病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。
https://www.daitoku0110.news?utm_medium=podcast">www.daitoku0110.news
番組の魅力・推薦
中医協第650回|テッペーザとトロデルビの費用対効果評価案を解説
令和8年5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、費用対効果評価専門組織から医薬品2品目の評価案が報告されました。この評価案は、ICERの区分や価格調整係数、企業分析と公的分析の争点を含むため、資料だけでは要点をつかみにくい内容です。本メルマガでは、評価結果と争点に対する専門組織の判断を、費用対効果評価に初めて触れる方にもわかるように整理します。専門組織は、テッペーザとトロデルビの2品目について、いずれも公的分析を妥当とする評価案をまとめました。ICERの区分は、テッペーザが「750万円/QALY以上1,000万円/QALY未満」、トロデルビが「1,500万円/QALY以上」で、どちらも価格調整係数が1を下回る区分に該当します。テッペーザでは、再発割合と薬剤費の設定について、公的分析の設定が妥当とされました。トロデルビでは、QOL値の設定方法について、同一の健康状態に同一のQOL値を用いる公的分析の方法が妥当とされました。評価結果:2品目とも価格調整係数が1を下回る区分にテッペーザとトロデルビは、いずれも2024年11月13日に総会で評価対象に指定され、今回の評価案でICERが価格調整係数1.0の区分を上回りました。価格調整係数は、価格のうち有用性系加算などの一部分に掛ける係数です。この係数が1未満になると、その部分の価格が引き下げの対象となります。以下では、評価の仕組みを確認したうえで、各品目の結果を説明します。費用対効果評価の仕組み 費用対効果評価は、新しい医薬品が既存の治療(比較対照技術)と比べて、費用に見合う効果を持つかを判定する仕組みです。この判定には、ICER(増分費用効果比)という指標を使います。ICERは、1QALYを追加で得るために、既存の治療より何円多くかかるかを示す値です。QALY(質調整生存年)は、生存年数に生活の質の重み(QOL値:完全な健康を1、死亡を0とする値)を掛けた指標です。ICERが大きいほど、効果に比べて費用が高いと判定されます。ICERの区分に応じて価格調整係数が決まり、係数が小さいほど引き下げ幅は大きくなります。テッペーザの評価結果 テッペーザ点滴静注用(テプロツムマブ 500mg、アムジェン株式会社)は、ICERが750万円/QALY以上1,000万円/QALY未満の区分となりました。本剤は、活動性甲状腺眼症の治療薬です。収載時価格は500mg1瓶979,920円、有用性系加算率は45%です。ピーク時の市場規模は494億円と予測され、市場規模100億円以上の「H1」区分で評価されました。比較対照技術は、ステロイドパルス療法と放射線外照射の併用療法です。評価結果の対象集団は、中等度から重症の活動性甲状腺眼症(CAS3点以上)の患者で、患者割合は100%とされました。資料の補足図(営業利益の価格調整係数)では、この区分は係数0.67の区間に当たります。トロデルビの評価結果 トロデルビ点滴静注用(サシツズマブ ゴビテカン、ギリアド・サイエンシズ株式会社)は、ICERが1,500万円/QALY以上の区分となりました。本剤は、化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌の治療薬です。収載時価格は200mg1瓶187,195円、有用性系加算率は40%です。ピーク時の市場規模は93億円と予測され、市場規模50億円以上の「H2」区分で評価されました。比較対照技術は、エリブリンです。評価結果の対象集団は、効能・効果と同じ患者集団で、患者割合は100%とされました。資料の補足図(有用性系加算等の価格調整係数)では、この区分は最も低い係数0.1の区間に当たります。2つの補足図の違い 2品目の補足図は、ICERの境界値と価格調整係数の刻みがどちらも異なります。テッペーザの図は、境界値が500万・750万・1,000万円/QALYで、係数が1.0・0.83・0.67・0.5の4段階です。トロデルビの図は、境界値が750万・1,125万・1,500万円/QALYで、係数が1.0・0.7・0.4・0.1の4段階です。係数を掛ける対象も、テッペーザは営業利益、トロデルビは有用性系加算等と異なります。そのため、「0.67」と「0.1」という数字を、そのまま引き下げ幅として比べることはできません。なお、トロデルビの境界値が高い理由は資料に記載されていません(筆者補足:抗がん剤などには、より高い境界値が適用される仕組みがあります)。2品目の評価結果の比較テッペーザ点滴静注用* 一般名:テプロツムマブ* 効能・効果:活動性甲状腺眼症* 収載時価格:979,920円(500mg1瓶)* 有用性系加算率:45%* 市場規模(ピーク時予測):494億円(H1)* 比較対照技術:ステロイドパルス療法と放射線外照射の併用療法* ICERの区分:750万円/QALY以上1,000万円/QALY未満* 補足図で該当する係数:0.67(営業利益の価格調整係数)トロデルビ点滴静注用* 一般名:サシツズマブ ゴビテカン* 効能・効果:化学療法歴のあるホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌* 収載時価格:187,195円(200mg1瓶)* 有用性系加算率:40%* 市場規模(ピーク時予測):93億円(H2)* 比較対照技術:エリブリン* ICERの区分:1,500万円/QALY以上* 補足図で該当する係数:0.1(有用性系加算等の価格調整係数)テッペーザの争点:再発割合と薬剤費の設定専門組織は、テッペーザの3つのパラメータについて、いずれも公的分析の結果を妥当と判断しました。3つのパラメータとは、本剤の眼球突出の再発割合、併用療法の再発割合、分析対象集団(c)の費用パラメータです。分析の枠組み 公的分析が再分析を行ったのは、中等症から重症でCAS3点以上の集団(c)です。分析の枠組みでは、患者を3つの集団に分けています。軽症の集団(a)の比較対照技術は、対症療法です。中等症から重症でCAS3点未満の集団(b)と、CAS3点以上の集団(c)の比較対照技術は、ステロイドパルス療法と放射線外照射の併用療法です。この併用療法は、診療ガイドライン上、ステロイドパルス単独より治療効果が高いとされるため選ばれました。集団(a)と(b)では、トリアムシノロン局所注射を比較対照技術とするシナリオ分析も行うこととされました。本剤の眼球突出の再発割合 本剤の眼球突出の再発割合は、企業の0%ではなく、公的分析の24%が妥当とされました。企業は、TED01RV試験の結果から、再発割合を0%と設定しました。公的分析は、同じ試験の長期観察で再発が確認されており、0%は過小である可能性を指摘しました。そのうえで、本剤の複数の臨床試験を統合したKahalyら(2024)による72週時点の再発率24%を用いました。本剤の薬剤費 本剤の薬剤費は、企業の体重50kgの仮定ではなく、公的分析のNDB集計に基づく設定が妥当とされました。企業は、薬価算定時の体重設定にあわせて、患者の体重を50kgと仮定しました。公的分析は、NDB(匿名医療保険等関連情報データベース)から本剤の実際の算定バイアル本数を集計し、これを用いて薬剤費を算出しました。企業の説明によると、公的分析はNDBの体重区分別の患者割合から加重平均値を求めています。企業はこれに対し、MDV社のレセプトデータでは1回あたり平均2.37バイアルであり、1回あたりの平均投与量を用いるべきだと反論しました。併用療法の再発割合 併用療法の再発割合は、企業の30.5%ではなく、公的分析の18.4%が妥当とされました。企業は、複数文献の報告値の最大値と最小値の中点をとり、30.5%と設定しました。公的分析は、治療反応と再発の定義が事前に明確に規定されたKahalyら(2018)の18.4%を用いました。企業は、ステロイドパルス療法は眼球突出にほとんど有効性を示さない可能性があると主張しました。そのうえで、この文献の再発の定義には改善が見込まれにくい眼球突出と複視の悪化が含まれるため、再発割合が低く見積もられる可能性があると反論しました。公的分析も、文献の再発割合は複合アウトカムとしてのみ報告されているため、分析上の再発割合は依然として過剰に推計されている可能性を否定できないとしています。それでも公的分析は、企業の値より妥当だと判断しました。専門組織の判断 専門組織は、企業が主張する再発率0%を受け入れられないと判断しました。その根拠として、欧州のガイドラインでは眼球突出の再発率が29.4%とされている点を挙げました。また、本剤は従来の治療薬より再発率が高くない印象はあるものの、症例数と長期の観察が不足していると指摘しました。さらに、主要な論点はいずれもパラメータ設定に関するもので、公的分析は一貫した仮定に基づくと評価しました。なお、筆者補足として、2つの再発割合の変更は、いずれも本剤と比較対照技術の効果の差を小さくする方向の設定です。トロデルビの争点:QOL値の設定方法専門組織は、トロデルビのQOL値について、「同一の健康状態には同一のQOL値を適用する」公的分析を妥当と判断しました。企業は、同じ健康状態でも治療法によって異なるQOL値を設定していました。企業分析の方法 企業分析は、同じ健康状態でも治療法ごとに異なるQOL値を用いました。企業は、ASCENT試験で測定した患者報告型アウトカム(EORTC QLQ-C30)を、EQ-5D-3LのQOL値に変換しました。次に、変換したQOL値を、治療群とPD(病勢進行)の有無を共変量とする混合効果線形回帰モデルで分析しました。この結果、同じ健康状態でも、トロデルビ群と比較対照群で異なるQOL値となりました。公的分析の方法 公的分析は、各健康状態について、両群のQOL値の平均値を共通して用いました。同一の健康状態に異なるQOL値を設定することは適切でないと考えたためです。企業の反論 企業は、4つの根拠を挙げて、トロデルビ群のQOL値は高いと主張しました。1つ目の根拠は、奏効率の高さです。ASCENT試験で、トロデルビ群はTPC群(医師選択治療群)より高い客観的奏効率を示しました(オッズ比10.99、95%信頼区間5.65~21.35)。企業は、トロデルビ群のPFS(無増悪生存)期間は腫瘍縮小を伴う期間であり、TPC群とは質的に異なると主張しました。2つ目の根拠は、既報のQOL予測モデルとの一貫性です。Lloydら(2006)のモデルでは、奏効状態のQOL値は安定・維持の状態より0.075高く設定されています。このモデルは、Iwataniら(2021)で日本人患者のQOL値予測にも有用と報告されています。3つ目の根拠は、欠測データによるバイアスです。企業は、TPC群では病状悪化による早期脱落が多いと想定されるため、QOL値を単純に平均するとTPC群を過大評価すると主張しました。4つ目の根拠は、PD後への波及効果です。企業は、トロデルビ群は腫瘍負荷が縮小した状態から進行するため、PD後もQOLの優位性が続くと主張しました。英国NICEの報告書でも、複数の臨床専門医がこの考え方に同意したとしています。専門組織の判断 専門組織は、企業分析の方法がモデル構造と整合せず、妥当ではないと判断しました。このモデルの健康状態は、PFS、PD、死亡の3つだけです。腫瘍縮小は、健康状態として明示的にモデル化されていません。PFSを単一の健康状態として扱いながら群間で異なるQOL値を用いる方法は、モデル構造との整合性の観点から妥当ではないとされました。また、同一の健康状態に同一のQOL値を適用する前提は、評価の透明性確保の観点からも妥当とされました。判断の読み解き方(筆者解説) 専門組織の判断は、奏効によるQOLの差の有無そのものを結論づけたものではありません。判断の根拠は、腫瘍縮小を健康状態として表現していないモデルで、群ごとに異なるQOL値を使う点にありました。費用対効果評価では、臨床的な主張に加えて、モデル構造と数値設定の整合性が問われることがわかります。まとめ:2品目とも公的分析を妥当とする評価案に第650回中医協総会で報告された評価案では、テッペーザとトロデルビの2品目とも、公的分析が妥当とされました。ICERの区分は、テッペーザが750万円/QALY以上1,000万円/QALY未満、トロデルビが1,500万円/QALY以上で、どちらも価格調整係数が1を下回る区分です。テッペーザでは、本剤と併用療法の再発割合、本剤の費用パラメータについて、公的分析の結果が妥当とされました。トロデルビでは、同一の健康状態に同一のQOL値を用いる公的分析の方法が妥当とされました。価格調整後の薬価は、本資料には示されていません。なお、資料の留意事項では、総合的評価において企業分析と公的分析の双方に一定の科学的妥当性が認められているとされています。「専門組織での主な検討事項」は、双方の見解の主な相違部分を抜粋したものです。費用対効果評価の詳細は、国立保健医療科学院から公表される報告書で確認できます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
中医協第649回|iPS細胞製品など再生医療5品目の保険適用案を解説
2026年(令和8年)4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、再生医療等製品5品目の医療保険上の取扱い案が示されました。再生医療等製品は、医薬品と医療機器のどちらの例で扱うかによって、償還価格を検討する組織と収載先の基準が変わります。本号では、5品目の取扱い案とその判断根拠を、中医協資料に沿って整理します。取扱い案の結論は、iPS細胞由来心筋細胞シート「リハート」を医療機器の例で、残る4品目を医薬品の例で扱うというものです。この区分は、製品ごとの使用方法と作用を、薬事承認の結果から判断するルールに基づいています。区分の根拠として、リハートには既存の医療機器と使用方法が類似している点が、4品目には作用や使用方法が医薬品と同様である点(ゾルゲンスマ髄注は既存の点滴静注と同一成分である点)が挙げられています。また、リハート・アムシェプリ・アクーゴの3品目は、限られた症例数の試験で有効性を「推定」して承認された条件及び期限付き承認の製品であり、期限の7年以内に市販後のデータで有効性を検証します。1. 区分を決めるルール:医薬品の例か、医療機器の例か再生医療等製品には独自の保険上の枠組みがなく、当面は医薬品か医療機器のどちらかの例に当てはめて扱います。この当てはめの方法は、2014年と2026年1月の中医協総会で決められています。区分が決まると、償還価格を検討する組織と収載先の基準も決まります。2014年(平成26年)11月5日の中医協総会は、再生医療等製品の区分を製品ごとに判断する方針を了承しました。判断の材料は、保険適用を希望する個別製品の特性と、薬事承認の結果です。再生医療等製品独自の保険体系を作るかどうかは、知見が蓄積した後に引き続き検討するとされています。2026年(令和8年)1月14日の中医協総会は、条件及び期限付き承認の製品にも同じ判断方法を用いることを確認しました。つまり、条件及び期限付き承認の製品も、通常承認の製品と同様に、薬事承認の結果を踏まえて医薬品か医療機器かを判断します。事例が集積するなど状況が変わった場合には、中医協総会に報告し、必要に応じて取扱いを見直すとされています。区分が決まった後の流れは、医薬品の例と医療機器の例で次のように分かれます。* 医薬品の例:薬価算定組織が償還価格を検討 → 中医協総会が収載を審議 → 薬価基準に収載* 医療機器の例:保険医療材料等専門組織が償還価格を検討 → 中医協総会が収載を審議 → 材料価格基準に収載償還価格とは、保険診療で製品を使ったときに、診療報酬として医療機関に支払われる公定価格のことです。薬価基準は保険で使える医薬品とその価格の一覧であり、材料価格基準は保険で使える医療材料とその価格の一覧です。2. 5品目の取扱い案と判断理由今回保険収載の申出があった5品目のうち、医療機器の例で扱う案はリハートの1品目だけです。残る4品目は、いずれも医薬品の例で扱う案です。5品目の概要は次のとおりです。* リハート(ヒト(同種)iPS細胞由来心筋細胞シート/クオリプス)* 対象:標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全* 承認日:2026年3月6日(条件及び期限付き承認)* 取扱い案:医療機器の例* アムシェプリ(ラグネプロセル/住友ファーマ)* 対象:既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の運動症状* 承認日:2026年3月6日(条件及び期限付き承認)* 取扱い案:医薬品の例* アクーゴ脳内移植用注(バンデフィテムセル/サンバイオ)* 対象:外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺* 承認日:2024年7月31日(条件及び期限付き承認)、2025年12月8日(承認事項一部変更承認)* 取扱い案:医薬品の例* アロステムシート(ニバドストロセル/イシンファーマ)* 対象:難治性・再発性のびらん・潰瘍を有する表皮水疱症(栄養障害型、接合部型、単純型〈重症汎発型に限る〉)* 承認日:2026年4月3日* 取扱い案:医薬品の例* ゾルゲンスマ髄注(オナセムノゲン アベパルボベク/ノバルティスファーマ)* 対象:脊髄性筋萎縮症(抗AAV9抗体陰性、2歳以上)* 承認日:2026年4月3日(新用法・使用方法)* 取扱い案:医薬品の例リハートは、心臓表面に貼る使い方が既存の医療機器と似ているため、医療機器の例で扱う案です。リハートは、健康なドナー由来のiPS細胞から作った心筋細胞を、1枚あたり約3,300万個のシート状にした製品です。このシート3枚を、開胸手術で心臓の表面に貼り付けます。貼り付けたシートは心筋として収縮するわけではなく、シートから分泌されるサイトカイン等が心筋の状態を改善すると想定されています。資料は、開胸手術で心臓表面に直接貼付する既存の医療機器と使用方法が類似している点を、医療機器の例とする根拠に挙げています。アムシェプリは、移植した細胞がドパミンを作り出す薬理的な作用で効くため、医薬品の例で扱う案です。アムシェプリは、iPS細胞から作ったドパミン神経前駆細胞を含む製品です。この細胞を定位脳手術で脳の被殻に移植すると、細胞がドパミン神経細胞に成熟し、ドパミンを産生・分泌します。資料は、このドパミン増加による運動症状の改善が医薬品と同様の薬理的な作用であるとして、医薬品の例とする根拠に挙げています。アクーゴは、移植した細胞が出すサイトカインの薬理的な作用で神経を修復するため、医薬品の例で扱う案です。アクーゴは、骨髄由来の間葉系幹細胞に、Notch-1の細胞内ドメインをコードする遺伝子を導入した細胞製品です。この細胞を定位脳手術で脳の損傷部位の周辺に移植すると、細胞から分泌されるサイトカインが神経細胞の修復を促します。資料は、この修復作用が医薬品と同様の薬理的な作用であるとして、医薬品の例とする根拠に挙げています。アロステムシートは、リハートと同じく患部に貼る製品ですが、使用方法と作用が医薬品と同様であるため、医薬品の例で扱う案です。アロステムシートは、脂肪組織由来の間葉系幹細胞をシート状に培養した製品です。このシートを、表皮水疱症の患者のびらん・潰瘍部に週1回貼付します。貼付したシートは、成長因子等による炎症の抑制や、Ⅶ型コラーゲン等の補充によって傷の治りを促します。資料は、この使用方法と作用が医薬品と同様であることを、医薬品の例とする根拠に挙げています。ゾルゲンスマ髄注は、既存のゾルゲンスマ点滴静注と同じ成分であるため、点滴静注と同様に医薬品の例で扱う案です。ゾルゲンスマ髄注は、点滴静注と同じオナセムノゲン アベパルボベクを、髄腔内に1回投与する製剤です。投与された遺伝子は運動ニューロンの中でSMNタンパク質を長期間作り続け、脊髄性筋萎縮症(SMA)の原因である遺伝子の機能欠損を補います。今回の髄注は、2歳以上で抗AAV9抗体が陰性の患者を対象としています。3. 条件及び期限付き承認3品目の有効性と市販後の検証リハート・アムシェプリ・アクーゴの3品目は、条件及び期限付き承認を受けた製品です。3品目とも、限られた症例数の臨床試験で有効性を推定し、承認後に市販後のデータで有効性を検証する計画です。3品目の期限は、いずれも7年です。条件及び期限付き承認は、再生医療等製品を早く患者に届けるための制度です。人の細胞を使う製品は個人差によって品質が不均一になりやすく、有効性の確認に長い時間がかかります。そこでこの制度は、限られた症例から有効性を推定し、安全性を確認した段階で、条件と期限を付けて承認します。承認を受けた企業は期限内に改めて承認申請を行い、市販後に集めたデータで有効性を示す必要があります。期限内に改めて承認を得られなければ、条件及び期限付き承認は失効します。リハートは、8例の試験で心機能と運動耐容能の改善を示し、市販後に75例で再現性を確認します。臨床試験は、重症の虚血性心筋症患者8例を対象とした非盲検非対照試験でした。主要評価項目である心エコー検査の左室駆出率(LVEF:心臓が血液を送り出す力の指標)の改善は、8例中2例にとどまりました。一方、運動耐容能の指標であるPeak VO2(最大酸素摂取量)は、臨床的に意義があるとされる10%以上の増加が、移植後52週時点で4例に認められました。壊死した心筋は自然には回復しないため、この改善は自然経過では説明できないと判断されました。市販後は、75例を対象とする使用成績調査で、移植後52週時点でPeak VO2が改善し、かつLVESVI(心臓の容積指標)が改善または維持した患者の割合を評価します。比較のため、標準治療を受ける重症心不全患者のデータを別の前向き臨床研究で集め、外部対照として用います。アムシェプリは、6例の試験で運動症状の改善を示し、市販後に65歳以下の30例で再現性を確認します。臨床試験は、7例に移植し、そのうち6例で有効性を評価した非盲検非対照試験でした。薬が効きにくい時間帯(オフ時)の運動症状スコア(MDS-UPDRS Part Ⅲ)は、6例中4例で改善しました。このうち3例は、文献で報告されたプラセボ効果の最大値を上回る改善でした。加えて、PET検査で脳内のドパミン生成の増加が確認され、6例全例で移植細胞の生着が確認されました。市販後は、65歳以下の30例を対象とする臨床試験で、移植後96週時点のオフ時運動症状スコアの変化量を評価します。この臨床試験では65歳超の5例も副コホートとして評価し、試験以降に移植された患者は全例を使用成績調査で追跡します。アクーゴは、偽手術と比べた比較試験で運動麻痺の有意な改善を示し、市販後にリハビリのみの群と比べて再現性を確認します。臨床試験は、本品群46例と偽手術群15例を比べる無作為化二重盲検比較試験でした。主要評価項目である移植後24週の運動機能スコア(FMMS)の変化量は、本品群が平均8.3点、偽手術群が平均2.3点であり、統計学的に有意な差が認められました(p=0.0401)。慢性期の外傷性脳損傷による麻痺に対する治療は機能維持を目的としたリハビリに限られ、機能回復を目指す有効な治療法はありません。市販後は、本品とリハビリを併用する28例と、リハビリのみの14例を比べる無作為化試験で、24週時点のFMMSの変化量を評価します。3品目に共通して、使用できる医師と医療機関には条件が付いています。承認条件では、対象疾患の治療と手術に十分な知識と経験を持つ医師が、体制の整った医療機関で使用することが求められています。使用施設や患者の基準は、関連学会の協力を得て作成中の適正使用指針または最適使用推進ガイドラインで定める予定です。また、添付文書の警告欄で、臨床成績が限られていることを含めて文書で説明し、患者の同意を得たうえで使用することが規定されています。iPS細胞を使うリハートとアムシェプリでは、がん化リスクへの対策として、未分化iPS細胞の混入に関する出荷規格と、MRI等による定期的な画像検査が設けられています。まとめ:リハートは医療機器、4品目は医薬品の例で対応する案第649回中医協総会では、再生医療等製品5品目のうち、リハートを医療機器の例で、アムシェプリ・アクーゴ・アロステムシート・ゾルゲンスマ髄注の4品目を医薬品の例で扱う案が示されました。この区分は、製品の使用方法と作用を薬事承認の結果から判断するルールに基づき、条件及び期限付き承認の製品にも同じルールが適用されます。取扱い案が了承されれば、今後、リハートは保険医療材料等専門組織で、4品目は薬価算定組織で償還価格が検討され、中医協総会で収載が審議されます。条件及び期限付き承認の3品目は、7年の期限内に市販後の臨床試験や使用成績調査で有効性を検証することになります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度改定の附帯意見26項目|中医協の検討の進め方を解説
令和8年4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、令和8年度診療報酬改定の答申書附帯意見(改定案の答申時に中医協が示した今後の検討課題)について、検討の進め方の案が示されました。附帯意見は26項目にわたるため、どの課題をどの会議で検討するかを押さえなければ、次期改定に向けた議論を追いかけることは困難です。本号では、案に示された26項目の検討の場を整理し、医療機関が注目すべき3つのポイントを解説します。案では、附帯意見26項目を8つの検討の場に振り分け、今回改定の影響の検証と次期改定に向けた検討に入るとしています。1つ目のポイントとして、物価対応と賃上げは、実態の把握を経て、必要な場合には令和9年度の更なる対応を総会で検討する案です。2つ目のポイントとして、病棟業務、入院医療、医師偏在対策、外来医療に関する10項目は、入院・外来医療等に関する調査・評価分科会が担当する案です。3つ目のポイントとして、在宅医療、精神医療、歯科、調剤、処方・医薬品に関する9項目は、検証部会が担当する案です。附帯意見26項目を8つの検討の場に振り分ける案案では、附帯意見26項目を、テーマごとに8つの検討の場へ振り分けています。各検討の場は、今回改定の影響を検証しながら、次期改定に向けた調査と検討に入るとされています。案が示す進め方の基本は、「今回改定の影響の検証」と「次期改定に向けた調査・検討」を同時に進めることです。この2つを同時に進めれば、令和8年度改定で新設・見直しされた評価が現場でどう機能しているかを、次期改定の議論に直接つなげられます。案に示された8つの検討の場と、担当する附帯意見の番号は、次のとおりです。* 総会:項目1、26(項目2・3の令和9年度対応と、項目2の今後の評価の在り方も総会で検討)* 調査実施小委員会:項目2(経営状況の把握)* 入院・外来医療等に関する調査・評価分科会:項目3〜13、項目17(オンライン診療)* 検証部会:項目14〜16、項目17(医療DX)、項目19〜24* 医療技術評価分科会:項目18* 保険医療材料専門部会:項目18、25* 薬価専門部会:項目25* 費用対効果評価専門部会:項目25総会は、制度全体にかかわる2つの項目を直接担当する案です。1つは、複雑化した診療報酬体系を患者などに分かりやすくする検討です(項目1)。この項目には、施設基準届出のオンライン化や共通算定モジュールの活用による請求手続きの負担軽減も含まれます。もう1つは、施策の効果や医療の質をデータとエビデンスで迅速・正確に検証する方策の検討です(項目26)。専門部会と医療技術評価分科会は、医療技術と、医薬品・医療材料の価格制度を担当する案です。項目18は、医療技術の継続的な再評価と、革新的な医療機器や検査を含む先進的な医療技術の評価の在り方の検討を求めています。案では、項目18の検討の場として、医療技術評価分科会と保険医療材料専門部会が併記されています。項目25は、薬価制度、保険医療材料制度、費用対効果評価制度の在り方の検討を求めています。案では、項目25の検討の場として、3つの専門部会が併記されています。医療DXとオンライン診療の項目は、2つの検討の場で分担する案です(項目17)。電子処方箋や電子カルテ共有サービスなどの医療DXは、検証部会が担当します。D to P with DやD to P with Nなどのオンライン診療は、入院・外来医療等に関する調査・評価分科会が担当します。物価対応と賃上げは令和9年度の対応の要否が焦点物価対応と賃上げは、実態の調査を経て、必要な場合には令和9年度の更なる対応を総会で検討する案です。どちらの項目も、調査を担う場と、対応を検討する総会が分かれている点が特徴です。物価対応(項目2)では、調査実施小委員会が医療機関等の経営状況を把握する案です。附帯意見は、この経営状況と実際の経済・物価の動向を踏まえ、必要な場合には令和9年度の更なる対応を検討するよう求めています。総会では、基本料・技術料を含めた物価対応に関する今後の評価の在り方も検討する案です。賃上げ(項目3)では、入院・外来医療等に関する調査・評価分科会が賃上げの実態を把握する案です。調査の対象は、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工士等を含む幅広い医療関係職種です。附帯意見は、この実態と経営状況、経済・物価の動向を踏まえ、必要な場合には令和9年度の更なる対応を検討するよう求めています。この令和9年度の対応は、総会で検討する案です。物価対応と賃上げの調査結果は、令和9年度の対応の要否を判断する材料になると考えられます。そのため、医療機関にとっては、今後の調査への回答が、自院の実態を伝える機会になるでしょう。病棟業務・入院・外来などの10項目は入院・外来医療等に関する調査・評価分科会が担当する案病棟業務、入院医療、医師偏在対策、外来医療に関する10項目(項目4〜13)は、入院・外来医療等に関する調査・評価分科会が担当する案です。この分科会は賃上げとオンライン診療も担当するため、附帯意見の中で最も多い12項目を抱える検討の場となります。急性期入院医療(項目5〜7)では、附帯意見は新設された評価の影響の検証を求めています。検証の対象は、急性期病院一般入院基本料や急性期総合体制加算の新設による影響です。あわせて、10対1急性期病棟の在り方を含む急性期入院医療の評価の検討を求めています。高度急性期では、特定集中治療室管理料などの影響の検証に加え、重症度、医療・看護必要度の項目やSOFAスコアなどの評価指標の検討を求めています。救急では、下り搬送の評価などの影響の検証と、在宅療養を行う高齢者や介護保険施設入所者の救急受入れの実態把握を求めています。包括期・慢性期入院医療(項目8・9)では、附帯意見は病棟ごとの評価の見直しの影響の検証を求めています。検証の対象は、地域包括医療病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病棟などです。DPC/PDPS(診断群分類に基づく包括払い制度)と短期滞在手術等基本料では、更なる包括払いの在り方の検討を求めています。病棟業務と地域偏在(項目4・10)では、附帯意見は人員配置の柔軟化と偏在対策の影響の検証を求めています。病棟業務では、看護職員と他職種の協働、ICT・AI・IoTの活用による配置基準の柔軟化、専従業務の柔軟化などについて、病棟の種別ごとの検証を求めています。検証の観点は、業務負担、医療の質、医療安全、生産性向上、医療従事者の確保などです。地域偏在では、人口の少ない地域の外来・在宅医療提供体制を確保する支援の評価や、外科医療確保特別加算の新設などの影響の検証を求めています。外来医療(項目11〜13)では、附帯意見は外来機能分化とかかりつけ医機能の評価の検証を求めています。外来機能分化では、初診料・外来診療料における逆紹介割合に基づく減算規定の見直しや、連携強化診療情報提供料の見直しの影響の検証を求めています。医学管理では、生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)や特定疾患療養管理料の影響の検証を求めています。かかりつけ医機能では、かかりつけ医機能報告制度の施行状況を踏まえた評価の在り方の検討を求めています。在宅・精神・歯科・調剤・処方・医薬品の9項目は検証部会が担当する案在宅医療、精神医療、歯科、調剤、処方・医薬品に関する9項目(項目14〜16、19〜24)は、検証部会が担当する案です。検証部会は、医療DXの活用状況の検証も担当する案です。在宅医療と精神医療(項目14〜16)では、附帯意見は訪問系サービスと地域移行の評価の検証を求めています。在宅医療では、往診、訪問診療、歯科訪問診療、訪問薬剤管理指導、訪問看護の評価の在り方の検討を求めています。訪問看護では、同一建物居住者への評価の見直しや、1日あたりで包括的に評価する仕組みの新設を踏まえ、指定訪問看護事業所の経営状況の把握を求めています。精神科訪問看護では、利用者の増加傾向を踏まえた評価の在り方の検討を求めています。精神医療では、新設された精神科地域密着多機能体制加算の効果や、総合病院精神科の評価の検証を求めています。歯科と調剤(項目19〜21)では、附帯意見はかかりつけ機能と薬局の立地の評価の検証を求めています。歯科では、かかりつけ歯科医による歯科疾患・口腔機能の管理等の評価の見直し、歯科治療のデジタル化、医科歯科連携の影響の検証を求めています。調剤では、敷地内薬局、門前薬局、医療モール薬局への改定の影響の検証を求めています。薬局の都市部偏在では、地域支援体制加算・在宅薬学総合体制加算の実績要件や人員要件の在り方の検討を求めています。処方と医薬品(項目22〜24)では、附帯意見は処方の在り方と医薬品の保険給付の検証を求めています。処方では、長期処方やリフィル処方の活用策と、ポリファーマシー対策を踏まえた評価の検討を求めています。後発医薬品では、バイオ後続品を含む使用促進の評価について、供給状況を踏まえた検討を求めています。保険給付では、長期収載品や食品類似薬の扱いについて、供給状況や患者の負担増に配慮した検討を求めています。まとめ:次期改定に向けた検討の地図を手に入れる案では、附帯意見26項目を8つの検討の場に振り分け、影響の検証と次期改定に向けた検討に入るとしています。物価対応と賃上げは、実態の調査を経て、必要な場合には令和9年度の更なる対応を総会で検討する案です。病棟業務、入院医療、医師偏在対策、外来医療の10項目は、入院・外来医療等に関する調査・評価分科会が担当する案です。在宅医療、精神医療、歯科、調剤、処方・医薬品の9項目は、検証部会が担当する案です。自院に関係する項目の検討の場を把握しておけば、今後の各会議の資料から、次期改定の方向性をいち早く読み取れます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和9年度の加減算の判断材料となる臨時調査、3つのポイントで解説
令和8年4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、調査実施小委員会が「令和8年度医療機関等の経営状況に係る臨時調査」の実施案を報告しました。この臨時調査の結果は、令和8年度診療報酬改定の賃上げ分や物価対応分を令和9年度に加減算するかどうかの判断材料になります。本号では、臨時調査の目的・設計・調査票の内容を、総会資料(総-9-1~総-9-6)に沿って整理します。臨時調査は、改定後の経営実態を短期間で把握し、令和9年度の追加調整の判断に使うための調査です。第1に、調査の目的は、経済・物価の動向が改定時の見通しから大きく変動し、経営に支障が生じた場合に備え、令和9年度予算編成で改定率の一部を加減算するための足元の情報を得ることです。第2に、調査の設計は、医療経済実態調査をベースに4つの施設類型を層化無作為抽出(一部は全数調査)し、令和7年と令和8年の6~9月を比較するものです。第3に、調査票は損益に加え、賞与・職員数・ベースアップ評価料など賃上げの状況も尋ねる構成で、回答は11月10日までに電子調査票で提出します。1 調査の目的:令和9年度の「更なる調整」の判断材料をつくる臨時調査は、令和7年12月24日の大臣折衝事項で予告された「令和9年度における更なる調整」に必要なデータを集める調査です。以下では、改定率の構造、調整の仕組み、臨時調査の位置づけの順に説明します。令和8年度診療報酬改定の改定率は、2年度平均で+3.09%に設定されています。この+3.09%は、令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%という2段階の数字の平均です。内訳には、賃上げ分+1.70%、物価対応分+0.76%、食費・光熱水費分+0.09%が含まれます。改定は令和8年6月に施行されました。この改定率の一部は、経済・物価の実際の動きに応じて見直されることがある仕組みになっています。大臣折衝事項は、実際の経済・物価の動向が改定時の見通しから大きく変動し、医療機関等の経営に支障が生じた場合の対応を定めています。その対応とは、賃上げ分・物価対応分・食費・光熱水費分(特例的な対応を除く)について、令和9年度予算編成で「加減算を含め更なる必要な調整を行う」ことです。つまり、調整は上乗せだけでなく、引き下げの可能性も含みます。その調整の根拠となる「足元の情報」を得る手段が、今回の臨時調査です。大臣折衝事項は、必要な情報を正確に把握するため、令和8年度の経営状況等を調査すると明記しています。報告時期を11月下旬に置くのは、年末の予算編成に結果を間に合わせるためと考えられます。2 調査の設計:4施設類型を抽出し、2期間の損益を比較する臨時調査の設計は、医療経済実態調査をベースとしつつ、短期間で結果を得られるように組み立てられています。以下では、対象、抽出方法、調査期間、日程と方法、集計の順に説明します。調査の対象は、社会保険による診療・調剤を行う全国の病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局です。保険薬局は、1か月の調剤報酬明細書の取扱件数が300件以上の薬局に限られます。一方、開設者が医育機関である病院(特定機能病院と歯科大学病院を除く)、特定人のための閉鎖的な施設、感染症病床のみの病院、自衛隊病院などの特殊な病院は対象外です。同様に、歯科併設の一般診療所、臨床検査センター、夜間診療所、巡回診療所、1か月の診療時間が100時間未満と推定される施設も除外されます。対象施設の中から、施設類型ごとに層化無作為抽出で調査客体を選びます。ただし、特定機能病院・歯科大学病院・こども病院は抽出率が1/1であり、全数が調査客体となります。施設類型ごとの抽出率と主な層化の基準は次のとおりです。* 病院* 抽出率:1/2.5(特定機能病院・歯科大学病院・こども病院は1/1)* 主な層化の基準:DPC対象の有無、病床規模(200床以上・未満)、院外処方の有無、地域、開設者など* 一般診療所* 抽出率:1/10* 主な層化の基準:入院患者の有無、主たる診療科、院外処方の有無、地域など* 歯科診療所* 抽出率:1/30* 主な層化の基準:院外処方の有無、地域、常勤歯科医師数* 保険薬局* 抽出率:1/20* 主な層化の基準:地域、開設者(個人・法人)調査期間は、令和7年6月~9月と令和8年6月~9月の2期間です。令和8年6~9月は、令和8年度改定の施行直後にあたります。同じ月同士を比べるため、季節による収益・費用の変動の影響を抑えて改定前後を比較できると考えられます。調査の日程は、実施案では9月中旬に調査票を配布し、11月上旬を回答期限としています。調査票案に記載された提出期限は、令和8年11月10日です。回答は、ホームページを利用した電子調査方式で、医療機関等の管理者が自ら記入する「自計申告」で行います。調査主体は中医協です。結果は、中医協の議を経て速やかに公表されます。集計は、施設類型ごとの基本集計と、機能別の集計の2本立てです。基本集計では、病院は医業・介護収益に占める介護収益の割合が2%未満の施設を、一般診療所・歯科診療所・保険薬局は回答した全施設を集計します。機能別の集計では、病院機能別、入院基本料別、一般診療所の主たる診療科別、保険薬局の調剤基本料等別に損益を示します。さらに、ベースアップ評価料の算定状況別の損益も集計されます。3 調査票の内容と回答のポイント:損益と賃上げの状況を尋ねる調査票は「第1 基本データ」と「第2 損益」の2部で構成され、損益に加えて賃上げの状況を尋ねる項目も設けられています。以下では、基本データ、賃上げ関連項目、損益項目、回答時の注意点の順に説明します。基本データでは、施設の属性を原則として令和8年9月30日時点で尋ねます。4つの調査票に共通する項目は、開設者、活動状況、消費税の経理方式、賞与引当金・退職給付引当金の計上有無です。活動状況で「令和7年6月2日以降に開設」「休止・廃止」などに該当する施設は、その時点で調査終了となります。病院票では、令和8年度改定後の区分(急性期病院A一般入院料、急性期病院B一般入院料など)で、令和8年6~9月に算定月数が最も多い入院基本料を記入します。保険薬局票では、令和8年6月以降に算定している調剤基本料を記入します。賃上げ関連の項目は、賞与・職員数・ベースアップ評価料の3点から賃上げの状況を把握する設問です。賞与については、夏期賞与1人あたり支給額の前年比(増額・変化なし・減額)を尋ねます。職員数は、令和7年9月30日と令和8年9月30日の2時点の常勤・非常勤合計を記入します。ベースアップ評価料は、算定の有無を全施設類型で尋ねます。そのうえで、病院と一般診療所は外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)のみか、(Ⅱ)や入院ベースアップ評価料も算定しているかを選びます。歯科診療所は、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)のみか、(Ⅱ)も算定しているかを選びます。損益の項目は、2期間それぞれの収益と費用を金額で記入する形式です。費用のうち、給与費には賞与、賞与に係る法定福利費、引当金繰入額、退職金支払額の内訳欄があります。そのほかの費用の内訳として、水道光熱費、委託費、減価償却費、設備機器賃借料などの欄も設けられています。委託費の内訳欄は施設類型で異なります。病院と一般診療所は給食委託費と人材委託費、歯科診療所は歯科技工委託費、保険薬局は人材委託費を記入します。賃借料の内訳欄も施設類型で異なります。病院・一般診療所・歯科診療所は医療機器賃借料、保険薬局は調剤用機器賃借料を記入します。病院票に限り、補助金などを含む「その他の収益」や特別利益・特別損失まで記入し、総損益差額を算出します。回答時の注意点は、主に施設単位の推計、賞与の計上方法、記入ルールの3つです。施設単位の推計については、法人全体で包括して経理している場合でも、面積・病床数・従事者数などで按分し、調査対象施設分のみを記入します。賞与の計上方法については、賞与引当金を計上していない施設は、年間支給額が決まっていれば年間支給額の4/12を記入します。夏季賞与のみ決まっている場合は、夏季賞与の支給額の8/12を記入します。記入ルールについては、金額が0の欄にも必ず「0」を記入します。ただし、賞与引当金・退職給付引当金を計上していないなど記入が困難な欄には「-」を記入します。なお、この調査は統計法に基づく一般統計調査であり、調査票が税務調査などの目的に使われることはありません。まとめ:臨時調査は令和9年度の追加調整を判断する重要なデータになる中医協総会(第649回)で報告された臨時調査は、令和8年度改定後の経営実態を把握し、令和9年度の追加調整の判断に使うための調査です。第1に、目的は、賃上げ分・物価対応分・食費・光熱水費分を令和9年度予算編成で加減算するかどうかの判断材料を得ることです。第2に、設計は、4つの施設類型を層化無作為抽出(一部は全数調査)し、令和7年と令和8年の6~9月の損益を比較するものです。第3に、調査票は損益に加え、賞与・職員数・ベースアップ評価料など賃上げの状況も尋ねる構成で、回答は11月10日までに電子調査票で提出します。調査客体に選ばれた施設の回答が、全国の医療機関等の経営実態を示すデータになります。対象となった施設は、損益計算書をもとに早めに準備を進めることをお勧めします。なお、本号は4月8日時点の実施案に基づいているため、最終的な調査内容は配布された調査票と記入要領でご確認ください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】DPC準備病院の臨時募集案、受付は5月31日まで
令和8年度診療報酬改定で新設された「急性期病院一般入院基本料」と「急性期病院精神病棟入院基本料」は、DPC対象病院であることを算定要件としています。しかし、DPC制度に参加していない病院は、通常のスケジュールでは令和9年9月までDPC準備病院の届出ができず、この要件を当面満たせません。この問題に対応するため、令和8年4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、臨時的なDPC準備病院の募集案が示されました。本号では、臨時募集の背景、内容、医療機関が確認すべき点を解説します。臨時募集案の要点は、新設の2つの入院基本料の算定を希望する医療機関のために、令和8年4月13日から5月31日までDPC準備病院の届出を受け付けることです。通常、DPC制度に参加するには、改定前年度の9月に限って受け付けるDPC準備病院の届出が最初に必要です。新設の2つの入院基本料の経過措置は、令和8年5月31日時点でDPC準備病院である医療機関に限って適用されます。臨時募集でDPC準備病院になった医療機関は、令和10年6月1日までにDPC制度へ参加する予定であれば、令和10年5月31日まで「DPC対象病院であること」という要件を満たすものと扱われます。DPC制度への参加は「DPC準備病院」から始まるDPC制度への参加は、「DPC準備病院の届出」「参加基準の達成状況の確認」「DPC対象病院への移行」の3段階で進みます。この3段階のうち最初のDPC準備病院の届出は、受付期間が改定前年度の9月1か月間に限られています。DPC制度(DPC/PDPS)は、入院医療の診療報酬を、診断群分類(DPC)ごとの1日当たり定額の包括評価部分と、出来高評価部分とを組み合わせて算定する仕組みです。この仕組みで診療報酬を算定する病院を「DPC対象病院」と呼びます。DPC対象病院になる前に、参加基準の達成状況を確認する段階の病院を「DPC準備病院」と呼びます。DPC準備病院という段階は、DPC制度を安定的に運用するために設けられています。DPC準備病院は、次期診療報酬改定までの間、DPC制度への参加基準をどの程度達成しているかを確認されます。この確認を経ずに、病院がいきなりDPC対象病院になることはできません。DPC対象病院への移行は、診療報酬改定時に限って行われます(令和6年11月29日付け保医発1129第11号、以下「参加通知」)。移行の届出をする時点で、病院はDPC準備病院であり、かつDPC対象病院の基準を全て満たしている必要があります。基準の一部は、参加する前々年度の10月から前年度の9月までの当該病院のデータにより、厚生労働省保険局医療課が判断します。DPC準備病院の届出は、従前から改定前年度の9月1日から9月末日までの期間に受け付けられています。この受付期間の大枠は、参加通知が定める「直近の診療報酬改定の6か月前まで」という期限です。この期限の範囲内で、厚生労働省が受付期間を設定し、ホームページで周知します。令和8年度改定分の届出は、令和7年9月1日から9月30日(必着)まで受け付けられました。なお、DPC制度への参加・退出の届出についても、医療機関群別係数の設定などの集計作業期間を確保するため、改定前年度の9月1日から1か月間とする案が令和7年8月6日の中医協総会で示されています。この通常ルールに従うと、現時点でDPC制度に参加していない病院は、次に令和9年9月まで届出の機会がありません。つまり、DPC対象病院でもDPC準備病院でもない病院は、令和9年9月にDPC準備病院の届出をした後、一定の期間を経てDPC対象病院へ移行することになります。新設の2つの入院基本料は「DPC対象病院」が要件令和8年度改定で新設された2つの入院基本料は、DPC対象病院であることを算定要件としています。この要件には経過措置がありますが、経過措置の対象は令和8年5月31日時点のDPC準備病院に限られます。新設された2つの入院基本料とは、「急性期病院一般入院基本料」と「急性期病院精神病棟入院基本料」です。2つの入院基本料は、いずれもDPC対象病院であることを算定要件としています。したがって、DPC制度に参加していない病院は、原則としてこれらを算定できません。この算定要件には、DPC準備病院を対象とした経過措置が設けられています。経過措置を受けるには、2つの条件を満たす必要があります。1つ目の条件は、令和8年5月31日において現にDPC準備病院であることです。2つ目の条件は、令和10年6月1日までにDPC制度へ参加する予定であることです。2つの条件を満たす医療機関は、令和10年5月31日までの間に限り、DPC対象病院であるという要件を満たすものと扱われます。経過措置の基準日である令和8年5月31日は、DPC未参加の病院にとって大きな壁になります。通常ルールでは、DPC未参加の病院が次にDPC準備病院の届出をできるのは令和9年9月です。そのため、DPC未参加の病院は、令和8年5月31日時点でDPC準備病院になれず、経過措置の対象から外れてしまいます。臨時募集は令和8年4月13日から5月31日まで厚生労働省は、この壁を解消する特例として、令和8年4月13日から5月31日まで臨時にDPC準備病院を募集する案を示しました。この臨時募集は、新設の2つの入院基本料の算定を希望する医療機関を対象としています。臨時募集の対象は、「急性期病院一般入院基本料」または「急性期病院精神病棟入院基本料」の算定を希望する医療機関です。資料は、この臨時募集を、これらの医療機関に対する「特例的な対応」と位置づけています。なお、資料には、届出できる医療機関をこれ以外に制限するかどうかの記載はありません。臨時募集の受付期間の終了日は、経過措置の基準日と同じ令和8年5月31日です。この日付の一致により、臨時募集で届出をした医療機関は、基準日の時点でDPC準備病院となる道が開かれます。その結果、令和10年6月1日までにDPC制度へ参加する予定であれば、令和10年5月31日まで「DPC対象病院であること」という要件を満たすものと扱われます。ただし、この扱いはDPCに関する要件に限られます。新設の2つの入院基本料のその他の施設基準は、別に満たす必要があります。通常の募集と臨時募集の違いは、次のとおりです。通常の募集* 受付期間:改定前年度の9月1日から1か月間* 対象:DPC準備病院を希望する病院* 根拠:参加通知(改定の6か月前までに届出)臨時の募集(案)* 受付期間:令和8年4月13日から5月31日まで* 対象:新設の2つの入院基本料の算定を希望する医療機関* 根拠:令和8年4月8日の中医協総会で示された対応方針(案)医療機関が確認すべき3つの点臨時募集を検討する医療機関は、「届出の様式と経路」「DPC対象病院への移行時期」「対応方針の確定状況」の3点を確認する必要があります。届出の様式と経路について、通常の手続きでは「DPC準備病院届出書」(別紙13)を提出します。必要に応じて、「DPC準備病院届出書(別紙)」(別紙14)も併せて提出します。提出先は、地方厚生(支)局医療課長を経由した厚生労働省保険局医療課長です。臨時募集の様式と経路は、厚生労働省の周知で確認してください。DPC対象病院への移行時期について、経過措置を受けるには令和10年6月1日までにDPC制度へ参加する予定であることが条件です。令和8年度改定分と同じ扱いが続けば、令和10年度改定時に参加するための「DPC制度への参加に係る届出書」(別紙1)は、令和9年9月1日から1か月間に提出することになります。また、参加通知に沿えば、参加基準の一部は、参加する前々年度の10月から前年度の9月まで、つまり令和8年10月から令和9年9月までのデータで判断されます。したがって、DPC準備病院になった直後から、参加基準の達成状況を管理する体制づくりが欠かせません。対応方針の確定状況について、臨時募集の対応方針(総-8)は「〜としてはどうか」という「案」の形で示されています。受付期間や手続きの詳細は、中医協での了承を経て、厚生労働省の事務連絡やホームページで正式に周知されます。届出の際は、必ず最新の公式情報を確認してください。まとめ:新設入院基本料を算定するなら、5月31日までにDPC準備病院へ厚生労働省は、新設の2つの入院基本料の算定を希望する医療機関のために、令和8年4月13日から5月31日まで臨時にDPC準備病院を募集する案を示しました。通常、DPC制度への参加は、改定前年度の9月に限って受け付けるDPC準備病院の届出から始まります。新設の2つの入院基本料の経過措置は、令和8年5月31日時点でDPC準備病院である医療機関に限って適用されます。臨時募集でDPC準備病院になった医療機関は、令和10年6月1日までの参加予定を条件に、令和10年5月31日まで「DPC対象病院であること」という要件を満たすものと扱われます。参考資料:* 中医協 総-8「令和8年度診療報酬改定における臨時的なDPC準備病院の募集について」(令和8年4月8日)* 中医協 総-8参考1「DPC制度への参加等への手続きについて」の一部改正について(抜粋)* 中医協 総-8参考2 事務連絡「DPC制度への参加又はDPC制度からの退出に係る届出について」(令和7年8月27日)* 中医協 総-8参考3「令和8年度診療報酬改定におけるDPC制度への参加又はDPC制度からの退出に係る届出の受付期間について」(令和7年8月6日 中医協 総-6) Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度DPC改定の現況|対象病院は1,685に減少
令和8年4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、令和8年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況が報告されました。DPC/PDPSは急性期入院の診療報酬の多くを診断群分類ごとの1日あたり定額で支払う仕組みであり、この報告は各病院の入院収入に直結します。本号では、この報告資料(総-7および参考1~5)の要点を、はじめての方にもわかるように整理します。令和8年度改定で、DPC/PDPSは「病院の数」「病院ごとの係数」「点数表と算定ルール」の3点で大きく変わりました。第1に、DPC対象病院は1,685病院となり、前年度から76病院減少する見込みです。第2に、医療機関別係数では、DPC標準病院群が救急搬送や全身麻酔手術の実績で2つに区分されました。第3に、診断群分類点数表では、在院日数のばらつきが小さい一部の診断群分類で入院期間Ⅱが平均在院日数から在院日数の中央値へ見直され、再転棟時の算定ルールも変わりました。用語メモ:DPC/PDPSとは DPC(Diagnosis Procedure Combination)は、病名と手術・処置の組み合わせで入院患者を分類する「診断群分類」です。PDPS(Per-Diem Payment System)は、その分類ごとに1日あたりの点数を定めて支払う方式です。包括評価部分の支払額は「診断群分類ごとの1日あたり点数 × 医療機関別係数 × 入院日数」で計算されます。手術など出来高で評価される部分は、これとは別に算定されます。1. DPC対象病院は1,685病院に減少したDPC対象病院は令和8年6月時点で1,685病院となり、前年度から大きく減少しました。減少の主な理由は、DPC対象病院の基準を満たせなかった病院の退出です。一方で、DPC準備病院は増えています。なお、以下の数値はいずれも令和8年4月1日時点で集計した、令和8年6月時点の見込み値です。DPC対象病院の数は、前年度の1,761病院から76病院減って1,685病院となる見込みです。前回改定時(令和6年度)の1,786病院と比べると、12病院が新たに参加し、109病院が退出しました。このほか、病院の再編によって4病院が減っています。DPC対象病院の数は制度開始以来おおむね増加傾向にあり、これまでの年度ごとの減少は最大でも25病院(令和7年度)でした。今回の76病院の減少は、資料に掲載された年度の中で最も大きな減少幅です。退出理由のうち最も多いのは、DPC対象病院の基準未達による退出の51病院です。令和7年6月以降の増減の内訳は次のとおりです。* 増加* 診療報酬改定に伴う新規参加:+12病院* 減少* DPC対象病院の基準未達による退出:-51病院* 診療報酬改定に伴う任意退出:-20病院* 入院基本料に係る施設基準の変更による退出:-13病院* 保険医療機関の廃止による退出:-2病院* DPC対象病院の再編(2病院→1病院の合併):-2病院* 合計:-76病院病床規模別に見ると、減少は100床未満の小規模病院に集中しています。100床未満のDPC対象病院は373病院から316病院へ57病院減りました。これに対し、100床以上の各区分の減少は1~10病院にとどまります。DPC準備病院は252病院となり、前年度から24病院増える見込みです。DPC準備病院とは、DPC制度への参加を希望している病院です。準備病院の8割は100床未満の病院であり、100床未満の準備病院は169病院から203病院へ増えました。DPC算定病床数は、DPC対象病院で約47万床となり、前年度から約9.7千床減る見込みです。このうち、急性期一般入院料1~6の届出病床は約37万床、特定機能病院入院基本料の届出病床は約5.6万床です。1病院あたりのDPC算定病床数は平均277床で、最小は16床、最大は1,218床です。DPC準備病院の病床数は、本体資料では約1.9万床(前年度から約0.3千床増)の見込みとされています。2. 医療機関別係数はすべての係数で見直された医療機関別係数は、基礎係数・機能評価係数Ⅰ・機能評価係数Ⅱ・救急補正係数・激変緩和係数で構成されます。今回の改定では、これらすべての係数に対応が行われました。特に大きな変更は、基礎係数におけるDPC標準病院群の2区分化と、機能評価係数Ⅱにおける評価方法の見直しです。用語メモ:医療機関別係数とは 医療機関別係数は、病院ごとの機能や実績を支払額に反映するための係数です。同じ診断群分類の患者でも、この係数が高い病院ほど支払額が大きくなります。基礎係数:DPC標準病院群を「1」と「2」に区分した基礎係数では、DPC標準病院群が救急搬送や手術の実績によって「DPC標準病院群1」と「DPC標準病院群2」に区分されました。基礎係数は、病院の類型(医療機関群)ごとに定められる基本的な係数です。これまでの医療機関群は大学病院本院群・DPC特定病院群・DPC標準病院群の3つでした。今回、このうちDPC標準病院群の中で基礎係数の評価が区別されました。* 大学病院本院群:82施設、基礎係数1.1245* DPC特定病院群:172施設、基礎係数1.0769* DPC標準病院群1:1,142施設、基礎係数1.0583* DPC標準病院群2:290施設、基礎係数1.0283DPC標準病院群1になる要件は、次の4つのうちいずれかを満たすことです。判定には令和6年10月~令和7年9月のDPCデータが使われました。* 救急車等による入院数が年間700人以上* 救急車等による入院数が年間200人以上、かつ全身麻酔による手術件数が年間500件以上* 救急車等による入院数が年間400人以上、かつ二次医療圏で最大(人口20万人以下の二次医療圏に限る)* 救急車等による入院数が二次医療圏で最大(離島のみで構成される二次医療圏に限る)この区分は、今後の急性期入院料の再編を見据えたものです。資料では、令和10年度改定以降は「急性期病院A一般入院料」または「急性期病院B一般入院料」を届け出る医療機関を要件とすることを念頭に、データを収集するとされています。DPC標準病院群の病院は、救急搬送入院数と全身麻酔手術件数の推移を今から注視する必要があります。機能評価係数Ⅰ:現行の評価手法を継続した機能評価係数Ⅰでは、現行の評価手法が維持されました。機能評価係数Ⅰは、入院患者全員に算定される加算などを係数に置き換えたものです。今回は医科点数表の改定に合わせて、各項目の評価の見直しと、新設された入院基本料等加算の設定が行われました。機能評価係数Ⅱ:複雑性係数と地域医療係数を見直した機能評価係数Ⅱでは、複雑性係数と地域医療係数の評価方法が見直されました。機能評価係数Ⅱは、効率性・複雑性・カバー率・地域医療の4つの係数で、病院の診療実績や地域での役割を評価するものです。複雑性係数は、入院初期の医療資源投入量で患者構成を評価する方法に変わりました。これまでは、1入院あたりの医療資源投入量で評価していました。改定後は、在院日数の25パーセンタイル値までの期間、つまり入院初期の包括範囲出来高点数を用いて評価します。資料では、入院初期の医療資源投入の観点から見た患者構成を評価する趣旨と説明されています。地域医療係数の定量評価指数は、DPC標準病院群で評価する領域が細分化されました。定量評価指数は、所属する地域で発生した患者のうち、その病院が担当した患者の割合(シェア)を評価するものです。対象地域は、DPC標準病院群が二次医療圏、大学病院本院群とDPC特定病院群が三次医療圏です。これまでは「小児」と「それ以外」の2区分でした。改定後のDPC標準病院群では、「小児及び周産期」と「それ以外」を等分で評価し、「それ以外」はさらに「がん」「脳卒中」「心筋梗塞等の心血管疾患」の3領域を等分で評価します。なお、地域医療係数はDPC標準病院群1と2でそれぞれ別に評価されます。地域医療係数の体制評価指数には、2つの項目が新設されました。1つは「認定ドナーコーディネーターの院内配置」で、過去3カ年に法的脳死判定後の臓器提供実績がない病院に限り0.5ポイントを加算します(令和9年度以降の評価)。もう1つは「地域の需要変動への応答性」で、DPC算定病床数に占める各日の入院患者数の割合のばらつきが著しく小さい病院を1ポイント減点します。資料では、社会や地域の実情に応じて求められている機能を評価する観点から新設されたと説明されています。機能評価係数Ⅱの合計値は、中央値で0.0864となりました。医療機関群別の中央値は、大学病院本院群0.0936、DPC特定病院群0.0928、DPC標準病院群1が0.0858、DPC標準病院群2が0.0820です。機能評価係数Ⅱとは別の係数である救急補正係数は、救急医療入院の患者の資源投入量の乖離を評価するもので、中央値0.0236、最大値0.0629でした。激変緩和係数:従来どおり変動率を2%以内に抑えた激変緩和係数は、従前と同じ方法で設定されました。激変緩和係数は、改定によって病院の収入が急激に変わらないように調整する係数です。具体的には、推計診療報酬変動率(出来高部分を含む)が2%を超えて変動しないように設定されます(入院料の増点等による影響は除きます)。今回の改定では、21施設と65施設、合わせて86施設が激変緩和の対象となりました。3. 診断群分類点数表と算定ルールも見直された診断群分類点数表では、分類の整理に加えて、入院期間Ⅱの設定方法が大きく変わりました。あわせて、転棟・再転棟時の算定ルールも見直されました。これらの変更は、1入院あたりの点数と在院日数の管理に影響します。診断群分類数:3,265分類に整理した診断群分類は、医療資源の同等性と臨床的類似性の観点から見直されました。その結果、傷病名数は504(前回比-2)、診断群分類数は3,265(前回比+17)、包括対象となる分類数は2,449(前回比-28)となりました。見直しの例として、非ホジキンリンパ腫ではCAR-T細胞療法(末梢血単核球採取・CAR発現生T細胞投与)の分岐が新設されました。また、新型コロナウイルス感染症は、これまでの出来高算定の取扱いが見直され、専用の診断群分類が設定されました。入院期間Ⅱ:平均在院日数から中央値へ見直した入院期間Ⅱの基準は、在院日数のばらつきが小さい一部の診断群分類で、平均在院日数から在院日数の中央値へ見直されました。入院期間Ⅱとは、1日あたりの点数が段階的に下がる3つの期間のうち、2番目の期間です。見直しの背景には、多くの診断群分類で平均在院日数が在院日数の中央値を上回っている実態があります。この見直しの対象は、点数設定方式A~Cのうち、在院日数の変動係数が0.6を下回る分類です。変動係数が小さいとは、在院日数のばらつきが小さく、診療の標準化が進んでいることを意味します。変動率の上限は10%とされ、中央値は平均在院日数から±10%以内の範囲で設定されます。あわせて、1日あたりの点数の基礎となる医療資源投入量も、中央値を用いた算出方法に変わりました。中央値は平均値より短くなることが多いため、対象の分類では入院期間Ⅱの終了日が早まる可能性があります。再転棟ルール:期間を問わず一連の入院として扱うDPC算定病棟から他の病棟へ転棟した後の再転棟について、算定ルールが変わりました。改定後は、DPC算定病棟からDPC算定対象外の病棟へ転棟した患者が、同一傷病等で再びDPC算定病棟へ戻った場合、転棟後の期間を問わず原則として一連の入院として扱います。この変更により、転棟から再転棟までの期間が長い場合でも、原則として別の入院としては扱われなくなります。まとめ:3つの変化を自院の数字で確認する令和8年度改定で、DPC/PDPSは「病院の数」「病院ごとの係数」「点数表と算定ルール」の3点で大きく変わりました。第1に、DPC対象病院は1,685病院に減少し、特に100床未満の病院の減少が目立ちました。第2に、DPC標準病院群は救急搬送と全身麻酔手術の実績で2区分され、機能評価係数Ⅱでは入院初期の医療資源投入や地域の需要変動への応答性が新たに評価されました。第3に、在院日数のばらつきが小さい一部の診断群分類で入院期間Ⅱが在院日数の中央値を基準に見直され、再転棟は期間を問わず一連の入院として扱われるようになりました。今回の区分は、令和10年度改定以降の急性期入院料の再編につながる可能性があります。DPC対象病院の皆さまは、自院の医療機関群と各係数を参考資料の医療機関別一覧(参考4・参考5)で、主要な診断群分類の入院期間Ⅱを診断群分類点数表で確認されることをおすすめします。出典 中央社会保険医療協議会 総会(第649回、令和8年4月8日) 「令和8年度改定を踏まえたDPC/PDPSの現況について」(総-7)および参考1~5 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
在宅自己注射に2剤追加へ|SLE・HAE治療薬を中医協が審議
在宅自己注射指導管理料は、患者が自宅で注射薬を自己投与できるよう、医師が指導と管理を行った場合に算定する診療報酬です。2026年(令和8年)4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、この管理料の対象薬剤に2剤を追加する案が示されました。対象薬剤の追加は、患者の通院負担と医療機関の算定実務の両方に影響します。本号では、追加される2剤の特徴と、追加を判断した根拠を解説します。中医協は、アニフロルマブとガラダシマブの2剤を、在宅自己注射指導管理料と「保険医が投与することができる注射薬」の対象に追加する案を示しました。アニフロルマブが追加されれば、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者は週1回の皮下注射を自宅で続けられるようになります。ガラダシマブが追加されれば、遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者は発作の発症抑制のための月1回の皮下注射を自宅で続けられるようになります。2剤の追加は、中医協の運用基準が定める要件と追加時期のルールにもとづく判断です。1. アニフロルマブ:SLE患者の毎週の通院負担を減らすアニフロルマブは、既存治療で効果不十分なSLEに対し、週1回の皮下注射で使う薬剤です。自己注射が認められると、患者は毎週の通院を減らしながら治療を継続できます。以下では、薬剤の特徴、学会の要望理由、安全性と対象患者の順に説明します。薬剤の特徴:アニフロルマブ(販売名:サフネロー皮下注120mgオートインジェクター)は、SLEの病態形成で中心的な役割を果たすI型インターフェロン(IFN)の働きを抑える抗体製剤です。本剤は、I型IFN受容体のサブユニット1(IFNAR1)に結合し、I型IFNのシグナル伝達を遮断します。I型IFNが誘導する遺伝子の発現上昇は、成人SLE患者の約60~80%にみられます。この発現上昇は、SLEの疾患活動性や重症度と相関しています。用法・用量は、成人に1回120mgを1週間ごとに皮下注射するものです。本剤は、2026年(令和8年)2月に薬事承認を受けました。学会の要望理由:日本リウマチ学会と日本臨床免疫学会は、就労世代の患者が多く、毎週の通院が負担になることを主な理由に、自己注射の保険適用を要望しました。SLEは指定難病(指定難病49)であり、2022年の特定医療費(指定難病)受給者証の所持者数は65,145例と報告されています。SLEは、皮膚、関節、腎臓、中枢神経など全身に症状が及び、雇用の喪失やQOLの著しい低下につながる可能性が指摘されています。週1回の通院は、身体的・経済的な負担に加え、就業を含む社会生活にも影響します。両学会は、自己注射の保険適用が治療継続と患者の利便性向上に役立つと述べています。安全性と対象患者:アニフロルマブについては、点滴静注製剤の全例調査と皮下注製剤の臨床試験のいずれでも、新たな安全性の懸念は報告されていません。点滴静注製剤は2021年11月に発売され、2025年7月29日時点のデータで1,518例が解析されました。この解析では、安全性に関する新たな懸念は認められていません。皮下注製剤の第III相臨床試験(TULIP-SC試験)の中間解析でも、注射部位反応はプラセボ群と比べて増えていません。自己注射の対象は、医師が適応を妥当と判断し、かつ指導を理解して確実に自己注射できる患者です。主な副作用は、注射部位反応、気管支炎、上気道感染、帯状疱疹、過敏症、重篤な感染症などです。2. ガラダシマブ:HAE患者の専門医への通院負担を減らすガラダシマブは、HAEの急性発作の発症を抑制するため、月1回の皮下注射で使う薬剤です。自己注射が認められると、患者は遠方の専門医療機関への通院を減らしながら発作の発症抑制を続けられます。以下では、アニフロルマブと同じく、薬剤の特徴、学会の要望理由、安全性と対象患者の順に説明します。薬剤の特徴:ガラダシマブ(販売名:アナエブリ皮下注200mgペン)は、HAE発作の原因となるブラジキニンの生成を抑える抗体製剤です。本剤は、活性化第XII因子(FXIIa)の触媒ドメインに結合し、その働きを阻害します。FXIIaの働きが阻害されると、発作時の炎症や腫れを引き起こすブラジキニンが作られにくくなります。用法・用量は、成人と12歳以上の小児に初回400mg、以降は200mgを月1回皮下注射するものです。本剤は、2025年(令和7年)2月に薬事承認を受けました。学会の要望理由:日本皮膚科学会、日本アレルギー学会、日本補体学会は、専門医療機関への通院が難しいことを主な理由に、自己注射の保険適用を要望しました。HAEは、主としてC1インヒビター遺伝子(SERPING1)の変異により、皮膚、粘膜、腸などに繰り返し腫れが起こる病気です。喉の腫れは気道をふさぎ、命に関わる場合もあります。HAEは、指定難病「原発性免疫不全症候群」のひとつに認定されています。HAEを診療できる施設は限られており、都市部から離れた地域では、遠方の専門医を受診する患者も多くいます。発作はいつ起こるか予測できないため、旅行や出張、新しい職場などの環境でも投与を続けやすい仕組みが必要です。安全性と対象患者:ガラダシマブの安全性は、在宅自己注射を含む臨床試験で確認されています。この臨床試験では、在宅自己注射に伴う安全性上の問題は認められていません。自己注射の対象は、医療従事者の指導を受け、医師が確実に自己投与できると判断した患者(または介護者)です。主な副作用は、注射部位反応(内出血、紅斑、そう痒感)です。製造販売業者は、適正使用のための資材を用意すると学会に報告しています。3. 追加の根拠となる運用基準と実務上の留意点2剤の追加は、中医協が2016年(平成28年)に承認し、2023年(令和5年)に改正した「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に係る運用基準」にもとづく判断です。この運用基準は、どの薬剤を、いつ対象に加えるかを定めています。以下では、対象薬剤の要件、追加時期のルール、告示上の位置づけ、導入時の留意事項の順に説明します。対象薬剤の要件:運用基準は、頻回投与または発作時の緊急投与が必要で、剤形が注射でなければならない薬剤のうち、3つの要件をすべて満たすものを対象とします。1つ目の要件は、関連学会等のガイドライン等で在宅自己注射の必要性が確認されていることです。2つ目の要件は、維持期の投与間隔が概ね4週間以内であることです。3つ目の要件は、学会から追加の要望があることです。さらに、補充療法や発作時の緊急投与以外の薬剤には、要望した学会以外の学会の意見を確認するなど、診療上の必要性の十分な確認が求められます。学会の要望書には、自己注射の安全性、対象患者の要件、使用上の留意点、頻回・長期投与が必要な理由などを記載する必要があります。2剤は、週1回と月1回の投与間隔であり、いずれも複数の学会が要望書を提出しています。追加時期のルール:運用基準は、投与間隔が14日未満か14日以上かで、対象に加える時期を分けています。投与間隔が14日未満の薬剤は、原則として薬価収載の時期にあわせて追加を検討します。投与間隔が14日以上の薬剤は、14日を超える投薬が可能な場合に、原則として薬価収載の時期にあわせて追加を検討します。新医薬品は、原則として薬価収載の翌月1日から1年間、投薬期間が14日に制限されます。つまり、週1回投与のアニフロルマブは前者に、月1回投与のガラダシマブは後者にあたります。告示上の位置づけ:今回の追加案は、2つのリストに薬剤を加えることを意味します。1つ目のリストは「保険医が投与することができる注射薬」です。このリストは、保険医が処方箋を交付して患者に渡せる注射薬を限定的に定めたものです。2つ目のリストは、在宅自己注射指導管理料の対象となる注射薬(特掲診療料の施設基準等 別表第九)です。既存のリストには、SLE治療薬のベリムマブや、HAE治療薬のイカチバント、ラナデルマブなどがすでに含まれています。今回の追加により、SLEとHAEの在宅治療の選択肢が広がります。なお、2剤とも、在宅療養指導管理材料加算の設定はありません。導入時の留意事項:対象薬剤に追加された後も、医療機関は通知(平成17年4月27日 保医発第0427002号)の留意事項に従って自己注射を導入する必要があります。1つ目の留意事項は、対象疾患の診療経験が十分な医師が指導管理を行うことです。2つ目の留意事項は、導入前に入院または週2~3回以上の外来・往診・訪問診療で、十分な教育期間を設けることです。3つ目の留意事項は、かかりつけ医と異なる医師が指導管理する場合に、緊急時の対応などで連携を図ることです。4つ目の留意事項は、使用済みの注射器など廃棄物の処理方法を指導することです。今回の資料は「案」として示されたものであり、実際の適用日は告示・通知で確認してください。まとめ:2剤追加でSLE・HAE患者の在宅治療が広がる中医協は、アニフロルマブとガラダシマブの2剤を、在宅自己注射指導管理料と「保険医が投与することができる注射薬」の対象に追加する案を示しました。アニフロルマブが追加されれば、SLE患者は週1回の自己注射で、通院負担を減らしながら治療を続けられるようになります。ガラダシマブが追加されれば、HAE患者は月1回の自己注射で、遠方の専門医への通院負担を減らしながら発作の発症抑制を続けられるようになります。2剤の追加は、運用基準の要件と追加時期のルールにもとづく判断です。医療機関は、導入時の指導体制を整えたうえで、告示・通知で適用日を確認してください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【中医協】DPC高額薬剤7成分が出来高算定へ|令和8年4月8日総会の結論
令和8年4月8日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会は第649回会合を開き、「DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応について」を議題としました。新規に薬価収載された医薬品は、DPC/PDPSの診療報酬点数表に反映されないため、包括評価のままでは高額な薬剤費が病院の負担として残ります。本稿は、今回示された高額薬剤判定の結果を、DPC対象病院の実務で使える形に整理します。中医協は、7成分を包括評価の対象外として出来高算定とし、2成分を定義告示の既存分岐に反映する案を示しました。判定の基準は、1入院当たりの標準的な薬剤費が、診断群分類ごとの包括範囲薬剤費の84パーセンタイル値を超えるかどうかです。出来高算定の対象となるのは、テゼスパイア、トレムフィア、キイトルーダ、ベスレミ、アクイプタ、ラヴィクティ、エキシデンサーの7成分です。定義告示に反映されるのは、エキシデンサーとツカイザの2成分で、いずれも類似薬の分岐に追加されます。1. 高額薬剤判定は、技術革新の導入を妨げないための仕組み高額薬剤判定は、新規の高額薬剤を一時的に包括評価から外す運用です。この運用は、年4回、新薬の薬価収載に合わせて実施されます。判定作業は、高額薬剤告示への追加と定義告示への追加という2つの作業から構成されます。高額薬剤判定が必要になる理由は、DPC/PDPSの包括点数が過去の使用実績データにもとづいて設定される点にあります。新たに保険収載された医薬品には、この使用実績データがまだありません。データが不足したまま包括評価を続ければ、医療の技術革新の導入が阻害されかねません。そこで厚生労働省は、一定の基準に該当する薬剤を使用した患者について、十分な使用実績データが収集されDPC包括評価が可能となるまでの間、包括評価の対象外としています。包括評価の対象外とするかどうかは、個別の診断群分類ごとに判定します。この判定では、対象の医薬品を入院初日から退院まで添付文書どおりに投与した場合の投与回数(仮想投与回数)を求めます。次に、仮想投与回数から1入院当たりの薬剤費を算出します。算出した薬剤費が、その診断群分類で使われている包括範囲薬剤費の84パーセンタイル値を超えていれば、当該医薬品を高額薬剤として指定します。前年度に使用実績のない医薬品では、併用する医薬品を含む標準的な使用における薬剤費の見込み額を、当該医薬品を使用していない症例の薬剤費の84パーセンタイル値と比較します。判定の対象となる医薬品は、3つの区分に分かれます。第1の区分は、新たに薬価収載される新薬です。第2の区分は、効能効果・用法用量の一部変更が承認された医薬品です。第3の区分は、事前評価済公知申請が受理された医薬品です。今回の議題では、令和8年2月19日に効能または効果および用法または用量が追加された医薬品、令和8年1月29日に公知申請が受理された医薬品、令和8年4月15日に薬価収載を予定している医薬品が検討対象となりました。2. 出来高算定の対象は7成分高額薬剤告示に追加され、出来高算定の対象となるのは7成分です。内訳は、令和8年2月19日に効能効果・用法用量が一部変更された4成分と、令和8年4月15日に薬価収載を予定している新薬3成分です。これらの薬剤を使用した患者のうち、対応する診断群分類に該当する患者については、次期診療報酬改定までの間、出来高で算定します。対象となる7成分の概要は、次のとおりです。一部変更の4成分を先に、新薬の3成分を後に並べています。■ テゼスパイア皮下注210mg(テゼペルマブ)* 区分:効能効果・用法用量の一部変更* 効能・効果:鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎* 対象の診断群分類:030350 慢性副鼻腔炎* 1回投与当たりの標準的な費用:169,058円■ トレムフィア皮下注(グセルクマブ)* 区分:効能効果・用法用量の一部変更* 効能・効果:中等症から重症の潰瘍性大腸炎* 対象の診断群分類:060185 潰瘍性大腸炎* 1回投与当たりの標準的な費用:導入療法678,506円/維持療法325,040円■ キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ)* 区分:効能効果・用法用量の一部変更* 効能・効果:局所進行頭頸部癌の術前・術後補助療法* 対象の診断群分類:03001x 頭頸部悪性腫瘍* 1回投与当たりの標準的な費用:398,924円(併用薬の費用は別途)■ ベスレミ皮下注(ロペグインターフェロン アルファ-2b)* 区分:効能効果・用法用量の一部変更* 効能・効果:真性多血症* 対象の診断群分類:130050 骨髄増殖性腫瘍* 1回投与当たりの標準的な費用:初回272,587円/2週後以降518,246円■ アクイプタ錠(アトゲパント水和物)* 区分:新薬* 効能・効果:片頭痛発作の発症抑制* 対象の診断群分類:010240 片頭痛、頭痛症候群(その他)* 1回投与当たりの標準的な費用:1,461.6円■ ラヴィクティ内用液(フェニル酪酸グリセロール)* 区分:新薬* 効能・効果:尿素サイクル異常症* 対象の診断群分類:100335 代謝障害(その他)* 1回投与当たりの標準的な費用:41,455.4円(3日分)■ エキシデンサー皮下注100mg(デペモキマブ)* 区分:新薬* 効能・効果:気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎* 対象の診断群分類:030350 慢性副鼻腔炎、040100 喘息* 1回投与当たりの標準的な費用:1,143,284円7成分のうち、最も単価が高いのはエキシデンサー皮下注100mgです。この製剤は、1回100mgを26週間ごとに皮下注射する薬剤で、1回投与当たりの標準的な費用は1,143,284円に達します。同じ1回投与で、慢性副鼻腔炎の84パーセンタイル値7,380円(令和6年度告示番号441)や、喘息の84パーセンタイル値381,534円(同593)を大きく上回ります。単価が低くても高額薬剤に該当する例が、アクイプタ錠です。この内服薬は、1回投与当たり1,461.6円にすぎません。しかし、片頭痛の診断群分類では仮想投与回数が5回とされ、1入院当たりの標準的費用は7,308円となります。この金額が84パーセンタイル値6,030円を上回るため、高額薬剤として指定されます。判定が薬価の絶対額ではなく診断群分類ごとの相対比較で決まる点を、この例が示しています。投与方法によって費用が変わる薬剤にも、注意が必要です。トレムフィア皮下注は、導入療法で1回678,506円、維持療法で1回325,040円と、局面ごとに費用が異なります。ベスレミ皮下注も、初回272,587円、2週後以降518,246円と用量調整に応じて変動します。キイトルーダ点滴静注は、1回投与当たり398,924円に加えて、併用薬の費用が別途かかります。3. 定義告示に反映する2成分定義告示への反映は、エキシデンサーとツカイザの2成分です。いずれも令和8年4月15日に薬価収載を予定している新薬で、類似薬効比較方式(Ⅰ)により薬価が算定され、比較薬に特化した診断群分類がすでに設定されています。この場合、新薬を既存の分岐に追加し、比較薬と同じ扱いにします。エキシデンサー皮下注100mgは、喘息の診断群分類に反映されます。この製剤の類似薬はメポリズマブです。そのため、診断群分類040100 喘息に設定されている「メポリズマブ」の分岐に、デペモキマブが追加されます。ツカイザ錠は、乳房の悪性腫瘍の診断群分類に反映されます。この錠剤は、化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能または再発乳癌に対し、トラスツズマブおよびカペシタビンとの併用で1回300mgを1日2回経口投与する薬剤です。類似薬がトラスツズマブ デルクステカンであることから、診断群分類090010 乳房の悪性腫瘍の同分岐に追加されます。なお、ツカイザ錠は、出来高算定の対象として高額薬剤告示に掲げられた7成分には含まれていません。4. 医療機関に求められる実務対応医療機関には、3つの実務対応が求められます。第1に、対象薬剤と診断群分類の組み合わせを確認します。第2に、算定システムのマスタを更新します。第3に、正式な告示の内容で最終確認します。対象薬剤と診断群分類の組み合わせの確認が、最初の作業です。出来高算定となるのは、対象薬剤を使用したすべての患者ではありません。対象となるのは、当該薬剤に対応する診断群分類に該当する患者に限られます。今回の資料では、同じ薬剤でも診断群分類の枝番ごとに84パーセンタイル値が異なるため、14桁コード単位での確認が欠かせません。算定システムのマスタ更新が、次の作業です。今回の資料には、令和6年度の診断群分類番号と令和8年度の診断群分類番号が併記されています。令和8年度診療報酬改定で番号が変わるため、更新時には参照する年度を取り違えないよう注意します。運用開始の時期も、薬剤ごとに確認が必要です。新薬3成分は令和8年4月15日に薬価収載が予定される一方、一部変更の4成分はすでに収載済みで、令和8年2月19日に効能効果・用法用量が追加されています。正式な告示での最終確認が、最後の作業です。本稿で紹介した内容は、令和8年4月8日の中医協総会に提出された事務局案にもとづいています。実際の運用は、高額薬剤告示および定義告示の改正内容で確定します。厚生労働省から発出される告示と関連通知を、必ず原文で確認してください。まとめ令和8年4月8日の中医協総会には、DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応が議題として示されました。判定の基準は、1入院当たりの標準的な薬剤費が診断群分類ごとの包括範囲薬剤費の84パーセンタイル値を超えるかどうかです。出来高算定の対象となるのは、テゼスパイア、トレムフィア、キイトルーダ、ベスレミ、アクイプタ、ラヴィクティ、エキシデンサーの7成分です。定義告示に反映されるのは、エキシデンサーとツカイザの2成分で、それぞれメポリズマブとトラスツズマブ デルクステカンの分岐に追加されます。DPC対象病院は、14桁コード単位で対象を確認したうえで、正式な告示にもとづいて算定準備を進めてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
デペモキマブ最適使用推進GL|4月15日適用の3つのポイント
令和8年4月8日、中央社会保険医療協議会(以下、「中医協」)総会(第649回)に、デペモキマブ(遺伝子組換え)の最適使用推進ガイドラインが報告されました。最適使用推進ガイドラインは、対象医薬品を使える施設と患者を限定するため、要件を満たさない投与は保険診療上の指摘を受けるおそれがあります。本稿は、デペモキマブの最適使用推進ガイドラインの要点と、医療機関に求められる実務対応を解説します。今回報告されたガイドラインは、デペモキマブを扱う医療機関に、対象の確認、要件の確認、レセプト記載という3点の対応を求めます。第1に、対象となるデペモキマブは、26週間隔で投与する抗IL-5抗体であり、気管支喘息と鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎という2つの効能をもちます。第2に、施設要件と患者要件は、この2つの効能ごとに別々に定められています。第3に、保険適用上の留意事項通知は、令和8年4月14日に発出され、4月15日から適用されます。1. 対象医薬品とガイドラインの枠組みデペモキマブは、2つの効能をもつ26週間隔投与の抗IL-5抗体であり、最適使用推進ガイドラインの対象医薬品となりました。製造販売業者はグラクソ・スミスクライン株式会社で、販売名はエキシデンサー皮下注100mgペン及びエキシデンサー皮下注100mgシリンジです。用法・用量は、1回100mgを26週間ごとに皮下注射する方法です。効能・効果は、気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る)と、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(既存治療で効果不十分な患者に限る)の2つです。投与対象年齢は、気管支喘息では成人及び12歳以上の小児、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎では成人となります。この26週間隔という投与間隔は、本剤の投与が年2回で済む点に特徴があります。ただし年2回の投与で治療が完結するわけではありません。臨床試験では、ベースライン時に受けていた標準治療を試験期間中も一定用量で継続することが規定されており、本剤は既存治療に上乗せして使う薬剤です。また投与の機会が年2回に限られることで、投与のたびに要件を確認する運用が成り立ちにくくなります。したがって、投与前の患者選択と、投与後の効果確認の時期を、あらかじめ設計しておく必要があります。作用機序は、IL-5のシグナル伝達を阻害して好酸球を抑制する点で、2つの効能に共通します。気管支喘息では、IL-4やIL-5などのサイトカインが引き起こす2型炎症反応が病態に関与し、IL-5が好酸球の成熟、分化及び組織への浸潤を担います。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎では、鼻茸組織中のIL-5及び好酸球数が正常鼻腔粘膜より増加し、好酸球数と鼻茸の重症度が相関すると報告されています。本剤は、この共通したIL-5経路を遮断することで、2つの疾患に治療効果を示すと期待されます。臨床成績は、2つの効能のいずれにおいても、プラセボ群に対する統計学的に有意な差を示しました。気管支喘息では、国際共同第Ⅲ相試験(213744試験、380例、うち日本人59例)において、投与52週時までの年間喘息増悪発現率が本剤群0.56回/人・年、プラセボ群1.08回/人・年となり、群間比は0.52[95%信頼区間 0.36, 0.73]、p
【令和8年4月】新薬6成分10品目の薬価収載をやさしく解説
令和8年4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、4月15日に薬価基準へ収載予定の新医薬品が報告されました。新薬の薬価は、算定方式や補正加算の組み合わせで決まるため、資料の表だけでは値決めの理由が読み取りにくい構造です。本号では、この新薬収載の資料を読み解き、薬価の決まり方と実務上の注意点を整理します。今回の新薬収載は、6成分10品目がすべて「革新的新薬薬価維持制度」の対象となった点が特徴です。第1に、6成分のうち5成分は類似薬効比較方式(Ⅰ)で、1成分は原価計算方式で薬価が算定されました。第2に、補正加算は4成分に認められ、このうち薬価が実際に上乗せされたのはHIV治療薬「イドビンソ配合錠」(計25%)など3成分でした。第3に、イドビンソ配合錠は、新薬に通常かかる「1回14日分まで」という処方日数制限を設けない例外扱いが提案されました。収載予定の新薬と算定方式の全体像今回収載予定の新薬は、内用薬4成分7品目と注射薬2成分3品目の計6成分10品目です。これら10品目の薬価は、既存の似た薬と比べる「類似薬効比較方式(Ⅰ)」を中心に算定されました。以下では、品目の顔ぶれ、類似薬効比較方式、原価計算方式の順に説明します。収載予定の10品目は、片頭痛から希少疾患まで幅広い領域の薬で構成されています。主な内容は次のとおりです。1. アクイプタ錠10mg/30mg/60mg(アッヴィ)* 効能・効果:片頭痛発作の発症抑制* 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)* 算定薬価:10mg 339.90円/30mg 831.30円/60mg 1,461.60円2. ラヴィクティ内用液1.1g/mL(オーファンパシフィック)* 効能・効果:尿素サイクル異常症* 算定方式:原価計算方式* 算定薬価:41,455.40円(1瓶)3. ツカイザ錠50mg/150mg(ファイザー)* 効能・効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌* 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)* 算定薬価:50mg 2,818.40円/150mg 7,317.00円4. エキシデンサー皮下注100mgシリンジ/ペン(グラクソ・スミスクライン)* 効能・効果:重症・難治の気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎* 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)* 算定薬価:シリンジ・ペンとも1,143,284円5. サフネロー皮下注120mgオートインジェクター(アストラゼネカ)* 効能・効果:既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス* 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)* 算定薬価:24,932円(1キット)6. イドビンソ配合錠(MSD)* 効能・効果:HIV-1感染症* 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ)* 算定薬価:6,610.50円(1錠)類似薬効比較方式(Ⅰ)は、効能や薬理作用が最も似た既存薬(最類似薬)と1日あたりの薬価をそろえる方式です。たとえば片頭痛薬のアクイプタ錠60mgは、同じCGRP受容体拮抗薬であるナルティークOD錠75mg(1日薬価1,461.60円)と1日薬価をそろえました。同様に、皮下注射型のサフネローは、同じ成分の点滴静注製剤を比較薬としました。サフネローの薬価には、オートインジェクターという注射器部分の原材料費が上乗せされ、24,017円から24,932円となりました。原価計算方式は、似た既存薬がない場合に、製造原価や営業利益などを積み上げて薬価を決める方式です。この方式が使われたのは、尿素サイクル異常症の治療薬ラヴィクティ内用液のみでした。ラヴィクティには同じ効能の既存薬フェニル酪酸ナトリウムがあります。しかし、この既存薬は薬価収載から10年以上が経過しているため、比較の基準となる最類似薬には当たらないと判断されました。補正加算が認められた4成分補正加算とは、比較薬より優れた点や開発上の配慮すべき事情がある新薬に、薬価を上乗せする仕組みです。今回は6成分のうち、ツカイザ、エキシデンサー、イドビンソ、ラヴィクティの4成分に加算が認められました。一方、アクイプタとサフネローには加算がありませんでした。以下では、薬価に実際に上乗せされた加算率の高い順に、各品目の加算とその理由を説明します。イドビンソ配合錠には、市場性加算(Ⅰ)15%と迅速導入加算10%の計25%が適用されました。市場性加算(Ⅰ)の根拠は、本剤が希少疾病用医薬品に指定されている点です。加算率15%の根拠は、HIV-1感染症治療薬の治験では日本人データがないケースが多い中、事前評価の枠組みによらず国際共同試験に参加し、日本人症例数を積み重ねた点などです。迅速導入加算の根拠は、国際共同試験により開発され、優先審査の対象であり、日本での承認が諸外国と比べて最も早かった点です。迅速導入加算の加算率10%は、国際共同試験における日本人症例数が比較的多い点を踏まえたものです。これらの加算により、薬価は5,288.40円から6,610.50円に引き上げられました。ツカイザ錠には、有用性加算(Ⅱ)10%が適用されました。この加算の根拠は、臨床試験で本邦の二次治療で効果不十分な患者群に有効性を示した点と、NCCNガイドラインで本剤・トラスツズマブ・カペシタビンの併用療法が乳癌の三次治療の第一推奨とされている点です。加算後の150mg錠の薬価は、さらに外国平均価格調整により6,811.80円から7,317.00円に引き上げられました。外国平均価格調整とは、日本の算定値が英独仏などの外国価格の平均と比べて大きく低い場合に、薬価を補正する仕組みです。エキシデンサー皮下注には、有用性加算(Ⅱ)5%と小児加算5%の計10%が適用されました。有用性加算(Ⅱ)の根拠は、比較薬ヌーカラが4週に1回投与であるのに対し、本剤は26週に1回投与で済む点です。小児加算の根拠は、12歳以上の小児への用法・用量が明示されている点です。ただし、主たる効能・効果について12歳以上の小児への適応をもつ製剤が既に複数収載されているため、加算率は5%にとどまりました。加算後の1,143,142円に、シリンジ・ペンの特徴部位の原材料費が加わり、算定薬価は1,143,284円となりました。ラヴィクティ内用液には、有用性加算(Ⅱ)5%と市場性加算(Ⅰ)5%が認められました。しかし、この2つの加算は、実際の薬価には上乗せされませんでした。原価計算方式では、原価の内訳をどこまで開示できたか(開示度)に応じて加算係数が決まります。ラヴィクティはこの加算係数が0とされたため、加算前後の薬価はどちらも41,455.40円となりました。革新的新薬薬価維持制度と費用対効果評価今回の6成分は、いずれも革新的新薬薬価維持制度の対象となりました。また、6成分のうちアクイプタとエキシデンサーの2成分は、費用対効果評価の対象にもなりました。以下では、この2つの制度への該当状況を順に説明します。革新的新薬薬価維持制度は、一定の要件を満たす新薬について、収載後の薬価を維持しやすくする仕組みです。今回6成分が対象となった理由は、品目ごとに異なります。アクイプタは、制度対象品目の収載から3年以内の3番手以内の薬である点が理由です。ラヴィクティとイドビンソは、希少疾病用医薬品に指定されている点が理由です。ツカイザとエキシデンサーは、補正加算が適用された点が理由です。サフネローは、先行収載品の収載から5年以内である点が理由です。費用対効果評価は、収載後に薬の効果と費用のバランスを検証し、その結果を薬価に反映させる仕組みです。エキシデンサーは、市場規模が大きい品目向けの区分H1に該当しました。企業の予測では、エキシデンサーのピーク時販売額は406億円で、今回の6成分で最大です。アクイプタは、既に評価対象となった品目に類似する品目向けの区分H5に該当しました。アクイプタのピーク時販売額は、企業予測で245億円です。イドビンソ配合錠の14日ルール例外新薬には原則として「1回14日分まで」という処方日数制限がかかりますが、イドビンソ配合錠には例外的に制限を設けないことが提案されました。以下では、14日ルールの原則、例外の条件、イドビンソへの当てはめの順に説明します。14日ルールとは、新薬について、薬価基準収載の翌月1日から1年間、処方を1回14日分までに限る決まりです。この決まりは、使用経験の少ない新薬の安全性を、短い間隔の受診で確認するために設けられています。対象期間中は、長期処方が必要な患者でも、原則として2週間ごとの受診が必要になります。14日ルールの例外は、平成22年10月27日の中医協了承により、2つの類型が定められています。1つ目の類型は、既収載品の組み合わせである配合剤などで、実質的に1年以上の臨床使用経験がある新薬です。2つ目の類型は、疾患や製剤の特性から14日を超える投薬に合理性があり、投与初期から14日を超える投薬の安全性が確認されている新薬です。1つ目の類型では、処方日数制限を設けません。2つ目の類型では、収載翌月から1年間の処方日数制限を、製剤の用法・用量から得られる最少日数に応じた日数とします。いずれの類型も、品目ごとに中医協の確認を得る必要があります。イドビンソ配合錠は、2つ目の類型の条件を満たすとしたうえで、例外的に処方日数制限そのものを設けない案が示されました。この案の根拠は、HIV感染症治療薬に特有の安全性確保の枠組みです。HIV治療薬は、限られた臨床成績で迅速に承認されるため、市販後は原則として全例調査が行われます。さらに、HIV治療は専門医療機関への集約化が推奨されており、製薬企業が共同で市販後調査を行う枠組み(平成9年の厚生省通知に基づく)も整っています。このため、資料では、本剤が広範な医療機関で散発的に使われることはなく、患者の安全性確保は網羅的かつ効率的に行われていると考えられる、と整理されています。まとめ:今回の新薬収載で押さえるべき3点令和8年4月15日収載予定の新薬6成分10品目は、すべて革新的新薬薬価維持制度の対象となりました。第1に、薬価は5成分が類似薬効比較方式(Ⅰ)で、ラヴィクティのみが原価計算方式で算定されました。第2に、補正加算は4成分に認められ、イドビンソは計25%の加算を受けました。一方、ラヴィクティは加算係数0のため、加算が薬価に反映されませんでした。第3に、イドビンソはHIV治療薬特有の安全性確保の枠組みを根拠に、14日ルールの例外として処方日数制限を設けない案が示されました。医療機関や薬局では、特にイドビンソの処方日数の扱いを、今後の通知で確認しておくと安心です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
費用対効果評価案|ブリィビアクト錠はICER1,000万円/QALY以上
令和8年4月8日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第649回)で、費用対効果評価専門組織から、てんかん治療薬「ブリィビアクト錠(一般名:ブリーバラセタム)」の費用対効果評価案が報告されました。費用対効果評価の結果は、薬価の価格調整に直結します。本号では、この評価案の結果と、その結果を導いた議論のポイントを解説します。ブリィビアクト錠は、費用対効果評価で最も低い価格調整係数が対応する区分と評価されました。第一に、評価結果として、併用療法の患者集団でICERが最も高い「1,000万円/QALY以上」の区分となりました。第二に、評価の過程で、公的分析は追加的有用性、治療継続率、後治療、QOL値の4点で企業分析を見直しました。第三に、企業の不服意見に対して、専門組織は公的分析の結果が妥当と結論付けました。評価結果:併用療法の患者でICER1,000万円/QALY以上評価結果として、ブリィビアクト錠は併用療法の患者集団で、ICERが1,000万円/QALY以上と評価されました。この区分には、最も低い価格調整係数「0.1」が対応します。評価対象となったブリィビアクト錠は、市場規模の大きさから費用対効果評価の対象に指定された品目です。製造販売業者はユーシービージャパン株式会社です。効能・効果は「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)」です。収載時価格は25mg1錠373.30円、50mg1錠609.30円で、有用性系加算率は5%です。ピーク時の市場規模は178億円と予測されています。この市場規模により、本剤は「H1(市場規模100億円以上)」区分として、2024年8月7日の総会で評価対象に指定されました。評価の物差しとなるICER(増分費用効果比)は、比較対照の治療と比べて、追加の効果1単位を得るのに必要な費用を示す指標です。効果の単位にはQALY(質調整生存年)を使います。1QALYは、完全に健康な状態で1年間生存することに相当します。ICERが高いほど、追加の効果を得るために多くの費用がかかることを意味します。ICERの算出にあたり、比較対照技術は両集団ともレベチラセタムです。併用療法を受ける患者集団(患者割合100%)では、比較対照は「レベチラセタム+薬物療法」となります。この集団での争点は、分析で想定する治療の順番でした。企業は、薬剤の世代ごとに治療を選ぶ枠組みを示しました。一方、専門組織は、薬理作用に基づいて治療を選ぶ公的分析の枠組みを妥当としました。臨床現場では、ある薬剤が効かない場合に、同じ薬理作用の薬剤を選ぶことは考えにくいためです。なお、単剤療法を受ける患者集団は「分析不能」とされています。ICERの区分と価格調整係数の関係は、資料のグラフで次のように示されています。* ICER 200万円/QALY以上500万円/QALY未満:価格調整係数 1.0* ICER 500万円/QALY以上750万円/QALY未満:価格調整係数 0.7* ICER 750万円/QALY以上1,000万円/QALY未満:価格調整係数 0.4* ICER 1,000万円/QALY以上:価格調整係数 0.1本剤は、最も低い係数0.1の区分に該当します。この価格調整係数は、有用性系加算などの価格部分に適用されます。つまり、価格調整の対象は薬価全体ではありません。最終的な価格は、価格決定の時点で確定します。価格決定では、その時点の最新価格を用いてICERの区分が機械的に再計算されます。そのため、区分が変更される場合もあります。評価の過程:公的分析が企業分析を見直した4つの論点評価の過程で、公的分析は、追加的有用性、維持治療の継続率、後治療、QOL値の4点で企業分析を見直しました。公的分析とは、企業の分析を国の側で検証・再分析する仕組みです。4つの論点はいずれも、企業の設定の根拠に課題があると判断された点です。追加的有用性について、公的分析は、発作抑制効果ではレベチラセタムに対する追加的有用性は示されていないと判断しました。判断の根拠は、複数の臨床試験を統合するネットワークメタアナリシスの結果です。完全発作消失率のオッズ比は1.208(95%信頼区間0.457~3.194)でした。この値は1を超えるものの、信頼区間の幅が広い結果です。一方、50%レスポンダー達成率(発作回数が半分以下に減った患者の割合)のオッズ比は0.787(95%信頼区間0.554~1.118)でした。この値からは、本剤の有効性が劣る可能性も否定できません。2つの指標で相反する結果が出たため、公的分析は両指標にオッズ比1.000(差なし)を適用しました。維持治療の継続率について、公的分析は、異なる種類のデータを比べた企業の推計を見直しました。企業は、本剤にはランダム化比較試験(RCT)のデータを用いました。一方、レベチラセタムにはレセプトデータベースを用いた観察研究のデータを用いました。この比較から、企業は本剤の継続率が高いと推計しました。しかし、RCTと観察研究は研究デザインが大きく異なります。そこで公的分析は、レベチラセタムの中断率に「有害事象による治療中断」のオッズ比0.678を乗じて、本剤の継続率を推計しました。後治療について、公的分析は、後治療の費用とQOL値を「0」とした企業の設定を改めました。後治療とは、本剤またはレベチラセタムを中止した後の治療です。具体的には、ブリーバラセタムとレベチラセタムを含まない合理的多剤併用療法、迷走神経刺激療法、外科手術などを指します。費用とQOL値が「0」の状態は、「死亡」と同じ扱いを意味します。しかし、後治療を受ける患者は生存しています。そこで公的分析は、近い健康状態と考えられる「非レスポンダー」の費用とQOL値を後治療に適用しました。QOL値について、公的分析は、韓国の一般人から得た値を、患者本人から得た値に置き換えました。企業は、韓国の一般人を対象にビニエット法で測定したQOL値(Kang 2014)を用いました。ビニエット法とは、文章で示した健康状態を一般人に想像してもらい、評価を得る手法です。分析ガイドラインは、この手法を「本人から回答を得ることが困難な場合」の方法と位置付けています。しかし、部分発作の患者本人に対するQOL調査は、本剤の臨床試験(N01252、N01253、N01254試験)で実施済みです。加えて、Kang 2014のシナリオは、発作のたびに意識消失・転倒・記憶障害が起き、発作が月10回以上起きる重い状態を前提としていました。そこで公的分析は、臨床試験で患者本人から得たQOL値を用いました。企業の不服意見と専門組織の判断企業の不服意見として、製造販売業者は後治療、追加的有用性、QOL値、分析不能集団の4点について主張しました。専門組織は議論の結果、分析結果については公的分析が妥当と結論付けました。後治療について、企業は後治療を考慮しない評価を求めました。企業の理由は、後治療を含めると不確実性が増すことです。企業は、自社の他製品(ビンゼレックス)での扱いを前例として示しました。これに対し専門組織は、後治療を分析に含めるべきと判断しました。ビンゼレックスの例は、評価対象と比較対照で後治療への移行確率が同等だったための措置です。この前例から、本剤の後治療を分析から外す判断は導けません。追加的有用性について、企業は加算の価値がICERに反映されていないと主張しました。本剤は薬価算定時に、有用性加算(治療方法の改善[利便性])を受けています。企業は、ICERに反映できない価値に対する加算の減額は適切でないと主張しました。これに対し専門組織は、現時点のデータに基づいて分析するべきと判断しました。新たなエビデンスが得られた場合は、H3品目として対応すべきとしています。QOL値について、企業は韓国人のビニエット法による値を用いるのが妥当と主張しました。企業の理由は、日本人のQOL値が存在しない以上、欧米人の値より韓国人の値が合理的な代替になることです。これに対し専門組織は、患者本人から得たQOL値を使うべきと判断しました。企業が用いた値は、先行研究と比べて非常に低い値です。専門組織は、重い発作を前提としたシナリオでは、非常に低い値になることは容易に推測できるとしました。そのうえで、この値の採用は学術的に問題が大きいとしました。分析不能集団について、企業は単剤療法の患者集団の評価中断を求めました。中医協の取り決めでは、データ不足で「分析不能」と確認された品目は、専門組織での協議を経て、総会で評価を中断できます。企業は、単剤療法の臨床試験を計画中であり、分析に使えるデータを得られる見込みが高いと主張しました。この点について、資料には専門組織の個別の判断は示されていません。評価結果案は、併用療法の患者集団のみを対象としています。まとめ:ブリィビアクト錠は価格調整係数0.1の区分にブリィビアクト錠の費用対効果評価案は、費用に見合う効果が乏しいとの結果になりました。第一に、評価結果として、併用療法の患者集団でICERが1,000万円/QALY以上となり、最も低い価格調整係数0.1が対応します。第二に、評価の過程で、公的分析は追加的有用性、治療継続率、後治療、QOL値の4点で企業分析を見直しました。第三に、企業の不服意見に対して、専門組織は公的分析の結果が妥当と結論付けました。なお、資料は、企業分析と公的分析の双方に一定の科学的妥当性を認めています。資料の検討事項は、双方の見解が主に異なる部分を抜粋したものです。評価の詳細は、国立保健医療科学院が公表する報告書で確認できます。参考資料:中医協 総-2「医薬品等の費用対効果評価案について」(令和8年4月8日) Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
先進医療の新3技術を解説|中医協総会(第648回)報告のポイント
令和8年3月11日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第648回)で「先進医療会議からの報告について」が議題となりました。この報告資料は2つの表にまとめられており、技術名や費用は一覧できる一方、制度上の位置づけや患者の実負担までは読み取りにくい構成です。本記事では、報告された3技術の評価結果を、先進医療制度の基本とあわせて整理します。今回の報告では、がん領域の3技術がいずれも総評「適」と評価されました。先進医療Aでは、標準治療終了前に実施するがんゲノムプロファイリング検査(整理番号357)が、令和8年1月1日から告示適用となりました。先進医療Bでは、進行・再発大腸がん向けの遺伝子パネル検査(整理番号179)と、切除可能な膵臓がん向けの3剤併用療法(整理番号180)が、それぞれ令和8年1月1日と同年2月1日から告示適用となりました。費用欄は「保険給付されない費用」「保険給付される費用」「一部負担金」の3区分で示されており、患者の実負担は欄外の注記まで読んで確認する必要があります。先進医療会議からの報告は、保険導入前の技術を確認する議題先進医療会議からの報告は、保険導入前の新しい医療技術について、科学的評価の結果を中医協に伝える手続きです。今回の報告では、第147回会議(令和7年10月3日)と第149回会議(令和7年12月4日)で評価された3技術が対象となりました。先進医療とは、保険診療との併用が認められた評価段階の医療技術です。この併用を支える仕組みが保険外併用療養費制度であり、先進医療に係る部分は保険給付の対象外、診察や検査など通常の診療と共通する部分は保険給付の対象となります。有効性と安全性が確認された技術は、将来的に保険導入の検討対象となります。保険導入されれば、その技術は診療報酬上の評価を受けることになります。先進医療会議は、この評価段階の技術を専門家が審査する場です。会議では、申請された技術の有効性、安全性、技術的成熟度などを検討し、その結果を総評として示します。総評が「適」となった技術は告示に掲載され、告示適用日から先進医療として実施できます。先進医療は、使用する医薬品や医療機器の扱いによってAとBに区分されます。先進医療Aは、未承認等の医薬品・医療機器等の使用や適応外使用を伴わない技術です。また、体外診断薬、検査薬、検査目的の医療機器を未承認等で用いる技術のうち、人体への影響が極めて小さいものも含まれます。先進医療Bは、未承認等の医薬品・医療機器等の使用や適応外使用を伴う技術です。また、安全性や有効性等に鑑み、重点的な観察・評価を要すると判断された技術も含まれます。今回の報告では、Aが1件、Bが2件でした。先進医療A:標準治療終了前のがんゲノムプロファイリング検査先進医療Aとして報告された1件は、がんゲノムプロファイリング検査を標準治療の終了前に実施する技術です(整理番号357)。この技術は、検査の実施時期を標準治療の終了前に前倒しする点に特徴があります。技術名の「標準治療終了前における」という表現が、その特徴を示しています。対象となるのは、標準治療が終了する前の進行再発固形がん患者です。この患者は、標準治療が対象となる進行再発固形がん患者に限られます。さらに、関連学会の化学療法に関するガイドライン等に基づき、全身状態や臓器機能等から、検査実施後に化学療法の適応となる可能性が高いと主治医が判断した患者であることが条件です。ただし、局所進行または転移が認められ、標準治療が終了見込みとなる進行再発固形がん患者は、対象から除かれます。使用する検査システムは、5つのがん遺伝子パネルです。資料には、OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム、FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル、GenMineTOP® がんゲノムプロファイリングシステム、FoundationOne® Liquid CDx がんゲノムプロファイル、Guardant360® CDx がん遺伝子パネルが挙げられています。申請医療機関は国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院であり、告示適用日は令和8年1月1日です。費用は、先進医療に係る費用が56万円、保険給付される費用が5千円、保険外併用療養費分に係る一部負担金が2千円と示されています。このうち先進医療に係る56万円は保険給付の対象外です。総評は「適」と評価されました。先進医療B:大腸がんの遺伝子パネル検査と膵臓がんの併用療法先進医療Bとして報告された2件は、進行・再発大腸がんに対する検査と、切除可能な膵臓がんに対する薬物療法です。いずれも、未承認等の医薬品・医療機器等の使用や適応外使用を伴う技術、または重点的な観察・評価を要する技術として、Bに区分されています。2件とも総評は「適」と評価されました。1件目は、血中循環腫瘍DNAを用いたマルチプレックス遺伝子パネル検査です(整理番号179)。対象は、切除不能な進行または再発の大腸がんです。使用する医療機器はGuardant360 CDx がん遺伝子パネル、申請医療機関は東京大学医学部附属病院、告示適用日は令和8年1月1日です。費用は、先進医療に係る費用が98万4千円、保険給付される費用が4千円、一部負担金が2千円です。このうち先進医療に係る98万4千円は、全額を研究者および企業が負担するため、患者負担が0円となります。一部負担金2千円は、この注記の対象外です。2件目は、術前・術後のイリノテカン静脈内投与、オキサリプラチン静脈内投与およびS-1内服投与の併用療法です(整理番号180)。対象は、切除が可能な膵臓がんです。使用する医薬品はオニバイド点滴静注43mgとエルプラット点滴静注液(50mg、100mg、200mg)、申請医療機関は国立がん研究センター東病院、告示適用日は令和8年2月1日です。費用は、先進医療に係る費用が312万円、保険給付される費用が289万円、一部負担金が127万円です。このうち先進医療に係る312万円は、薬剤費を企業が負担するため、患者負担が1万円となります。一部負担金127万円は、この注記の対象外です。費用欄は3区分で示され、患者負担は注記で確認する費用欄の3区分は、保険外併用療養費制度の考え方をそのまま反映しています。3つの金額は、いずれも典型的な1症例に要する費用として申請医療機関が記載した額です。記載額は四捨五入された概数です。金額の大小だけを比較しても、患者が実際に支払う額はわかりません。「保険給付されない費用」は、先進医療そのものに係る費用です。この費用について、医療機関は患者に自己負担額を求めることができます。ただし、研究費や企業負担で賄われる場合は、患者負担が軽減または免除されます。「保険給付される費用」は、保険外併用療養費に係る保険者負担の額です。この費用は、先進医療と併せて行われる通常の診療部分にあたります。診察、検査、入院などがここに含まれます。「保険外併用療養費分に係る一部負担金」は、保険給付される部分について患者が負担する額です。この額は、通常の保険診療と同じ考え方で計算されます。したがって、患者の実負担は、先進医療に係る自己負担額とこの一部負担金の合計で把握します。今回の3技術では、注記の有無によって患者負担が大きく異なります。整理番号179は、先進医療に係る費用の全額を研究者および企業が負担するため、その患者負担が0円です。整理番号180は、先進医療に係る費用のうち薬剤費を企業が負担するため、その患者負担が1万円です。整理番号357には同様の注記がなく、先進医療に係る費用は患者の自己負担となり得ます。まとめ:3技術の評価結果と費用の読み方中医協総会(第648回)では、先進医療会議で評価された3技術が報告され、いずれも総評「適」と評価されました。先進医療Aでは、標準治療終了前のがんゲノムプロファイリング検査が令和8年1月1日から告示適用となりました。先進医療Bでは、進行・再発大腸がん向けの遺伝子パネル検査が令和8年1月1日から、切除可能な膵臓がん向けの3剤併用療法が同年2月1日から告示適用となりました。費用欄は3区分で示されるため、患者の実負担を把握するには注記まで確認することが必要です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
公知申請で適応外薬4成分が保険適用|第648回中医協
令和8年3月11日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第648回)で、公知申請とされた適応外薬4成分の保険適用が報告されました。この保険適用は薬事承認より先に行われるため、仕組みを知らないと、保険で使えるかどうかを誤って判断するおそれがあります。本号では、公知申請による保険適用の仕組みと、今回追加された適応の内容を解説します。今回の報告は、4成分の新しい使い方が、薬事承認に先立ってすでに保険適用されたことを示すものです。公知申請とされた適応外薬は、4段階の医学薬学的評価を経ていれば、薬事審議会の事前評価が終わった時点で保険適用されます。今回適応が追加されたのは、モキシフロキサシン、ゲムシタビン、フルダラビン、メトトレキサートの4成分の、資料に記載された販売名です。これらの薬を使う際は、公表された報告書の確認と、院内の薬剤情報の更新が欠かせません。公知申請の仕組み:事前評価の終了時点で保険適用される公知申請とされた適応外薬は、有効性と安全性が公知であると確認された段階で保険適用されます。この取扱いは、適応外薬の保険適用を迅速に行うため、平成22年8月25日に中医協で了承されました。以下では、2つの用語、4段階の評価プロセス、保険適用のタイミングの順に説明します。仕組みを理解するには、「適応外薬」と「公知申請」の2つの用語を押さえる必要があります。適応外薬とは、国に承認されていない効能・効果に使われる医薬品です。公知申請とは、有効性と安全性が医学薬学上公知であることを根拠に、承認を申請する方法です。公知申請では、臨床試験の全部または一部を新たに実施せずに申請できます。公知であることは、次の4段階の評価プロセスで確認されます。* 検討会議:「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が、医療上の必要性が高いと判断する* ワーキンググループ:検討会議のワーキンググループが、有効性と安全性が公知かどうかを検討し、報告書を作成する* 検討会議:検討会議が、報告書に基づいて公知申請に該当するかを判断する* 薬事審議会:公知申請が可能とされた医薬品について、薬事審議会(旧薬事・食品衛生審議会)の医薬品部会が事前評価を行う4段階の評価を終えた適応外薬は、薬事承認を待たずに保険適用されます。通常、医薬品の新しい適応は、薬事承認を経てから保険適用となります。一方、この仕組みでは、第4段階の事前評価が終わった時点で、有効性と安全性が公知であると確認されたとみなします。そのため、承認手続きが完了するまでの間も、患者は保険診療でその薬を使えます。今回保険適用された4成分と追加された適応今回保険適用されたのは、感染症、がん、造血幹細胞移植の3領域にわたる4成分です。これらの適応は、令和8年1月29日の薬事審議会医薬品第二部会と、令和8年3月5日の医薬品第一部会で事前評価を終えました。両部会で公知申請して差し支えないとされた適応は、それぞれの事前評価が終了した日付けで保険適用されました。資料で保険適用が示されているのは、次の一覧の販売名です。同じ成分でも、一覧にない販売名は今回の資料の対象に含まれていません。1. モキシフロキサシン塩酸塩* 販売名:アベロックス錠400mg【バイエル薬品株式会社】* 追加された適応:* 適応菌種:モキシフロキサシンに感性の結核菌* 適応症:多剤耐性肺結核2. ゲムシタビン塩酸塩* 販売名:ゲムシタビン点滴静注用200mg「ヤクルト」、同1g「ヤクルト」、同200mg「タカタ」、同1g「タカタ」【高田製薬株式会社】* 追加された適応:* 局所進行上咽頭癌における化学放射線療法の導入療法* 再発又は遠隔転移を有する上咽頭癌3. フルダラビンリン酸エステル* 販売名:フルダラ静注用50mg【サノフィ株式会社】* 追加された適応:* 同種造血幹細胞移植の前治療(対象疾患の拡大)4. メトトレキサート* 販売名:注射用メソトレキセート5mg、同50mg【ファイザー株式会社】* 追加された適応:* 造血幹細胞移植時の移植片対宿主病の抑制モキシフロキサシン塩酸塩は、多剤耐性肺結核の治療に使えるようになりました。対象の販売名は、アベロックス錠400mg(バイエル薬品株式会社)です。追加された適応菌種は「モキシフロキサシンに感性の結核菌」、適応症は「多剤耐性肺結核」です。多剤耐性肺結核とは、主要な抗結核薬であるイソニアジドとリファンピシンの両方が効かない結核菌による肺結核です。ゲムシタビン塩酸塩は、局所進行上咽頭癌の導入療法と、再発又は遠隔転移を有する上咽頭癌に使えるようになりました。対象の販売名は、ゲムシタビン点滴静注用200mg・1g「ヤクルト」と、同200mg・1g「タカタ」(高田製薬株式会社)です。追加された適応は、「局所進行上咽頭癌における化学放射線療法の導入療法」と「再発又は遠隔転移を有する上咽頭癌」の2つです。導入療法とは、主となる治療(ここでは化学放射線療法)の前に行う薬物療法です。フルダラビンリン酸エステルは、より多くの疾患の同種造血幹細胞移植の前治療に使えるようになりました。対象の販売名は、フルダラ静注用50mg(サノフィ株式会社)です。追加された適応は「同種造血幹細胞移植の前治療(対象疾患の拡大)」です。前治療とは、移植の前に行う抗がん剤などによる処置で、「移植前処置」とも呼ばれます。拡大後の具体的な対象疾患は、公表されている報告書で確認してください。メトトレキサートは、造血幹細胞移植時の移植片対宿主病の抑制に使えるようになりました。対象の販売名は、注射用メソトレキセート5mg・50mg(ファイザー株式会社)です。追加された適応は「造血幹細胞移植時の移植片対宿主病の抑制」です。移植片対宿主病(GVHD)とは、ドナー由来の免疫細胞が患者の体を異物とみなして攻撃する合併症です。保険適用後に押さえたい2つの注意点保険適用された4成分を使う際は、2つの点に注意が必要です。1つ目は、公表された報告書に基づいて使うことです。2つ目は、薬事承認前であることを踏まえて院内の薬剤情報を更新することです。1つ目の注意点として、4成分は公表された報告書に基づき、患者ごとの症状に応じて使う必要があります。中医協の資料も、報告書などの資料に基づいて各患者の症状に応じ適切に使用することが必要だと明記しています。報告書とは、「公知申請への該当性に係る報告書」などの資料です。これらの資料は、厚生労働省と医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページで公表されています。* PMDA 公表ページ:https://www.pmda.go.jp/index.html2つ目の注意点として、院内の薬剤情報は、薬事承認前の保険適用を反映して更新する必要があります。保険適用の時点では、薬事承認はまだ完了していません。そのため、添付文書の効能・効果には、今回の適応がまだ記載されていない場合があります。院内の医薬品集やレセプトチェックの設定が古いままだと、保険適用された使い方を適応外と誤って判断するおそれがあります。薬剤部と医事課で情報を共有し、診療報酬の請求に支障が出ないよう備えましょう。まとめ:4成分は承認前でも保険診療で使える第648回中医協総会では、公知申請とされた適応外薬4成分の保険適用が報告されました。公知申請とされた適応外薬は、4段階の評価を経て事前評価が終わった時点で、薬事承認を待たずに保険適用されます。今回は、多剤耐性肺結核、上咽頭癌(局所進行例の導入療法、再発又は遠隔転移例)、同種造血幹細胞移植の前治療、造血幹細胞移植時の移植片対宿主病の抑制に、4成分の特定の販売名で適応が追加されました。これらの薬を使う際は、公表された報告書を確認し、院内の薬剤情報を速やかに更新しましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
最適使用推進ガイドライン改訂4品目の要点|中医協第648回報告
令和8年3月11日の中医協総会(第648回)で、最適使用推進ガイドラインの改訂等4品目が報告されました。この4品目の新たな要件は、令和7年12月22日または令和8年2月19日から適用されているため、該当薬剤を使う医療機関には早急な確認が必要です。本メルマガでは、4品目の改訂内容と、診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄に記載すべき事項を整理します。今回の報告は、4品目の効能・効果または用法・用量の追加に合わせてガイドラインと保険適用上の留意事項が改められたという内容です。4品目のうち、テセントリク(胸腺癌)とテゼスパイア(鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎)は当該効能のガイドラインが新規作成され、デュピクセント(6〜11歳の気管支喘息)とキイトルーダ(局所進行頭頸部癌の術前・術後補助療法)は既存のガイドラインが改訂されました。がん領域のテセントリクとキイトルーダでは、該当する医療施設要件と治療責任者要件を摘要欄に記載します。アレルギー領域のデュピクセントとテゼスパイアでは、投与対象となる患者の要件に関する判断理由や該当性を中心に摘要欄に記載します。1. 今回報告された4品目の改訂概要今回報告された4品目は、効能・効果または用法・用量の追加に合わせて、ガイドラインと留意事項通知が見直された医薬品です。最適使用推進ガイドラインは、革新的な医薬品を真に必要な患者に、適切な体制の医療機関で使うための国の指針です。このガイドラインは、新しい作用機序の医薬品が既存薬と異なる副作用を示しうることを踏まえ、使用する施設や投与対象患者の要件を定めています。ガイドラインの要件は、保険適用上の留意事項通知によって保険診療のルールに組み込まれます。そのため、医療機関は、留意事項通知が求める事項をレセプトの摘要欄に記載する必要があります。4品目の改訂内容は、次のとおりです。テセントリク点滴静注1200mg(アテゾリズマブ/中外製薬)* 追加された効能・用法:切除不能な胸腺癌* ガイドライン:新規作成* 留意事項通知で追加された要件:医療施設要件、治療責任者要件* 適用日:令和7年12月22日デュピクセント皮下注300mg・200mg(デュピルマブ/サノフィ)* 追加された効能・用法:気管支喘息における6〜11歳小児の用法・用量* ガイドライン:改訂* 留意事項通知で追加された要件:患者要件* 適用日:令和7年12月22日キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ/MSD)* 追加された効能・用法:局所進行頭頸部癌における術前・術後補助療法* ガイドライン:改訂* 留意事項通知で追加された要件:医療施設要件、治療責任者要件* 適用日:令和8年2月19日テゼスパイア皮下注210mg(テゼペルマブ/アストラゼネカ)* 追加された効能・用法:鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎* ガイドライン:新規作成* 留意事項通知で追加された要件:医療施設要件、治療責任者要件等* 適用日:令和8年2月19日テゼスパイアの「医療施設要件、治療責任者要件等」は総-7の表記です。参考5で摘要欄への記載を求めている事項は、治療責任者要件と患者要件です(3-2参照)。4品目の適用日は、製造販売承認事項一部変更承認日と同じ日付です。つまり、新しい効能・用法で使い始めた時点から、新しい要件が適用されています。今回の中医協での扱いは、すでに発出された通知の「報告」にあたります。2. がん領域2品目:施設要件と治療責任者要件を摘要欄に記載がん領域の2品目では、追加された効能で投与する場合にも、共通の医療施設要件と、がん種ごとの治療責任者要件を満たす必要があります。追加された効能で投与する場合、摘要欄には、施設要件と治療責任者要件のどれに該当するかを記載します。2-1. 両剤に共通する医療施設要件テセントリクとキイトルーダに共通する医療施設要件は、次の5つのいずれかに該当することです。* (1)厚生労働大臣が指定するがん診療連携拠点病院等(都道府県がん診療連携拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院など)* (2)特定機能病院* (3)都道府県知事が指定するがん診療連携病院(がん診療連携指定病院、がん診療連携協力病院、がん診療連携推進病院など)* (4)外来化学療法室を設置し、外来腫瘍化学療法診療料1、2または3の施設基準を届け出ている施設* (5)抗悪性腫瘍剤処方管理加算の施設基準を届け出ている施設この施設要件に加えて、ガイドラインは、医薬品情報管理の専任者の配置や、24時間診療体制での副作用対応も求めています。2-2. テセントリク:切除不能な胸腺癌テセントリクは、切除不能な胸腺癌に対し、カルボプラチンおよびパクリタキセルとの併用で使えるようになりました。この併用療法では、通常、成人に1回1200mgを3週間間隔で点滴静注します。併用療法の根拠は、化学療法歴のない切除不能な胸腺癌患者48例を対象とした国内第Ⅱ相試験(Marble試験)です。Marble試験の奏効率は56.3%(95%信頼区間:41.2〜70.5%)でした。この95%信頼区間の下限41.2%は、事前に設定した閾値奏効率30%を上回りました。なお、術前補助療法は有効性が確立されていないため、投与対象になりません。テセントリクの治療責任者は、胸腺癌の化学療法と副作用対応に十分な知識と経験を持つ医師です。具体的には、2年の初期研修修了後に、次のいずれかを満たす医師が該当します。* 臨床腫瘍学:5年以上のがん治療の臨床研修(うち2年以上は、がん薬物療法を主とした臨床腫瘍学の研修)* 呼吸器病学:4年以上の臨床経験(うち3年以上は、胸部悪性腫瘍のがん薬物療法を含む呼吸器病学の臨床研修)* 呼吸器外科学:胸部悪性腫瘍のがん薬物療法を含む5年以上の呼吸器外科学の修練2-3. キイトルーダ:局所進行頭頸部癌の術前・術後補助療法キイトルーダは、局所進行頭頸部癌に対し、手術前後の補助療法として使えるようになりました。この補助療法では、通常、成人に1回200mgを3週間間隔、または1回400mgを6週間間隔で、30分間かけて点滴静注します。術後補助療法では、放射線療法またはシスプラチンを用いた化学放射線療法と併用します。補助療法の投与回数の上限は、次のとおりです。* 3週間間隔(1回200mg):術前補助療法は2回まで、術後補助療法は15回まで* 6週間間隔(1回400mg):術前補助療法は1回まで、術後補助療法は8回までキイトルーダの治療責任者は、頭頸部癌の化学療法と副作用対応に十分な知識と経験を持つ医師または歯科医師です。具体的には、次のいずれかを満たす医師または歯科医師が該当します。* 臨床腫瘍学(医師):2年の初期研修修了後、5年以上のがん治療の臨床研修(うち2年以上は、がん薬物療法を主とした臨床腫瘍学の研修)* 耳鼻咽喉科(医師):2年の初期研修修了後、4年以上の耳鼻咽喉科領域の臨床研修(うち2年以上は、がん薬物療法を含む頭頸部悪性腫瘍診療の臨床研修)* 口腔外科(医師または歯科医師):初期研修修了後、5年以上の口腔外科の臨床研修(うち2年以上は、がん薬物療法を含む口腔外科のがん治療の臨床研修)歯科医師が治療にあたる場合は、副作用などの全身管理が必要なため、上記の要件を満たす医師と緊密に連携して診療します。なお、頭頸部癌のガイドラインは、作用機序、臨床成績、投与に際して留意すべき事項などの説明を電子化された添付文書とRMP(医薬品リスク管理計画)に委ねた簡略版です。2-4. 摘要欄に記載する2項目両剤を追加された効能(テセントリクは切除不能な胸腺癌、キイトルーダは局所進行頭頸部癌における術前・術後補助療法)で投与する場合、摘要欄には次の2項目を記載します。* ① 医療施設の要件:2-1の(1)〜(5)のいずれに該当するか* ② 治療の責任者の要件:2-2または2-3の要件のいずれに該当するか3. アレルギー領域2品目:患者要件への該当性を摘要欄に記載アレルギー領域のデュピクセントとテゼスパイアでは、投与対象となる患者の要件が詳しく定められています。デュピクセントの摘要欄には、中用量の吸入ステロイド薬(ICS)を併用する患者に投与する判断理由を記載します。テゼスパイアの摘要欄には、投与開始時は治療責任者要件と患者要件への該当性を、継続時は治療責任者要件と投与継続の判断を記載します。3-1. デュピクセント:6〜11歳の小児気管支喘息デュピクセントは、気管支喘息について、6歳以上12歳未満の小児にも使えるようになりました。小児の用法・用量は、体重に応じて次のとおり定められています。* 体重15kg以上30kg未満:1回300mgを4週間隔で皮下投与* 体重30kg以上:1回200mgを2週間隔で皮下投与小児への有効性は、海外第Ⅲ相試験(EFC14153試験、408例)で確認されています。この試験の2型炎症性喘息集団では、重度喘息増悪の年間発現率が本剤群0.305回/人・年、プラセボ群0.748回/人・年でした(プラセボ群との比0.407)。なお、この試験の用法・用量は、体重30kg以下で100mg、30kg超で200mgの2週間隔投与であり、承認された用法・用量とは一部異なります。日本人小児13例を対象とした非盲検非対照の国内試験(LTS14424日本サブ試験)では、投与12週時の呼吸機能(ppFEV1)がベースラインから平均7.08ポイント改善しました。小児への投与対象は、中用量または高用量の吸入ステロイド薬(ICS)と他の長期管理薬を併用しても、コントロール不良な患児です。この患児には、全身性ステロイド薬の投与等が必要な喘息増悪を年1回以上きたしていることも求められます。他の長期管理薬には、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤が含まれます。ただし、中用量ICSでLABAを併用していない患児への投与は、副作用等によりLABAの併用が困難と医師が判断した場合に限られます。また、成人・小児ともに、治療開始時に2型炎症のバイオマーカー(血中好酸球数、FeNO、血清中総IgEなど)を1つ以上測定します。投与開始後は、1年程度を目安に効果を確認します。効果が認められない場合は、漫然と投与を続けないことが求められます。なお、成人では、中用量ICSとの併用は、ICSを高用量に増量することが副作用等により困難と医師が判断した場合に限られます。小児に投与する場合の治療責任者は、2年の初期研修修了後に4年以上の臨床経験を持つ医師です。この臨床経験には、3年以上の小児科診療の臨床研修と、3年以上の気管支喘息に関するアレルギー診療の臨床研修の両方が必要です。デュピクセントの摘要欄には、中用量ICSを併用する患者に投与する判断理由を記載します。参考5の記載事項は、次のとおりです。小児患者への使用において、併用する吸入ステロイド薬(ICS)が中用量で、長時間作用性β2刺激薬を併用していない患児の場合は、長時間作用性β2刺激薬を併用することが困難であると判断した理由又は併用する吸入ステロイド薬(ICS)が中用量の場合は、ICSを当該用量以上に増量することが不適切であると判断した理由この記載事項は、2つの理由を「又は」で並べた構成です。ガイドラインの患者選択基準に照らすと、それぞれの理由は次の患者に対応すると考えられます。* 中用量ICSを併用し、LABAを併用していない小児(患者選択について〔小児〕):LABAを併用することが困難であると判断した理由* 中用量ICSを併用している成人(患者選択について〔成人〕):ICSを当該用量以上に増量することが不適切であると判断した理由小児で中用量ICSとLABAを併用している場合、ガイドライン上はICSの増量困難の判断は求められていません。実際の記載方法は、発出された留意事項通知の原文で確認してください。3-2. テゼスパイア:鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎テゼスパイアは、既存治療で効果不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)にも使えるようになりました。用法・用量は、成人に1回210mgを4週間隔で皮下注射します。有効性は、国際共同第Ⅲ相試験(D5242C00001試験、日本人33例を含む410例)で検証されています。この試験では、投与52週時の鼻茸スコアと鼻閉スコアのベースラインからの変化量について、いずれもプラセボ群との間に統計学的に有意な差が認められました(プラセボ群との差:鼻茸スコア−2.08、鼻閉スコア−1.04)。日本人部分集団(33例)でのプラセボ群との差は、鼻茸スコア−1.06、鼻閉スコア−0.55でした。テゼスパイアの投与対象は、次の3条件をすべて満たす患者です。* 慢性副鼻腔炎の確定診断がなされている* CRSwNPの手術歴がある(手術ができない場合は、過去12カ月以内の全身性ステロイド薬で効果不十分、全身性ステロイド薬が禁忌、または忍容性がない、のいずれか)* 既存治療によっても、内視鏡検査による鼻茸スコアが各鼻腔とも2以上かつ両側合計5以上、鼻閉スコアが2(中等症)以上で4週間を超えて持続、鼻漏や嗅覚減少または消失といった鼻茸の症状が8週間を超えて持続、のすべてに該当する投与継続にあたっては、投与24週時までの適切な時期に効果を確認します。効果が認められない場合は、漫然と投与を続けないことが求められます。テゼスパイアの治療責任者要件は、投与開始時と継続時で異なります。投与開始時の責任者は、2年の初期研修修了後に4年以上の耳鼻咽喉科診療の臨床研修を行った医師です。投与継続時は、開始時の要件を満たす施設に加え、その施設と連携できる施設でも投与を継続できます。連携施設の責任者は、2年の初期研修修了後に4年以上の臨床経験を持ち、うち3年以上はCRSwNPを含むアレルギー診療の臨床研修を行った医師です。連携施設には、効果判定を定期的に行ったうえで、投与継続の是非を適切に判断できる医師が所属している必要があります。連携施設での効果判定は、開始時の要件を満たす施設と連携して行います。テゼスパイアの摘要欄には、投与開始時と継続時で異なる事項を記載します。投与開始時に記載する事項* ア 治療の責任者の要件に該当するか* イ 投与対象となる患者の要件に該当するか継続投与時に記載する事項* ア 治療の責任者の要件のいずれに該当するか* イ 投与継続の判断まとめ:適用済みの新要件をレセプト請求前に確認する今回の中医協報告では、4品目の効能・効果または用法・用量の追加に合わせて、最適使用推進ガイドラインと留意事項通知が改められました。テセントリクとテゼスパイアは当該効能のガイドラインが新規作成され、デュピクセントとキイトルーダは既存のガイドラインが改訂されました。がん領域の2品目では、追加された効能で投与する場合、医療施設要件と治療責任者要件の該当項目を摘要欄に記載します。アレルギー領域の2品目では、患者要件に関する判断理由や該当性を中心に摘要欄に記載します。これらの要件はすでに適用されているため、該当薬剤を使う医療機関は、院内体制とレセプトの記載内容を早めに確認しましょう。出典:中央社会保険医療協議会 総会(第648回)資料「総-7 最適使用推進ガイドラインについて」「総-7参考1〜5」(令和8年3月11日) Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
在宅自己注射に2剤追加へ|中医協総会(第648回)の要点を解説
中央社会保険医療協議会(中医協)総会は、令和8年3月11日に第648回会合を開き、議題のひとつとして「在宅自己注射について」を取り上げました。この議題では、2剤を在宅で使える注射薬に追加する案が示されています。追加案の2剤は、追加される枠組みが互いに異なるため、算定できる診療報酬も変わります。本記事では、今回の追加案の内容と、医療機関が実務で押さえるべき点を解説します。今回の追加案の要点は、対象が2剤であること、追加先の枠組みが2剤で異なること、判断の根拠が運用基準にあることの3点です。1剤目のオリプダーゼ アルファ(遺伝子組換え)製剤は、「保険医が投与することができる注射薬」にのみ追加する案です。2剤目のアパダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)/シナキサダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)製剤は、同じ注射薬と在宅自己注射指導管理料の双方に追加する案です。この2剤の追加は、令和5年8月23日に中医協総会が承認した運用基準と、関係学会からの要望書に基づいて提案されました。追加先となる2つの枠組み今回の追加案を理解する出発点は、「保険医が投与することができる注射薬」と「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤」という2つの枠組みの違いです。前者は、保険医が患者に投与できる注射薬、すなわち処方箋を交付できる注射薬の範囲を定めます。後者は、患者自身による注射を指導管理した場合の診療報酬の対象範囲を定めます。両者は重なる部分が大きいものの、同一ではありません。「保険医が投与することができる注射薬」は、療担規則第20条第2号トに基づき、厚生労働大臣が告示で列挙しています。この告示は、平成18年厚生労働省告示第107号の「第十 厚生労働大臣が定める注射薬等」です。ここに掲げられた注射薬に限り、保険医は患者に投与できます。投与量は症状の経過に応じたものとされ、厚生労働大臣が定めるものごとに1回14日分、30日分または90日分が限度となります。「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤」は、特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)の別表第九に掲げられています。この別表第九は、間歇注入シリンジポンプ加算、持続血糖測定器加算および注入器用注射針加算の対象範囲も兼ねます。注入器加算の対象は別表第九の一の三、注入ポンプ加算の対象は別表第九の一の五に、それぞれ別に定められています。したがって、ある薬剤が別表第九に追加されると、在宅自己注射指導管理料に加えて関連する材料加算の算定可否も同時に決まります。1剤目:オリプダーゼ アルファ(遺伝子組換え)製剤オリプダーゼ アルファ(遺伝子組換え)製剤は、「保険医が投与することができる注射薬」にのみ追加する案が示されました。販売名はゼンフォザイム20mgです。在宅自己注射指導管理料の対象には含まれないため、患者本人が注射する前提の薬剤ではありません。本剤の効能・効果は、酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症です。この疾患は、ライソゾームに局在する加水分解酵素の先天的な欠損を原因とする遺伝性疾患群、いわゆるライソゾーム病のひとつです。本剤はヒト酸性スフィンゴミエリナーゼの遺伝子組換え製剤であり、脾臓、肝臓、骨髄、肺、腎臓等の単核-マクロファージ系細胞に蓄積するスフィンゴミエリンを加水分解します。ただし、本剤は血液脳関門を通過しないため、中枢神経系症状の改善は期待されません。用法・用量は、用量漸増法に従った隔週の点滴静脈内投与です。成人患者では初回0.1mg/kgから開始し、14週目以降に維持用量である1回体重1kgあたり3mgへ到達します。小児患者では初回0.03mg/kgから開始し、16週目以降に同じ維持用量へ到達します。主な副作用には、Infusion reaction、頭痛、悪心、嘔吐、発熱などが挙げられます。本剤は令和4年3月に薬事承認されました。要望の背景には、酵素補充療法に伴う通院負担の重さがあります。日本先天代謝異常学会は令和7年12月17日付の要望書で、酵素補充療法が毎週または隔週に1回、1から4時間の点滴静注を生涯続ける治療であると説明しました。同学会は、歩行障害や寝たきり、呼吸管理などの高度の障害を有する患者では、本人・保護者・介護者の負担がさらに大きくなると指摘しています。また同学会は、市中感染が流行する時期の通院に伴う感染リスクへの懸念にも言及しました。これらを踏まえ、同学会は本剤を「保険医が投与することができる注射剤」へ追加するよう要望しています。安全性の確保について、同学会は在宅導入の前提条件を示しました。具体的には、一定期間の酵素補充療法を医療機関で実施し、投与関連反応が適切に制御され安全な投与が可能であることを厳密に確認できた患者を対象とすべきとしています。同学会は、既に承認された酵素製剤による在宅治療で大きな安全性の問題が生じていない点も、根拠として挙げました。2剤目:アパダムターゼ アルファ/シナキサダムターゼ アルファ製剤アパダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)/シナキサダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)製剤は、「保険医が投与することができる注射薬」と在宅自己注射指導管理料の双方に追加する案が示されました。販売名はアジンマ静注用1500です。あわせて、必要な在宅療養指導管理材料加算として注入器用注射針加算が示されています。本剤の効能・効果は、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)です。この疾患は、ADAMTS13遺伝子の異常により全身の微小血管に血小板血栓が形成される遺伝性疾患であり、血小板減少、溶血性貧血、腎機能障害などを引き起こします。ADAMTS13は、超高分子量VWF多量体を切断することで、VWFと血小板の結合およびそれに続く微小血栓の形成を抑制します。本剤は遺伝子組換えADAMTS13であり、血漿中のADAMTS13活性を回復させることで微小血管の血栓形成を抑制すると考えられています。用法・用量は、添付の溶解液5mLで溶解したうえでの緩徐な静脈内注射です。投与速度は2〜4mL/分とされています。定期的に投与する場合は、通常1回40国際単位/kgを隔週投与し、患者の状態に応じて週1回投与もできます。急性増悪時に投与する場合は、1日目に1回40国際単位/kg、2日目に1回20国際単位/kg、3日目以降は1日1回15国際単位/kgを投与します。主な副作用には、悪心、熱感、血小板増加症、頭痛のほか、ショックやアナフィラキシーが挙げられます。本剤は令和6年3月に薬事承認されました。要望の背景には、頻回通院による生活上の制約があります。日本血栓止血学会と日本小児血液・がん学会は令和7年4月15日付の要望書で、本剤の投与頻度が2週または1週ごとであるため、病態が安定していても患者が長期にわたり頻回通院を強いられる点を問題として挙げました。両学会は、cTTP治療が可能な医療機関が限られていることも、患者・介護者・医療従事者の負担を大きくする要因としています。そのうえで両学会は、就労・就学・育児など社会生活への影響を踏まえ、通院を必要最低限の頻度に抑える重要性を訴えました。安全性の確保について、両学会は在宅自己注射の実施体制を具体的に示しました。本剤の溶解器は、すでに在宅自己注射での投与実績があるファイバ静注用1000と同一です。そのため両学会は、医師が妥当性を慎重に検討し、患者またはその家族が適切に使用可能と判断した場合にのみ適用することを想定しています。指導内容としては、使用方法、副作用発現時の速やかな医療機関への連絡、使用済み注射器の安全な廃棄方法が挙げられました。管理指導に用いる教育資材は、製造販売業者から提供される予定です。追加の判断を支える運用基準2剤の追加案は、「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に係る運用基準」に沿って提案されています。この運用基準は平成28年8月24日に中医協総会が承認し、令和5年8月23日に改正案が承認されました。運用基準は、対象薬剤の要件、対象への追加時期、その他の取扱いを定めています。対象薬剤の要件は、補充療法等の頻回投与または発作時の緊急投与が必要で、かつ剤形が注射によるものに限られます。そのうえで、次の3点をいずれも満たす必要があります。第1に、関連学会等のガイドライン等で在宅自己注射の診療上の必要性が確認されていることです。第2に、医薬品医療機器法上の用法・用量として、維持期における投与間隔が概ね4週間以内であることです。第3に、対象薬剤への追加の要望があることです。なお、発作時に緊急投与が必要な薬剤および補充療法に使用する薬剤以外の薬剤には、これらに加えて別の要件がかかります。具体的には、要望書を提出した学会以外の学会の意見を確認する等、診療上の必要性について十分な確認が求められます。今回の2剤は、いずれも維持期の投与間隔が隔週です。学会からの要望書には、5つの事項の記載が求められます。すなわち、自己注射の安全性の確認、自己注射の対象となる患者の要件、使用にあたっての具体的な留意点、頻回投与や長期間の治療が必要になる理由、在宅療養指導管理材料加算を要望する場合の加算名称と理由です。今回の2件の要望書は、いずれもこの構成に沿って安全性と必要性を説明しています。追加時期の考え方は、注射の間隔によって2通りに分かれます。14日未満の間隔で注射を行う医薬品は、要件を満たす場合、原則として薬価収載の時期にあわせた追加を検討します。14日以上の間隔をあけて注射を行う医薬品は、14日を超える投薬が可能な場合であって要件を満たすとき、同じく薬価収載の時期にあわせた追加を検討します。なお、新医薬品の投薬期間は、原則として薬価収載の日の属する月の翌月初日から1年が経過するまで14日に制限されます。この運用基準は、保険医が投薬することができる注射薬への追加にも準用されます。今回、在宅自己注射指導管理料の対象とならないオリプダーゼ アルファ製剤についても同じ枠組みで検討されたのは、この準用規定があるためです。実務で押さえる留意点医療機関が実務で確認すべき点は、算定できる診療報酬の範囲と、在宅自己注射の実施体制の2つです。算定範囲は、薬剤がどちらの枠組みに追加されたかで変わります。実施体制は、平成17年4月27日付の保医発第0427002号「在宅自己注射を実施するに当たっての留意事項」が定めています。算定範囲については、在宅自己注射指導管理料の対象かどうかを必ず区別してください。オリプダーゼ アルファ製剤は「保険医が投与することができる注射薬」への追加にとどまるため、在宅自己注射指導管理料の算定対象にはなりません。アパダムターゼ アルファ/シナキサダムターゼ アルファ製剤は、別表第九にも追加する案です。案のとおり決まれば、在宅自己注射指導管理料とあわせて注入器用注射針加算を算定できます。実施体制については、留意事項の4点を導入前に確認してください。第1に、指導管理は対象疾患の診療を日常的に行い、十分な経験を有する医師が担当します。第2に、導入前には入院または週2回もしくは3回以上の外来、往診、訪問診療により、十分な教育期間を確保します。第3に、かかりつけ医師と異なる医師が指導管理を行う場合は、緊急時の対応等について十分な連携を図ります。第4に、実施に伴う廃棄物の適切な処理方法についても指導します。なお、今回紹介した内容は総会に示された案の段階です。最終的な取扱いは、中医協での審議結果と、その後に発出される告示・通知で確定します。施設内の運用を変更する前に、厚生労働省が公表する正式な告示・通知を必ず確認してください。まとめ令和8年3月11日の中医協総会(第648回)では、在宅で使える注射薬に2剤を追加する案が示されました。オリプダーゼ アルファ製剤は「保険医が投与することができる注射薬」にのみ追加され、在宅自己注射指導管理料の対象にはなりません。アパダムターゼ アルファ/シナキサダムターゼ アルファ製剤は、同注射薬と在宅自己注射指導管理料の双方に追加され、注入器用注射針加算の対象にもなります。いずれの追加も、令和5年8月23日承認の運用基準と学会要望書に基づく提案です。医療機関は、追加先の枠組みの違いを踏まえ、算定範囲と実施体制の両面から準備を進めてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
DPC高額薬剤判定2026年3月版|出来高算定となる16医薬品を解説
中央社会保険医療協議会(中医協)は、令和8年3月11日の総会(第648回)で「DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応」を議題としました。この対応は、DPC対象病院が新規医薬品をどの方式で請求するかを直接左右します。本記事は、今回示された判定結果と、医療機関が確認すべき実務上の留意点を整理します。今回の資料は、いずれも「としてはどうか」という事務局提案の形式で示されています。提案の内容は、出来高算定の対象追加と、診断群分類の定義への反映という2つの措置からなります。判定の基準は、当該医薬品を使った場合の1入院当たり薬剤費が、その診断群分類の包括範囲薬剤費の84パーセンタイル値を超えるかどうかです。この基準に該当し、次期診療報酬改定まで出来高算定となる医薬品は16あります。また、類似薬効比較方式で薬価が算定され、比較薬の分岐が既にある医薬品5つは、診断群分類の定義に反映されます。高額薬剤判定の仕組み高額薬剤判定とは、高額な新規医薬品を一定期間だけ包括評価の対象外とする仕組みです。判定は診断群分類ごとにおこない、薬剤費の84パーセンタイル値を基準とします。判定作業は、高額薬剤告示への追加と定義告示への追加の2つで構成されます。高額薬剤判定の目的は、医療の技術革新の導入を妨げない点にあります。新規に薬価収載された医薬品は、DPC/PDPSの診療報酬点数表に反映されていません。そのまま包括評価を適用すると、高額な新薬を使うほど医療機関の持ち出しが大きくなります。そこで厚生労働省は、十分な使用実績データが集まるまでの間、対象薬剤を包括評価の対象外としています。包括評価の対象外とするかどうかは、個別の診断群分類ごとに判定します。同じ医薬品でも、対象となる診断群分類と対象とならない診断群分類が分かれます。前年度に使用実績のない医薬品は、標準的な使用における薬剤費の見込み額で評価します。この見込み額には、併用する医薬品の費用も含めます。見込み額の評価では、84パーセンタイル値が判定のものさしになります。まず、添付文書の用法・用量に従って入院初日から退院まで投与した場合の投与回数(仮想投与回数)を求めます。次に、その回数から1入院当たりの薬剤費を算出します。この薬剤費が、当該診断群分類で使われている1入院当たり薬剤費の84パーセンタイル値を超える場合、当該医薬品を高額薬剤として指定します。高額薬剤として指定された医薬品は、2つの告示によって運用に反映されます。ひとつは高額薬剤告示で、包括評価の対象外となる薬剤と診断群分類を定めます。もうひとつは定義告示で、診断群分類の定義(傷病名・手術・処置等)を定めます。これら2つの作業は、新薬の薬価収載に合わせて年4回実施されます。出来高算定の対象となる16の医薬品今回、出来高算定の対象として提案された医薬品は16あります。内訳は、効能効果・用法用量の一部変更が7、事前評価済公知申請が1、新規の薬価収載予定品が8です。これらの薬剤を使用した患者のうち、対応する診断群分類に該当するものは、次期診療報酬改定までの間、出来高で算定します。対象となった医薬品は、令和7年10月から令和8年3月までの承認・収載の動きに対応しています。効能効果・用法用量の一部変更は、令和7年11月20日および12月22日に追加されたものです。事前評価済公知申請は、令和7年10月29日に受理されたものです。新薬は、令和8年3月18日に薬価収載を予定しているものです。効能効果・用法用量の一部変更による対象は、次の7医薬品です。1. ユプリズナ点滴静注100mg(イネビリズマブ)* 効能効果:IgG4関連疾患の再燃抑制* 対象診断群分類:030500 唾液腺の疾患(その他)、060340 胆管(肝内外)結石・胆管炎、060360 慢性膵炎(膵嚢胞を含む)等、070560 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患、110280 慢性腎炎症候群等、110420 水腎症等2. ビラフトビカプセル50mg・75mg(エンコラフェニブ)* 効能効果:BRAF遺伝子変異を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌* 対象診断群分類:060035 結腸(虫垂を含む)の悪性腫瘍、060040 直腸肛門の悪性腫瘍3. オータイロカプセル40mg・160mg(レポトレクチニブ)* 効能効果:NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌* 対象診断群分類:010010 脳腫瘍、03001x 頭頸部悪性腫瘍など、固形癌を中心とした35区分4. ベネクレクスタ錠10mg・50mg・100mg(ベネトクラクス)* 効能効果:慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)* 対象診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫5. ダラキューロ配合皮下注(ダラツムマブ/ボルヒアルロニダーゼ アルファ)* 効能効果:高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫における進展遅延* 対象診断群分類:130040 多発性骨髄腫、免疫系悪性新生物6. テセントリク点滴静注1200mg(アテゾリズマブ)* 効能効果:切除不能な胸腺癌* 対象診断群分類:040010 縦隔悪性腫瘍、縦隔・胸膜の悪性腫瘍7. デュピクセント皮下注200mg・300mg(デュピルマブ)* 効能効果:気管支喘息(既存治療でコントロールできない重症・難治の患者に限る)。今回は6歳以上12歳未満の小児の用法用量が追加されました* 対象診断群分類:040100 喘息事前評価済公知申請による対象は、マブキャンパス点滴静注30mg(アレムツズマブ)の1医薬品です。効能効果はT細胞性前リンパ球性白血病で、対象診断群分類は非ホジキンリンパ腫です。薬価は1瓶90,907円で、1回投与当たりの標準的な費用も同額となります。令和8年3月18日に薬価収載を予定している新薬による対象は、次の8医薬品です。1. プリミーフォート経腸用液6・8・CF(人乳等)* 効能効果:極低出生体重児等の体重増加不全を呈する新生児・乳児の栄養管理* 対象診断群分類:全診断群分類2. セピエンス顆粒分包250mg・1000mg(セピアプテリン)* 効能効果:フェニルケトン尿症* 対象診断群分類:100335 代謝障害(その他)3. ボラニゴ錠10mg(ボラシデニブクエン酸水和物)* 効能効果:IDH1またはIDH2遺伝子変異陽性の神経膠腫* 対象診断群分類:010010 脳腫瘍、070030 脊椎・脊髄腫瘍4. エルゾンリス点滴静注1000µg(タグラキソフスプ)* 効能効果:芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍* 対象診断群分類:130010 急性白血病5. ブーレンレップ点滴静注用100mg(ベランタマブ マホドチン)* 効能効果:再発または難治性の多発性骨髄腫* 対象診断群分類:130040 多発性骨髄腫、免疫系悪性新生物6. ミンジュビ点滴静注用200mg(タファシタマブ)* 効能効果:再発または難治性の濾胞性リンパ腫* 対象診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫7. リブロファズ配合皮下注(アミバンタマブ/ボルヒアルロニダーゼ アルファ)* 効能効果:EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、およびEGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌* 対象診断群分類:040040 肺の悪性腫瘍8. ルンスミオ皮下注5mg・45mg(モスネツズマブ)* 効能効果:再発または難治性の濾胞性リンパ腫* 対象診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫16医薬品のなかでも、1回投与当たりの費用が特に大きい薬剤には注意が必要です。ユプリズナは1回当たり10,485,912円、エルゾンリスは1回当たり3,607,878円に達します。プリミーフォートは、対象となる診断群分類を特定できないため、全包括診断群分類の包括範囲薬剤費を用いて判定されました。その結果、同剤は全診断群分類が出来高算定の対象となります。診断群分類の定義に反映される5つの医薬品今回、診断群分類の定義に反映される医薬品は5つあります。いずれも類似薬効比較方式により薬価が算定され、かつ比較薬に特化した診断群分類の分岐が既に設定されている医薬品です。これらは既存の分岐に追加されるため、比較薬と同じ取扱いになります。1. エクテリー錠300mg(セベトラルスタット)* 反映させる診断群分類:130150 原発性免疫不全症候群* 追加される分岐(比較薬):イカチバント酢酸塩2. ジニイズ点滴静注500mg(レチファンリマブ)* 反映させる診断群分類:060040 直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍* 追加される分岐(比較薬):ペムブロリズマブ3. ブーレンレップ点滴静注用100mg(ベランタマブ マホドチン)* 反映させる診断群分類:130040 多発性骨髄腫、免疫系悪性新生物* 追加される分岐(比較薬):ダラツムマブ4. ミンジュビ点滴静注用200mg(タファシタマブ)* 反映させる診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫* 追加される分岐(比較薬):オビヌツズマブ5. リブロファズ配合皮下注(アミバンタマブ/ボルヒアルロニダーゼ アルファ)* 反映させる診断群分類:040040 肺の悪性腫瘍* 追加される分岐(比較薬):アミバンタマブ5つのうち3つは、出来高算定の対象にも同時に該当します。ブーレンレップ、ミンジュビ、リブロファズの3剤がこれにあたります。これら3剤は、定義告示上の分岐に追加されたうえで、該当する診断群分類では出来高算定の対象にもなります。残るエクテリーとジニイズは、定義告示への追加のみが対象です。医療機関が確認すべき3つの実務ポイント医療機関は、算定期間、対象の組合せ、システム更新の3点を確認してください。いずれも請求誤りに直結する項目です。なお、本章は資料の記載ではなく、資料をもとにした一般的な留意点です。算定期間は、次期診療報酬改定までの間に限られます。出来高算定は恒久的な取扱いではありません。この取扱いは、十分な使用実績データが集まり包括評価が可能になるまでの暫定措置です。したがって、期間の終期を院内で共有しておく必要があります。対象の判定は、薬剤単独ではなく「薬剤と診断群分類の組合せ」でおこないます。同じ薬剤を使っていても、該当しない診断群分類では包括評価のままです。とくにオータイロやユプリズナのように対象分類が多い薬剤では、14桁の診断群分類番号まで照合してください。システム更新は、告示された診断群分類番号を基準に実施します。医事会計システムとレセプト点検の設定を、新しい高額薬剤告示と定義告示に合わせて更新します。更新後は、対象薬剤を使用した症例で出来高算定が正しく反映されるかを検証してください。検証の際は、併用薬を含めた請求区分の整合性もあわせて確認します。まとめ中医協総会(第648回)には、DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応が示されました。今回の提案は、出来高算定の対象追加と、診断群分類の定義への反映の2つからなります。判定の基準は、1入院当たり薬剤費が84パーセンタイル値を超えるかどうかです。出来高算定の対象は16医薬品、定義への反映は5医薬品で、うち3医薬品は双方に該当します。DPC対象病院は、算定期間、薬剤と診断群分類の組合せ、システム更新の3点を早めに確認してください。※本記事は令和8年3月11日の中医協総会資料(総-5、総-5参考)にもとづく解説です。実際の運用は、公布される告示および関係通知をご確認ください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
費用対効果評価で薬価見直し|トルカプ10.7%引下げを解説
令和8年3月11日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第648回)が「費用対効果評価の結果を踏まえた薬価の見直し」を了承しました。対象となった3品目は、引下げと据置きに結果が分かれています。しかも、引下げとなった品目の適用は令和8年6月1日まで猶予されました。本稿では、3品目の調整結果と、結果を分けた評価の考え方、医療機関に必要な実務対応を整理します。今回の見直しでは、3品目のうちトルカプ錠1品目だけが引下げとなりました。トルカプ錠は令和8年6月1日から約10.7%引き下げられます。エルレフィオ皮下注とテクベイリ皮下注は、現行薬価がそのまま維持されます。結果を分けたのは、費用対効果の指標であるICERの区分に応じて決まる「価格調整係数(β)」です。1. 今回の調整結果:3品目中1品目のみが引下げ今回の価格調整では、トルカプ錠だけが引下げ対象となりました。エルレフィオ皮下注は据置きです。エルレフィオの類似品目であるテクベイリ皮下注も据置きです。引下げ幅と適用日が設定されたのは、トルカプ錠だけとなります。トルカプ錠(カピバセルチブ、アストラゼネカ)は、2規格ともに約10.7%引き下げられます。160mg錠は11,116.20円から9,930.50円になり、1,185.70円の減額です。200mg錠は13,493.20円から12,053.90円になり、1,439.30円の減額です。適用日は令和8年6月1日とされました。この適用日について、資料は「医療機関における在庫への影響等を踏まえ、一定の猶予期間を設ける」と明記しています。トルカプ錠の効能・効果は、内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1又はPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌です。エルレフィオ皮下注(エルラナタマブ、ファイザー)は、2規格ともに現行薬価が維持されます。44mg1瓶は558,501円のまま、76mg1瓶は957,222円のままです。据置きのため、適用日は設定されていません。効能・効果は、再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)です。据置きとなったエルレフィオの評価結果は、テクベイリ皮下注(テクリスタマブ、ヤンセンファーマ)にもそのまま及びます。テクベイリは、費用対効果評価区分のうち「H5(類似品目)」に該当するためです。H5区分とは、すでに評価を受けた品目と類似する品目について、その評価結果を援用して価格を調整する仕組みを指します。この結果、30mg1瓶は216,930円、153mg1瓶は1,081,023円のまま変更されません。2. 引下げの有無を決めた「価格調整係数(β)」引下げの有無を決めたのは、ICERの区分に対応する価格調整係数(β)です。ICERの値が大きい品目ほど、βは小さくなります。βが小さいほど、有用性加算部分が大きく削られます。つまり、βを見れば引下げ幅の見当がつきます。ICER(増分費用効果比)とは、比較対照技術に対して1QALYを追加で獲得するために必要な追加費用を示す指標です。QALY(質調整生存年)は、生存期間を生活の質で重みづけした効果指標を指します。ICERの値が小さいほど、費用に見合った効果が得られていると評価されます。このICERは、区分ごとに段階的なβに換算されます。今回の資料に示された区分は、200万円/QALY以上750万円/QALY未満がβ=1.0です。750万円以上1,125万円未満がβ=0.7です。1,125万円以上1,500万円未満がβ=0.4です。1,500万円以上がβ=0.1です。このうちβ=1.0の区分は、後述の算式で差し引かれる額がゼロになるため、実質的に引下げが生じません。βが決まると、調整後の薬価は次の算式で計算されます。「価格調整後の薬価=価格調整前の薬価-有用性加算部分×(1-β)」です。β=1.0であれば、差し引かれる額はゼロになります。β=0.4であれば、有用性加算部分の6割相当が差し引かれます。なお今回は、両品目とも営業利益の価格調整は対象外とされました。この算式を3品目に当てはめると、結果の違いが明快になります。エルレフィオのICERは200万円以上750万円未満に区分され、β=1.0が適用されました。その結果、エルレフィオとテクベイリは据置きとなっています。一方、トルカプのICERは1,125万円以上1,500万円未満に区分され、β=0.4が適用されました。その結果、トルカプは引下げとなっています。いずれの品目も、患者割合は100%の単一集団で分析されています。3. 専門組織で争点となった分析上の論点引下げの根拠となった評価結果は、企業分析と公的分析の相違点を専門組織が検討して決着しました。今回の2品目は、いずれも公的分析による分析結果が妥当と結論づけられました。ただし、企業の受け止め方は2品目で対照的です。エルレフィオでは、投与期間の推計方法と副作用対策の費用が論点となりました。投与期間について、企業は指数分布を用いて長期推計を行いました。この推計に対し、公的分析は臨床試験の観察値との乖離を指摘し、対数正規分布による推計に置き換えています。副作用対策の費用について、企業は低γグロブリン血症に対する免疫グロブリン製剤(IVIG)の費用を計上していませんでした。この費用について、公的分析はエルラナタマブ群の43.1%にIVIGを投与すると想定し、先行研究を参考に推計した999,931円を計上しています。これらの再分析に対し、企業は「一定の妥当性がある」として異論を述べていません。専門組織はさらに、MAIC(マッチング調整間接比較)の妥当性について追加分析を求め、その結果を妥当と結論づけました。トルカプでは、比較対照技術の選定と生存期間の推定が論点となりました。比較対照技術について、企業はエキセメスタン+エベロリムスを主張しました。この主張に対し、公的分析はフルベストラント+アベマシクリブを採用しています。生存期間(OS)について、企業は実際のOSデータの公表を待つべきだと主張しました。この主張に対し、公的分析はPFS(無増悪生存期間)とOSの相関に関する先行研究に基づき、保守的な値としてハザード比0.95を設定しています。企業はこれらの点について不服意見を提出しました。しかし専門組織は、両試験の実施時期が大きく異なることなどを理由に企業の主張を退け、公的分析の結果を妥当と結論づけています。4. 医療機関が押さえるべき実務対応医療機関の実務で対応が必要なのは、トルカプ錠の1品目だけです。対応の期限は令和8年6月1日です。対応の内容は、在庫管理とシステム更新の2点に整理できます。在庫管理では、適用日をまたぐ在庫量に注意します。トルカプ錠の新薬価は令和8年6月1日から適用され、5月31日までは現行薬価で算定します。6月1日以降に使用する分は、現行薬価で仕入れていても新薬価で算定することになります。今回の猶予期間は、この影響を緩和するために設けられたものです。トルカプ錠は内用薬であるため、院外処方の場合は保険薬局の在庫が影響を受けます。システム更新では、薬価マスタの反映時期を確認します。電子カルテとレセプトコンピュータの薬価マスタは、6月1日以降の請求に新薬価が反映される必要があります。院内の採用薬リストや薬価差の管理資料も、あわせて更新しておきます。更新の時期は、システムベンダーに早めに確認しておきましょう。一方、エルレフィオ皮下注とテクベイリ皮下注については、実務上の対応が不要です。薬価が変更されないため、マスタ更新も在庫調整も生じません。ただし、費用対効果評価の対象品目であった事実は記録しておくと、今後の類似品目の動きを追いやすくなります。5. 費用対効果評価は今後も対象が拡大費用対効果評価の対象品目は、着実に積み上がっています。令和8年3月11日時点で、評価が終了した品目は54品目です。評価中の品目は19品目です。同日には、新たに1品目が対象として指定されました。新規に指定されたのは、ブーレンレップ(グラクソ・スミスクライン)です。効能・効果は再発又は難治性の多発性骨髄腫、収載時価格は1,284,052円(100mg1瓶)、有用性系加算率は10%です。ピーク時予測の市場規模は187億円で、「H1(市場規模が100億円以上)」に区分されました。評価中の19品目には、市場規模の大きい品目が並んでいます。ケサンラ(796億円)、エアウィン(544億円)、テッペーザ(494億円)などが企業分析または公的分析の段階にあります。これらの結果は、順次中医協総会に報告される見込みです。なお、評価が終了しても価格が変わらない品目は珍しくありません。終了した54品目のうち、コララン、エンレスト、マンジャロ、ダラキューロなどは「変更なし」とされています。今回のエルレフィオとテクベイリも、この据置きのグループに加わりました。費用対効果評価は、必ずしも引下げに直結する制度ではない点を押さえておきましょう。まとめ:βの区分を見れば結果が読める今回の中医協総会では、3品目のうちトルカプ錠だけが引下げとなりました。トルカプ錠は令和8年6月1日から、160mg錠が9,930.50円、200mg錠が12,053.90円へと約10.7%引き下げられます。エルレフィオ皮下注とテクベイリ皮下注は、現行薬価のまま据え置かれます。この違いを生んだのは、ICERの区分に応じて決まる価格調整係数βです。医療機関では、トルカプ錠の在庫管理と薬価マスタの更新を6月1日までに済ませておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
レチファンリマブ最適使用推進GL|中医協で審議された施設要件とレセプト記載
令和8年3月11日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会は第648回会合を開き、レチファンリマブ(遺伝子組換え)の最適使用推進ガイドライン案を審議しました。このガイドライン案は、本剤を使用できる施設と医師を限定します。したがって医療機関は、自院が要件に該当するかを薬価収載前に確認しなければなりません。本稿では、審議資料3点の内容を整理し、医療機関が確認すべき点を示します。なお本稿で扱う要件と通知は、いずれも令和8年3月11日時点の案に基づく内容です。今回の審議で示されたのは、レチファンリマブを「要件を満たす施設で、要件を満たす医師のもと、限られた患者に使う」という枠組みです。第一に、最適使用推進ガイドラインは、新規作用機序の革新的な医薬品を真に必要な患者へ届けるための制度です。第二に、レチファンリマブは、肛門管扁平上皮癌の無増悪生存期間を延長した抗PD-1抗体です。第三に、本剤を投与できる施設は、施設・医師・副作用対応という3つの要件をすべて満たす施設に限られます。第四に、医療機関は、診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄に2つの事項を記載する必要があります。1. 最適使用推進ガイドラインは新薬を必要な患者に届けるための制度最適使用推進ガイドライン(以下「最適使用GL」)は、革新的な新規作用機序医薬品の使い方を、承認審査と並行して国が示す制度です。中医協は平成29年9月13日にこの取扱いを了承しました。以下では、制度の趣旨、対象、手続きの順に説明します。制度の趣旨は、革新的な医薬品を、その恩恵を強く受ける患者に確実に届けることにあります。背景には、高額な医薬品の登場が国民負担と医療保険財政に与える影響への懸念があります。「経済財政運営と改革の基本方針2016」も、革新的医薬品の使用の最適化推進を掲げました。加えて新規作用機序医薬品は、薬理作用や安全性プロファイルが既存の医薬品と大きく異なることがあります。そのため情報が十分に蓄積するまでの間は、副作用へ迅速に対応できる医療機関での使用が重要になります。対象となる医薬品は、投与対象の患者数が非常に多く、多施設で使用される可能性が高い医薬品です。該当するかどうかは、次の5つの観点から総合的に判断されます。第一が、薬理作用が既存の医薬品と大きく異なることです。第二が、安全性プロファイルが大きく異なり、使用上の特別な注意が必要なことです。第三が、既存の医薬品と比較した有効性が著しく高いことです。第四が、臨床的位置づけが異なり、より広い患者に使用される可能性が高いことです。第五が、効能・効果の追加によって使用患者が拡大する可能性です。手続きは、承認申請から薬価収載までの流れに沿って進みます。まず対象候補の医薬品が承認申請されると、薬事・食品衛生審議会の担当部会へ報告されます。次に関係学会等と医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、ガイドライン案を検討します。その案は担当部会の了承を経て、薬価収載を審議する中医協総会に報告されます。今回のレチファンリマブの審議は、この中医協総会の段階にあたります。その後、薬価収載までに保険適用上の留意事項と最適使用GLが通知されます。2. レチファンリマブは肛門管扁平上皮癌の無増悪生存期間を延長する抗PD-1抗体レチファンリマブ(販売名:ジニイズ点滴静注500mg、製造販売業者:インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社)は、切除不能な進行・再発の肛門管扁平上皮癌を対象とする抗PD-1抗体です。用法・用量は、パクリタキセル及びカルボプラチンとの併用下で、1回500mgを4週間間隔で30分間かけて点滴静注します。以下では、作用機序、有効性、安全性の順に説明します。作用機序は、腫瘍細胞による免疫からの回避を解除することです。PD-1は、抗原提示細胞に発現するPD-L1及びPD-L2と結合し、免疫応答を負に制御します。このPD-1/PD-L1経路は、腫瘍細胞がT細胞からの攻撃を回避する機序の一つと考えられています。本剤はPD-1のリガンド結合領域に結合し、両者の結合を阻害します。その結果、がん抗原特異的なT細胞が活性化し、腫瘍の増殖が抑えられます。有効性は、国際共同第Ⅲ相臨床試験(INCMGA 0012-303試験)で示されました。本試験は、化学療法歴のない切除不能な進行・再発の肛門管扁平上皮癌患者308例(日本人16例を含む)を、本剤群154例とプラセボ群154例に割り付けました。なお、放射線療法と併用する化学療法や、登録の6ヵ月以上前に完了した術前・術後補助療法は、化学療法歴に含めない取扱いとされました。主要評価項目である無増悪生存期間の中央値は、本剤併用群で9.3ヵ月、プラセボ併用群で7.4ヵ月でした。この差はハザード比0.63(95%信頼区間:0.47~0.84)、p=0.0006であり、統計学的に有意な延長を示しました。安全性は、免疫関連の副作用に注意を要する結果でした。副作用の発現割合は、本剤併用群で89.6%(138/154例)、プラセボ併用群で77.6%(118/152例)でした。Grade 3-4の副作用は、それぞれ33.8%と25.7%に認められました。死亡に至った副作用(Grade 5)は、本剤併用群で1例(0.6%)、プラセボ併用群で0例でした。本剤併用群で発現割合が高かった副作用は、無力症33.1%、下痢25.3%、貧血18.2%、疲労17.5%、悪心16.9%、そう痒症15.6%、甲状腺機能低下症13.0%です(いずれも発現割合5%以上の副作用を示した表からの抜粋)。とくに内分泌障害は、本剤併用群21.4%に対しプラセボ併用群3.3%であり、本剤に特徴的な副作用といえます。3. 投与できる施設は3つの要件をすべて満たす必要がある最適使用GLは、投与できる施設の要件を①施設、②院内の医薬品情報管理体制、③副作用への対応の3つに整理し、すべてを満たすことを求めています。あわせて、投与対象となる患者の考え方も示しています。以下では、施設の要件、医師の要件、体制の要件、患者の考え方の順に説明します。施設の要件は、がん薬物療法の実施体制を示す5区分のいずれかへの該当です。第一が、厚生労働大臣が指定するがん診療連携拠点病院等です。第二が、特定機能病院です。第三が、都道府県知事が指定するがん診療連携病院です。第四が、外来化学療法室を設置し、外来腫瘍化学療法診療料1・2・3のいずれかの施設基準を届け出ている施設です。第五が、抗悪性腫瘍剤処方管理加算の施設基準を届け出ている施設です。これら5区分のいずれにも該当しない施設は、本剤を使用できません。医師の要件は、肛門管扁平上皮癌の化学療法と副作用対応に十分な知識と経験をもつ医師を、治療の責任者として配置することです。該当する医師は、次の3類型のいずれかです。第一が、初期研修修了後に5年以上のがん治療の臨床研修を行い、うち2年以上をがん薬物療法を主とした臨床腫瘍学の研修にあてた医師です。第二が、初期研修修了後に、消化器癌のがん薬物療法を含む5年以上の消化器外科学の修練を行った医師です。第三が、初期研修修了後に4年以上の臨床経験を有し、うち3年以上を消化器癌のがん薬物療法を含む消化器病学の臨床研修にあてた医師です。体制の要件は、医薬品情報の管理と副作用への即応の2点です。医薬品情報の管理では、専任者を配置し、製薬企業からの情報窓口、医師等への情報提供、有害事象の報告業務を速やかに行える体制が求められます。副作用への即応では、24時間診療体制のもと、当該施設又は連携施設において入院管理とCT等の検査結果を当日中に得られる体制が求められます。さらに、副作用モニタリングを含む苦痛のスクリーニングを行うチーム医療体制と、専門性を有する医師との連携体制も必要です。投与対象となる患者は、有効性と安全性の両面から絞り込まれます。有効性の面では、切除不能な進行・再発の肛門管扁平上皮癌患者に対する、本剤・カルボプラチン・パクリタキセル併用の有効性が示されています。安全性の面では、本剤の成分に過敏症の既往歴がある患者への投与が禁忌です。また、間質性肺疾患の合併・既往がある患者、胸部画像検査で間質影を認める患者や肺に炎症性変化がみられる患者、自己免疫疾患のある患者、臓器移植歴(造血幹細胞移植歴を含む)のある患者、結核の感染・既往がある患者、ECOG Performance Status 3-4の患者には、投与が推奨されません。ただし他の治療選択肢がない場合に限り、慎重な使用を考慮できます。4. 医療機関はレセプト摘要欄への2項目の記載が必要になる最適使用GLの策定にあわせて、保険適用上の留意事項通知が発出される予定です。中医協総会では、この通知の内容が案として示されました。案は、本剤を最適使用GLに従って使用する旨を基本的考え方として明記します。そのうえで、診療報酬明細書の摘要欄に記載を求める事項を定めます。摘要欄に記載する事項は、次の2項目です。第一が、医療施設の要件への該当性です。第二が、治療の責任者の要件への該当性です。いずれも最適使用GLの「4.施設について」に示された要件に対応します。つまり医療機関は、要件を満たしていることをレセプト上で示す必要があります。対応の期限は、通知の適用日です。案では、留意事項通知の発出日を令和8年3月17日、適用日を令和8年3月18日としています。したがって医療機関は、この日までに要件の該当性を確認し、記載方法を医事部門と共有しておくことが望まれます。まとめ:施設要件の確認と摘要欄の記載準備を急ぐ令和8年3月11日の中医協総会は、レチファンリマブの最適使用推進ガイドライン案を審議しました。以下の内容は、いずれもこの時点の案に基づきます。この制度は、革新的な新規作用機序医薬品を、要件を満たす施設と医師のもとで使うための仕組みです。本剤は、肛門管扁平上皮癌の無増悪生存期間を有意に延長した抗PD-1抗体であり、免疫関連の副作用への対応が欠かせません。そのため投与できる施設は、施設・医師・副作用対応の3要件をすべて満たす施設に限られます。医療機関は、適用日として示された令和8年3月18日までに要件の該当性を確認し、レセプト摘要欄への記載準備を進めてください。正式な要件は発出される通知で必ず確認してください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
中医協が新薬20品目を了承|令和8年3月18日収載の薬価と加算を解説
中央社会保険医療協議会(中医協)総会は、令和8年3月11日に第648回会合を開催しました。同会合では、令和8年3月18日に薬価基準へ収載する新医薬品が示されました。収載日は会合のわずか1週間後であり、医療機関と薬局には短期間での準備が求められます。本稿は、今回の収載内容を「品目の全体像」「薬価算定の要点」「処方日数制限の例外」の3点から整理します。今回の収載は、高額な腫瘍用薬が中心となる点と、1品目に処方日数制限の例外が設けられる点が特徴です。第一に、収載されるのは14成分20品目であり、うち腫瘍用薬が7成分を占めます。第二に、補正加算は8成分に適用される一方で、2品目の不服意見はいずれも認められませんでした。第三に、ボラニゴ錠10mgについては、処方日数制限を14日間ではなく30日間として取り扱う案が示されました。1.収載品目の全体像:14成分20品目、腫瘍用薬が半数令和8年3月18日に収載される新医薬品は、14成分20品目です。剤形別の内訳は、内用薬が7成分12品目、注射薬が6成分7品目、外用薬が1成分1品目です。各社が示したピーク時の予測販売金額を単純に合算すると、約1,635億円です。ただし、ピーク時として想定される年度は品目ごとに異なります。薬効分類では、その他の腫瘍用薬が7成分と最も多くを占めます。具体的には、ボラニゴ錠10mg(ボラシデニブ)、エルゾンリス点滴静注1000μg(タグラキソフスプ)、ジニイズ点滴静注500mg(レチファンリマブ)、ブーレンレップ点滴静注用100mg(ベランタマブ マホドチン)、ミンジュビ点滴静注用200mg(タファシタマブ)、リブロファズ配合皮下注(アミバンタマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ)、ルンスミオ皮下注(モスネツズマブ)の7成分です。いずれも希少疾病や難治性がんを対象としており、対象患者数は限られます。腫瘍用薬には、算定薬価が100万円を超える品目が並びます。最高額はエルゾンリス点滴静注1000μgの3,607,878円(1瓶)です。これに、ルンスミオ皮下注45mgの2,327,787円(1瓶)、ブーレンレップ点滴静注用100mgの1,284,052円(1瓶)が続きます。一方で予測販売金額が最も大きいのはリブロファズ配合皮下注であり、ピーク時に438億円と見込まれています。小児および希少疾病領域の品目も、今回の収載の柱です。プリミーフォート経腸用液(人乳等)は、極低出生体重児等の体重増加不全を呈する新生児および乳児の栄養管理を効能・効果とします。セピエンス顆粒分包(セピアプテリン)は、フェニルケトン尿症を効能・効果とします。オプスミット小児用分散錠(マシテンタン)は、3カ月以上の小児の肺動脈性肺高血圧症に用いる分散錠です。対象患者数の多い品目も含まれており、一般外来への影響も想定されます。アバレプト懸濁性点眼液0.3%(モツギバトレプ)は、ドライアイを効能・効果とし、ピーク時に63.1万人の投与が予測されています。ザズベイカプセル30mg(ズラノロン)は、うつ病・うつ状態を効能・効果とし、同じく20万人が予測されています。イセルティ錠100mg(リンザゴリクスコリン)は、子宮筋腫に基づく諸症状の改善を効能・効果とし、4.1万人が予測されています。2.薬価算定の要点:加算は8成分、不服意見は2件とも不採用今回の薬価算定では、算定方式の内訳と補正加算の適否が要点となります。算定方式は、類似薬効比較方式(Ⅰ)が11成分、原価計算方式が2成分、規格間調整が1成分です。類似薬効比較方式(Ⅰ)は、効能・効果や薬理作用が類似する既収載品(最類似薬)と1日薬価をそろえる方式を指します。原価計算方式は、類似薬がない場合に製造原価や営業利益を積み上げる方式を指します。補正加算が認められたのは、14成分のうち8成分です。特定用途加算はオプスミット小児用分散錠に10%が適用されました。小児加算はプリミーフォート経腸用液とセピエンス顆粒分包に各10%が適用されました。有用性加算(Ⅱ)はエクテリー錠300mg、エルゾンリス点滴静注、ジニイズ点滴静注に各5%、ブーレンレップ点滴静注用に10%が適用されました。市場性加算(Ⅰ)はエルゾンリス点滴静注に15%、ジニイズ点滴静注とミンジュビ点滴静注用に各10%が適用されました。迅速導入加算はブーレンレップ点滴静注用とミンジュビ点滴静注用に各5%が適用されました。なお、ここでいう補正加算は、画期性加算から迅速導入加算までの加算を指します。新薬創出・適応外薬解消等促進加算はこれとは別枠であり、14成分のうち11成分が該当します。加算が認められても薬価が上がらない品目がある点には、注意が必要です。プリミーフォート経腸用液とエルゾンリス点滴静注は、いずれも原価計算方式で算定され、加算係数が0とされました。加算係数は原価の開示度に応じて設定される係数であり、開示度が低い場合には0となります。その結果、両品目では加算率が算定薬価に反映されず、加算前と加算後の価格が同額となりました。外国平均価格調整によって薬価が引き上げられた品目は、3品目です。ボラニゴ錠10mgは15,895.90円から31,791.80円へ引き上げられました。エルゾンリス点滴静注1000μgは3,079,692円から3,607,878円へ引き上げられました。ミンジュビ点滴静注用200mgは117,248円から125,201円へ引き上げられました。なお、ザズベイカプセル30mgは、海外での効能・効果が「産後うつ病」に限られることから、調整の対象外とされています。算定案に対する不服意見は2品目から示されましたが、いずれも認められませんでした。ブーレンレップ点滴静注用は、有用性加算の要件ハ③への該当を主張しました。これに対し第二回算定組織は、同一の観点での重複評価は行わないこと、本邦で最も推奨される標準的治療とは判断できないことを理由に、該当しないとの見解を示しました。アバレプト懸濁性点眼液は、初のTRPV1阻害剤としての新規性を主張しました。これに対し第二回算定組織は、温度感の異常等の特徴的な副作用が注意喚起されていること、ベネフィットがリスクを大きく上回るとまでは判断できないことを理由に、該当しないとの見解を示しました。費用対効果評価の対象となったのは、ブーレンレップ点滴静注用100mgの1品目です。同品目はH1区分に該当するとされました。H1区分は、ピーク時の市場規模が大きい品目を対象とする区分であり、収載後に費用対効果の分析と価格調整が行われます。3.処方日数制限の例外:ボラニゴ錠10mgは30日間ボラニゴ錠10mgについては、処方日数制限を14日間ではなく30日間として取り扱う案が示されました。新医薬品は、薬価基準収載の翌月の初日から1年間、原則として1回14日分を限度に投与することとされています。この「14日ルール」には、平成22年10月27日の中医協了承に基づく例外規定が2種類あります。今回適用されるのは、そのうち②の要件です。②の要件は、疾患の特性や製剤上の特性から1回の投薬期間が14日を超えることに合理性があり、かつ投与初期から14日を超える投薬における安全性が確認されていることです。この要件を満たす場合、処方日数制限は製剤の用法・用量から得られる最少日数に応じた日数となります。第一の根拠は、疾患の特性です。ボラニゴ錠10mgの対象であるびまん性神経膠腫は、脳機能障害やてんかん発作など多彩な症状を引き起こします。低リスクのGrade2の患者では、毒性の高い化学・放射線療法を延期する「積極的な経過観察」が標準治療の選択肢の一つとなっています。したがって、手術後で直ちに放射線療法等を実施する必要がない患者に対する治療選択肢は、限られています。第二の根拠は、製剤上の特性です。本剤の包装単位は1ボトル30個です。吸湿性等の特性から、錠剤を分包化することは適さず、ボトルのまま処方・管理する必要があります。そのため、減量が必要な患者や体重40kg未満の12歳以上の小児患者では、14日間で1ボトルを使い切ることができません。第三の根拠は、投与初期からの安全性です。IDH1またはIDH2遺伝子変異陽性の神経膠腫患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験では、14日間を超える投薬が行われました。承認審査においても、本剤の安全性は許容可能であるとされました。実務では、対象品目と対象期間の切り分けが重要になります。今回の資料で例外的な取扱いが示されたのは、収載品目のうちボラニゴ錠10mgのみです。ほかの品目については、原則どおりの取扱いとなります。処方日数制限の期間は、薬価基準収載の翌月の初日から1年間です。令和8年3月18日収載の品目であれば、令和8年4月1日から令和9年3月31日までが対象期間となります。まとめ:3月18日収載に向けて押さえるべき3点第648回中医協総会では、令和8年3月18日に収載する新医薬品が示されました。収載されるのは14成分20品目であり、うち腫瘍用薬が7成分を占めます。補正加算は8成分に適用された一方で、2品目の不服意見はいずれも認められませんでした。ボラニゴ錠10mgについては、処方日数制限を30日間とする例外的な取扱いの案が示されました。収載日までの期間は短いため、採用予定品目の薬価と処方日数の確認を早めに進めることをおすすめします。出典* 中央社会保険医療協議会 総会(第648回)議事次第(令和8年3月11日)* 中医協 総-2-1「医薬品の新規薬価収載等について」* 中医協 総-2-2「令和8年3月薬価収載予定の新薬のうち14日ルールの例外的な取扱いをすることについて(案)」注記 本稿は令和8年3月11日時点の中医協提出資料に基づきます。14日ルールの例外的な取扱いは「案」として示されたものであり、最終的な取扱いは厚生労働省が発出する告示・通知をご確認ください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】栄養保持を目的とした医薬品の保険給付が要件化|エンシュア等の算定ルールを解説
令和8年度診療報酬改定は、栄養保持を目的とした医薬品の保険給付に新しい要件を設けます。この医薬品は、薬効分類325「たん白アミノ酸製剤」に属し、エンシュア・リキッドやラコールNF配合経腸用液などが該当します。中央社会保険医療協議会は、これらの医薬品と同程度の栄養を持つ食品が市販されている点を課題として指摘しました。そこで厚生労働省は、保険給付の適正化の観点から、外来患者への投薬について給付の対象となる患者を明確化します。本記事は、この見直しの内容と医療現場が備えるべき実務対応を解説します。見直しの要点は、外来患者への投薬を原則として算定できないものとしたうえで、3類型の患者に限って算定を認める点にあります。第一に、算定できなくなるのは、入院中の患者以外の患者に栄養保持を目的とした医薬品を投薬した場合の調剤料、処方料、薬剤料、処方箋料及び調剤技術基本料です。第二に、例外として算定できるのは、手術後の患者、経管により栄養補給を行っている患者、及び医師が医療上特に必要と判断した患者への投薬です。第三に、例外に該当する場合は、その旨または理由を処方箋と診療報酬明細書の両方に記載する必要があります。見直しの背景:市販食品で代替できる栄養補給を給付から切り分ける見直しの背景には、栄養保持を目的とした医薬品が市販食品と栄養成分の面で近接している実態があります。中央社会保険医療協議会は、令和7年12月12日の総会資料「個別事項(その15)」でこの実態を示しました。厚生労働省は、この資料を踏まえて保険給付の要件見直しを提案しました。医薬品と市販食品の栄養成分は、熱量とたんぱく質のいずれでも大きな差がありません。半消化態栄養剤で比較すると、医薬品の熱量は100mLあたり100kcalから160kcalの範囲にあります。これに対し市販食品の熱量は、100mLあたり150kcalから200kcalに達します。たんぱく質でも同じ傾向がみられ、医薬品が100mLあたり3.5gから6.4gであるのに対し、市販食品は5.7gから8.0gです。つまり通常の食事で栄養補給ができる患者の追加的な栄養補給は、市販食品で代替できます。栄養成分が近接する一方で、これらの医薬品は特定の疾患を定めずに使用できる状態にあります。薬効分類325「たん白アミノ酸製剤」には、「一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができる」と効能又は効果を定めた医薬品が薬価収載されています。この効能又は効果は、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給を本来の使途として想定します。しかし実際には、通常の食事と同様に経口投与される場合が存在します。保険給付の適正化は、令和8年度改定に固有の論点ではなく、過去の改定から積み重ねられてきた流れの上にあります。厚生労働省はこれまでも、ビタミン剤、うがい薬及び湿布薬について薬剤給付の適正化を実施してきました。その手法は、使用目的の明確化や、一回の処方あたりの枚数制限です。今回の見直しは、この流れに栄養保持を目的とした医薬品を加えるものです。対象医薬品の範囲:3つの条件をすべて満たす医薬品が該当する対象となる医薬品は、薬効分類、効能又は効果、用法及び用量という3つの条件をすべて満たすものです。厚生労働省は、個別の品名ではなくこの3条件で対象範囲を画定しました。医療機関と薬局は、自院・自局の採用品目がこの3条件に該当するかを確認する必要があります。第一の条件は、薬効分類が「たん白アミノ酸製剤」に分類されることです。この薬効分類は、番号325に対応します。医薬品の添付文書上部に記載される薬効分類番号で確認できます。第二の条件は、効能又は効果が「一般に、手術後患者の栄養保持」であることです。この記載は、特定の疾患を限定せずに使用できることを意味します。特定の疾患を対象と定めた栄養製剤は、この条件に該当しません。第三の条件は、用法及び用量に「経口投与」が含まれることです。この条件は、通常の食事と同様の経口摂取が可能な医薬品を対象とする趣旨によります。経管投与のみを用法及び用量に定める医薬品は、この条件に該当しません。3条件に該当しうる品目は、中央社会保険医療協議会の資料に例示されています。半消化態栄養剤では、エンシュア・リキッド、エンシュア・H、ラコールNF配合経腸用液、エネーボ配合経腸用液、及びイノラス配合経腸用液が挙げられました。消化態栄養剤では、ツインラインNF配合経腸用液が挙げられています。これらはいずれも、経管又は経口の両方を投与方法とする医薬品です。ただし、これらは議論の過程で示された例示にとどまるため、対象品目の最終的な範囲は告示及び通知で確認してください。改定の具体的内容:外来投薬は原則算定不可、3類型の患者のみ例外改定の具体的内容は、医科点数表「第5部 投薬」の通則に第6項を新設する形で規定されます。この通則は、算定できない項目と、算定を認める患者の類型を定めます。現行の点数表に対応する規定はなく、今回が新設です。算定できなくなる項目は、投薬に関する5つの区分です。対象は、入院中の患者以外の患者に栄養保持を目的とした医薬品を投薬した場合に限られます。具体的には、区分番号F000の調剤料、F100の処方料、F200の薬剤(薬剤料)、F400の処方箋料、及びF500の調剤技術基本料が算定できません。院内処方では調剤料、処方料、薬剤及び調剤技術基本料が対象となり、院外処方では処方箋料が対象となります。算定を認める患者の第一類型は、手術後の患者です。この類型は、当該医薬品の効能又は効果である「手術後患者の栄養保持」に直接対応します。該当する場合は、手術後の患者である旨を記載します。算定を認める患者の第二類型は、経管により栄養補給を行っている患者です。この類型は、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給という本来の使途に対応します。該当する場合は、経管により栄養補給を行っている患者である旨を記載します。算定を認める患者の第三類型は、医師が医療上特に必要と判断した患者です。この類型は、疾病の治療のために必要であり、他の食事では代替できない場合を想定します。点数表上は、必要な栄養を食事により摂取することが困難な患者その他これに準ずる場合と規定されます。該当する場合は、旨の記載ではなく、必要と判断した理由の記載が求められます。以上の「旨」と「理由」の書き分けは、改定案の通則の文言に基づくものです。一方、個別改定項目の「第2 具体的な内容」は、3類型のいずれについても「その理由を処方箋及び診療報酬明細書に記載する」と記述しています。実際の記載方法は、告示及び通知の確定を待って確認してください。医療機関・薬局の実務対応:処方箋とレセプトの両方に記載する医療現場に求められる実務対応は、記載の徹底と院内ルールの整備です。記載を欠いた場合、投薬に関する5区分は算定できません。医療機関と薬局は、施行までに運用を固める必要があります。医療機関が最初に行うべき対応は、採用品目の棚卸しです。前述の3条件を用い、対象医薬品を特定します。特定した品目については、外来と在宅の処方実績を確認します。この確認により、影響を受ける患者数を把握できます。対象品目を特定した後に必要となるのは、記載様式の整備です。手術後の患者と経管栄養の患者については、該当する旨を定型文で記載できるようにします。医師の判断による患者については、他の食事では代替できない理由を個別に記載します。電子カルテやレセプトコンピュータに定型文を登録しておくと、記載漏れを防げます。記載の対象は、処方箋と診療報酬明細書の両方である点に注意が必要です。通則は、院内処方と院外処方を区別せず、両方への記載を算定の条件と定めます。処方箋のみに記載した場合も、診療報酬明細書のみに記載した場合も、要件を満たしません。院内処方における具体的な記載方法は、告示及び通知で確認してください。薬局に求められる対応は、処方箋の記載確認と疑義照会の運用整備です。対象医薬品の処方箋を受け付けた際は、該当する旨または理由の記載を確認します。記載がない場合は、処方医への疑義照会を行います。なお今回新設される通則は医科点数表の規定であり、調剤報酬点数表の取扱いは告示及び通知で確認してください。患者への説明も、実務対応の重要な要素です。要件に該当しない患者は、これまで保険給付の対象であった栄養補給を市販食品で行うことになります。説明の際は、市販食品でも同程度の栄養を確保できる点を伝えます。急な変更による患者の不安を避けるため、施行前からの計画的な説明が有効です。まとめ:3条件で対象を特定し、3類型で記載を徹底する令和8年度診療報酬改定は、栄養保持を目的とした医薬品の保険給付に要件を新設します。対象となる医薬品は、薬効分類「たん白アミノ酸製剤」、効能又は効果「一般に、手術後患者の栄養保持」、用法及び用量に「経口投与」を含むという3条件をすべて満たすものです。この医薬品を入院中の患者以外の患者に投薬した場合、調剤料、処方料、薬剤料、処方箋料及び調剤技術基本料は原則として算定できません。算定が認められるのは、手術後の患者、経管により栄養補給を行っている患者、及び医師が医療上特に必要と判断した患者への投薬に限られます。いずれの場合も、該当する旨または理由を処方箋と診療報酬明細書の両方に記載してください。なお、答申書の附帯意見は、食品類似薬の保険給付の在り方を引き続き検討する方針を示しています。今後の議論の動向にも注意を払いましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
こちらもおすすめ
AkiのAI「と」ゼロから学ぶラジオ
元手取り16万経理→AI活用で月30〜50万 デザインツール「MiriCanvas」公式アンバサダー 最新情報ばかり発信するSNSから 一歩離れて、遅く・考えて配信をしていきます 自己紹介 ━━━━━━━━━━━━ 🟧プロフィール ▶︎AI活用した動画編集・SNS運用・メルマガ構築・Lark導入 ▶︎31歳・元手取り16万の経理 ▶渋谷クロスFMラジオ出演 ▶︎MiriCanvas公式アンバサダー ▶︎「誰ひとり孤立させない」をコンセプトにしたコミュニティを共同でつくっています 🟧趣味 読書・漫画・アニメ・映画 音楽・ファッション・美術館・食べ歩き 新しいツールを触ること 本は年間で大体100冊くらい 映画も100本ほど観ています 🟧実績 ━━━━━━━━━━━━ ▶︎アフィリエイト知識ゼロで初月7万→3ヶ月目50万突破 ▶︎アフィリエイト4ヶ月合計で100万突破 ▶︎AI活用したメルマガ100通構築で30万マネタイズ×2案件 ▶︎登録者5万人超えのYouTubeチャンネル運営 ▶︎ショート動画では月10万ほど ▶︎TikTokで企業様の広告動画を納品 配信内容が少しでもお聴きくださる方の お役に立てましたなら幸いです! ポッドキャストの書き起こしサービス 「LISTEN」はこちらから 文章で読みたい方はこちらから https://listen.style/p/akiradio?51zaFzjY
くろますおのNEXT NOW / 「”次”のトレンドを”今”学べる」ラジオ
【テクノロジー】部門人気ランクTop3🏅 アメリカから毎朝4時に「10分」だけ。 次のトレンドをキャッチして、「イケてる人」になりましょう! ▼番組のテーマ: 「海外AI・NFT・テックトレンド」をリアルタイムで発信 ▼番組の特徴: ・アメリカ現地での体験を通じた生の声を重視 ・日本と海外のトレンド比較 【よく聴かれてます】※2023.6更新 ▼【ネクストChatGPT】米・中・欧の戦い、そして日本はどうなるのか? https://voicy.jp/channel/3611/514502 ▼【SEOブログはオワコン】Googleの検索が変わる!! https://voicy.jp/channel/3611/526620 ▼【Nikeに学ぶ】企業がNFTをはじめる時の3つのポイント https://voicy.jp/channel/3611/512735 ▼過去600回の音声配信はこちらから https://spoti.fi/3ZFwu4q ▼スタエフ http://bit.ly/3Gd2B ▼Twitter(1.7万フォロワー) https://twitter.com/kuromasuo ▼最先端テックが学べる無料メルマガ NEXT NOW(2,700登録者) https://t.co/IRrdcNPWTU ※この番組は、仮想通貨・株式等の取得や投資助言を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。自己責任でお願いします。 https://listen.style/p/kuromasuo?Setd6apz
日本酒侍ぐりこ先生のココだけの話
日本酒を世界酒に! 日本酒×Web3のパイオニアが業界に革新を与えます!! CHIMNEY TOWN DAO運営 Japan Sake Community代表 中学校教員が世界で活躍するプロデューサーに 川原卓巳プロデュースの学校0期生として活動 日本酒を世界酒にしていくまでの過程がみれます。 ビジネスでのマインドセット。思考法など音声を通じて伝えます。 https://listen.style/p/guricoproduce?2wfSmibn
Recalog
Recalogは一週間にあったニュースや記事からkokorokagamiとtoudenがピックアップして話す番組です https://listen.style/p/recalog?bqOBxHVT
思ったら即アウトプットするプログラマー
この番組はエンジニアの「もっさん」が日々思ったことを1トピック1エピソードでコンパクトに話す番組です。 ※ 2024/6/27に「みるみる積もる!積読術」からタイトル変更しました ●【Twitter @mossan_hoshi】 ●【Youtube @mossanhoshi7158】 ●【オライリー本サブスクについて】 https://zenn.dev/mossan_hoshi/articles/20230128_oreilly_learning ●【積読本リスト】 https://1drv.ms/x/s!AqxcPJT01sLlgdsJJ2-wA9mRn1dimA?e=uvyGdD ●【Zenn @mossan_hoshi】 ●【Qiita @mossan_hoshi】
リブラの 精神科のバックヤード
ここは場末の精神科医リブラが診察室のバックヤードで無駄話をしている部屋です。 X(Twitter) https://x.com/okawari いつもはスカンクさんと「ちょうちん町のえんとつラジオザウルス(精神のPライン)」で楽しくおしゃべりしてます🥳 📻ちょうちん町のえんとつラジオザウルス(🐊精神のPライン🐘) https://stand.fm/channels/6161e521afa93b18fcd77817 スカンクさんのスタエフ https://stand.fm/channels/664b1a48316143a771f4d710 ポッドキャストの書き起こしサービス「LISTEN」はこちら https://listen.style/p/lybra?VVy4Un3E