【令和8年3月】歯科用貴金属価格が大幅引き上げ|金素材価格高騰で全9品目が値上げへ

Feb 2, 2026 岡大徳

令和8年1月16日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第642回)において、歯科用貴金属価格の令和8年3月随時改定が議題となりました。金素材価格の急騰を背景に、全9品目の告示価格が引き上げられます。本稿では、この随時改定の内容と歯科医療への影響について解説します。今回の随時改定では、14カラット金合金インレー用が15,991円(前回比約20%増)、金銀パラジウム合金が4,779円(前回比約26%増)となります。金素材価格は令和7年後半から急騰しており、1g当たり20,000円を超える水準に達しています。この価格上昇は、歯科医院の材料費負担に直接影響を与えるため、経営面での対応が求められます。随時改定の仕組み歯科用貴金属価格の随時改定は、市場価格の変動を診療報酬に反映させる制度です。この制度は、変動幅にかかわらず、平均素材価格に応じて年4回(3月、6月、9月、12月)の見直しを行います。平均素材価格の算出方法は、金、銀、パラジウムの各取引価格平均値に含有比率を乗じて計算します。算出期間は、前回改定以降から改定2カ月前までの期間の取引価格を用います。たとえば、令和8年3月改定では、令和7年10月から12月までの取引価格が基準となります。告示価格の算定式は、以下のとおりです。まず、補正幅として「X(前回改定以降の平均素材価格)-Y(前回改定で用いた平均素材価格)」を算出します。次に、「前回の基準材料価格+補正幅×1.1」により試算価格を求め、これを告示価格とします。令和8年3月改定の具体的内容今回の随時改定では、すべての歯科用貴金属が値上げとなります。主要品目の改定内容は以下のとおりです。14カラット金合金は、インレー用が15,991円(令和7年12月改定時13,287円)、鉤用が14,682円(同11,978円)となります。いずれも約20%の引き上げです。14カラット金合金鉤用線は14,777円、金ろうは14,766円となり、同様の上昇幅を示しています。金銀パラジウム合金(金12%以上)は、4,779円(令和7年12月改定時3,802円)となります。上昇率は約26%に達し、金合金以上の伸びを示しています。金銀パラジウム合金ろう(金15%以上)も6,446円(同5,435円)へ約19%上昇します。銀合金については、第1種が262円(同207円)、第2種が287円(同232円)となります。銀合金の上昇率は約24〜27%です。一方、銀ろうは293円(同261円)で、上昇率は約12%にとどまります。素材価格の変動状況金素材価格は、令和7年後半から急激な上昇を続けています。14カラット金合金の平均素材価格を見ると、X期間(令和7年10月〜12月)は12,028.8円、Y期間(令和7年7月〜9月)は9,570.8円となり、約26%上昇しました。この上昇傾向は、国際的な金価格の高騰を反映しています。資料に示された変動推移グラフでは、金素材価格が令和4年(2022年)の約7,000円水準から、令和7年(2025年)後半には20,000円を超える水準まで上昇していることが確認できます。特に令和7年後半の上昇は顕著であり、わずか数カ月で5,000円以上の値上がりを記録しています。金銀パラジウム合金(金12%以上)の平均素材価格も同様の傾向を示しています。X期間で4,053.7円、Y期間で3,165.5円となり、約28%の上昇となりました。まとめ令和8年3月の歯科用貴金属価格の随時改定では、金素材価格の急騰を受けて、全9品目が値上げとなります。14カラット金合金インレー用は15,991円、金銀パラジウム合金は4,779円となり、いずれも20%以上の上昇です。歯科医院においては、材料費の上昇を踏まえた経営対応が必要となります。今後も金素材価格の動向を注視し、次回以降の随時改定に備えることが重要です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

令和8年度薬価改定|市場拡大再算定の対象13成分31品目を徹底解説

Feb 1, 2026 岡大徳

中央社会保険医療協議会(中医協)は、令和8年1月16日の総会(第642回)において、市場拡大再算定の対象品目を公表しました。市場拡大再算定とは、薬価収載後に市場規模が大幅に拡大した医薬品の薬価を引き下げる制度です。この記事では、令和8年度薬価改定における市場拡大再算定の対象品目と制度改革のポイントを解説します。令和8年度の市場拡大再算定は、13成分31品目が対象となりました。内訳は内用薬が7成分22品目、注射薬が6成分9品目です。対象品目には、効能追加による市場拡大を理由とするものが多く、エンレストやリクシアナは持続可能性特例価格調整の対象となっています。また、改定時加算の対象として13成分24品目が選定されており、小児適応や希少疾病に係る加算が適用されます。市場拡大再算定の対象品目市場拡大再算定の対象となった13成分31品目のうち、効能追加や剤形追加を理由とするものが大部分を占めています。精神神経用剤、高脂血症用剤、腫瘍用薬など、幅広い薬効分類の医薬品が含まれています。効能追加による市場規模拡大を理由とする主な品目には、レキサルティ(ブレクスピプラゾール)、オテズラ(アプレミラスト)、セムブリックス(アシミニブ塩酸塩)があります。レキサルティは精神神経用剤として、オテズラは代謝性医薬品として、それぞれ効能追加により市場が拡大しました。セムブリックスは成人と小児の同時開発に係る補正加算5%が適用されます。注射薬では、スキリージ(リサンキズマブ)、サークリサ(イサツキシマブ)、ダラキューロ(ダラツムマブ配合剤)、パドセブ(エンホルツマブベドチン)が効能追加を理由に対象となりました。ダラキューロには真の臨床的有用性の検証に係る補正加算5%が適用されます。原価計算方式で算定された品目として、ジャカビ(ルキソリチニブリン酸塩)、ロミプレート(ロミプロスチム)、イラリス(カナキヌマブ)が市場規模の拡大を理由に対象となりました。これらの品目は、当初の予想を大きく上回る市場拡大が認められたものです。持続可能性特例価格調整の対象品目持続可能性特例価格調整は、年間販売額が極めて大きい医薬品を対象とする制度です。エンレストとリクシアナの2成分がこの対象となりました。エンレスト(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)は、年間販売額が1,000億円を超えたことで持続可能性特例価格調整の対象となりました。50mg、100mg、200mgの3規格が対象です。この医薬品は血圧降下剤および循環器官用薬として広く使用されています。リクシアナ(エドキサバントシル酸塩水和物)は、年間販売額が1,500億円を超えたことで対象となりました。通常錠とOD錠を合わせた6規格が対象です。血液凝固阻止剤として、心房細動患者の脳卒中予防などに広く処方されています。改定時加算の対象品目改定時加算は、薬価収載後に小児適応の追加や希少疾病の効能追加などがあった品目に適用される制度です。令和8年度は13成分24品目が対象となりました。小児適応の効能追加等に係る加算の対象には、ウプトラビ(セレキシパグ、加算率15%)、マグミット(酸化マグネシウム、加算率5%)、リアルダ(メサラジン、加算率10%)、プレバイミス(レテルモビル、錠剤で加算率15%、注射剤で加算率20%)があります。これらは小児への適応拡大により、臨床上の貢献が認められた品目です。希少疾病の効能追加等に係る加算の対象には、ファビハルタ(イプタコパン塩酸塩水和物、C3腎症、加算率15%)、バビースモ(ファリシマブ、網膜色素線条、加算率15%)、ヒフデュラ(エフガルチギモドアルファ配合剤、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎、加算率10%)があります。これらは希少疾病への適応拡大が評価されました。迅速導入による効能追加等に係る加算の対象には、アムヴトラ(ブトリシランナトリウム、心アミロイドーシス、加算率5%)、イミフィンジ(デュルバルマブ、限局型小細胞肺癌、加算率5%)があります。真の臨床的有用性の検証に係る加算として、リベルサス(セマグルチド、2型糖尿病、加算率5%)、イムデトラ(タルラタマブ、小細胞肺癌、加算率5%)が対象となりました。国内の標準的治療法となった既収載品に係る加算として、ビロイ(ゾルベツキシマブ、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌、加算率5%)が対象となりました。この加算は、市販後に診療ガイドラインにおいて標準療法となったと評価された品目に適用されるものです。令和8年度制度改革の重要な変更点令和8年度薬価制度改革では、市場拡大再算定の類似品に関する取り扱いが大きく変更されました。企業の予見可能性を確保しつつ、国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する観点から見直しが行われています。従来、市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整の対象品の類似品には、連動して再算定が適用されていました。この連動ルールが廃止され、類似品への自動適用はなくなりました。この変更により、後発品を開発した企業が予期せぬ薬価引き下げを受けるリスクが軽減されます。一方で、薬理作用類似薬については新たな仕組みが導入されました。レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)により使用量を把握し、効能追加等の有無に関わらず、薬価改定以外の機会も含めて市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整を実施します。対象となる薬理作用類似薬には、セムブリックスの類似薬(ボスチニブ水和物、ポナチニブ塩酸塩)、スキリージの類似薬(ミリキズマブ、グセルクマブ)、サークリサ・ダラキューロの類似薬(ダラツムマブ)があります。まとめ令和8年度の市場拡大再算定は、13成分31品目を対象として実施されます。効能追加による市場拡大を理由とするものが多く、エンレストとリクシアナは持続可能性特例価格調整の対象となりました。改定時加算では13成分24品目が選定され、小児適応や希少疾病に係る加算が適用されます。制度改革により類似品への連動適用は廃止されましたが、薬理作用類似薬についてはNDBを活用した新たな仕組みで再算定が実施されます。最終的な薬価は、市場拡大再算定による算定額と市場実勢価格に基づく薬価改定等による算定額のうち、低い額が適用されます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

【令和8年度薬価改定】3つの柱で理解する薬価算定基準の見直しポイント

Jan 31, 2026 岡大徳

令和7年12月26日、中央社会保険医療協議会は「令和8年度薬価制度改革の骨子」を了解しました。この骨子に基づき、薬価算定基準の改正案が示されています。本稿では、令和8年度薬価改定における主要な見直し内容を解説します。今回の改定は、国民負担の軽減と創薬イノベーションの両立、後発品を中心とした医薬品の安定供給確保、高額医薬品への対応の3つを柱としています。具体的には、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の名称を「革新的新薬薬価維持制度」に変更すること、長期収載品の薬価適正化を強化すること、後発品の価格帯集約ルールを見直すこと、市場拡大再算定の類似品への適用を廃止することが主な改正点です。1. 国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する評価制度今回の改定では、新薬の適切な評価と既収載品の価格適正化を通じて、国民負担の軽減と創薬イノベーションの両立を図ります。薬価算定方法の見直し、補正加算制度の改善、新薬創出等加算の再編成、市場拡大再算定の名称変更と類似品適用の廃止、長期収載品の薬価適正化強化が実施されます。類似薬効比較方式における算定方法の変更類似薬効比較方式において、比較薬が特定の補正加算を受けている場合の算定方法が変更されます。比較薬が市場性加算(Ⅰ)、市場性加算(Ⅱ)、特定用途加算、小児加算、先駆加算、迅速導入加算の適用を受けている場合は、当該加算額を控除した額を比較薬の薬価とみなして一日薬価合わせを行います。この変更により、新薬が比較薬と同じ補正加算の適用を受けることが可能となります。原価計算方式における販売費及び一般管理費の計上原価計算方式における販売費及び一般管理費の係数について、運用上の対応が明確化されます。希少疾病用医薬品等では、平均を超えた係数を用いることが妥当とされる場合、上限である70%を超えた係数を用いることが可能であることが明確化されます。市場性加算(Ⅰ)と小児加算の併加算が可能に成人及び小児の同時開発を促進するため、市場性加算(Ⅰ)と小児加算の併加算が可能となります。ただし、小児のみが希少疾病用医薬品の指定範囲とされた場合は除外されます。また、市場性加算(Ⅰ)の加算率について、原則として現行の加算率の範囲(下限10%)を維持しつつ、希少疾病用医薬品の指定基準への該当性の内容に応じて、例外的に5%とすることが可能となります。治験実施の困難さ等を踏まえて加算率を柔軟に判断することとされています。規格間調整のみによる新薬の薬価算定における補正加算規格間調整のみによる新薬の薬価算定において、新薬が市場性加算(Ⅰ)、先駆加算または迅速導入加算の要件を満たす場合には、これらの補正加算の適用を受けることが可能となります。標準的治療法に関する薬価改定時の加算薬価収載時に標準的治療法に関する補正加算を適用していない品目について、新たな評価の仕組みが導入されます。薬価収載後に、新たに一般診療に用いられている国内の診療ガイドラインにおいて標準療法となったと評価できる場合は、薬価改定時に加算を適用することとなります。新薬創出等加算から「革新的新薬薬価維持制度」への名称変更新薬創出・適応外薬解消等促進加算の名称が「革新的新薬薬価維持制度」に変更されます。英語名は「Patent-period price Maintenance Program for Innovative Drugs (PMP)」です。この名称変更により、特許期間中の革新的な新薬の薬価が維持されることがより明確になります。品目要件についても見直しが行われます。制度の透明性を高める観点から、以下の医薬品については品目要件から削除され、今後新たに薬価収載される品目には適用しないこととなります。第一に、新規作用機序医薬品または新規作用機序医薬品に相当すると認められる効能若しくは効果が追加されたものであって、別表10の基準に該当する医薬品です。第二に、新規作用機序医薬品(別表10の基準に該当するものに限る)を比較薬として算定された医薬品または新規作用機序医薬品を比較薬として算定された医薬品を比較薬として算定された医薬品です。乖離率が平均乖離率を超える品目は引き続き対象外となります。市場拡大再算定の特例から「持続可能性特例価格調整」への名称変更市場拡大再算定の特例の名称が「持続可能性特例価格調整」に変更されます。英語名は「Special Price Adjustment for Sustainable Health System and Sales Scale (SPA-SSS)」です。この名称変更により、イノベーションの評価と国民皆保険の維持を両立するための対応という趣旨が明確化されます。市場拡大再算定の類似品への適用廃止企業の予見可能性を確保し、国民負担の軽減と創薬イノベーションを両立する観点から、市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整対象品の類似品への市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整の適用は廃止されます。市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整対象品目の薬理作用類似薬については、効能追加等の有無に関わらず、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)により使用量を把握し、薬価改定以外の機会も含め、市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整を実施することとなります。長期収載品の薬価の更なる適正化長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却を促進するため、薬価上の措置が大幅に見直されます。後発品への置換え期間は後発品上市後5年とし、5年を経過した長期収載品の薬価は後発品置換率によらずG1を適用します。G1適用後は後発品の加重平均薬価を基準として段階的に引き下げられます。G1品目の引下げ方式は次のとおりです。G1品目に該当してから初めて薬価改定を受ける品目は後発品価格の加重平均値の2.5倍、2年経過後は2倍、4年経過後は1.5倍、6年経過後は加重平均値となります。Z2およびG2は廃止されます。補完的引下げ(C)は廃止され、G1の補完的引下げは後発品置換率によらず薬価の引下げ率を2.0%とします。G1適用後の薬価は、G1による引下げ後の額と2.0%の補完的引下げ後の額のうち、いずれか低い額となります。後発品の加重平均薬価まで価格を引き下げた長期収載品にはG1を適用しません。バイオシミラーが収載されているバイオ先行品についてもG1が適用されます。長期収載品の引下げの下限及び円滑実施措置引下げの下限及び円滑実施措置については廃止されます。ただし、令和8年度薬価制度改革における長期収載品の薬価の更なる適正化では大きな制度変更を行うことから、令和8年度薬価改定に限り、これらの措置が適用されます。具体的には、品目ごとに引下げ率が50%を超えるものについては50%を上限として適用されます。また、企業ごとに影響率(当該企業の医療用医薬品の総売上に対する本規定の適用により減少すると見込まれる売上の割合)が5%を超える企業については、円滑実施係数を乗じた率となるように適用されます。令和6年度薬価制度改革時点でG2に該当した品目の経過措置令和6年度薬価制度改革時点においてG2に該当した品目については、以下のとおり取り扱われます。G2品目に該当してから初めて薬価改定を受けるものまたはG2品目に該当してから2年を経過した後に初めて薬価改定を受けるものは、G1品目に該当してから2年を経過した後に初めて薬価改定を受けるものとして取り扱われます。G2品目に該当してから4年を経過した後に初めて薬価改定を受けるものまたはG2品目に該当してから6年を経過した後に初めて薬価改定を受けるものは、G1品目に該当してから4年を経過した後に初めて薬価改定を受けるものとして取り扱われます。オーソライズド・ジェネリック(AG)・バイオAGの取扱い先発品と有効成分、原薬、添加物、製法等が同一のバイオ医薬品であって、後発品として薬事承認を受けたもの(バイオAG)の薬価は、今後新たに薬価収載される品目に限り、バイオ先行品の薬価と同額となります。この措置により、バイオ後続品(いわゆるバイオシミラー)との適切な競争環境の形成・維持が図られます。オーソライズド・ジェネリック(AG)についても、後発品の適切な競争環境の形成・維持のため、先発品と有効成分、原薬、添加物、製法等が同一の後発品(今後新たに薬価収載される品目に限る)の薬価は、先発品の薬価と同額となります。先発品の薬価と同額で算定されたAGまたはバイオAGについては、薬価改定時に当該AGと先発品、当該バイオAGとバイオ先行品について、それぞれ薬価を加重平均し価格帯を集約します。2. 後発品を中心とした医薬品の安定供給確保のための対応医薬品の安定供給を確保するため、後発品の価格帯集約ルールの見直しと薬価の下支え制度の充実が図られます。後発品の価格帯集約ルールの見直し注射薬およびバイオシミラーについては、同一規格・剤形内の品目数が少ない状況を踏まえ、最高価格の30%を下回る薬価のものを除き、価格帯集約の対象外となります。G1品目に係る後発品の1価格帯集約は廃止されます。企業指標の評価結果を活用した価格帯集約の特例において、対象企業、対象品目、適用条件のすべての要件を満たす品目については、注射薬またはバイオシミラーに該当しない品目であっても、価格帯集約の対象外となります。最低薬価の見直し最低薬価について複数の改正が行われます。外用塗布剤については規格単位に応じた最低薬価が新設されます。点眼・点鼻・点耳液については点眼剤の最低薬価が適用されます。最低薬価は全体的に引き上げられます。ただし、令和7年度薬価調査結果において前回の令和6年度薬価調査における最低薬価品目の平均乖離率を超えた乖離率であった品目は引き上げの対象外となります。引き上げた最低薬価を下回る価格の基礎的医薬品については、引き上げ後の最低薬価と同水準までその薬価が引き上げられます。不採算品再算定の見直し不採算品再算定について、従来の「当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬がある場合には、全ての類似薬について該当する場合に限る」という要件が削除されます。該当する類似薬のシェアが5割以上であって他の要件を満たす場合は、不採算品再算定の対象となります。組成、剤形区分及び規格が同一である全ての類似薬の乖離率の平均が全ての既収載品の平均乖離率を超える品目は不採算品再算定の対象外となります。不採算品再算定の適用は医療上の必要性が特に高い品目を対象とします。具体的には、基礎的医薬品とされたものと組成及び剤形区分が同一である品目、重要供給確保医薬品に位置付けられている品目、極めて長い使用経験があり供給不足による医療現場への影響が大きいと考えられる品目が対象となります。極めて長い使用経験がある品目とは、昭和42年以前に収載された医薬品を指します。3. 高額な医薬品に対する対応高額な医薬品に対する対応として、市場拡大再算定および持続可能性特例価格調整の適用が強化されます。年間1,500億円の市場規模を超えると見込まれる高額な医薬品およびその類似薬については、効能追加等の有無に関わらず、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)により使用量を把握します。この使用量把握に基づき、薬価改定以外の機会も含め、市場拡大再算定または持続可能性特例価格調整が実施されます。持続可能性特例価格調整の引き下げ幅の上限についても見直しが行われます。年間1,500億円の市場規模を超えると見込まれる高額な医薬品に対する持続可能性特例価格調整の適用について、年間販売額が予測販売額から10倍以上かつ3,000億円超に急拡大した場合に限り、引き下げ幅の上限値が50%から66.7%(2/3)に引き上げられます。まとめ令和8年度薬価制度改革は、3つの柱に基づいて実施されます。第一に、国民負担の軽減と創薬イノベーションの両立を目指し、新薬創出等加算を「革新的新薬薬価維持制度」に改称するとともに、長期収載品の薬価適正化を強化します。市場拡大再算定の類似品への適用は廃止され、企業の予見可能性が確保されます。第二に、後発品を中心とした医薬品の安定供給確保のため、価格帯集約ルールの見直しと最低薬価の引上げを実施します。第三に、高額医薬品に対しては、NDBによる使用量把握と再算定の適用強化により対応し、特に急拡大した品目については引下げ幅の上限を66.7%に引き上げます。長期収載品の引下げの下限および円滑実施措置は廃止されますが、令和8年度薬価改定に限り経過措置として適用されます。これらの改正は、令和8年4月から順次施行される予定です。医療機関および薬局においては、今後の通知等を確認の上、適切な対応をお願いします。本稿は中央社会保険医療協議会 総会(第642回)の資料「令和8年度薬価改定に係る薬価算定基準の見直しについて(案)」に基づいて作成しています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

令和8年度保険医療材料制度改革|6分野の見直し内容を徹底解説

Jan 30, 2026 岡大徳

中央社会保険医療協議会(中医協)は令和8年1月16日の総会において、令和8年度保険医療材料制度の見直し案を了解しました。この見直しは、令和7年12月26日に了解された「令和8年度保険医療材料制度改革の骨子」に基づくものです。本稿では、特定保険医療材料の保険償還価格算定基準等の改正内容について、製造販売業者や医療機関の実務担当者向けに解説します。今回の制度見直しは7分野で構成されますが、改正事項があるのは6分野です。イノベーションの評価、プログラム医療機器の評価、医療機器の安定供給、内外価格差の是正、市場拡大再算定、保険適用手続に係る事項において改正が行われます。主な改正点として、チャレンジ申請におけるデータの客観性担保の強化、プログラム医療機器の算定方法の明確化、小児用医療機器への配慮の拡充、不採算品再算定の対象拡大、保険適用手続の効率化が挙げられます。以下、各分野の改正内容を詳しく説明します。イノベーションの評価:チャレンジ申請と体外診断用医薬品の見直しイノベーションの評価に関する改正では、チャレンジ申請の厳格化と体外診断用医薬品の評価基準の明確化が主な内容です。これらの改正は、データの客観性を高め、臨床上の有用性に基づく適正な評価を実現することを目的としています。チャレンジ申請については、3つの観点から見直しが行われました。第一に、データ収集において原則として比較試験が求められます。ランダム化比較試験(RCT)が望ましいとされますが、RCTが困難な場合はバイアスのリスクを軽減する方法を十分に検討した研究計画を示す必要があります。チャレンジ権取得を希望する時点で既に開始されている臨床研究等についても、研究計画等の妥当性が示されれば評価対象となり得ることが明確化されました。第二に、データ提出方法として査読付き論文の公表が必須となります。データの客観性を担保する観点から、審議の前提として査読付き論文として公表されたデータの提出が求められます。製造販売業者等による独自の解析等については、評価対象としないことが明確化されました。第三に、手続の効率化として、実現可能性の高い研究計画については迅速な権利付与が可能となります。RCTであり実現可能性も高い研究計画については、事務局による事前確認を経て保険医療材料等専門組織(保材専)委員長が認めた場合に限り、保材専への報告をもってチャレンジ権を付与できます。一方、既存治療との比較が困難と判断されるものや実現可能性が認められないもの等については、チャレンジ権を付与せず、その理由を製造販売業者に伝達することとなりました。体外診断用医薬品の保険適用における評価基準も明確化されました。製造販売業者が区分E3(新項目、改良項目)の保険適用を希望する体外診断用医薬品について、保材専が以下のいずれかに該当すると判断した場合はF区分となります。臨床上の位置づけ(対象患者、実施時期)が不明確である場合、臨床上の位置づけに応じた性能を有していない場合、当該検査の結果により治療が変化する等の臨床上の有用性が示されていない場合がこれに該当します。希少疾病等の検査に用いる体外診断用医薬品等についても評価の拡充が図られました。想定される検査回数が少ない再生医療等製品の適応判定の補助に必要な検査に適用が拡大されます。技術料の見直しにおいて参照する準用技術料は、希少性の重複評価を避けるため、保険収載時に準用した技術料であることが明確化されました。プログラム医療機器の評価:算定方法と選定療養の明確化プログラム医療機器の評価に関する改正では、算定方法の明確化と選定療養の活用方法の見直しが行われました。これらの改正は、プログラム医療機器の適正な評価と患者への説明方法の柔軟化を目的としています。特定保険医療材料として評価されるプログラム医療機器の算定方法が明確化されました。特定保険医療材料として評価されるプログラム医療機器については、初・再診料、プログラム医療機器指導管理料(導入期加算を含む)、その他の医学管理料等、特定保険医療材料料を組み合わせて算定できることが明示されました。この明確化により、製造販売業者が保険適用希望書を提出する際の算定イメージが具体化されます。選定療養の活用方法についても見直しが行われました。主として患者が操作等を行うプログラム医療機器であって、保険適用期間の終了後において患者の希望に基づき使用することが適当と認められるものについて、選定療養を活用する場合があります。この場合、各医療機関が設定する特別の料金の徴収についての患者への説明は、患者が使用するプログラム医療機器のアプリケーション内で行うことも可能であることが明確化されました。医療機器の安定供給:小児用医療機器と不採算品再算定医療機器の安定供給に関する改正では、小児用医療機器への配慮の拡充、不採算品再算定の対象拡大、市場実勢価格が償還価格を上回る場合の対応が定められました。これらの改正は、医療現場への安定的な製品供給を確保することを目的としています。小児用医療機器については、その特殊性への配慮が強化されました。小児用医療機器は、成長に伴い使用する医療機器のサイズが変化すること等の特殊性や対象患者数が少ないことに配慮が必要です。新規機能区分の基準材料価格が外国平均価格の0.8倍以下となる場合は、原価計算方式による算定を製造販売業者が希望できることとなりました。機能区分の細分化については、業界の要望等も踏まえつつ、薬事承認事項との整合性も確認しながら引き続き検討されます。不採算品再算定の対象選定基準における「代替するものがないこと」の要件が拡充されました。従来のパターン1(1社でシェアの大半を占める場合)に加え、パターン2(上位2社で同一機能区分内のシェアの大半を占める場合)についても、両者が供給困難となった場合においては安定供給に支障をきたすと考えられるため、代替困難性に関する要件を満たすこととなりました。パターン3(シェアが分散している場合)については、他の製造販売業者が不足分を供給できないとまではいえないため、不採算品再算定での対応は行われません。市場実勢価格が償還価格を上回る機能区分への対応も、シェア状況を踏まえて整理されました。パターン1及びパターン2においては、供給側の価格決定力が強いことが想定されるため、市場実勢価格に基づく保険償還価格の引き上げは行われません。パターン3については、競争的市場であり、市場実勢価格の加重平均値や物価変動等を参考にしつつ保険償還価格を設定することとなりました。内外価格差の是正と市場拡大再算定内外価格差の是正と市場拡大再算定に関する改正では、外国価格の算出方法の見直しと、市場拡大再算定の運用明確化が行われました。これらの改正は、適正な価格形成と制度の透明性向上を目的としています。外国価格再算定における各国平均価格の算出方法が見直されました。アメリカ合衆国、連合王国、ドイツ、フランス及びオーストラリアの各国の平均価格については、外国価格調査の結果に加え、国内での使用状況等を考慮した加重平均により算出されます。外国平均価格については、従来どおり各国の平均価格を相加平均して算出します。市場拡大再算定については、複数の運用が明確化されました。機能区分の見直しにおいて単に機能区分の名称のみが変更された場合は、名称変更前の機能区分の設定時期や予想年間販売額等を確認します。機能区分の見直しにより機能区分が新設された場合は、旧機能区分が設定された日から10年を経過した後の最初の材料価格改定以前か以後かによって、基準年間販売額の決定方法が異なります。チャレンジ申請により再評価を受け、機能区分が設定される際に原価計算方式以外の方式により算定された特定保険医療材料についても、市場拡大再算定の対象となり得ることが明確化されました。技術料包括の医療機器及び体外診断用医薬品についても、市場拡大再算定の計算方法が新たに設定されました。改定後の技術料は、医療機器や体外診断用医薬品に係る金額の割合と市場規模拡大率を考慮した計算式により算出されます。技術料の見直しの対象については、保険医療材料等専門組織において検討した上で、中医協総会で議論することとなりました。保険適用手続の効率化保険適用手続に関する改正では、医療技術評価分科会での評価対象の明確化、適応判定用体外診断用医薬品の保険適用時期の特例、各種手続の簡素化など、複数の効率化措置が講じられました。これらの改正は、患者アクセスの向上と手続の迅速化を目的としています。医療技術評価分科会での評価を要する場合の例示が見直されました。類似する既存技術に対する評価との整合性の観点から当該既存技術に対する評価を同時に見直す必要があるもの、保険適用されていない医療技術を実施する目的で使用する医療機器等、オンライン診療での実施に係る技術料がない医療技術をオンライン診療で実施することを目的とする医療機器等、複数分野で使用される医療機器等を用いた技術であり分野毎に異なる診療報酬点数が算定されるもの、管理料の新設についての審議が必要なものが該当します。評価療養の対象期間についても、患者アクセスの観点を踏まえ、直近の診療報酬改定の次の診療報酬改定での保険適用を想定した期間に見直されました。医薬品等の適応判定を目的として使用される体外診断用医薬品については、保険適用時期の特例が設けられました。医療現場への円滑な導入を支える観点から、中医協において了承された保険適用日から保険適用することとなりました。A3区分(既存技術・変更あり)の保険適用希望についても手続が簡素化されました。特定診療報酬算定医療機器の定義における一般的名称の追加のみ等を希望するものについては、事務局による事前確認を経て、希望内容が軽微な変更にとどまるものとして保材専委員長が認めた場合においては、保材専への報告をもって決定案とすることができます。承認事項の一部変更承認等後の保険適用希望に係る取扱いも明確化されました。製造販売業者等が承認事項の一部変更承認等を行った後に保険適用希望書を提出する場合において、重複した議論を避けるため、保険適用希望が可能な内容は当該一部変更承認等に係る事項に限ることとされました。軽微変更届に伴う保険適用希望書の提出も可能となりました。PMDAへの簡易相談を経て適切に軽微変更届が行われたもののうち、構成品やサイズバリエーションの追加、一般的名称の変更等に伴い決定区分B1(既存機能区分)を希望する場合に限り、保険適用希望書を提出できることとなりました。保険適用希望書の様式についても見直しが行われました。適切なイノベーションの評価及び保険適用に係る迅速な手続の促進の観点から、特に重要な論点を踏まえつつ、簡潔に要点を整理して記載するよう様式が見直されます。製造販売業者から不服申し立てがあった場合の取扱いも明確化されました。製造販売業者が保材専の決定に対して不服を申し立てる場合は、原則として不服意見書が提出された月の翌月に2回目の保材専を実施します。2回目の保材専後に期日内に企業からの同意が得られない場合は、保険適用希望書を取り下げたものとして取り扱われます。保険適用希望書の取り下げがあった場合でも、再度提出することは妨げられません。まとめ令和8年度保険医療材料制度の見直しは、イノベーションの適正評価、プログラム医療機器の算定明確化、医療機器の安定供給確保、保険適用手続の効率化を柱としています。チャレンジ申請では査読付き論文の提出が必須となり、データの客観性が重視されます。プログラム医療機器については、特定保険医療材料として評価される場合の算定方法が明確化されました。小児用医療機器や不採算品については、安定供給の観点から配慮が拡充されました。保険適用手続では、軽微な変更の簡素化、適応判定用体外診断用医薬品の保険適用時期の特例、様式の見直しなど、迅速化が図られています。製造販売業者は、これらの改正内容を踏まえた対応が求められます。 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令和8年度費用対効果評価制度の見直し|4つの改正ポイントと今後の方向性を解説

Jan 29, 2026 岡大徳

令和8年1月16日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第642回)において、令和8年度費用対効果評価制度の見直し案が了承されました。本稿では、令和7年12月26日に中医協で了解された「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子」に基づく改正内容を解説します。今回の見直しでは、品目指定手続の簡素化、比較対照技術の選定基準の明確化、追加的有用性の表現変更、価格調整範囲の見直しの4点が主な改正ポイントです。これらの改正は、制度の透明性向上と費用対効果評価のさらなる活用を目的としています。制度検証の結果|49品目の評価終了と価格調整の実績費用対効果評価制度の運用状況を振り返ると、制度導入後の新規収載数は医薬品が年間50品目前後、医療機器が年間25品目前後で推移しています。2025年9月1日までに費用対効果評価に指定された67品目の予測市場規模(ピーク時)は、中央値で年間156億円でした。評価が終了した49品目のうち、費用対効果評価分析が実施されたものは39品目です。このうち公的分析が実施されず企業分析が受け入れられたものが2品目、製造販売業者から不服申立てがあったものは20品目でした。価格調整が行われた38品目における価格調整額の割合は、中央値でマイナス4.29%となっています。比較対照技術と比べて追加的有用性が示されなかった品目も確認されています。18品目が該当し、そのうち6品目ではすべての分析対象集団で追加的有用性が示されませんでした。今後は令和8年9月に中医協で検証報告の議論を行い、制度の透明性確保の観点から分析プロセスの見直しを継続します。改正ポイント①|評価終了後の品目指定手続の簡素化費用対効果評価終了後に新たな知見が得られた場合の再指定手続が簡素化されます。従来は薬価算定組織や保険医療材料等専門組織での手続が必要でしたが、今回の改正により、費用対効果評価専門組織から直接中医協総会に品目指定を提案できるようになります。具体的には、海外評価機関での評価結果等を踏まえた国立保健医療科学院の意見を参考にして、評価に重要な影響を与える知見が得られた品目が対象です。費用対効果評価専門組織が対象品目案を決定し、中医協総会に報告します。総会での審議を経て、H3区分またはH4区分の対象品目として指定される流れになります。製造販売業者への配慮も設けられています。中医協総会での審議前に、費用対効果評価専門組織から製造販売業者へ意見を付して通知されます。不服がある場合は、指定された期限までに不服意見書を提出し、専門組織に出席して直接意見を述べることができます。改正ポイント②|比較対照技術の選定基準の明確化比較対照技術の設定に関する考え方が明確化されました。分析ガイドラインにおいて、比較対照技術は「臨床的に幅広く用いられているもののうち、治療効果がより高いものを1つ選定する」という原則が示されています。「臨床的に幅広く使用されている」の定義も整理されました。使用患者数のシェアで一律に決めるものではなく、診療ガイドラインに記載があるなど臨床的に標準的な治療法として用いられていることを意味します。治療効果の検討にあたっては、既存の公表された費用対効果評価における追加的有用性の評価も参照されます。一意的に決めることが難しい場合の対応も明記されました。無作為化比較試験(RCT)における比較対照技術、価格算定上の類似技術、費用対効果の程度等を考慮します。費用対効果の観点から相対的に安価なものを選択することもありえますが、他の要素も踏まえて最も妥当な比較対照技術を決定します。改正ポイント③|追加的有用性の表現変更費用対効果評価における「追加的有用性」の表現が変更されます。薬価算定における「有用性」との混同を避けるため、「比較技術に対する健康アウトカム指標での改善」という表現が用いられることになりました。分析ガイドラインにおいても関連する記載が整備されています。健康アウトカム指標は、臨床的な有効性、安全性、健康関連QOLの観点のうち、評価対象技術の特性を評価する上で適切なもの(真のアウトカム指標など)を用います。比較対照技術に対するRCTのシステマティックレビューを実施し、改善の有無を評価することが基本的な手順です。健康アウトカム指標での改善が示された場合は、増分費用効果比(ICER)を算出します。改善があると判断できない場合は、費用最小化分析により比較対照技術との費用比較を行います。この場合の結果は「費用削減(同等含む)」または「費用増加」として示されます。改正ポイント④|価格調整の対象範囲と方法の見直し価格引き上げの条件が変更されます。従来の「薬理作用等が比較対照技術と著しく異なること」「基本構造や作用原理が比較対照技術と著しく異なる等一般的な改良の範囲を超えた品目であること」という要件が見直されました。新たな要件は「薬理作用等が比較対照技術と異なり、臨床上有用な新規の作用機序を有すること」「基本構造や作用原理が比較対照技術と異なり、臨床上有用な新規の機序を有すること」となります。追加的有用性が示されない品目の価格調整方法も見直されます。ICERの区分が「費用増加」となった分析対象集団について、従来の有用性系加算部分に価格調整係数を乗じる方法から変更される予定です。新たな方法では、比較対照技術の1日薬価を評価対象技術の1日薬価で除した比を、価格調整前の価格に乗じて調整後価格を算出します。ただし、令和8年4月以降に評価結果が中医協に報告された品目については、施行が例外的に保留されます。令和8年9月の検証報告の議論終了後に、具体的な方法の詳細を定めた上で価格調整を実施する予定です。価格調整後の下限は価格全体の85%(調整額が15%)とすることを基本に、引き続き議論されます。今後の検討課題|介護費用・リアルワールドデータ・分析体制介護費用の取扱いについては引き続き研究が進められます。レカネマブ(レケンビ)の事例で指摘された技術的・学術的な課題を踏まえ、諸外国での介護保険制度や費用対効果評価への活用状況も参考にされます。介護費用を含めた分析については、過去の事例を分析ガイドラインで参考にできるようにしつつ、事例の集積が継続されます。リアルワールドデータの活用も検討課題です。費用対効果評価におけるリアルワールドデータ活用の課題について整理検討が行われます。データが得られた場合の取扱いについては、諸外国での活用事例を踏まえつつ引き続き検討されます。分析ガイドラインでは、レセプトやレジストリーなど既存の大規模データベースを用いた研究について、研究の質やデータベースの性質、日本への外挿可能性等を十分に説明することが求められています。分析体制の充実も重要な課題として位置付けられています。現在は立命館大学と慶應義塾大学の2大学が公的分析班として分析を担当していますが、対象品目の増加が予想される中で体制の充実が必要です。厚生労働省は関係学会等に対する制度の周知や人材育成、分析体制への支援を継続します。海外の評価実施機関における実務経験や研究機会を通じた国際的知見の早期導入支援も検討されています。まとめ|制度の透明性向上と費用対効果評価の活用拡大へ令和8年度費用対効果評価制度の見直しでは、品目指定手続の簡素化、比較対照技術の選定基準明確化、追加的有用性の表現変更、価格調整範囲の見直しが主な改正点です。これらの改正は、制度の透明性向上と政策決定の説明責任強化を目的としています。追加的有用性が示されない品目に対する価格調整方法の見直しは、費用対効果評価のさらなる活用に向けた重要なステップです。令和8年9月の検証報告を経て、具体的な運用が定まる予定です。医薬品・医療機器業界は、今後の議論の動向を注視する必要があります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

条件付き承認の再生医療等製品、保険適用ルールが変わる|中医協が新方針を決定

Jan 28, 2026 岡大徳

令和6年度に条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品2品目が、通常承認を得られずに薬価基準又は材料価格基準から削除されました。この事態を受け、中央社会保険医療協議会(中医協)は、条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品の保険適用上の償還価格算定方法を見直しました。本稿では、令和8年1月14日の中医協総会(第641回)で報告された新方針の内容を解説します。今回の見直しでは、条件及び期限付き承認という制度の特性を踏まえた対応が明確化されました。薬価又は材料価格算定時については、原価計算方式の営業利益率の係数を0.5倍とし、有用性系加算は算定時に判断しないこととなりました。収載後の対応については、費用対効果評価を本承認後に判断することとなりました。改めて承認を受けた際の対応については、補正加算の適用や費用対効果評価の該当性を改めて検討することとなりました。見直しの背景条件及び期限付き承認とは、再生医療等製品の特性を踏まえ、有効性が「推定」され安全性が「確認」された段階で、条件や期限を付して承認する制度です。この制度により、患者は新たな治療へ早期にアクセスできます。この制度の下で保険適用された製品に、想定外の事態が発生しました。令和6年度に、コラテジェンとハートシートの2品目が通常承認を得られず、薬価基準又は材料価格基準から削除されたのです。この事態を受け、中医協の合同部会(費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会)が償還価格の算定方法を検討しました。検討の前提として、条件及び期限付き承認時における有効性の推定と安全性の確認が適切に実施されること、及び承認後の計画が合理的かつ実施可能であることが置かれています。薬価又は材料価格算定時の対応新方針では、薬価又は材料価格算定時の対応として5つの項目が定められました。計算方式、営業利益率の係数、有用性系加算、その他の補正加算、外国平均価格調整の5項目です。計算方式については、通常承認を受けた製品と同様のルールが適用されます。薬価算定では類似薬効比較方式、材料価格算定では類似機能区分比較方式が原則となります。類似薬又は類似機能区分が存在しない場合は、原価計算方式により算定されます。営業利益率の係数については、条件及び期限付き承認の特性を反映した対応がとられます。原価計算方式により算定される場合、営業利益率の係数は平均的な営業利益率に0.5を乗じた値を用います。この措置は、有効性が「確認」ではなく「推定」にとどまることを踏まえたものです。有用性系加算(画期性加算、有用性加算、改良加算)については、算定時には該当性を判断しません。有効性が「確認」ではなく「推定」されたことをもって承認が付与されたことが、その理由です。これらの加算の適用は、改めて通常承認を受けた後に検討されます。その他の補正加算については、算定時に該当性を判断します。市場規模が小さいが医療上の必要性が高い医薬品の評価や、革新的な新薬の日本への早期導入の評価によるイノベーション推進という趣旨を踏まえた対応です。有効性が「推定」であることを考慮しつつも、加算の趣旨に照らして判断されます。外国平均価格調整については、要件に該当する場合は適用されます。この対応は、通常承認を受けた製品と同様です。薬価又は材料価格収載後の対応収載後の対応として、市場拡大再算定、費用対効果評価、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の3つが定められました。市場拡大再算定については、通常承認を受けた製品と同様に取り扱われます。条件及び期限付き承認であることによる特別な扱いはありません。適用する場合は、薬価算定組織又は保険医療材料等専門組織での審議を経て、中医協総会で了承されます。費用対効果評価については、改めて承認を受けた際にその該当性を判断することとなりました。条件及び期限付き承認の段階では、有効性が「推定」にとどまるため、分析に必要なデータが不十分であることが想定されるためです。本承認後に、必要なデータが揃った段階で評価の該当性が判断されます。新薬創出・適応外薬解消等促進加算(革新的新薬薬価維持制度)については、要件に該当する場合は適用されます。この加算は、革新的な新薬の研究開発を促進し、日本への早期導入を図るための制度です。条件及び期限付き承認であっても、要件を満たせば適用対象となります。改めて承認を受けた際の取り扱い条件及び期限付き承認を受けた製品が、期限内に改めて承認申請を行い通常承認を取得した場合、保険上の取り扱いが再検討されます。この再検討は、薬価算定組織又は保険医療材料等専門組織での審議を経て、中医協総会で了承されます。再検討の対象は3つあります。1つ目は、原価計算方式で算定された場合の営業利益率の係数です。2つ目は、補正加算の適用又は控除です。3つ目は、費用対効果評価の該当性です。これらについて、通常承認に係る審査の結果等を踏まえて検討されます。補正加算率の計算方法については、新規収載品目に対する補正加算率の算式と同様のルールが適用されます。算定時に判断しなかった有用性系加算についても、この段階で適用の可否が検討されます。まとめ今回の見直しは、条件及び期限付き承認という制度の特性を保険適用上の取り扱いに反映させるものです。有効性が「推定」にとどまる段階では、営業利益率の係数を0.5倍とし、有用性系加算は判断を保留します。本承認後に改めて、これらの項目や費用対効果評価の該当性が検討されます。中医協は、この取り扱いについて継続的な見直しを予定しています。条件及び期限付き承認を受けた製品の事例が集積するなど、状況の変化があった場合には、中医協総会に報告し、必要に応じて見直しが審議されます。再生医療等製品の保険適用は、国民皆保険の堅持とイノベーションの推進、患者への治療アクセス確保のバランスの中で、今後も検討が続けられます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

エレビジス点滴静注の保険適用審議|DMD遺伝子治療の承認審査と安全対策を解説

Jan 27, 2026 岡大徳

中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第641回、令和8年1月14日開催)において、再生医療等製品「エレビジス点滴静注」の医療保険上の取扱いが審議されました。本品はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する遺伝子治療製品であり、令和7年5月13日に条件及び期限付承認を取得しています。中医協では、承認審査の経緯、安全対策の状況、保険適用の方針という3つの観点から議論が行われました。本品は、米国で既に本承認されており、長期の経過観察により有効性の確認が可能になると期待されています。主要評価項目では統計学的有意差は認められなかったものの、副次評価項目で運動機能の改善が確認されました。海外の歩行不能患者(適応外)における死亡例を受けて安全対策が強化されており、関連学会との連携体制も整備されています。今回の審議では、医薬品の例により対応し、薬価算定組織で償還価格を検討する方針が示されました。エレビジス点滴静注の製品概要エレビジス点滴静注は、DMD患者の筋機能改善を目的とした遺伝子治療製品です。本品は中外製薬株式会社が製造販売を行い、希少疾病用再生医療等製品として承認されました。適応は、抗AAVrh74抗体が陰性、歩行可能、3歳以上8歳未満のいずれも満たすDMD患者に限定されています。本品の作用機序は、マイクロジストロフィンタンパク質の発現による筋機能の改善です。静脈内に投与された本品が骨格筋細胞および心筋細胞に感染し、搭載された遺伝子が細胞核内にエピソームとして留まります。この遺伝子から発現したマイクロジストロフィンタンパク質が筋細胞膜を安定化させることで、筋破壊を防ぎ、筋機能の改善が期待されます。投与方法は、体重に応じた用量を60分から120分かけて静脈内に単回投与します。体重10kg以上70kg未満の患者には1.33×10¹⁴ベクターゲノム/kgを、体重70kg以上の患者には9.31×10¹⁵ベクターゲノムを投与します。再投与は行いません。製造販売承認審査の経緯と有効性評価本品の承認審査では、有効性の評価方法と過去の再生医療等製品との比較が論点となりました。令和7年5月14日の中医協総会において、1号および2号委員から有効性推定の根拠と本承認の見通し、過去に保険適用から削除された2製品(ハートシート、コラテジェン)の課題を踏まえた審査であるかについて説明を求める意見が出されました。主要評価項目のNSAA総スコアでは、プラセボ群に対する優越性は示されませんでした。NSAA総スコアとは、4歳以上のDMD男児における歩行能力を評価するために開発された機能尺度です。第Ⅲ相試験(301試験)は4歳以上8歳未満の男児患者125例を対象に実施され、NSAA総スコアのベースラインから投与後52週までの変化量は、本品群(63例)で2.52±3.31、プラセボ群(61例)で1.86±3.18でした。調整済み平均値の群間差は0.65(95%CI:-0.45〜1.74)であり、統計学的に有意な差は認められませんでした。なお、承認された適応は3歳以上8歳未満の患者であり、臨床試験の対象年齢より1歳低く設定されています。一方、副次評価項目では運動機能の改善が確認されました。床上起き上がり時間では群間差-0.64秒(95%CI:-1.06〜-0.23)、10m歩行/走行時間では群間差-0.42秒(95%CI:-0.71〜-0.13)、4段階段昇り時間では群間差-0.36秒(95%CI:-0.71〜-0.01)と、本品群でプラセボ群と比較して改善が認められました。これらの指標は疾患進行に伴う微細な変化を早期に捉えやすいとされています。探索的試験の長期追跡結果では、本品の効果がより明瞭に観察されました。本品投与後3年時点のNSAA総スコアの変化量は、本品群で-1.43、外部対照群で-4.63であり、調整済み平均値の群間差は3.20(95%CI:0.52〜5.89)でした。この結果から、時間経過に伴い本品の効果が大きくなる傾向が認められています。301試験の2年追跡結果も学会発表されており、外部対照群との比較でNSAA総スコアに統計学的有意差が示されました。投与後2年までの変化量は、本品群で2.6±5.13、外部対照群で-0.3±5.18であり、調整済み平均値の群間差は2.88(95%CI:1.43〜4.33、p=0.0001)でした。ただし、この解析は多重性の調整がされていない名目値です。過去の2製品との比較では、本品はより確実な有効性評価が可能です。コラテジェンおよびハートシートは条件及び期限付承認後に新たな患者を対象とした調査が設定されましたが、本品では301試験に登録した患者を対象に引き続き3年間のデータ収集を行う計画です。また、令和6年3月に策定されたガイダンスに基づいて審査が行われており、より確度の高い運用が行われています。なお、令和7年9月24日に欧州委員会は本品の条件付き販売承認を不承認としました。有効性が十分に証明されていないという見解が示されましたが、欧州の製造販売業者であるロシュ社は欧州医薬品庁との当局相談を実施する計画です。安全対策の強化と関連学会との連携体制本品の安全対策は、海外での死亡例を契機に強化されました。令和7年6月16日に製造販売業者から、海外の歩行不能患者における急性肝不全の死亡例が報告され、8月28日に医薬安全対策課から添付文書改訂が指示されました。なお、本品の適応は「歩行可能な患者」に限定されており、この死亡例は適応外の患者で発生したものです。令和7年11月27日の薬事審議会医療機器・再生医療等製品安全対策調査会では、4つの論点について議論が行われました。第一に、本品投与前の肝機能検査の実施および投与可否の判断です。第二に、本品投与前のステロイド投与に関連する注意喚起です。第三に、本品投与後に肝機能障害が発現した場合の対応です。第四に、他科・他施設との連携および専門家への相談体制の確保です。これらの論点に基づき、適正使用ガイドでは投与前の肝機能検査の実施および投与可否の判断手順が明確化されました。適正使用ガイドには、多層的な連携体制が整備されました。肝機能障害発生時には、投与施設が小児患者に対応できる肝臓専門医のいる連携先、エキスパートパネル、日本肝臓学会からの協力を得られる体制が明確化されています。関連学会への通知も発出されました。令和7年12月17日に日本小児神経学会および日本肝臓学会宛に通知が発出され、適正使用指針に基づく認定医療機関への安全対策の徹底、認定医療機関間での知識・経験の共有、肝機能障害発生時の連携先確保について協力が求められています。医療保険上の取扱いの方針本品の医療保険上の取扱いは、医薬品の例により対応する方針が示されました。平成26年11月5日の中医協総会で了承された再生医療等製品の保険適用に係る取扱いに基づき、本品の特性を踏まえて判断されています。保険適用の手続きを進める根拠は、米国での本承認と長期観察による有効性確認の見通しです。本品は米国で既に本承認されており、長期の経過を確認することにより有効性の確認が可能な状況になることが合理的に予想されています。先行する米国と同様の判断になり得ると期待されることから、保険適用の手続きを進めることとされました。医薬品の例により対応する理由は、本品の作用機序と投与方法にあります。審査報告書では、本品に搭載された遺伝子発現構成体が細胞の核内にエピソームとして留まり、心筋、呼吸筋および骨格筋内で機能的なマイクロジストロフィンタンパク質を発現するとされています。発現したマイクロジストロフィンタンパク質が筋細胞膜に局在し筋機能を改善すること、および本品は静脈内に注射して投与する点が医薬品のような投与法であることを踏まえ、医薬品の例により対応することとされました。今後の手続きは、薬価算定組織での償還価格の検討と中医協総会での審議です。薬価算定組織において償還価格について検討し、その結果を踏まえて中医協総会で薬価基準への収載について審議されます。まとめエレビジス点滴静注の医療保険上の取扱いについて、中医協総会で審議が行われました。本品はDMDに対する遺伝子治療製品であり、条件及び期限付承認を取得しています。主要評価項目では統計学的有意差は認められなかったものの、副次評価項目で運動機能の改善が確認され、長期追跡では効果がより明瞭になる傾向が示されています。海外での死亡例を受けて安全対策が強化され、関連学会との連携体制も整備されました。本品は医薬品の例により対応し、薬価算定組織で償還価格を検討した上で、薬価基準への収載が審議される予定です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

令和8年度診療報酬改定|改定率+3.09%の全貌と医療機関への影響を徹底解説

Jan 26, 2026 岡大徳

令和8年1月14日、厚生労働大臣は中央社会保険医療協議会に対し、令和8年度診療報酬改定について諮問しました。物価高騰と賃金上昇が続く中、医療機関の経営安定と医療従事者の処遇改善が喫緊の課題となっています。本稿では、この諮問の内容を解説し、医療機関経営への影響を分析します。今回の改定率は2年度平均で+3.09%となり、賃上げ対応と物価対応を重視した内容です。診療報酬本体は令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%と段階的に引き上げられます。薬価等は-0.87%の引下げとなり、効率化と適正化の両面から医療保険制度の持続可能性確保を図ります。施行は令和8年6月を予定しています。改定率の全体像:2年度平均+3.09%の内訳今回の診療報酬改定は、令和8年度と令和9年度の2年度にわたる段階的な引上げを特徴とします。診療報酬本体は2年度平均で+3.09%、薬価等は-0.87%となりました。この改定率は「経済財政運営と改革の基本方針2025」および「強い経済を実現する総合経済対策」に基づいています。診療報酬本体の内訳は5つの要素で構成されています。賃上げ分が+1.70%で最大の配分となり、物価対応分が+0.76%、食費・光熱水費分が+0.09%、経営環境悪化への緊急対応分が+0.44%です。一方、後発医薬品への置換え進展などによる効率化で-0.15%の適正化を図ります。これらを除く改定分は+0.25%です。各科改定率は医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%となっています。薬価は-0.86%、材料価格は-0.01%で、合計-0.87%の引下げです。薬価改定は令和8年4月施行、材料価格改定は令和8年6月施行となります。賃上げ対応:3.2%ベースアップ実現への支援賃上げ分+1.70%は、医療従事者の処遇改善を目的としています。この財源により、令和8年度・令和9年度それぞれで3.2%のベースアップ実現を支援します。看護補助者と事務職員については、他産業との人材獲得競争を踏まえ、5.7%のベースアップを目指す上乗せ措置を講じます。賃上げ分のうち+0.28%は、賃上げ対応拡充時の特例的措置として位置づけられています。この措置は、令和6年度改定でベースアップ評価料の対象とされた職種に加え、入院基本料等で措置された職種の賃上げにも対応します。今後の関係調査で実績を検証し、所要の対応を図ることとされています。賃上げの実効性確保のため、新たな仕組みが構築されます。令和6年度改定で入院基本料や初・再診料により賃上げ原資が配分された職種についても、実際の賃上げ実績を把握する体制が整備されます。対象職種は40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等従事者です。物価対応:施設類型別の配分と特例措置物価対応分+0.76%は、2つの要素で構成されています。第1の要素は、令和8年度以降の物価上昇への対応として+0.62%を診療報酬の特別な項目として設定し、施設類型ごとの費用関係データに基づき配分するものです。配分は病院+0.49%、医科診療所+0.10%、歯科診療所+0.02%、保険薬局+0.01%です。第2の要素は、高度機能医療を担う病院への特例的対応として+0.14%を措置するものです。大学病院を含むこれらの病院は、医療技術の高度化の影響を先行的に受けやすい特性があります。また、汎用性が低く価格競争原理の働きにくい医療機器等の調達が必要なため、物価高の影響を受けやすいとされています。食費・光熱水費分+0.09%は、入院患者の療養環境改善に充当されます。入院時の食費基準額は1食あたり40円引上げとなり、光熱水費基準額は1日あたり60円引上げとなります。患者負担については、低所得者や指定難病患者等に配慮した軽減措置が講じられます。経営環境悪化への緊急対応経営環境悪化への緊急対応分+0.44%は、令和6年度診療報酬改定以降の経営状況を踏まえた措置です。配分は令和7年度補正予算の効果を減じないよう、施設類型ごとにメリハリを維持します。病院+0.40%、医科診療所+0.02%、歯科診療所+0.01%、保険薬局+0.01%です。この緊急対応は、医療機関等の賃上げ余力が乏しくなっている現状を反映しています。令和7年度補正予算の「医療・介護等支援パッケージ」による措置に引き続き、当初予算段階から必要な財源を織り込む運営への質的転換を図ります。今後の経済・物価動向によっては、令和9年度予算編成で加減算を含む調整が行われます。基本方針:4つの視点と具体的方向性令和8年度診療報酬改定の基本方針は、社会保障審議会医療保険部会・医療部会で令和7年12月9日に策定されました。改定の基本認識として、日本経済が新たなステージに移行しつつある状況、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築、医療DX・イノベーションの推進、社会保障制度の持続可能性確保の4点が示されています。改定の基本的視点は4つの柱で構成されています。第1の柱は「物価や賃金、人手不足等への対応」で、今回の重点課題に位置づけられています。第2の柱は「2040年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域包括ケアシステムの推進」です。第3の柱は「安心・安全で質の高い医療の推進」で、医療DXやアウトカム評価を重視します。第4の柱は「効率化・適正化を通じた医療保険制度の持続可能性向上」です。重点課題である第1の柱では、医療従事者の処遇改善、ICT・AI・IoT等の利活用推進、タスク・シェアリング/タスク・シフティングの推進、医師の働き方改革、診療報酬上の基準柔軟化が具体的方向性として示されています。診療報酬制度関連事項:今後の検討課題診療報酬制度関連では4つの重要事項が示されています。第1は令和9年度の調整と令和10年度以降の対応です。経済・物価動向が見通しから大きく変動した場合、令和9年度予算編成で加減算を含む調整が行われます。そのため、令和8年度の医療機関経営状況について調査が実施されます。第2は賃上げの実効性確保です。幅広い医療関係職種で物価上昇を超える賃上げを実現するため、賃上げ実績の迅速かつ詳細な把握体制が構築されます。入院基本料等で措置される職種についても、ベースアップ評価料対象職種と同様の実効性確保の仕組みが適用されます。第3は医師偏在対策です。改正医療法に基づき、外来医師過多区域で都道府県知事の要請に従わない無床診療所新規開業者には、診療報酬上の減算措置が講じられます。令和10年度改定では、医師多数区域での更なるディスインセンティブ措置や、重点医師偏在対策支援区域における医師手当事業の財源確保について結論を得ることとされています。第4は経営情報の見える化です。医療法人の経営情報データベース(MCDB)等の活用により、エビデンスに基づく改定を推進します。診療所の「その他の医業費用」の内容把握や、職種別給与・人数の報告義務化について、令和8年中に必要な見直しの結論を得る予定です。薬価制度関連事項:イノベーション推進と安定供給薬価制度関連では、令和8年度薬価制度改革と令和9年度薬価改定の実施が示されています。イノベーション推進の観点から、市場拡大再算定における類似品の薬価引下げ(いわゆる共連れ)が廃止されます。この措置により、製薬企業の予見可能性が高まることが期待されています。医薬品の安定供給確保のため、最低薬価について物価動向を踏まえた対応が行われます。令和9年度薬価改定の対象品目範囲や各種ルールは、創薬イノベーション推進、安定供給確保、国民負担軽減のバランスを踏まえて検討されます。費用対効果評価制度の更なる活用も進められます。令和8年中に、追加的有用性がなく費用増加となる医薬品の価格調整範囲拡大が図られます。対象品目や価格調整範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映について、令和9年度薬価改定で一定の結論が出される予定です。まとめ:医療機関経営への影響と対応令和8年度診療報酬改定は、物価高騰・賃金上昇への対応を重点課題として、2年度平均+3.09%の改定率が設定されました。賃上げ分+1.70%により3.2%のベースアップ実現が支援され、物価対応分+0.76%により施設類型別の経営支援が図られます。医療機関は、賃上げ実績の報告体制整備、経営情報の見える化への対応、医師偏在対策への準備が求められます。令和8年6月の施行に向けて、今後の中央社会保険医療協議会での審議を注視し、具体的な点数設定や算定要件を把握することが重要です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

令和8年度診療報酬改定の全容|中医協が示す4つの柱と主要施策を徹底解説

Jan 25, 2026 岡大徳

令和8年1月14日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第641回)において「令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)」が示されました。この資料は、令和7年12月9日に社会保障審議会医療保険部会・医療部会でとりまとめられた「令和8年度診療報酬改定の基本方針」を踏まえ、中医協における議論を整理したものです。今後の中医協における議論により変更が加えられる可能性がありますが、改定の方向性を把握する上で重要な資料となっています。今回の議論整理では、4つの大きな柱が示されました。第1の柱は「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」であり、重点課題として位置づけられています。第2の柱は「2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」です。第3の柱は「安心・安全で質の高い医療の推進」、第4の柱は「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」となっています。【重点課題】物価・賃金・人手不足への対応今回の改定で最も重視されているのが、医療機関等を取りまく環境変化への対応です。この柱では、物価高騰への対応、医療従事者の処遇改善、業務効率化の3つの観点から施策が整理されています。物価高騰への対応として、初・再診料等および入院基本料等の見直しが行われます。令和8年度および令和9年度における物件費の更なる高騰に対応するため、医療機能を踏まえた新たな評価が導入されます。入院時の食費および光熱水費の基準額も引き上げられ、嚥下調整食についても新たな評価が設けられます。医療従事者の処遇改善では、看護職員・病院薬剤師その他医療関係職種の賃上げを更に推進します。令和6年度改定で入院基本料や初・再診料により賃上げ原資が配分された職種についても、実効性が確保される仕組みを構築する方針です。看護職員の夜勤負担軽減についても、夜間配置加算等において負担軽減や処遇改善に資する計画の立案と体制整備を促進するよう要件が明確化されます。業務効率化の推進では、ICT・AI・IoT等の利活用が重要な柱となっています。看護業務における見守り、記録、情報共有においてICT機器等を組織的に活用した場合、入院基本料等の看護職員配置基準が柔軟化されます。医師事務作業補助体制加算の人員配置基準も柔軟化され、様式の簡素化や署名・記名押印の見直しも進められます。タスク・シェアリング/タスク・シフティングでは、重症度・医療・看護必要度の高い高齢者等が主に入棟する病棟において、看護職員や他の医療職種が協働して病棟業務を行う体制について新たな評価が設けられます。医師の働き方改革の推進と診療科偏在対策として、外科医師等の減少に対応するため、診療科偏在が課題となっている診療科の医師の勤務環境・処遇改善を図りつつ、高度な医療を提供する医療機関等への新たな評価も行われます。2040年を見据えた医療機関の機能分化・連携第2の柱では、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築に向けた施策が整理されています。入院医療の評価、在宅医療・訪問看護の確保、外来医療の機能分化と連携、人口・医療資源の少ない地域への支援など、多岐にわたる内容が含まれています。入院医療の評価では、地域で病院が果たしている救急搬送の受入や手術等の急性期機能に着目した評価が導入されます。病院の機能に着目した施設基準を設け、体制整備も含めた新たな評価が行われます。重症度・医療・看護必要度による評価方法も見直され、救急搬送症例や手術なし症例における適切な評価が進められます。総合入院体制加算および急性期充実体制加算は見直され、新たな評価が行われます。人口の少ない地域において救急搬送の受入を最も担う病院については特に配慮されます。特定集中治療室管理料やハイケアユニット入院医療管理料についても、救急搬送件数および全身麻酔手術件数に関する病院の実績が要件化されるなど、医療機能に係る実績に応じた評価へと見直されます。地域包括医療病棟では、高齢者の中等症までの救急疾患等の幅広い受入を推進する観点から、平均在院日数、ADL低下割合および重症度・医療・看護必要度の基準が見直されます。医療資源投入量や急性期病棟の併設状況に応じた評価も導入され、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的な取組を推進する観点から加算の体系も見直されます。「治し、支える医療」の実現に向けては、介護保険施設や在宅医療機関の後方支援を行う医療機関の評価が強化されます。協力医療機関に対して求めている協力対象施設との情報共有・カンファレンスの頻度が見直され、地域包括医療病棟入院料および地域包括ケア病棟入院料についても高齢者救急、在宅医療および介護保険施設の後方支援体制を更に評価する方針です。入退院支援においては、関係機関との連携、生活に配慮した支援および入院前からの支援を強化する観点から、入退院支援加算等の評価や要件が見直されます。リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的な取組を更に推進するため、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の算定要件も見直されます。かかりつけ医機能・かかりつけ歯科医機能・かかりつけ薬剤師機能の評価も強化されます。機能強化加算の要件等が見直され、生活習慣病管理料(Ⅰ)および(Ⅱ)も見直されます。かかりつけ薬剤師指導料および服薬管理指導料については、かかりつけ薬剤師の本来の趣旨に立ち返り、普及および患者による選択を促進する観点から評価体系が見直されます。外来医療の機能分化と連携では、紹介患者・逆紹介患者の割合が低い特定機能病院等を紹介状なしで受診した患者等に係る初診料および外来診療料について、逆紹介割合の基準が引き上げられます。頻繁に再診を受けている患者も減算対象に含められるよう見直されます。在宅医療・訪問看護の確保では、在宅緩和ケア充実診療所・病院加算について名称変更と要件・評価の見直しが行われ、積極的役割を担う医療機関を更に評価する方針です。地域における24時間の在宅医療提供体制を面として支える取組を推進するため、往診時医療情報連携加算の要件も見直されます。訪問看護については、過疎地域等における遠方への移動負担を考慮し、特別地域訪問看護加算の対象となる訪問の要件が見直されます。人口・医療資源の少ない地域への支援として、医療資源の少ない地域の対象となる地域および経過措置が見直されます。地域の外来・在宅診療の確保に係る支援を行い、病状の急変等により緊急で入院が必要となった患者を受け入れる体制を有する医療機関について新たな評価が設けられます。歯科医療が十分に提供されていない地域等では、地方自治体等と連携した歯科巡回診療車を用いた巡回診療についても新たな評価が行われます。安心・安全で質の高い医療の推進第3の柱では、医療安全、医療DX、リハビリテーション、重点分野への対応など、医療の質向上に関する施策が整理されています。身体的拘束の最小化の推進として、質の高い取組を行う場合の体制について新たな評価が設けられるとともに、身体的拘束を行った日の入院料の評価が見直されます。認知症ケア加算についても評価が見直され、認知症を有する患者へのアセスメントやケアの充実を図りながら身体的拘束の最小化の取組が推進されます。医療安全対策加算の要件および評価も見直されます。医療DXやICT連携の活用では、診療録管理体制加算、医療情報取得加算および医療DX推進体制整備加算の評価が見直されます。電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用も推進され、情報通信機器を用いた診療において向精神薬を処方する場合には電子処方箋管理サービス等による重複投薬等チェックが要件化されます。オンライン診療では、D to P with Nによる診療の適正な推進の観点から、診療時の看護職員の訪問に関する評価、訪問看護療養費等との併算定方法や検査・処置等の算定方法が明確化されます。D to P with Dによるオンライン診療についても、遠隔連携診療料の対象疾患が見直され、入院および訪問診療における活用について新たな評価が設けられます。リハビリテーションの質向上として、入院直後における早期リハビリテーション介入の推進および効果的なリハビリテーションを推進する観点から、より早期に開始するリハビリテーションが評価されます。休日であっても平日と同様のリハビリテーションを推進する観点から、休日におけるリハビリテーションについて新たな評価が設けられます。救急医療では、夜間休日を含めた応需体制の構築および地域の救急医療に関する取組等の現状を踏まえ、院内トリアージ実施料および夜間休日救急搬送医学管理料等が見直されます。救急外来医療を24時間提供するための人員や設備、検査体制等に応じた新たな評価も行われます。小児・周産期医療では、母体・胎児集中治療室管理料の要件が見直され、新生児特定集中治療室管理料2については低出生体重児の新規入院患者数に関する実績基準が見直されます。分娩件数の減少に伴い、母子の心身の安定・安全に配慮した産科における管理や継続ケアを行う体制について新たな評価が設けられます。がん医療および緩和ケアでは、外来腫瘍化学療法診療料の要件が見直され、皮下注射を実施した場合についても評価されます。がんゲノムプロファイリング評価提供料および検査については、エキスパートパネルを省略可能な症例に係る知見の集積を踏まえ、要件および評価が見直されます。末期呼吸器疾患患者および終末期の腎不全患者等に対する緩和ケアについても評価の対象に加えられます。精神医療では、多職種の配置による質の高い精神医療の提供を推進する観点から、急性期等の入院料における精神保健福祉士、作業療法士または公認心理師の病棟配置について新たな評価が設けられます。精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に貢献する医療機関の確保に向け、小規模医療機関または病床数を削減する取組を行っている医療機関が多職種配置等による質の高い入院医療を行うことについて新たな評価が設けられます。感染症対策では、抗菌薬の適正使用を推進する観点から薬剤感受性検査の要件が見直されます。感染対策向上加算1について、微生物学的検査室を有する医療機関に対する新たな評価が設けられます。結核病棟と一般病棟を併せて1看護単位とする「ユニット化病床」等における重症度・医療・看護必要度等の対象となる患者の範囲等も見直されます。歯科医療では、障害者の歯科治療を推進する観点から、障害者歯科治療を専門に担う歯科医療機関が歯科医学的管理を行った場合について新たな評価が設けられます。CAD/CAMインレーおよびCAD/CAM冠の活用が更に進むよう、大臼歯の咬合支持等の要件が見直されます。薬局・薬剤師業務では、保険薬局が立地に依存する構造から脱却し、薬剤師の職能発揮を促進する観点から調剤基本料が見直されます。地域支援体制加算の要件も見直され、調剤管理料は内服薬の調剤日数による4区分が見直されます。効率化・適正化による医療保険制度の持続可能性向上第4の柱では、医療保険制度の安定性・持続可能性の向上に向けた施策が整理されています。後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、費用対効果評価制度の活用、医薬品の適正使用などが含まれています。後発医薬品・バイオ後続品の使用促進として、処方等に係る評価体系が見直されます。バイオ後続品使用体制加算の要件も見直され、薬局におけるバイオ後続品の調剤体制の整備および患者への説明について新たな評価が設けられます。長期収載品の選定療養については、後発医薬品の供給状況や患者負担の変化にも配慮しつつ、創薬イノベーションの推進や後発医薬品の更なる使用促進に向けて患者負担が見直されます。医薬品の安定供給については、主に後発医薬品において不安定な供給が発生している課題に対応するため、医薬品の安定供給に資する体制について新たな評価が設けられます。費用対効果評価制度の活用については、費用対効果評価専門部会の議論を踏まえた「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子」に基づき対応が行われます。医薬品の適正使用では、ポリファーマシー対策が途切れてしまうことを防止する観点から、病院薬剤師による施設間の薬剤情報連携が促進されるよう、薬剤総合評価調整加算の要件および評価が見直されます。在宅医療におけるポリファーマシー対策および残薬対策を推進するため、医師と薬剤師が同時訪問することについて新たな評価も設けられます。処方箋様式については、患家に残薬があることを確認した場合に保険医療機関と保険薬局が連携して円滑に処方内容を調整できるよう見直されます。長期処方およびリフィル処方箋による処方を適切に推進する観点から、計画的な医学管理を継続して行うこと等を評価する医学管理料の要件も見直されます。まとめ令和8年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)では、物価・賃金・人手不足への対応を重点課題として、2040年を見据えた医療提供体制の構築、安心・安全で質の高い医療の推進、医療保険制度の持続可能性向上という4つの柱で改定の方向性が示されました。今回の改定では、物価高騰による医療機関等の経営悪化への対応と医療従事者の処遇改善が急務とされ、ICT・AI・IoT等の活用による業務効率化も重要な施策として位置づけられています。2040年頃を見据えた新たな地域医療構想の考え方を踏まえ、医療機関の機能分化・連携と「治し、支える医療」の実現に向けた評価体系の見直しも進められます。なお、「令和8年度診療報酬改定の基本方針」に含まれていた「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直し」については、中医協において議論が行われていないため、今回の議論の整理には含まれていません。この点については、社会保障審議会医療保険部会における議論や令和8年度予算案に係る「大臣折衝事項」(令和7年12月24日)を踏まえ、今後必要に応じて中医協でも議論される予定です。今後、中医協における議論を経て、改定の詳細が決定されます。医療機関経営においては、この方向性を踏まえた体制整備の検討を進めることが重要です。特に、ICT活用による業務効率化、地域における自院の役割の明確化、かかりつけ医機能の強化などは、早期から取り組むべき課題といえるでしょう。 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令和8年度診療報酬改定|物価対応+0.76%の配分方法と入院料評価の仕組みを解説

Jan 24, 2026 岡大徳

中央社会保険医療協議会(中医協)総会は、令和8年1月14日に令和8年度診療報酬改定における物価対応の具体的な配分方法を議論しました。今回の改定では、物価高騰への本格的な対応として、診療報酬に特別な項目を設定する方針が示されています。本稿では、外来・入院それぞれの物価上昇対応の仕組みと、施設類型ごとの配分ルールを解説します。物価対応分は+0.76%(2年度平均)が設定され、このうち令和8年度以降の物価上昇への対応として+0.62%、高度医療機能を担う病院への特例対応として+0.14%が配分されます。さらに、令和6年度改定以降の経営環境悪化への緊急対応分として+0.44%が措置され、病院に+0.40%、診療所・薬局に合計+0.04%が配分されます。外来診療では初・再診料とは別に物価上昇に関する評価が新設され、入院診療では入院料グループごとの物件費率に基づいて配分額が算出されます。物価対応の全体像と施設類型別配分令和8年度診療報酬改定では、物価対応分として+0.76%が設定されました。これに加えて、令和6年度改定以降の経営環境悪化を踏まえた緊急対応分として+0.44%が別途措置されます。配分は施設類型ごとの費用構造を反映し、病院に手厚い設計となっています。物価対応分+0.76%の施設類型別配分は、病院+0.49%、医科診療所+0.10%、歯科診療所+0.02%、保険薬局+0.01%となります。この配分は、各施設類型の費用関係データに基づいて算出されており、物件費の割合が高い病院により多くの財源が配分されています。緊急対応分+0.44%についても、施設類型ごとにメリハリのある配分が維持されます。病院には+0.40%、医科診療所には+0.02%、歯科診療所には+0.01%、保険薬局には+0.01%が配分されます。この配分は、令和7年度補正予算による物価上昇支援の効果を減じることのないよう設計されています。高度医療機能を担う病院(大学病院を含む)には、+0.14%の特例的な対応が措置されます。この特例対応は、医療技術の高度化の影響を先行的に受けやすく、汎用性の低い医療機器等の調達が必要なことから物価高の影響を受けやすいという特性を踏まえたものです。外来における物価上昇対応の仕組み外来診療に対する物価上昇への対応は、初・再診料等とは別に新たな評価項目を設定する方式がとられます。この方式は、段階的な対応を可能にし、経済・物価動向に応じた柔軟な調整を実現します。令和8年度以降の物価上昇への対応については、初・再診料に加え、訪問診療料や初・再診料の評価が包括される診療報酬項目においても、物価上昇に関する評価が算定可能となります。評価の水準は、医科診療所・歯科診療所の改定率を踏まえて設定されます。令和9年度には、この評価が令和8年度の約2倍になることが想定されています。令和6年度診療報酬改定以降の経営環境悪化への対応分については、令和8年度改定時に初・再診料等の評価に含める形で対応されます。これは、令和7年度補正予算による一時的な支援から、診療報酬による恒常的な評価への移行を意味しています。病院・有床診療所の外来における物価上昇対応では、初再診時の評価は診療所と同一水準が適用されます。ただし、病院の外来は診療所とコスト構造が異なるため、初再診時の評価で不足する外来分の物価上昇分については、入院時の評価で補正する仕組みが導入されます。入院における物価上昇対応の算出方法入院診療に対する物価上昇への対応は、入院料グループごとの物件費率に基づいて配分額を算出する精緻な方式が採用されます。この方式は、令和元年の消費税補填における対応を参考にしつつ、入院料ごとの算出に改良されています。入院料グループは、医療機能に応じて5つに分類されます。特定機能病院グループは特定機能病院入院基本料が対象となります。急性期グループは一般病棟入院基本料、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料などが含まれます。回復期グループは地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料が対象です。慢性期グループは療養病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料、緩和ケア病棟入院料などが含まれます。精神グループは精神病棟入院基本料、精神科救急急性期医療入院料、認知症治療病棟入院料などが対象となります。物件費率の算出にあたっては、各機能グループの病棟が病院の大半(例えば80%以上)を占める病院のデータを用いて算出されます。物件費には、特定保険医療材料以外の診療材料費、食費等を除く委託費、減価償却費、光熱費等のその他経費が含まれます。入院料ごとの物価上昇対応額は、以下の手順で算出されます。まず、入院基本料・特定入院料ごとに入院1人1日あたりの診療報酬総額(入院料、入院料加算、特掲診療料を含む)を算出します。次に、この金額に入院料グループごとの物件費率・委託費率を乗じて、1人1日あたりの物件費・委託費を算出します。最後に、算出した物件費・委託費に物価上昇率(物件費は年2.0%、委託費は年3.2%)を乗じて、物価上昇分に相当する金額を算出します。令和7年度補正予算との整合性確保入院診療における令和6年度改定以降の経営状況悪化への対応は、令和7年度補正予算による支援の考え方を踏まえて配分されます。施設類型ごとのメリハリを維持することで、補正予算の効果を減じないよう設計されています。回復期、精神、慢性期の入院料については、入院1日あたり定額を配分する方式がとられます。この方式は、補正予算における「1床あたりでの支援」の考え方を継承したものです。回復期では地域包括ケア病棟入院料、精神では精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料に救急加算相当分が上乗せされます。急性期の入院料については、財源を一体化した上で、3類型に配分する方式が採用されます。第1類型は特定機能病院の急性期病床、第2類型は急性期病院の急性期病床、第3類型はその他の病院の急性期病床です。各類型への配分額は、補正予算における配分額に応じて算出され、さらに1人1日あたりの入院費に応じた配分が行われます。まとめ令和8年度診療報酬改定における物価対応では、物価対応分+0.76%が設定されました。これに加えて、令和6年度改定以降の経営環境悪化への緊急対応分+0.44%が別途措置されます。外来診療では初・再診料とは別に物価上昇に関する評価が新設され、入院診療では入院料グループごとの物件費率に基づいて配分額が算出されます。高度医療機能を担う病院には+0.14%の特例対応が措置され、令和7年度補正予算との整合性も確保されています。経済・物価の動向が見通しから大きく変動した場合には、令和9年度予算編成において加減算を含めた調整が行われる予定です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe