【令和8年度改定】生成AI活用で医師事務作業補助者1人が1.3人分に?配置基準の柔軟化を解説
令和8年度診療報酬改定では、医師の働き方改革とICT活用の推進を背景に、医師事務作業補助体制加算の施設基準が見直されます。生成AIやRPAなどのICT機器を組織的に導入した医療機関では、医師事務作業補助者の人員配置基準が柔軟化されます。あわせて、医師事務作業補助者が実施できる業務範囲も明確化されます。今回の見直しのポイントは3つです。第1に、生成AIを含むICT機器の活用により、医師事務作業補助者1人を最大1.3人として配置人数に算入できるようになります。第2に、文書作成補助や代行入力など、医師事務作業補助者の業務範囲が具体的に明示されます。第3に、ICT活用による配置基準の柔軟化を届け出る場合は、導入前後の効果を年1回評価する義務が課されます。ICT活用による配置人数の算入方法今回の改定の最大の変更点は、ICT機器を活用する医療機関において、医師事務作業補助者の配置人数を割り増しで算入できる仕組みが新設されることです。この仕組みでは、活用するICT機器の種類と範囲に応じて、1人あたり1.2人または1.3人として算入できます。1.2人換算が認められるには、以下のアからエまでの4つの要件をすべて満たす必要があります。アの要件は、生成AIを活用した文書作成補助システム(①)を含むICT機器を組織的に導入し、大半の医師と医師事務作業補助者が日常的に活用することで、業務の効率化が顕著に図られていることです。この生成AIシステムは、退院時要約・診断書・紹介状等の原案作成を自動的に行い、業務を大幅に効率化するものでなければなりません。イの要件は、電子カルテ等と連動するICT機器について、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等に準拠していることです。ウの要件は、生成AI等を用いる製品・サービスについて、「AI事業者ガイドライン」が遵守されていることです。エの要件は、すべての医師事務作業補助者にICT機器の操作方法と生成AIの適切な利用に関する研修を実施し、常時ICT機器を用いて業務を遂行できる体制を整備していることです。1.3人換算は、上記の生成AIシステムに加えて、さらに別のICT機器を広く活用している場合に認められます。追加で活用するICT機器には、医療文書用の音声入力システム(汎用音声入力機能を除く)、RPAによる定型入力作業の自動化、10種類以上の患者向け説明動画の3種類があります。これら3種類のうち、少なくとも1種類以上を広く活用していれば、1.3人換算が可能です。届出と運用に関する要件ICT活用による配置基準の柔軟化を届け出るには、前述のアからエの要件に加え、実績要件と効果評価の義務を満たす必要があります。実績要件として、新たに届け出る場合は、直近3か月以上にわたり、ICT活用なしの配置基準で当該配置区分またはそれを上回る配置区分を算定し続けていることが求められます。つまり、まず従来の基準で実績を積んだうえで、ICT活用による柔軟化を届け出る流れになります。効果評価の義務として、年1回程度の定量的または定性的な評価の実施が求められます。具体的には、ICT機器の導入前後における医師事務作業補助者の業務内容・業務量・業務時間、および医師の事務作業時間・負担感等を評価します。この評価結果は、衛生委員会等で確認し、必要に応じて対策を講じなければなりません。業務範囲の明確化今回の改定では、医師事務作業補助者が実施できる業務の範囲がより具体的に明示されました。この明確化は、現場での業務運用を円滑にすることを目的としています。文書作成補助の範囲は、従来の「診断書等の文書作成補助」から具体的な文書名が列挙されました。改定後は、診断書・診療情報提供書・返信・診療サマリー・診療計画書等の文書作成補助と明記されています。代行入力の範囲も、従来の「診療記録への代行入力」から詳細に記載されました。改定後は、診療記録・検査オーダー・食事オーダー・クリニカルパス・地域連携パスへの代行入力と具体的に示されています。そのほかの業務でも記載が充実しています。患者・家族への説明文書の準備・作成が新たに明記されたほか、診療録・画像検査結果等の整理、院内がん登録等の統計・調査・入力作業といった業務も具体的に示されました。常勤要件の変更配置基準の柔軟化とあわせて、医師事務作業補助者の常勤要件にも小幅な変更があります。従来は常勤職員の定義が「週32時間以上」でしたが、改定後は「週31時間以上」に緩和されました。この変更に関連して、常勤換算の計算方法も改定案で明記されています。常勤換算の際は、「当該保険医療機関における常勤職員の所定労働時間(32時間未満の場合は32時間)」の勤務をもって常勤1名として換算します。週31時間への緩和は常勤職員の定義に関するものであり、常勤換算の基準時間とは区別して理解する必要があります。まとめ令和8年度改定では、医師事務作業補助体制加算に3つの重要な変更が加わります。第1に、生成AIを含むICT機器の組織的活用により、医師事務作業補助者1人を最大1.3人として配置人数に算入できるようになります。第2に、文書作成補助や代行入力の業務範囲が具体的に明確化されます。第3に、ICT活用による柔軟化を届け出る場合は、年1回の効果評価が義務づけられます。生成AIの導入が必須要件となっている点は、今後の医療機関のICT投資計画に大きく影響するため、早めの検討をおすすめします。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】ICT活用で看護配置基準を1割以内で柔軟化|3つの必須機器と施設基準を解説
令和8年度診療報酬改定では、看護業務の効率化と負担軽減を推進するため、ICT機器等の活用による看護配置基準の柔軟化が新設されました。この制度は、見守り・記録・情報共有の3領域すべてにICT機器を組織的に導入した病棟を対象としています。本記事では、この新制度の仕組みと施設基準の要件を解説します。この制度の要点は3つあります。第一に、3領域すべてのICT機器を導入した病棟では、看護職員の配置数や看護師比率が基準の9割以上であれば、入院基本料等の所定点数を算定できます。第二に、対象となる入院料は急性期一般入院料1~6をはじめ20種類に及びます。第三に、超過勤務が月平均10時間以下であることや、導入前後の業務量評価を年1回実施することなど、複数の施設基準を満たす必要があります。制度の概要|ICT活用で看護配置基準を1割以内で柔軟化今回新設された制度は、ICT機器等の活用により看護業務を効率化した病棟に対して、看護職員の配置基準を1割以内で柔軟化するものです。この柔軟化の対象となるのは、1日に看護を行う看護職員・看護補助者の数、看護要員の数と入院患者の比率、そして看護師比率の3つの基準です。これらの基準が、本来の基準値の9割以上であれば、入院基本料等の所定点数をそのまま算定できます。従来は配置基準を満たさなければ減額や算定不可となっていましたが、ICT機器を組織的に活用して業務を効率化した病棟については、この柔軟化が認められます。ただし、柔軟化されるのは看護配置の数と比率に関する基準のみです。これら以外の入院基本料等の施設基準については、すべて満たしていることが必要です。この点は告示で明確に定められているため、看護配置以外の要件が免除されるわけではありません。この制度の背景には、看護現場の深刻な人手不足があります。実態調査によると、ICTを活用した業務の見直し・省力化に取り組む医療機関は約7割に上ります。しかし、見守り・記録・情報共有の3領域すべてにICT機器を導入している施設はまだ限られています。今回の改定は、3領域のICT機器を包括的に導入することで、看護業務の質を維持しながら配置基準の柔軟化を可能にする仕組みです。導入が必要な3領域のICT機器施設基準を満たすには、「見守り」「記録」「情報共有」の3領域すべてにICT機器を導入し、病棟の看護職員等が広く使用している必要があります。いずれか1つでも欠けている場合は、この制度を利用できません。見守りにおける業務効率化に資するICT機器1つ目の「見守り」の領域では、病室のカメラやベッドのセンサー等を活用し、看護職員が遠隔で複数の患者の状態を把握できる機器が求められます。この機器により、患者の行動・体動・日常生活の状況を総合的かつ効率的に確認できることが条件です。具体的な効果としては、訪室回数の減少による業務効率化のほか、転倒転落の予防、異常の早期発見、身体的拘束の最小化、医療安全その他患者の生命・身体の保護が期待されます。なお、この機器を病室に設置する際には、患者のプライバシーに配慮し、患者またはその家族等に説明のうえ同意を得る必要があります。患者の状態や家族の意向に応じて、一部の患者に機器を使用しないことや、一時的に使用を停止することは差し支えありません。記録の作成等の効率化に資するICT機器2つ目の「記録」の領域では、音声入力による看護記録の作成や、電子カルテ情報からの自動サマリー生成など、看護記録の作成等の効率化に大きく資する機器が求められます。この機器を使用することで、業務時間外の記録作成にかかる時間が減少する等の効果があることが条件です。ただし、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限られます。複数の機器を連携させて一体的に運用する場合も認められます。情報共有の効率化に資するICT機器3つ目の「情報共有」の領域では、業務中に手に持たずに複数人と同時に通話できる機器や、病棟の看護職員と病院の医師が携帯しリアルタイムに情報を共有できる端末など、直接対面せずに多人数で効率的に情報を共有できる機器が求められます。この機器により、報告・連絡に要する時間や、報告・連絡に伴う移動・待機の時間が減少する等の効果があることが条件です。その他の施設基準|超過勤務・業務評価・調査参加など3領域のICT機器の導入に加えて、以下の施設基準も満たす必要があります。セキュリティ基準への準拠ICT機器が電子カルテ等の医療情報システムと連動する場合は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」と、総務省・経済産業省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」に準拠する必要があります。超過勤務の管理ICT機器を導入した病棟の看護要員(常勤職員に限る)の超過勤務時間は、1人1月あたり平均10時間以下であることが求められます。この超過勤務時間は、原則としてタイムカードやパソコンのログイン・ログアウト時間によって把握します。さらに、非常勤職員を含めて、導入前と比較して超過勤務が増加する傾向にないことも条件です。導入前後の業務量評価ICT機器の導入前後における看護要員の業務内容・業務量・業務時間、事務作業時間および業務負担等について、年1回程度の定量的または定性的な評価を実施する必要があります。その評価結果は院内の職員に周知するとともに、衛生委員会等で確認し、必要に応じて対策を講じます。中医協の調査への参加中央社会保険医療協議会の要請に基づく、ICT機器の活用状況や看護業務の改善に係る随時調査に適切に参加することも求められます。答申書の附帯意見においても、ICT等の活用による配置基準の柔軟化については、業務負担、医療の質、医療安全への影響、生産性向上等の観点から、病棟の種別ごとに影響を幅広く調査・検証するとされています。届出毎年8月に、ICT機器の導入状況と超過勤務の状況について届出を行う必要があります。初回の届出は所定の様式により行います。対象となる入院料|20種類の入院料が対象この柔軟化の対象となる入院料は、以下の20種類です。急性期一般入院料1~6、急性期病院A一般入院料、急性期病院B一般入院料、7対1入院基本料、10対1入院基本料、地域包括医療病棟入院料1・2、小児入院医療管理料1~4、特殊疾患病棟入院料1・2、緩和ケア病棟入院料1・2が該当します。急性期から専門病棟まで幅広い入院料が対象となっている点が特徴です。まとめ令和8年度診療報酬改定では、ICT機器を活用した看護業務の効率化を推進するため、看護配置基準の柔軟化が新設されました。この制度を利用するには、見守り・記録・情報共有の3領域すべてにICT機器を導入し、超過勤務月平均10時間以下や年1回の業務量評価などの施設基準を満たす必要があります。なお、柔軟化されるのは看護配置の数と比率のみであり、それ以外の施設基準はすべて満たすことが求められます。対象は急性期一般入院料をはじめ20種類の入院料です。今後は中医協の調査・検証を通じて、この制度の影響が評価されることになります。ICT機器の導入を検討している医療機関は、3領域すべての機器を計画的に整備し、施設基準の要件を確認したうえで届出の準備を進めることが重要です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】医療従事者の処遇改善|賃上げ評価の拡充と夜勤負担軽減の2本柱
令和8年度診療報酬改定では、医療従事者の処遇改善に向けた取り組みが大幅に強化されます。令和8年度および令和9年度にそれぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップ実現を目指し、賃上げの実効性を高める仕組みと、夜勤負担の組織的な軽減策が導入されます。医療従事者の処遇改善は、大きく2つの施策で構成されます。第1に、ベースアップ評価料が大幅に拡充され、対象職員の全職種への拡大、点数の引き上げ、継続賃上げの優遇と未実施への減算が導入されます。第2に、急性期総合体制加算や看護職員夜間配置加算等の施設基準において、夜勤を含む負担軽減・処遇改善計画の策定が要件として明確化されます。① 賃上げに向けた評価の見直し:ベースアップ評価料の大幅拡充令和8年度改定では、医療従事者の賃上げを更に推進するため、ベースアップ評価料が3つの柱で見直されます。対象職員の拡大として、令和6年度改定で「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)」に限定されていた対象が、「当該保険医療機関に勤務する職員」全体に拡大されます。40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師、薬局の勤務薬剤師、事務職員、ベースアップ評価料の対象外であったその他の職員が新たに対象に加わります。これにより、賃金改善計画書や賃金改善実績報告書の提出が求められるようになるため、賃上げの実効性がより確実に確保されます。点数の大幅引き上げとして、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は初診時6点→17点、再診時等2点→4点に引き上げられます。継続的に賃上げを実施している医療機関には、さらに高い点数(初診時23点、再診時等6点など)が新設されます。令和9年6月以降は段階的にさらに引き上げられます。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)は区分1~8から区分1~24へ、入院ベースアップ評価料は区分1~165から区分1~500へ拡充されます。継続賃上げ未実施への減算として、継続的な賃上げを実施していない医療機関に対し、入院基本料等の減算規定が新設されます。減算を回避するには、令和8年3月31日時点で入院ベースアップ評価料の届出を行っていること、令和6年3月と比較して継続的に賃上げを行っていること、令和8年6月1日以降に新規開設した医療機関であること、のいずれかを満たす必要があります。このほか、調剤ベースアップ評価料(処方箋受付1回につき4点)や歯科技工所ベースアップ支援料(1装置につき15点)が新設され、薬局や歯科技工所にも賃上げの仕組みが広がります。夜勤手当をベースアップ等に含める取扱い変更や、繰り越し規定の削除にも注意が必要です。詳しくは「【令和8年度改定】ベースアップ評価料が大幅拡充|対象職員・点数・減算の3つの変更点」をご覧ください。② 夜勤を含む負担の軽減及び処遇改善に資する計画の明確化看護職員の夜勤負担を組織的に軽減する取り組みとして、施設基準における計画策定要件が明確化されます。改定の背景として、病棟看護管理者の実態調査で「夜勤シフトが組みにくくなった」と回答した病棟が34.3%、「夜勤回数が増えた」が28.1%にのぼります。入院料の施設基準を満たす看護職員の配置に困難を感じている医療機関は約8割に達しています。一方、「夜勤手当の見直し」を実施している医療機関はわずか15.0%にとどまっており、処遇面の対応も十分とは言えない状況です。改定の内容として、急性期総合体制加算や看護職員夜間配置加算等において、「負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」に夜勤に関する事項を含めることが要件として明確化されます。従来の「現状の勤務状況等を把握し」という文言が、「医療従事者の夜勤を含む現状の勤務状況等を把握し」に変更されます。対象となる加算は、大きく2つのグループです。第一に急性期総合体制加算(総合入院体制加算と急性期充実体制加算を統合して新設)、第二に看護職員夜間配置に関連する加算(療養病棟入院基本料の夜間看護加算、看護職員夜間12対1・16対1配置加算、精神科救急急性期医療入院料・精神科救急合併症入院料の看護職員夜間配置加算)です。実務上の対応として、対象加算を届け出ている医療機関は、夜勤に関する現状把握(シフトの組みやすさ、1人あたり夜勤回数の推移など)、問題点の抽出、具体的な改善策(夜勤専従者の導入、多様な夜勤形態の整備、夜勤手当の見直しなど)を盛り込んだ計画への見直しが必要です。詳しくは「令和8年度診療報酬改定|看護職員の夜勤負担軽減へ「計画要件」が明確化」をご覧ください。まとめ令和8年度改定における医療従事者の処遇改善は、賃上げに向けた評価の見直しと、夜勤を含む負担軽減計画の明確化の2本柱で構成されています。ベースアップ評価料は対象職員の全職種拡大、点数の大幅引き上げ、継続賃上げの優遇と未実施への減算が導入され、賃上げの実効性が強化されます。夜勤負担の軽減については、急性期総合体制加算や看護職員夜間配置加算等の施設基準で、夜勤に関する事項を計画に含めることが要件化されます。各医療機関においては、ベースアップ評価料の届出準備と夜勤に関する計画の見直しを並行して進めることが重要です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度診療報酬改定|看護職員の夜勤負担軽減へ「計画要件」が明確化
令和8年度診療報酬改定では、看護職員の夜勤負担を組織的に軽減する取り組みが強化されます。具体的には、急性期総合体制加算や看護職員夜間配置加算等の施設基準において、「負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」に夜勤に関する事項を含めることが要件として明確化されます。今回の改定のポイントは3つです。第一に、従来の負担軽減計画において暗黙的に含まれていた夜勤の事項を、計画に明示的に盛り込むことが要件として明確化されます。第二に、対象となる加算は急性期総合体制加算と看護職員夜間配置加算をはじめとする複数の加算です。第三に、実務上は現行の計画を見直し、夜勤に係る現状把握と具体的な改善策を盛り込む必要があります。改定の背景|深刻化する看護職員の夜勤負担今回の改定は、看護職員の夜勤をめぐる負担が年々深刻化していることを背景としています。病棟看護管理者を対象とした実態調査によると、直近1年間で「夜勤シフトが組みにくくなった」と回答した病棟は34.3%にのぼります。「夜勤の回数が増えた」と回答した病棟も28.1%に達しています。入院料の施設基準を満たす看護職員の配置に困難を感じている医療機関は、約8割にのぼります。夜勤に対する処遇面の対応も十分とは言えません。病院勤務看護職員の夜勤手当(1回あたり)は、2010年代に入ってからおおむね横ばいで推移しています。看護職員の負担軽減に関する具体的な取り組みとして「夜勤手当の見直し」を実施している医療機関は、わずか15.0%にとどまっています。こうした状況を受け、中医協の議論では「夜勤に係る負担に配慮するよう促すこと」が論点として示されました。既存の負担軽減計画の中に、夜勤の負担軽減を組織的に位置づけることで、医療機関の取り組みを後押しする狙いがあります。改定の内容|計画に「夜勤を含む」ことが要件化今回の改定では、負担軽減・処遇改善に関する計画の策定要件に、夜勤に関する事項を含めることが明確化されます。従来の施設基準では、計画の策定にあたり「現状の勤務状況等を把握し、問題点を抽出した上で」具体的な取り組み内容を定めることとされていました。今回の改定では、この要件に「夜勤を含む」という文言が追加されます。改定後は「医療従事者の夜勤を含む現状の勤務状況等を把握し」た上で計画を作成し、その計画も「夜勤を含む負担の軽減及び処遇の改善に資する計画」とすることが求められます。対象となる加算|急性期総合体制加算と看護職員夜間配置加算等今回の要件明確化の対象となる加算は、大きく2つのグループに分かれます。第一のグループは、急性期総合体制加算です。この加算は、令和8年度改定で総合入院体制加算と急性期充実体制加算を統合して新設されるものです。急性期総合体制加算では、病院の医療従事者全体の負担軽減・処遇改善計画の中に、夜勤に関する事項を含めることが求められます。第二のグループは、看護職員夜間配置に関連する加算です。対象となるのは、療養病棟入院基本料の夜間看護加算、看護職員夜間12対1配置加算、看護職員夜間16対1配置加算、精神科救急急性期医療入院料の看護職員夜間配置加算、精神科救急・合併症入院料の看護職員夜間配置加算です。これらの加算では、看護職員の負担軽減・処遇改善計画に夜勤の事項を含めることが同様に求められます。実務上の対応ポイント|計画の見直しと体制整備医療機関が対応すべき事項は、既存の計画の見直しと体制の再確認です。計画の見直しにあたっては、まず夜勤を含む現状の勤務状況を改めて把握する必要があります。具体的には、夜勤シフトの組みやすさ、1人あたりの夜勤回数の推移、夜勤に伴う残業時間の実態といった項目を確認します。現状把握の次に、夜勤に関する問題点を抽出します。夜勤者の確保が困難な要因や、夜勤手当の水準が適切かどうかなど、自院の課題を明確にします。問題点の抽出を踏まえ、具体的な取り組み内容と目標達成年次を計画に盛り込みます。たとえば、夜勤専従者の導入、多様な夜勤形態(回数・時間・曜日)の整備、夜勤手当の見直しなどが具体策として考えられます。計画を改定した後は、職員への周知徹底と院内掲示等による公開も忘れずに行います。これらの手続きは、従来から施設基準で求められている事項と同様です。まとめ令和8年度診療報酬改定では、急性期総合体制加算や看護職員夜間配置加算等の施設基準において、負担軽減・処遇改善計画に「夜勤を含む」ことが要件として明確化されます。この改定は、夜勤シフトの困難化や夜勤手当の停滞といった現場の課題を踏まえたものです。対象となる加算を届け出ている医療機関は、夜勤に関する現状把握・問題点の抽出・具体的な改善策を盛り込んだ計画への見直しを進めてください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】ベースアップ評価料が大幅拡充|対象職員・点数・減算の3つの変更点
令和8年度診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを更に推進するため、ベースアップ評価料が大幅に見直されます。令和6年度改定では「主として医療に従事する職員(医師・歯科医師を除く)」に限定されていた対象職員が、今回の改定では医師や事務職員を含む「保険医療機関に勤務する職員」全体に拡大されます。この見直しは、令和8年度と令和9年度にそれぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップ実現を目指すものです。今回の改定の主な変更点は3つあります。第1に、対象職員が拡大され、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師や事務職員もベースアップ評価料の対象に含まれます。第2に、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の点数が大幅に引き上げられ、継続的に賃上げを実施している医療機関にはさらに高い点数が設定されます。第3に、継続的な賃上げを実施していない医療機関には入院基本料等の減算が新設されます。このほか、調剤ベースアップ評価料や歯科技工所ベースアップ支援料の新設など、賃上げの対象範囲が薬局や歯科技工所にも広がります。対象職員の拡大:医師・事務職員もベースアップ評価料の対象に今回の改定における最大の変更点は、ベースアップ評価料の対象職員が大幅に拡大されることです。令和6年度改定では、対象は「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)」に限定されていました。令和8年度改定では、この限定が外れ、「当該保険医療機関に勤務する職員」が対象となります。この対象拡大により、新たにベースアップ評価料の対象に加わる職種は、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師、薬局の勤務薬剤師、事務職員、そしてベースアップ評価料の対象外であったその他の職員です。これらの職種は、令和6年度改定では入院基本料や初・再診料の引き上げにより賃上げ原資が配分されていましたが、実際の賃上げ実績を確認する仕組みがありませんでした。令和8年度改定では、これらの職種についてもベースアップ評価料の仕組みに統合されます。統合により、賃金改善計画書や賃金改善実績報告書の提出が求められるようになるため、賃上げの実効性がより確実に確保されます。点数の引き上げと継続賃上げの優遇:2段階の評価体系外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の点数は、大幅に引き上げられます。初診時は現行の6点から17点へ、再診時等は2点から4点へ、訪問診療時(同一建物居住者等以外)は28点から79点へ引き上げられます。歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)についても同様に、初診時が10点から21点へ、再診時等が2点から4点へ引き上げられます。これらの点数に加えて、継続的に賃上げを実施している医療機関には、さらに高い点数が新設されます(注5)。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の場合、初診時23点、再診時等6点、訪問診療時(同一建物居住者等以外)107点が算定可能です。この継続賃上げの優遇は、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)、入院ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料のいずれにも設けられています。さらに、令和9年6月以降は点数が段階的に引き上げられます。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)では所定点数の200/100(2倍)に、継続賃上げの医療機関ではそれぞれ40点(初診時)、10点(再診時等)、186点(訪問診療時)などの点数が適用されます。入院基本料等の減算:継続的な賃上げ未実施への対応継続的な賃上げを実施していない医療機関に対しては、入院基本料等の減算規定が新設されます。この減算は、令和6年度および令和7年度において賃上げを実施した医療機関と、そうでない医療機関を区別する仕組みです。減算の対象は、入院基本料、特定入院料、短期滞在手術等基本料(短期滞在手術等基本料1を除く)です。減算額は入院料の種類によって異なり、たとえば急性期病院A一般入院料・急性期一般入院料1では1日につき121点、療養病棟入院基本料では42点、特定機能病院入院基本料では141点が減算されます。減算を回避するための施設基準は、以下の3つのいずれかに該当することです。第1に、令和8年3月31日時点で入院ベースアップ評価料の届出を行っていること。第2に、令和6年3月と比較して継続的に賃上げを行っていること。第3に、令和8年6月1日以降に新規開設した医療機関であること。この3つのうちいずれかを満たせば、減算は適用されません。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)と入院ベースアップ評価料の拡充外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)は、区分数が大幅に拡大されます。現行の区分1~8(最大で初診・訪問診療時64点、再診時等8点)から、区分1~24(最大で初診・訪問診療時192点、再診時等24点)へと拡充されます。区分13~24は令和9年6月以降に算定開始となります。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)では、施設基準にも重要な変更があります。施設基準(1)は、現行の「入院基本料等を算定していない保険医療機関」から「算定していない又は算定回数が著しく少ない保険医療機関」に変更されます。この変更により、入院患者がごく少数の医療機関も評価料(Ⅱ)の届出が可能となります。また、施設基準(3)の算定要件は、現行の「対象職員の給与総額の一分二厘未満」から「対象職員の適切な賃金改善に必要な額の百分の五十未満」に変更されます。算定の可否に直結するため、届出の際には新基準での再計算が必要です。入院ベースアップ評価料も同様に拡大されます。現行の区分1~165(最大165点)から、区分1~500(最大500点)へと大幅に拡充されます。区分251~500は令和9年6月以降に算定される段階的な評価です。入院ベースアップ評価料の施設基準には、新たに「当該保険医療機関における常勤の対象職員の数が、二以上であること」という要件が追加されます。ただし、基本診療料の施設基準等別表第六の二に掲げる地域(離島やへき地等)に所在する保険医療機関は、この要件の適用が除外されます。小規模医療機関では、常勤対象職員が2名未満の場合に届出ができなくなるため、注意が必要です。これらの評価料についても、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と同様に、継続的に賃上げを実施している医療機関にはさらに高い点数が設定されます。施設基準における対象職員の要件も、「主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)」から「対象職員」(勤務する職員全体)に変更されます。新設:調剤ベースアップ評価料と歯科技工所ベースアップ支援料調剤報酬においては、調剤ベースアップ評価料が新設されます。処方箋の受付1回につき4点が算定可能です。対象は「当該保険薬局に勤務する職員」であり、薬剤師だけでなく事務職員等も含まれます。令和9年6月以降は所定点数の200/100(2倍)に引き上げられます。歯科診療報酬においては、歯科技工所ベースアップ支援料が新設されます。1装置につき15点が算定可能です。この評価料は、歯科技工所に補綴物等の製作等を委託した場合に算定できます。施設基準として、歯科技工所に勤務する歯科技工士の賃金改善を十分に支援していることが求められます。こちらも令和9年6月以降は所定点数の200/100に引き上げられます。訪問看護ベースアップ評価料の見直し訪問看護ベースアップ評価料も、対象職員の拡大と点数の引き上げが行われます。訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は、現行の780円から1,050円に引き上げられます。対象は「主として医療に従事する職員」から「当該訪問看護ステーションに勤務する職員」に拡大されます。訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)では、算定対象となる利用者の範囲も拡大されます。現行は「区分番号02の1を算定している利用者」のみが対象でしたが、改定案では「区分番号02の1又は区分番号04を算定している利用者」に変更されます。この変更により、算定可能な利用者が増加するため、訪問看護ステーションにとっては収入増につながる見直しです。訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)は、区分数が現行の18区分から36区分に拡大されます。最大額は500円から1,080円へと引き上げられます。訪問看護についても、継続的に賃上げを実施しているステーションには優遇措置が設けられます。訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は所定額に代えて1,830円、令和9年6月以降は2,880円が算定可能です。夜勤手当の取扱い変更夜勤職員の確保を促進するため、看護職員処遇改善評価料およびベースアップ評価料の収入を夜勤手当の増額に充てることが可能となります。具体的には、賃金改善の合計額の3分の2以上をベースアップ等により改善する要件について、恒常的に夜間を含む交替勤務制をとっている職場の職員に支払われる夜勤手当は「基本給等」に含めて差し支えないこととされます。この変更に伴い、現行で認められていた繰り越し規定は削除されます。現行では「令和6年度及び令和7年度に、翌年度以降のベア等の改善のために繰り越しを行った場合」に、繰り越し額を控除した残額の3分の2以上をベア等で改善すれば足りるとされていました。令和8年度以降は、この繰り越しによる対応はできなくなります。賃金改善の合計額の3分の2以上を、ベア等(夜勤手当を含む)で確実に改善する必要があるため、賃金改善計画の策定にあたっては留意が必要です。この夜勤手当の取扱い変更は、看護職員処遇改善評価料、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)・(Ⅱ)、歯科外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)・(Ⅱ)、入院ベースアップ評価料のすべてに適用されます。夜勤手当の増額により、夜勤職員の確保が困難な医療機関にとっては有効な処遇改善策となります。まとめ令和8年度改定におけるベースアップ評価料の見直しは、対象職員の拡大、点数の大幅引き上げ、継続賃上げの優遇と未実施への減算という3つの柱で構成されています。対象職員は医師・事務職員を含む全職員に拡大され、令和8年度・令和9年度にそれぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップが目指されます。さらに、調剤ベースアップ評価料と歯科技工所ベースアップ支援料の新設により、薬局や歯科技工所にも賃上げの仕組みが広がります。各医療機関においては、施設基準の変更点(外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定要件変更、入院ベースアップ評価料の常勤職員要件の追加、繰り越し規定の削除など)を確認し、届出や点数の算定に遺漏がないよう、早めの準備が求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】物件費高騰への3つの対応|初再診料・入院料の引上げから食事療養の見直しまで
令和8年度診療報酬改定では、持続的な物価高騰により増加した医療機関等の物件費負担に対応するため、基本診療料の見直しと入院時の食費・食事療養に関する制度改正が行われました。この対応は、個別改定項目「Ⅰ-1 医療機関等が直面する人件費や、医療材料費、食材料費、光熱水費及び委託費等といった物件費の高騰を踏まえた対応」に位置づけられています。物件費高騰への対応は、大きく3つの施策で構成されています。第1に、初再診料等・入院基本料等の引上げと「物価対応料」の新設により、物件費全般の高騰に対応しました。第2に、入院時の食費基準額を1食40円、光熱水費基準額を1日60円引き上げ、食材料費・光熱費の高騰に対応しました。第3に、嚥下調整食の特別食加算への追加や特別メニュー料金の見直しにより、入院時の食事療養の質の向上を図りました。以下、それぞれの概要を解説します。① 物件費の高騰を踏まえた対応——初再診料等・入院基本料等の引上げと物価対応料の新設物件費全般の高騰への対応として、緊急対応分(改定率+0.44%)による初再診料等・入院基本料等の引上げと、物価対応分(改定率+0.76%)による「物価対応料」の新設が行われました。対応は医科・歯科・調剤・訪問看護の全領域に及びます。この対応は3つの柱で構成されています。第1の柱は、令和6年度改定以降の経営環境の悪化に対する緊急対応です。医科では再診料が75点から76点に1点引き上げられ、歯科では歯科初診料が267点から272点に5点引き上げられました。入院基本料等も医療機能に応じて増点され、急性期一般入院料1は1,688点から1,874点へ186点の増点となっています。第2の柱は、令和8年度以降の物価上昇に段階的に対応する「物価対応料」の新設です。物価対応料は、外来・在宅では初診時2点・再診時等2点、入院では算定する入院料に応じて一般病棟で17~66点が設定されています。この物価対応料は、令和9年6月以降に全区分で点数が2倍になる段階的な仕組みが最大の特徴です。第3の柱は、高度機能医療を担う特定機能病院や急性期病院への特例的な評価です。急性期病院一般入院基本料が新設され、特定機能病院入院基本料はA・B・Cの3区分に再編されました。詳しくは「【令和8年度改定】物価対応料の新設と初再診料・入院料の引上げを徹底解説」をご覧ください。② 入院時の食費及び光熱水費の基準の見直し——食費1食40円・光熱水費1日60円の引上げ食材料費や光熱・水道費の上昇を踏まえ、入院時の食費及び光熱水費の基準額が引き上げられました。食費は令和6年6月(30円)、令和7年4月(20円)に続く3回連続の引上げであり、光熱水費は平成18年の制度創設以来初の基準額(総額)の増額です。食費の基準額は、入院時食事療養(Ⅰ)・(Ⅱ)及び入院時生活療養(Ⅰ)・(Ⅱ)の全区分で1食当たり40円引き上げられます。入院時食事療養(Ⅰ)の通常の食事療養は690円から730円に、流動食のみの提供は625円から665円にそれぞれ変更されます。光熱水費の基準額は、入院時生活療養(Ⅰ)・(Ⅱ)ともに1日当たり60円引き上げられ、398円から458円になります。引き上げ幅の60円は、令和6年度介護報酬改定における多床室の居住費基準費用額の引上げ幅と同額であり、介護保険との均衡を図る趣旨もあります。引上げの背景には、食材料費の高騰が続く中で、全面委託の約7割・一部委託の約5割の医療機関が委託事業者からの値上げの申し出に対応していたという実態があります。詳しくは「令和8年度改定|入院時の食費が1食40円・光熱水費が1日60円引き上げへ」をご覧ください。③ 入院時の食事療養に係る見直し——嚥下調整食の新評価と特別料金の柔軟化入院時の食事療養の質の向上を図るため、嚥下調整食を必要とする患者への対応と、入院患者の多様な食事ニーズへの対応を目的とした制度の見直しが行われました。この見直しは3つの変更で構成されています。第一に、嚥下調整食が特別食加算の対象として新たに追加されます。これまで特別食加算の対象は腎臓食や糖尿食などの治療食に限られ、嚥下調整食は対象外でした。嚥下調整食は普通食より食材費が高く、最もコストのかかる場合で1日あたり76円の差があるとの報告があります。見た目を改善し適切な栄養量を確保した嚥下調整食は、エネルギー摂取量の増加やADLの改善にも寄与することが示されています。第二に、特別メニューの追加料金について、1食あたり17円の標準額が削除され、医療機関が柔軟に金額を設定できるようになります。食材費・人件費の高騰が続く中、17円では追加コストを賄えない状況が解消されます。第三に、行事食やハラール食などの宗教に配慮した食事も、特別料金の対象として明確化されます。約8割の医療機関が行事食を追加料金なしで提供していた実態を踏まえ、コストを適正に収受できる道が開かれます。詳しくは「【令和8年度改定】入院時の食事療養が変わる|嚥下調整食の新評価と特別料金の2つの見直し」をご覧ください。まとめ令和8年度診療報酬改定の物件費高騰への対応は、3つの施策で構成されています。第1に、初再診料等・入院基本料等の引上げと物価対応料の新設により、物件費全般の高騰に対応しました。第2に、食費1食40円・光熱水費1日60円の基準額引上げにより、食材料費・光熱費の高騰に対応しました。第3に、嚥下調整食の特別食加算への追加と特別料金の見直しにより、食事療養の質の向上を図りました。各医療機関は、自施設に関連する改定内容を確認し、令和9年6月以降の物価対応料の倍増も見据えた対応が求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】入院時の食事療養が変わる|嚥下調整食の新評価と特別料金の2つの見直し
令和8年度診療報酬改定では、入院時の食事療養の質の向上を図るため、食事療養に関する制度が見直されます。今回の見直しは、嚥下調整食を必要とする患者への対応と、入院患者の多様な食事ニーズへの対応を目的としています。この記事では、個別改定項目「Ⅰ-1 ③入院時の食事療養に係る見直し」の内容を解説します。今回の改定では、主に3つの変更が行われます。第一に、嚥下調整食が特別食加算の対象として新たに追加されます。第二に、特別メニューの追加料金について、1食あたり17円の標準額が削除され、医療機関が柔軟に金額を設定できるようになります。第三に、行事食やハラール食などの宗教に配慮した食事も、特別料金の対象として明確化されます。嚥下調整食が特別食加算の新たな対象に追加今回の改定の最大のポイントは、嚥下調整食が特別食加算の対象に新たに追加されることです。これまで特別食加算の対象は、腎臓食や糖尿食などの「治療食」に限られていました。嚥下調整食は対象外であったため、摂食機能や嚥下機能が低下した患者に提供しても加算を算定できませんでした。嚥下調整食が加算の対象外であったことには、実態との乖離がありました。嚥下調整食を必要とする患者は各入院料において一定数存在しています。しかも、嚥下調整食は普通食よりも食材費が高く、最もコストのかかる嚥下調整食と普通食の1日あたりの食材費の差は76円に上るとの報告があります。こうしたコスト負担が、医療機関の持ち出しとなっていました。嚥下調整食の質の向上は、患者の栄養状態やADLの改善に直結します。見た目を改善し適切な栄養量を確保した嚥下調整食を提供した研究では、1日あたりエネルギー273.8kcal、たんぱく質12.4gの摂取量増加が認められました。さらに、この栄養強化群ではADLの改善も確認されています。今回新設された算定要件では、嚥下調整食は「治療食」とは別の区分として整理されています。具体的には、摂食機能または嚥下機能が低下した患者に対して、医師の発行する食事箋に基づき提供された、適切な栄養量および内容を有する嚥下調整食が対象となります。従来の治療食が「疾病治療の直接手段」と位置づけられているのに対し、嚥下調整食は「摂食・嚥下機能の低下への対応」として独立した位置づけを持つ点が特徴です。特別メニューの追加料金に関する2つの見直し入院患者の多様な食事ニーズに対応するため、特別料金の支払いを受けることができる食事についても2つの見直しが行われます。ひとつは追加料金の標準額の削除、もうひとつは対象となる食事の明確化です。標準額の削除と柔軟な料金設定1つ目の見直しは、特別メニューの追加料金における標準額の削除です。これまで、基本メニュー以外のメニューを患者が選択した場合の追加料金は、1食あたり17円を標準として設定されていました。この標準額が削除され、保険医療機関が柔軟に妥当な額を設定できるようになります。標準額が見直された背景には、現行の17円という金額が現状に合っていないとの指摘がありました。食材費や人件費の高騰が続くなか、17円では基本メニュー以外の選択肢を準備するための追加コストを賄えない状況が生じていたためです。今後は各医療機関が、実際のコストに見合った「社会的に妥当な額」を自ら設定できるようになります。行事食・宗教配慮食の対象明確化2つ目の見直しは、特別料金の対象となる食事の拡大です。患者の自由な選択と同意に基づき、行事食やハラール食などの宗教に配慮した食事を提供した場合も、特別の料金の支払いを受けることができることが明確化されます。この明確化の背景には、すでに多くの医療機関が追加料金なしでこれらの食事に対応している実態がありました。約8割の医療機関が行事食を追加料金なしで提供し、約2〜3割の医療機関がハラール食などの宗教配慮食を追加料金なしで対応していました。今回の見直しにより、こうした食事提供にかかるコストを、患者の同意のもとで適正に収受できる道が開かれます。まとめ令和8年度改定における入院時の食事療養の見直しは、3つの柱で構成されています。第一に、嚥下調整食が特別食加算の対象に追加され、摂食・嚥下機能が低下した患者への質の高い食事提供が評価されるようになります。第二に、特別メニューの追加料金について標準額が削除され、医療機関による柔軟な料金設定が可能になります。第三に、行事食やハラール食などの宗教配慮食が特別料金の対象として明確化されます。いずれも、入院時の食事療養の質の向上と、入院患者の多様なニーズへの対応を目指した改定です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度改定|入院時の食費が1食40円・光熱水費が1日60円引き上げへ
令和8年度診療報酬改定では、食材料費や光熱・水道費の上昇を踏まえ、入院時の食費及び光熱水費の基準額が引き上げられます。食費は令和6年6月(30円)、令和7年4月(20円)に続き、直近で3回連続の引き上げとなります。光熱水費は平成18年の制度創設以来、基準額(総額)としては初めての引き上げとなります。今回の改定では、食費と光熱水費の2つが見直されます。食費は入院時食事療養(Ⅰ)・(Ⅱ)及び入院時生活療養(Ⅰ)・(Ⅱ)のすべてで1食当たり40円引き上げられます。光熱水費は入院時生活療養(Ⅰ)・(Ⅱ)で1日当たり60円引き上げられます。この光熱水費の引き上げ額は、令和6年度介護報酬改定における多床室の居住費の引き上げ幅と同額です。食費の基準額:全区分で1食当たり40円の引き上げ食費の基準額は、入院時食事療養と入院時生活療養のいずれにおいても、1食当たり40円引き上げられます。対象は通常の食事療養と流動食のみの提供の両方です。入院時食事療養(Ⅰ)の基準額は、通常の食事療養が690円から730円に、流動食のみの提供が625円から665円にそれぞれ引き上げられます。入院時食事療養(Ⅰ)は、管理栄養士等による管理のもとで適切な栄養管理が行われている場合に算定される区分です。入院時食事療養(Ⅱ)の基準額は、通常の食事療養が556円から596円に、流動食のみの提供が510円から550円にそれぞれ引き上げられます。入院時食事療養(Ⅱ)は、(Ⅰ)の基準を満たさない場合に算定される区分です。入院時生活療養(Ⅰ)の食費も同様に引き上げられます。通常の食事提供が604円から644円に、流動食のみの提供が550円から590円にそれぞれ変更されます。入院時生活療養は、療養病床に入院する65歳以上の患者が対象です。入院時生活療養(Ⅱ)の食費は、470円から510円に引き上げられます。光熱水費の基準額:1日当たり60円の引き上げ光熱水費の基準額は、入院時生活療養(Ⅰ)・(Ⅱ)ともに、1日当たり60円引き上げられます。具体的には、398円から458円に変更されます。この光熱水費の基準額は、平成18年の入院時生活療養費制度の創設以来、総額としては据え置かれてきました。平成29年には自己負担額の引き上げが行われましたが、そのときも基準額(総額)は398円のまま維持されていました。今回の改定は、基準額そのものが引き上げられるという点で、制度創設以来初めてのことです。引き上げ幅の60円は、令和6年度介護報酬改定における多床室の居住費基準費用額の引き上げ幅と同額に設定されています。介護保険では、家計における光熱・水道支出を勘案し、すでに60円の引き上げが実施されていました。今回の医療保険側の対応は、介護保険との均衡を図る趣旨もあります。引き上げの背景:食材費・光熱費の高騰と医療現場の厳しい経営環境今回の引き上げの背景には、食材料費と光熱・水道費の継続的な高騰があります。食費については、令和6年6月に30円、令和7年4月に20円と2回にわたり引き上げが実施されましたが、その後も高騰が続いています。医療現場からは、米の価格高騰などにより1食当たり690円では限界を超えているとの声が出ていました。中医協総会でも、病院給食の委託事業者から値上げの交渉が相次いでおり、対応せざるを得ない状況にあるとの意見が示されました。実際に、全面委託の約7割、一部委託の約5割の医療機関が、委託事業者からの値上げの申し出に対応していたことが調査で明らかになっています。光熱水費についても、近年の光熱・水道費の高騰は著しく、基準額が平成18年の創設時から据え置かれていたことが病院経営に影響を及ぼしていました。介護保険の居住費(430円)と医療保険の光熱水費(370円)の間に60円の自己負担の差が存在していたことも、見直しの根拠のひとつとなっています。まとめ令和8年度診療報酬改定では、入院時の食費が全区分で1食当たり40円、光熱水費が1日当たり60円引き上げられます。食費の引き上げは、食材料費の高騰が続く中で医療の一環としての食事の質を確保する目的で実施されます。光熱水費の引き上げは、制度創設以来初の基準額の増額であり、光熱・水道費の高騰と介護保険との均衡を踏まえた対応です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】物価対応料の新設と初再診料・入院料の引上げを徹底解説
令和8年度診療報酬改定では、持続的な物価高騰により増加した医療機関等の物件費負担に対応するため、基本診療料の引上げと新たな加算の新設が行われました。この対応は、医科・歯科・調剤・訪問看護の全領域に及びます。今回の物件費高騰への対応は、大きく3つの柱で構成されています。第1に、令和6年度改定以降の経営環境の悪化に対する緊急対応として、初再診料等と入院基本料等の点数が引き上げられました。第2に、令和8年度以降の物価上昇に段階的に対応するため、「物価対応料」という新たな加算が新設されました。第3に、高度機能医療を担う特定機能病院や急性期病院には、物価高の影響を受けやすいことを踏まえた特例的な評価が設けられました。以下、それぞれの内容を詳しく解説します。改定の背景——改定率+0.76%の物価対応分と+0.44%の緊急対応分今回の物件費高騰への対応を理解するには、まず改定率の構造を押さえる必要があります。令和8年度診療報酬改定の改定率+3.09%(令和8年度・9年度の2年度平均)には、賃上げ分(+1.70%)、食費・光熱水費分(+0.09%)など複数の対応が含まれますが、このうち物価対応に関する財源は2つに分かれています。1つ目の財源は、物価対応分+0.76%です。この+0.76%のうち+0.62%が令和8年度以降の物価上昇への対応に充てられ、残りの+0.14%が高度機能医療を担う病院への特例的な対応に使われます。この+0.62%の配分は、施設類型ごとの費用関係データに基づき、病院+0.49%、医科診療所+0.10%、歯科診療所+0.02%、保険薬局+0.01%と定められました。2つ目の財源は、令和6年度改定以降の経営環境の悪化を踏まえた緊急対応分+0.44%です。この緊急対応分の配分は、令和7年度補正予算の効果を減じないよう施設類型ごとのメリハリが維持され、病院+0.40%、医科診療所+0.02%、歯科診療所+0.01%、保険薬局+0.01%となっています。これら2つの財源の使い分けが、改定内容の理解を難しくしているポイントです。外来では、緊急対応分は初再診料等の引上げで対応し、物価上昇分は新設の「物価対応料」で対応します。入院では、緊急対応分は入院基本料等の引上げに含め、物価上昇分は同じく「物価対応料」の入院区分で対応するという構造になっています。初再診料等の引上げ——経営環境の悪化への緊急対応経営環境の悪化への緊急対応として、医科・歯科ともに初再診料等の点数が引き上げられました。医科の初再診料については、再診料が75点から76点に1点引き上げられました。初診料は291点で据え置きです。初診料が包括されるその他の点数、訪問診療料、各種入院料等についても同様の引上げが行われています。なお、再診料の2科目の場合は38点から39点に、妥結率が低い場合の再診料は55点から56点に、それぞれ1点引き上げられています。歯科の初再診料については、歯科初診料が267点から272点に5点、歯科再診料が58点から59点に1点、それぞれ引き上げられました。地域歯科診療支援病院歯科初診料は291点から296点に5点、同再診料は75点から76点に1点引き上げられています。届出未実施の場合の点数も同様に引き上げられています。なお、歯科再診料の情報通信機器を用いた場合は51点で変更ありません。入院基本料等の引上げ——医療機能に応じた増点入院基本料等についても、経営環境の悪化への緊急対応と物価上昇を踏まえた増点が行われました。入院料の引上げ幅は、医療機能に応じて異なります。一般病棟入院基本料の急性期一般入院料では、入院料1が1,688点から1,874点へ186点の増点となりました。入院料2は1,644点から1,779点へ135点、入院料3は1,569点から1,704点へ135点、入院料4は1,462点から1,597点へ135点、入院料5は1,451点から1,575点へ124点、入院料6は1,404点から1,523点へ119点の増点です。急性期一般入院料1の増点幅が最も大きい点が特徴です。地域一般入院基本料では、入院料1が1,176点から1,290点へ114点、入院料2が1,170点から1,282点へ112点、入院料3が1,003点から1,097点へ94点の増点となりました。特別入院基本料は612点から704点へ92点の増点です。高度機能病院への特例的対応——急性期病院入院基本料の新設と特定機能病院の再編高度機能医療を担う病院への特例的な対応として、2つの大きな見直しが行われました。1つ目は、急性期病院一般入院基本料の新設です。これは、急性期病院として高度な機能を担う病院を対象とした新たな入院基本料です。急性期病院A一般入院料は1,930点、急性期病院B一般入院料は1,643点と設定されました。急性期病院精神病棟入院基本料も併せて新設され、A・Bそれぞれに10対1、13対1、15対1の区分が設けられています。2つ目は、特定機能病院入院基本料の再編です。従来の一本の区分から、特定機能病院A・B・Cの3区分に細分化されました。一般病棟7対1の場合、特定機能病院A入院基本料は2,146点、Bは2,136点、Cは2,016点です。従来の7対1入院基本料(1,822点)と比較すると、A区分では324点の大幅な増点となっています。この再編は、医師派遣等の地域医療への貢献度や、高度な教育・研究機能など、特定機能病院の担う役割に応じた評価を行うものです。結核病棟・精神病棟についても同様にA・B・Cの3区分で点数が設定されています。物価対応料の新設——令和8年度・9年度の物価上昇に段階的に対応令和8年度以降の物価上昇に段階的に対応するため、基本診療料・調剤基本料等の算定に併せて算定可能な加算として、「物価対応料」が新設されました。この物価対応料は、医科、歯科、調剤、訪問看護のそれぞれに区分が設けられています。医科の物価対応料は、外来・在宅と入院に分かれています。外来・在宅物価対応料は、初診時2点、再診時等2点、訪問診療時3点です。入院物価対応料は、算定する入院料の種類に応じて点数が異なります。急性期病院A一般入院料の場合は66点、急性期病院B一般入院料の場合は58点、急性期一般入院料1の場合は58点、急性期一般入院料2~4の場合は45点(入院料4で看護・多職種協働加算算定時は58点)、急性期一般入院料5は36点、入院料6は34点、地域一般入院料1・2は32点、地域一般入院料3は23点、特別入院基本料(一般病棟)は17点です。歯科外来物価対応料は、初診時3点、再診時1点です。調剤物価対応料は1点で、3月に1回に限り算定できます。訪問看護物価対応料は、訪問看護物価対応料1(訪問看護管理療養費算定時)が月の初日60円・2日目以降20円、訪問看護物価対応料2(包括型訪問看護療養費算定時)が20円です。この物価対応料の最大の特徴は、段階的に引き上げられる点です。令和9年6月以降は、所定点数の100分の200に相当する点数が算定されます。つまり、上記の全ての点数が2倍になります。たとえば外来・在宅物価対応料の初診時は2点から4点に、入院物価対応料の急性期病院A一般入院料は66点から132点になります。調剤報酬・訪問看護療養費の引上げ調剤報酬と訪問看護療養費についても、物件費の高騰を踏まえた引上げが行われました。調剤基本料については、調剤基本料1が45点から47点に2点、調剤基本料2が29点から30点に1点、調剤基本料3のイが24点から25点に1点、ロが19点から20点に1点、ハが35点から37点に2点、それぞれ引き上げられました。訪問看護管理療養費については、月の初日の訪問の場合、機能強化型1が13,230円から13,760円に530円、機能強化型2が10,030円から10,460円に430円、機能強化型3が8,700円から9,030円に330円引き上げられました。また、機能強化型4が9,030円で新設されました。それ以外の場合は7,670円から7,710円に40円の引上げです。月の2日目以降の訪問の場合についても、単一建物居住者の人数に応じた新たな区分が設けられ、きめ細かな評価が行われています。また、新設の包括型訪問看護療養費にも物価上昇を踏まえた点数が設定されています。まとめ令和8年度診療報酬改定の物件費高騰への対応は、3つの柱で構成されています。第1に、経営環境の悪化への緊急対応として初再診料等と入院基本料等が引き上げられました。第2に、令和8年度以降の物価上昇に段階的に対応するため、物価対応料が新設されました。第3に、高度機能医療を担う病院には特例的な評価が設けられました。特に注意すべきは、物価対応料が令和9年6月以降に全区分で点数が2倍になる点です。経済・物価動向が令和8年度改定時の見通しから大きく変動した場合には、令和9年度予算編成において加減算を含めた更なる調整が行われる可能性もあります。各医療機関は、自施設が算定する入院料の区分に応じた物価対応料の点数を確認し、令和9年6月以降の収入変化も見据えた対応が求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
85歳以上の6割が要介護――2040年「病院に通えない高齢者」急増の衝撃
全日本病院協会の神野正博会長による動画シリーズ「医療のトリセツ」第9回では、2040年に向けた医療の課題として「病院に通えない高齢者」を取り上げています。今後急増する85歳以上人口への対応が、医療・介護の最重要課題であることを、人口データに基づいて解説しています。動画が示す要点は3つです。第一に、2030年以降、85歳以上人口は毎年5%以上のペースで急増します。第二に、85歳以上の約6割は要介護状態にあり、自力で病院に通えないため、救急搬送と在宅医療の需要がこの年齢層に集中します。第三に、人口動態の変化は全国一律ではなく、大都市・地方都市・過疎地の3類型ごとに異なる最適解が求められます。注目すべきは「85歳以上人口」の急増2040年に向けた人口構造の変化で最も注目すべきは、85歳以上人口の急激な増加です。神野会長は、従来の棒グラフではなく「毎年の増加率」を折れ線グラフで示すことで、この変化の大きさを浮き彫りにしています。若年層の人口は毎年一貫して減少を続けます。一方、65歳以上人口の増加率はすでに緩やかであり、神野会長は「年金問題はこれから大きな話題にはなってこない」と指摘しています。65歳以上全体に対して、85歳以上人口の増加率は際立っています。特に2030年頃には毎年5%以上の増加が見込まれます。この増加率は、医療・介護の需要構造を根本から変える規模です。この85歳以上人口の急増が、今後の医療・介護の需要構造を根本から変えることになります。85歳以上の6割が「自力で病院に通えない」85歳以上人口の急増が深刻な問題となる最大の理由は、要介護認定率の高さにあります。75歳以上の約3割、85歳以上の約6割が要介護状態です。要介護状態とは、自力で病院に通うことができない状態を意味します。この「病院に通えない高齢者」の増加は、救急搬送の需要に直結します。自分で車を運転できない要介護高齢者が急変した場合、頼れるのは救急車です。神野会長が示すデータによれば、2040年に向けて増加する救急搬送の大部分は85歳以上が占めます。救急搬送と同様に、在宅医療の需要も85歳以上に集中します。在宅医療需要の増加分は、ほとんどが85歳以上の人口増によるものです。神野会長はこの点を踏まえ、「患者を待たせる広い外来」という従来型の病院のあり方を問い直す必要があると訴えています。大都市・地方都市・過疎地で異なる課題85歳以上人口の急増という課題は、全国一律ではありません。神野会長は、地域を大都市・地方都市・過疎地の3類型に分けて、それぞれ異なる人口動態を示しています。大都市型では、若年層は減少するものの、高齢者は相当数増加します。医療・介護の需要が大幅に拡大するため、提供体制の量的な確保が急務となります。地方都市(県庁所在地級)では、若年層の減少がより顕著になる一方、高齢者数はほぼ横ばいとなります。過疎地型では、若年層が大幅に減少し、高齢者も減少に転じます。医療提供体制の維持そのものが課題となる地域です。このように、地域の類型によって課題の性質が根本的に異なります。神野会長が強調するように、画一的な解決策ではなく、地域ごとの最適解を見つけることが求められています。まとめ:「病院に通えない高齢者」への対応が問われている2040年に向けた医療の最重要課題は、急増する85歳以上の「病院に通えない高齢者」への対応です。85歳以上の約6割が要介護状態にあり、救急搬送と在宅医療の需要はこの年齢層に集中します。さらに、大都市・地方都市・過疎地で人口動態が大きく異なるため、地域ごとの最適解を模索する必要があります。外来中心の病院のあり方を根本から見直す時期に来ていると言えるでしょう。動画では、こうした課題をデータに基づいて解説しています。2040年に向けた医療・介護のあり方を考えるきっかけとして、ぜひご覧ください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe