BC013アフタートーク
次回紹介予定の本『英語独習法』なんだかんだ、この本はすごく面白かったです。英語学習用の『Learn Better』という感じ。『How to take smart Notes』いまのごりゅごの興味の大半を占める「エバーグリーンノート」その流れを作り出したと言われている本。まだ半分くらいしか読んでなくて、しかも英語の本でいろいろ大変なんですが、今日興味ど直球の本なので、こういう機会を生かしてなんとか読んで、次回話せるようにしたいと思います。『生命はデジタルでできている』遺伝子系の本は色々読んでいます。その中で、一番最初に読み終えることができた本がこれ。まだまだ難しいし、わからないことは多いんですが、この本で「最低限の基礎」みたいなことが少し理解できたものでした。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC013『コンヴァージェンス・カルチャー』
今回は『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』について。『コンヴァージェンス・カルチャー』原題『Convergence Culture:Where Old and New Media Collide』Convergenceは、「一点に集まること」のイメージ。集約する、集合する、収斂する、収束する。Collideは、「ぶつかる、衝突する」のイメージ。新旧メディアがどこで衝突するのか。これは二つのニュアンスがあり、「どの場所で出会うのか」と、「どの利害でぶつかり合うのか」という二つの観点が含まれていると感じる。著者ヘンリー・ジェンキンズ南カリフォルニア大学教授。コミュニケーション&ジャーナリズム研究科、映画芸術研究科、ならびに教育研究科で、デジタル時代の参加型文化やファンダム、若者教育などを教えている。同校着任以前はマサチューセッツ工科大学(MIT)にて比較メディア研究プログラムを立ち上げ、ディレクターを長らく務めた。注意点原著は2006年であり、現代から見て最新の話題を扱っているわけではない。また、メディア研究の事例が基本的にアメリカなので、日本と合わない部分も当然出てくる。その点は留意が必要。主要なテーマインターネットが登場して、メディアが変化した。双方向になっただけではなく、これまで単なる受信者であった人々が発信者としての役割も担いはじめた。その変化によって、単に古いメディアが死に、新しいメディアが台頭するという単純な変化ではなく、コンテンツがどのように流通し、生産され、消費されるのか、そして利益をどのような形で作っていけばいいのか、というメディアを取り巻く全体像に大きな変化が訪れている。その変化は、拒絶しようと思ってもできるものではなく、考えられるのは「それとどう付き合うか」だけであろう。本書では、実際のメディア研究をベースにしながら、いかなる行動が情報の送り手(トップダウンの主体者)と情報の受け手(草の根の実践者)の間で生まれていたのかを考察している。2006年からみた「新しいメディア」との付き合い方を考える上で非常に示唆に富むであっただろうし、現代においても示唆に富む内容ではある。コンバージェンスの転換一つの端末にあらゆるコンテンツが集まるという意味での「コンバージェンス」ではなく、メディア企業がコングリマットになったり、一つのコンテンツがさまざまなプラットフォーム&流通ルートを持ったり、コンテンツのもとに多様な視聴者が集まったりするような、ある種の多様性が生まれる状況が「コンバージェンス」であると、見方の転換が提示されている。実際のメディアの状況から言っても、この見立ては極めて正しいと言える目次* イントロダクション「コンヴァージェンスの祭壇で祈ろう」* 第1章 『サバイバー』のネタバレ* 第2章 『アメリカン・アイドル』を買うこと* 第3章 折り紙ユニコーンを探して* 第4章 クエンティン・タランティーノの『スター・ウォーズ』?* 第5章 どうしてヘザーは書けるのか* 第6章 民主主義のためのフォトショップ* 結論 テレビを民主化する? ──参加の政治学* あとがき ──YouTube時代の政治を振り返る倉下の見立て日本では「メディアミクス」という考え方がもうあたり前であり、さらには情報の受け手を巻き込んだコンセプトも珍しくなくなっている。その意味で、本書が描いたレールは、たしかに現代にまで続いていると言える。言い換えれば、現代の「あたり前」がどのように生まれてきたのかを巡る旅にも本書はなる。一方で、現代のインターネット with メディアが全般的にうまくいっていない部分もあり、一体そこで何が損なわれてしまったのかを考える起点にもなる。その意味で、『遅いインターネット』や『ゲンロン戦記』などと合わせて読んでもよさそうである。最後にはそうしたメディアが民主主義→社会にもたらしうるインパクトも考察されているのだが、やはりこの点も現状は厳しいと言わざるを得ない。むしろゲームの中ですら「政治」や「社会」を体験する場が減っていると感じられる。この点は、おそらく目に見えている状況よりも、一段深いところに問題があるのだろう(日常の中から、政治的な煩わしいものが徹底的に排除されつつある、ということだと思われる)。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC012アフタートーク
今回は、はじめて「ゲストの方に来ていただいて、その人に本を紹介してもらう」という形でした。3人でPodcast、というのもほとんど経験がなく、なかなかにチャレンジングなものではありましたが、結果として「いつもと違う感じのもの」が作れて、良い刺激になりました。個人的には、よく名前をきいていて、でも良くわかってなかった「フリーライティング」というものについて本編中に話が聞けたおかげで、これに刺激を受けて「書く練習」という行為についてよく考えています。機会があればまたゲストの方に登場していただく、ということもやってみたいと考えているので、自薦、他薦問わず、リクエストなどあれば #ブックカタリストでツイートしていただくか、コメント欄などにコメントをよろしくお願いします。メールで届いている方ならば、このメールに返信していただくことでもご連絡いただけます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
ゲスト回BC012『思考のエンジン』
思考のエンジン オンデマンド (ペーパーバック)ゲストはTak.さん。* Twitter:@takwordpiece* Blog:Word Piece* Amazon著者ページ『思考のエンジン』について著者は奥出直人さん。青土社の思想系雑誌『現代思想』の連載を書籍化したもの。同じ著者の本に『物書きがコンピュータに出会うとき―思考のためのマシン』もあるが、こちらは入手が若干難しい。目次は以下の通り。* 思考の道具としてのタイプライター* ライティング・エンジンとしてのワードプロセッサー* エクリチュールとライティング・エンジン* パレルゴンとエルゴン* 論理的ディスコースのダイナミズム* コンピュータ上のソクラテス―「ソウトライン」を使う* 情報を俯瞰する装置―アウトライン・プロセッサーを使う* プロセスとしてのテクスト* 迷宮としてのデータベース* 補遺の連鎖とハイパーテキスト―ハイパーメディア・ライブラリーとライティング* 思考のエンジンとしてのハイパーテキスト* マニエリスムとアカデミズム今回は主に前半部分に関してお話いただきました。タイプライター的思考『思考のエンジン』にはこうあります。タイプライター的思考とは、タイプライターをペン代わりに使う思考のことではない。タイプライターを含む一九世紀末的な効率と生産性を可能にする思考を意味している。部分をつなぎ全体を考え、資料はファイルにきちっと整理され、巨大な辞書が備えられている、そんな環境がタイプライター的思考の場所である。つまり、物事をきわめてシステマチックに進めていくアプローチであり、それをエンハンスするのがタイプライターという機械です。もう一ヶ所引用します。また、書くという問題を考えるとき、全体の統一性を考えながらばらばらな部分を寄せ集め、つないでいくタイプライター的思考の限界についても考えておく必要がある。人間の思考はもっと複雑なものである。これらの記述でなんとなくタイプライター的思考の輪郭線が見えてくるでしょう。タイプライターからの逸脱では、タイプライター的思考ではない思考(およびそこに付随する執筆)とはどのようなものでしょうか。以上の手書きのエクリチュールにこだわる作家の意見をまとめてみると、書くという作業を創造的な行為とみなし、分かりきった意識を前もって準備した構造に合わせて説明するのではなく、明確に意識化できていないことを書くという作業、すなわちエクリチュールによって意識化しようとしていることが分かる。さらに、一度書き上げた原稿を推敲して仕上げていく楽しみも強調している。おおむねここが一番の力点でしょう。でもって、シェイクに象徴されるTak.さんが提示されるプロセスが強調しているのもこのような行い(あるいは営み)です。あらかじめ構造をしっかり作りそこに向かって書いていくことは、「分かりきった」ことを扱う行為であり、「明確に意識化できていないことを書くという作業」──つまり、発見や創造とはひどく違っていて、そしておそらく楽しみも少ないのではないか。そのような疑問を『思考のエンジン』を読んでいると感じられますし、まさにその問題意識を持ってTak.さんの著作を読んでみると、「なるほど、そういうことか」と腑に落ちることが多く出てきます。なので、Tak.さんの本を好ましいと感じる方ならば、よりディープに踏み込むために『思考のエンジン』はぜひとも読んでみたいところです。難しい言葉とは言え、この本は一筋縄ではいきません。すでに登場していますが、「エクリチュール」も知らないと意味が取りづらいですし、「パレルゴン」やら「ヘゲモニー」やら各種哲学者の用語がばんばん登場します。文章自体は晦渋ではないのですが、用語の感触を把握していないと、「うっ」と気後れする部分は間違いなくあります。それを乗り越えるのが知的トレーニングである、というといかにもマッチョな発想にも思えますが、それでも自分が知らない世界から流れ込んでくる空気を一度胸いっぱい吸い込んでみるのは悪くない体験です。それに用語がわからないからといって全体の意味が汲み取れないこともありません。ですので、そういう本だと思ってチャレンジされると良いでしょう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC011 アフタートーク&倉下メモ
『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』倉下メモ話を聞いている間、ずっと「そうだよな〜」という思いでいっぱいの回でした。納得fullな一冊。でもって、ちょうど倉下が今書いている本も「書くことを通して考える」ことの大切さに言及しているので、重複感がハンパなかったです。本書が提示する学び方に関しては、『独学大全』や『How to Take Smart Notes』も類書としてあげられると思います。あと、今井むつみさんの学習に関する本も同様のことを論じています。結局、自分の手を動かし、頭を動かさないと前には進めない、という点では、『妄想する頭 思考する手』にも通じるものがあるかもしれません。ちなみに、本書がKindleでセール対象になっていたので、倉下もさっそく買いました。また読んでみたいと思います。次の本の候補『実力も運のうち 能力主義は正義か?』最近話題の本。サンデルさんの本は以前も取り上げたので、その流れとして(あるいは話題に乗っかっていく意味で)。『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』『ゲンロン戦記』や『ヒューマン・ネットワーク』などで、「あるグループを作るとはどういうことか、インターネットでいかにそれを実践するのがよいのか」という問題意識が出ているので、その流れで買った本です。かなり分厚いのでなかなか手ごわそうですが、次回の倉下のターンはこちらにしようと思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第11回の本日は『Learn Better』について語ります。今回の本は、副題が「頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ」というもの。本書では、この6つのステップそれぞれに1章ずつ割り当て、それぞれの要素を深掘りしていきます。人は、短期記憶が少ない6つのステップを順に解説するよりも何よりも、本書を読んで1番のキモであると私が感じたのが「人は、短期記憶が少ない」ということ。この事実が、この本で出てくるありとあらゆる「学びが深まる方法」と繋がっています。そもそもの「6つのステップ」すら、1回でスムーズに覚えることはほとんど無理。人間の短期記憶というのはその程度のものであり、これを長期記憶へと変換する行為こそが「学びが深まる」ことを意味しているとも言えます。学びが深まる6つのステップ一応念のため6つのステップを書いておきます。* 価値を見出す* 目標を決める* スキルと知識を伸ばす* 発展させる* 関連付け* 再考する目を瞑ってこの6個をすぐに暗唱できるか確かめてみると、自分の短期記憶がどんなものなのか理解しやすくなるかもしれません。もちろん「覚えておくことだけ」に全力を注げば、この6つを覚えるだけならば無理ではないと思いますが、もちろんこれを丸暗記したところで「学びが深まる」わけではないし「頭の使い方が変わる」とは思えません。以下の3つを意識して行動する上記6つのそれぞれについての内容は、本を読んでください、Podcast聴いてみてください、という感じなのですが、チャチャッと要点だけ知りたい方向けにまとめると、以下の3つのことを意識する(&行動する)というのが重要なことだと考えます。* 自分の言葉で書く* 1つずつ確実にやっていく* 間隔を空けて何回もやるこの本、何回も色んなところで語ってるんですが、とにかく言ってることは「ごもっとも!!!」ということの連発。全然知らなかった!みたいな驚きはほとんどないんですが、それでも自分がこれまでブックカタリストで紹介してきた中で一番影響を受けた本です。ひょっとしたら人生で一番影響を受けた本、くらいになるかもしれないという、噛めば噛むほど味が出る本です。自分がこれまでブックカタリストで話した中でも一番面白い話ができたと思うし、これまで紹介した中で一番読んでみてほしいと思う本です。そして、読んだ本について「自分の言葉で書く」是非ともそこまで試してみて欲しいと思います。Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ🌱読んだ本の内容を「ずっと使えるノート」としてまとめる - ナレッジスタック This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC010アフタートーク 贈与を受け取ってしまったら語りたくなる
ブックカタリスト収録後のフリートーク&次回の本をどうするか、の打ち合わせトークです。アフタートークで出てきた本のリストもこちらでご紹介します。じわじわ効いてくるラーンベターいろんなところで何回も話しているんですが、最近とにかく『ラーンベター』から影響を受けたことが多いです。どれもこれも書いてある内容は「普通」の、それは確かにそうだよね、ってことばかりなんですが、あらゆることが「確かにそうだ」と感じる。ここまでブックカタリストで紹介してきた本の中で一番「あらゆることがつながるようになった」本です。遺伝子ブックカタリスト007 『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』 - ブックカタリストこれを読んでから生命科学に興味が出てきて、新しくこの本を読み始めました。前半は、簡単で面白いけど、だんだんわからんことが増えて難しくなってきています。フィンガードラム入門ブックカタリストも10回続き、ちょっと毛色が違うものもありなのではないか、というところで思い出した「本」これも紹介するのもアリかもね、なんて話してましたが、結局ボツ(というかラーンベターを紹介したい)ここで話してて、自分には「ゲームや音楽を公開したい意欲がない」これは何故だろう、と考えたときに今回の『世界は贈与でできている』と繋がって、自分は「受け取った贈与を返したい」が情報発信欲求の根底にあることがわかったのでした。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC010『世界は贈与でできている』
今回は『世界は贈与でできている』について。副題:資本主義の「すきま」を埋める倫理学著者:近内悠太(ちかうち・ゆうた)1985年神奈川県生まれ。教育者。哲学研究者。慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了。専門はウィトゲンシュタイン哲学。リベラルアーツを主軸にした統合型学習塾「知窓学舎」講師。教養と哲学を教育の現場から立ち上げ、学問分野を越境する「知のマッシュアップ」を実践している。デビュー著作となる本書『世界は贈与でできている』(NewsPicksパブリッシング刊)で第29回山本七平賞・奨励賞を受賞。倉下が見た本書のテーマ資本主義に抗する倫理学* 「お金では買えないもの」を語る言葉を求める。贈与とは何か──現代的な意義の確認* 贈与の原理を見出す。ピックアップキーワード* 贈与論 (マルセル・モース)* 贈与* “お金で買うことができないもの、およびその移動”* エマニュエル・レヴィナス/内田樹* 贈与の失敗としての『ペイ・フォワード』* デリダの誤配(「行方不明の郵便物」)* 贈与の象徴としてのサンタクロース* レヴィ=ストロース『火あぶりにされたサンタクロース』* ウィトゲンシュタインの言語ゲーム* 小松左京のSF* 想像力* 逸脱的思考と求心的思考* アンサング・ヒーロー概要人間は社会的な動物として(他者の存在を前提として)進化してきた。しかし、資本主義=交換の理論は他者の存在を必要としない。その理論は、自分もまた他者から必要とされないことを意味する。一方で、贈り物はそのような交換の理論には当てはまらない。経済学はこの贈与を語るための言葉を持たない。では、その言葉とは何なのか。「お金では買えないもの」という否定の表現ではない言葉を本書は探究する。贈与は、非時間的な交換とは違い、時間的な要素を生み出す。それはつながりを生み出すということ。しかし、贈与であるかのように見える親から子への呪いもある。その呪い性は「これは贈与である」と告げられることで発生してしまう。つまり、贈与とは贈与としての名乗りを持たないものでなければならない。贈与だとラベル付けされない贈与は、受け取った者が、その「意味」に後から気がつくことで成立する。そして、「意味」を扱う行為は、言語であり、コミュニケーションである。哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、言語活動をゲームとして捉えた。言語の「意味」を、特定のゲームにおける機能として理解せよ、という主張である。そうしたゲームを念頭に置かず、ただ「意味」だけを議論しても詮無いことである、と。私たちは言葉を扱うとき、何かしらのゲームに参加している。私たちの日常は、何かしらのゲームの内側で行われている。「意味」はそのゲーム内で規定される。ここで、贈与という行為の「意味」に後からが気がつく、という話に返ってみる。贈与は、名乗りを持たずに行われる。よって、私たちは通常であればその行為に気がつかない。しかし、自分が参加しているゲームにおいて、どうしても説明のつかない行為が目に入ったとしたら? そのような異物を本書ではアノマリーと呼び、その性質こそが「あれは贈与だった」と気がつける起点になると述べる。資本主義=交換の理論が支配的な中で暮らしている私たちにとって、明らかに異質に見える行為はそれだけで「目を引く」。そこから想像力が働けば、「あの行為は贈与だったのだ」と気がつくことができる。名乗りを持たないものの価値を、見出すことができる。→価値とは見出されるものであるそのとき、私たちは「すでに受け取ってしまったもの」となり、負債を背負って生きていくことになる。その負債感は、資本主義=交換の理論ではどうしても説明のつかない行為を引き起こし、それがまだ別の誰かにとっての贈与となり、世界は贈与で埋め尽くされてく。本書のポイントは、贈与とは「贈与として贈られたもの」を指すのではなく、後から振り返ったときに「あれは贈与だったのだ」と思えるものが贈与になる、という物の見方のシフトである。そのシフトを経験すれば、この世界そのものが、「あれは贈与だったのだ」と思えるもので満ちてくる。本書のタイトルが示すものは、おそらくそういういことだろう。これはただ受動的に生きているだけでは、贈与は見つからないことも意味する。贈与を見つけるための、違和感に気がつくための、そこから行為について想像するための、ある知的な能力が必要である。もし何かを教養と呼ぶならば、そうした能力こそがふさわしいと言えるだろう。関連コンテンツ* 映画『ペイ・フォワード』* 『それをお金で買いますか?』* 『火あぶりにされたサンタクロース』* 『復活の日』* 『存在論的、郵便的』* 『ゲンロン戦記』 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC009 アフタートーク&倉下メモ
『妄想する頭 思考する手』(暦本純一)倉下メモ本書の妄想とは何か。たとえば、「被害妄想」のようなネガティブなものではない。今この社会には存在していないものであり、それを他者に語ると「はあ?」とあきれられるくらいに今の価値観から乖離してしまっているもの、というくらいのニュアンス。他人に語ったときに、「ああ、それって便利だよね」と共感されるならば、既存のものの改良でしかなく(それはそれですごいわけだが)、イノベーションには至れない。言い換えれば、そのときの価値観を書き換えてしまうようなプロダクトこそがイノベーションと言える。私たちは自分が持つ価値観=世界観=パラダイムをフレームにして物事を考え判断するので、それが世間様と完璧に合致するならば、新しいものは何も生まれてこない。逆に世間様と完全に違っているなら話が通じない。だからこそ少しだけ「ズレ」ているものを思いつく価値観は貴重である。「はあ?」とあきれられる妄想を抱けるのは一つの希有な力なのだ。日本の画一的な教育と、単一指標による評価は、そうした希有な力の持ち主を貶め、規格化しようとする点でイノベーティブな芽を刈り取っているのではないか、とまでは本の中で直接書かれていないが、そういうニュアンスは受け取れる。すごく良かった箇所の引用同じようなアイデアは、自分以外にも思いつくことができる。でもその妄想を阻む壁を乗り越えられるのは自分しかいないかもしれないし、乗り越え方に自分らしさが出せるかもしれない。そう思うと、一回やってみて失敗するぐらいのほうが、やり甲斐のある面白いアイデアのように思えるのだ。失敗が重要なのは、それが「自分が取り組んでいる課題の構造を明らかにするプロセス」だからだ。次の本の候補『世界は贈与でできている』『クララとお日さま』 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC009 『妄想する頭 思考する手』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第9回の本日は『妄想する頭 思考する手』について語ります。著者は、東京大学大学院情報学環教授、ソニーコンピュータサイエンス研究所フェロー・副所長という肩書きを持つ、いわゆる研究職での最強エリートとも言える暦本純一さんの「アイデアの作り方」について書かれた本。iPhoneの誕生に大きくヒントを与えたとされているマルチタッチシステムSmartSkinの発明者でもある著者が語った本というだけでも、注目に値する書籍だと言えます。とは言え内容的にすごく難しいことが書かれている本というわけではなく、書かれている言葉も、コンテンツ自体も素直で読みやすいものです。少なくともごりゅごがブックカタリストで紹介してきた本の中では、今までで一番素早く読み終えることができた本でした。妄想と言語化じゃあすぐに読み終えることができたから簡単な本なのか、というと決してそういうわけでもなく、ちゃんと紹介しようと思うと無数の読みどころがあり、逆に紹介しようと思っても仕切れない、という感じの本でもあります。例えばごりゅごが一番影響を受けたのは「それはなにか」ということを1行で説明するクレームというものの重要性。(日本語でクレーム、というと「文句をいう」と言うニュアンスがあるが、Claimは英語では「主張」という意味を持つ)クレームというのは検証できる、決着が想定できる形で書かないといけないし、高機能、次世代、効率的、効果的、新しいというような正しいけれど曖昧な表現はダメ。この本では「クレーム」というのはアイデアに対してのこととして書かれていますが、これはいくらでも自分のことに応用できるな、と思いいろんなことを考えています。たとえばこのブックカタリストにしても、1行で、人が興味を持ってもらえるようにするにはどう言う説明がいいだろうか、みたいな感じ。人間が作る妄想の未来から希望と楽しさまたこの本は、ごりゅごが前回紹介した『2030年』とある意味で同じ「未来について語った本」でもあるんですが『2030年』に比べてなんか未来、というのが明るく楽しい、夢と希望に満ち溢れる気持ちにさせてくれる本でもありました。ブックカタリスト007 『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』 - ブックカタリストこれは、一体何が違うんだろう、というようなこともPodcastの中で語っていたりもするので、是非ともPodcast本体の妄想トークも一緒にお楽しみ下さい。参考リンクHuman Augmentation人間拡張のScrapboxNeil Harbisson: ニール・ハービソン:「僕は色を聴いている」 | TED Talkカメラを人体にくっつけた人のTEDトーク。「人間拡張」というものが人間の感覚まで変えうる、という体験を語ってくれていて、非常に面白い。妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方 (単行本) | 暦本 純一 |本 | 通販 | Amazon This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe