病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。
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番組の魅力・推薦
外来データ提出加算が「充実管理加算」へ|令和8年度診療報酬改定の新設項目
令和8年度診療報酬改定は、外来医療でデータに基づく評価を推進します。従来の外来データ提出加算は、データ提出の有無だけを評価していました。本稿は、この加算を再編して新設される「充実管理加算」を解説します。充実管理加算は、データ提出を前提としつつ、上位区分ほど生活習慣病管理の実績を高く評価します。具体的には、従来の外来データ提出加算(50点)が、充実管理加算へ再編されます。この充実管理加算は、患者の主病ごとに、実績水準に応じた3段階の点数を設定します。さらに、経過措置により、既存の届出医療機関は1年間、最上位の実績要件を満たすものとみなされます。見直しの背景と目的今回の見直しは、提出データを診療の質の評価につなげることを目的とします。背景には、外来医療でデータに基づく適切な評価を推進する方針があります。この方針のもと、診療報酬の請求状況や治療管理の状況といった診療内容のデータが、医療機関から継続的に提出されてきました。しかし、従来の外来データ提出加算は、これらのデータの提出体制だけを評価していました。つまり、提出されたデータが示す診療の質は、評価の対象外でした。そこで今回の改定は、ガイドライン等に沿った質の高い生活習慣病管理を行う医療機関を、より高く評価する仕組みへと見直します。あわせて、医療機関に提出を求めるデータは簡素化されます。今回の改定は、この簡素化を踏まえて評価体系を見直します。見直しにより、評価の対象は提出体制から診療の質へと広がります。充実管理加算の点数体系充実管理加算は、3つの主病ごとに、実績水準に応じた3段階の点数を設定します。対象となる主病は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病の3つです。これらの主病それぞれに、充実管理加算1から3までの3段階が用意されます。脂質異常症を主病とする場合、点数は3段階に分かれます。充実管理加算1は30点、充実管理加算2は20点、充実管理加算3は10点です。高血圧症を主病とする場合も、同じ3段階の点数が設定されます。充実管理加算1は30点、充実管理加算2は20点、充実管理加算3は10点です。糖尿病を主病とする場合も、同様に3段階の点数が設定されます。充実管理加算1は30点、充実管理加算2は20点、充実管理加算3は10点です。なお、これらの加算は、生活習慣病管理料(Ⅰ)と生活習慣病管理料(Ⅱ)のいずれにも共通して適用されます。段階を区分する施設基準充実管理加算の3段階は、生活習慣病管理の実績水準によって区分されます。いずれの段階も、外来患者の診療内容に関するデータを継続的かつ適切に提出する体制を、共通の前提とします。この共通の前提に、管理実績の要件が段階ごとに上乗せされます。充実管理加算1は、管理につき十分な実績を有する医療機関が対象です。データ提出体制に加えて、主病の管理で十分な実績が求められます。この最上位の段階に、30点が設定されます。充実管理加算2は、管理につき相当の実績を有する医療機関が対象です。データ提出体制に加えて、主病の管理で相当の実績が求められます。この中位の段階に、20点が設定されます。充実管理加算3は、データ提出体制を満たす医療機関が対象です。管理実績の要件はなく、データ提出体制だけが求められます。この基本の段階に、10点が設定されます。既存届出医療機関への経過措置経過措置は、既存の届出医療機関に準備期間を設けます。対象は、令和8年3月31日時点で外来データ提出加算(注4)の届出を行っている医療機関です。これらの医療機関には、新基準への移行を円滑にするための猶予が認められます。具体的には、対象の医療機関は、令和9年3月31日までの間、充実管理加算1の実績要件を満たすものとみなされます。この間、医療機関は十分な実績の要件を改めて満たさなくても、最上位の段階で算定できます。経過措置の終了後は、実際の実績水準に応じた段階で算定します。まとめ令和8年度診療報酬改定は、外来データ提出加算を充実管理加算へ再編します。この充実管理加算は、データ提出体制に加えて、生活習慣病管理の質を評価します。点数は、脂質異常症・高血圧症・糖尿病の主病ごとに、実績水準に応じた3段階で設定されます。既存の届出医療機関には、令和9年3月31日までの経過措置が設けられます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度診療報酬改定】データ提出加算の入院料要件はどう変わる?精神病棟3類型を解説
国は、データに基づくアウトカム評価を医療の質向上の柱に据えています。このアウトカム評価は、医療機関が国へ提出する診療実績データに支えられています。ところが精神病棟入院基本料の一部では、データを提出する医療機関が1~3割にとどまっていました。そこで本稿は、令和8年度診療報酬改定がこのデータ提出を新たに入院料の要件とする見直しを解説します。今回の見直しは、データ提出加算の届出を要件とする入院料を、精神病棟入院基本料の3類型へ拡大するものです。拡大の対象は、精神病棟入院基本料の15対1、18対1、20対1です。拡大の背景には、これら3類型での届出割合の低さと、令和6年度改定で先行した10対1・13対1の要件化があります。そして経過措置として、すでに届け出ている医療機関には令和10年5月31日までの猶予が、一定の要件を満たす医療機関には当分の間の例外が設けられます。データ提出加算とは ― データに基づく評価を支える仕組みデータ提出加算とは、診療実績のデータを継続して厚生労働省へ提出する医療機関を評価する加算です。このデータには、入院・外来・在宅・リハビリテーションの診療実績が含まれます。国はこのデータを用いて、医療の実態把握や診療報酬改定の検討を進めています。この加算の点数は、データ提出加算1から4までに分かれます。たとえばデータ提出加算1は、許可病床数200床以上で145点、200床未満で215点です。点数自体は大きくありませんが、重要なのは点数よりも「届出」のほうです。データ提出加算の「届出」は、近年、入院料を算定するための施設基準として位置づけられてきました。届出を施設基準とすれば、その入院料を算定する医療機関は、実質的にデータ提出を求められます。この仕組みを通じて、国はデータ提出の対象を着実に広げてきました。拡大の対象 ― 精神病棟入院基本料の3類型今回の拡大で新たに要件化されるのは、精神病棟入院基本料の15対1、18対1、20対1です。これら3類型は、患者に対する看護職員の配置を15人対1人などで表す入院料です。今回の改定では、これら3類型の施設基準に「データ提出加算に係る届出を行っていること」が加わります。ただし、この要件には例外があります。新規に保険医療機関を開設する場合など、やむを得ない事情があるときは、要件の対象から除かれます。この例外は、開設直後でデータ提出体制が整わない医療機関に配慮したものです。拡大の背景 ― 届出割合の低さと先行した要件化この3類型を対象に選んだ背景には、届出割合の低さがあります。15対1、18対1、20対1では、データ提出加算の届出を行う医療機関が1~3割にとどまっていました。データに基づくアウトカム評価を進めるうえで、この低さが課題とされました。一方、同じ精神病棟入院基本料でも、10対1と13対1は令和6年度改定ですでに要件化されています。データ提出加算の対象は、これまでの改定で漸次拡大されてきました。今回の見直しは、この流れを精神病棟入院基本料の残る3類型へ広げるものといえます。経過措置 ― 猶予期間と一部医療機関への配慮急な要件化による現場の混乱を避けるため、二段構えの経過措置が設けられます。第一に、令和8年3月31日時点ですでに3類型を届け出ている医療機関は、令和10年5月31日まで要件を満たしているとみなされます。この猶予期間は、データ提出体制の整備に充てられます。第二に、一定の要件を満たす医療機関は、当分の間みなし対象となります。この例外の対象は、データ提出がすでに必須とされている急性期向けなどの病棟を持たず、かつデータ提出加算の届出が困難な正当の理由がある医療機関です。具体的には、療養病棟などを持つ場合はその病床数の合計が200床未満であること、精神病棟入院基本料などを持つ場合は病床数を問わないことが、それぞれ条件となります。これらの措置により、電子カルテが未導入といった事情のある医療機関も、段階的に対応できます。まとめ令和8年度診療報酬改定は、データ提出加算の届出要件を精神病棟入院基本料の15対1、18対1、20対1へ拡大します。拡大の背景には、これら3類型での届出割合の低さと、データに基づくアウトカム評価を推進する国の方針があります。経過措置として、すでに届け出ている医療機関には令和10年5月31日までの猶予が、一定の要件を満たす医療機関には当分の間の例外が設けられます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度改定|入院基本料の患者割合計算が明確化|3つのポイント解説
入院基本料や特定入院料の施設基準は、平均在院日数や在宅復帰率などの基準の達成を求めます。このうち在宅復帰率などの患者割合は、病棟から退院した患者を分母と分子に振り分けて算出します。しかし、ひとつの病棟で複数の入院料を算定する場合、どの患者を計算対象に含めるかが曖昧でした。そこで令和8年度診療報酬改定は、患者割合の計算方法を明確化しました。本稿では、その明確化の内容を3つのポイントで解説します。今回の明確化は、患者割合の計算ルールを統一し、現場の解釈のばらつきを解消します。第一に、在宅復帰率の計算で、他の入院料を算定する患者を計算対象から除外します。第二に、特定入院料の患者割合の計算でも、同様の除外を通則として明文化します。第三に、1病棟で届け出られる特定入院料を2種類までに制限します。1. 在宅復帰率の計算対象を明確化する在宅復帰率の計算では、他の入院料を算定する患者を計算対象から除外します。除外の対象は、病床単位で算定する特定入院料や、短期滞在手術等基本料を算定する患者です。この除外は、急性期一般入院料1などの自宅等退院割合と、療養病棟の在宅復帰機能強化加算の両方に適用されます。在宅復帰率は、病棟から退院した患者のうち、自宅などに退院した患者の割合です。急性期一般入院料1などの施設基準は、この割合が一定以上であることを求めます。計算では、直近6か月間に退院した患者数を分母とし、自宅等に退院した患者数を分子とします。この計算から除外する患者が、今回の改定で追加されました。従来から、再入院患者や転棟患者、救急患者連携搬送料を算定して転院した患者、死亡退院した患者などが計算対象外とされてきました。ここに、退院時に他の入院料を届け出ている病床・病室の患者と、短期滞在手術等基本料を算定する患者が加わります。療養病棟入院基本料の在宅復帰機能強化加算でも、同じ除外が適用されます。この加算は、在宅に退院した患者の割合が5割以上であることを求めます。改定後は、他の入院料を届け出ている病床・病室の患者と、短期滞在手術等基本料を算定する患者を、分子と分母の双方から除きます。2. 特定入院料の計算方法を通則で統一する特定入院料の患者割合の計算でも、他の特定入院料や短期滞在手術等基本料を算定する患者を除外します。この除外は、個々の入院料ごとではなく、特定入院料に共通する「通則」として規定されます。通則化により、すべての特定入院料で計算ルールが統一されます。特定入院料とは、回復期リハビリテーション病棟入院料などの、特定の機能を持つ病棟・病室の入院料です。これらの施設基準は、それぞれ患者割合などの要件を定めます。同じ病棟内に別の特定入院料や短期滞在手術等基本料を算定する病床があると、計算対象が複雑になっていました。改定後は、これらの患者を計算対象から除く扱いが通則に明記されます。通則とは、個々の入院料に共通して適用される基本ルールです。通則に規定することで、入院料ごとに同じ除外規定を繰り返す必要がなくなります。3. 1病棟あたりの特定入院料を2種類までに制限する1病棟で届け出られる特定入院料は、2種類までに制限されます。この制限は、患者割合などの要件が過度に複雑になることを防ぎます。背景には、病棟が1つの看護単位として機能すべきという考え方があります。従来は、1病棟で届け出られる特定入院料の種類数に明確な上限がありませんでした。種類が増えるほど、病床ごとに異なる患者割合を管理する必要が生じます。この管理は、病棟を1看護単位として運営するうえで過度な負担となっていました。改定後は、この種類数を2つまでとする規定が新設されます。規定は、特定入院料の施設基準の通則に置かれます。上限を設けることで、病棟ごとの管理が簡素になります。4. 経過措置を確認する今回の明確化には、2つの経過措置が設けられます。在宅復帰率と在宅復帰機能強化加算については、令和9年5月31日まで従前の例によることができます。特定入院料の種類数の制限については、当分の間、新基準に該当するものとみなされます。在宅復帰率の計算は、一定期間、従来のルールを使い続けられます。対象は、令和8年3月31日時点で急性期一般入院料1などの届出を行っている病棟です。これらの病棟は、令和9年5月31日まで従前の例によることができます。特定入院料の種類数の制限には、別の経過措置が適用されます。対象は、令和8年3月31日時点で特定入院料の届出を行っている病棟・病室です。これらは、当分の間、2種類までの基準に該当するものとみなされます。まとめ令和8年度改定は、患者割合の計算方法を3つの点で明確化しました。第一に、在宅復帰率の計算から、他の入院料や短期滞在手術等基本料を算定する患者を除外します。第二に、特定入院料の計算でも、同じ除外を通則として明文化します。第三に、1病棟の特定入院料を2種類までに制限します。これらの明確化は、現場の解釈のばらつきを解消し、病棟管理の事務負担を軽減します。経過措置を活用しながら、自院の届出状況を早めに確認しておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度改定 リハビリ実績指数の見直しを徹底解説【回復期リハ病棟】
回復期リハビリテーション病棟では、リハビリの成果を「リハビリテーション実績指数」という数値で評価しています。この実績指数は、機能改善が乏しいまま漫然とリハビリが続くことを防ぐ仕組みとして働いてきました。しかし、より質の高いアウトカム評価を進めるには、算出方法と除外対象患者の基準を見直す必要があります。本記事は、令和8年度診療報酬改定で実施されるこの見直しの内容を、回復期リハ病棟の実務担当者向けに解説します。今回の見直しは、「評価のきめ細かさ」「合格ラインの引き上げ」「除外対象の厳格化」「情報公開の強化」という4つの柱に整理できます。第1の柱では、歩行やトイレ動作が自立した患者に加点する仕組みを新設します。第2の柱では、実績指数の合格ラインを27から30に引き上げます。第3の柱では、算出から除外できる患者の要件と上限割合を厳しくし、除外割合を30%から20%に縮小します。第4の柱では、実績の公開方法に院内掲示とウェブサイト掲載を明確に位置づけます。第1の柱:評価のきめ細かさ ― 歩行・トイレ動作の自立を加点第1の柱は、算出方法を見直して評価のきめ細かさを高めるものです。実績指数は、FIM運動項目の得点の伸び(利得)を、入棟から退棟までの日数で調整して算出します。今回、この利得の計算に、歩行・車椅子とトイレ動作の自立を反映する加点ルールを加えます。ここでいうFIMとは、患者の日常生活動作の自立度を点数化する機能的自立度評価表のことです。このFIMの運動項目は、点数が高いほど自立に近いことを示します。なかでも6点以上は、介助なしで動作できる「自立」の領域を意味します。新ルールは、この自立への到達を実績指数に反映します。具体的には、「歩行・車椅子」と「トイレ動作」の得点が入棟時に5点以下、退棟時に6点以上へ上がった場合、その項目ごとに利得へ1点を加えます。この加点により、介助が必要な状態から自立した患者の改善を、これまで以上にていねいに評価できます。加点の効果は計算例で確認できます。退棟患者50人の運動項目利得の総和が1,400だった場合を考えます。このうち「歩行・車椅子」が自立に到達した患者が20人、「トイレ動作」が自立に到達した患者が30人いれば、分子は1,400+1×20+1×30=1,450に増えます。この結果、実績指数は現行の33.3から34.5へと上がります。第2の柱:合格ラインの引き上げ ― 実績指数27から30へ第2の柱は、実績指数の合格ラインの引き上げです。回復期リハ病棟では、実績指数が2回連続で基準値を下回ると、「効果に係る相当程度の実績が認められない場合」に該当します。今回、この基準値を27から30に引き上げます。基準値を下回り続けると、診療報酬の算定に大きな制約がかかります。該当した月以降、1日6単位(1単位は20分)を超える疾患別リハビリテーション料は、回復期リハビリテーション病棟入院料に包括されます。つまり、6単位を超える分を出来高で算定できなくなります。ただし、発症後60日以内の脳血管疾患等の患者へのリハビリは、この包括の対象から除かれます。復帰の道にも、この実績指数30以上が組み込まれます。包括の対象となった後でも、別の月に「対象患者数が10名未満」「1日あたり平均実施単位数が6単位未満」「実績指数が30以上」のいずれかを満たせば、再び6単位を超える分を出来高で算定できます。このように合格ラインが27から30へ上がることで、病棟にはより高い成果が求められます。第3の柱:除外対象の厳格化 ― 除外要件と割合の見直し第3の柱は、除外対象患者の厳格化です。実績指数は、改善が見込みにくい一部の患者を算出から除外できます。今回、この除外できる患者の要件と上限割合を、ともに厳しくします。第1に、年齢による除外をなくします。これまで除外できた「年齢が80歳以上のもの」という要件を削除します。第2に、運動機能が低い患者の除外に条件を付けます。「FIM運動項目の得点が20点以下のもの」は引き続き除外できますが、1日平均6単位を超えるリハビリを行った患者は算出対象に含めます。第3に、認知機能による除外の基準を引き下げます。「FIM認知項目の得点が24点以下のもの」という要件を、「14点以下のもの」へと厳しくします。第4に、除外できる割合の上限を縮小します。これらの要件見直しに合わせ、入棟患者数に対する除外割合の上限を、100分の30から100分の20へ引き下げます。第4の柱:情報公開の強化 ― ウェブサイト掲載の明確化第4の柱は、実績の情報公開の強化です。回復期リハ病棟は、退棟患者数や直近の実績指数を、少なくとも3か月ごとに公開する義務を負います。今回、この公開方法に院内掲示とウェブサイト掲載を明確に位置づけます。現行では「院内掲示する等の方法で公開」とされてきました。改定後は、院内掲示に加え、掲示事項をウェブサイトに掲載することが求められます。ただし、自らのホームページ等を持たない医療機関は、ウェブサイト掲載を要しません。まとめ:質の高いアウトカム評価への一歩令和8年度の今回の見直しは、回復期リハ病棟のアウトカム評価をより質の高いものへと進めます。算出方法では、歩行・トイレ動作の自立到達を加点します。合格ラインは、実績指数27から30へ引き上げられます。除外対象は、要件と割合の両面で厳格化されます。情報公開は、ウェブサイト掲載まで明確化されます。これらの見直しは、漫然としたリハビリを避け、患者の生活機能の回復という本来の成果を後押しするものといえます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度改定で医療安全対策加算が大幅引き上げ|85点から160点へ
令和8年度診療報酬改定では、医療安全対策加算の要件と評価が見直されました。医療安全対策加算は、患者へ安心・安全な医療を提供する体制を評価する診療報酬です。今回の見直しは、この安心・安全な医療の提供を更に推進する観点から行われます。そこで本記事は、改定で何がどう変わったのかを、初めて改定資料に触れる方にもわかるように解説します。今回の改定には、2つの変更点があります。第1に、医療安全対策加算1・2の点数が、いずれも約2倍に引き上げられました。第2に、医療安全対策地域連携加算1が、これまで対象外だった特定機能病院でも算定できるようになりました。なお、地域連携加算そのものの点数は、従来どおり据え置かれています。改定の背景:患者の安心・安全な医療の更なる推進今回の見直しは、患者への安心・安全な医療提供を更に推進する観点から行われます。これが、改定資料に示された基本的な考え方です。医療安全対策加算は、医療安全対策に取り組む体制を整えた医療機関を評価する仕組みです。この考え方に沿って、改定では加算の要件と評価がまとめて見直されました。見直しの内容は、2つの対応に分かれます。第1の対応は、医療安全対策加算の評価点数を引き上げることです。第2の対応は、医療安全対策地域連携加算1を特定機能病院でも算定できるようにすることです。以下では、この2つの変更点を順に説明します。変更点1:医療安全対策加算1・2の点数が約2倍に引き上げ第1の変更点は、医療安全対策加算1・2の点数の引き上げです。医療安全対策加算1は、改定前の85点から160点へと引き上げられました。医療安全対策加算2は、改定前の30点から70点へと引き上げられました。加算1はおよそ1.9倍、加算2はおよそ2.3倍の増点であり、いずれも従来の2倍前後の水準です。点数の引き上げは、加算1と加算2の双方で行われました。加算1の引き上げ幅は、85点から160点までの75点です。加算2の引き上げ幅は、30点から70点までの40点です。このように、2つの区分がそろって増点されました。変更点2:地域連携加算1が特定機能病院でも算定可能に第2の変更点は、医療安全対策地域連携加算1の算定対象の拡大です。地域連携加算は、医療安全に関する医療機関間の連携体制を評価する加算です。この加算1について、改定前は特定機能病院が算定対象から除かれていました。しかし今回の改定で、特定機能病院においても加算1を算定できるようになりました。算定対象の扱いは、加算1と加算2で異なります。加算1は、特定機能病院も含めて算定できるようになりました。一方、加算2は、引き続き特定機能病院を算定対象から除いています。なお、地域連携加算の点数自体は、加算1が50点、加算2が20点で、いずれも改定前から変わっていません。まとめ:点数引き上げと連携拡大で医療安全を後押し令和8年度改定における医療安全対策加算の見直しは、2つの変更点に集約されます。第1に、加算1・2の点数がそれぞれ約2倍に引き上げられました。第2に、地域連携加算1が特定機能病院でも算定できるようになりました。これらの見直しは、患者への安心・安全な医療提供を更に推進する観点から行われたものです。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度改定で認知症ケア加算が変わる|点数引き上げと身体的拘束減算の強化
認知症を抱えたまま身体疾患で入院する高齢患者が、年々増えている。こうした患者の安全を守るための身体的拘束をいかに減らすかが、近年の診療報酬改定で重要なテーマとなってきた。本稿では、令和8年度診療報酬改定における「認知症ケア加算の見直し」を、その背景とあわせて解説する。今回の見直しは、「ケアの評価を手厚くする」方向と「身体的拘束をより強く抑える」方向を組み合わせている。第一に、認知症ケア加算1〜3のすべての区分で、基本点数を引き上げた。第二に、身体的拘束を実施した日の減算を、所定点数の100分の40から100分の20へと強化した。これら2つの見直しは、組織で統一した取組を通じて身体的拘束の最小化を進める狙いを持つ。1. 前提:認知症ケア加算とは何か認知症ケア加算は、身体疾患で入院した認知症患者へのケアを評価する診療報酬である。対象は、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準ランクⅢ以上の患者(重度の意識障害がある者を除く)とされる。算定は1日につき行われ、入院後14日以内の期間と15日以上の期間で点数が分かれている。この加算は、ケアの体制に応じて加算1から加算3までの3段階に分かれている。加算1は、専任の医師・看護師・社会福祉士などからなる認知症ケアチームによる取組を評価する。加算2は、専任の医師または専門性の高い看護師による取組を評価する。加算3は、研修を受けた病棟看護師による取組を評価する。いずれの区分でも、身体的拘束を必要としない環境づくりや、やむを得ず実施する場合の早期解除が、算定の要件に組み込まれている。2. 改定その1:基本点数の引き上げ今回の見直しは、まず認知症ケア加算の基本点数を全区分で引き上げた。引き上げは加算1から加算3まで、また14日以内・15日以上のすべての区分に及ぶ。これは、認知症患者へのアセスメントやケアの充実そのものを、これまでより手厚く評価する措置である。具体的な点数の変化は、次のとおりです。認知症ケア加算1は、14日以内の期間が180点から186点へ、15日以上の期間が34点から39点へ上がります。認知症ケア加算2は、14日以内の期間が112点から115点へ、15日以上の期間が28点から31点へ上がります。認知症ケア加算3は、14日以内の期間が44点から47点へ、15日以上の期間が10点から13点へ上がります。この引き上げは、適切なケアを提供する医療機関を後押しする「飴」にあたる。点数が上がることで、認知症患者への丁寧なケアに取り組む経済的な裏付けが強まる。次に述べる減算の強化と組み合わせることで、改定の方向性がより明確になる。3. 改定その2:身体的拘束実施日の減算の強化基本点数の引き上げと対をなすのが、身体的拘束を実施した日の減算の強化である。改定後は、身体的拘束を実施した日の点数が、所定点数の100分の40から100分の20へと引き下げられる。つまり、拘束のない日に算定できる点数に対して、拘束を行った日に算定できる割合が半分(20%)にまで縮むことになる。この減算は、身体的拘束を抑える「鞭」にあたる。たとえば認知症ケア加算1(14日以内)の場合、拘束のない日は186点を算定できる。一方で拘束を行った日は、その20%にあたる約37点にとどまる。拘束する日としない日の差が大きくなるほど、拘束を避ける動機が強まる仕組みである。減算の強化は、今回が初めてではなく、段階的に進められてきた経緯がある。平成28年度に認知症ケア加算が新設された当初、拘束日の点数は100分の60であった。令和6年度改定でこれが100分の40に引き下げられ、今回さらに100分の20へと強化される。60、40、20という数字の推移は、身体的拘束の抑制を年々強める国の姿勢を示している。4. 改定の背景と狙いこの2方向の見直しは、データと議論の積み重ねを背景としている。令和6年度改定で減算が強化された後、認知症ケア加算を算定した日のうち身体的拘束を実施した日の割合は、減少に転じた。この動向を踏まえ、中央社会保険医療協議会の分科会では、評価をさらに厳格化することもあり得るのではないかとの意見が出された。今回の減算強化は、こうした議論を反映したものである。見直しのもう一つの狙いは、組織で統一した取組を促すことにある。身体的拘束を減らすには、現場の努力だけでなく、管理者が主体となった意識づくりが欠かせない。改定資料でも、組織で統一した取組により、適切なケアや支援を推進することが明記されている。点数の引き上げと減算の強化は、こうした組織的な取組を診療報酬の面から後押しする手段といえる。まとめ令和8年度改定における認知症ケア加算の見直しは、「ケアの評価充実」と「身体的拘束の抑制強化」という2つの方向を組み合わせたものである。第一に、加算1〜3の全区分で基本点数を引き上げ、丁寧なケアを後押しした。第二に、身体的拘束を実施した日の減算を100分の40から100分の20へ強化し、拘束を避ける動機を強めた。これらの見直しは、組織で統一した取組を通じて身体的拘束の最小化を進める、国の一貫した方針を映し出している。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度改定 身体的拘束最小化の3つの見直しを解説
令和6年度診療報酬改定では、身体的拘束の最小化に向けた取組が入院料の通則に規定されました。この規定により、医療機関は緊急やむを得ない場合を除いて身体的拘束を行わない方針と、組織的に拘束を最小化する体制の整備を求められています。しかし、その後の調査では、施設間で身体的拘束の実施状況に大きな差が残ることが明らかになりました。本記事は、この差を埋めるために行われる令和8年度改定の見直しを、3つのポイントに整理して解説します。令和8年度改定は、3つの見直しで身体的拘束の最小化を更に推進します。第1の見直しは、組織風土や実績の要件を加えた通則基準の充実です。第2の見直しは、体制の基準を満たす施設の減算を40点から20点へ軽減する見直しです。第3の見直しは、1日40点を算定できる「身体的拘束最小化推進体制加算」の新設です。1.通則基準の充実 ― 取組の「質」を3つの追加で高める通則基準の充実は、取組の質を高めるための3つの追加で構成されます。1つ目は組織風土に関する追加です。2つ目は研修内容に関する追加です。3つ目は実績要件の追加です。以下、それぞれを順に説明します。組織風土の醸成は、基準に新たに明記された考え方です。改定後の基準は、患者の尊厳の保持と療養環境の質の確保という観点を冒頭に掲げます。この観点のもとで、医療機関は緊急やむを得ない場合を除き身体的拘束を行わない方針を徹底します。さらに、こうした方針を組織全体に根づかせる組織風土の醸成にも努めることが求められます。研修内容の充実は、職員の意識を高めるための追加です。改定後の研修では、含むことが望ましい内容として2つの項目が新たに示されました。1つは身体的拘束の代替手段に関する内容です。もう1つは患者の尊厳の保持の重要性に関する内容です。あわせて、拘束を最小化する指針には、鎮静を目的とした薬物の適正使用などの内容を必ず盛り込むことになりました(従来は「盛り込むことが望ましい」)。実績要件の追加は、取組の成果を確認するための新しい基準です。この要件は、2つの選択肢のいずれかを満たすことを求めます。1つ目の選択肢は、身体的拘束の実施割合を医療機関内で1割5分(15%)以下に抑えることです。2つ目の選択肢は、拘束の原則廃止に向けて、3つの取組すべてを継続することです。3つの取組とは、3か月に1回以上の委員会の開催、拘束病棟での解除・代替策の検討(巡回または都度の多職種検討)、年2回以上の研修です。実績要件には、施設の準備期間を見込んだ経過措置が用意されています。令和8年3月31日時点で届出を行っている病棟は、令和9年5月31日まで猶予されます。この期間は、指針への記載と実績の要件を満たしているものとして扱われます。2.減算の見直し ― 体制を整えた施設は20点へ軽減減算の見直しは、体制づくりに努める施設の負担を和らげる仕組みです。従来は、身体的拘束最小化の基準を満たせない施設に対し、入院料から1日40点を一律に減算していました。改定後は、この40点減算を原則としつつ、体制の基準を満たす施設には20点減算という軽い扱いを設けます。20点減算の対象は、体制は整えたが実績の基準には届かない施設です。改定後の基準は、体制に関する基準と実績等に関する基準の2階建てに分かれます。このうち体制の基準だけを満たす施設は、40点ではなく20点の減算ですみます。一方、体制の基準すら満たせない施設は、これまでどおり40点の減算となります。3.新加算の創設 ― 質の高い取組を1日40点で評価身体的拘束最小化推進体制加算は、特に質の高い取組を評価する新しい加算です。この加算は、1日につき40点を算定できます。算定できる病棟は、療養病棟入院基本料をはじめとする6つの入院料・管理料を算定する病棟に限られます。算定には、体制・実績・情報公開という3種類の施設基準を満たす必要があります。対象となる病棟は、6つの入院料・管理料に対応します。具体的には、療養病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料、地域包括ケア病棟入院料、特殊疾患入院医療管理料、特殊疾患病棟入院料です。これら以外の入院料を算定する病棟は、本加算の対象に含まれません。施設基準は、3つの柱で組み立てられています。第1の柱は、拘束の最小化に資する十分な体制の整備です。第2の柱は、当該病棟における十分な実績の確保です。第3の柱は、取組内容の情報公開です。具体的には、病院全体としての取組・原則として拘束を行わない方針・拘束の実施状況の3点を、院内の見やすい場所に掲示し、あわせて原則としてウェブサイトにも掲載します。まとめ ― 患者の尊厳を守るケアを後押しする改定令和8年度改定は、3つの見直しで身体的拘束の最小化を更に推進します。通則の基準は、組織風土と実績の要件を加えて充実します。減算は、体制の基準を満たす施設で40点から20点へ軽減されます。そして、質の高い取組には「身体的拘束最小化推進体制加算」として1日40点が新たに評価されます。これらの見直しは、患者の尊厳を守るケアを後押しするものといえます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度診療報酬改定|腹膜透析の医療機関間連携をやさしく解説
腹膜透析を管理できる医療機関は、二次医療圏によって偏りがある。この偏りのため、基幹病院から遠い地域の患者は、質の高い腹膜透析管理を受けにくい。本稿は、この課題に対応する令和8年度診療報酬改定の項目「医療機関間連携による腹膜透析管理の推進」を解説する。今回の改定は、腹膜透析を導入する基幹病院と、患者の身近で管理を行うかかりつけ医との役割分担を、新たに評価する。具体的には、在宅自己腹膜灌流指導管理料を「管理料1」と「管理料2」に区分した。さらに、管理料2(1,500点)を新設し、基幹病院がかかりつけ医の求めに応じて指導管理を行った場合に算定できるようにした。ただし、管理料2の算定には、施設基準の届出と「一連の治療につき2回まで」という制限が設けられている。なぜ連携が必要か|腹膜透析管理の地域格差腹膜透析の管理には専門的な体制が必要であり、その体制を備えた医療機関は地域に偏在している。腹膜透析は、患者自身の腹膜を使って血液を浄化する在宅治療である。患者は、おなかに留置したカテーテルから透析液を出し入れする。この入れ替えを自宅で続けることで、透析が成立する。腹膜透析は、通院回数が少なく、生活の自由度が高いという利点を持つ。一方で、感染症や合併症を防ぐため、専門的な指導管理が欠かせない。こうした専門的な管理を担うのは、腹膜透析の導入から指導までを行う基幹病院が中心である。しかし、基幹病院は都市部に集中し、腹膜透析を管理できる医療機関が乏しい二次医療圏は多い。その結果、基幹病院から遠い地域の患者は、頻繁な通院が難しく、適切な管理を受けにくい。この医療アクセスの課題を解決する手段が、基幹病院とかかりつけ医の連携である。改定の具体的内容|管理料の区分と管理料2の新設今回の改定は、在宅自己腹膜灌流指導管理料を2つに区分し、連携を担う管理料2を新設した。現行の在宅自己腹膜灌流指導管理料は、4,000点の一本立てであった。改定後は、この管理料を「管理料1」と「管理料2」の2つに区分する。管理料1は、従来どおり4,000点であり、患者を継続的に管理するかかりつけ医が算定する。新設された管理料2は、1,500点であり、連携先の基幹病院が算定する。具体的には、管理料1を算定しているかかりつけ医の求めに応じて、基幹病院が指導管理を行った場合に算定できる。対象となるのは、頻回に指導管理を行う必要がある患者である。この仕組みにより、患者は身近なかかりつけ医に通いながら、必要なときに基幹病院の専門的な管理を受けられる。管理料2の算定要件|施設基準と算定回数の制限管理料2の算定には、施設基準の届出と算定回数の制限という2つの要件がある。1つ目の要件は、施設基準の届出である。管理料2を算定する医療機関は、「腹膜透析患者に対する診療を行うにつき必要な体制が整備されていること」という施設基準を満たさなければならない。そのうえで、地方厚生局長等に届け出る必要がある。2つ目の要件は、算定回数の制限である。管理料2は、一連の治療につき2回までしか算定できない。この制限により、連携は患者にとって必要な範囲に保たれる。補足|算定にあたっての留意点ここで、算定にあたって誤解しやすい3つの点を補足する。第一に、これらの管理料の算定対象は、在宅自己連続携行式腹膜灌流(CAPD)を行う患者である。CAPDは、透析液の出し入れを患者が一日数回くり返す腹膜透析の代表的な方法を指す。本稿では腹膜透析と総称してきたが、算定上の対象はこのCAPDを行う入院中以外の患者に限られる。第二に、管理料1には、現行から変わらない算定ルールが残っている。頻回に指導管理を行う場合、同一月内の2回目以降は1回2,000点を月2回まで算定できる。ただし、同一月内に人工腎臓(J038)または腹膜灌流の1(J042)を算定する場合、この2回目以降の費用は算定しない。第三に、「2回」という回数が、2つの異なる意味で登場する。管理料1の頻回時の算定は「同一月内に月2回まで」を指す。一方、新設の管理料2は「一連の治療につき2回まで」を指す。両者は対象も期間も異なるため、混同しないよう注意したい。まとめ今回の改定は、腹膜透析を導入する基幹病院とかかりつけ医の役割分担を、新たに評価する。在宅自己腹膜灌流指導管理料を管理料1と管理料2に区分し、基幹病院がかかりつけ医の求めに応じて指導管理を行う管理料2(1,500点)を新設した。この連携の仕組みは、施設基準の届出と一連の治療につき2回までの制限のもとで運用される。腹膜透析を管理できる医療機関が乏しい地域でも、患者は医療アクセスを確保しつつ、質の高い管理を受けられるようになる。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
経皮的シャント拡張術・血栓除去術の適正化|令和8年度改定で初回点数が2区分に
人工透析を続ける患者にとって、血液を体の外に出し入れする「シャント」は命綱です。このシャントは狭くなったり詰まったりを繰り返すため、その都度「経皮的シャント拡張術・血栓除去術」(K616-4)で治療されます。現行制度では、この初回治療の診療報酬が病態の重症度を問わず一律12,000点に設定されており、比較的軽い狭窄にも重い閉塞と同じ評価がされてきました。本稿は、令和8年度診療報酬改定でこの一律評価がどう見直されるのかを、改定前後の対比とともに整理することを目的とします。令和8年度改定では、初回治療の点数を重症度に応じて2区分に分け、軽症側の評価を引き下げます。具体的には、シャント閉塞または高度狭窄に該当する場合(区分イ)は12,000点を据え置きます。一方、それ以外の場合(区分ロ)は9,840点に引き下げます。さらに、高い区分イを算定する際には、超音波検査などの画像所見による医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載することが求められます。改定の背景:一律評価が見直される理由今回の改定は、治療効果が病態によって異なるという事実を診療報酬に反映させるものです。経皮的シャント拡張術・血栓除去術は、シャントが完全に詰まった「閉塞」や、強く狭くなった「高度狭窄」に対して大きな治療効果を発揮します。これに対し、まだ血流が比較的保たれている軽度の狭窄では、同じ治療を行っても得られる効果は相対的に小さくなります。それにもかかわらず、現行制度はどちらの病態にも同じ12,000点を割り当ててきました。この一律評価が、適正化(=メリハリのある評価への見直し)の対象となりました。重症度を問わない評価は、軽症例への過剰な実施を誘発しかねないという課題を抱えていたためです。そこで令和8年度改定では、重い病態とそれ以外の病態とで治療効果に差があるという考え方に基づき、初回治療の算定要件を見直すこととなりました。改定の中心:初回治療が2区分に分かれる改定の中心は、これまで一本だった初回治療の点数を、重症度に応じた2つの区分に分けることです。現行の「1 初回 12,000点」は、改定後に区分イと区分ロの2段階へと再編されます。区分イは重い病態を対象に12,000点を維持し、区分ロはそれ以外の病態を対象に9,840点へ引き下げられます。区分イは、重い病態に該当する場合を対象とし、点数は12,000点で据え置かれます。対象となるのは、透析シャント閉塞の場合か、または超音波検査でシャント血流量が400ml以下もしくは血管抵抗指数(RI)が0.6以上の場合です。これらは血流が大きく損なわれた状態であり、治療効果が高いと評価されるため、現行点数が維持されます。区分ロは、区分イに当てはまらないその他の場合を対象とし、点数は9,840点へ引き下げられます。9,840点は12,000点から2,160点低い水準であり、軽症例の評価を相対的に抑える設定です。この区分により、病態の軽い症例と重い症例とで支払われる診療報酬に明確な差が生まれます。算定の条件:高い区分には医学的根拠の記載が必要高い区分イを算定するには、その病態を裏づける医学的根拠を記載しなければなりません。区分イの対象は、前述のとおり透析シャント閉塞の場合か、または超音波検査でシャント血流量が400ml以下もしくはRIが0.6以上の場合です。これらいずれかの要件を満たす画像所見等の医学的根拠を、診療報酬明細書の摘要欄に記載することが算定の条件となります。なお、3月以内の再実施(「2」12,000点)の取扱いは、対象病態と摘要欄への記載要件を含め、実質的に現行どおりです。改定後の「2 1の実施後3月以内に実施する場合 12,000点」は、シャント閉塞または超音波検査の基準を満たす病態に限り、1回を限度として算定できます。今回新たに重症度の区分が設けられたのは、初回治療(「1」)です。初回治療を3月に1回に限り算定する点も、現行と変わりません。まとめ令和8年度改定では、経皮的シャント拡張術・血栓除去術の初回治療が重症度に応じて2区分に再編されます。シャント閉塞または高度狭窄に該当する場合(区分イ)は12,000点が据え置かれ、それ以外の場合(区分ロ)は9,840点へ引き下げられます。高い区分イを算定する際は、超音波検査などの画像所見による医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載しなければなりません。治療効果の違いを評価に反映させるこの見直しにより、シャント治療の診療報酬は重症度に応じたメリハリのある体系へと改められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
医療メディエーターとは|患者と医療者の対話を促す専門人材の役割
医療現場では、患者と医療者の間で認識の齟齬やコミュニケーション不全が生じます。こうした齟齬は医療の質と安全性を損ない、ときに医療事故や紛争へ発展します。そこで本記事は、患者と医療者の対話を促す専門人材「医療メディエーター」について、その定義、役割、倫理を解説します。医療メディエーターは、患者と医療者の対話を促し、両者の関係構築を支援する専門人材です。この人材は、双方の語りを偏りなく受け止め、自身の見解や評価を示しません。その関わりは、認知の齟齬を予防し、調整する点に価値があります。役割の要点は、直接対話の促進、判断・評価の不実施、関係構築の重視、分け隔てのないケアの4つです。医療メディエーターの定義と誕生の背景医療メディエーターは、患者と医療者の対話を仲介する専門人材であり、医療不信が深刻化した社会的背景のなかで生まれました。ここでは、その定義と誕生の経緯を順に確認します。医療メディエーターとは、患者と医療者双方の語りを偏りなく受け止め、対話の促進を通じて情報共有と認知齟齬の調整を支援する人材です。この人材は、自身の見解や評価、判断を示しません。その関わりは、医療の基盤をなす対話促進のはたらきとして、医療行為の一部を構成します。医療メディエーターが用いるメディエーションは、英米で広く普及した対話促進のモデルです。このモデルは、当事者間の対話を通じて認知の変容を促し、納得のいく合意と関係の再構築を支援します。調停とは異なり、メディエーターは調停案の提示や説得、評価を行いません。英米では、学校で子どもにも教えられるほど、日常的な問題克服のモデルとして根づいています。この専門人材は、1999年以降に深刻化した医療不信への対応から生まれました。従来の対立的な事故対応は、問題を解決するどころか、患者の怒りを増幅させていました。そこで2003年、医療機能評価機構の橋本理事が和田仁孝氏に事故後対応の人材育成を依頼します。依頼を受けた和田仁孝氏と中西淑美氏は、対話を軸とする育成プログラムを開発しました。開発されたプログラムは、2005年の育成開始から急速に広がりました。ニーズの増加を受けて、2008年には日本医療メディエーター協会が設立されます。現在では年間100回ほどの研修が開催され、当初の事故後対応から日常の患者対応まで応用範囲が広がっています。さらに、終末期医療の意思決定やインフォームド・コンセントなど、多様な場面でも活用されています。医療メディエーションを支える4つの本質医療メディエーションには、4つの本質があります。すなわち、医療行為の一部であること、主役は当事者であること、目標は関係構築であること、不偏性に立つことの4つです。第一の本質は、医療メディエーションが医療の基礎をなす対話と情報共有のモデルだという点です。このモデルは、単なる紛争解決の手段ではありません。医療そのものの質を高める要素として、医療行為の一部に位置づけられます。第二の本質は、医療メディエーションの主役が当事者である患者と医療者だという点です。主役である当事者に対し、メディエーターは尊重と傾聴の姿勢で対話を促すだけで、評価や判断はしません。この姿勢は、「その人がその人自身であることを支える」というケアの理念にもとづいています。答えは第三者ではなく、つねに当事者自身のなかにあるからです。第三の本質は、医療メディエーションの目標が解決ではなく関係構築だという点です。関係構築を目標とするメディエーターは、法的権利や賠償といった紛争解決には関与しません。メディエーターの役割は「つなぐこと」であって、「解決すること」ではないのです。深い情報共有によって関係が築かれていけば、問題は自然に克服されていきます。第四の本質は、医療メディエーターが構造的中立性ではなく信頼にもとづく不偏性に立つという点です。院内のメディエーターは病院職員であるため、中立性を標榜してはなりません。しかし、分け隔てのないケアの姿勢があれば、患者からも医療者からも信頼される存在になれます。傷ついたすべての人へ同じケア・マインドで接することが、この不偏性を支えます。医療メディエーターが守る4つの約束医療メディエーターには、4つの約束があります。すなわち、直接対話を促すこと、判断や評価をしないこと、関係構築を目的とすること、分け隔てなく心を聴くことの4つです。第一の約束は、伝言ではなく直接対話を促すことです。メディエーターは、患者と医療者が直接向き合う場を設定し、その対話を促進します。患者は医療者との直接の対話によってこそ納得でき、代弁では受け入れられないからです。間接的な伝言は、誤解や齟齬のリスクを何倍にも高め、最悪の場合は情報操作のリスクすら招きます。第二の約束は、判断・評価・意見を表明しないことです。メディエーターは、事故原因の説明や改善案の提示、賠償や法的評価をいっさい行いません。こうした説明は、医師や事務担当者、顧問弁護士が当事者として患者と向き合うべき事柄だからです。中身に踏み込んだ発言は、メディエーターの不偏性を損ない、その信頼と対話の場を崩してしまいます。第三の約束は、解決ではなく情報共有と関係構築を目的とすることです。問題を克服できるのは当事者だけであり、それはメディエーターが達成する目的ではありません。解決しようと考えると、つい意見や提案をしてしまい、かえって対話が止まってしまいます。メディエーターは黒子に徹し、関係の再構築だけを支援します。第四の約束は、分け隔てのないケアの姿勢で心を聴くことです。メディエーターは、傷ついた患者だけでなく、事故に関わった医療者にも同じケアの姿勢で接します。患者だけに共感すると、医療者は防御的になり、対話が閉じてしまうからです。メディエーターは「言葉でなく心を聴く」姿勢のなかで、対立の背景にある想いへの気づきを支えます。医療メディエーターの実際の役割と活動医療メディエーターの役割は、患者と医療者が直接向き合う対話の場をつくり、チームで支援することです。ここでは、その実務の流れと、活動の広がりを紹介します。実務は、事案の報告・要請を受けるところから始まります。メディエーターは、まず患者との1対1の対応を行い、続いて医療者への対応や症例検討を経て、対話の場を設定・実施します。この過程では、出迎えや記録、文書の扱いまで、細やかな配慮が求められます。対話の場でのメディエーターは、バレーボールのセッターにたとえられます。セッターであるメディエーターがトスを上げ、アタッカーである医療者と患者が向き合います。メディエーターは医療者に代わって対応するのではなく、あくまで対話を促し支える役割に徹します。この役割は、病院上層部の理解や、事故調査・真実開示との連携を前提とします。対話の後には、継続的なフォローアップが続きます。メディエーターは、翌日や週一回のフォローを通じて、向き合い続ける姿勢を示します。このフォローは、医療機関が真摯に向き合っていることを患者へ伝える機会になります。丁寧なフォローの積み重ねが、信頼関係の再構築を促します。こうした役割は、事故後の対応だけでなく、日常の患者対応にも応用できます。現場の小さなクレームへの対応や、職種間・スタッフ間の調整にも、メディエーションの技法は役立ちます。実際、ロンドンの病院では管理者全員が研修を受け、部署内の人間関係の調整に活用しています。医療メディエーションは、医療機関全体の対話文化を高め、コンフリクトの予防にも寄与します。医療メディエーターは「資格」ではない医療メディエーターは「資格」ではなく、だれもが学べる対話のモデルを実践する人材です。ここでは、認定の位置づけと、対象が限定される理由を説明します。日本医療メディエーター協会の認定は、研鑽の場の提供と質の保証を目的としています。メディエーションは、いつでもどこでも活用できる汎用的な考え方です。協会の認定は、医療機関のスタッフを対象に、専門知識の理解、専門技法の習得、倫理性の涵養を支える仕組みとして設けられています。院内メディエーターの認定が医療機関スタッフに限られるのは、弁護士法との関係によります。弁護士法は、弁護士以外の者が紛争解決などの法律業務に従事することを禁じています。そのため、院外の第三者が医療事故紛争に関わると、弁護士法に抵触するおそれがあります。一方、院内スタッフが患者と医療者の関係再構築を支援する場合は、示談交渉の一形態とみなされ、抵触の問題は生じません。患者や市民が医療をめぐって関わる活動は、こうした法律業務とはまったく異なります。協会は「患者・市民と創るメディエーション(PCM)」として、市民団体や患者団体と協働しています。この取組は、さまざまな場面でのメディエーションの応用可能性を広げています。診療報酬制度における位置づけと意義医療メディエーターの重要性は、診療報酬制度でも認められています。ここでは、2012年に新設された加算の内容と、その意義を確認します。2012年には、「患者サポート体制充実加算」が新設されました。この加算は、患者や家族からの相談に適切に応じる体制を評価するものです。医療機関は、専門部署を設け、研修を受けた職員を配置することで、この加算の対象になります。患者サポート体制充実加算は、医療メディエーションの考え方を制度面から支えています。医療機関は、この加算を通じて、患者と医療者の対話を促す体制を整えることが推奨されます。整備された体制は、医療の質向上、患者満足度の向上、医療安全の強化につながります。加算の背景には、医療機関全体の対話文化を高めるという目的があります。苦情対応の窓口を置くだけでなく、メディエーションの考え方を取り入れることで、患者・家族との信頼関係が築かれます。医療メディエーターは、こうした患者サポート体制の中核を担う専門人材です。医療メディエーター導入の効果と広がり医療メディエーターの導入は、医療現場に多面的な効果をもたらします。ここでは、3つの効果と、応用範囲の広がりを紹介します。第一の効果は、事故対応の専従者として初期対応を適切に行えることです。専従者が対応にあたることで、患者側の不安や怒りの増幅を防げます。これにより、医療者側の負担も軽くなります。第二の効果は、管理者が現場のトラブルを芽のうちに摘めることです。小さな不満や誤解は、大きな問題に発展する前に、対話で修復できます。早期の修復は、医療の質向上と医療者のストレス軽減につながります。第三の効果は、各スタッフへの浸透により日常の対話が向上することです。メディエーションを学んだスタッフは、患者対応だけでなく職種間の対話にも技法を活かせます。技法の浸透は、病院全体の対話文化を高め、働きやすい職場を実現します。これらの効果を生む応用範囲は、事故対応だけにとどまりません。終末期医療の意思決定、インフォームド・コンセント、救急医療での説明など、多様な場面で活用できます。さらに、日本モデルの導入は海外にも広がり、国際的な注目を集めています。まとめ医療メディエーターは、患者と医療者の対話を促し、関係調整を支援する専門人材です。その実践は、直接対話の促進、判断・評価の不実施、関係構築の重視、分け隔てのないケアという4つの原則に支えられています。これらの原則のもとで、医療メディエーターは事故後の対応から日常の患者対応まで幅広く活躍しています。重要なのは、医療メディエーターが「資格」ではなく、だれもが学べる対話のモデルを実践する人材だという点です。このモデルは、診療報酬の患者サポート体制充実加算としても評価され、医療機関の対話文化の向上に貢献しています。患者中心の医療を実現するために、医療メディエーターの役割は今後ますます重要になります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
人工腎臓の評価見直し|令和8年度診療報酬改定で新設「腎代替療法診療体制充実加算」を解説
慢性透析患者は全国で約34万人にのぼり、その平均年齢は70歳を超えて高齢化が進んでいます。この透析医療では、災害時の継続体制や腎代替療法の情報提供、シャントトラブルへの対応といった取組に、医療機関ごとのばらつきが課題となっていました。そこで令和8年度診療報酬改定では、血液透析患者がより安心・安全に医療を受けられる体制を確保するため、人工腎臓(J038)の評価を見直すことになりました。本記事では、この見直しの内容を改定案と現行の比較を交えて解説します。今回の見直しは、基本点数の引き下げと新加算の創設という2本立てで行われます。第一に、人工腎臓の基本点数を区分にかかわらず一律20点引き下げます。第二に、引き下げ分を補う形で「腎代替療法診療体制充実加算」(20点)を新設します。この加算は、災害対策・腎代替療法の情報提供・シャントトラブルの医療機関間連携という3つの要件を満たした医療機関で算定でき、要件の一部には届出のための経過措置が設けられています。見直しの背景:透析医療を取り巻く現状と課題今回の見直しは、透析医療の現状に残る体制面の課題を背景としています。慢性透析患者は約34万人で、新規導入患者も年間約3.9万人にのぼります。患者の高齢化が進むなか、災害時にも透析を止めない体制や、患者一人ひとりに適した治療法を選べる支援の重要性が増しています。この体制面の課題は、複数の調査結果にあらわれています。災害対策では、対応マニュアルを策定済みの医療機関が80.5%にのぼる一方、日本透析医会の災害時情報ネットワーク等への登録や自治体等との連携体制を確保している医療機関は76.1%にとどまります。腎代替療法の情報提供では、血液透析・腹膜透析・腎移植という3つの選択肢をすべての患者に提示している医療機関は51.2%にすぎません。シャントトラブルへの対応では、自院での治療や事前に連携した医療機関への紹介を行う施設が93.6%を占める一方、事前連携のないまま紹介する施設も5.9%残っています。これらのばらつきを是正することが、今回の評価見直しのねらいです。すなわち、安心・安全で質の高い透析体制を整えた医療機関を評価する仕組みを通じて、医療機関全体の取組の底上げをめざします。改定内容①:人工腎臓の基本点数を一律20点引き下げ第一の見直しは、人工腎臓の基本点数の一律20点引き下げです。この引き下げは、慢性維持透析1〜3の各区分と「その他の場合」のすべてに適用されます。引き下げ後も、後述の新加算を算定すれば実質的な点数水準は維持される設計になっています。引き下げの内容は、区分ごとに現行点数と改定案を並べると確認できます。最も算定の多い慢性維持透析1では、4時間未満が1,876点から1,856点へ、4時間以上5時間未満が2,036点から2,016点へ、5時間以上が2,171点から2,151点へと引き下げられます。慢性維持透析2では、4時間未満が1,836点から1,816点へ、4時間以上5時間未満が1,996点から1,976点へ、5時間以上が2,126点から2,106点へと引き下げられます。慢性維持透析3では、4時間未満が1,796点から1,776点へ、4時間以上5時間未満が1,951点から1,931点へ、5時間以上が2,081点から2,061点へと引き下げられます。「その他の場合」も1,580点から1,560点へと引き下げられます。改定内容②:腎代替療法診療体制充実加算(20点)の新設第二の見直しは、引き下げ分を補う「腎代替療法診療体制充実加算」(20点)の新設です。この加算は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長等に届け出た医療機関で算定できます。引き下げと同額の20点であるため、基準を満たした医療機関では従来どおりの点数水準を確保できます。裏を返せば、この加算は体制整備のインセンティブとして機能します。つまり、基準を満たさない医療機関は実質的に20点の引き下げとなり、基準を満たす医療機関だけが従来水準を維持できる仕組みです。こうして、安心・安全な透析体制を整えた医療機関に診療報酬が手厚く配分されます。加算の施設基準:満たすべき3つの要件腎代替療法診療体制充実加算には、満たすべき3つの要件があります。第一に災害対策、第二に腎代替療法の情報提供、第三にシャントトラブルの医療機関間連携です。これらに加え、緩和ケアの提供体制を整えることが望ましいとされています。第一の要件は、災害対策です。具体的には、ハザードマップで自院の災害発生時のリスクを把握したうえで災害対応マニュアルを作成していること、そして日本透析医会等による災害時の情報伝達訓練に年1回以上参加していることの両方を満たす必要があります。第二の要件は、腎代替療法の情報提供です。情報提供では、関係学会の資料に基づき、患者ごとの適応に応じて腎代替療法を説明していることが前提となります。この説明は導入期に限らず、患者の病状や求めに応じて繰り返し行うこととされています。そのうえで、在宅自己腹膜灌流指導管理料(C102)を過去1年間で24回以上算定していること(腹膜透析の実績)、または腎移植の相談に応じ移植手続を行った患者が前年に2人以上いること(腎移植の実績)のいずれかを満たす必要があります。第三の要件は、シャントトラブルの医療機関間連携です。透析シャントの閉塞等で経皮的シャント拡張術・血栓除去術などの治療を要する場合に、自院で治療する場合を除き、治療を行う他の医療機関とあらかじめ連携し、必要に応じて診療情報を提供する体制を整えていることが求められます。なお、緩和ケアの体制整備は努力義務にとどまります。すなわち、患者の症状に応じた治療やケアを提供できる体制を整えることが望ましいとされ、その際は「腎不全患者のための緩和ケアガイダンス」を参考にすることとされています。届出への対応:要件の一部に経過措置加算の要件のうち一部には、届出のための経過措置が設けられています。この経過措置は、加算の届出を行った医療機関を対象に、特定の要件を一定期間満たしているものとみなすものです。これにより、医療機関は段階的に体制を整えられます。経過措置の対象は、2つの要件です。第一に、災害時の情報伝達訓練への参加(災害対策のイ)は、令和9年5月31日までの間は基準に該当するものとみなされます。第二に、腹膜透析の実績と腎移植の実績(情報提供のイ・ウ)は、令和10年5月31日までの間は基準に該当するものとみなされます。まとめ:体制整備を評価する2本立ての見直し令和8年度改定における人工腎臓の評価見直しは、基本点数の引き下げと新加算の創設という2本立てで行われます。人工腎臓の基本点数は一律20点引き下げられ、その分を補う腎代替療法診療体制充実加算(20点)が新設されます。この加算は、災害対策・腎代替療法の情報提供・シャントトラブルの医療機関間連携という3つの要件を満たした医療機関で算定でき、要件の一部には令和9年・令和10年までの経過措置が設けられています。透析医療を提供する医療機関は、これらの要件と猶予期間を確認し、届出に向けた体制整備を計画的に進めることが求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】心不全再入院予防継続管理料を徹底解説|算定要件と点数
心不全は、退院後に再入院をくり返しやすい疾患です。再入院のたびに、患者の心機能は低下します。同時に、患者の生活の質も損なわれます。こうした再入院を防ぐには、退院後の継続した管理が欠かせません。しかし、退院後の継続管理を評価するしくみは、これまで十分ではありませんでした。そこで令和8年度診療報酬改定では、心不全再入院予防継続管理料が新設されました。本記事では、この新しい管理料のしくみと算定のポイントを解説します。心不全再入院予防継続管理料は、急性心不全の入院から退院後の外来までを一貫して評価する点数です。本管理料は、イ・ロ・ハの3区分で構成されます。イは、入院中に1回算定する区分です。ロとハは、退院後の外来で月1回算定する区分です。これらの算定には、多職種による介入が求められます。さらに、施設基準では、地域連携の体制が求められます。新設の背景:再入院予防を地域全体で推進する心不全再入院予防継続管理料は、心不全の再入院予防を推進する目的で新設されました。急性心不全で入院した患者は、退院後に再入院するリスクが高い患者です。このリスクを下げるには、早期からの介入と退院後の継続管理が必要です。そこで本管理料は、入院中の早期介入から退院後の地域連携までを、一連の取組として評価します。この取組の特徴は、多職種による介入にあります。心不全の管理には、薬物治療だけでなく、療養指導・食事指導・運動指導が欠かせません。これらの指導は、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士がそれぞれの専門性をいかして担います。本管理料は、こうした多職種の共同による介入を評価します。点数体系:入院中のイと退院後のロ・ハ本管理料は、入院中のイと退院後のロ・ハの3区分で構成されます。イは、入院中の早期介入を評価する区分です。ロとハは、退院後の外来での継続管理を評価する区分です。各区分の点数は、次のとおりです。イは、入院中に1回算定する区分で、1,000点です。ロは、退院後の外来で月1回算定する区分で、6回目までが700点、7回目以降が225点です。ハも、退院後の外来で月1回算定する区分で、6回目までが400点、7回目以降が225点です。イは、入院中に1回だけ算定する区分です。算定の対象は、急性心不全で入院した患者です。この患者に対し、再入院予防を目的とした計画的な評価と治療を行った場合に算定します。ロとハは、退院後の外来で算定する区分です。いずれも、入院中にイを算定した患者が対象です。つまり、入院中にイを算定し、退院後にロまたはハで継続管理する流れになります。算定は、初回算定日の属する月から1年を限度に、月1回行います。ロは、多職種の共同による評価と治療を行う場合の区分です。ハは、継続した評価と治療を行う場合の区分です。両者の点数差は、介入の手厚さの違いを反映します。対象患者と算定要件:ガイドラインに基づく評価が前提本管理料を算定するには、ガイドラインに基づく評価と治療が前提となります。算定の対象は、慢性心不全の急性増悪を含む急性心不全で入院した患者です。この患者に対し、関係学会の「心不全診療ガイドライン」に基づく評価を行います。具体的には、心機能の評価・原因精査・リスク評価を実施します。イの算定には、入院中の運動療法の実施も要件となります。心不全の患者には、薬物治療に加えて運動療法が有効です。そのため、イを算定する患者には、入院中に運動療法を実施します。あわせて、療養指導・食事指導・運動指導を、必要に応じて個別に実施します。なお、本管理料には、併算定できない点数があります。心不全を主病とする特定疾患療養管理料は、本管理料と併せて算定できません。地域包括診療料も、原則として併算定できません。ただし、慢性心不全以外の慢性疾患もあわせて持つ患者について算定する場合は、地域包括診療料を併算定できます。また、ロについては、外来栄養食事指導料や心大血管疾患リハビリテーション料などを、同一日に算定できません。施設基準:多職種の配置と地域連携の体制施設基準では、多職種の配置と地域連携の体制が求められます。まず、心不全の診療を行う十分な体制が必要です。この体制には、医師・看護師または保健師・薬剤師・管理栄養士を適切に配置します。これらの職種が共同して、心不全の管理にあたります。イを算定する病棟には、入院基本料の要件もあります。対象となるのは、一般病棟入院基本料の届出を行った病棟です。また、7対1または10対1入院基本料の病棟も対象です。ただし、後者は特定機能病院入院基本料または専門病院入院基本料に限られます。まとめ:入院から退院後まで一貫して支える新評価心不全再入院予防継続管理料は、再入院予防を推進する目的で新設されました。本管理料は、入院中のイと退院後のロ・ハの3区分で構成されます。算定には、ガイドラインに基づく評価と多職種の介入が要件となります。さらに、施設基準では、地域連携の体制が求められます。この新評価により、心不全の患者は、入院から退院後まで一貫した管理を受けられます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度診療報酬改定】カルタヘナ法に基づく医学管理の推進|個室管理を評価する新加算300点を解説
近年、遺伝子組換え生物等を含む薬剤の投与機会が増えています。ところが、こうした薬剤の取扱いに必要なカルタヘナ法上の管理は、従来の診療報酬で評価されてきませんでした。そこで令和8年度診療報酬改定では、カルタヘナ法を遵守した薬剤投与と医学管理を推進する評価を新設します。本改定の見直しは、大きく2つです。1つ目は、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」(1日につき300点)の新設です。2つ目は、特定薬剤治療管理料の対象拡大であり、自宅等での管理指導を新たに評価します。いずれの見直しも、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を対象とし、新設加算ではその対象に再生医療等製品を含みます。カルタヘナ法と対象薬剤を理解するはじめに、カルタヘナ法と今回の対象薬剤を確認します。カルタヘナ法は、遺伝子組換え生物等が環境へ広がることを防ぐ法律です。医療では、この遺伝子組換え生物等を含む薬剤が、管理の対象となります。カルタヘナ法は、遺伝子組換え生物等の使用を規制し、生物の多様性を守る法律です。正式名称は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」といいます。この法律は、遺伝子組換え生物等が自然環境へ広がり、在来の生態系に影響を及ぼす事態を防ぐことを目的とします。医療分野では、遺伝子組換え技術を用いた薬剤が、この規制の対象に含まれます。対象薬剤は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤であり、再生医療等製品を含みます。具体的には、ウイルスを用いたがん治療薬や、遺伝子を導入する治療製品などが該当します。これらの薬剤は、投与後に患者の体液や排泄物を通じて、遺伝子組換え生物等が外部へ排出される可能性があります。そのため、薬剤を投与する医療機関には、拡散を防ぐための管理が求められます。1つ目の見直し:個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」1つ目の見直しは、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」の新設です。この加算は、1日につき300点を算定できます。対象は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する目的で個室に入院する患者です。この加算は、遺伝子組換え生物等の拡散を防ぐ個室入院を評価します。対象薬剤を投与すると、遺伝子組換え生物等が患者から外部へ排出される可能性があります。個室での入院管理は、この排出物が他の患者や環境へ広がることを防ぎます。新設の加算は、こうした拡散防止の体制を、診療報酬の面から支えます。算定要件は、対象薬剤の投与を目的とした個室入院です。具体的には、本加算を算定できる入院基本料または特定入院料を現に算定している患者が、算定の前提となります。この患者を、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する目的で個室に入院させた場合に、所定点数へ加算します。なお、対象薬剤には再生医療等製品も含まれます。2つ目の見直し:特定薬剤治療管理料の対象拡大2つ目の見直しは、特定薬剤治療管理料の対象拡大です。改定後は、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与する患者への、自宅等での管理指導が評価対象に加わります。算定は、月1回に限られます。今回拡大するのは、特定薬剤治療管理料のうち「注11 ロ」の規定です。この規定は現行で、サリドマイド及びその誘導体を投与している患者を対象としています。具体的には、これらの薬剤を投与している患者について、服薬の安全管理の遵守状況を確認し、その結果を所定の機関に報告するなどの管理を評価します。この確認により投与の妥当性を見極め、必要な指導を行った場合に、月1回算定できます。改定後は、この注11 ロの対象に、カルタヘナ法に基づく管理が必要な薬剤を投与している患者が加わります。これらの患者は、退院後も自宅等で薬剤に由来する遺伝子組換え生物等を排出する可能性があります。そこで、自宅等における管理に必要な指導を行った場合に、月1回に限り所定点数を算定できるようにします。この拡大により、入院中だけでなく退院後の管理も、診療報酬で評価されます。まとめ令和8年度診療報酬改定では、カルタヘナ法に基づく医学管理を推進するため、2つの見直しを行います。1つ目は、入院中の個室管理を評価する「特定薬剤治療環境特別加算」(1日につき300点)の新設です。2つ目は、特定薬剤治療管理料の対象拡大であり、自宅等での管理指導を新たに評価します。これらの見直しにより、遺伝子組換え生物等を含む薬剤の安全な投与と管理が、診療報酬の面から支えられます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
検体検査管理加算の見直し|令和8年度改定でパニック値対応が要件に
令和8年度診療報酬改定では、検体検査管理加算の施設基準が見直されます。検体検査管理加算とは、院内で実施する検体検査の精度を組織的に管理する医療機関を評価する加算です。これまでの基準には、検査結果が生命に関わる異常値を示した際の対応について、明確な定めがありませんでした。今回の改定は、この異常値への対応体制を施設基準に位置づけ、患者への安心・安全な医療の提供を更に推進することを目的としています。今回の見直しでは、検体検査管理加算(Ⅱ)、(Ⅲ)及び(Ⅳ)に、パニック値への対応体制を整えることが望ましいという要件が追加されます。パニック値とは、生命が危ぶまれるような状態を示唆する検査の異常値です。医療機関には第一に、グルコース、カリウム及び血小板についてパニック値の閾値を設定することが求められます。第二に、パニック値が出た際に速やかに担当医師へ連絡することが求められます。第三に、検査結果報告書にパニック値であることがわかる表示を行うことが求められます。見直しの背景と基本的な考え方今回の見直しは、医療安全対策の推進という改定方針に沿うものです。令和8年度改定では「患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価」が重点項目に掲げられました。検体検査管理加算の見直しは、この重点項目を構成する個別改定項目の一つに位置づけられます。検体検査管理加算は、院内検査の品質を組織的に管理する体制を評価する加算です。この加算は管理体制の水準に応じて(Ⅰ)から(Ⅳ)まで段階的に区分されています。これらの区分のうち、より高い管理水準を評価する(Ⅱ)、(Ⅲ)及び(Ⅳ)が、今回の見直しの対象です。見直しの対象となった3区分では、検査結果が異常値を示した際の対応が課題でした。検査値の中には、放置すれば患者の生命を脅かすパニック値が含まれます。このパニック値への対応は、これまで各医療機関の運用に委ねられ、施設基準には明示されていませんでした。そこで今回の改定は、パニック値への対応体制を施設基準に追加し、安心・安全な医療の提供を更に推進することとしました。パニック値の閾値設定(要件ア)第一の要件は、パニック値の閾値を設定することです。閾値とは、検査値が異常値かどうかを判定する境界の数値を指します。医療機関は、院内で実施する検体検査について、この閾値をあらかじめ定めておくことが望ましいとされます。閾値の設定が望ましい検査項目は、少なくともグルコース、カリウム及び血小板の3項目です。グルコースは血糖値であり、極端な高値や低値が意識障害を招きます。カリウムは電解質であり、異常値が重い不整脈の原因となります。血小板は止血に関わる成分であり、著しい減少が出血の危険を高めます。これら3項目は、いずれも異常値が生命に直結するため、優先して閾値を設定する対象とされました。パニック値が出た際の対応体制(要件イ・ウ)第二と第三の要件は、パニック値が出た際の連絡と表示の体制です。閾値を設定するだけでは、異常値を見逃すおそれが残ります。そこで改定案は、パニック値を検出した後の具体的な対応も体制として整えることを望ましいとしました。連絡の要件では、パニック値が出た際に速やかに担当医師へ伝えることが求められます。医師への伝達は、看護師等を経由して連絡しても差し支えありません。また、連絡を受けた医師は、パニック値に対して行った対応を遅滞なく診療録に記載するよう努めることとされています。表示の要件では、検査結果報告書にパニック値であることがわかる表示を行うことが求められます。報告書の中で異常値が他の数値に埋もれると、対応が遅れるおそれがあります。そのため、結果がパニック値であると一目で判別できる表示を行うよう努めることとされました。加算(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)への反映今回追加された要件は、3区分すべてに連動して反映されます。新しい要件は、まず検体検査管理加算(Ⅳ)の施設基準に項目(7)として新設されます。続いて、上位区分の(Ⅱ)と(Ⅲ)が(Ⅳ)の基準を引用する形で、この新要件を取り込みます。具体的には、(Ⅱ)と(Ⅲ)が引用する(Ⅳ)の基準の範囲が広がります。現行では、(Ⅱ)は(Ⅳ)の(3)から(6)までを、(Ⅲ)は(Ⅳ)の(2)から(6)までを満たすこととされていました。改定案では、(Ⅱ)は(Ⅳ)の(3)から(7)までを、(Ⅲ)は(Ⅳ)の(2)から(7)までを満たすこととされます。この引用範囲の拡大により、新設された(7)が(Ⅱ)と(Ⅲ)にも適用されます。なお、これらの要件はいずれも「望ましい」と位置づけられている点に留意が必要です。望ましいとは、必須ではないものの実施が推奨される努力義務的な扱いを指します。したがって、各医療機関は自院の体制を見直し、パニック値への対応を整えていくことが期待されます。まとめ令和8年度改定では、医療安全対策の推進を目的として、検体検査管理加算の施設基準が見直されます。見直しの対象は、検体検査管理加算(Ⅱ)、(Ⅲ)及び(Ⅳ)の3区分です。これらの区分には、生命が危ぶまれる異常値であるパニック値への対応体制を整えることが望ましいという要件が追加されます。具体的には、グルコース・カリウム・血小板の閾値設定、パニック値検出時の医師への速やかな連絡と診療録への記載、検査結果報告書での明示の3点が求められます。各医療機関は、これらの要件に沿って院内の検査体制を点検し、より安心・安全な医療の提供につなげることが期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
近視進行抑制薬の検査を新たに評価|令和8年度改定で年2回・2種類までの算定要件を新設
近視の進行抑制を効能・効果とする医薬品が、令和6年12月に薬事承認されました。この医薬品の治療では、関係学会の指針により、治療開始時と治療中に屈折検査などの検査が推奨されています。しかし、近視進行抑制薬の処方に係る検査については、診療報酬上の算定の取り扱いが定められていませんでした。本記事は、令和8年度診療報酬改定で新設された眼科学的検査の算定要件を整理します。令和8年度改定は、近視進行抑制薬を投与している患者の眼科学的検査に、新たな算定要件を設けました。対象は、近視の進行抑制を目的として診療を行い、近視進行抑制薬を投与している患者です。この患者への眼科学的検査は、年2回の受診に限り算定します。さらに、1回の受診で複数の検査を行った場合は、2種類を限度として算定します。改定の背景|近視進行抑制薬の承認と検査の必要性今回の改定は、近視進行抑制薬の薬事承認を契機としています。承認されたのは、近視の進行抑制を効能・効果とする医薬品(一般名:アトロピン硫酸塩水和物、販売名:リジュセアミニ点眼液0.025%)です。承認日は、令和6年12月27日でした。この医薬品は、1日1回就寝前に1滴を点眼する低濃度アトロピン点眼薬であり、主に小児の近視治療に用いられます。この医薬品は薬価収載されておらず、選定療養への追加が提案されました。選定療養とは、保険外の医薬品や治療を、保険診療と併用できる仕組みです。この仕組みが認められれば、患者は保険診療を受けながら、自己負担で近視進行抑制薬による治療を併せて受けられます。令和8年度改定に向けた提案・意見募集では、この医薬品を選定療養に追加する提案が寄せられました。この治療では、定期的な検査が欠かせません。関係学会の治療指針は、治療開始時と治療中に屈折検査等を行うよう推奨しています。具体的には、治療開始時に近視の有無を確認し、治療中は3〜6か月ごとに近視の進行状況を確認します。こうした検査の代表例が、屈折検査(D261、69点)と矯正視力検査(D263、69点)です。これらの検査自体は従来から算定できましたが、近視進行抑制薬の処方に係る検査としての取り扱いは定められていませんでした。改定の内容|眼科学的検査の新たな算定要件改定後は、眼科学的検査に「対象」「回数」「種類」の3つの要件が加わります。これらの要件は、近視進行抑制薬を投与している患者への検査を、適切に評価するためのものです。以下、3つの要件を順に説明します。第1の要件は、算定の対象です。対象は、近視の進行抑制を目的として診療を行い、当該効能・効果を有する医薬品を投与している患者です。つまり、近視進行抑制薬による治療を受けている患者が対象となります。第2の要件は、算定の回数です。この患者への眼科学的検査は、年2回の受診に限り算定します。年2回という上限は、治療中の定期観察にあわせた頻度です。第3の要件は、算定する検査の種類です。1回の受診で複数の検査を行った場合は、2種類を限度として算定します。3種類以上の検査を行っても、算定できるのは2種類までとなります。現行との違い|新設される検査の取り扱いこの算定要件は、これまで規定のなかった検査の取り扱いを新たに設けるものです。現行の眼科学的検査の通則には、近視進行抑制薬に関する規定がありませんでした。改定後は、通則に新たな項目が加わり、対象・回数・種類の取り扱いが明確になります。実務では、近視進行抑制薬を投与している患者かどうかの確認が出発点になります。対象患者であれば、眼科学的検査の算定は年2回までです。同じ受診日に複数の検査を行った場合は、算定する検査を2種類までに整理します。これらの点に注意することで、新たな算定要件に沿った適切な請求が可能になります。まとめ|年2回・2種類までの新ルールを押さえる令和8年度診療報酬改定は、近視進行抑制薬を投与している患者の眼科学的検査を新たに評価しました。対象は、近視進行抑制薬による治療を受けている患者です。この患者への眼科学的検査は、年2回の受診に限り算定します。また、1回の受診で複数の検査を行った場合は、2種類を限度として算定します。承認された近視進行抑制薬の背景とあわせて、この「年2回・2種類まで」のルールを押さえておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】骨塩定量検査の算定回数が「4月に1回」から「1年に1回」へ
骨塩定量検査は、骨粗鬆症の診断と経過観察に用いる検査です。現行では、医療機関はこの検査を4月に1回算定できます。しかし、この算定頻度は、関係学会が示す治療管理での位置付けと一致していません。本稿は、令和8年度診療報酬改定で見直される骨塩定量検査の算定回数を、現行と比較して解説します。今回の改定は、骨塩定量検査の算定回数を見直し、頻回な検査を適正化します。見直しの背景には、学会ガイドラインにおける骨塩定量検査の位置付けがあります。原則の算定頻度は、4月に1回から1年に1回に変わります。ただし、治療開始1年以内や骨量が急激に変動する患者など、6つのケースでは、引き続き4月に1回算定できます。改定の背景:学会ガイドラインを踏まえた頻度の見直し今回の見直しは、関係学会が示す骨粗鬆症の治療管理での骨塩定量検査の位置付けを踏まえています。現行の算定要件は、検査の種類を問わず一律に4月に1回を認めています。一方、関係学会は、骨粗鬆症の治療管理のなかで骨塩定量検査の位置付けを整理しています。今回の改定は、この学会の位置付けを踏まえ、一律のルールを見直すものです。この見直しによって、骨量が安定している患者の算定頻度が、学会の位置付けに沿った形に改められます。これにより、診療報酬の算定ルールが、骨粗鬆症診療の実態に近づきます。改定内容:原則の算定頻度を「4月に1回」から「1年に1回」へ改定後は、骨塩定量検査(D217)の原則の算定頻度を、4月に1回から1年に1回に変更します。現行の算定要件は、検査の種類にかかわらず、患者1人につき4月に1回を上限としています。改定後の算定要件は、この上限を患者1人につき1年に1回に引き下げます。つまり、骨量が安定している患者では、年に1回の測定が標準になります。ただし、治療開始後の早い時期は、例外として4月に1回を維持します。改定案では、骨粗鬆症の治療を開始した日から1年以内の場合に、患者1人につき4月に1回算定できると定めています。治療開始直後は骨量の変化を細かく確認する必要があるためです。現行と改定案の違いは、次の3点に整理できます。第1に、原則の算定頻度は、現行の4月に1回から、改定案では1年に1回に変わります。第2に、治療開始1年以内の取り扱いは、現行では区別なく4月に1回でしたが、改定案でも引き続き4月に1回となります。第3に、例外の取り扱いは、現行では規定がありませんでしたが、改定案では6つのケースに限って4月に1回を認めます。例外:引き続き「4月に1回」算定できる6つのケース治療開始1年以内や骨量が急激に変動する患者など、特定の6つのケースでは、例外として、引き続き4月に1回算定できます。改定案は、急激な骨減少または骨増加をきたす病態や薬剤投与時を、例外として位置付けています。これらの患者は、骨量の変化を短い間隔で確認する必要があるためです。具体的には、以下のアからカのいずれかに該当する場合に、4月に1回算定できます。* ア 骨粗鬆症の治療を開始した日から1年以内の場合* イ 新たに骨折した場合* ウ 関係学会のガイドラインで示されている骨折危険因子が新規に増えた場合* エ ビスホスホネート薬治療の中断を検討する場合* オ グルココルチコイド、アロマターゼ阻害薬、抗アンドロゲン薬、骨形成促進薬など、骨減少または骨増加をきたす薬剤を投与する場合* カ 吸収不良、全身性炎症性疾患、長期不動、人工閉経など、骨減少または骨増加をきたす疾患などを有する場合これらに該当しない患者は、原則どおり1年に1回の算定となります。したがって、医療機関は、患者がアからカのいずれかに該当するかを確認したうえで、算定頻度を判断します。まとめ:原則は「年1回」、骨量が変動する例外は「4月1回」今回の改定は、骨塩定量検査の算定回数を見直し、頻回な検査を適正化します。見直しの背景には、学会ガイドラインにおける骨塩定量検査の位置付けがあります。原則の算定頻度は、4月に1回から1年に1回に変わります。ただし、治療開始1年以内や骨量が急激に変動する患者など、6つのケースでは、引き続き4月に1回算定できます。医療機関は、患者が例外に該当するかを確認したうえで、適切な算定頻度を選択することが求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度診療報酬改定|質の高い臨床検査の評価と検査料新設をわかりやすく解説
令和8年度診療報酬改定では、質の高い臨床検査を適切に評価する見直しが行われます。新規に保険適用された検査の一部は、専用の点数を持たず、既存の検査の点数を借りて算定されてきました。本記事では、この「準用点数」の課題を解消する検査料の新設について、背景から具体例まで解説します。今回の見直しは、E3区分で保険適用された新規の検査に、専用の検査料を新設するものです。対象となるのは、現在「準用点数」で算定されている新規臨床検査です。新設される検査料は、E3区分で保険適用された新規体外診断用医薬品等を対象とします。具体例として、感染症免疫学的検査のアスペルギルスIgG抗体に390点が新設されます。準用点数とは何か——新規検査が抱えてきた課題今回の見直しは、新規検査が「準用点数」で評価されてきた課題に対応します。準用点数とは、新しい検査に専用の点数がないとき、既存の似た検査の点数を借りて算定する仕組みです。新しい検査が保険適用されると、まずはこの準用点数で算定が始まります。準用点数は、新規検査をすばやく保険適用するうえで欠かせない仕組みです。専用の点数を一から設定するには、検査の手間やコストを丁寧に評価する時間が必要になります。そこで、評価が整うまでの間は、性質の近い既存検査の点数を準用して算定します。この仕組みにより、患者は新しい検査を早期に保険診療で受けられます。ただし準用点数には、検査の価値を正確に反映しにくいという課題があります。準用元の検査と新規検査では、手間やコストが必ずしも一致しません。そのため、準用点数のままでは、新規検査の実際の負担と点数がずれる場合があります。このずれを解消するには、新規検査に専用の検査料を設定する必要があります。E3区分の新規検査に検査料を新設する今回の改定では、E3区分で保険適用された新規体外診断用医薬品等に、専用の検査料を新設します。E3区分とは、既存の検査と測定する項目が異なる、新しい検査を指す分類です。測定項目そのものが新しいため、E3区分の検査には準用できる既存検査が見つかりにくいという特徴があります。E3区分の検査は、これまで準用点数で算定されてきました。測定項目が新しくても、保険適用の段階では暫定的に近い検査の点数を準用します。この暫定的な扱いが続くと、新規検査の価値が点数に反映されないまま固定化してしまいます。そこで改定では、E3区分の検査を準用点数から専用の検査料へと切り替えます。専用の検査料は、その検査の手間やコストに見合った水準で新設されます。この見直しにより、質の高い臨床検査が、その価値に応じて適切に評価されるようになります。具体例:アスペルギルスIgG抗体に390点検査料新設の具体例が、感染症免疫学的検査のアスペルギルスIgG抗体です。アスペルギルスIgG抗体は、真菌の一種であるアスペルギルスへの体の反応を調べる検査です。この検査は、慢性の肺アスペルギルス症などの診断に役立ちます。アスペルギルスIgG抗体は、これまで準用点数で算定されてきました。測定項目が新しいE3区分の検査であるため、専用の点数が設定されていませんでした。この準用の状態を解消するのが、今回の検査料新設です。新設される検査料は、アスペルギルスIgG抗体に対して390点です。診療報酬は1点を10円として計算するため、検査料の総額は3,900円となります。なお患者が窓口で支払うのは、このうち自己負担割合(1~3割)分です。この専用点数の新設により、アスペルギルスIgG抗体は準用ではなく、検査そのものの価値に応じて評価されます。まとめ:質の高い臨床検査を、価値に応じて評価する令和8年度診療報酬改定は、質の高い臨床検査を適切に評価するため、専用の検査料を新設します。対象は、現在準用点数で算定されているE3区分の新規体外診断用医薬品等です。具体例として、感染症免疫学的検査のアスペルギルスIgG抗体に390点が設定されます。この見直しにより、新規検査は準用点数の課題から解放され、その価値に応じて評価されるようになります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度診療報酬改定】迅速フィブリノゲン測定加算150点を徹底解説
フィブリノゲン製剤は、出血を止める血液凝固に欠かせないたんぱく質「フィブリノゲン」を補い、大量出血時の止血を助ける重要な製剤です。この製剤を適正に使うには、投与の前に患者のフィブリノゲン値を迅速に測定する必要があります。しかし従来は、その迅速な測定を評価する仕組みがありませんでした。本稿では、迅速な測定を後押しするために令和8年度診療報酬改定で新設された「迅速フィブリノゲン測定加算」を解説します。令和8年度改定では、迅速フィブリノゲン測定加算として150点が新設されました。この加算の対象は、後天性低フィブリノゲン血症の患者です。測定の目的は、フィブリノゲン製剤を投与すべきかどうかの判断です。そして算定には、手術室等の場所で迅速に測定することが求められます。なぜ迅速フィブリノゲン測定加算が新設されたのか迅速フィブリノゲン測定加算は、フィブリノゲン製剤の適正使用を支えるために新設されました。適正使用とは、必要な患者に、必要なタイミングで、過不足なく製剤を使うことです。この適正使用を実現するうえで鍵となるのが、フィブリノゲン値の迅速な測定です。フィブリノゲン製剤を投与すべきかどうかは、患者のフィブリノゲン値を踏まえて判断します。一般にフィブリノゲン値が大きく下がっていれば、製剤の投与が検討されます。逆に値が十分であれば、投与は要らないと考えられます。いずれにせよフィブリノゲン値の把握が、投与判断の出発点になります。その値を把握するための測定では、結果が出るまでに時間を要する場合があると考えられます。一般に検査は、採取した検体を検査室へ送り、そこで分析する流れになるためです。大量出血が進む手術室では、こうした待ち時間が課題になりうると考えられます。そこで令和8年度改定では、手術室等での迅速な測定を新たに評価することになりました。手術室等でその場で測定すれば、待ち時間を抑えられると考えられます。この迅速な測定を評価することで、フィブリノゲン製剤の適正使用を後押しするのが、今回の加算のねらいです。迅速フィブリノゲン測定加算の概要迅速フィブリノゲン測定加算は、既存の出血・凝固検査に上乗せして算定します。上乗せの対象は、「フィブリノゲン半定量」と「フィブリノゲン定量」という2つの検査です。いずれもフィブリノゲンの量を調べる検査で、半定量はおおよその量を、定量は正確な量を測定します。この2つの検査を迅速に行った場合に、所定点数へ150点を加算します。加算とは、もともとの検査の点数(所定点数)に上乗せする点数のことです。診療報酬は1点を10円として計算するため、150点は1,500円に相当します。なお現行では、この加算は設けられていません。今回の改定で初めて新設される項目です。算定できる3つの要件迅速フィブリノゲン測定加算の算定には、3つの要件をすべて満たす必要があります。3つの要件とは、対象患者、測定目的、実施場所です。以下、順に説明します。第1の要件は、対象患者です。対象は、後天性低フィブリノゲン血症の患者に限られます。後天性低フィブリノゲン血症とは、大量出血などによって後天的にフィブリノゲンが不足した状態を指します。第2の要件は、測定目的です。測定は、フィブリノゲン製剤の適応の可否を判断する目的で行う必要があります。適応の可否とは、その患者に製剤を投与してよいかどうかの判断です。第3の要件は、実施場所です。測定は、手術室等の場所で実施しなければなりません。手術室等でその場で測定することが、「迅速」な測定の条件となります。まとめ令和8年度診療報酬改定では、迅速フィブリノゲン測定加算150点が新設されました。この加算は、フィブリノゲン製剤の適正使用を支えることをねらいとしています。算定するには、後天性低フィブリノゲン血症の患者に対し、製剤の適応の可否を判断する目的で、手術室等の場所で測定する、という3つの要件を満たす必要があります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度診療報酬改定|遺伝学的検査の対象疾患拡大をわかりやすく解説
令和8年度診療報酬改定で、遺伝学的検査の対象疾患が拡大されました。背景には、国が指定する難病(指定難病)が新たに追加され、診断に遺伝学的検査が欠かせない疾患が増えている事情があります。ところが現行の診療報酬では、こうした新しい疾患の多くが検査の算定対象から漏れていました。そこで本稿は、今回の改定で何がどう変わったのかを、検査区分ごとに整理して解説します。今回の改定の柱は、遺伝学的検査の対象疾患の拡大です。拡大の背景には、診断に遺伝学的検査が必須となる指定難病の追加があります。この追加を受けて、検査区分のエと区分オを中心に、20を超える疾患が新たに対象へ加わりました。あわせて、一部の疾患では名称の変更や区分の整理も行われています。改定の背景:指定難病の追加が出発点今回の改定は、指定難病の追加という制度の動きを受けて行われました。指定難病とは、難病のうち、患者数や診断基準などの条件を満たし、国が医療費助成の対象として定めた疾患です。この指定難病は近年も追加が続いています。追加された疾患のなかには、確定診断に遺伝学的検査が必須となるものが含まれます。しかし、こうした新しい疾患は現行の算定対象から漏れていました。遺伝学的検査とは、遺伝子の変化を調べ、遺伝性の病気を診断するための検査です。この検査は、算定できる疾患があらかじめリストで定められています。リストにない疾患は、検査を行っても診療報酬を算定できません。その結果、診断に検査が必須でありながら算定できない、という不整合が生じていました。そこで今回の改定は、この不整合を解消しました。具体的には、診断に遺伝学的検査が必須とされる指定難病を、対象疾患のリストへ追加しています。難病患者が必要な検査を確実に受けられる体制を整えることが、改定のねらいです。何が変わったか:検査区分エ・オを中心とした対象拡大今回の改定は、検査区分のエと区分オを中心に、対象疾患を大きく追加しました。遺伝学的検査のリストは、検査の手法や実施体制に応じて区分アから区分オまでに分かれています。区分アは、PCR法やDNAシーケンス法などの基本的な手法で算定できる疾患です。区分エは、施設基準を満たして届け出た保険医療機関で算定できる疾患です。区分オは、臨床症状や他の検査では診断がつかない場合に、同じく届出医療機関で算定できる疾患です。今回の追加は、専門性の高い区分エと区分オに集中しています。区分エでは、より多くの遺伝性疾患が新たに対象へ加わりました。たとえば、レット症候群、ロウ症候群、三好型ミオパチー、肺胞低換気症候群、脳腱黄色腫症などが追加されています。また、先天性魚鱗癬、眼皮膚白皮症、シャルコー・マリー・トゥース病なども対象に含まれました。これらは、施設基準を届け出た医療機関での検査が想定される疾患群です。区分オでも、診断が難しい疾患が幅広く追加されました。たとえば、無虹彩症、レーベル遺伝性視神経症、進行性骨化性線維異形成症などが新たに対象となっています。また、ウェルナー症候群、コケイン症候群、ダイアモンド・ブラックファン貧血なども加わりました。これらは、臨床症状だけでは診断がつかない場合に検査が想定される疾患群です。名称の変更と区分の整理:あわせて見直された点今回の改定は、対象の追加だけでなく、疾患名の変更と区分の整理もあわせて行いました。これは、医学的な疾患概念の整理や、新しい病名への対応を反映したものです。実務では、見慣れた病名が置き換わっている点に注意が必要です。疾患名の変更は、おもに3つの疾患で行われました。区分アでは、家族性アミロイドーシスが全身性アミロイドーシスへ変わりました。区分エでは、ペリー症候群がペリー病へ変わりました。区分オでは、禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症が、HTRA1関連脳小血管病へ変わりました。区分の整理は、ロイス・ディーツ症候群で行われました。この疾患は、現行では区分ウに置かれていました。改定後は区分ウから外れ、区分エでマルファン症候群と併記される形(マルファン症候群/ロイス・ディーツ症候群)へ整理されています。実務上の留意点:算定回数と施設基準を確認する実務では、算定回数のルールと施設基準の確認が重要になります。対象疾患が拡大しても、算定の基本的な枠組みは現行から変わっていないためです。新しく対象となった疾患でも、これらのルールは共通して適用されます。算定回数は、原則として患者1人につき1回です。2回以上実施する場合は、その医療上の必要性を診療報酬明細書の摘要欄に記載する必要があります。このルールは、追加された疾患にも同じく当てはまります。施設基準は、区分エと区分オで求められます。これらの区分の検査は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生(支)局長へ届け出た保険医療機関でのみ算定できます。今回追加された疾患の多くはこの2区分に属するため、検査を実施する前に届出の有無を確認することが欠かせません。まとめ令和8年度診療報酬改定では、遺伝学的検査の対象疾患が拡大されました。背景には、診断に遺伝学的検査が必須となる指定難病の追加があります。この追加を受けて、検査区分エと区分オを中心に、20を超える疾患が新たに対象へ加わりました。あわせて、家族性アミロイドーシスなど一部の疾患で名称の変更や区分の整理も行われています。実務では、原則1人1回という算定回数のルールと、区分エ・オで求められる施設基準の届出を、あらためて確認しておきましょう。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
「遺伝性疾患療養指導管理料」新設で変わる遺伝医療の評価【令和8年度診療報酬改定】
質の高いゲノム医療の推進が、令和8年度診療報酬改定における重要な論点となっています。現行の遺伝カウンセリング加算は、検査実施時に月1回1,000点を所定点数に加算する仕組みであり、検査前の説明やライフステージの変化に応じた継続的な指導を評価できませんでした。本記事では、令和8年度改定で新設される「遺伝性疾患療養指導管理料」の内容と算定要件を解説します。令和8年度改定は、遺伝性疾患の療養指導を「加算」から「医学管理料」へと評価体系を再編します。新設の「遺伝性疾患療養指導管理料」は、検査前の説明(300点)と検査後の療養指導(初回700点、2回目200点)の3段階で評価されます。これに伴い、従来の遺伝カウンセリング加算と遺伝性腫瘍カウンセリング加算は廃止されます。さらに、遠隔連携による療養指導や、がんゲノムプロファイリング検査時の算定方法も新管理料の枠組みで整理されます。改定の背景:質の高いゲノム医療の推進が課題ゲノム医療の質向上には、検査前後を通じた継続的な遺伝情報の伝達が不可欠です。遺伝学的検査の結果は患者本人だけでなく血縁者にも影響を及ぼします。そのため、検査前の十分な説明と、検査後のライフステージに応じた継続的な指導が求められます。しかし、現行の評価体系は、検査実施時の遺伝カウンセリング加算に限定されていました。現行の遺伝カウンセリング加算は、療養指導を1回しか評価できない点が課題でした。具体的には、難病に関する検査や遺伝性腫瘍に関する検査の実施時に、月1回1,000点を所定点数に加算する仕組みです。また、がんゲノムプロファイリング検査については、別途「遺伝性腫瘍カウンセリング加算」として月1回1,000点が設定されていました。これらの加算は、検査前の意思決定支援や、検査後のライフステージ変化に応じた指導には対応していませんでした。そこで令和8年度改定では、療養指導の評価体系を抜本的に見直すこととしました。具体的には、評価の枠組みを「加算」から「医学管理料」へと変更し、検査前後のライフステージ変化に応じて算定できる仕組みを新設します。この見直しにより、検査前の意思決定支援から検査後の継続的な療養指導までを、一貫して評価できる体系が構築されます。新設「遺伝性疾患療養指導管理料」の3段階評価遺伝性疾患療養指導管理料は、検査前後の各段階に応じて3区分で評価されます。3区分は、検査前の説明、検査後の初回指導、検査後の2回目指導に対応します。それぞれの区分は、患者1人につき1回に限り算定できます。検査前の説明には、「1 医師が遺伝子検査の必要性等について文書により説明を行った場合」として300点が設定されます。この区分は、検査または病理診断を実施する前に算定する仕組みです。算定対象となるのは、遺伝学的検査(D006-4)、角膜ジストロフィー遺伝子検査(D006-20)、染色体構造変異解析(D006-26)、遺伝性網膜ジストロフィ遺伝子検査(D006-30)、遺伝性腫瘍に関する検査などです。検査後の初回指導には、「2 イ 初回」として700点が設定されます。この区分は、検査または病理診断の結果に基づき療養上必要な指導を行った場合に算定します。検査結果が判明した後の最初の指導を評価する仕組みです。検査後の2回目指導には、「2 ロ 2回目」として200点が設定されます。この区分は、過去に検査を実施した患者に対し、改めて療養上必要な指導を行った場合に算定します。具体的には、ライフステージの変化に応じた継続的な指導を想定した区分です。旧加算の廃止と算定上の留意点新管理料の創設に伴い、従来の遺伝カウンセリング加算と遺伝性腫瘍カウンセリング加算は廃止されます。両加算は、月1回1,000点として検体検査判断料やミスマッチ修復タンパク免疫染色に加算する仕組みでした。両加算は、検査時の1回のみの評価という限界を抱えていました。新管理料はこの限界を解消し、検査前後の継続的な評価を可能にします。遠隔連携での療養指導も、新管理料の枠組みで評価されます。「遠隔連携遺伝性疾患療養指導管理」として、情報通信機器を用いて他の保険医療機関と連携して行う療養指導が算定対象となります。ただし、遠隔連携の対象は難病に関する検査に係るものに限られ、別途定める施設基準を満たす保険医療機関でのみ算定できます。がんゲノムプロファイリング検査については、新管理料の中で取扱いが整理されます。具体的には、D006-19に掲げるがんゲノムプロファイリング検査について、検査前の説明(300点)、検査後の初回指導(700点)、検査後の2回目指導(200点)をそれぞれ患者1人につき1回算定できます。また、がん患者指導管理料のニを算定する場合、新管理料の「1」(検査前の説明)は併算定できません。施設基準は、医師の配置と体制整備の2点が求められます。具体的には、遺伝性疾患の診療につき十分な経験を有する常勤医師の配置と、療養指導を行うにつき十分な体制の整備が必要です。遠隔連携での算定には、これらに加えて情報通信機器を用いた診療体制の整備も求められます。まとめ:継続的な遺伝医療を支える評価体系へ令和8年度改定は、遺伝性疾患の療養指導を「医学管理料」として段階的に評価する仕組みへと再編します。新設の「遺伝性疾患療養指導管理料」は、検査前の説明(300点)、検査後の初回指導(700点)、検査後の2回目指導(200点)の3段階で構成されます。これに伴い、従来の遺伝カウンセリング加算と遺伝性腫瘍カウンセリング加算は廃止されます。検査前の意思決定支援からライフステージに応じた継続的な指導までを一貫して評価することで、質の高いゲノム医療の推進が期待されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
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