BC021 『幸せをお金で買う5つの授業』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第21回の本日は『幸せをお金で買う5つの授業』について語ります。今回の本は、色々な点で『Learn Better』を思い出す本でした。BC011 『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』 - by goryugo - ブックカタリスト書いてある内容自体は、全然知らなかった!みたいな驚きはほとんどないです。どれも読んでて、うん!確かにその通り!という話が多くを占めています。ただ、書いてあることを言語化して整理してまとめると、すごく色々身に沁みる内容ばかり。結果的に、この本からは大きな影響を受けて、日常生活の意識が大きく変わっています。(具体的なエピソードなどはPodcast内で語っています)どんなことにお金を使うと「幸福」になれるのか本書で書かれている「幸福になれるお金の使い方」は以下の5つ。* 経験を買う* ご褒美にする* 時間を買う* 先に支払う* 他人に投資する最後の「他人に投資する」という項目だけは「へえそうなんだ」という感覚がありますが、あとは大抵「どこかで聞いたことがありそうなもの」に感じます。ただ時短を目指せばいいというわけではない5つの章の中で最も興味深かったのが3章の「時間を買う」という項目でした。⏱時間が貴重だと思うほど時間に追われる感覚になる - by goryugo - ナレッジスタック↑にも少しまとめたのですが、まず興味深いのは「どうすれば時間があると感じることができるのか」たとえば、人には「ファストフードのロゴを見るだけでせっつかれた気分になる」という性質があり、早くする、ということを考えるだけで何もかもを「急がねばならない」という感覚になってしまう、とのこと。時間がないという感覚で「早くしないと」と考えることが脳に「急いだ感情」をもたらし、これがさらに「時間がない」という感覚を生み出す。「ファストフードのロゴを見るだけでせっつかれた気分になる」のと同じように、時短製品を買って時短を目指す場合でも、同じように「せっつかされた気分になる」可能性は極めて高いわけです。そう考えると、単純に「時間を買う」という行為一つを考える場合でも「がむしゃらに時短製品を買うことが正解ではない」ということを教えてくれます。その他、時間がお金に変わっていることを意識すればするほど、目の前の時間が楽しめなくなるということ。時給労働者は、より時間をお金だと感じやすくなるので、そういった感覚になりやすいこと。この効果は、仕事をやめても2年続くというような、興味深い話も多数ありました。ブックカタリストのサポーターの方には、この本についての読書メモや、本編で利用した台本などもお送りいたします。(別のメールでお届けします)サポーターについての詳細は、下記をご覧ください。ブックカタリストのサポータープランについて - by goryugo - ブックカタリスト This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC020『理不尽な進化』
今回は吉川浩満さんの『理不尽な進化 増補新版』を。すごく面白い本なのですが、あまりにも土俵が広いので、倉下の説明ではぜんぜんその面白さが伝え切れていない感がいっぱいです。これはもう、本当に読んでみてください。概要などよりも、まずこの本の論旨を追いかけていく体験そのものが Good & Happy です。著者は?著者は、文筆業・編集者さんです。現在は晶文社にお勤めとのこと。以前『闇の自己啓発』を紹介した回の後半で言及した、『人文的、あまりに人文的』の共著者の一人。「哲学の劇場」という動画番組も。https://www.youtube.com/tetsugekiこの本は?本書は「進化論」の本ですが、進化論の一般向け解説書ではありません。むしろ、私たちと「進化論」という概念との関係を扱った本です。本書は絶滅に目を向けますが、これまでに滅んでいった注目すべき(ないしはひどく奇妙な)生物を紹介する本ではありません。むしろ「絶滅」という現象の方にまなざしを向けています。まず、この点だけイメージしておいてください。「進化論」の本と聞いたときに、イメージする本とはずいぶん違っていると思います。目次* まえがき* 序章 進化論の時代* 進化論的世界像――進化論という万能酸* みんな何処へ行った――?種は冷たい土の中に* 絶滅の相の下で――敗者の生命史* 用語について――若干の注意点* 第一章 絶滅のシナリオ* 絶滅率九九・九パーセント* 遺伝子か運か* 絶滅の類型学* 理不尽な絶滅の重要性* 第二章 適者生存とはなにか* 誤解を理解する* お守りとしての進化論* ダーウィン革命とはなんだったか* 第三章 ダーウィニズムはなぜそう呼ばれるか* 素人の誤解から専門家の紛糾へ* グールドの適応主義批判――なぜなぜ物語はいらない* ドーキンスの反論――なぜなぜ物語こそ必要だ* デネットの追い討ち――むしろそれ以外になにが
BC019 アフタートーク
今回は、2回目の「ゲストの方に来ていただいて、その人に本を紹介してもらう」という形でした。まだまだこの形に慣れず、3人でうまくやる方法をどうするか?あるいはゲスト回の聞き役は、どちらか一人でもいいのでは?なんてことも考えたりもしています。なお、アフタートークは次回以降、サポータープランに加入いただいている方限定の配信になります。もしアフタートークで聞きたい話題、ごりゅごや倉下への質問などがありましたら、このメールに返信していただくか、コメント欄などに質問をお寄せください。サポータープラン限定の場所であれば、ある程度踏み込んだ話などもできると思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
ゲスト回BC019『心の仕組み 上』
ゲストはPADAone(パダワン)さん。* Twitter:@pd1xx* Site:アンキヨリハジメヨ『心の仕組み 上』について著者は、スティーブン・ピンカー。この界隈ならまず外せないほどの有名人。代表作は『言語を生みだす本能』。ノーム・チョムスキーというこれまた著名な言語学者の影響を受け、「言語」が進化的に獲得された能力(本能)だと説きつつ、しかしそれが他の脳の機能の「副産物」ではなく、言語機能そのものがメインだったと主張しているのが彼の言説の特徴。その著者が、心(というよりも精神)の働きに注目したのが本書。原題は『How the Mind Works』で1997年に出版されている。日本語訳はNHKブックスの単行本と、ちくま学芸文庫の二種類がある。共に上下巻。今回はちくま学芸文庫バージョンを取り上げる。上巻の目次は以下。* 第1章 心の構造―情報処理と自然淘汰(ロボットをつくるための課題 精神活動を逆行分析する ほか)* 第2章 思考機械―心を実感するために(宇宙のどこかに知的生命体はいないのか 自然演算 ほか)* 第3章 脳の進化―われら石器時代人(賢くなる 生命の設計者 ほか)* 第4章 心の目―網膜映像を心的記述に転じる(ディープ・アイ 光、影、形 ほか)放送では上巻のみが取り上げられているが、下巻の目次もついでに。第5章 推論―人は世界をどのように理解するか(生態学的知能 カテゴリー化 ほか)第6章 情動―遺伝子の複製を増やすために(普遍的な情熱 感じる機械 ほか)第7章 家族の価値―人間関係の生得的動機(親類縁者 親と子 ほか)第8章 人生の意味―非適応的な副産物(芸術とエンタテインメント 何がそんなにおかしいのか? ほか)ざっと目次を眺めると、精神のメカニズム(それが何をしていて、なぜそうするのか)が論考されているのがわかる。逆に、脳という物質からどのようにして精神現象が立ち上がっているのか(なぜ立ち上がったのかではなく、どのようにして立ち上がっているのか)については言及されていないように見えるので、まさに「Mind」がいかに「Work」しているのかを考える本なのだろうと推測できる。進化心理学ある意味では、極めてシンプルな主張をする学問。以下は日本語版ウィキペディアからの引用。進化心理学(しんかしんりがく、英語:evolutionary psychology)は、ヒトの心理メカニズムの多くは進化生物学の意味で生物学的適応であると仮定しヒトの心理を研究するアプローチのこと。適応主義心理学等と呼ばれる事もある。 人間が持つ「心理メカニズム」は自然淘汰の結果獲得されたものである、ということ。人の心は、白紙の状態で生まれて、成長の中でそこにいろいろ「書き込まれていく」というスタンスとは異なるというのがポイントになる。前者は生得論的な捉え方で、後者は経験論的な捉え方と言える。後者はたとえば、ジョン・ロックのタブラ・ラサが代表例である。正直この二つのどちらが「正しいのか」という議論は生産的ではないだろう。生得的な部分があり、文化的に獲得される部分があり、その二つ以外によって獲得される部分がある、と捉えるほうが自然である。一方で、どの部分がどれほどの割合を持つのか、あるいは強さを持つのか、という主張はありえるし、それによって「人間の心」をどのように扱うのかも変わってくる。でもって、それは政治的なスタンスに関わるので、これは結構議論を呼ぶ分野である。付言もし、「進化」について知識の枝を伸ばしていくならば、まずリチャード・ドーキンスは欠かせないし、分厚い本がお好みならダニエル・デネットに手を伸ばすのもありだろう。心身問題(心脳問題)であれば、古くはデカルトを起点として、新しくは脳科学を起点として(たとえば『意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論』など)、枝を伸ばすのが面白い。とにかくこの分野は話題がいろいろ出てくるので、結構沼である。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC018 アフタートーク&倉下メモ
『WILLPOWER 意志力の科学』倉下メモ意志力のお話です。認知資源という言い方をしてもよいでしょう。倉下はその概念を伝えるためにMP(エムピー)というたとえをよく使います。メンタルポイントでも、マジックポイントでも、その他その人がイメージしやすい何かであればよい、というゆるい意味でのMPです。それは使ってしまうとなくなってしまう。なくなってしまうと「思うようにできない」。それがHPとは別にある。そういうイメージです。これは、総合的な意味での体力の一部なのですが、一方で体は動くけれども判断力が摩耗している状態というのがあって(仕事終わりにスーパーに行くと実感します)、その辺の感覚を捉えるためにMPという概念を錬成したわけです(MPと聞くとゲームに親しんでいる人は自然とHPと別のパラメータだと認識するからです)。いろいろ厳密に考えていくとMPというたとえでは無理な部分もでてきますが、そもそもたとえは厳密に一致するものではないからたとえなわけですから、個人的にはそれで十分だろうと考えています。とにかく「難しい問題に判断力をつかうと、その後はその力が弱ってしまう」ということが伝わればOKかな、と。で、ゲームのイメージでもわかりますが、それって夜寝て朝起きると回復しているんですね。実は仮眠しても戻る感覚があります。つまり、MPのイメージを持てば、具体的にどのように対処すればいいのかのイメージもわきやすい、というわけです。だいたいのゲームでは、HPを回復するアイテムは入手しやすくてもMPとなると途端に難しくなるので、そういう「希少性の高さ」みたいなものもMPというメタファーには潜んでいるのがお得です。ようするに、MPというメタファーはそれを(デカルト的な)心身二元論に持ち込みたいのではなく、「個人のパラメータの一部であり、使えば減少していくようなところがある(だから無理をするな)」というメッセージを伝えたいために作った次第です。そこさえ伝わればだいたいOKです。近隣の本さて、この手の話は実はいろいろリンクしている話があります。その中でも近隣性が高いのはいかの本。『マシュマロ・テスト――成功する子・しない子』『いつも「時間がない」あなたに (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 』『なぜ意志の力はあてにならないのか―自己コントロールの文化史』2hop先まで提示すると莫大に膨れ上がりますので、まずはこのあたりから探索されるのがよろしいでしょう。次の本の候補紹介する、紹介すると言って先送りになっていた『理不尽な進化』を取り上げます。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC018 『WILLPOWER 意志力の科学』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第18回の本日は『WILLPOWER 意志力の科学』について語ります。今回の本は「決断疲れ」というキーワードを掘り下げていく過程でごりゅごが知った心理学者ロイ・バウマイスター氏の「意志力」に関する成果をまとめた本。この意思力関連の話は、ニュースレター「ナレッジスタック」でもたくさん取り上げています。🧘♂️選択肢は少ない方がいい - by goryugo - ナレッジスタック🧘♂️「あとでやる」を戦略的に使い分ける - by goryugo - ナレッジスタック🧘♂️意志力を高める方法は「お金持ちになる方法」と同じ - by goryugo - ナレッジスタック意志の力は「脳の筋力」今回の本は、倉下さんと一緒に話してたくさんの発見をすることができた本でした。話す内容に関しては事前の準備を(結構たくさん)しているんですが、それでも自分一人ではなかなか気がつけないことは多く、人と話すことで新しい発見ができるという体験は貴重です。一人では思いつかなかったであろう内容が、一緒に喋っている本番で見つかるというのは、やはり「やっててよかった」という感覚がありますね。意志の力に関しては「ドラクエのMPにたとえるとわかりやすいけど、細かい点ではちょっと違う」というような話を最初の話として準備していました。そこからの話で「意志の力というものも人間から出てくるもの」という話題になり「意志の力というのは脳の筋肉と言えるかもしれない」という「思いつき」が出てきたのは1つの成果と言えるのかもしれません。脳も筋肉と同じように「動かすためのエネルギー」が必要。さらに、ずっと強い負荷をかけ続けるとだんだん力を出せなくなっていく。ただし、使わなければ弱っていくし、強くするためには負荷をかけて「鍛える」必要がある。この辺りの感覚は、意志力は脳の筋力、という喩えを持ってくると非常にわかりやすくなるイメージがあります。意志の力は「投資」に使うまた、もう1つ「意志の力は消費ではなく投資に使うことが重要」という話。これもまた、話していたその場で思いついた「発見」でした。事前に「意思は無駄に消費しないようにする」というところまでは考えていましたが、それってお金と一緒だね、というのもまた話し相手がいたからこそのこと。高い意思力を持っている人は意志の力を「無駄遣いしない」じゃあその貴重な意志の力をなにに使うのかっていうと「よい習慣」というものに投資する。あ、それって「よいお金の使い方」と一緒だね。人に話すことで考えがまとまる、というのはずっと前から考えいることですが、今回は特に「まとまる」を一歩越えた、新しいアイデアが出てくる、という体験が多かったような気がしています。今回のアフタートークでは、そこをもう一歩広げて、みんなが参加できる「読書会」を開催したいねという話と、それに関わる「サポータープラン」というものについて話していますので、興味をお持ちいただけたら次回も楽しみにお待ちください。参考リンクたすくまの使い方を見てたらタスクシュートの考え方がすごくしっくり来たのでちょっと使ってみることにした – ごりゅご.comたすくまというタスク管理アプリを200日ほど使い続けてわかったこと – ごりゅご.com🧘♂️4時間以上働いたら「生産性が下がる」 - by goryugo - ナレッジスタック今回の書籍、残念ながら日本語の電子版がありません。WILLPOWER 意志力の科学 | ロイ・バウマイスター, ジョン・ティアニー, 渡会圭子 |本 | 通販 | AmazonAmazon | Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength (English Edition) [Kindle edition] by Baumeister, Roy F., John Tierney | Behavioral Sciences | Kindleストア This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC017 アフタートーク
参考リンクブックカタリスト - アープラノート(ブックカタリストについて言及してくれていたScrapbox)Apple Podcast内のゆる言語学ラジオごりゅごcast: 🎙668 NGSLという英単語リスト2800語を一通り学習できたのでコツや感想を語る on Apple PodcastsAnkiを使った英語学習が紙より20倍以上効率がいいので是非試してみて欲しい – ごりゅご.com This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC017『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』
今回は『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』を取り上げます。というか、倉下の新刊です。著者が自分の本をテーマに取り上げる。まるで『ロラン・バルトによるロラン・バルト』みたいですね。ただ、著者による本の解説というよりは、「そういう風に読める」という一つの視点として聞いていただければと思います。この本は?ノートの本です。ただし、「ノート術」として連想される本とはちょっと違っているかもしれません。むしろ「ノート論」(ノート論考)が近いかも。とは言え、小難しい議論を展開してはいません。だいたい言いたいことは、「みんなもっとノートを書こうぜ(いろいろな場面で利用しようぜ)ってことです。第一章で、記録という「テクノロジー」の話をし、そこから情報と記録と私たち人間の関係を論じています。第二章からはいよいよノートの話で、第三章と合わせて「実行」に関するノーティング(ノートを書くこと)を紹介しています。いわゆるタスク管理系の話題です。で、第四章からはいわゆる知的生産系の話題に移るわけですが、この辺から本の展開が「妙な具合」になってきます。転調が始まるのです。つまり、一般的なビジネス書・自己啓発書が奏でるメロディーとは変わってくるのです。続く第五章では読書におけるノートの使い方で、片方は「本の読み方」を紹介する章であり、もう片方ではこれまでの章で紹介してきた技法の実際例を検討する章でもあります。第六章では、自分のために書くノートから他の人に向けて書くノートへと話題が移り、ここまで論じてきた話が有機的に接合します。つまり、自分=他人、書くこと=読むこと、ノート=本、という概念の連続性が見出されます。最後を飾る第七章では、いわゆる自己啓発的なものへの超克が試みられています。簡単に言えば、「人生を誤配させようぜ」というメッセージです。だいぶヤバイこと言っている自覚はありますが、自分の人生を振り返ってみても、そしてたくさんの人の話を聞いても、やっぱり人生にとって重要なことの多くって、そういう形で起こるのだという感覚があります。自分で自分の人生を支配するなんて、つまらないですよね。というような(なかなか複雑な)話が展開されている本です。万人受けするのかどうかはまったくわかりませんが、それでも著者自身が星5をつけられる本になりました。よろしければチェックしてみてください。目次* はじめに ノートをめぐる冒険* 第一章 ノートと僕たち 人類を生みだしたテクノロジー* 第二章 はじめるために書く 意志と決断のノート* 第三章 進めるために書く 管理のノート* 第四章 考えるために書く 思考のノート* 第五章 読むために書く 読書のノート* 第六章 伝えるために書く 共有のノート* 第七章 未来のために書く ビジョンのノート* 補章 今日からノートをはじめるためのアドバイス* おわりに 人生をノートと共に関連ページ◇『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』 - 倉下忠憲の発想工房 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC016 アフタートーク&倉下メモ
『英語独習法』倉下メモ倉下も読んでいた本ですが、ほとんどすっかり内容を忘れておりました。今回はいい感じで復習できたと思います。* 言語を使うことにおいては「スキーマ」がメチャ重要* 言葉(知識)は関係性を持っている(共起・似た言葉)* ともかく語彙を増やそう* 勉強は目的とコストを考えてたとえば、「Zettelkasten」という言葉があるのですが、いまだに倉下はこの言葉が覚えられません。なぜかというと発音できないからなんですね。これはドイツ語に限らず、読みづらい英単語とか漢字とかでも起きます。逆に言うと、読めるものは思い出しやすい。つまり、文字・意味・音という三つの記憶が結びついていると覚えやすい(あるいは思い出しやすい)のです。一つの単語レベルでも、複数の情報が組み合わさっています。また、共起語のように、ある言葉とよく一緒に使われる言葉というのもあって、ズボンは履くで、服は着るというのは本編でも出てきましたが、他にもそのニュアンスならこの言い方といったチョイスもすべてこの共起関係にあると言えます。イディオムなんかは固定化された共起性とも言えるでしょう。文の構成レベルでも似たようなことはあって、「Aは少々高い。しかし、」という文があったら、読み手は必然的に「性能も高いのでそれでも満足できる」とか「Bはもっと高いので比較的お得である」のような文が来るだろうと(無意識に)予想します。この無意識の予想がスキーマなわけですが、それは「Aは少々高い。しかし、明日の天気は晴れだ」という文章があまりにも不自然に感じられることからもわかるでしょう。文法的に何一つ誤りがなくても、文章としてはヘンだと感じる何かがあるわけです。この例はかなり極端ですが、そういう「ヘンな感じ」を避けようと思ったら、逆に「どういう文ならヘンとは感じられないのか」を体感するしかありません。知識としてではなく、実感としてそれがわかるようになる必要がある、ということです。この辺の話は、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の話にも通じているでしょう。でもって、類似の単語レベルでも関係性があります。「歩く」と「ふらふら歩く」と「ちょこまかと歩く」という言葉の(あるいはそのニュアンスの)違いが知覚できるのは、そうした類似の言葉があるからです。「赤」という色が認識できるのは、赤い以外の色を知っているから、というのに近しいでしょう。類似する言葉との差異の中で、その言葉の意味が際立つ。そんな風に言えるかもしれません。だからまあ、語彙を増やすのは、特にネットワークとして語彙を増やすのは大切なのだと思います。それは何も類義語を覚えよというだけの話ではなく、一つの文(あるいは文章)もまた言葉のネットワークを形成していると考えれば、文(文章)に触れることも大切なのだ、という話に接続します。ちなみに、中公新書の『英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで』(北村一真)では、英文の「こういう文の構造がきたら、次はこう来るよね、ほらやっぱり」という本来言語化されていないスキーマ的予想が、非常にわかりやすく言語化されているので、まさに「英語の読み方」の参考書として有用です。あと、ちくま新書の『英語の思考法 ――話すための文法・文化レッスン』は最近買って、これから読むところです。この三つを、英語学習新書御三家と呼ぶ……かどうかは、読み終えてから判断するとします。次の本の候補『理不尽な進化』がすごく面白かったのでぜひ取り上げようとも思いましたが、倉下は著作業を営んでおり、ちょうど新刊が発売されるので、その本を著者自らが紹介する、という試みをやってみようと思います。『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe
BC016 『英語独習法』
面白かった本について語るPodcastブックカタリスト。第16回の本日は『英語独習法』について語ります。今回の本は、読み終えてから比較的時間が経ったものでした。ただ最近は「読書メモを整理して1ノート1要素にまとめる」ということをやっているおかげで、読んでから時間が経った本の方が中身についてじっくり考えを深められるようになっています。実はこれ、『Learn Better ― 頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』も同じような状態で収録したもので、そういう意味でもLearn Betterと同じようにうまく話せたのではないか、という自負もあったりします。英語学習版『Learn Better』でありつつ「世界の見え方が変わる本」『英語独習法』大きく2つの点が素晴らしかったです。1つは英語に特化した『Learn Better』のような、どのように学習をすることが、英語を学ぶのに有効な手法なのか、というのを学術的な観点で話してくれるところ。特に最も痛快だったのは「目標を決める」ことの重要さを語った上で、できるようになりたいは目標ではないという言葉でぶった斬ってくれたこと。世の中にある英語学習コンテンツの多くが「これだけでいい」「簡単」というようなお手軽感満載のタイトルで溢れていることに対して、『英語独習法』では以下のように「覚悟を決めろ」と迫ってきます。できるようになりたい、というのは目標ではなくただの願望。どのレベルまで、どこまで時間と労力を使う覚悟があるか、ということをきちんと考えて、自分の目指すものを考える。『Learn Better』でも出てくるんですが、学びを深めるための基本は「価値を見出し」「目標を決める」こと。これを「どこまで時間と労力を使う覚悟があるか」と語ってくれる本は信頼できる。そしてもう1つ、この本が興味深いのは「英語という言語での世界の捉え方」を教えてくれること。Did you see "the" broken headlight?Did you see "a" broken headlight?本編でも語った話ですが、ネイティブの人は"the"なのか"a"なのかで答えが変わる、という話などなど、英語を話している人が感じている世界、というものがいかに自分と異なるものなのか、という実例を見せてくれた、大変興味深いものでした。この部分に関して言えば、英語に興味がなくとも、言語というものがいかに興味深いものなのか。それを知ることができる点だけでも一読の価値はあると感じています。いろんな本が自分の中でNo1判定されているんですが、これは「今年一番短い期間で読み終えた本」No1です。本編中に紹介した本* 英語の読み方 ニュース、SNSから小説まで (中公新書) | 北村一真 | 英語 | Kindleストア | Amazon This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe