示されました。まとめデータ提出加算制度は、入院医療から外来・在宅・リハビリテーション医療へと対象範囲を拡大し、診療データに基づく適切な評価を推進してきました。外来データ提出では、人員確保の困難さと検査値入力の負担が課題として明確になりましたが、収集されたデータを活用した医療の質評価では、医療機関ごとのばらつきが可視化され、標準化への貢献が期待されています。今後は、調査項目の見直しによる医療機関負担の軽減と、施設基準届出への活用やベンチマーク評価など、データ活用範囲の拡大を両立させる方向での検討が進められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

外科医不足が深刻化、消化器外科は10年で15%減少―中医協分科会が示す集約化とインセンティブの方向性

外科医不足が深刻化、消化器外科は10年で15%減少―中医協分科会が示す集約化とインセンティブの方向性

Oct 27, 2025 08:12 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、診療科偏在対策が議論されました。外科医、特に若手の消化器外科医の減少が深刻化しており、過去10年間で若手消化器外科医は15%減少しています。この問題に対し、分科会では手術の集約化による安全性向上と勤務環境改善、外科医への実効性あるインセンティブ措置の強化が必要との方向性が示されました。分科会では、外科医の約半数が1-2名の小規模施設に分散している現状が明らかになりました。高度な手術の集約化により手術成績が向上し、勤務環境が改善された山口大学医学部附属病院の事例が示されました。分科会の委員からは、小規模施設から大規模施設への紹介・連携を評価する仕組みの構築、若手外科医の処遇改善、女性医師のキャリア形成支援の必要性が指摘されました。今後の診療報酬改定では、自発的な偏在是正を促すインセンティブの強化が検討される見込みです。外科医の減少と偏在が医療提供体制を脅かしている外科医、特に消化器外科医の減少が深刻化しています。外科の医師数の推移を見ると、一般外科・消化器外科以外の診療科では増加傾向にある一方で、一般外科・消化器外科は一貫して減少しています。若手医師の状況はさらに深刻です。40歳未満の若手医師全体では2012年と比較し8%増加している一方で、若手外科医は7%減少、若手消化器外科医に至っては15%減少しています。日本消化器外科学会は、現在約1.9万人いる消化器外科医が2040年には40%減少すると予測しており、医療提供体制の維持が困難になる可能性があります。この減少の背景には、長時間労働の問題があります。時間外・休日労働時間が年1,860時間換算を超える医師の割合が高い診療科は、脳神経外科が9.9%、外科が7.1%、形成外科が6.8%、産婦人科が5.9%、救急科が5.1%でした。外科系診療科は専門性の維持や修得に時間がかかり、負担感も大きいことから、若手医師が処遇に見合わないと感じる要因になっています。外科医の偏在も深刻な課題です。外科医が1名以上いる病院と医育機関3,246施設において、所属外科医師数が1-2名となる医療機関は全体の48.7%(1,581施設)を占めています。消化器外科医師数が6名以上の医療機関は21.6%(700施設)、10名以上と集約化されている医療機関は9.1%(294施設)にとどまっています。所属外科医師数が1-2名の医療機関の多くは、年間の手術件数が100件未満であり、3-5名の医療機関でも半数以上は年間手術件数が500件に満たない状況です。手術の集約化により安全性と勤務環境が改善した山口大学の事例高度な手術の集約化により、手術成績の向上と勤務環境の改善が実現できることが示されています。山口大学医学部附属病院消化器外科では、各連携病院と協議・連携することで、消化器外科症例の集約化と均てん化に向けた体制を徐々に構築しました。この取組では、病院の機能に応じてType1からType3に分類しました。Type1病院は常勤消化器外科医師数が1-2名の病院で、がん治療のサポートとしての手術や虫垂炎、痔、ヘルニア、胆石などの手術は実施しますが、がん手術は実施せずに附属病院に紹介し、術後化学療法とフォローアップを大学病院から引き受けます。Type2病院は常勤消化器外科医師数が3-5名の病院で、胃がん、大腸がんの手術は実施しますが、難度の高い食道、肝胆膵の手術は附属病院に紹介します。Type3病院は常勤消化器外科医師数が6名以上の病院で、従前どおり独自にがん治療を実施します。この集約化により、複数の成果が得られました。がんの症例数が少なかった病院が全てのがん症例を拠点的な病院に紹介することで、これまで手術で対応できなかった症例も拠点的な病院での高度な手術で対応することができるようになりました。化学療法も大学病院に通うことなく近隣の病院で実施できるようになり、がん手術を全て拠点的な病院に集約し、より多くの化学療法やフォローアップを実施することで、病院経営も改善しました。消化器外科領域の高度な手術について、全国の多くの病院は年間50件未満である一方、大学病院本院の多くが200件/年以上実施しています。入院における臓器別手術件数の推移を見ると、食道・腹部の手術件数が最多であり、2020年に減少したものの、2015年以降増加傾向にあります。分科会が示した偏在是正の方向性は集約化とインセンティブ強化分科会では、診療科偏在対策について多角的な議論が行われ、今後の方向性が示されました。委員からは、高難度手術における集約化の必要性について、一定程度の手術の集約化により安全性が担保されることが指摘された一方で、小規模な手術とのバランスのとれた集約化の在り方が必要との意見がありました。外科医が少人数で勤務する施設から大規模施設への紹介・連携についてはインセンティブがなく、そのような取組を評価する仕組みが必要との意見がありました。外科領域の集約化や偏在是正については、急性期医療機関機能の整理の中で位置付けて議論すべきとの意見もありました。医師偏在の是正については、ペナルティとインセンティブの両方の考え方がありますが、自発的な偏在是正にはインセンティブの強化が有効との意見がありました。休日加算等の評価はあるものの、施設要件により届出医療機関や診療科が限られており、より実効性のあるインセンティブ措置が必要との意見がありました。実際に、大学病院を含む一部の病院では、全国的に減少している消化器外科医など外科医の診療体制を維持するため、外科医等への処遇改善を実施しています。広島大学病院では、若手外科医を対象に「未来の外科医療支援手当」として月額10万円、年額120万円を増額する待遇改善を実施しました。津山中央病院では、時間外緊急手術や呼び出し等に対してインセンティブを付与する取組を実施しています。消化器外科でも若手医師では女性比率があがっており、出産・育児に関する問題があるため、女性医師のキャリア形成や柔軟な働き方の保証も偏在是正の視点で必要との意見がありました。また、高度な手術をほとんど実施していない病院があり、こういった手術は集約化する必要があるため、山口大学病院の例も参考にしながら、役割分担と集約化を進めてはどうかとの意見がありました。手術の休日・時間外・深夜加算1における「緊急呼び出し当番の翌日が休日」要件については、慎重な検討が必要との意見がありました。手術の休日・時間外・深夜加算1においてチーム制を採用している場合、診療があった緊急呼び出し当番の翌日は休日対応となりますが、緊急呼び出し当番における診療の有無は予見することができないため、通常、緊急呼び出し当番の翌日は休日として扱われることになると考えられます。この要件を満たさなくて良いということにすると連日勤務になり、加算の趣旨である働き方改革にならないことが懸念されるため、算定要件の取扱いと加算の評価については慎重に判断する必要があるとの意見がありました。まとめ外科医、特に消化器外科医の減少は深刻化しており、若手消化器外科医は過去10年間で15%減少しています。外科医の約半数が1-2名の小規模施設に分散している一方で、高度な手術の集約化により手術成績が向上し、勤務環境が改善された山口大学医学部附属病院の事例が示されました。分科会では、小規模施設から大規模施設への紹介・連携を評価する仕組みの構築、若手外科医の処遇改善、女性医師のキャリア形成支援の必要性が指摘され、自発的な偏在是正を促すインセンティブの強化が有効との方向性が示されました。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

病院と診療所の違いとは?医療機関の機能分化を理解する【動画解説】

病院と診療所の違いとは?医療機関の機能分化を理解する【動画解説】

Oct 26, 2025 08:01 岡大徳

全日本病院協会の神野会長が解説する動画「医療のトリセツ第4回」では、医療機関の仕組みと機能分化について説明しています。高齢化が進む日本では、複数の慢性疾患や医療介護の複合ニーズを抱える患者が増加する一方で、医療従事者のマンパワーには制約があります。こうした状況で質の高い医療を効率的に提供するには、医療機関の役割分担を理解し、適切な医療機関を選択することが重要です。本メールマガジンでは、この動画の内容をもとに、医療機関選択に役立つ情報をお届けします。病院と診療所は医療法上で明確に区別されており、それぞれ異なる役割を担っています。医療の機能分化により、「治す病院」と「治し支える病院」という2つのタイプが存在し、相互に連携しながら地域医療を支えています。かかりつけ医機能を有する医療機関は、医療と介護をつなぐ重要な役割を果たし、地域包括ケアの中心となっています。これらの仕組みを理解することで、患者は自身の症状や状態に応じた最適な医療機関を選択できるようになります。病院と診療所の違いを知る病院と診療所の違いは、単なるベッド数の差だけではありません。病院はベッド数が20床以上あり、入院治療を主な役割としています。診療所はベッド数が19床以下または無床で、かかりつけ医機能、初期診療、慢性疾患の管理を担っています。病院には夜間も医師が常駐する当直体制があります。診療所にはこの体制がない点が、両者の大きな違いです。夜間や休日に急変した患者に対応できる体制が、病院には整備されています。病院では医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職、管理栄養士、MSW、事務職員など多職種によるチーム医療が実践されています。診療所では医師、看護師、事務スタッフという少人数体制で運営されています。このチーム医療の有無が、病院と診療所の提供できる医療の幅を決定しています。病院の開設主体は医療法人、公立、大学などが多くなっています。診療所は個人や医療法人が開設している場合が多い傾向があります。この違いが、医療機関の規模や提供できる医療サービスの範囲に影響を与えています。医療の機能分化と連携体制を理解する医療機関は「治す病院」と「治し支える病院」に機能分化されています。治す病院には特定機能病院、大学病院、地域の基幹病院が該当します。治し支える病院には、かかりつけ機能を有する病院や診療所が該当します。治す病院とかかりつけ機能を有する医療機関の間では、紹介と逆紹介という連携が行われています。紹介とは、かかりつけ医が専門的治療が必要と判断した患者を大きな病院に送ることです。逆紹介とは、大きな病院での専門的治療が終了した患者を、かかりつけ医に戻すことです。この双方向の流れにより、医療資源の効率的な活用が実現されています。国は医療の機能分化を政策として推進しています。この背景には、限られた医療資源を最大限に活用し、必要な患者に必要な医療を提供するという考えがあります。機能分化により、専門的治療が必要な患者は大病院で、慢性疾患の管理は地域の診療所で行うという役割分担が明確になります。診療報酬制度でも、この機能分化を支援する仕組みが整備されています。診療情報提供料や連携強化診療情報提供料などの点数設定により、医療機関間の連携が経済的にも評価されています。医療機関が適切に連携することで、診療報酬上のメリットも得られる仕組みが構築されているのです。かかりつけ医機能の役割を把握するかかりつけ医機能を有する医療機関は、医療と介護のつなぎ役として重要な位置を占めています。この機能は、単に医師個人の役割ではなく、医療機関全体で担うべき機能として位置づけられています。病院の場合、医師だけでなく看護師、薬剤師、MSWなど多職種が協力してかかりつけ機能を発揮します。かかりつけ医機能報告制度では、継続的な医療を要する者に対する日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能が重視されています。この制度により、医療機関は自らが提供するかかりつけ医機能の内容を報告し、地域住民に情報提供することが求められています。報告内容には、一次診療の対応可能な診療領域、服薬の一元管理、通常の診療時間外の対応、在宅医療の提供、介護サービスとの連携などが含まれます。地域包括ケアの実現において、かかりつけ医機能を有する医療機関は中心的な役割を果たします。介護サービス、生活支援、行政とをつなぎ、患者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう支援します。かかりつけ機能を有する医療機関を中心として、医療と介護が連携し、包括的なケアが提供される仕組みが構築されています。機能強化加算や地域包括診療料などの診療報酬上の評価も、かかりつけ医機能を担う医療機関を支援する仕組みです。これらの点数を算定するには、研修の受講、24時間対応体制の整備、他職種との連携など、一定の要件を満たす必要があります。質の高いかかりつけ医機能を提供する医療機関が、適切に評価される仕組みとなっています。まとめ病院と診療所はそれぞれ異なる役割を持ち、医療法上も明確に区別されています。医療の機能分化により、「治す病院」と「治し支える病院」が連携しながら地域医療を支えています。かかりつけ医機能を有する医療機関は、医療と介護をつなぐ重要な役割を担い、地域包括ケアの中心となっています。これらの仕組みを理解し、症状や状態に応じて適切な医療機関を選択することが、効率的で質の高い医療を受けるための第一歩となります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

人口減少時代の医療経営:2060年までの日本の課題と解決策を徹底解説

人口減少時代の医療経営:2060年までの日本の課題と解決策を徹底解説

Oct 25, 2025 07:20 岡大徳

全日本病院協会の神野正博会長が解説するYouTube動画「医療のトリセツ 第3回」では、日本の人口が2060年まで継続的に減少していく現実が示されています。この人口減少は国内産業の需要減少を引き起こし、医療分野においても患者数の減少という大きな変化をもたらします。従来のデフレ経済下で成功した「薄利多売」のビジネスモデルは、縮小する社会構造の中では通用しなくなります。本動画の目的は、社会保障・人口問題研究所のデータをもとに日本の将来推計を明らかにし、医療機関が直面する経営課題とその解決策を提示することです。神野会長は2060年までの人口推移グラフから3つの重要なメッセージを導き出しています。日本の人口は今後継続的に減少し、国内向け産業の需要が縮小していきます。この縮小社会では統合・集約化、撤退、業態変更、新市場開拓といった新たな経営戦略が全ての業界で必要になります。課題解決策として、生産性向上、シニアや女性の活躍促進、外国人労働者やロボットの活用が提案され、最終的には「全員参加型社会」の実現が重要だと結論づけています。日本の人口推移が示す医療需要の構造変化日本の人口は2060年まで減少トレンドが続き、この変化は医療機関の経営に直接的な影響を与えます。社会保障・人口問題研究所が公表したデータによれば、日本の総人口は2060年まで継続的に減少し、国内向け産業の需要が縮小していきます。人口減少は医療分野において患者数の減少という形で現れます。これまで人口増加を前提に構築されてきた医療提供体制は、根本的な見直しを迫られています。神野会長は「国内向けの産業の需要が減ってくる。我々医療にとりましても患者さんが減ってくる」と指摘し、医療機関の経営戦略を大きく転換する必要性を強調しています。神野会長が示すグラフでは、生産年齢人口の減少が明らかになっています。この生産年齢人口の減少は医療従事者の確保を困難にします。この構造変化に対応するため、医療機関は従来とは異なる視点での経営判断が求められます。縮小社会における医療経営戦略の転換点縮小する社会構造の中では、過去の成功モデルにとらわれない新たな経営戦略が必要です。神野会長は「これから薄利多売という以前はデフレの中でそういった経済がありました。人口増加の中で薄利多売というものがあったわけですけれども、これからはどうもそれも難しくなるのではないのかな」と述べ、従来のビジネスモデルの限界を指摘しています。神野会長は医療機関が検討すべき経営戦略として、統合・集約化、撤退、業態変更、新市場開拓の4つを挙げています。統合・集約化により、限られた医療資源をより効率的に活用することが考えられます。撤退という選択肢は、経営資源を重点分野に集中させる戦略として位置づけられます。業態変更と新市場開拓も重要な選択肢として提示されています。神野会長は「社会の構造は縮みつつあるということを私たちは認識する必要があります。イコール過去の成功モデルにとらわれない経営というものが必要なのではないでしょうか」と述べ、柔軟な経営判断の重要性を強調しています。人口減少社会を乗り越える5つの実践的解決策生産性向上は人口減少社会における最優先課題です。神野会長は「生産年齢人口と呼ばれている若者の方々が減る。だけど少ない人数で多い時と同じことができる。これを生産性の向上というわけであります」と説明し、少ない人数で従来と同等以上の成果を出す必要性を強調しています。シニア層の活用は労働力確保の重要な解決策として位置づけられています。神野会長は「例えばこのグラフの中で65歳から75歳といった方々が下の生産年齢に入るならば、まだまだ労働力はいるわけであります」と指摘し、シニア層が労働力として重要な役割を果たすことを示しています。女性活躍の推進は医療介護分野で特に重要な課題です。神野会長は「今たくさんの女性が活躍しております。特に医療介護の現場ではたくさんの女性が活躍しているわけであります」と現状を説明した上で、出産・子育て期間中の就業継続の課題を提起しています。パートタイム労働者の生産性向上について、神野会長は「例えば出産、子育てで少し仕事を制限しなきゃいけないといった時期でも、例えばパートタイムだけどフルタイムと同じ仕事ができるように生産性を上げたらいいかがでしょうか」と提案しています。パートタイムでもフルタイムと同等の成果を出せる仕組みを構築することで、女性が働き続けやすい環境が実現します。パートタイム労働者を効果的に組み合わせる「モザイク型」の働き方も解決策として提示されています。神野会長は「あるいはパートタイムの方をモザイクのように組み合わせることで、フルタイムの方と同じ仕事をしていただくということもあるのかなというふうに思います」と述べ、複数のパートタイム労働者を組み合わせてフルタイム労働者と同じ業務をカバーする働き方を提案しています。外国人労働者とロボットの活用は、労働力不足を補完する解決策として挙げられています。神野会長は「そして外国人、ロボットにお願いするということがあるのかなと思います」と述べ、これらを労働力確保の選択肢として示しています。全員参加型社会の実現に向けて神野会長は人口減少社会を乗り越える鍵として「必要なのは全員参加全員社会参加であります」と強調しています。シニア、女性、外国人、そしてロボットも含めた全ての労働力を最大限に活用することで、縮小する社会でも持続可能な医療提供体制を維持できます。医療機関は今こそ、従来の経営モデルから脱却し、新たな戦略に基づく改革を実行する時期に来ています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

総合病院精神科の役割拡大と精神科リエゾンチーム活用の最新動向【令和8年度診療報酬改定に向けて】

総合病院精神科の役割拡大と精神科リエゾンチーム活用の最新動向【令和8年度診療報酬改定に向けて】

Oct 24, 2025 06:03 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、令和8年度診療報酬改定に向けた総合病院精神科の現状と課題が報告されました。総合病院精神科には、身体管理が必要な精神科専門治療、自殺企図関連の合併症治療、精神疾患に身体疾患が合併した患者の治療という重要な役割が期待されています。しかし、精神病床数の減少や地域偏在といった課題も明らかになりました。本稿では、総合病院精神科が直面する3つの課題、診療報酬上の評価の動向、精神科リエゾンチームの活躍という観点から、今後の精神科医療提供体制を展望します。総合病院精神科の現状は、精神病床の減少が一般病院で顕著に進んでいます。診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の届出が減少する一方、精神科急性期医師配置加算の届出は増加傾向にあります。精神科リエゾンチームは、せん妄、抑うつ、自殺企図、認知症など多様な精神疾患への介入で成果を上げており、届出医療機関数と算定回数がともに増加しています。総合病院精神科が直面する3つの課題総合病院精神科の医療提供体制には、精神病床の減少、救急搬送の遅延、地域偏在という3つの課題が存在します。精神病床数は減少傾向にあり、特に一般病院での減少が顕著です。この減少は精神科病院よりも一般病院で大きく、総合的な入院医療を提供する体制に影響を及ぼしています。全病床数が400床以上かつ精神病床の割合が15%未満という、入院医療における総合性を兼ね備えた医療機関が存在しない二次医療圏が多く存在します。この地域偏在は、精神疾患と身体疾患の両方に対応できる医療機関へのアクセスを困難にしています。救急搬送に係る時間を傷病別に見ると、精神系は他疾患と比較して長い傾向にあります。この遅延は、精神科医の対応が必要な救急患者の受け入れ先確保の困難さを示しています。精神病床を有している医療機関は精神科医の対応が必要な救急搬送患者を受け入れていましたが、こうした医療機関の減少が救急医療体制全体に影響を与えています。地域における精神科医療の偏在も深刻な課題です。前述の総合性を兼ね備えた医療機関の不在は、患者が適切な医療を受けるために長距離移動を強いられる可能性を意味します。精神症状の重症度と身体症状の重症度・病期に応じた適切な医療機関への振り分けが困難になっており、医療提供体制の整備が求められています。診療報酬上の評価と精神病床を有する病院の優位性診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の減少と精神科急性期医師配置加算の増加という対照的な動きが見られます。総合入院体制加算の届出病院数は、急性期充実体制加算が新設された令和4年以降減少傾向にあります。この減少は、医療機関が新しい加算体系への移行を選択していることを示しています。精神科充実体制加算または小児・周産期・精神科充実体制加算の届出医療機関数は、令和5年以降横ばいで推移しています。この横ばい状態は、新規の届出が限定的であることを意味します。精神科急性期医師配置加算の届出医療機関数は増加傾向にあります。この加算は、精神症状とともに身体疾患または外傷を有する患者の入院医療体制を確保している医療機関を評価するものです。精神科急性期医師配置加算2イの算定回数は横ばいで推移していますが、届出医療機関の増加は、総合病院における精神科医療体制の整備が進んでいることを示唆しています。精神病床を有する病院は、それ以外の病院よりも急性期の一般病床において精神疾患への対応が可能である割合が多いという優位性を持っています。この優位性は、総合病院精神科を評価する加算の算定医療機関において、手術等を伴う統合失調症患者の入院件数が多いという結果にも表れています。精神病床を有することで、身体合併症を持つ精神疾患患者への対応力が向上し、一般病床での精神科医療提供も円滑になるのです。精神科リエゾンチームの活躍と認知症ケアとの連携精神科リエゾンチーム加算の届出医療機関数及び算定回数は増加傾向にあり、一般病床における精神科医療の充実を示しています。精神科リエゾンチームは、急性期の一般病床において多様な精神疾患に介入しています。このチームは、せん妄や抑うつを有する患者、自殺企図で入院した患者、認知症患者等に対して専門的な支援を提供しています。せん妄は急性期病棟で頻繁に見られる症状であり、早期発見と適切な介入が重要です。自殺企図で入院した患者への対応では、身体的治療と並行して精神科的評価と継続的支援が必要になります。認知症患者への介入では、認知機能の評価や行動・心理症状への対応が求められます。精神科リエゾンチーム加算を届け出ている医療機関は、それ以外の医療機関と比べて多様な精神疾患に対応可能でした。この対応力の高さは、専門的なチーム体制の構築と多職種連携の成果を示しています。精神科医、看護師、薬剤師、精神保健福祉士など多職種が協働することで、複雑な精神医学的問題に対応できる体制が整っています。精神科リエゾンチーム加算の届出医療機関の60.2%が認知症ケア加算1を届け出ていました。この高い併存率は、精神科リエゾンチームと認知症ケアの親和性を示しています。認知症ケア加算やせん妄ハイリスクケア加算を届け出ている医療機関においても、認知症やせん妄に対応できるとした医療機関が多く、加算を通じた体制整備が精神科医療の質向上に寄与しています。まとめ総合病院精神科の現状は、精神病床の減少と地域偏在、救急搬送の遅延という課題に直面しています。診療報酬上の評価では、総合入院体制加算の減少と精神科急性期医師配置加算の増加という変化が見られます。精神科リエゾンチームは、多様な精神疾患への介入で成果を上げており、認知症ケアとの連携も進んでいます。今後、精神症状と身体症状を一元的に対応できる医療機関の整備が重要であり、令和8年度診療報酬改定における評価の在り方が注目されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

ポリファーマシー対策の診療報酬評価、算定率16.7%の課題と改善方向を解説

ポリファーマシー対策の診療報酬評価、算定率16.7%の課題と改善方向を解説

Oct 23, 2025 07:58 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、ポリファーマシー対策と薬剤情報連携に関する検討結果が報告されました。この報告では、退院時の薬剤情報連携における評価の不均衡、ポリファーマシー対策の診療報酬評価の低活用、今後の制度改善の方向性という3つの重要な課題が明らかになりました。退院時の薬剤情報連携では、保険薬局への情報提供は診療報酬で評価されているものの、医療機関への情報提供は評価対象外となっています。ポリファーマシー対策の評価では、薬剤総合評価調整加算の算定医療機関が全体の16.7%にとどまり、薬剤調整加算の算定回数は令和5年時点で全国で月当たり約2,680件、薬剤適正使用連携加算の算定回数は令和6年8月でわずか13件という極めて低い水準です。分科会では、回復期での対応強化、外来患者への評価拡大、質重視の評価への転換が提言されました。退院時の薬剤情報連携における評価の課題退院時の薬剤情報連携において、薬剤師の関与は質の高い指導につながるものの、連携先による評価の格差が課題となっています。薬剤師が退院時の薬剤指導に関与する施設では、退院処方薬のみならず入院時持参薬なども含めた質の高い説明・指導を実施した割合が高くなります。この関与により、患者は退院後の薬剤管理について適切な情報を得ることができます。しかし、この情報連携の評価には大きな格差があります。保険薬局への薬剤情報連携は、退院時薬剤情報連携加算として診療報酬上の評価対象となっています。一方、医療機関等に対して薬剤情報連携を実施しても、情報連携元である医療機関における退院時薬剤情報管理指導料等の評価の対象となっていません。この評価格差は、実際の算定状況にも表れています。退院時薬剤情報管理指導料の算定回数は令和5年時点で月当たり約27万件であるのに対し、退院時薬剤情報連携加算の算定回数は令和4年時点で約1万件(10,386件)にとどまっており、大きな格差があります。退院時薬剤情報連携加算を実施していない施設は63.8%にのぼります。実施していない理由としては、他の業務負担が大きいこと、情報提供文書の作成にかかる労力が大きいことが上位を占めました。また、情報提供先の薬局がわからなかったこと、情報提供文書は医療機関宛に出すことが多いため対象外であることなども理由として挙げられました。退院時薬剤関連情報連携における実施項目では、急性期・高度急性期病院から最も提供されていた項目は「退院処方一覧」でした。次いで「入院時持参薬や退院処方以外に継続服用が必要な薬剤に関する情報」、「入院中に変更となった処方に関する変更理由」が多く提供されています。連携先については、薬局の割合が最も高く62.1%であり、続いて医療機関が26.6%となっています。ポリファーマシー対策の診療報酬評価の実態ポリファーマシー対策の診療報酬評価は、算定医療機関・算定回数ともに極めて低い水準にとどまり、制度の実効性が課題となっています。薬剤総合評価調整加算の算定医療機関は、病院全体の16.7%にすぎません。この加算は、患者の入院時に持参薬を確認し、関連ガイドライン等を踏まえて慎重な投与を要する薬剤等を確認するものです。その上で、医師、薬剤師、看護師等の多職種による連携の下で薬剤の総合的な評価を行い、処方内容の変更を実施します。薬剤調整加算の算定回数は、令和5年時点で全国で月当たり約2,680件という低い水準です。この加算は、薬剤総合評価調整加算の算定要件を満たした上で、退院時に処方する内服薬が2種類以上減少した場合、または退院日までの間に抗精神病薬の種類数が2種類以上減少した場合などに算定できるものです。薬剤総合評価調整加算の算定回数が令和5年時点で月当たり約7,790件であることを考えると、実際に減薬まで至るケースは約3分の1にとどまっています。薬剤適正使用連携加算の算定状況は、さらに深刻です。地域包括診療料・加算等の算定患者が入院・入所した場合に、入院・入所先の医療機関等と医薬品の適正使用に係る連携を行った場合の評価ですが、令和6年8月における算定回数はわずか13件でした。算定が進まない理由は複数あります。薬剤適正使用連携加算を算定していない理由としては、「当該加算の存在を知らなかったため」が最も多く、次いで「内服薬の種類数を減らすことが困難である患者が多いため」が多い結果となりました。薬剤総合評価調整加算を算定していない理由としては、「入院期間中に2種類以上の減薬を実施することが難しいため」が最も多くなっています。入院中に2種類以上の減薬を実施することが難しい理由として、「入院期間が短いこと」が43%、「処方の変更に対する反応を確認しながら1剤ずつ減量する必要があるため」が41%を占めました。病院におけるポリファーマシー対策については、他職種から病院薬剤師に対する期待が大きい反面、実施が困難な状況があります。急性期では在院日数が短く十分な介入ができないこと、また人手不足で対象患者の抽出や検討する時間を確保できないことなどから、病院薬剤師が十分に取り組めない場合が多くなっています。今後の改善に向けた方向性分科会では、回復期での対応強化、算定要件の見直し、質重視の評価への転換という3つの改善方向が提言されました。回復期での対応強化については、急性期病棟での限界を踏まえた意見が出されました。急性期病棟では、在院中に減薬してその後の経過を確認することは困難であり、回復期以降の病棟で対応すべきであるとの意見がありました。また、回復期病棟等での薬剤情報連携の状況についても示してほしいとの意見があり、その評価を検討すべきではないかとの意見が出されました。算定要件の見直しについては、現状の要件が厳しすぎるとの指摘がありました。薬剤適正使用連携加算の算定回数は極めて少なく、算定要件が厳しすぎるのではないかとの意見が出されました。現状では入院・入所患者を対象とした評価となっていますが、他院にも併せて通院する外来患者について、処方内容、薬歴等に基づく相談・提案を他院へ行った場合には、評価の対象としてはどうかとの意見がありました。質重視の評価への転換については、薬剤数だけでなく対策の質を評価すべきとの意見が出されました。ポリファーマシー対策について、薬剤数ではなく、ポリファーマシー対策が適正に実施されているか、質を評価すべきとの意見がありました。「抗コリン薬リスクスケール」や「高齢者施設の服薬簡素化提言」等を踏まえ、検討すべきとの意見が出されました。まとめポリファーマシー対策と薬剤情報連携については、退院時の情報提供先による評価格差の解消、ポリファーマシー対策の評価制度の実効性向上、回復期での対応強化と質重視の評価への転換が求められています。薬剤総合評価調整加算の算定医療機関が16.7%、薬剤調整加算が月当たり約2,680件、薬剤適正使用連携加算が月13件という低い算定実績は、制度の抜本的な見直しの必要性を示しています。分科会での議論を踏まえ、今後の診療報酬改定において、これらの課題に対する具体的な改善策が検討されることが期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

病院薬剤師の深刻な人手不足と診療報酬上の課題【2025年度入院・外来医療等分科会】

病院薬剤師の深刻な人手不足と診療報酬上の課題【2025年度入院・外来医療等分科会】

Oct 22, 2025 06:46 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、病院薬剤師の配置状況と診療報酬上の課題が明らかになりました。病院に勤務する薬剤師は5.66万人ですが、薬剤師偏在指標が全都道府県で1.0を下回り、全国的な不足状態にあります。この不足の背景には、病床機能による配置の偏在と、医師の処方に基づく調剤業務に対する院内処方と院外処方の診療報酬評価の格差という2つの構造的問題が存在します。分科会の分析により、3つの重要な課題が浮き彫りになりました。第1に、病院薬剤師の77.1%が特定機能病院や高度急性期・急性期病棟に集中し、回復期・慢性期病棟には22.9%しか配置されていません。第2に、回復期・慢性期病棟の薬剤師は調剤室等における対物業務の割合が高く、病棟での対人業務が十分に実施できていません。第3に、調剤業務に対する診療報酬について、院内処方と院外処方を比較すると評価に差があり、この点数差が薬局薬剤師数の大幅な増加と病院薬剤師数の人手不足の一因となっている可能性があります。全国的な病院薬剤師不足の実態病院薬剤師の不足は、薬剤師偏在指標という客観的指標で明確に示されています。薬剤師偏在指標は、地域で必要な薬剤師サービスを提供するための業務量に対する、現在提供されている薬剤師の労働量の割合を示す指標です。この指標が1.0を超える都道府県が病院薬剤師ではゼロであるという事実は、全国どの地域でも病院薬剤師が不足していることを意味します。病院薬剤師の偏在指標の全国値は0.80にとどまっています。一方、薬局薬剤師の偏在指標は全国値が1.08であり、18都道府県で1.0を超えています。この対照的な数値は、薬剤師という職種全体では一定数確保されているにもかかわらず、病院と薬局の間で人材の偏在が生じていることを示しています。病院薬剤師の不足は、単なる人数の問題だけでなく、医療提供体制全体に影響を及ぼします。病院薬剤師は入院患者への薬学的管理、医師への処方提案、他職種との連携など、病院医療の質を支える重要な役割を担っています。この人材不足により、こうした機能が十分に発揮できない状況が全国的に広がっています。病床機能による薬剤師配置の著しい偏在病院薬剤師の配置状況を病床機能別に分析すると、著しい偏在が明らかになります。特定機能病院や高度急性期・急性期病棟には77.1%の薬剤師が配置されている一方、回復期・慢性期病棟には22.9%しか配置されていません。この配置の偏りは、病床機能ごとに求められる薬剤師業務の違いと、診療報酬上の評価の差によって生じています。回復期・慢性期病棟に従事する薬剤師の業務内容には、特徴的な傾向があります。この病床機能の薬剤師は、中央業務と呼ばれる調剤室等における対物業務に従事する割合が、特定機能病院や高度急性期・急性期病棟に比較して高い状況です。対物業務とは、医師の処方に基づく医薬品の調剤業務を指します。高度急性期・急性期病棟の薬剤師は、病棟での対人業務により多くの時間を割いています。対人業務には、患者への服薬指導、医師への処方提案、薬物療法のモニタリング、多職種カンファレンスへの参加などが含まれます。回復期・慢性期病棟でもこうした対人業務の重要性は高いにもかかわらず、人員配置の制約から対物業務中心にならざるを得ない実態があります。病床機能による配置の偏在は、診療報酬上の評価の違いも影響しています。病棟業務実施加算は病棟での対人業務を評価する仕組みですが、対物業務である調剤業務については、後述するように院内処方と院外処方で評価に差があり、この構造が薬剤師の就業先選択に影響を与えている可能性があります。病棟業務実施加算の届出増加と対人業務の推進病院薬剤師が行う病棟業務、いわゆる対人業務に対する診療報酬上の評価として、病棟業務実施加算が設けられています。この加算の算定届出医療機関数は年々増加しており、病院薬剤師の対人業務を推進する効果を上げています。病棟業務実施加算の届出医療機関の増加は、薬剤師が病棟で患者に直接関わる業務の重要性が広く認識されてきたことを示しています。病棟業務実施加算を算定している病棟では、薬剤師による医師の負担軽減効果が確認されています。医師の負担軽減策として最も効果が高いのは「薬剤師による投薬に係る患者への説明」であり、病棟薬剤業務実施加算1算定病棟で51.7%、同加算2算定病棟で48.1%、加算届出なし病棟でも43.3%の医師が負担軽減に寄与していると回答しています。医師から薬剤師へのタスクシフト・シェアの実施状況としては、「医師への処方提案等の処方支援」が81.8%、「病棟等における薬学的管理等」が74.9%、「薬物療法に関する説明等」が70.9%と高い実施率を示しています。これらの取組は、医師の働き方改革と医療の質向上の両面で重要な役割を果たしています。病棟薬剤業務実施加算による対人業務の評価は、病院薬剤師の役割を変化させつつあります。調剤室での対物業務中心から、病棟での患者への直接的な薬学的管理へと業務の比重が移行しています。この変化は医療の質の向上に寄与する一方で、対物業務である調剤業務の評価のあり方も改めて問われることになっています。院内処方と院外処方の調剤業務に対する診療報酬評価の格差病院薬剤師不足の構造的要因として、医師の処方に基づく医薬品の調剤業務、いわゆる対物業務について、院内処方と院外処方を比較すると診療報酬上の評価に差があることが指摘されています。調剤業務は院内処方でも院外処方でも同じ内容であるにもかかわらず、診療報酬上の評価には大きな差があります。この評価差が、薬剤師の就業先選択に影響を与え、病院薬剤師不足の一因となっている可能性があります。具体的な点数差を外来処方の例で見ると、その格差は顕著です。服用時点が異なる内服薬が2種類、28日分処方されている患者の場合、外来院内処方では技術料の合計が32点(320円)です。一方、院外処方では一般的な薬局で調剤した場合、技術料の合計が238点(2,380円)となります。同じ調剤業務に対して、約7.4倍の評価差が存在することになります。院外処方では、調剤基本料45点、調剤管理料100点、薬剤調製料48点、服薬管理指導料45点など、複数の項目で評価が設定されています。さらに、夜間・休日等加算として40点が追加される仕組みもあります。院内処方では、調剤料と調剤技術基本料のみで、剤数によらず1処方当たりの点数がほぼ固定されています。分科会では、この評価差について2つの異なる意見が出されました。1つは、院内処方と院外処方との同一業務に対する報酬上の点数差が大きすぎるため、薬局薬剤師数が大幅に増加し、病院薬剤師数が人手不足に陥っていると考えられるので、再度検討すべきではないかという意見です。もう1つは、院内処方の評価を上げることで院内処方の増加につながる恐れがあるので、入院患者の調剤に対する評価を検討してはどうかという意見です。今後の検討課題と方向性分科会では、病院薬剤師不足への対応策として、入院患者の調剤に対する評価の検討が提案されました。現在の診療報酬体系では、外来における院内処方と院外処方の評価差が顕著ですが、入院患者に対する調剤業務についても適切な評価を行うことで、病院薬剤師の確保につながる可能性があります。病院薬剤師の人件費確保の観点からも、診療報酬上の評価は重要です。分科会では、薬剤師の人件費を賄う場合、病棟薬剤業務実施加算により150床程度の算定で得られる診療報酬でようやく1人分となり、小規模病院では当該診療報酬によって薬剤師の人件費が確保できない現状があるとの意見が出されました。病院薬剤師の配置偏在を解消するためには、回復期・慢性期病棟での薬剤師業務の評価も重要です。現在、これらの病棟では対物業務中心の配置となっていますが、高齢化の進展に伴い、ポリファーマシー対策や退院時の薬剤情報連携など、回復期・慢性期での薬剤師の役割はますます重要になっています。分科会でも、回復期以降の病棟での薬剤情報連携の状況について示してほしいとの意見や、その評価を検討すべきではないかとの意見が出されました。今後の診療報酬改定においては、病院薬剤師の確保と適正配置を促進するため、対物業務である調剤業務の評価、対人業務である病棟業務の評価、そして病床機能に応じた薬剤師配置の推進という3つの視点から、総合的な検討が求められています。まとめ病院薬剤師は全国的に不足しており、薬剤師偏在指標が全都道府県で1.0を下回る深刻な状況にあります。病院薬剤師の77.1%が特定機能病院や高度急性期・急性期病棟に集中し、回復期・慢性期病棟では対物業務中心の配置となっています。病棟業務実施加算の届出医療機関数は増加し、対人業務の推進が図られていますが、医師の処方に基づく調剤業務については、院内処方と院外処方で診療報酬上の評価に差があり、この構造的問題が病院薬剤師不足の一因となっている可能性があります。今後の診療報酬改定において、入院患者の調剤に対する適切な評価を含め、病院薬剤師の確保と適正配置を促進する方策の検討が求められています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

入院時食事療養の実態:30年ぶりの値上げでも解決しない質と経営の両立

入院時食事療養の実態:30年ぶりの値上げでも解決しない質と経営の両立

Oct 21, 2025 06:59 岡大徳

令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、入院時の食事療養に関する現状分析と今後の課題が報告されました。食費基準額は約30年ぶりに引き上げられたものの、医療機関の給食経営は依然として厳しい状況が続いています。この報告書では、食費基準額の引き上げ効果の検証結果、嚥下調整食の評価の必要性、食堂加算の実態と課題が明らかにされました。入院時食事療養の基準額は令和6年6月に1食当たり30円、令和7年4月に更に20円引き上げられました。しかし調査結果では、給食の質が向上したとの回答はわずかで、全面委託施設の約半数は給食委託費を増額し、直営施設の約半数は食材を安価なものに変更するなどの経費削減を行っていました。また嚥下調整食は特別食加算の対象外ですが、必要とする患者は一定数存在し、普通食より食材費が高いという課題があります。分科会では、患者負担増を含めた食費基準の更なる見直し、嚥下調整食の特別食加算への追加、食堂加算の要件見直しなどが提言されました。食費基準額引き上げの効果と医療機関の対応食費基準額は約30年ぶりに段階的な引き上げが実施されましたが、医療機関の給食運営に十分な改善をもたらしていません。令和6年6月の30円引き上げと令和7年4月の20円引き上げにより、1食当たりの総額は640円から690円となりました。この引き上げは食材費高騰への対応として実施されましたが、一般所得者の自己負担は460円から510円に増加し、低所得者には配慮した負担額が設定されています。基準額引き上げ後の医療機関の対応を調査した結果、令和6年6月から令和7年3月の期間と令和7年4月以降で大きな変化は見られませんでした。全面委託施設では約46%が給食委託費を増額したと回答し、一部委託や完全直営施設では約47%が食材料を安価なものに変更するなどの経費削減を実施していました。給食の質が上がったと回答した施設は全面委託で4.2%、一部委託で1.6%、完全直営で3.1%に過ぎず、基準額の引き上げが直接的に給食の質向上につながっていない実態が明らかになりました。委託事業者からの値上げ要請も相次いでおり、令和6年6月以降、全面委託の約7割、一部委託の約5割の医療機関が委託事業者から値上げの申し出を受け、契約変更に対応していました。完全直営の医療機関の3.6%(22施設)は、給食運営を委託から完全直営に切り替えるという選択をしていました。この対応は、委託費の上昇により直営化の方が経営的に有利と判断した結果と考えられます。分科会では、米などの食材費や人件費が更に高騰している現状を踏まえ、財源確保が困難であれば患者負担増も含めた見直しの検討が必要との意見が出されました。また経営努力により食材の組合せを変えて対応する場合、食事の質への影響が懸念されるため、給食のコスト構造を踏まえた実態把握と対応の検討が必要との指摘もありました。病院給食が赤字で提供されている実態を患者や国民に理解してもらった上で、一部自己負担での引き上げを検討することも選択肢の一つとの意見も出されています。嚥下調整食の課題と特別食加算への追加検討嚥下調整食は現在特別食加算の対象ではありませんが、必要とする患者は一定数存在し、その評価の必要性が指摘されています。栄養摂取が経口摂取のみの患者のうち、急性期病棟では約1割、包括期病棟では約2割、慢性期病棟では約4割が嚥下調整食の必要性があることが調査で明らかになりました。特に急性期一般入院料1では経口摂取のみの患者の約8%、回復期リハビリテーション病棟入院料1では約18%、療養病棟入院料1では約38%が嚥下調整食を必要としています。嚥下調整食は普通食より食材費が高いという課題があります。嚥下機能に配慮した食形態の調整や、見た目を改善した調理には特別な技術と手間が必要となり、それがコスト増につながっています。しかし見た目を改善し、適切な栄養量を確保した嚥下調整食の提供により、エネルギー摂取量の増加やADL(日常生活動作)の改善が認められたとの報告もあり、その医療的効果は明らかになっています。分科会では、嚥下調整食が必要な患者は一定数いるにもかかわらず特別食加算の対象となっていない点について、検討すべきではないかとの意見が出されました。また見た目や栄養量に配慮した嚥下調整食の取組は進めるべきだがコストがかかるため、どう整理するか検討の余地があるとの意見もありました。現在の特別食加算は腎臓食、肝臓食、糖尿食など15種類の疾病治療食が対象となっていますが、嚥下調整食は含まれていません。嚥下調整食を特別食加算の対象とすることで、医療機関は質の高い嚥下調整食を提供するインセンティブが働き、結果として患者の栄養状態改善とADL向上につながる可能性があります。ただし加算の追加には財源確保の課題もあるため、診療報酬改定での慎重な検討が求められます。食堂加算の算定実態と要件見直しの必要性食堂加算は一定基準を満たす食堂を備えた病棟の入院患者に食事を提供した場合、1日につき50円を算定できる制度です。算定率は約7割と高い水準にありますが、実際の食堂利用状況には課題があることが明らかになりました。食堂の有無を調査した結果、施設全体では65.0%が食堂を有していますが、急性期一般や特定機能病院では58.0%、地域包括ケアや回復期リハビリテーション病棟では77.0%、療養病棟では92.0%と、病棟機能により食堂の設置状況に差がありました。食堂での食事の状況を詳しく見ると、「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が最も多く、全体で32.5%を占めています。「自分で移動が可能な患者は食堂で食事をしている」は18.3%、「病室で食事を希望する患者以外は食堂で食事をしている」は15.1%でした。一方で「新型コロナウイルス感染症の流行以前は食堂を使用していたが、現在はしていない」が13.2%、「新型コロナウイルス感染症の流行以前から食堂はあるが、使用していない」が9.3%と、食堂を設置しているにもかかわらず使用していない医療機関も一定数存在しています。病棟機能別に見ると、急性期一般や特定機能病院では「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が34.0%と最も多く、次いで「新型コロナウイルス感染症の流行以前は食堂を使用していたが、現在はしていない」が14.2%でした。地域包括ケアや回復期リハビリテーション病棟では「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が26.4%、療養病棟では「自分で移動が可能な患者は食堂で食事をしている」が33.0%と最も多くなっています。分科会では、食堂加算を算定していても食堂を使用していない実態があるのであれば、加算の在り方について検討が必要ではないかとの意見が出されました。食堂での食事は患者の社会性維持やリハビリテーション効果が期待できる一方で、感染対策や人員配置の問題から実際の運用が困難な場合もあります。加算要件の見直しにあたっては、食堂の実質的な利用状況を評価する仕組みの導入や、病棟機能に応じた柔軟な要件設定が検討課題となります。多様なニーズへの対応と特別料金の現状入院患者の多様なニーズに対応して、医療機関は患者から特別の料金の支払いを受けて特別メニューの食事を提供することができます。現行の制度では1食当たり17円を標準とする追加料金の目安が示されていますが、この金額設定の妥当性について疑問が呈されています。調査結果によると、約8割の医療機関は行事食の対応を追加料金なしで実施し、約2割から3割の医療機関は選択メニューやハラール食等の宗教に配慮した食事の対応を追加料金なしで行っていました。行事食は季節の節目や記念日に提供される特別な食事で、患者の生活の質向上に寄与する取組です。多くの医療機関がこれを通常の食事療養の範囲内で提供していることは、患者サービスの観点から評価できます。しかし選択メニューやハラール食などの個別対応は、食材の調達や調理工程の管理に追加的なコストが発生するにもかかわらず、多くの施設が追加料金を徴収せずに対応している実態が明らかになりました。分科会では、多様なニーズに対応した食事提供ができるよう配慮すべきだが、1食当たり17円という追加料金の目安は現状に合っていないので、見直しが必要ではないかとの意見が出されました。この17円という金額は、食材費や調理の手間を考慮すると不十分であり、医療機関が特別メニューを提供するインセンティブとして機能していない可能性があります。追加料金の目安を実態に即した水準に引き上げることで、医療機関がより積極的に患者の多様なニーズに応えられる環境整備が期待されます。ただし追加料金の引き上げは患者負担の増加につながるため、低所得者への配慮や、どこまでを保険診療の範囲内とするかの線引きについても慎重な検討が必要です。医療の一環として提供されるべき食事の基本的な質は確保しつつ、患者の選択の幅を広げる仕組みとして、特別料金制度の適切な運用が求められています。まとめ入院時食事療養をめぐる課題は、食費基準額の引き上げだけでは解決できない構造的な問題を抱えています。基準額は30年ぶりに1食当たり50円引き上げられましたが、給食の質向上にはつながらず、多くの医療機関は委託費の増額か食材の質を下げるかの選択を迫られています。嚥下調整食は医療的効果が認められながらも特別食加算の対象外であり、食堂加算は算定されていても実際には使用されていない実態があります。また多様なニーズへの対応に対する追加料金の目安も現状に合っていません。分科会では、患者負担増も含めた食費基準の更なる見直し、嚥下調整食の特別食加算への追加、食堂加算の要件見直し、特別料金の目安の改定などが今後の検討課題として提言されました。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

入院リハビリテーションの課題と今後の検討方向―調査・評価分科会が示した5つの重要論点

入院リハビリテーションの課題と今後の検討方向―調査・評価分科会が示した5つの重要論点

Oct 20, 2025 10:42 岡大徳

令和7年9月25日に開催された第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、入院中のリハビリテーションに関する検討結果のとりまとめ案が示されました。この分科会は、中央社会保険医療協議会の診療報酬調査専門組織の一つで、診療報酬制度の見直しに係る技術的課題の調査・検討を行う組織です。今回のとりまとめでは、療法士の病棟業務への関与、早期リハビリテーションの推進、書類の簡素化という重要な論点が示されました。とりまとめでは、入院中のリハビリテーションは身体機能の回復だけでなく、退院後の生活を見据えた生活機能の回復が求められるとの基本方針が示されました。現状の課題として、療法士の専従要件が病棟業務に従事することを妨げている可能性、早期介入の遅れ(14日以内に実施した症例の38%が3日以内に介入できていない)、土日祝日のリハビリテーション実施率の低さ、計画書の重複による事務負担の増加が指摘されています。これらの課題に対し、分科会委員からは、専従要件の明確化、早期介入の要件化、算定要件への土日実施の組み込み、書類の統合による簡素化などの意見が出されました。療法士の専従要件と病棟業務の明確化疾患別リハビリテーション料では、当該リハビリテーションを実施するために必要な療法士の数や専従要件が規定されています。この専従要件により、療法士は原則としてリハビリテーション室での訓練に専念することが求められてきました。しかし、現行の規定では、当該療法士が病棟業務に従事することに関する明確な規定がありません。入院中のリハビリテーションには、身体機能の回復や廃用症候群の予防だけでなく、退院後の生活を見据えた生活機能の回復のための介入が求められます。実際、急性期病棟においてリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算を算定している病棟では、算定していない病棟と比べて、療法士が生活機能の回復や栄養・口腔状態に係る項目へ関与している割合が高いことが調査で明らかになりました。具体的には、食事介助、更衣、排泄介助、体位交換などの生活機能の回復に向けた支援に、療法士が積極的に関与しています。この状況を踏まえ、分科会では「リハビリテーション室で実施されるリハビリテーションそのものの質が落ちないように留意しつつ、病棟でのリハビリテーションができることを明確化する必要がある」との意見が出されました。専従要件の見直しにより、療法士が病棟業務に従事できることを明確にすることで、入院患者の生活機能の回復をより効果的に支援できる体制が整備されると期待されます。早期リハビリテーション介入の推進早期のリハビリテーション介入は、患者の機能回復と早期退院において極めて重要な要素です。現在、早期のリハビリテーションを評価する加算として、急性期リハビリテーション加算、初期加算、早期リハビリテーション加算が設けられています。しかし、いずれの加算も発症日からリハビリテーション開始までの日数についての要件はなく、どのタイミングからでも算定可能という状況です。調査結果によると、14日以内に疾患別リハビリテーションを実施した症例のうち、3日以内に介入できていない割合は38%にのぼります。この遅れの背景には、土日祝日のリハビリテーション実施体制の問題があります。急性期一般入院料1〜6における土日祝日のリハビリテーション実施割合は、平日と比べて低い状況です。また、金曜日に入院した患者は、入院後3日以内にリハビリテーションを開始した患者割合が低いという結果も出ています。これらのデータを受けて、分科会では複数の重要な意見が出されました。「急性期のリハビリテーションでは、入院直後からなるべく早くリハビリテーションを開始することが重要であるため、急性期リハビリテーション加算等の評価の在り方について検討していく必要がある」との指摘がありました。さらに踏み込んで、「より早期の在宅復帰につなげるためにも、入院直後からリハビリテーションを開始して、土日も含めて中断しないようにすることを急性期リハビリテーション加算等の算定要件として検討しても良いのではないか。その際には必要なマンパワーについても合わせて検討すべき」との意見も出されました。施設外リハビリテーションの単位数上限の見直し社会復帰を目指す患者にとって、屋外などの実際の生活環境でのリハビリテーションは極めて重要です。調査結果では、急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟において、屋外等での疾患別リハビリテーションを実施した患者のうち、3単位を超えて実施した症例が45%にのぼることが明らかになりました。現行制度では、施設外でのリハビリテーションは1日3単位までという上限が設けられています。この上限により、社会復帰に向けた十分な訓練機会が制限されている可能性があります。実際、分科会では「社会復帰のための施設外でのリハビリテーションは重要であり、1日3単位までという単位数の上限は見直すべきではないか」との意見が出されました。施設外リハビリテーションでは、公共交通機関の利用、買い物、階段昇降など、実際の生活場面での動作訓練が可能になります。このような実践的な訓練は、病院内での訓練だけでは得られない効果があり、患者の退院後の生活の質の向上に直結します。単位数上限の見直しにより、より充実した社会復帰支援が可能になると考えられます。退院時リハビリテーション指導料の要件見直し退院時リハビリテーション指導料は、患者の退院時に、退院後の生活におけるリハビリテーションの継続や注意点を指導することを評価する診療報酬です。しかし、調査結果では、退院時リハビリテーション指導料を算定した患者のうち、疾患別リハビリテーション料を算定していない患者が33%いることが明らかになりました。特に在院日数が短い患者ほど、リハビリテーションを実施せずに退院時指導料のみを算定している傾向が見られました。この状況に対し、分科会では2つの異なる意見が出されました。一つは「退院時リハビリテーション指導料については、入院中にリハビリテーションを実施した患者の退院時に指導を行うという趣旨を徹底することと、早期のリハビリテーション開始に繋げるためにも入院中のリハビリテーションを要件化すべきではないか」という意見です。この意見は、退院時指導料の本来の趣旨である「入院中のリハビリテーションの継続」という観点を重視しています。一方で、「退院時リハビリテーション指導料は、高齢者の入院において、退院後に向けたリハビリテーションを周知する良い機会であると考えるため、入院中にリハビリテーションを実施していない場合に算定出来ないようにするかは慎重な議論が必要」との意見もありました。この意見は、短期入院の患者であっても、退院後のリハビリテーションの重要性を伝える機会として退院時指導を活用する価値を認めるものです。リハビリテーション関係書類の簡素化リハビリテーションに関する書類は、制度の発展とともに種類が増加し、現場の事務負担が大きくなっています。疾患別リハビリテーション料の算定にあたっては、リハビリテーション実施計画書又はリハビリテーション総合実施計画書の作成が必要です。これらの計画書は、医師が患者又はその家族等に対して内容を説明の上、交付する必要があります。現状では、複数の計画書や評価料が存在し、それぞれに作成頻度や算定頻度が異なっています。多職種でのリハビリテーション総合実施計画書の作成、評価による機能回復の促進を趣旨とするリハビリテーション総合計画評価料は、患者1人につき1月に1回算定できます。一方、定期的な機能検査等や効果判定による、リハビリテーションの質の担保を趣旨とするリハビリテーション実施計画書は、3か月に1回以上の頻度で交付することとなっており、計画書の作成と評価料の算定頻度の設定にずれが生じています。さらに、目標設定等支援・管理料とリハビリテーション総合実施計画書では重複する項目が多いことも指摘されています。目標設定等支援・管理料は、介護保険によるリハビリテーションへの移行が目的でしたが、平成31年3月31日をもって入院中以外の要介護被保険者への算定上限日数を超えた疾患別リハビリテーション料は廃止となりました。それにもかかわらず、書類の重複は解消されていません。これらの状況を踏まえ、分科会では「リハビリテーション関係書類は数が多く非常に煩雑であり、重複した書類が多いため、必要な記載を残しつつ簡素化する方法について、一部の書類の統合を含め技術的に検討すべき」との意見が出されました。書類の簡素化により、医療従事者の事務負担が軽減され、その時間を患者への直接的なケアに充てることができるようになると期待されます。まとめ入院・外来医療等の調査・評価分科会におけるリハビリテーションの検討結果は、今後の診療報酬制度の見直しに向けた重要な論点を示しています。療法士の専従要件の明確化による病棟業務への関与促進、早期リハビリテーション介入の要件化、施設外リハビリテーションの単位数上限の見直し、退院時リハビリテーション指導料の要件整理、リハビリテーション関係書類の簡素化という5つの主要な論点が浮き彫りになりました。これらの論点は、今後の診療報酬制度の見直しにおいて、入院患者の生活機能の回復を効果的に支援し、早期の在宅復帰を実現するための重要な検討事項となります。分科会での検討結果は、中央社会保険医療協議会総会に報告され、診療報酬改定の議論に活用されることになります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

国民医療費は増加するのに病院の7割が赤字―医療経営の構造的課題を解説

国民医療費は増加するのに病院の7割が赤字―医療経営の構造的課題を解説

Oct 19, 2025 07:10 岡大徳

全日本病院協会の神野正博会長が「医療のトリセツ」シリーズ第2回で、国民医療費の増加と病院経営の深刻な課題について解説しています。近年、病院の倒産や廃業、小規模病院のクリニック化が相次いでいますが、その背景には医療経済特有の構造的問題があります。本記事では、神野会長の解説をもとに、なぜ医療費が毎年1兆円ずつ増加しているにもかかわらず、多くの病院が赤字経営に陥っているのか、その理由を明らかにします。国民医療費は高齢化と医療技術の進歩により毎年1兆円ずつ増加しています。医療をたくさん使う高齢者が増加し、お金のかかる先端医療も増えているためです。しかし、診療報酬という公定価格は上げることができない一方で、人件費や材料費などの経費は増加し続けています。この価格と経費の板挟み構造により、診療量が多くても赤字になる病院が増加しており、神野会長は全国の病院の約7割が赤字であると指摘しています。この状況は、医療提供体制の持続可能性を脅かす危機的状況です。国民医療費の増加要因と日本経済の停滞国民医療費は毎年1兆円ずつ増加しており、この増加ペースは他の業界には見られない特徴的な現象です。神野会長は、日本のGDPがほぼ横ばいで推移する中、国民医療費だけが右肩上がりで増加している現状を指摘しています。この増加の主な要因は2つあります。第1に高齢化の進行です。高齢者は若年層と比較して医療サービスを多く利用するため、高齢者人口の増加に伴い医療費全体が膨らんでいます。第2に医学・医療技術の進歩です。先端医療技術の導入により、これまで治療が困難だった疾患への対応が可能になりましたが、高度な医療機器や新薬の使用には多額の費用がかかります。この状況を見ると、「毎年1兆円も増えているのだから、病院は儲かっているのではないか」という疑問が生まれます。しかし実態は正反対です。多くの病院が赤字経営に陥っており、神野会長は全国の病院の約7割が赤字であると指摘しています。市場経済と医療経済の決定的な違い病院経営の困難を理解するには、一般的な市場経済と医療経済の違いを知る必要があります。神野会長は、この違いを利益の計算式を用いて明快に説明しています。一般的な市場経済では、総売上は価格と量で決まり、利益は価格から経費を引いたものに量を掛けて算出されます。市場経済では、経費が増加して利益が減少した場合、企業は価格を引き上げることで対応できます。最近の物価高騰も、多くの企業がこの方法で経営を維持しようとしている結果です。しかし医療の場合は状況が全く異なります。医療における価格とは診療報酬であり、これは国が定める公定価格です。病院は独自の判断で診療報酬を引き上げることができません。一方で、人件費、医療材料費、設備関係費などの経費は年々増加しています。価格を上げられない状況で経費だけが増加すれば、診療量をいくら増やしても赤字が拡大します。この価格統制と経費増加の板挟み構造こそが、国民医療費が増加しているにもかかわらず病院経営が悪化する根本的な理由です。診療報酬改定は2年に1度実施されますが、物価上昇や人件費上昇を十分に反映した改定率となっていないため、病院の経営環境は年々厳しさを増しています。病院経営の現状と持続可能性への警鐘多くの病院が赤字経営に陥っている現状は、医療提供体制の持続可能性を脅かす重大な問題です。神野会長は全国の病院の約7割が赤字であると指摘し、この状況を将来の医療提供体制を考えたときに大きな問題であると警鐘を鳴らしています。赤字経営が続けば、病院は経営を維持できなくなり、倒産や廃業、規模縮小を余儀なくされます。実際に、小規模病院がクリニックに転換するケースや、地域医療を支えてきた病院が閉院するケースが全国各地で報告されています。医療機関が減少すれば、地域住民が必要な医療を受けられなくなる医療過疎が深刻化します。特に救急医療を担う病院では、救急搬送受入件数が多いほど医業費用が増加し、医業利益率が低下する傾向が明らかになっています。地域医療に不可欠な機能を担う病院ほど経営が厳しくなるという矛盾した構造が、医療提供体制全体の弱体化を招いています。診療報酬という公定価格制度のもとでは、病院が経営努力だけで赤字を解消することには限界があります。持続可能な医療提供体制を確保するには、診療報酬制度の抜本的な見直しや、医療機関の経営を支える新たな財政措置が必要です。まとめ国民医療費は高齢化と医療技術の進歩により毎年1兆円ずつ増加していますが、診療報酬という公定価格を引き上げられない一方で経費が増加し続けるため、多くの病院が赤字経営に陥っています。神野会長は全国の病院の約7割が赤字であると指摘し、医療提供体制の持続可能性への危機感を表明しています。市場経済とは異なり、医療経済では価格を自由に設定できないという構造的問題が、病院経営を圧迫しています。この状況は医療提供体制の持続可能性を脅かす重大な課題であり、診療報酬制度の見直しを含めた対策が急務です。神野会長の解説は、私たちが普段意識することの少ない医療経済の特殊性と、病院経営が直面する深刻な現実を明らかにしています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

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