令和8年度診療報酬改定|医療従事者の賃上げ3.2%実現へ新制度を解説
令和8年1月14日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会において「賃上げについて(その2)」が議論されました。令和8年度診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを確実に実現するため、診療報酬上の評価体系が大幅に見直されます。今回の改定では、令和8・9年度にそれぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップ実現を目指し、改定率+1.70%(2年度平均)が確保されました。主な変更点は、入院ベースアップ評価料の入院基本料への統合、調剤報酬への新たな評価体系の導入、届出手続きの大幅な簡素化の3点です。本稿では、これらの制度変更の詳細と医療機関への影響を解説します。賃上げに対応する財源配分の概要令和8年度診療報酬改定における賃上げ財源は、2年度平均で+1.70%が確保されています。この財源は、対象職種と目標水準に応じて配分されます。賃上げの対象職種は大きく2つのグループに分かれます。第1グループは、令和6年度改定でベースアップ評価料の対象とされた職種(看護補助者以外)、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、歯科技工所等で従事する者、ベースアップ評価料の対象外のその他の職員です。このグループには3.2%のベースアップ目標が設定されています。第2グループは看護補助者と事務職員で、他産業との人材獲得競争に直面していることを踏まえ、5.7%のベースアップ目標が設定されています。財源配分の考え方として、改定率+1.70%のうち0.28%は特例的な対応として位置づけられています。この特例的対応は、医療機関等における賃上げ余力の回復・確保を図りつつ、幅広い医療関係職種での賃上げを確実にするために措置されます。外来・在宅ベースアップ評価料の見直し外来・在宅ベースアップ評価料については、現行の評価体系を基本としつつ、令和6・7年度の届出状況に応じた対応が検討されています。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出状況は、病院が約9割である一方、診療所は約4割にとどまっています。令和7年7月時点で、病院7,207施設(89.6%)、診療所60,053施設(38.8%)が届出を行っています。この届出率の差を踏まえ、令和8年度改定では令和6・7年度の届出の有無により評価に差を設けることが検討されています。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)については、評価料(Ⅰ)を届け出ている医療機関のうち約4%のみが届出を行っている状況です。この評価料は追加で賃上げ措置が必要な医療機関のみを対象としており、現行の体系を継続する方向で検討が進められています。点数設定の方法は、令和6年度改定と同様に、医療機関ごとの必要点数の中央値として設定する案が示されています。入院ベースアップ評価料の入院基本料への統合入院ベースアップ評価料については、令和6年度分の評価料を入院基本料に統合する方向で検討が進められています。統合の具体的な方法として、入院料ごとのベースアップ評価料の平均的な水準をもとに入院基本料へ合算することが提案されています。例えば急性期一般入院料1の届出医療機関における入院ベースアップ評価料の中央値は69区分であり、このような平均的水準を基準として統合が行われます。令和7年度にベースアップ評価料を届け出ていなかった医療機関については、一定の控除を行う方向で検討されています。これは、令和6・7年度に賃上げに取り組んでいなかった医療機関との公平性を確保するための措置です。令和8年度改定での賃上げ余力の回復・確保分についても、入院基本料に合算する方向で検討が進められています。対象職種の拡大と算定方法の変更令和8年度改定では、ベースアップ評価料の対象職種が拡大されます。新たに対象となるのは、事務職員、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師、ベースアップ評価料の対象外であったその他の職員です。40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師については、勤務形態や賃金水準が極めて多様であることを踏まえ、特別な算出方法が採用されます。常勤医師や一定時間以上勤務する非常勤医師の人数に基づき、1人あたり一定額(平均の給与から算出される賃上げ水準)に人数を乗じたものを、ベースアップ評価料の算出の基礎とする案が示されています。事務職員については、他の職種と同様に給与総額を基礎として算出する方法が提案されています。これにより、新たな職種分も含め、ベースアップ評価料の算定総額が賃上げに活用される仕組みが構築されます。調剤報酬における新たな評価体系調剤報酬においても、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と同様の評価体系を導入することが検討されています。医療経済実態調査のデータに基づき、薬剤師3.2%、事務職員5.7%の賃上げのために必要な点数の分布を算出した結果、中央値は処方箋1枚あたり3.9点でした。この数値を基準として、調剤基本料1回あたりの新たな評価を設ける方向で検討が進められています。この新たな評価は、薬局の薬剤師及び事務職員の確実な賃上げを図る観点から導入されるものです。届出手続きの大幅な簡素化届出手続きについては、医療機関の負担軽減と賃上げ実績の迅速かつ詳細な把握を両立させる観点から、大幅な簡素化が図られます。届出時の負担軽減策として、ベースアップ評価料による収入を全て給与改善に活用することを前提に、申請時の賃金改善計画書の提出を不要とすることが検討されています。また、対象職員の月額給与の総額を記入することにより、賞与や法定福利費等に相当する一定の係数を乗じることで区分を決定できる仕組みも提案されています。算定期間中の区分見直しについては、現行の3か月に1回の再計算を原則として不要とし、対象職員数等に大幅な変動があった場合のみ任意で行える仕組みへの変更が検討されています。報告時期については、算定年の8月頃に賃上げ状況の中間報告、算定終了後の8月頃に算定額と賃上げ額に関する実績報告の提出を求める案が示されています。複数事業所を有する法人への対応一法人が複数の事業所を有する場合の対応として、給与総額や賃金改善総額の算出を複数事業所で合算した上で按分できる仕組みが検討されています。具体的には、給与体系を共通とする法人が複数の保険医療機関または複数の訪問看護ステーションを有する場合、これらをまとめて給与総額や賃金改善に必要な額を計算できることとする案が示されています。各事業所の社会保険診療収入で按分することで、各事業所の給与総額や賃金改善に必要な額を算出し、入院ベースアップ評価料等の算定区分を決定します。実績報告においても合計で評価することとし、合計で給与改善総額が算定総額以上であればよいとする案が提案されています。この仕組みは、給与体系を共通とする法人内の複数の保険薬局にも同様に適用される予定です。まとめ令和8年度診療報酬改定における賃上げ対応は、医療従事者の処遇改善を確実に実現するための重要な制度改正です。主な変更点は、令和8・9年度にそれぞれ3.2%(看護補助者・事務職員は5.7%)のベースアップ目標の設定、入院ベースアップ評価料の入院基本料への統合、調剤報酬への新たな評価体系の導入、届出手続きの大幅な簡素化の4点です。医療機関においては、今後示される具体的な要件や届出様式を確認し、適切な対応を行うことが求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度改定】重症度、医療・看護必要度の見直しシミュレーション結果を徹底解説
中央社会保険医療協議会(中医協)総会において、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直しに関するシミュレーション結果が示されました。令和6年度改定以降、内科系症例の評価が課題となっていたことを受け、A・C項目への治療項目の追加と救急搬送受入件数に応じた加算という2つの方策が検討されています。今回のシミュレーションでは、これらの見直しにより手術なし症例や救急搬送受入の多い病院で該当患者割合が増加する傾向が確認されました。急性期一般入院料1では基準①で平均7.1ポイント、基準②で平均6.9ポイントの上昇が見込まれます。地域包括医療病棟についても、基準そのものの変更と項目追加により、内科的疾患を多く診療する病院の評価改善が期待されます。シミュレーションの背景と方針令和6年度診療報酬改定後、内科系症例の重症度、医療・看護必要度の該当割合低下が指摘されていました。中医協総会での議論を踏まえ、今回のシミュレーションは3つの柱で構成されています。第一の柱は、内科系疾病に関連したA・C項目への治療・薬剤等の追加です。日本内科学会からの提案項目を基本としつつ、外来で実施される割合が多い項目と比較的実施が容易で診療行為に影響を与えるおそれのある項目は除外されています。追加候補には、中心静脈注射用カテーテル挿入、吸着式血液浄化法、経食道心エコー法などの検査・処置が含まれます。第二の柱は、救急搬送受入件数による加算の導入です。病床あたりの年間救急搬送受入件数に一定の係数(0.005)を乗じた割合を該当患者割合に加算する仕組みが検討されています。この方式は、入院や入院期間延長へのインセンティブを生じにくくする利点があります。第三の柱は、地域包括医療病棟における基準の見直しです。肺炎や尿路感染症など入院頻度の高い内科的疾患ではA3点以上となる割合が他の手術なし症例より低いことから、「A2点以上又はC1点以上」への基準変更が検討されています。A・C項目追加の具体的内容内科学会が提案するA・C項目への追加候補は、医師の診療負荷が高い症例で頻回に行われる診療行為と医薬品です。選定にあたっては、内保連負荷度ランクでD・Eランクの疾患における実施割合の高さ、モラルハザードの起きにくさ、入院での算定割合の高さが考慮されました。C21(救命等に係る内科的治療)への追加候補には、中心静脈注射用カテーテル挿入、脳脊髄腔注射(腰椎)、腰椎穿刺、吸着式血液浄化法、持続緩徐式血液濾過などが含まれます。これらは重症内科患者の管理に不可欠な処置です。C22(別に定める検査)への追加候補には、経食道心エコー法、負荷心エコー法、EBUS-TBNA、気管支カテーテル気管支肺胞洗浄法検査などが含まれます。循環器・呼吸器領域の専門的検査が中心となっています。C23(別に定める手術)への追加候補には、内シャント設置術、胸水・腹水濾過濃縮再静注法、胃瘻造設術、経皮的胆管ドレナージ術などが含まれます。内科的管理を要する患者に対する処置が網羅されています。A6(専門的な治療・処置)への追加候補には、アザシチジン、カルフィルゾミブ、ボルテゾミブなどの抗悪性腫瘍剤が含まれます。血液内科領域の治療薬が中心です。急性期一般入院料1のシミュレーション結果急性期一般入院料1におけるシミュレーション結果は、病院の特性によって変化量が異なることを示しています。基準①(A3点以上又はC1点以上)について、全体の平均は現行28.3%から35.4%へと7.1ポイント上昇しました。病床あたり救急搬送数が多く手術なし症例も多い病院では9.2ポイントの上昇となり、最も大きな改善効果が見られます。一方、救急搬送数が少なく手術症例が多い病院では4.7ポイントの上昇にとどまりました。基準②(A2点以上又はC1点以上)についても同様の傾向が見られ、全体の平均は現行36.7%から43.6%へと6.9ポイント上昇しました。救急搬送受入の多い病院では約9ポイントの上昇が見込まれる一方、救急搬送受入の少ない病院では約5ポイントの上昇となっています。これらの結果は、A・C項目の追加と救急搬送受入件数による加算が、手術なし症例と救急搬送の両方が多い病院において特に効果的であることを示しています。急性期一般入院料2~5のシミュレーション結果急性期一般入院料2~5においても、同様の傾向が確認されました。急性期一般入院料2では、全体の平均が現行27.2%から32.8%へと5.6ポイント上昇しました。救急搬送数が多い病院では約8ポイントの上昇が見込まれます。急性期一般入院料3では、全体の平均が現行23.3%から29.0%へと5.7ポイント上昇しました。手術なし症例が多く救急搬送も多い病院では7.5ポイントの上昇となっています。急性期一般入院料4では、全体の平均が現行24.5%から28.9%へと4.4ポイント上昇しました。救急搬送数の多い病院での効果がより顕著です。急性期一般入院料5では、全体の平均が現行15.9%から18.4%へと2.5ポイント上昇しました。上昇幅は他の入院料より小さいものの、救急搬送の多い病院では約4ポイントの改善が見込まれます。地域包括医療病棟のシミュレーション結果地域包括医療病棟については、基準そのものの変更とA・C項目追加、救急搬送受入加算を組み合わせたシミュレーションが実施されました。現行の基準は「A3点以上」「A2点以上かつB3点以上」「C1点以上」のいずれかですが、肺炎や尿路感染症などの内科的疾患ではA3点以上となる割合が非常に低い状況にあります。このため、急性期一般入院料1の基準②と同様の「A2点以上又はC1点以上」への変更が検討されています。シミュレーション結果では、全体の平均が現行21.5%から28.1%へと6.5ポイント上昇しました。特に手術なし症例が多く救急搬送も多い病院では9.3ポイントの上昇が見込まれます。この変更により、高齢者救急における内科的疾患の受入れがより適切に評価されることが期待されます。救急搬送受入件数による加算の仕組み救急搬送受入件数による加算は、入院延長へのインセンティブを生じさせない設計となっています。計算方法は、病床あたりの年間救急搬送受入件数に係数0.005を乗じるものです。例えば、100床の病棟で年間1,000件の救急搬送を受け入れている場合、10件÷床÷年となり、これに0.005を乗じると5%の加算となります。元の該当患者割合が15%であれば、加算後は20%となります。加算には上限が設けられており、各入院料の該当患者割合の概ね1/2を超えないよう設定されています。急性期一般入院料1では10%、急性期一般入院料4では7%が上限となっています。この方式の利点は、外来で対応した救急搬送も含めて評価できる点にあります。入院させなかった場合や早期退院した場合も評価対象に含まれるため、不要な入院や入院期間延長のインセンティブが生じにくい構造となっています。内科系症例の評価における課題内科系症例では、外科系症例と比較してA項目・C項目の該当割合に大きな差があります。急性期一般入院料2~6における内科系症例では、A項目2点以上の割合が18.8%にとどまり、外科系症例の22.6%を下回っています。A項目3点以上では、内科系が9.8%、外科系が14.5%とさらに差が広がります。C項目についてはより顕著な差があります。外科系症例ではC項目1点以上の割合が44.7%であるのに対し、内科系症例ではわずか1.9%にとどまっています。手術を伴わない内科的治療が現行の評価体系で十分に反映されていないことがわかります。肺炎や尿路感染症といった高齢者に多い疾患では、さらに該当割合が低くなります。急性期一般入院料1における肺炎等では、A項目2点以上の割合が24.2%、C項目1点以上の割合がわずか0.4%です。尿路感染症ではA項目2点以上が17.2%、C項目1点以上が1.1%と、内科症例全体よりもさらに低い水準にあります。まとめ今回のシミュレーション結果は、A・C項目の追加と救急搬送受入件数による加算が、内科系症例の評価改善に一定の効果を持つことを示しています。急性期一般入院料では、手術なし症例が多く救急搬送受入も多い病院において、該当患者割合が大きく上昇する傾向が確認されました。一方、救急搬送受入の少ない病院では該当患者割合の上昇幅が小さく、病院の特性による影響の違いがより明確になることが予想されます。地域包括医療病棟については、基準そのものの変更により内科的疾患を主として診療する病院の評価が改善される見込みです。高齢者救急を担う病棟の役割と評価のバランスが取れた制度設計が期待されます。中医協では引き続き、これらのシミュレーション結果を踏まえた該当患者割合の基準設定について議論が行われる予定です。令和8年度診療報酬改定に向けて、内科系症例と救急応需体制の適切な評価に関する議論の動向に注目が集まっています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年4月施行|オンライン診療受診施設と保険医療機関管理者の新ルールを解説
令和7年12月に公布された医療法等の一部を改正する法律により、オンライン診療と保険医療機関の管理体制に関する新たな規定が設けられました。この改正を受けて、中央社会保険医療協議会では保険診療上の具体的な対応について議論が進められています。本記事では、中医協総会(第641回)で示された2つの主要論点を解説します。第一に、新設される「オンライン診療受診施設」の保険診療における位置づけです。第二に、保険医療機関の管理者に新たに課される責務と経験要件です。いずれも令和8年4月1日の施行に向けて、療担規則等の改正が検討されています。オンライン診療受診施設の保険診療上の対応医療法改正により、患者がオンライン診療を受ける専用の施設として「オンライン診療受診施設」が新たに創設されます。この施設は、公民館や郵便局、駅ナカブース、職場、介護事業所など、医療機関以外の場所に設置できます。オンライン診療受診施設の定義は、施設の設置者が業として、オンライン診療を行う医師または歯科医師の勤務する医療機関に対して、患者がオンライン診療を受ける場所を提供する施設です。設置者は設置後10日以内に都道府県へ届け出る必要があります。オンライン診療を行う医療機関の管理者は、受診施設の設置者に対してオンライン診療基準への適合性を確認する責務を負います。厚生労働大臣は「オンライン診療基準」を定め、医療機関はこの基準に従ってオンライン診療を実施することになります。オンライン診療基準には、医師-患者関係や患者合意、診療計画、本人確認、薬剤処方・管理、診察方法といった診療提供に関する事項が含まれます。加えて、医師の所在、患者の所在、通信環境といった提供体制に関する事項も規定されます。保険薬局内へのオンライン診療受診施設開設に関する論点医療法上、オンライン診療受診施設の設置場所に制限はありません。しかし、保険薬局内に設置する場合は、医薬分業の観点から複数の課題が生じます。第一の課題は、保険薬局と保険医療機関の独立性です。薬担規則では、健康保険事業の健全な運営を確保するため、保険薬局は保険医療機関と一体的な構造・経営が禁止されています。保険薬局内で患者が保険医療機関による診療を受ける状況は、この独立性の観点から整理が必要です。第二の課題は、特定の保険薬局への誘導です。療担規則では保険医療機関が特定の保険薬局へ誘導することが禁止されています。薬局内で患者が受けたオンライン診療で発行された処方箋は、概ね当該薬局で調剤されると想定されます。保険薬局でのオンライン診療受診施設は、当該薬局での調剤へ誘導する効果を生むことになります。第三の課題は、経済上の利益の提供による誘引です。薬担規則では、患者を紹介する対価として経済上の利益を提供し、自己の保険薬局で調剤を受けるよう誘引することが禁止されています。保険薬局が自らオンライン診療受診施設を開設しない場合でも、運営事業者に場所を提供すれば、同様の誘引効果が生じる可能性があります。これらの課題を踏まえ、中医協では薬担規則において保険薬局とオンライン診療受診施設の一体的な構造・経営の禁止、経済上の利益の提供による誘引の禁止を明記する方向で検討が進められています。ただし、医療資源が少ない地域への配慮として、医療計画におけるへき地に所在する保険薬局については、一体的な構造・経営の禁止を適用せず、薬局内での受診施設設置を可能とする例外措置も検討されています。保険医療機関の管理者に課される責務医療法改正に伴い、保険医療機関の管理者に新たな責務が課されます。この責務は療担規則において規定され、適正な保険医療を効率的に提供するための体制整備を求めるものです。管理者に課される責務は4つあります。第一は、保険医療機関内の保険医が療担規則第2章「保険医の診療方針等」を遵守するよう監督することです。第二は、厚生労働大臣等に対する申請・届出や診療報酬の請求に係る手続が適正に行われるよう監督することです。第三は、診療録の記載・整備および帳簿・書類等の保存が適正に行われるよう監督することです。第四は、医師・歯科医師・薬剤師その他の従業者の連携を図るとともに、地域の保健医療サービス・福祉サービス提供者との連携を図ることです。管理者がこれらの責務を果たさず、相当の注意及び監督を尽くしていなかったために診療報酬の不正請求等が行われた場合は、厚生労働大臣が保険医療機関の指定取消しまたは保険医の登録取消しを行うことが可能となります。責務違反の判断は、監査要綱に基づき故意または重大な過失の繰り返しに該当するか否かを個別具体的に判断することになります。保険医療機関の管理者に求められる経験要件保険医療機関の管理者には、一定の経験を有することが要件として求められます。健康保険法第70条の2第1項において、管理者は現に保険医であること、および臨床研修修了後に保険医療機関で3年以上診療に従事した経験を有することが定められました。医師の場合は、2年の臨床研修修了後、保険医療機関(病院に限る)における3年以上の保険医従事経験が必要です。歯科医師の場合は、1年の臨床研修修了後、保険医療機関における3年以上の保険医従事経験が必要です。従事経験は週4日以上常態として勤務し、かつ所定労働時間が週32時間以上であることを基本とします。育児・介護により所定労働時間が短縮されている者には配慮措置が設けられ、週4日常態として勤務する要件を求めないとともに、所定労働時間を週30時間以上に緩和します。原則的な要件を満たせない場合でも、以下の4類型に該当すれば管理者となることができます。第一類型は、キャリアの事情により要件を満たせない場合です。地域枠や自治医科大学卒業者のうち義務年限中の医師、基本領域の専門医資格を持つ者などが該当します。第二類型は、公務員等として5年以上勤務した場合です。矯正医官や医師である自衛官などが該当します。第三類型は、複数の経験を合算して5年の経験年数がある場合です。第四類型は、管理者の急逝により緊急に保険医療機関を承継するなど、やむを得ない事情がある場合です。経過措置と届出の留意点令和8年4月1日の施行に向けて、既存の保険医療機関に対する経過措置が設けられています。施行日において現に保険医療機関の管理者である者は、3年間は要件を満たさない場合でも引き続き管理者であり続けることが可能です。ただし、この経過措置は同一機関の管理者である間に限って適用されます。施行日において現に臨床研修を修了した医師または歯科医師である者は、保険医療機関において3年以上保険医として診療その他管理及び運営に関する業務を行った経験があれば、管理者となることが可能です。この要件は、法に規定する「病院での診療従事経験」に比べて診療以外の業務も認める緩和した要件となっています。届出については、既存の保険医療機関の管理者情報は厚生労働省(地方厚生局)で把握済みのため、施行に伴う新たな届出は不要です。施行日以降に管理者を変更する場合は、従来どおり変更届出を行います。届出に際しては、要件を満たすことを証明する書類の添付が求められる予定です。まとめ令和7年医療法改正により、オンライン診療受診施設の創設と保険医療機関管理者への新たな責務・要件が定められました。中医協では、保険薬局とオンライン診療受診施設の一体的な構造・経営の禁止を薬担規則で明記する方向で検討が進んでいます。保険医療機関の管理者には、保険医の監督や適正な手続の確保、診療録管理、地域連携という4つの責務が課されます。管理者要件として臨床研修後3年以上の経験が求められますが、代替要件や経過措置も設けられています。令和8年4月1日の施行に向けて、医療機関は新たなルールへの対応準備を進める必要があります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
患者申出療養の令和7年度実績|技術数5種類・総額1.7億円に縮小
中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第641回)において、患者申出療養の令和7年度実績報告が公表されました。本報告は、患者が自ら治療を希望し申し出ることで保険外の先進的医療を受けられる「患者申出療養制度」の運用状況を示すものです。令和7年度の実績を分析することで、同制度の現状と課題が明らかになります。令和7年度(令和6年7月1日〜令和7年6月30日)の患者申出療養は、技術数5種類、実施医療機関数13施設、全患者数182人、総金額約1.7億円でした。前年度と比較すると、技術数は7種類から5種類に減少し、全患者数も287人から182人へと大幅に減少しています。この結果から、同制度の規模が縮小傾向にあることがわかります。令和7年度の実績概要令和7年度の患者申出療養は、5種類の技術が13施設で実施され、総金額は約1.7億円でした。このうち保険診療分(保険外併用療養費)が約1.0億円、患者が負担する患者申出療養費用が約0.7億円を占めています。患者申出療養費用の割合は40.7%であり、患者の自己負担が全体の約4割に達しています。実施件数の内訳を見ると、マルチプレックス遺伝子パネル検査による分子標的治療が151件と全体の83%を占めています。この技術は国立がん研究センター中央病院を中心に12の医療機関で実施されており、患者申出療養の中核を担っています。1件あたりの患者申出療養費用は約27.5万円です。その他の4技術は、タゼメトスタット経口投与療法が1件、経皮的胸部悪性腫瘍凍結融解壊死療法が8件、ペミガチニブ経口投与療法が1件、遺伝子パネル検査結果等に基づく分子標的治療が21件でした。これら5技術はすべてがん領域の治療法であり、患者申出療養はがん治療に特化した制度運用となっています。技術数の変動状況令和7年度は、技術数が7種類から5種類に減少しました。この減少は、2種類の技術が実施取り下げとなったことによるものです。新規承認技術、保険収載技術、削除技術はいずれもありませんでした。実施取り下げとは、医療機関側の判断により患者申出療養としての実施を中止することを指します。取り下げの理由としては、症例登録の完了や、他の治療法の普及などが考えられます。一方で、新規承認がなかったことは、患者からの新たな申出が実を結ばなかったことを示しています。保険収載技術がなかったことも注目すべき点です。患者申出療養制度の目的のひとつは、将来の保険適用に向けたエビデンスの蓄積です。保険収載に至る技術がなかったことは、制度の出口戦略に課題があることを示唆しています。過去5年間の推移分析過去5年間の実績を見ると、患者申出療養は縮小傾向にあります。技術数は令和3年度の8種類から令和5年度に10種類まで増加した後、令和6年度に7種類、令和7年度に5種類と減少しました。実施医療機関数も同様の傾向を示しています。令和3年度から令和5年度までは23〜24施設で推移していましたが、令和6年度以降は13施設に半減しています。この急激な減少は、特定の技術が終了したことや、協力医療機関の撤退などが影響していると考えられます。全患者数と総金額も減少傾向にあります。全患者数は令和5年度の312人をピークに、令和7年度は182人まで減少しました。総金額も令和4年度の約2.6億円から令和7年度は約1.7億円に減少しています。患者申出療養費用の割合は40.7%〜52.5%で推移しており、患者負担の割合に大きな変化はありません。実施中の5技術の詳細現在実施中の5技術は、いずれも悪性腫瘍(がん)を対象としています。最も実施件数が多いマルチプレックス遺伝子パネル検査による分子標的治療は、根治切除が不可能な進行固形がんを対象とし、令和元年10月から実施されています。終了予定日は令和12年8月31日であり、長期にわたる臨床研究が計画されています。タゼメトスタット経口投与療法は悪性固形腫瘍を対象とし、令和5年2月から国立がん研究センター中央病院で実施されています。経皮的胸部悪性腫瘍凍結融解壊死療法は肺や縦隔、胸膜の悪性腫瘍を対象とし、慶應義塾大学病院が臨床研究中核病院として実施しています。ペミガチニブ経口投与療法は進行固形がんを対象に名古屋大学医学部附属病院で実施されています。遺伝子パネル検査結果等に基づく分子標的治療は悪性腫瘍全般を対象とし、国立がん研究センター中央病院を中心に4機関で21件実施されました。これら5技術の終了予定日は令和10年〜12年に設定されています。まとめ令和7年度の患者申出療養は、技術数5種類、全患者数182人、総金額約1.7億円と、前年度から縮小しました。実施取り下げにより2技術が減少し、新規承認や保険収載はありませんでした。実施中の5技術はすべてがん領域であり、特にマルチプレックス遺伝子パネル検査による分子標的治療が全体の8割以上を占めています。過去5年間の推移を見ると、技術数・施設数・患者数のいずれも減少傾向にあり、制度の活性化に向けた取り組みが求められています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
先進医療の総額1084億円突破|令和7年度実績報告で患者数21万人超に
令和8年1月14日に開催された中央社会保険医療協議会総会(第641回)において、先進医療会議から令和7年度の実績報告がなされました。本報告では、令和6年7月1日から令和7年6月30日までの先進医療の実施状況が取りまとめられています。先進医療の動向は、将来の保険収載の方向性を示すものであり、医療機関の経営戦略を検討する上で重要な情報となります。令和7年度の先進医療は、総額約1084億円、患者数211,153人と過去5年間で最高を記録しました。実施医療機関数は542施設に拡大し、技術数は73種類となっています。特に不妊治療関連技術が患者数全体の大部分を占め、タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養だけで98,871件の実施件数となりました。一方で、先進医療Bでは臨床試験の進捗により実施件数が0件となった技術もあり、保険収載に向けた評価が進んでいます。先進医療AとBの実績概要令和7年6月30日時点で実施されていた先進医療の全体像を説明します。先進医療Aは未承認・適応外の医薬品や医療機器を用いない技術であり、先進医療Bは未承認・適応外の医薬品や医療機器を用いる技術、または薬事承認を目指す臨床試験を兼ねた技術です。両者の実績には大きな差があります。先進医療Aは26種類の技術が456施設で実施され、患者数は210,079人でした。総金額は約1071.4億円に達し、そのうち先進医療費用(患者の自己負担分)は約121.8億円、保険外併用療養費(保険診療分)は約949.6億円となっています。全医療費に占める先進医療分の割合は11.4%でした。先進医療Bは47種類の技術が163施設で実施され、患者数は1,074人でした。総金額は約12.5億円であり、先進医療費用は約4.7億円、保険外併用療養費は約7.8億円となっています。全医療費に占める先進医療分の割合は37.5%と、先進医療Aより高い割合を示しています。この違いは、先進医療Bでは未承認・適応外の医薬品や医療機器を用いるため、先進的な技術の費用割合が高くなることを反映しています。不妊治療関連技術が牽引する患者数の急増先進医療Aにおける患者数の大部分は、不妊治療関連技術によるものです。令和4年4月の不妊治療保険適用拡大に伴い、保険適用外の技術が先進医療として位置づけられ、患者数が急増しました。先進医療Aの患者数210,079人のうち、不妊治療関連技術が約99%を占めています。タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養は、年間98,871件の実施件数で最多となりました。この技術は307施設で実施され、総金額は約525.5億円に達しています。次いで、子宮内膜刺激術が28,090件(203施設、約118.0億円)、強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術が17,209件(90施設、約64.4億円)と続きます。不妊治療以外の技術では、陽子線治療が739件(20施設、約26.2億円)、重粒子線治療が303件(7施設、約10.1億円)となっています。これらの粒子線治療は、平成13年・15年から実施されている歴史のある先進医療技術です。過去5年間の実績推移先進医療の実績は、過去5年間で大きく変化しています。この変化の主な要因は、令和4年度の不妊治療保険適用拡大です。令和3年6月30日時点(令和2年7月~令和3年6月)の実績では、技術数83種類、267施設、5,843人、総金額約103億円でした。令和4年6月30日時点では、技術数83種類、428施設、26,556人、総金額約151億円に増加しました。令和5年6月30日時点では、技術数81種類、477施設、144,281人、総金額約765億円と急増しています。令和6年6月30日時点では、技術数76種類、449施設、177,269人、総金額約928億円となりました。そして令和7年6月30日時点では、技術数73種類、542施設、211,153人、総金額約1084億円に達しています。5年間で患者数は約36倍、総金額は約10.5倍に増加しました。技術数が減少している理由は、一部の技術が保険収載または削除されたためです。令和4年度および令和6年度の診療報酬改定の際に、一部の技術が保険導入または廃止されたことに留意が必要です。令和7年度における技術の変動令和7年度(令和6年7月1日~令和7年6月30日)における先進医療技術の変動状況を説明します。新規承認、保険収載、実施取り下げ、削除の4つの観点から整理します。新規承認技術数は計7種類でした。先進医療Aでは2種類が承認され、先進医療Bでは5種類が承認されています。新たな技術が先進医療として評価対象に加わりました。保険収載技術数は計2種類であり、いずれも先進医療Aからの収載でした。先進医療Bからの保険収載は0種類となっています。保険収載は先進医療の最終目標の一つであり、有効性・安全性が確認された技術が保険診療に組み込まれます。実施取り下げ技術数は、先進医療Bで7種類ありました。これは臨床試験の終了や中止によるものです。削除技術数は先進医療Aで1種類でした。また、先進医療Bでは総括報告書が6種類受理されており、臨床試験の結果がまとめられています。実施件数0件の技術と医療機関の対応一部の先進医療技術では、年間の実施件数が0件となっています。これらの技術について、医療機関から0件の理由と今後の対応方針が報告されています。先進医療Aでは、糖鎖ナノテクノロジーを用いた高感度ウイルス検査が4施設で0件でした。理由として、インフルエンザ患者の流行が小規模であったこと、新型コロナウイルスとの同時検査キットが普及したことが挙げられています。医療機関は体制維持に努めるとしています。先進医療Bでは、腹腔鏡下センチネルリンパ節生検(早期胃がん)が0件でした。これは2020年5月に症例登録期間が終了しているためです。また、ボツリヌス毒素の膀胱内局所注入療法も症例登録期間終了により0件となり、総括報告書の作成が進められています。自家末梢血CD34陽性細胞移植による下肢血管再生療法では、2020年8月に承認された直接灌流型吸着器(レオカーナ)が保険適用となったため、そちらが優先的に選択されていることが0件の理由として報告されています。今後はレオカーナが奏効しなかった患者に対して当該技術が適用される見込みです。まとめ令和7年度の先進医療実績報告では、総額約1084億円、患者数211,153人と過去5年間で最高を記録しました。不妊治療関連技術が全体の約9割を占め、タイムラプス撮像法を中心に実施件数が大幅に増加しています。先進医療Bでは臨床試験の進捗に伴い、総括報告書の受理や実施取り下げが進んでいます。今後の診療報酬改定において、有効性・安全性が確認された技術の保険収載が検討される見込みです。医療機関においては、先進医療の動向を注視し、経営戦略に反映することが重要となります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度診療報酬改定「効率化・適正化」6つの柱を徹底解説
中央社会保険医療協議会総会(第640回)において、令和8年度診療報酬改定に係る「これまでの議論の整理(案)」が示されました。高齢化や高額医薬品の開発等により医療費の増大が見込まれる中、国民皆保険を維持するためには、医療資源を効率的・重点的に配分し、制度の安定性・持続可能性を高める取り組みが不可欠です。本記事では、「Ⅳ 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」の内容を解説します。今回の改定では、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、費用対効果評価制度の活用、市場実勢価格を踏まえた適正な評価、電子処方箋を活用した医薬品適正使用の推進、外来医療の機能分化と連携、医療DX・ICT連携の活用という6つの柱が示されています。後発医薬品・バイオ後続品の使用促進後発医薬品・バイオ後続品の使用促進として、処方・調剤体制の見直しと長期収載品の患者負担見直しが主な対応策として示されています。後発医薬品については、使用促進等の観点から処方等に係る評価体系の見直しが行われます。後発医薬品の使用が定着しつつある一方、主に後発医薬品において不安定な供給が発生しており、これにより医療機関及び薬局において追加的な業務が生じています。この状況を踏まえ、医薬品の安定供給に資する体制について新たな評価が設けられます。バイオ後続品については、使用促進体制が整備されている医療機関をより適切に評価するため、バイオ後続品使用体制加算の要件が見直されます。薬局においても、バイオ後続品の調剤体制の整備及び患者への説明について新たな評価が行われます。長期収載品の選定療養については、後発医薬品の供給状況や患者負担の変化に配慮しつつ、創薬イノベーションの推進や後発医薬品の更なる使用促進に向けて、患者負担の見直しが行われます。なお、中医協総会(第640回)資料「総-2選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集の結果への対応等について」では、患者負担の水準を価格差の4分の1相当から2分の1相当へと引き上げる方向性が示されています。費用対効果評価制度の活用費用対効果評価制度については、費用対効果評価専門部会の議論を踏まえて取りまとめられた「令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子」に基づき対応が行われます。なお、中医協総会(第640回)資料「総-1令和8年度診療報酬改定の改定率等について」では、医療保険制度の運営の中で費用対効果評価を推進する観点から、同制度の更なる活用が図られることが示されています。具体的には、既存の比較対照技術と比べて追加的な有用性がなく、単に費用増加となる医薬品に係る価格調整範囲の拡大が検討されています。適切な評価手法の確立や実施体制の強化を進める中で、対象品目や価格調整の範囲の拡大、診療ガイドラインへの反映を含めた医療現場での普及など、同制度の発展に向けた見直しが進められます。市場実勢価格を踏まえた適正な評価市場実勢価格を踏まえた適正な評価では、薬価制度改革と検体検査実施料の見直しが行われます。医薬品・医療機器については、薬価専門部会の議論を踏まえて取りまとめられた「令和8年度薬価制度改革の骨子」及び保険医療材料専門部会の議論を踏まえて取りまとめられた「令和8年度保険医療材料制度改革の骨子」に基づき対応が行われます。検体検査については、衛生検査所検査料金調査による実勢価格等を踏まえ、検体検査の実施料等について評価が見直されます。電子処方箋の活用と医薬品適正使用の推進電子処方箋の活用や医師・病院薬剤師と薬局薬剤師の協働の取り組みによる医薬品適正使用の推進として、重複投薬・ポリファーマシー対策、医師と薬剤師の連携強化、処方の適正化、電子処方箋システムの利活用という4つの対応が示されています。重複投薬・ポリファーマシー対策では、薬剤情報連携の強化が図られます。処方変更理由や服薬状況等の薬剤情報が適切に共有されないことにより、ポリファーマシー対策が途切れてしまうことを防止する観点から、病院薬剤師による施設間の薬剤情報連携が促進されるよう、薬剤総合評価調整加算の要件及び評価が見直されます。向精神薬については、情報通信機器を用いた診療において処方する場合には、電子処方箋管理サービスによる重複投薬等チェックを行うことが要件となります。情報通信機器を用いた医学管理において重複投薬等チェックを行う際に電子処方箋を発行する場合については、新たな評価が設けられます。残薬対策として、保険薬局において患家に残薬があることを確認した場合に、保険医療機関と保険薬局が連携して円滑に処方内容を調整できるよう、処方箋様式が見直されます。長期処方及びリフィル処方箋による処方を適切に推進する観点から、計画的な医学管理を継続して行うこと等を評価する医学管理料の要件見直しとともに、処方箋様式の見直しが行われます。医師と薬剤師の連携強化では、病棟薬剤業務の実績評価が見直されます。ポリファーマシー対策や施設間の薬剤情報連携、転院・退院時の服薬指導等に資する薬学的介入の実績を適切に評価する観点から、病棟薬剤業務実施加算について、薬剤総合評価調整や退院時薬剤情報管理指導の実績に応じた評価に見直されます。在宅医療におけるポリファーマシー対策及び残薬対策を推進する観点から、医師と薬剤師が同時訪問することについて新たな評価が設けられます。処方の適正化では、保険給付の適正化の観点から、栄養保持を目的とした医薬品の保険給付の要件が見直されます。外来医療の機能分化と連携外来医療の機能分化と連携については、「Ⅱ-4」において詳細が示されています。この項目は効率化・適正化の観点からも重要な位置づけとなっており、かかりつけ医機能の評価や紹介受診重点医療機関の評価などを通じて、医療資源の効率的な活用が図られます。医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価については、「Ⅲ-3」において詳細が示されています。電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進や、オンライン診療の推進などを通じて、医療の質向上と効率化の両立が目指されています。OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方について令和8年度診療報酬改定の基本方針においては、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方の見直しも含まれています。ただし、この項目については中央社会保険医療協議会において議論が行われていないため、「これまでの議論の整理」には含まれていません。社会保障審議会医療保険部会における議論や、令和8年度予算案に係る「大臣折衝事項」(令和7年12月24日)も踏まえ、今後、必要に応じて中央社会保険医療協議会においても議論される予定です。なお、「大臣折衝事項」では、OTC医薬品の対応する症状に適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品のうち、他の被保険者の保険料負担により給付する必要性が低いと考えられるものについて、患者の状況や負担能力に配慮しつつ、別途の保険外負担(特別の料金)を求める新たな仕組みを創設し、令和8年度中(令和9年3月)に実施するとされています。まとめ令和8年度診療報酬改定における効率化・適正化の方向性は、後発医薬品・バイオ後続品の使用促進、費用対効果評価制度の活用、市場実勢価格を踏まえた適正な評価、電子処方箋を活用した医薬品適正使用の推進、外来医療の機能分化と連携、医療DX・ICT連携の活用という6つの柱で構成されています。これらの取り組みを通じて、医療サービスの維持・向上と効率化・適正化の両立が図られます。医療関係者には、これらの改定内容を理解し、適切な対応を準備することが求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
Microsoft Copilot Studioで業務変革|国内外企業の導入事例と成果を解説
企業のデジタル変革において、AIエージェントの活用が急速に広がっています。Microsoft Copilot Studioは、自然言語やグラフィカルインターフェースを使用して、専門的な開発スキルがなくてもAIエージェントを構築できるプラットフォームです。本記事では、Copilot Studioの機能と導入事例に加え、関連するMicrosoft Copilot製品の活用事例も解説します。Copilot Studioを導入した企業では、顧客対応の自動化、業務プロセスの効率化、知識管理の高度化といった成果が報告されています。Pacific Gas & Electric(PG&E)はCopilot Studioで構築したチャットボットにより年間110万ドル以上のコスト削減を達成し、Amgenは6週間でR&D支援エージェントを構築しました。国内ではベネッセホールディングスがCopilot Studioで社内相談AIを構築し、回答精度を81%から86%に向上させています。Microsoft Copilot StudioとはMicrosoft Copilot Studioは、AIエージェントを作成・カスタマイズ・展開するためのエンドツーエンドの会話型AIプラットフォームです。このプラットフォームでは、ノーコード・ローコードでエージェントを設計でき、Microsoft 365やWebサイト、各種メッセージングチャネルへの公開が可能です。Copilot Studioで構築できるエージェントには、3つの種類があります。1つ目は、ユーザーの質問に対して情報を取得・要約して回答を返す「会話型エージェント」です。2つ目は、指示を受けてワークフローの自動化や反復的なタスクを代行する「タスク実行エージェント」です。3つ目は、計画・学習・エスカレーションを動的に行う「自律型エージェント」です。このプラットフォームの特長は、組織の既存データやシステムとの連携にあります。1,400以上の外部コネクタを利用でき、Microsoft 365アプリケーションやCRM、ERPシステムとの統合が可能です。Power Platform管理センターからエージェントの管理、セキュリティ設定、効果測定を一元的に行えます。Copilot Studioの4つの主要機能Copilot Studioは、エージェントの「作成」「カスタマイズ」「展開」「管理」という4つの主要機能を提供しています。これらの機能により、企業は自社のビジネスニーズに合わせたAIエージェントを構築・運用できます。作成:多様なエージェントタイプの構築エージェントの作成機能では、4種類のエージェントを構築できます。1つ目は「会話型エージェント」で、質問への回答、ワークフローのガイド、ビジネスデータを使用したタスク完了など、自然言語のプロンプトに会話形式で応答します。2つ目は「自律型エージェント」で、計画立案、学習、作業項目のエスカレーションなど、タスクやビジネスプロセスを自律的に管理します。3つ目は「事前構築済みエージェント」で、エージェントストアからすぐに使えるエージェントを入手するか、テンプレートからカスタマイズできます。4つ目は「音声エージェント」で、生成AIを活用した音声または電話対応により、ユーザーや顧客を迅速に支援します。カスタマイズ:組織のナレッジとシステム連携カスタマイズ機能では、エージェントを組織固有のニーズに適合させることができます。Work IQというインテリジェンスレイヤーを活用することで、Copilotがユーザー、職務、企業を理解し、ワークフローに合わせたカスタムエージェントを構築できます。Model Context Protocol(MCP)サーバーや1,400以上の外部コネクタも利用可能です。構造化された指示を追加することで、エージェントの応答方法について明確なガイドラインを設定できます。プロンプトの使用、書式設定ルール、要約などを指定し、一貫性と正確性を確保します。フロー、プロンプト、APIなどのツールを通じてユーザーに代わってアクションを実行するエージェントも構築できます。複雑なプロセスには、マルチエージェントオーケストレーションで専門知識や特定アクションが必要な場合にタスクを適切なエージェントに転送することも可能です。展開:多様なチャネルへの公開展開機能では、エージェントを多様なチャネルに公開できます。Microsoft Teams、SharePoint、Microsoft 365 Copilotなど、従業員が毎日使用するMicrosoft 365アプリに直接展開可能です。WebアプリやメッセージングプラットフォームなどのWebサイトやソーシャルチャネルにも埋め込めます。カスタムアプリやワークフローとの統合により、基幹業務プロセスを強化することも可能です。管理:ガバナンスと効果測定管理機能では、エージェントのライフサイクル全体を統制できます。Power Platform管理センターから、データの保護、エージェントの作成と共有の管理、影響の測定を一元的に行えます。専用開発環境の管理、エージェントライフサイクル管理制御の導入、エージェント支出状況の監視も可能です。分析とレポート機能では、エージェントの準備状況と採用状況を追跡できます。Microsoft Purview、Power Platform管理センター、Viva Insightsを通じてエージェントのROIを追跡し、効果を可視化します。機密情報の保護、AIセキュリティの確保、コンプライアンスの維持にはPower Platformのガバナンスツールを活用できます。業種別ユースケースCopilot Studioは、金融、人事、カスタマーサービス、情報技術、法務など、幅広い業種で活用できます。各業種に特化したエージェントを構築することで、業務効率化と品質向上を実現できます。金融分野では「貸借対照表調整エージェント」が活用されています。このエージェントは差異を検出し、正確な貸借対照表を維持しながら修正を自動化します。人事分野では「人事採用アシスタントエージェント」が候補者のスクリーニングと最適な候補者のハイライトを行い、採用プロセスを迅速化します。カスタマーサービス分野では「パーソナライズされたクロスセル・アップセルエージェント」が顧客の好みを把握し、個別化された提案を提供します。情報技術分野では「ITサポートエージェント」がチケットの受付・作成、分類、コミュニケーションを自動化します。法務分野では「自動契約書レビューエージェント」がリスク、逸脱、問題を検出し、変更を提案することで法務レビューを加速します。海外企業の導入事例海外では、金融、小売、製造、医薬品など幅広い業界でCopilot Studioの導入が進んでいます。各社は顧客対応の自動化、業務プロセスの効率化、知識管理の高度化において具体的な成果を上げています。Holland America Line:顧客対応AIエージェント「Anna」クルーズ会社のHolland America Lineは、顧客対応を強化するためにCopilot Studioでバーチャルエージェント「Anna」を開発しました。同社のEコマース担当シニアディレクターScot Pettit氏は「クルーズの予約は複雑なプロセスになりがちで、予約後も準備方法や追加サービスの理解が容易ではありませんでした」と背景を説明しています。Annaは、新規クルーズの予約支援、既存予約への商品・サービス追加、一般的な質問への回答という3つの主要シナリオに対応します。CRMシステムや予約システムと連携し、自然言語で顧客の質問に24時間対応できます。開発期間はわずか3カ月でした。導入効果として、顧客がAnnaと対話した場合、対話しなかった場合と比較してニーズに合ったクルーズを見つける確率が向上しました。コンタクトセンターへの基本的な問い合わせの削減も見込まれています。Virgin Money:銀行サービスを変革するAIアシスタント「Redi」英国の大手リテール銀行Virgin Moneyは、顧客体験の変革を目指してCopilot Studioで「Redi」を開発しました。Rediは複数のバーチャルアシスタントを統合し、リアルタイムサポートとインテリジェントな自動化を実現しています。Rediの具体的な機能として、カード更新時の住所確認メッセージ送信があります。この機能では、アウトバウンドメッセージに対する顧客エンゲージメント率が54%に達し、対話を開始した顧客の97%がプロセスを完了しています。Virgin MoneyのBizApps CoEリードRuaridh Wallace氏は「旧来のチャットボットから会話型バンキングへ移行し、複数のバーチャルアシスタントを単一のスマートな体験に統合できました」と成果を述べています。同社はこの取り組みで「金融サービスにおけるAI活用ベスト賞」を受賞しました。Pacific Gas & Electric:チャットボットで年間110万ドル以上を削減米国の大手電力・ガス会社PG&Eは、Copilot Studio(旧Power Virtual Agents)で構築したチャットボット「Peggy」により、ヘルプデスク業務を大幅に効率化しました。同社はPower Platform全体を活用した業務自動化にも取り組んでおり、デジタル生産性センターオブエクセレンス(CoE)を設立して4,300人以上の開発者を育成しています。Peggyは、従業員からの問い合わせに直接回答するか、適切なリソースへ誘導するチャットボットです。ヘルプデスク需要の25〜40%をPeggyが自動処理しており、この自動化だけで年間110万ドル以上のコスト削減に貢献しています。SAPアカウントのロック解除リクエスト処理では年間840時間を節約しています。同社は生成AIの活用も進めています。Copilot Studioの生成回答機能を使用することで、Peggyは企業のナレッジベースに自動アクセスし、スクリプトなしでより多くの質問に回答できるようになる予定です。Amgen:6週間でR&D支援エージェントを構築バイオテクノロジー企業のAmgenは、研究開発における知識管理の課題を解決するためにCopilot Studioを活用しました。同社のR&Dナレッジ&ラーニング担当エグゼクティブディレクターBryan Yee氏は「過去の治験デザインや特定の分子に関するリソースを検索すると、大量のリンクが返ってきて、それを一つずつ確認する必要がありました。これには何時間も、時には何日もかかることがありました」と課題を説明しています。Amgenの技術チームは、Copilot Studioを使用してわずか6週間で「Catalyst Copilot」を開発しました。このエージェントは、同社のナレッジマネジメントプラットフォーム「Catalyst」に組み込まれ、大量の情報を推論・分析し、自然言語インターフェースで回答を提供します。Catalyst Copilotにより、創薬担当者は組織の集合知にこれまでより早くアクセスできるようになりました。「どこに情報があるか」という段階から「すでに何がわかっているか」という段階へ直接進めるようになり、創薬サイクルの短縮に貢献しています。Dow:貨物請求書分析の自動化で数百万ドルを節約素材科学企業のDowは、Copilot Studioを活用して貨物請求書の分析プロセスを自動化しました。同社は年間数十億ドルを輸送費に費やしており、請求書に埋もれた誤った料金や検出されないエラーが課題でした。Dowは2種類のAIエージェントを構築しました。1つ目は、メールで届くPDF請求書を監視し、データを構造化して分析する自律型エージェントです。2つ目は、自然言語でデータと対話できるプロンプト応答型の「Freight Agent」です。プルーフオブコンセプト段階のわずか数週間で、エージェントは数千件の請求書を分析し、異常を検出して潜在的な節約機会を特定しました。全モードでのグローバル展開後、初年度で数百万ドルの輸送コスト削減が見込まれています。同社は物流・運用に影響を与える100以上のエージェント活用ユースケースを特定しています。Pets at Home:不正検知の効率を10倍に向上英国最大のペットケア企業Pets at Homeは、Copilot Studioで小売不正検知エージェントを開発しました。同社は約450の実店舗、小売サイト、約450の動物病院、グルーミングサービスを運営しており、データの統合と活用が課題でした。不正検知エージェントは、大量のデータを迅速にふるい分け、同じ写真が異なる人物によって複数回使用されているケースなど、体系的な不正を検出します。同社のシニアフロードマネージャーKay Birkby氏は「異常やパターンを発見することで、不正行為の特定だけでなく、製品に問題がないかを確認すべきケースも見つけられます」と述べています。導入効果として、不正検知のスピードが10倍に向上し、1日あたりの処理ケース数が20倍に増加しました。国内企業の導入事例国内でも、大手企業を中心にCopilot Studioおよび関連するMicrosoft Copilot製品の導入が進んでいます。Copilot Studioによるエージェント構築事例と、Microsoft 365 Copilotによる生産性向上事例をそれぞれ紹介します。Copilot Studioの導入事例ベネッセホールディングス:社内相談AIで問い合わせ対応を効率化ベネッセホールディングスは、新企画立案時の社内相談業務を効率化するためにCopilot Studioで「社内相談AI」を構築しました。新企画の立ち上げ時には経理・財務・法務・情報セキュリティなど多岐にわたる部門への相談が必要となり、それが新事業発足の足かせになっていたことが背景です。同社は2023年10月にオリジナル版の社内相談AIをリリースしましたが、新規データセットの再投入やログ分析をクイックに反映することが難しいという課題がありました。そこで2024年2月にCopilot Studio版へ移行しました。データソースは各部門のマニュアルを中心に約750ページです。Copilot Studio版の導入効果として、回答精度が81%から86%に向上しました。ノーコードで構築できることに加え、利用状況や回答精度の良し悪しが具体的にわかるため改善しやすい点がメリットです。同社専務執行役員CDXO橋本英知氏は「24年度内にCopilot Studioで簡単な質問を解決できること、翌年には一部の手続きのAI化を目標にしている」と述べています。Microsoft CopilotとAzure AIの導入事例(参考)以下は、Copilot Studioと関連するMicrosoft CopilotおよびAzure AIの活用事例です。伊藤忠商事:データ分析基盤とAIの連携で商品企画を支援伊藤忠商事は、Microsoft Copilotを全社的に導入し、業務効率化と新たなビジネスモデルの創出を目指しています。繊維、食料、情報、金融など多岐にわたる事業を展開する同社では、各部門で生み出される膨大なデータの分析・活用が課題でした。特に食料カンパニーでは、既存のデータ分析基盤「FOODATA」にAzure AIを組み込み、Copilotと連携させることで、商品企画・開発プロセスにおけるデータ活用を飛躍的に向上させました。Copilotが市場トレンドや消費者ニーズを分析し、新商品のコンセプト立案やキャッチフレーズ作成を支援します。商品のパッケージデザインのイメージ生成など、これまで言語化が難しかった業務もサポートしています。導入効果として、これまで一部の専門家しか扱えなかったデータ分析が、現場社員レベルでも容易に実現できるようになりました。データに基づいた迅速な意思決定が可能となり、業務効率が大幅に向上しています。同社はCopilotを「商いの未来」を創造するパートナーと位置づけ、全社的な活用を推進しています。Microsoft 365 Copilotの導入事例(参考)以下は、Copilot Studioとは別製品であるMicrosoft 365 Copilotの導入事例です。Copilot Studioがエージェント構築プラットフォームであるのに対し、Microsoft 365 CopilotはOfficeアプリケーションに組み込まれたAIアシスタントです。デンソー:3段階展開で30,000人への全社導入を決定自動車部品メーカーのデンソーは、Microsoft 365 Copilotを3段階のステップで展開しました。同社ITデジタル本部デジタル活用推進部長の白井智明氏は「AIを当たり前に活用する風土・働き方変革を一気に進めていきたい」と導入の背景を説明しています。第1ステップとして2023年10月にIT部門と各部門の有志300人で先行利用を実施し、ひとりあたり月12時間の業務時間削減を確認しました。第2ステップとして2024年4月に各部門長と選出社員6,000人に拡大しました。第3ステップとして2024年7月に本社30,000人への本格導入が決断されています。導入効果として、時間削減に加えて品質向上面でも成果がありました。設計部門では、Microsoft 365 Copilotから社内に蓄積されたデータを基にこれまで気づかなかった注意点などのアドバイスを得ることができ、設計品質の向上につながった事例があります。同社ではプロンプトと回答例を掲載した社内利用事例集を作成し、全社への浸透を図っています。住友商事:日本企業初のグローバル全社導入住友商事は、日本企業として初めてグローバル全社でCopilot for Microsoft 365を導入しました。同社デジタル戦略推進部長の塩谷渉氏は「使わない人たちにこそ、自身の生産性や創造性を高めるために使ってもらわなければならない」という経営層の強い思いが全社導入の背景にあったと説明しています。2023年9月にEAP(Early Access Program)で300ライセンスを先行導入し、経営層やIT戦略委員会などで検証を実施しました。EAPでのアンケートでは「満足」との回答が7割を占めました。2024年4月には全従業員・派遣スタッフに向けて8,800ライセンスを配布しています。定着化に向けて、プロンプトのテンプレート展開、各SBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)へのアンバサダー配置、Microsoft Viva Insightsを活用した定量的効果測定など、1年間で定着させるための施策を次々と打ち出しています。まとめMicrosoft Copilot Studioは、AIエージェントを簡単に作成・展開できるプラットフォームとして、国内外の企業で導入が進んでいます。顧客対応の自動化ではHolland America LineやVirgin Moneyが成果を上げ、業務プロセスの効率化ではPG&Eが年間110万ドル以上、Dowが数百万ドル規模のコスト削減を見込んでいます。知識管理の高度化ではAmgenが創薬サイクルの短縮に成功しています。国内ではベネッセホールディングスがCopilot Studioで社内相談AIを構築し、回答精度を向上させました。Copilot Studioの利点は、ノーコード・ローコードでエージェントを構築でき、利用状況や回答精度を可視化して継続的に改善できる点です。URLを指定するだけで公開Webサイトや社内イントラサイトからCopilotを作成でき、SharePoint、Teams、Webサイトなど多様なチャネルへの展開も容易です。導入を成功させるポイントは3つあります。1つ目は、最大の業務課題を特定してからAIを適用することです。2つ目は、組織のデータと既存システムとの連携を重視することです。3つ目は、スモールスタートで効果を検証してから全社展開することです。Fortune 500の90%がCopilot Studioを選択しており、AIエージェントによる業務変革は今後さらに加速すると見込まれます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度診療報酬改定】安心・安全で質の高い医療の推進|9つの重点施策を徹底解説
中央社会保険医療協議会(中医協)総会第640回において、令和8年度診療報酬改定に向けた「これまでの議論の整理(案)」が示されました。本稿では、このうち「Ⅲ 安心・安全で質の高い医療の推進」について解説します。今回の改定案では、患者安全体制の強化、医療DXの推進、救急・小児・がん・精神医療などの重点分野の充実、感染症対策、歯科医療、薬局機能、イノベーション評価の9分野で見直しが行われます。身体的拘束の最小化に向けた新評価の創設、オンライン診療の拡大、電子処方箋の活用促進など、医療の質向上と患者の利便性向上を両立させる施策が盛り込まれています。患者にとって安心・安全に医療を受けられるための体制の評価患者が安心して医療を受けられる体制を整備するため、治療と仕事の両立支援、医療技術の評価見直し、検査体制の充実など多岐にわたる施策が示されています。療養・就労両立支援指導料については、対象患者、算定可能な期間及び評価が見直されます。健康診断や検診、予防接種等の受診後に保険診療を実施する場合の初再診料等の算定方法も明確化されます。手術等の医療技術については、医療技術評価分科会の検討結果を踏まえた新規技術の評価が行われます。新規医療材料等として保険適用され現在準用点数で行われている医療技術にも新評価が設けられます。外保連試案を参考にした評価見直し、整形外科領域のKコード分類の見直しも実施されます。ロボット手術については、年間手術実績に応じた新評価が創設され、高額医療機器の効率的活用と集約化が図られます。全身麻酔の評価は、麻酔の深度、気道確保デバイスの有無及び麻酔管理体制に応じた評価に見直されます。ゲノム医療については、遺伝学的な情報に基づく療養指導の回数等の要件が見直されるとともに、指定難病の診断に必要な遺伝学的検査の対象疾患が拡大されます。検査関連では、フィブリノゲン製剤の適正使用のための迅速測定、新規臨床検査として保険適用され現在準用点数で行われている検査、骨粗鬆症治療管理での骨塩定量検査、近視進行抑制薬の処方に係る検査について評価の見直しや新設が行われます。検体検査管理加算の要件見直しやカルタヘナ法遵守のための新評価も導入されます。心不全治療については、急性心不全で入院した患者に対する早期からの多職種介入と退院後の地域連携による治療継続に新評価が設けられます。透析医療では、人工腎臓における災害対策やシャントトラブル連携について新評価が設けられます。経皮的シャント拡張術・血栓除去術については、シャント閉塞及び高度なシャント狭窄とその他の場合の治療効果の違いを踏まえ算定要件が見直されます。腹膜透析についても、基幹病院とかかりつけ医師の連携により在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定要件が見直されます。身体的拘束の最小化の推進身体的拘束の最小化は、患者の尊厳を守る観点から重要な取組です。質の高い取組を行う場合の体制について新たな評価が創設されるとともに、身体的拘束を行った日の入院料評価が見直されます。認知症ケア加算については、認知症を有する患者へのアセスメントやケアの充実を図りながら身体的拘束の最小化を推進する観点から評価が見直されます。医療安全対策の推進医療安全対策加算については、患者への安心・安全な医療提供を更に推進する観点から、要件及び評価が見直されます。アウトカムにも着目した評価の推進医療の質を客観的に評価するため、アウトカム評価の推進とデータ活用が進められます。回復期リハビリテーション病棟では、リハビリテーション実績指数の算出方法及び除外対象患者の基準が見直されます。入院基本料や特定入院料における平均在院日数、在宅復帰率の計算対象も明確化されます。短期滞在手術等基本料3を算定する患者は特定入院料の患者割合等の計算から除外されます。また、1病棟で届け出ることのできる特定入院料の種類数が明確化されます。データを活用した診療実績による評価の推進データ提出加算に係る届出を要件とする入院料の範囲が拡大されます。外来医療についてもデータ提出に係る評価が見直されます。在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料及び終夜睡眠ポリグラフィーの要件・評価も見直されます。医療DXやICT連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価医療DX関連施策の進捗状況を踏まえ、診療録管理体制加算、医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の評価が見直されます。普及した関連サービスの活用を基本としつつ、更なる活用による質の高い医療提供が評価されます。電子処方箋システムによる重複投薬等チェックの利活用の推進向精神薬の処方実態を踏まえ、情報通信機器を用いた診療において向精神薬を処方する場合には、電子処方箋管理サービス等による重複投薬等チェックが要件化されます。情報通信機器を用いた医学管理において重複投薬等チェックを行い電子処方箋を発行する場合には、新たな評価が設けられます。外来、在宅医療等、様々な場面におけるオンライン診療の推進情報通信機器を用いた診療の施設基準には、チェックリストのウェブサイト等への掲示及び医療広告ガイドラインの遵守等が追加されます。D to P with Nによるオンライン診療については、診療時の看護職員の訪問に関する評価、訪問看護療養費等との併算定方法、検査及び処置等の算定方法が明確化されます。D to P with Dについては、遠隔連携診療料の対象疾患が見直されるとともに、入院及び訪問診療における新評価が創設されます。情報通信機器等を用いた外来栄養食事指導について、電話による指導の評価が見直されるとともに、情報通信機器による指導のみでの算定も可能となります。不随意運動症に対する脳深部刺激療法の遠隔プログラミングについても新評価が設けられます。在宅療養指導料については、在宅自己注射指導管理料を算定している患者及び慢性心不全の患者に係る要件が見直されます。プログラム医療機器等指導管理料にも情報通信機器を用いた場合の規定が設けられます。質の高いリハビリテーションの推進リハビリテーションの質向上のため、退院時指導、医療機関外でのリハビリ、訓練内容に応じた評価など多面的な見直しが行われます。退院時リハビリテーション指導料の対象患者の要件が見直されます。医療機関外における疾患別リハビリテーション料の上限単位数も見直されます。運動器リハビリテーション料等の算定単位数上限が緩和される対象患者も見直されます。疾患別リハビリテーション料については、訓練内容に応じた評価に見直されます。リハビリテーション総合計画評価料の評価等は書類簡素化の観点から見直されます。リンパ浮腫複合的治療料も実態に即した評価に見直されます。発症早期からのリハビリテーション介入の推進入院直後における早期リハビリテーション介入を推進する観点から、より早期に開始するリハビリテーションが評価されます。土日祝日のリハビリテーション実施体制の充実休日であっても平日と同様のリハビリテーションを推進する観点から、休日におけるリハビリテーションについて新たな評価が設けられます。重点的な対応が求められる分野への適切な評価救急、小児・周産期、がん、精神、難病の各分野について、専門性に応じた評価の見直しが行われます。救急医療の充実救急医療機関における夜間休日を含めた応需体制の構築を踏まえ、院内トリアージ実施料及び夜間休日救急搬送医学管理料等が見直されます。救急外来医療を24時間提供するための人員・設備・検査体制等に応じた新評価が創設されます。救急患者連携搬送料については、高次救急医療機関と他の医療機関との連携強化、適切な転院搬送の推進の観点から要件及び評価が見直されます。小児・周産期医療の充実周産期医療体制の適切な維持のため、母体・胎児集中治療室管理料の要件が見直されます。新生児特定集中治療室管理料2については、低出生体重児の新規入院患者数に関する実績基準が見直されます。成人移行期の小児について、難病外来指導管理料の要件が見直されます。小児入院医療管理料等及び小児科外来診療料は、高額な検査・薬剤の必要性等を踏まえて見直されます。6歳以上の小児の薬剤調製における無菌製剤処理加算の評価対象も見直されます。分娩件数の減少に伴う産科病棟の混合病棟化等を踏まえ、母子の心身の安定・安全に配慮した産科管理や妊娠・産後を含む継続ケアの体制について新評価が設けられます。質の高いがん医療及び緩和ケアの評価外来腫瘍化学療法診療料については、要件の見直しとともに皮下注射を実施した場合の評価も行われます。がんゲノムプロファイリング評価提供料及び検査は、エキスパートパネル省略可能な症例の知見を踏まえて見直されます。強度変調放射線治療(IMRT)については、遠隔の医師と共同で放射線治療計画を作成できるよう医師配置の要件が見直されます。がん患者指導管理料は、意思決定支援や心理的不安軽減の観点から算定要件が見直されます。遺伝性乳癌卵巣癌症候群について、乳癌・卵巣癌未発症患者への予防的手術のエビデンスを踏まえ、BRCA1/2遺伝子検査及びがん患者指導管理料の要件が見直されます。抗がん剤ばく露リスクを踏まえ、閉鎖式接続器具使用時の無菌製剤処理料に新評価が設けられます。緩和ケアについては、末期呼吸器疾患患者及び終末期腎不全患者を対象に加えた上で、緩和ケア病棟入院料の包括範囲が見直されます。質の高い精神医療の評価急性期等の入院料における精神保健福祉士、作業療法士又は公認心理師の病棟配置について新評価が設けられます。小規模医療機関や病床削減に取り組む医療機関が、多職種配置による質の高い入院医療と地域定着支援を一体的に行う場合の新評価も創設されます。精神科リエゾンチーム加算の要件・評価が見直されます。精神病床入院患者の高齢化に伴う身体合併症への対応として、精神科以外の医師による継続的管理の新評価が設けられます。維持透析を必要とする精神病床入院患者への対応も推進されます。精神科救急医療体制加算の要件・評価が見直されます。精神科救急急性期医療入院料等については、医療保護入院等の割合に係る要件が緊急的な入院医療の必要性等に関する指標に見直されます。精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者の医療提供体制普及のため、精神科救急急性期医療入院料等の要件も見直されます。長期入院患者の地域移行推進のため、人員配置基準の低い精神病棟入院基本料の長期入院患者評価が見直されます。精神疾患と身体疾患を併せ持つ患者、急性期の精神疾患患者及び治療抵抗性統合失調症患者の医療提供体制普及のため、精神科急性期医師配置の要件が見直されます。通院・在宅精神療法の要件・評価が見直されます。同一の精神保健福祉士による継続的な伴走支援を推進するため、病棟に専従配置されている精神保健福祉士に係る要件が見直されます。心理支援加算、認知療法・認知行動療法の要件・評価も見直されます。児童思春期支援指導加算、早期診療体制充実加算の要件・評価が見直されます。情報通信機器を用いた精神療法についても、新たに策定された指針を踏まえて要件が見直されます。公認心理師の養成状況を踏まえ、臨床心理技術者に係る経過措置も見直されます。難病患者等に対する適切な医療の評価脳死臓器提供管理料については、認定ドナーコーディネーターの配置による効果や脳死判定基準改正を踏まえて評価が見直されます。臓器採取術及び臓器移植術、臍帯血移植についても新評価や評価見直しが行われます。抗HLA抗体スクリーニング検査の対象患者は、臓器生着率向上の観点から見直されます。感染症対策や薬剤耐性対策の推進抗菌薬の適正使用推進のため、薬剤感受性検査の要件が見直されるとともに、一部感染症に係る検査の要件も見直されます。感染対策向上加算1については、微生物学的検査室を有する医療機関への新評価が設けられます。結核病棟の維持が困難になっている状況を踏まえ、ユニット化病床やモデル病床等における重症度、医療・看護必要度等の対象患者範囲が見直されます。特定感染症入院医療管理加算及び特定感染症患者療養環境特別加算の対象疾病範囲も見直されます。口腔疾患の重症化予防等の生活の質に配慮した歯科医療の推進障害者歯科治療を専門に担う歯科医療機関の歯科医学的管理について新評価が設けられます。歯科疾患管理料、小児口腔機能管理料及び口腔機能管理料の要件・評価が見直され、対象患者も拡大されます。新製有床義歯管理料の算定単位、歯周病安定期治療及び歯周病重症化予防治療の評価体系、小児保隙装置の調整・修理・製作についても見直しや新評価が行われます。歯科矯正治療については、連続する3歯以上の先天性欠損歯を有する者が対象に追加されます。周術期等口腔機能管理計画策定料等の評価見直し、口腔機能指導加算の評価体系見直し、歯科技工士連携加算の評価範囲・施設基準見直しも行われます。CAD/CAMインレー・冠の活用促進のため、大臼歯の咬合支持等の要件やクラウン・ブリッジ維持管理料の対象範囲が見直されます。局部義歯のクラスプ・バーは原則として貴金属材料以外を使用する運用に見直されます。CAD/CAM冠製作時の光学印象、3次元プリント有床義歯についても新評価が設けられます。歯科点数表については、解釈が示されていない内容の明確化、類似項目や算定実績がない項目の整理、算定告示と算定要件の整合、麻酔薬剤料が算定できない項目の整理が行われます。歯科固有の技術についても、医療技術評価分科会等での検討結果、歯科技工料調査の結果、臨床現場の実態を踏まえた評価・運用の見直しが行われます。地域の医薬品供給拠点としての薬局に求められる機能に応じた適切な評価「患者のための薬局ビジョン」策定から10年が経過した現状を踏まえ、調剤基本料が見直されます。立地依存から脱却し薬剤師の職能発揮を促進する観点での見直しです。特別調剤基本料Aの対象薬局の要件、地域支援体制加算の要件も見直されます。調剤管理料については、内服薬の調剤日数による4区分が見直されます。重複投薬・相互作用等防止加算等、かかりつけ薬剤師指導料及び服薬管理指導料の評価体系も見直されます。保険薬局におけるインフルエンザ吸入薬指導について、吸入薬管理指導加算の要件・評価が見直されます。服用薬剤調整支援料も要件・評価が見直されます。調剤報酬の簡素化のため、類似する算定項目の統合も行われます。イノベーションの適切な評価や医薬品の安定供給の確保等医薬品・医療機器等のイノベーションの適切な評価と安定供給確保のため、「令和8年度薬価制度改革の骨子」及び「令和8年度保険医療材料制度改革の骨子」に基づく対応が行われます。まとめ令和8年度診療報酬改定における「安心・安全で質の高い医療の推進」は、患者安全体制の強化から医療DXの推進、重点分野の充実まで9分野にわたる包括的な見直しとなっています。身体的拘束の最小化やオンライン診療の拡大など患者の権利と利便性に配慮した施策、データに基づくアウトカム評価の推進、救急・小児・がん・精神医療など専門分野の充実が図られます。医療機関においては、今後の告示・通知等を注視し、算定要件や施設基準の変更に対応した体制整備を進めることが求められます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
令和8年度診療報酬改定|2040年に向けた医療提供体制の8つの柱を徹底解説
中央社会保険医療協議会(中医協)総会第640回において、令和8年度診療報酬改定に向けた「これまでの議論の整理(案)」が示されました。この整理案では、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築に向けて、8つの柱から成る具体的な方向性が提示されています。本稿では、この議論の整理案の第Ⅱ章「2040年頃を見据えた医療機関の機能の分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」の全容を解説します。今回の改定方針における8つの柱は次のとおりです。第1の柱は「入院医療の評価」で、急性期から療養病棟まで各機能に応じた評価体系の見直しが進められます。第2の柱は「治し、支える医療の実現」で、後方支援・入退院支援・高齢者ケアが推進されます。第3の柱は「かかりつけ医機能等の評価」で、医科・歯科・薬剤師の機能強化が図られます。第4の柱は「外来医療の機能分化」で、大病院と診療所の連携が強化されます。第5の柱は「在宅医療・訪問看護の確保」で、重症患者対応と適正化が両立されます。第6の柱は「人口・医療資源の少ない地域への支援」です。第7の柱は「医療従事者確保のための取組」です。第8の柱は「医師の地域偏在対策」です。【第1の柱】入院医療の評価|急性期から療養病棟まで入院医療の見直しは、患者のニーズと病院機能に応じた評価体系の再構築を目指しています。この柱は「患者のニーズ、病院の機能・特性、地域医療構想を踏まえた医療提供体制の整備」と「人口の少ない地域の実情を踏まえた評価」の2つの項目で構成されます。医療提供体制の整備(17項目)急性期医療の評価見直しでは、病院が地域で果たす救急・手術機能に着目した施設基準が新設されます。この新基準では、救急搬送の受入実績や手術件数に基づく体制整備が評価対象となります。重症度、医療・看護必要度についても、救急搬送症例や手術なし症例の適切な評価を進める観点から評価方法が見直されます。総合入院体制加算と急性期充実体制加算は見直され、新たな評価が行われます。人口の少ない地域で救急搬送を担う病院への配慮も行われます。特定機能病院入院基本料については、高度医療提供の拠点機能と地域医療における役割を評価する観点から区分が見直されます。特定集中治療室管理料の見直しでは、7つの改定項目が示されています。第一に、救急搬送件数と全身麻酔手術件数に関する病院実績が要件化されます。第二に、宿日直を行う医師を含む治療室の範囲と施設基準が見直されます。第三に、急性冠症候群治療後や心停止蘇生後患者への処置を踏まえ、重症度・医療・看護必要度の項目が見直されます。第四に、SOFAスコア要件が見直されます。第五に、特定機能病院でも重症患者対応体制強化加算が算定可能となります。第六に、特定集中治療室遠隔支援加算の施設基準が見直されます。第七に、広範囲熱傷特定集中治療管理料の区分が統合・簡素化されます。ハイケアユニット入院医療管理料については、3つの見直しが行われます。救急搬送件数と全身麻酔手術件数に関する病院実績が要件化されます。重症度・医療・看護必要度の項目が見直されます。基準を満たす患者割合の要件も見直されます。救命救急入院料は、簡素化の観点から区分が統合・整理されます。脳卒中ケアユニット入院医療管理料についても、医療機能に係る実績に応じた要件見直しが行われます。地域包括医療病棟では、高齢者の中等症までの救急疾患等の幅広い受入を推進するため、複数の見直しが行われます。平均在院日数、ADL低下割合、重症度・医療・看護必要度の基準が見直されます。医療資源投入量や急性期病棟の併設状況に応じた評価が導入されます。リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的取組を推進する観点から、加算体系も見直されます。回復期リハビリテーション病棟入院料については、より質の高いリハビリテーション医療を推進する観点から施設基準と要件が見直されます。回復期リハビリテーション入院医療管理料と特定機能病院リハビリテーション病棟入院料も同様の見直し対象となります。療養病棟入院基本料では、患者の病態や医療資源投入量をより適切に反映させる見直しが行われます。医療区分2または3に該当する疾患や状態、処置等の内容が見直されます。療養病棟入院料2については、医療区分2・3の患者割合が引き上げられます。障害者施設等入院基本料では、2つの見直しが行われます。重度の肢体不自由児(者)に該当しない廃用症候群に係る評価が見直されます。看護補助加算と看護補助体制充実加算についても、看護職員と看護補助者の業務分担・協働および夜間の負担軽減を推進する観点から評価が見直されます。入院料全般に関わる見直しとして、薬剤料が包括されない薬剤と注射薬の範囲が見直されます。DPC/PDPSについては、医療の標準化・効率化を推進する観点から、診断群分類点数表の改定、医療機関別係数の設定、算定ルールの見直しが行われます。短期滞在手術等基本料については、手術の外来移行を促すとともに実態に即した評価を行うため、対象手術の追加と要件・評価の見直しが行われます。地域加算については、令和6年人事院勧告における地域手当の見直しに伴い、対象地域と評価が見直されます。人口の少ない地域の実情を踏まえた評価(3項目)人口の少ない地域への配慮では、3つの対応が示されています。医療資源の少ない地域に配慮した評価では、対象地域と経過措置が見直されます。人口の少ない地域における外来・在宅医療の確保では、地域の外来・在宅診療の確保に係る支援を行い、病状急変時に緊急入院患者を受け入れる体制を有する医療機関に対して新たな評価が創設されます。歯科医療が十分に提供されていない地域等では、地方自治体等と連携して実施する歯科巡回診療車を用いた巡回診療に対して新たな評価が創設されます。【第2の柱】「治し、支える医療」の実現「治し、支える医療」の実現に向けて、3つの領域での取組が示されています。在宅療養患者や介護保険施設入所者の後方支援、円滑な入退院の実現、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的推進が柱となります。後方支援機能の強化(3項目)後方支援機能の強化では、3つの見直しが行われます。協力医療機関と協力対象施設との情報共有・カンファレンスの頻度が見直され、業務効率化が図られます。地域包括医療病棟入院料と地域包括ケア病棟入院料については、高齢者救急・在宅医療・介護保険施設の後方支援体制と実績を持つ医療機関がさらに評価されます。地域包括ケア病棟の初期加算については、対象患者の範囲・評価・退院支援に係る包括範囲が見直されます。円滑な入退院の実現(4項目)円滑な入退院の実現では、4つの取組が進められます。入退院支援加算等については、関係機関との連携、生活に配慮した支援、入院前からの支援を強化する観点から評価・要件が見直されます。介護支援等連携指導料については、居宅介護支援事業所等の介護支援専門員等との連携強化の観点から要件が見直されます。回復期リハビリテーション病棟入院料には、高次脳機能障害患者の退院支援体制に係る要件が追加されます。感染対策向上加算等については、介護保険施設等への専門的助言を促進する観点から要件が見直されます。リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的推進(4項目)リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的取組では、4つの見直しが行われます。リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の算定要件が見直されます。地域包括医療病棟のリハビリテーション・栄養・口腔連携加算も同様に見直されます。地域包括ケア病棟でもリハビリテーション・栄養・口腔連携加算が算定可能となります。摂食嚥下機能回復体制加算の施設基準における言語聴覚士の専従要件や実績の計算方法が見直されます。療養病棟入院基本料における経腸栄養管理加算についても、対象となる患者の要件が見直されます。医科歯科連携については、入院患者の口腔状態への対応を推進する観点から新たな評価が創設されます。医科点数表により診療報酬を算定する保険医療機関が歯科医療機関と連携体制を構築し、入院患者が歯科診療を受けられるよう連携した場合が評価対象となります。歯科訪問診療についても、医科保険医療機関からの依頼に基づく入院患者への実施に対して新たな評価が創設されます。【第3の柱】かかりつけ医機能等の評価(8項目)かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価では、8つの見直しが示されています。医科、歯科、薬局のそれぞれについて、機能強化と適切な評価が図られます。かかりつけ医機能については、3つの見直しが行われます。機能強化加算の要件等が見直され、体制整備が推進されます。生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)が見直され、質の高い疾病管理が推進されます。特定疾患療養管理料については、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師による計画的な療養管理を適切に評価する観点から、対象疾患の要件が見直されます。地域包括診療加算等については、2つの観点から見直しが行われます。対象疾患を有する要介護高齢者等への継続的・全人的な医療を推進する観点と、適切な服薬指導の実施を推進する観点から、対象患者や要件が見直されます。時間外対応加算については、休日・夜間等の問い合わせや受診への対応体制整備を推進する観点から評価が見直されます。かかりつけ歯科医機能については、2つの見直しが行われます。歯科疾患管理料、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料の要件と評価が見直されます。小児口腔機能管理料と口腔機能管理料については、対象患者の範囲も拡大されます。歯周病治療については、ライフコースを通じた継続的・効果的な治療を推進する観点から、歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療の評価体系が見直されます。かかりつけ薬剤師機能については、本来の趣旨に立ち返り、普及と患者による選択を促進する観点から見直しが行われます。かかりつけ薬剤師指導料と服薬管理指導料の評価体系が見直されます。【第4の柱】外来医療の機能分化と連携(3項目)外来医療の機能分化と連携では、大病院と地域のかかりつけ医機能を担う医療機関との連携による逆紹介の推進が図られます。3つの見直しを通じて、外来機能の明確化と医療機関間の連携が推進されます。紹介患者・逆紹介患者の割合が低い特定機能病院等については、2つの見直しが行われます。紹介状なしで受診した患者等に係る初診料と外来診療料について、逆紹介割合の基準が引き上げられます。初診料と外来診療料が減算となる対象患者については、頻繁に再診を受けている患者を含むよう見直されます。診療所または許可病床数200床未満の病院については、新たな評価が創設されます。特定機能病院等からの紹介を受けた患者に対する初診を行った場合が評価対象となります。連携強化診療情報提供料については、評価体系が見直されます。病院の専門医師と地域のかかりつけ医師が連携しながら共同で継続的に治療管理を行う取組が推進されます。【第5の柱】質の高い在宅医療・訪問看護の確保在宅医療・訪問看護の確保では、適正な提供体制の構築と質の高い医療提供の両立が図られます。訪問看護の運営基準見直し、重症患者対応の評価、過疎地域への支援など、多岐にわたる改定が行われます。訪問看護の適正化に向けた基盤整備(3項目)訪問看護の適正化に向けて、3つの基盤整備が行われます。訪問看護ステーションに作成を求めている記録書の記載内容が明確化されます。指定訪問看護の運営基準に、安全管理と適正な請求等に関する新たな規定が設けられます。療養担当規則において、保険医療機関が特定の訪問看護ステーション等を利用させる対価として財産上の利益を収受することを禁止する規定が新設されます。重症患者対応を担う医療機関・薬局の評価(13項目)地域において重症患者の訪問診療や在宅看取り等を担う医療機関・薬局の評価では、13項目の見直しが行われます。在宅緩和ケア充実診療所・病院加算については、名称変更と要件・評価の見直しが行われます。往診時医療情報連携加算の要件が見直され、24時間の在宅医療提供体制を面として支える取組が推進されます。退院直後の訪問栄養食事指導に対する新たな評価が創設されます。連携型の機能強化型在宅療養支援診療所については、自ら医療提供体制を確保している時間に応じた評価が導入されます。在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院については、災害時における在宅患者への診療体制確保の観点から要件が見直されます。在宅時医学総合管理料と施設入居時等医学総合管理料については、患者の医療・介護の状態を踏まえた適切な訪問診療の提供、安心・安全な医療提供体制の確保の観点から要件が見直されます。在宅療養指導管理材料加算の算定要件も見直されます。医師と薬剤師の同時訪問については、ポリファーマシー対策と残薬対策を推進する観点から新たな評価が創設されます。残薬対策については、地域包括診療加算等並びに在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の要件が見直されます。指定訪問看護の運営基準においても残薬対策に係る取組が明確化されます。へき地における在宅医療の提供体制を確保する観点から、在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の要件が見直されます。在宅歯科医療については、6つの見直しが行われます。歯科訪問診療1の評価が見直され、急遽診療する必要が生じた場合の運用が明確化されます。歯科訪問診療4と歯科訪問診療5には新たな施設基準が設けられます。在宅療養支援歯科病院の施設基準が見直され、歯科診療所からの依頼により患者を受け入れた場合の実績が要件に加えられます。在宅療養支援歯科診療所と在宅療養支援歯科病院には、歯科訪問診療の研修・教育体制が要件に加えられます。訪問歯科衛生指導料は、指導人数に応じた評価と特別の関係の施設等に対する評価の適正化が図られます。在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料の要件が見直されます。在宅薬剤管理指導については、2つの見直しが行われます。在宅薬学総合体制加算については、高度な在宅訪問薬剤管理指導を含む必要な体制整備の観点から要件と評価が見直されます。在宅患者訪問薬剤管理指導料については、円滑な実施と実効性の改善に向けて要件が見直されます。重症患者等への訪問看護の評価(8項目)重症患者等への訪問看護の評価では、8つの見直しが行われます。特別地域訪問看護加算については、過疎地域等における遠方への移動負担を考慮し、対象となる訪問の要件が見直されます。在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料を算定する利用者については、訪問看護基本療養費等を算定できる回数が見直されます。ICTを活用した診療情報等の活用に対して新たな評価が創設されます。精神科訪問看護については、支援ニーズの高い利用者への対応を担う訪問看護ステーションに対する機能強化型の新たな評価が創設されます。乳幼児加算の評価が見直されます。訪問看護管理療養費の評価が見直されます。訪問看護基本療養費(Ⅱ)等とその加算については、訪問日数や訪問人数等に応じたきめ細かな評価に見直されます。高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションについては、包括評価体系が新設されます。【第6の柱】人口・医療資源の少ない地域への支援(4項目・再掲)人口・医療資源の少ない地域への支援では、4つの対応が示されています。これらはいずれも他の柱で示された内容の再掲となります。医療資源の少ない地域に配慮した評価については、対象地域と経過措置が見直されます(第1の柱で再掲)。人口の少ない地域における外来・在宅医療提供機能の確保に向けた新たな評価が創設されます(第1の柱で再掲)。へき地における在宅医療の提供体制を確保する観点から、在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の要件が見直されます(第5の柱で再掲)。歯科医療が十分に提供されていない地域等では、歯科巡回診療に対する新たな評価が創設されます(第1の柱で再掲)。【第7の柱】医療従事者確保のための取組(再掲)医療従事者確保の制約が増す中で必要な医療機能を確保するための取組については、2つの項目が示されています。これらはいずれも第Ⅰ章で詳述されている内容の再掲となります。業務の効率化に資するICT・AI・IoT等の利活用の推進が進められます(Ⅰ-2-2再掲)。タスク・シェアリング/タスク・シフティング、チーム医療の推進が図られます(Ⅰ-2-3再掲)。【第8の柱】医師の地域偏在対策の推進(3項目)医師の地域偏在対策の推進では、3つの対応が示されています。医療資源の少ない地域に配慮した評価については、対象地域と経過措置が見直されます(第1の柱で再掲)。人口の少ない地域における外来・在宅医療提供機能の確保に向けた新たな評価が創設されます(第1の柱で再掲)。新たな対応として、改正医療法に基づく都道府県知事の医療提供要請への対応が評価に反映されます。改正医療法に基づき都道府県知事が行う、地域で不足している医療機能等に係る医療提供の要請に応じず、保険医療機関の指定が3年以内とされた医療機関については、地域医療への寄与が不十分との位置付けであることを踏まえ、機能強化加算、地域包括診療加算、地域包括診療料の対象外とするなど、評価が見直されます。まとめ|2040年に向けた医療提供体制の8つの柱令和8年度診療報酬改定の議論整理案では、2040年頃を見据えた医療提供体制の構築に向けて、8つの柱から成る具体的な方向性が示されました。第1の柱「入院医療の評価」では、急性期から療養病棟まで各機能に応じた評価体系の見直しが進められます。第2の柱「治し、支える医療の実現」では、後方支援・入退院支援・高齢者ケアが推進されます。第3の柱「かかりつけ医機能等の評価」では、医科・歯科・薬剤師の機能強化が図られます。第4の柱「外来医療の機能分化」では、大病院と診療所の連携が強化されます。第5の柱「在宅医療・訪問看護の確保」では、重症患者対応と適正化が両立されます。第6の柱「人口・医療資源の少ない地域への支援」では、地域の実情に応じた柔軟な対応が可能となります。第7の柱「医療従事者確保のための取組」では、ICT活用やタスク・シフティングが推進されます。第8の柱「医師の地域偏在対策」では、改正医療法と連動した評価見直しが行われます。今後、中医協における議論を経て、具体的な点数設定や施設基準の詳細が決定されます。医療機関経営者、医療従事者、関係者の皆様におかれましては、引き続き議論の動向にご注目ください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
【令和8年度診療報酬改定】物価高騰と人材確保への6つの対応策を徹底解説
中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第640回)において、令和8年度診療報酬改定に向けた議論の整理(案)が示されました。医療機関は、持続的な物価高騰により事業収益が悪化し、全産業の賃上げ水準との乖離から人材確保も困難な状況にあります。このメールマガジンでは、「物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応」について、物件費高騰対策と人材確保施策の両面から詳しく解説します。今回の議論の整理では、大きく2つの方向性が示されました。ひとつは、初・再診料等および入院基本料等の見直しを含む物件費高騰への対応です。もうひとつは、処遇改善・ICT活用・タスクシフト・働き方改革・基準柔軟化という5つの柱による医療従事者の人材確保施策です。これらの施策は、医療機関の経営安定と持続可能な医療提供体制の維持を両立させることを目指しています。物件費の高騰を踏まえた対応医療機関等が直面する人件費や医療材料費、食材料費、光熱水費および委託費等の高騰に対応するため、診療報酬の見直しが行われます。この対応は、初・再診料等の見直し、入院時の食費・光熱水費の基準額引き上げ、食事療養の質向上という3つの施策で構成されています。初・再診料等および入院基本料等については、これまでの物価高騰による物件費負担の増加を踏まえた見直しが行われます。加えて、令和8年度および令和9年度における物件費の更なる高騰に対応するため、医療機関が担う医療機能を踏まえた新たな評価が設けられます。この評価では、病院・医科診療所・歯科診療所・保険薬局それぞれの費用関係データに基づく配分が行われ、病院の中でも担う医療機能に応じた傾斜配分が実施されます。入院時の食費および光熱水費については、基準額の引き上げが行われます。食費基準額は1食あたり40円引き上げられ、患者負担については原則40円、低所得者については所得区分等に応じて20円から30円となります。光熱水費基準額は1日あたり60円引き上げられ、患者負担については原則60円、指定難病患者等については据え置きとなります。入院時の食事療養の質向上に向けては、嚥下調整食への新たな評価が設けられます。この評価は、おいしく安全な食形態で適切な栄養量を有する嚥下調整食を提供する医療機関を対象としています。また、多様なニーズに対応できるよう、特別料金の支払を受けることができる食事の要件も見直されます。医療従事者の処遇改善医療従事者の人材確保に向けた取組として、処遇改善施策が強化されます。この施策は、賃上げ評価の見直しと看護職員の夜勤負担軽減という2つの柱で構成されています。賃上げに係る評価については、より実効性の高い仕組みへと見直されます。看護職員、病院薬剤師その他医療関係職種の確実な賃上げを更に推進するとともに、令和6年度診療報酬改定で入院基本料や初・再診料により賃上げ原資が配分された職種(40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師・事務職員・歯科技工所等で従事する者)についても、ベースアップ評価料の対象職種と同様に、実際に支給される給与(賞与を含む)に係る賃上げ措置の実効性が確保される仕組みが構築されます。看護職員の夜勤負担軽減については、組織的な取組を促進する見直しが行われます。看護職員夜間配置加算等において、夜勤に係る負担の軽減や処遇の改善に資する計画を立案し、体制の整備が促進されるよう要件が明確化されます。令和6年度改定では、ICT・AI・IoT等の活用による業務負担軽減が「取り組むことが望ましい」項目として位置づけられており、今回の改定ではこの方向性が更に推進されます。ICT・AI・IoT等の活用による業務効率化業務の効率化に資するICT、AI、IoT等の利活用が推進されます。この施策は、看護業務の効率化、医師事務作業の効率化、様式・届出の簡素化、および「様式9」の見直しという4つの取組で構成されています。看護業務におけるICT機器等の活用については、配置基準の柔軟化が図られます。見守り、記録および医療従事者間の情報共有に関し、業務効率化に有用なICT機器等を組織的に活用した場合に、入院基本料等に規定する看護職員の配置基準が柔軟化されます。実態調査によれば、ICT・AI・IoT等の活用が看護職員の業務負担軽減に「効果がある」「どちらかと言えば効果がある」と答えた割合は約7割に達しており、転倒・転落予測システムAIやスマートグラスと見守りカメラの導入など、具体的な効率化事例も報告されています。医師事務作業補助体制加算については、ICT等の活用による業務効率化・負担軽減等の業務改善推進の観点から、人員配置基準が柔軟化されます。医師事務作業補助者が実施している業務のうち、紹介状の返書の下書きや診療情報提供書の作成などについては、生成AIによる文書作成補助システムの活用が想定されており、診断書作成支援システムやRPA(定型業務自動化システム)、音声入力なども活用が進んでいます。様式・届出の簡素化については、診療に係る様式の簡素化や署名・記名押印の見直し、施設基準等に係る届出や報告事項の見直しが行われます。「様式9」については、医療現場の実態を踏まえ、病棟における勤務時間に算入できる内容の見直しとともに、小数点以下の処理方法を含む注意事項の記載が整理されます。タスク・シェアリング/タスク・シフティングとチーム医療の推進更なる生産年齢人口の減少に伴う医療従事者確保の制約に対応するため、多職種協働による病棟業務体制が評価されます。この評価は、患者像に合わせた専門的な治療やケアを提供しながら、患者のADLの維持・向上等に係る取組を推進することを目的としています。重症度、医療・看護必要度の高い高齢者等が主に入棟する病棟において、看護職員や他の医療職種が協働して病棟業務を行う体制について、新たな評価が行われます。実態調査によれば、看護補助者や他職種との業務分担は、看護職員の業務負担軽減策として最も効果が高いと評価されています。入退院支援部門のスタッフ(MSW等)との業務分担、看護補助者との業務分担、病棟クラークの配置、PT・OT・STとの業務分担などが、特に効果的な取組として挙げられています。医師の働き方改革の推進と診療科偏在対策医師の働き方改革を推進しつつ、診療科偏在の是正を図るための対応が行われます。この対応は、診療科偏在対策と休日・時間外加算の要件見直しという2つの施策で構成されています。診療科偏在対策については、外科医師の減少等に対応するため、診療科偏在による医師数の減少が課題となっている診療科の医師の勤務環境・処遇の改善を図りつつ、高度な医療を提供する医療機関等への新たな評価が行われます。特定地域医療提供機関および連携型特定地域医療提供機関においては、医師の働き方改革を更に推進しつつ、勤務環境・処遇改善等により医師の診療科偏在を解消して医療提供体制を確保する観点から、地域医療体制確保加算の要件が見直されます。処置および手術に係る休日加算1、時間外加算1および深夜加算1については、医師の働き方改革を推進する観点から要件が見直されます。令和6年度改定では、交代勤務制またはチーム制のいずれかおよび手当に関する要件を満たす必要があることとされ、令和8年5月31日までの経過措置が設けられていました。今回の改定では、この方向性を踏まえた更なる見直しが検討されています。診療報酬上求める基準の柔軟化医療現場を取り巻く人手不足の状況を踏まえ、質の高い医療提供体制の維持と人材確保の両立を図るための基準柔軟化が行われます。この柔軟化は、看護職員の配置基準、専従要件、常勤要件、摂食嚥下機能回復体制加算、およびリハビリテーション提供体制という5つの領域で実施されます。看護職員の配置基準については、やむを得ない事情による一時的な看護職員確保ができない場合の柔軟化が図られます。公共職業安定所や無料職業紹介事業者、適正認定事業者を活用する等により、平時から看護職員確保の取組を行っている医療機関が対象となります。専従要件については、医療安全管理加算、感染対策向上加算および入院栄養管理体制加算における基準が見直されます。常勤要件については、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律に規定されている1日当たり勤務時間を踏まえ、常勤職員の常勤要件に係る所定労働時間数が見直されます。摂食嚥下機能回復体制加算については、言語聴覚士の専従要件や実績の計算方法が見直されます。療養病棟入院基本料における経腸栄養管理加算についても、対象となる患者の要件が見直されます。リハビリテーション提供体制については、疾患別リハビリテーションや病棟の業務に専従の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が従事できる業務の範囲が広げられるとともに、明確化されます。まとめ令和8年度診療報酬改定に向けた議論の整理では、物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応として、物件費高騰対策と人材確保施策の両面から包括的な見直しが示されました。物件費高騰への対応では、初・再診料等および入院基本料等の見直しに加え、入院時の食費・光熱水費の基準額引き上げが行われます。人材確保に向けた取組では、処遇改善・ICT活用・タスクシフト・働き方改革・基準柔軟化という5つの柱により、医療従事者の賃上げと業務効率化が推進されます。これらの施策は、今後の中医協における議論を経て具体化されていきます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe