BC066 『Remember 記憶の科学:しっかり覚えて上手に忘れるための18章』

面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。今回は『Remember 記憶の科学:しっかり覚えて上手に忘れるための18章』について語ります。今回の本は、いわゆる「記憶」系のことを学ぶ一冊目として非常に素晴らしい、と感じた本でした。そして、本編でも語っていることですが、記憶について考えるときに重要なのは「忘れる」ということ。それについてもきちんと忘れずにカバーされている、というのも本書の好印象の理由になっています。私たちがものごとを「理解」できるのは、見たこと聞いたことすべてを覚えておくことができないから。一部を「忘れる」から、それを自分の中で整理して、自分自身に取り込んでいける。結局のところ、人類の大半の脳が「忘れる仕様」になっている(本書では「なにもかも覚えている人」が登場します)ということは、結局そういう「忘れる脳」を持った生物の方が生き残りやすかった、ということでしょう。そのことをきちんと理解した上で、忘れる自分を受け入れて、覚えたいことを覚える工夫をする。なによりも大事なのは「注意を払う」ことです。結局そうなると、なにかを覚えようと思ったら「素早く」「効率的に」行うことは果たして正解なのか。そのあたりのことも、一度考えてみても良いのかもしれません。📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC065「英語・数学・プログラミングを学ぶ」

今回は好例の三冊セットでお送りします。* 『英語は10000時間でモノになる ~ハードワークで挫折しない「日本語断ち」の実践法~』* 『こころを旅する数学: 直観と好奇心がひらく秘密の世界』* 『プログラマー脳 ~優れたプログラマーになるための認知科学に基づくアプローチ』書誌情報などは、以下のページ(のリンク)からどうぞ。ブックカタリストBC065用メモ - 倉下忠憲の発想工房『英語は10000時間でモノになる』ポイントは、知識英語ではなく感覚英語を身につけよう、という姿勢です。言い換えれば「英語を使おう」ということ。英語を「学んで」使えるようになるのではなく、使おうとすることを通して使えるようになる、という道筋はしごくまっとうなものと言えます。で、その「使おう」という姿勢を維持するならば、「日本語を極力使わないようにする」というアプローチもごく自然に思えます。日本語が使えるから日本語を使う→英語を使わない、が起こるのですからその日本語使用を抑制すれば英語を使うようになってきます(≒使わざるを得ないようになってくる)。ちょっとした背水の陣です。さらに「学ぶ」のではなく、「使う」ことを考えたら、なるべく楽しい対象を狙うことが必要でしょう。楽しいことでなければ「使おうとすること」は続かないからです。頭に「知識」をどんどんストックし続けたら、いつか「英語」がマスターできる、という感覚だとその道中は苦しいものになるでしょうし、試験以外の日常的な場面で英語を「使う」ことはそんなに簡単にはならないでしょう。不完全でもいいからともかく英語を「使ってみる」こと。それを続けていけば英語が「使える」ようになる、というのは私たちの母国語学習のやり方からみてもごく"当たり前"なやり方と言えるかもしれません。『こころを旅する数学』ポイントは、数学は身体活動である、という主張です。論理や公式を暗記すれば、いつか「数学」がマスターできるというのではなく、子どもがスプーンの使い方を学ぶように数学の「やり方」も後天的に学習できる、という主張は上記の英語学習と重なる部分が多いでしょう。著者は、とにかく直観が鍵なのだと何度も主張します。まずパッと閃く直観がどれだけ適切に機能するのか。それによって数学の世界における成果が変わってくる。しかし、直観というのは間違いやすい(バイアスを持つ)と散々言われていて、頼りにするにはあまりにも不安定な存在だと昨今では認識されています。そこで著者が提案するのが「システム3」です。システム1とシステム2を独立的で不干渉な存在だと捉えるのではなく、システム1の直観をシステム2のフィードバックによって鍛えていく、というやり方。でもってそれはあらゆる学習の基本的な在り方であり、数学的直観にも適用できる、というのが本書の面白い主張です。本書は数学を題材にしていますが、実際は「人の知性とはどのようなものか」を扱う非常に射程の広い話です。その分、少し分厚めになっていますが、通して読むだけの価値がある本です。『プログラマー脳』プログラミングの教材では、プログラミングの基礎知識を教えてもらえます。四則演算や変数の宣言、forやifといった構文の書き方。あらゆるプログラミングは、そうした基礎の組み合わせでできているのは間違いありません。では、そうした知識があればどんなプログラムでも書くことができ、どんなプログラムでも読めるようになるかというと、これが無理なのです。「ちょっとわからない」から「まったく意味不明」のレベルまで、読めない困難はさまざまに登場します。で、プログラム(≒コード)が読めないと、それを使うことも、一部分だけ拝借することも、多少カスタマイズすることもできません。「使え」ないのです。本書の著者はそうしたコードの読解における三つの困難を提示しました。長期記憶、短期記憶、ワーキングメモリ、の三つの記憶に関係する困難です。それぞれの困難を意識し、具体的な対策やトレーニングをすることで私たちのプログラミング読解力があがり、引いてはそれがコーディングの能力アップにもつながっていく。そんな期待感を持つことができます。現在は、ほとんどコピペだけでプログラムが書けてしまう時代ですが、だからこそ「コードを読めて、書ける」という基礎的な能力が存外に大切になってくるかもしれません。細かい部分ではなく、大きな部分で差を生むのがそうした能力だからです。というわけで、今回は三冊の本を紹介しました。どれもビビッドに「学び方」についての考えをゆさぶってくれる良書です。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC064 『体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』

May 23, 2023 goryugo

面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。今回は『体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』について語ります。前回の「運動することと食べること、痩せること」シリーズに続く「テクノロジー×身体」がテーマになった本です。今回の本は(今のところ)今年読み終えた中で一番面白かった本でした。内容は決して難しいというわけでなく、でも同時に読みながら関連した様々な考えを引き出させる。あらためて自分が好きな本のジャンルは「テクノロジー」を応用してなにか世の中をよくする話なんだな、ということがわかりました。そして最後の結論。これもまたごりゅごの好みというか、自分が伊藤亜紗さんを好きだなーと思うところは、この結論の落とし込み方。みんなについて優しく、もっとよい世の中になることが期待できるような話で締めてくれるところ。これもまたこの本が「(今のところ)今年一番よかった」と思った本である理由とも言えるのでしょう。📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC063 『再読こそが創造的な読書術である』

May 9, 2023 goryugo

今回は、永田希さんの『再読こそが創造的な読書術である』を取り上げます。書誌情報* 著者* 永田希ながた・のぞみ* 著述家、書評家。1979年、アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。書評サイト「Book News」主宰。著書に『積読こそが完全な読書術である』(イースト・プレス)、『書物と貨幣の五千年史』(集英社新書)。* 出版社* 筑摩書房* 出版日* 2023/3/20* 目次* 第一章 再読で「自分の時間」を生きる* 第二章 本を読むことは困難である* 第三章 ネットワークとテラフォーミング* 第四章 再読だけが創造的な読書術である* 第五章 創造的になることは孤独になることである倉下のScrapboxメモネットワークとテラフォーミング本書で語られる内容をごく端的に、しかも自己啓発的に言えば「再読することで自分を作ろう」という話ですが、これではあまりにも乱暴すぎるでしょう。本書ではもっと繊細なメッセージが綴られています。まず、現代を生きる私たちは情報の濁流に飲み込まれやすい環境にあります。これは単に情報の量が多いだけではなく、人の注意を惹きつけ、ある行動へと動員させる力を持った情報に取り囲まれている、ということです。メディアはメッセージでもありマッサージでもあるので、一つの方向に過剰に力がかかっている状態だと言えるでしょう。すると自分がどんな方向に進みたいのか、といった認識がかき乱されます。にもかかわらず、どこかに向かって進んでしまうのですから非常に厄介な状態だと言えるでしょう。結果、「自分が求めているのはこういうことではなかった」という残念感が生じます。「自分の時間」を消失した状態です。そうなると、その「自分の時間」を回復させることが急務だと感じられるようになるわけですが、注意したいのは「さあ、自分の時間を回復しましょう」というメッセージもまたマッサージになり、人を誘因してしまうことです。妙なたとえになりますが、独裁をふるう王様を退場させて、別の独裁する王様を据えたのと同じなのです。「民主主義」のようなそれまでとはまったく違うプロセスが確立されたわけではありません。大雑把に言えば別に何も変わっていないのです。倉下の印象ですが、本書ではそうしたメッセージの取り扱いが非常に慎重に行われています。著者は大切なことを伝えようとしているが、しかしそれを「通りの良い形」ではなく、何か別種の変換を通さないと受容できないような形で伝えている。そんな印象です。で、本題に戻るとそうした「自分の時間」の回復のために再読という営みが一定の役割を果たすことが語られるわけですが、ポイントは本書において創造がゼロからのクリエーションではなく既存の要素の再配置として位置づけられている点です。再びよくある自己啓発的メッセージでは「明日から本当の自分の人生を生きる」的なことが語られていて、あたかもそこでは今までの自分とまったく自分がクリエーションされる雰囲気があるわけですが、もちろんそんな魔法のようなことが簡単に実現するわけではありません。できることは、今の自分を少しだけ変えていくことだけです。「今の自分」を捨てることなく、時間をかけて変化させていくこと。「自分の時間」を回復させるとは、そのようなプロセスを受容することでしょう。つまり、まったく新しい「自分」の創造に駆り立てられるのではなく、今そこにある「自分」について知り、新しいものを取り込んで、少しばかりの差異を生じさせること。その結果を吟味し気に入ったら採用し、そうでなければ抑制する。そうした行為全体に時間を使っていくこと。それこそが「自分の時間」の回復であり、情報の濁流に対して別の軸を立てるために必要なことだと感じます。■一冊の本は誰かが書いたものであり、その本を読む行為は──直接的ではないにせよ──その著者との対話を試みている営みだと言えます。しかし一方では、その本のどこにも「著者」なる存在はいません。書かれた文章を読み取り(≒読み解き)、メッセージをくみ出すのは読者その人です。よって、本を読むことは半分では著者との対話でありながら、もう半分では自分自身との対話でもあるのです。だからこそ、本を読むこと、読み込んでいくことは自分を知ることにつながり、自分を「創造」することにつながります。と、すでに倉下バイアスでかなり強めのメッセージに置き換えられていますが、きっと皆さんが本書を読んだ印象はまた違ったものになるでしょう。そう、その差異こそが「自分」の源泉なのです。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC062『習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか』

Apr 25, 2023 goryugo

今回は『習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか』を取り上げました。本書は二人とも読んでいた本だったので、いつもとは違ったスタイルになっております。書誌情報* 著者* ラッセル・A・ポルドラック * スタンフォード大学心理学部教授。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校にてPh.D.を取得。2014年より現職。人間の脳が、意思決定や実行機能調節、学習や記憶をどのように行っているのかを理解することを目標としている。計算神経科学に基づいたツールの開発や、よりよいデータの解釈に寄与するリソースの提供を通して、研究実践の改革に取り組んでいる。著書にThe New Mind Readers What Neuroimaging Can and Cannot Reveal about Our Thoughts(Princeton University Press, 2018)がある。* 翻訳・監訳* 児島修(訳)* 英日翻訳者。1970年生。立命館大学文学部卒(心理学専攻)。主な訳書に『サイコロジー・オブ・マネー』(2021)『DIE WITH ZERO』(2020、以上ダイヤモンド社)、『ハーバードの心理学講義』(2016、大和書房)など。* 神谷之康 (監訳)* 京都大学 大学院情報学研究科・教授、ATR情報研究所・客員室長(ATRフェロー)。専門は脳情報学。奈良県生まれ。東京大学教養学部卒業。カリフォルニア工科大学でPh.D.取得。機械学習を用いて脳信号を解読する「ブレイン・デコーディング」法を開発し、ヒトの脳活動パターンから視覚イメージや夢を解読することに成功した。SCIENTIFIC AMERICAN誌「科学技術に貢献した50人」(2005)、塚原仲晃賞(2013)、日本学術振興会賞(2014)、大阪科学賞(2015)。サーペンタイン・ギャラリー(ロンドン)でのピエール・ユイグの展示 「UUmwelt」(2018)への映像提供など、アーティストとのコラボレーションも行う。* 出版社* みすず書房* 出版日* 2023/2/14* 目次* 第I部 習慣の機械――なぜ人は習慣から抜け出せないのか* 第1章 習慣とは何か?* 第2章 脳が習慣を生み出すメカニズム* 第3章 一度習慣化すれば、いつまでも続く* 第4章 「私」を巡る闘い* 第5章 自制心――人間の最大の力?* 第6章 依存症――習慣が悪さするとき* 第II部 習慣を変えるには――行動変容の科学* 第7章 新しい行動変容の科学に向けて* 第8章 成功に向けた計画――行動変容がうまくいくための鍵* 第9章 習慣をハックする――行動変容のための新たなツール* 第10章 エピローグ* 簡単な概要* 「習慣」とは何であり、それはどのようなメカニズムによって形成されるのか。脳科学や認知心理学の知見をベースにしながら検討される。また、その知見を元にいかにして行動変容を起こすのか、という科学的な視点からの提案もなされる。* 随所に「科学的な知見とどのように付き合えばよいのか」という話題が差し込まれていて、ポピュラー・サイエンス的な読み物としても楽しめる。ポイント本書は「習慣」がいかにねばり強く私たちの行動に影響を与えるか、という話が主旨なのですが、それとは別に「二つの学習メカニズム」の話が出てきて、倉下の興味はそこに強く惹きつけられました。一つは、この世界が固定的なものだとしてその世界と効率的に付き合う方法で、習慣が相当します。もう一つは、この世界の変化に対応する方法で、宣言的な(言葉によって表現される)知識として扱うものです。記憶の領域で言えば、前者は手続き的記憶で後者が宣言的記憶に相当するでしょう。たしかにこの世界はほとんど変化しない部分があり、しかし変化する部分もあります。そして、人類が築き上げてきた文明は概ね変化する部分を増やしてきたと言えるでしょう。そうした状況は習慣的なものだけでは対応できないから、現代では「言葉」の扱いが重要になっている、とも言えます。この話からは他にもいろいろな教訓が引き出せると思いますが、やはり重要なのは「固定に対応するもの」と「変化に対応するもの」という二区分で、しかもそれらを一つのシステムの中で組み合わせて使う、という視点です。静的なものと動的なものの両方が必要で、しかもそれらを支えるメカニズムは違っている。そのように捉えると物事の構図はもっと立体的になっていくでしょう。私たちはついつい単一の原理性で物事を片付けたくなりますが、解像度を上げればそこにはさまざまなベクトルが働いています。その観点は忘れないようにしたいものです。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC061『+iPad ちょっとした場面で使えるかんたん活用アイデアノート』

Apr 11, 2023 goryugo

今回は、五藤晴菜さんをゲストにお迎えして5月30日発売予定の『+iPad ちょっとした場面で使えるかんたん活用アイデアノート』をご紹介頂きました。◇+iPad ちょっとした場面で使えるかんたん活用アイデアノート | SBクリエイティブ書誌情報* 著者* 五藤晴菜* 出版社* SBクリエイティブ* 発売日* 2023年5月30日(火)* ISBN* 978-4-8156-1793-6* サイズ* A5判* ページ数* 192* 目次* Chapter0 iPadの魅力を最大限に生かすためには* Chapter1 使いこなすために必ず覚えておきたい基本操作と設定* Chapter2 メモならiPadにお任せ!誰もが使えるiPadのメモ術* Chapter3 効率を格段にアップさせるちょっとしたテクニック* Chapter4 ちょっとした業務がはかどるiPad 活用術!* Chapter5 作業がさらにはかどる周辺機器の活用* Chapter6 おすすめアプリ目次や紹介ページを拝見した感じだと、標準アプリや無料アプリをベースにiPadの「使い方」が紹介されている本のようで、いわゆる「ライフハック」的な話題が好きな人なら本書はマッチしそうという印象です。本編でも述べていますが、標準アプリのメモ・カレンダー・リマインダー(地図や連絡帳を加えてもいいでしょう)はいわゆる"手帳"を構成する要素であり、その探求は仕事術・ライフハックの系譜でもあります。その意味でおそらく「デジタル仕事術」の一冊に位置づけることもできるのではないかと現時点では予想しています。生産性の高さもう一つ興味深いのは、五藤晴菜さんは2022年の9月に『はたらくiPad いつもの仕事のこんな場面で』を出版されており、単純な期間で言えば半年くらいで二冊目の本を書かれています。そういうスピード感もまた、仕事術・ライフハックが求める生産性と重なる部分ではあるでしょう。◇はたらくiPad いつもの仕事のこんな場面で | 五藤 晴菜 |本 | 通販 | Amazonそういう仕事のやり方や考え方そのものも、一つの学びの対象になるかもしれません。メタな学びというやつです。ともあれ、まだ本自体が出版されていないので、今からを読むのが楽しみです。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC060『運動しても痩せないのはなぜか』『科学者たちが語る食欲』

Mar 29, 2023 goryugo

面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。今回は『運動しても痩せないのはなぜか: 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」』と、『科学者たちが語る食欲』の2冊を語ります。2023年が始まってからごりゅごがずっと続けてきた「運動することと食べること、痩せること」シリーズの最後の回です。今回はちょうどごりゅごが花粉症の症状が最悪レベルのときと重なって、自分で聞いててかわいそうな声になっておりました。このシリーズの目論見というか、これらの本を読みながら考えていたことの一つとして、運動すれば無駄な炎症反応が減るので、花粉症の症状も出にくくなすはず、という考えなんかもあったりします。今年は、Podcast収録ちょっと前まで花粉症の症状はほとんど現れず、去年に比べて運動してるからなー、バランスボール椅子も使ってるからなー、なんて考えてたんですが、そう簡単に思った通りの結果は出せませんでした。なかなかに今年も花粉症がつらいです……とは言え、これはアフタートークで話したことなんですが、調子が悪いからって動かずに何もしないとどんどん調子が悪くなるのに対して、多少調子が悪くなっても体を動かすことで症状が改善しているように感じられる、ということも実感としては存在しています。運動によって、花粉症に対する効果は「あると思う」けど、やっぱり難しい……それだけでは説明しきれないのかもしれません(今はほとんど症状なし)📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC059『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』

Mar 14, 2023 goryugo

今回取り上げるのは、『Chatter(チャッター): 「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』。やっかいな「頭の中の声」と付きあうための方法が提示される一冊です。書誌情報以下のページにまとめました。ブックカタリストBC059用のメモ - 倉下忠憲の発想工房チャッターとは人間には特殊な能力がある。目の前の現実から離れて、別の対象について思いを巡らせる能力だ。過去の出来事を思い出し、あのときはこうしておけばもっとよい結果が得られだろう、などと考えたり、未来の目標を設定し、今はこれに取り組むべきだ、などと考えたりできる。そのような思考は言語というフォーマットを用いて行われるが、たいてい口に発することなく内面の声を通すことになる。つまり、内面の声とは、セルフコミュニケーションのツールなわけだ。さて、他の人とのコミュニケーションでも良き関係とそうでない関係がある。他者が適切なメンターになったり、厳しい批判者になったりする。厳しい批判者は、人を萎縮させ、過剰なストレスを与え、ときに過剰な防衛反応を呼んだりもする。同じことがセルフコミュニケーションでも起きる。それが本書がいうChatter(チャッター)である。本来は、"自分"(行為主体者)を適切に導くためのセルフコミュニケーション=内面の声なわけだが、環境や状況が悪ければその役割は一変してしまう。あたかもタロットカードの向きが逆になるかのように。内面の声は、自発的な注意の対象の変更をもたらすが、それが無意識的な体の動きを阻害したり、行為主体者にネガティブな対象にだけ注意を向けるように促してしまう。そのようなネガティブな結果が訪れると、さらにChatterは声を大きくし、「ほら、やっぱりダメじゃん。ここがダメなんだよ」とさらにネガティブな要素に注意を向けさせる。循環構造の中にはまりこんでしまうわけだ。内面の声そのものは、有益な働きを持つが、かといって完璧なものではない。馬の近くで大きな音を立てると制御不能になるという話を聞くがそれに似ているだろう。音を立てる→馬が暴れる→周りが慌てる→さらに馬が驚いて暴れる→……。そうしたときは、むしろすごく落ち着いて対処する厩務員が必要だろう。内面の声でも同じなのだ。本書ではさまざまなテクニックが紹介されているが基本的には「距離を置くこと」がコンセプトになっている。心理的な距離、時間的な距離。形は多様だが、どれも引きつけられた注意をズームアウトすることによって、チャッターの声を静めることを目指す。そう。人間は、たしかに考える能力を持つ。システム2は(特殊な状況を除けば)誰しもが持っている。あとはそれが発揮させやすい環境にあるかどうかだ。あるいは、そういうものがあり、環境によって発揮されたりされにくかったりするのだ、という知識(というよりも知恵)を有しているかだ。よって本書は「内面の声」とのつき合い方を提示する本でもあるが、さらにいえば「アテンション・マネジメント」に関する本でもある。注意をどのように制動するのか。そこで重要な鍵を握るのが「ズームインとズームアウト」だ。これは、倉下が最近考えている「思考のための道具」の重要なツールセットになるだろう。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC058 『運動の神話 下』

Feb 28, 2023 goryugo

面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。今回は、『運動の神話』の「下巻」について語ります。今回は、はじめての「前後編に分かれたシリーズ」の後編であり、全3回を予定している「運動と食事を改めて考える」シリーズの中編でもあります。こうやって連続ものにしてみたら「次の本はなにを紹介しよう」と考えることに使うエネルギー全部を内容のブラッシュアップに使える、ということに気がつきました。また、ある程度の長期にわたる(3ヶ月の見込み)シリーズなので、その期間ずっと「1つのテーマについて考え続けることが出来た」というのもよかったところの1つかもしれません。なお、運動に関する内容についていうと、本書の結論はきわめて「普通」です。もちろんその結論にたどり着くまでのいろいろな話が面白いのは間違いないんですが「効率」を求めるのであれば特に読む必要はない、という言い方も出来てしまう本です。ただ、人の心を変えるのは「効率」ではないんですよね。少なくともごりゅごはこの本から得られた科学的知見という物語から「運動の意義」は理解、納得ができました。「何で運動しないといけないんだろう」「運動するとどういういいことがあるんだろう」という理由は、どんなダイエット本よりも参考になりました。おそらくブックカタリストを聞いてくれている方はごりゅごと同じように感じるタイプの人も多いはずで、そういう点では「非常に素晴らしいダイエット本」だとも言える本でした。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC057『人を賢くする道具』とセカンドブレイン

Feb 14, 2023 goryugo

収録前の準備として読書メモを作るのが常なのですが、それをやるまではちょっと気楽に構えていました。面白いことはいっぱいあるし、いくつか拾えばOKだろう、くらいに。しかしいざ実際に作りはじめてみると「とても一時間の収録で手に負える本ではないし、二週間やそこらの準備で太刀打ちできる本でもない」と思い知りました。よって大きくかじ取りを変更します。本編でもお話していますが「一冊の本を、一年かけてゆっくり読んで行く」というアプローチです。具体的にそれをどう進めて行くのかは、サポーター向け記事として別途を投稿しますので、ご興味あればサポーター・プランの検討もお願いします(宣伝終わり)。本書の概要今回のメモは以下です。◇ブックカタリストBC057用のメモ - 倉下忠憲の発想工房本の概要だけなら、比較的簡単にまとめられます。『人を賢くする道具』の原題は、『Things That Make Us SMART』で、「人を賢くするThings」です。で本文にもありますが、Thingsは人を賢くするだけでなく愚かにもします。人が make した thingsによって 人がある性質に makeされるという循環的な構造がある、と著者は指摘します。人類の歴史(あるいは文化の発展)は「私たち自身を make する things を makeすること」の繰り返しによって生まれてきている、というのが基盤となる視点で、つまり「小さなクレーンが作れれば、それよりも大きいクレーンを作ることができ、その大きなクレーンが作れれば、さらにそれよりも大きなクレーンが作れる」的に、道具作りが別の道具作りへと接続していく(しかもメタ的に上に登っていける)というのがこうしたthingsの面白いところです。その上で、著者は人の知的作業を体験型と内省型に分類し、現代の(1993年当時の)テクノロジーは体験型に偏りすぎているのではないか、と指摘します。すると、二つの知的作業のバランスが崩れて、人は「愚かに」なってしまう。でも、それは人間の性質が「愚か」なわけではなく、人の性質をうまくいかせていないテクノロジーやその運用に問題があるのではないか、というのが著者の問題意識です。つまり、「Things That Make Us 体験的」なものが強まっている、ということです。ここでの「体験的」とは「受動的」「反応的」であり、自分の心の声(これが内省です)が力を持たず、ただ周りの状態(環境)によって自分の行動が決まってしまう状態が含意されています。著者は書いていませんが、そうした状態は資本主義=消費主義社会に利することは間違いないでしょうし、政治がポピュリズムに傾いてしまう契機にもなります。まさにオルテガが言う「大衆」が生まれるわけです。だからテクノロジーそのものやそれを使うための道具のデザインをしっかり考えようよ、人間の二つの認知をうまく働かせるようにしようと、と主張しているのが本書と言ってよいでしょう。以上のようにざっとまとめることはできるのですが、各論についてはさらに他の分野と接続できる話が多い点と、ひとつのチャプタに話題が盛りだくさんなことが本書の「読解」を難しくしています。難易度が高いというのではなく、新設のテーマパークに入ったら遊びたいアトラクションがあってどこから行こうか迷ってしまう、的な難しさです。なので「一年書けてゆっくり本を読んでいこう」プロジェクトが発足した次第です。話の後半では「最近のノートツール」についても言及していますが、たぶん本書を読めばノートツールや情報整理ツールをどう自分で運用したらいいのかをかなりそもそも論から考え直すことができるかと思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe