BC036『CONFLICTED 衝突を成果に変える方法』
『CONFLICTED(コンフリクテッド) 衝突を成果に変える方法』書誌情報* 著者* イアン・レズリー* 『子どもは40000回質問する あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力』* 翻訳* 橋本篤史* 出版社* 光文社* 出版日* 2022/2/22概要現代は、意見の対立が多い時代である。インターネットによって、コンテキストが異なる人と交わる機会も増え、統一的な価値観が崩壊しつつあるので、すべての人が同じ意見である、という状態は少なくなっている。一方で、私たちはそうした状況で「うまくやる」ための方法をほとんど知らない。日常的に訓練されることはないし、進化論的にそうした能力が獲得できるという機体も持ちがたい。意識的に取り組む必要がある。異なる意見がぶつかりあう状況(=衝突)は重要である。それはお互いの価値観を明らかにし、状況を改善し、事態を一歩前に進めるためには避けては通れない状況とも言える。むしろ、異なる意見を押さえ込んでしまうと、「問題」をただ先送りにするだけでなく、完成そのものを壊してしまう可能性すらある。お互いに率直に意見を交換できるようにすること。そのためには、以下の原則が重要だと著者は述べる。* 原則1 つながりを築く* 原則2 感情の綱引きから手を放す* 原則3 相手の"顔"を立てる* 原則4 自分の"変わっている"ところに気づく* 原則5 好奇心を持つ* 原則6 間違いを利用する* 原則7 台本なんていらない* 原則8 制約を共有する* 原則9 怒るときはわざと* 原則10(鉄則) 本音で語る大切なのは、相手を「対等な人間である」と肝に銘じておくこと。自分も感情があるように、相手も感情がある。侮辱されたら理屈なんてどうでもよくなるし、自分が正しいと思うことを目一杯主張したい気持ちを抑えるのも難しい。お互いにそういう存在なのだ、ということを理解して「コンフリクテッド」な話し合いに臨むこと。その意味で、上記の10の原則は、インターネット時代の基礎コミュニケーション技術と言えるかもしれない。倉下メモさすがにツイッター歴も長いので、いまさら「ツイッターを議論のできる場所にしよう!」という夢は抱いていませんが、かといってそれがそのままインターネットを諦めることになってしまうのはもったいないなとも感じています。文脈が異なる人が集まって、「率直な」意見交換ができる場所を作ること。これまでは、そうした活動は「できる人はできて、できない人はできない」と割り切っていたところがあるのですが、本書で「原則」としてまとめられているのをみて、少なくともある「訓練」を経ることでその能力が身に付くのではないか、という気持ちになっています。また、単に人を集めるだけでなく、「有益な意見交換(衝突を含む)」を可能にするためには、その場の方向性を明示する「ルール作り」も重要なのだと感じました。しばらくは、このテーマについて考えていきたいと思っています。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC035 『情動はこうして作られる』
今回は、ごりゅごがブックカタリストで紹介した本の中で最も分厚い本。Amazonの表記では697ページにもなる極太本でした。(片手で本が開けない厚さ。ちなみに独学大全は1064ページ)とは言っても、内容とか概念とかがすごく難しいというわけではなく、著者が言いたいことを全部盛り込んだら、何だかこんな分厚い本になってしまったぞ、というようなイメージで、正直「もうちょっとスリムにできるはず」だとは感じています。(本編でも語っているが、終盤はかなり蛇足感漂っていて、ほとんど飛ばし読みだった)序盤と終盤はわりと「かったるい」と感じた部分があるのは事実ですが、それでもやっぱりブックカタリストできちんと紹介したくなるくらい面白い本で、ごりゅごの「哲学と心理学と脳神経科学」の3つの視点から「こころ」に関する本をいろいろ読み始めるきっかけになった本でもあります。構成主義的情動理論本書で語られている内容を簡単に説明するならば、我々には「怒り」「悲しみ」なんていう本質論的な感情などというものは存在せず、脳の様々な反応を元に、後天的に学習した「情動」に当てはめているだけだ、という主張と、それに付随する情動の制御のコツなどが語られたもの。情動はそこに「ある」のではなく「構成」されるものである、という話です。そして、情動というものが後天的なものだからこそ、学習によって情動の解像度は高めることができ、解像度が高まるとこんないいことがあるぞ、というところまで話が広がっていくところが実用的な意味でも興味深いものでした。実際のところ、ごりゅごはこの本を読んでから、可能な限り感情、情動を言語化するということを意識するようになっており、それによって日ごろの日記なども少しずつ書く内容が変化してきています。BC030『パーソナリティを科学する』とも通じる内容ですが、人間の性格、特性は「いきなり大きくは変わらないけれどある程度コントロールできる」という点は希望が持てるところで、心のケアのような観点からも役に立つ本でした。また、ブックカタリストサポーターの方向けに、今回の配信に使用した台本(PDF)を同時にお送りしています。あくまでも「俺用メモ」なので、きちんと見せられる品質のものではありませんが、ごりゅごは基本的にこれだけを見て喋っています。(引用一つ一つは個別のObsidianのノートになっていて、カーソルを合わせると中身がポップアップする、という仕組み)へー、こういうの見ながら喋ってるんだっていう感じで、一つメタな視点でPodcastを楽しむのにご活用ください。(台本は存在していますが、耳で聞いて楽しんでもらうことを前提にしています。台本など見なくてもちゃんと楽しめるはず、です) This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC034『啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために』
『啓蒙思想2.0』もうすぐ発売の文庫版『啓蒙思想2.0〔新版〕: 政治・経済・生活を正気に戻すために (ハヤカワ文庫NF)』今回は、これまで紹介してきた本の総まとめというかHub的な位置づけとして本書を紹介しました。書誌情報* 著者:ジョセフ・ヒース* 『反逆の神話』* 『資本主義が嫌いな人のための経済学』* 翻訳:栗原百代* 出版社:NTT出版* 出版日:2014/10/24概要かつての啓蒙思想を1.0と位置づけて、あたかも図書館モデルからグーグルモデルにインターネットが転換したかのように、啓蒙思想もまた2.0へのバージョンアップを果たそう、という提言が為されている。あらためて「理性」の力やその特徴を確認し、その上で現代の環境を検査し、「理性的なもの」が力を取り戻すためには何が必要なのかが提示される。倉下メモ18世紀に盛り上がった啓蒙思想は、一定の成果を挙げたものの現代では若干不利な立場にある。その時代の啓蒙思想は「理性至上主義」とでも呼べるものであり、個人が理性の力を発揮させれば物事は合理的にすべてうまくいく、という考えを持っていたが、実際はその通りにはいかなかった。一つには、理性というものがそこまで大きな力を持っていなかったことにある。その点は、昨今の認知科学や行動経済学において確認されている。とは言え、私たちの文明は理性によって作られてきたものであり、感情的判断ではなく理性による合理的な合意がない限り成立しないものである。理性を捨てるわけにはいかない。では、どうするか。著者が目をつけるのは「クルージ」という概念だ。根本的な問題解決ではなく、その場しのぎの「うまくやる方法」。それがクルージなわけだが、たとえば私たちの記憶力を根本的に向上しなくても、ノートを使えば「あたかもそれを覚えていたかのように」振る舞うことができる。脳を変えなくても、ある種の「合理性」を手にできるわけだ。同様に、私たちそのものをどうこうするのではなく、その環境や道具(それらを外部足場と呼ぶ)を整えることで、力が発揮されにくくなっている理性を復興していこう、という計画が本書の重要なポイントになる。人を教育して理性の力を高めることもたしかに重要だろうが、それ以上に環境に意識を向ける必要があるという問題意識を著者は持っているわけだ。実際、現代の私たちの身の回りの環境は、理性の力をはぎ取るために躍起になっているといってもいい。まるで魑魅魍魎が取りついて、少しずつ衣服をはがされ、やがては皮膚すらも強奪されてしまうかのような勢いで、注意や認知資源が「ターゲット」になっている。意識的な防壁作りも必要だろうし、またメディアの情報とは距離を置いた対話空間の成立も必要になるだろう。重要なポイントは、理性は個人に宿るものではない、という点にある。『知ってるつもり』で確認したように、私たち人類は認知的分業によって発展してきた。啓蒙思想1.0が見逃してきたのもその点である(スティーブン・ピンカーも同じ点を見過ごしている)。私たちは、新しい「理性」の理解と共に、その付き合い方もまた構築していかなければならない。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC033『積読こそが完全な読書術である』
『積読こそが完全な読書術である』(永田希)取り上げた本今回は主題の本に加えて、本の中で紹介されている以下の4冊を挙げながら「本を読むこと」について二人で話をしてみました。* 『本を読む本』* 『読書について』* 『読んでいない本について堂々と語る本』あと、以下の二冊にも軽く触れております。* 『知的生産の技術』* 『独学大全』完全な読書など存在しないどうせなら本はちゃんと読みたい、という気持ちが私たちにはある。「真面目」に読書しようとすればするほどその気持ちは強まる。しかし、「ちゃんと本を読む」とは具体的にどういうことだろうかと考えてみると、途端にあやふやゾーンに突入してしまう。ざっと速読することが「ちゃんとしていない」のはわかるにせよ、一字一句飛ばすことなく読み終えたらそれで「ちゃんとしている」と言えるのは心ともない。なんといっても、一ヶ月もすればその内容をすっかり忘れているかもしれないからだ。本書は、その「ちゃんと本を読まなければ」という呪縛のような思い込みに反抗を企てる。ちゃんと本を読む必要はないし、なんならちゃんと読んでいない方がいいことすらある、と。積読バンザイ。さまざまな読書法・読書術の書籍をひも解きながら、著者は積読の良さを組み立てていく。加えて、現代における積読の有用性をも指摘する。情報過多な時代だからこそ、本を積み上げろ、と。ばかばかしいように聞こえるかもしれない。あるいは、一種の強がりのような響きもある。しかし、そこにはたしかに真実がある。何もしなくても情報が流れ込んでくる時代においては、自らの手で壁を作り上げる必要があるのだ。村上春樹は、とあるスピーチで壁に挟まれた卵の話をした。そこでの壁は、巨大なシステムを表すものであった。当然それは、可能であれば打破されるべき存在である。しかし、私たちが作ろうとしている壁はそんなに強固な(あるいはソリッドな)ものではない。本書では「ビオトープ的積読環境」という概念が提出されているが、私たちが作る壁/囲いは、強固なシステムというよりも、ところどころに穴の空いた、フラジャイルな存在である。風を通し、水が流れ、生き物が行き来する領域である。完全ではなく、不完全な領域。それを「自分の手」で作ることが、肝要なのである。なぜなら、自分の手で作ったものであれば、自分の手で作り替えていけるからだ。それはつまり──著者のもう一冊の言葉を借りれば──、その壁を「ブラックボックス」にはしない、ということである。手作りの壁。意志を持った壁作り。それこそが私たちを自由と不自由の狭間に導いてくれる。ちゃんとしていなくてよい「その本について何かを言うならば、ちゃんと読んでおきたい」という気持ちは真摯なものであり、また誠実さの一つの現れであろう。しかし、それがあまりにも強くなり、視野を狭めると困った事態になる。つまり、「ちゃんと」読んでいない人間は何一つ発言すべきではないし、「ちゃんと」読んだ自分は正しいことを言っている(そうでない意見は間違っている)、といった態度に陥ってしまうわけだ。その上、あらゆる読書が不完全なものとなると、誰も本について言及できなくなる。はたしてそれは楽しい(あるいは豊かな)世界の在り方であろうか。本についての「話題」が起こったとき、会話に参加しようとする人間を殺伐と疎外してしまうよりは、その話題が盛り上がるようにうまく立ち回るのが別の形での誠実さかもしれない。さいごに私自身は、なるべく頭から終わりまで、一字一句飛ばさず読書するタイプである。その本の著者が冒頭で好きな順番で読めばいいとか、これがわかっている人間は飛ばしてよいと書いてあってすら、極力まっすぐに(シーケンスに)読書をしていく。それはたぶん梅棹忠夫の姿勢に影響されているからだろう。著者は自分の言いたいことをうまく伝えるために、適切な順番を考えて文章を書いている。だから、読むほうもその「お膳立て」に乗っかっていく。そんな気分だ。しかしながら、本の読み方は多様である。唯一の正解など存在しない。だからこそ、読書は面白いわけだ。さて、皆さんは「本を読むこと」をどのように捉えているだろうか。どんな定義をあたえ、どんな分類をし、どんなノウハウをそこに充てるだろうか。よければお聞かせいただきたい。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC032 『隷属なき道』
今回の本は、BC026 『Humankind 希望の歴史』著者の前作にあたるものです。Humankindに大変感銘を受けたごりゅごは、その影響でもう一冊、さらに著者のルーツをたどろうと手にしたものでしたが、これが自分の心を直撃。Humankindは「人間っていいものだよね」って話だったんですが『隷属なき道』はもっとどストレートに「おれたちが変えていこう」という熱いメッセージが込められたものでした。本編では本書の一通りの部分に触れたんですが、特に印象的だったのがGDPについて書かれた5章の部分。自分がいかにGDPという「常識」に凝り固まっていたのかということを痛感させられ、この本をきっかけに資本主義や現代社会を無条件に受け入れていた自分の認識を改めることができました。あなたのような人はたくさんいる。連携しよう。図太くなろう。ほとんどの人は優しい心を持っているはずなのだ。常識に流されないようにしよう。本書の最後に書かれていたこの言葉を胸に刻み、より多くの方にこういった考えをブックカタリストを通じて「連携」を生み出していくことを、ごりゅごの今後の目標としていきたいと思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC031『読書会の教室 本がつなげる新たな出会い 参加・開催・運営の方法』
『読書会の教室 本がつなげる新たな出会い 参加・開催・運営の方法』今回は、この本をきっかけにして「読書」や「読書会」についてさまざまに考えてみました。書誌情報著者:竹田信弥* 双子のライオン堂店主* 文芸誌『しししし』編集長* 8年間で500回の以上の読書会を主宰著者:田中佳祐* ライター、ボードゲームプロデューサー* 共著『街灯りとしての本屋 11書店に聞く、お店のはじめ方・つづけ方』出版社:晶文社 (2021/12/21) ISBN:479497289X目次* はじめに* 第1章 読書会とは?* 第2章 読書会にはどんな種類がある?* コラム はじめての海外文学(谷澤茜)* 第3章 読書会に参加するには?* コラム ビブリオバトルとは他人に本を探してもらうことである(岡野裕行)* 第4章 読書会を開催・運営するには?* コラム ビブリオバトル必勝法(安村正也)* ◇なぜ読書会を開くのか?──主催者に聞く!* ◇読書会では何が起きているか?──紙上の読書会* ◇読書と読書会について本気出して考えてみた* 付録 必携・読書会ノート──コピーして活用しよう* おわりに概要読書会に興味がある人に向けて、そもそも読書会とは何か、どんな種類の読書会があるのかを解説し、その上で参加者としての注意点や主催者として気をつけた方がよいポイントなどがまとめられている。「二人いればもう読書会」という言葉も登場するが、本を読むことを題材とした集まりならばひろく「読書会」と言える。では、その読書会の魅力とは何か。倉下らの活動を振り返っても、いくつかの点を列挙できる。* 自分が読んだ本について、自分以外の視点に触れられる* 自分が見つけられないような本と出会える* 自分だけでは興味を持たなかった本に興味を持てる* 本を読む動機づけになる* 他の人に説明しようとする中で、その本の理解が深まるこれらは一人の人間に内在する「読む」という行為をより豊かにしてくれるものだと言える。読書は基本的に孤独な行為だが、それだけで終わるものではない、ということだ。『目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)』の中で紹介されている「ソーシャル・ビュー」は、そのような豊かさを別の視点から説明してくれる例である(この本もたいへん面白い)。「本」は、お題になり、触媒になり、テーブルになってくれる。一つの「場」を生み出すきっかけとなる。そこで生み出される交流は、殺伐としがちなインターネットの交流をも変えてくれるのかもしれない。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC030 『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第30回の本日は『パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる』について語ります。「ビッグファイブ」という概念(人間のパーソナリティは5種類に分類できる、という心理学分野での一つの発見)を知り、その定番本がこの本だということで読んだ本でした。ちょっと古い(10年くらい前。こういう分野は10年で大きく変化してそう)ことを心配し、あまり大きな期待をせずに読んだ本だったんですが、これがものすごく興味深い内容。「本」としても「こういう研究結果がある」ということを紹介するだけでなく、私たちはこういう特性があると知った上で、それでも「主観的なストーリーは受け取り方次第で変わる」「時代遅れの概念に自分のあるべき姿を映しださないようにする」などの後半のポジティブなメッセージが素晴らしく、そういった点でも是非多くの人に読んで欲しい、と感じた本でした。電子版が存在せず、書籍の単価はわりと高い(約3000円)のですが、図書館なども駆使してみれば、案外容易に手に取ることは可能なので、是非皆様も図書館等も駆使してご覧いただけましたら幸いです。血液型診断や占いは存在自体が有害なんじゃないかくらいの感情しか持てないごりゅごですが、この本は「脳神経科学」的な脳内物質との反応性、というところまで踏み込んであって納得感が高いです。分野としてはまだまだ発展途上で、今後も楽しみなもの。次回のアフタートークでも語っているんですが、過去の価値観から脱却し、自分の読書ワールドを一つ新しい世界に持っていってくれた本にもなってくれました。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC029『NOISE: 組織はなぜ判断を誤るのか?』
今回は、三人の行動経済学者による『NOISE: 組織はなぜ判断を誤るのか?』を紹介します。『NOISE 上: 組織はなぜ判断を誤るのか?』『NOISE 下: 組織はなぜ判断を誤るのか?』上下巻の本ですが、話題が巧みなのでさくさく読める本になっています。概要行動経済学では、これまでずっとバイアス(認知バイアス)がフォーカスされてきた。しかし、ヒューマン・エラーを構成するのはバイアスだけではない。ノイズもある。バイアスが「偏り」だとすれば、ノイズは「ばらつき」となる。そのノイズも、悪影響を及ぼすし、その大きさは想定されているよりもずっと大きい。にもかかわらず、ノイズにはあまり注目が集まっていない。それはまずプロフェッショナルが下す判断が、統計的に検証されることが少ないので、そもそもノイズが見いだされにくいのと、もう一つには、後から振り返ったときに、私たちは判断が適切であったのだとという物語(因果論的思考)を作りやすいからである。本書は、そうしたノイズの性質を解き明かすと共に、その具体的な測定方法を明示し、その上でどうすればノイズが減らせるのかの施策を提示している。論調としては、著者らは「人間らしい」判断ではなく、シンプルなルール、アルゴリズム、機械学習などの判断を用いることを進めている。そうした判断にも課題はあるが、少なくともノイズがない、という点では大きな意義がある。しかしながら、組織にそうした機械的判断を導入するのは簡単ではない。特に、マネジメント層が行う判断であればあるほどその傾向が出てくる。よって、著者らは人間が判断を下すことを前提とした上で、ノイズの提言に役立つ方法を紹介する。目次* 二種類のエラー* 第1部 ノイズを探せ(犯罪と刑罰;システムノイズ ほか)* 第2部 ノイズを測るものさしは?(判断を要する問題;エラーの計測 ほか)* 第3部 予測的判断のノイズ(人間の判断とモデル;ルールとノイズ ほか)* 第4部 ノイズはなぜ起きるのか(ヒューリスティクス、バイアス、ノイズ;レベル合わせ ほか)* 第5部 よりよい判断のために(よい判断はよい人材から;バイアスの排除と判断ハイジーン ほか)* 第6部 ノイズの最適水準(ノイズ削減のコスト;尊厳 ほか)* まとめと結論 ノイズを真剣に受け止める* ノイズの少ない世界へ倉下メモポイントは、人間が判断を下すと、避けがたくノイズが生まれる、という点。判断のための具体的な指針が定まっていない対象について、人間は恣意的な重みづけを行うのですが、それが「揺れる」ことによってノイズが生じてしまう。機械的(あるいは官僚的)と呼ばれるような判断でない限り、常にその危険性はつきまといます。そこで第一として、「人間が判断しない。あるいは機械的に人間が判断する」という方策が出てくるのですが、個人的にはあまり楽しくない方向性です。効率的かつコストも安いでしょうが、逆に言えばわくわくするような面白さがそこにはありません。また、本書でも簡単に触れられていますが、『あなたの支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』で指摘されているような怖さもあります。今後、プロフェッショナルの判断領域に機械的な判断がどんどん導入されていくだろう流れは止められないでしょうが、そうではない判断領域、もっと言えば個人の人生における判断において、そうした機械的なものを導入するのではない方向性も考えておきたいところ。その視点から言うと、本書の後半で提示される「尺度」を定めることはおそらく有効でしょう。また、「積極的に開かれた思考態度」は、日常的な情報処理や知的生産活動においても活用できるものだと思います。どういう施策を取るにせよ、人間の判断にはノイズが入り込む、ということを前提として、まさに本書が提示するように「手洗い」のようにノイズ削減に取り組む、という姿勢が大切なのでしょう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC028 『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第28回の本日は『「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本』について語ります。(オープニングで27回って間違えてました)お酒をやめた自分に喪失感を感じるなら依存症の手前ここ2〜3年、なんとなくい「お酒飲まないほうがいいこと多いよなあ」って思いながらも変化がない人生を送っていたごりゅごを大きく変えてくれたきっかけになる本でした。特に最初にインパクトを感じたのが、以下のように感じるならばすでにアルコール依存症の一歩手前だという説明。* 「大事な何かを失ったような気がする」* 「晩酌しないと、1日が終わった気がしない」* 「人生の楽しみが半減しそうで味気ない やはり禁酒は無理だ」わたくし、見事に「お酒を飲まないのは人生の彩りが減ってしまう」と感じていた人間でした。序盤のそういった導入から、お酒に強い、弱いとはどういう状態なのか。アルコールとアセトアルデヒドの作用の違いといった基本的なお酒の知識を身に付ける段階を経て、最終的にはお酒やめられるといいよね、という感じの、ある意味きわめて普通の本です。たまたま手に取ったタイミングと、自分の思いが一致しただけ、という言い方もできそうなんですが、少なくともこれを読んでから明確に酒量を減らせています。別に、この本を読んだからって「お酒をやめるべきである」なんて思う必要はないと思いますが、知ってて飲むのと、知らずに飲むのは大違い。このままいけば「ここ数年でもっとも人生を変えた本」になるかもしれないです。「そろそろ、お酒やめようかな」と思ったときに読む本 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC027 2021年を振り返る
今回は、2021年に配信した回を二人で振り返ってみます。プロトタイプ回まずはお試しで行ったのが以下の二回。それぞれ自分のポッドキャスト番組で試験放送しております。Nov 24, 2020 ◇【ブックカタリスト 】愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学 by ごりゅごcastNov 10, 2020 ◇第四十九回:ごりゅごさんと『フードテック革命』について by うちあわせCastBC001 ~ 005スタート近辺の回。進め方など探り探りな感じがうかがえます。Dec 11, 2020◇BC001 『ダーウィン・エコノミー』 - ブックカタリストDec 25, 2020◇BC002『独学大全』 - ブックカタリストJan 8, 2021◇BC003『功利主義入門』 - ブックカタリストJan 22, 2021◇BC004『ゲンロン戦記』 - ブックカタリストFeb 5, 2021◇BC005『これからの「正義」の話をしよう』 - ブックカタリストBC006 ~ 010少し慣れてきたあたり。『闇の自己啓発』 の回で『人文的、あまりに人文的』を紹介するなど、アレンジも出てきています。Feb 19, 2021◇BC006『闇の自己啓発』 - ブックカタリストMar 5, 2021◇BC007 『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』 - ブックカタリストMar 19, 2021◇BC008『ヒューマン・ネットワーク』 - ブックカタリストApr 2, 2021◇BC009 『妄想する頭 思考する手』 - ブックカタリストApr 16, 2021◇BC010『世界は贈与でできている』 - ブックカタリストBC011 ~ 015録音環境が徐々に整いつつあるところ。ゲスト回を行うなど、さらなる模索が進んでいます。Apr 30, 2021◇BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 - ブックカタリストMay 14, 2021◇ゲスト回BC012『思考のエンジン』 - ブックカタリストJun 1, 2021◇BC013『コンヴァージェンス・カルチャー』 - ブックカタリストJun 15, 2021◇BC014 『How to Take Smart Notes』 - ブックカタリストJun 29, 2021◇BC015『実力も運のうち 能力主義は正義か?』 - ブックカタリストBC016 ~ 020だいぶ整い出した頃。ゲスト回二回目があり、倉下の本を紹介するイレギュラー回もあり。だいたい慣れてくると、そこにアレンジを加える傾向がありますね。Jul 13, 2021◇BC016 『英語独習法』 - ブックカタリストJul 27, 2021◇BC017『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』 - ブックカタリストAug 10, 2021◇BC018 『WILLPOWER 意志力の科学』 - ブックカタリストAug 24, 2021◇ゲスト回BC019『心の仕組み 上』 - ブックカタリストSep 7, 2021◇BC020『理不尽な進化』 - ブックカタリストBC021 ~ 026直近。新書三冊回や、一年学習レポート回など変化球あり。Sep 21, 2021◇BC021 『幸せをお金で買う5つの授業』 - ブックカタリストOct 12, 2021◇BC022『英語の読み方』『英語の思考法』『伝わる英語表現法』 - ブックカタリストOct 26, 2021◇BC023 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 - ブックカタリストNov 9, 2021◇BC024『知ってるつもり: 無知の科学』 - ブックカタリストNov 23, 2021◇BC025 『生命はデジタルでできている』『LIFESPAN』『LIFE SCIENCE』ほかDec 7, 2021◇BC026『Humankind 希望の歴史』 - ブックカタリスト倉下メモこうして眺めてみると、基本的にパターンを繰り返しているようで、ところどころでアレンジやら変化球が入っていますね。これは基本的に、倉下が飽きっぽい(同じことを繰り返すのが苦手)からなんですが、たぶんごりゅごさんも同じような傾向をお持ちなのでしょう。また、オープンになっていないところでは、clubhouseにおける読書会なども実施されていて、それを含めての変化もこれらか少しずつ起きてきそうな気がします。楽しみですね。では、来年もまたよろしくお願いいたします(倉下)。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe