最適性理論の基礎
言語学ではよく真相と表層というものを考えます。 頭の中では、真相のレベルではこういう組み立て方をしていたんだけど、
口から出てくる時には表層では別の形で実現するということがあると考えるんですね。 例えば日本語の動詞で考えてみると、日本語の動詞の過去形は
たがつきますね。 見たとか食べた。ただ、動詞によっては飲んだとか叫んだのように、だという形で実現することがあります。
これは見るとか食べるとかいう動詞にはたがついて、飲むとか叫ぶとかそういった動詞にはだがつくとは考えずに、
やはり同じたというのがついていると考えるんですね。 飲んだ叫んだは真相としては、あるいはインプットとしては飲みたとか叫びたと入力されて、
で、それが出力される時には、口から出てくる時には飲んだ叫んだという形になっていると。 飲みたから飲んだに変換されるような
ルール規則があるというふうに言語学では考えるんですね。 今回テーマにしているのは最適性理論と言われるものです。
この理論は生成文法の流れを組んでいて、今言ったような真相と表層、インプットとアウトプットみたいなのがテーマになっています。
日本語の飲んだみたいなものも含めですね。 世界のあらゆる言語ではインプットと予想されるアウトプットが異なる
そういったことがよくあるわけですが、最適性理論では制約というのがキーワードになってきます。 BGMです。
始まりました。4月15日のツボ。みなさんいかがお過ごしでしょうか。マイクタイソンです。 最適性理論は普通は表を書いて説明していくんですが、
この番組はポッドキャストですからね、音声だけですので、 最適性理論の本の入り口だけ今回はお話ししようと思います。
一応サムネイルは最適性理論で使われる表にしておこうとは思いますが、 基本的な方針、考え方みたいなのをお話ししていこうと思います。
先ほども言ったように最適性理論では制約というのが一つテーマなんですね。 その制約について考えるのに、ここではドイツ語の語末子音について
取り上げようと思います。 ドイツ語の有声破裂音、ブードゥーグ、
アルファベットではBDGと書かれるような音は、 語末、単語の最後ではプートゥーク、PTKの音になるという現象があるんですね。
日本語風に言えば語末の雑音が正音になるということですけど、 もうちょっと一般言語学的に言うと有声破裂音が無声破裂音になるということができます。
例えばドイツの都市でハンブルクーというのがありますけど、 このハンブルクーというのも綴りの上ではGで書くんですけど、
発音としてはクーという無声音になっているんですね。 ドイツ語でお風呂のことはバートと言います。
このトゥーというのがTの音なんですが、綴りの上ではDで書かれます。 英語のバーツにあたる単語です。
ここでは有声破裂音のドゥーが語末なので、トゥーという無声破裂音で実現しています。 この現象は語末だけで起こる現象で、
ニューヨークスルーのバーデンだったら語中なのでドゥーという音で実現します。 言語学では
インプット、真相形はバードゥという有声音だったのがアウトプット、 表層形ではバートという風に無声音になっていると考えます。
おそらくドイツ語の教科書なんかだったら 語末の有声破裂音は無声音になります。
そういうルールを一意を変えておしまいだと思うんですが、 最適性理論ではそういうルールを設定する代わりに
制約というのを考えるんですね。 インプットからアウトプットに至るまでにいくつかの制約があると考えるんですね。
ここで一つ重要なポイントは、最適性理論でいう制約は違反しても構わないんですね。
絶対守らなきゃいけない制約というよりは 引っかかっても構わないものであって
インプットに対していくつか制約がかけられて その候補者の中で
マシな違反をしたものをアウトプットとして実現するというふうに考えるんですね。 適切な例えかどうかわかりませんけど
犯罪を犯した者の中から最も軽いものを釈放するみたいな。 あえて言えばそういうイメージかなと思います。
ここでいう制約にはいくつか種類があるんですけど メジャーなものには2つあって
一つはFaithful Constraintsと言われるもので 忠実性制約と多分日本語で言われるんではないかと思います。
ここでいうFaithfulness、忠実性というのは インプットのまんま
何の変化もなくアウトプットとして実現する そういった制約です。これは言語にとって理想形というか
真相の形のまんま表層で実現すれば めんどくさい変換規則みたいなのは考えなくていいわけなので
理想形といえば理想形かもしれません。 これが忠実性制約と言われるものです。
それとは別に有表性制約というものもあります。 これはMarkedness Constraintsと言われるもので
通言語的に言語一般に当てはまるような自然な傾向みたいなものです。 この最適性理論というのは音韻論から出発しているので
音の話が多いんですけど 例えば音説は音セットを持つべきだという制約
音セットというのは等詩音というもので 歌劇傾向で言えばKの詩音のことですね
忠実性制約と有表性制約
音セットを持っているべきだ。これはどんな言語にも当てはまるような 自然の傾向みたいなものです。
逆に講座、音説末詩音は持っていない方が自然だというふうに考えられているんですね。
この忠実性制約と有表性制約の攻め合いというのが考えられます。
例えばインプットで 音説構造が詩音母音詩音という形だった場合
忠実性制約に従えばそのままアウトプットに出るので詩音母音詩音となるんですが 有表性制約のうちさっき言った
こうだ 音説末シーンはない方が自然だというのに従えば最後のシーンがなくなっちゃって
シーンボイントを実現するかもしれないということです
ここでドイツ語の話に戻るとドイツ語の フロー
but というのはインプットはbad なんですね
これが忠実性制約、インプットのままアウトプットに出すだったら bad になりそうなんですが
その忠実性制約とは別に有表性制約として 音説末シーン、こうだは
無声音であるべきだという制約もあるんですね でこれは
有表性制約なのでドイツ語に限らずあらゆる言語に当てはまると考えられています 音説末あるいは語末のシーンは
無声音であるべきだという有表性制約 さっきも言ったように最適性理論において制約というのは違反していいものです
bad が そのまま bad になったとしても
ドイツ語のように but となったとしてもいずれにせよ制約には違反しているんですね どちらも違反しています
bad の方は 有表性制約、こうだは無声音でなければならないという制約に違反しているし
but っていうのはインプットとは違う形で出ているので 忠実性制約に違反しています
ドイツ語の場合はこうだが無声音でなければならないという制約の方が強いんですね この有表性制約に違反する bad の方がより重大というか罪が重いので
よりマシな but の方がアウトプットとして実現するということです
どの制約がより強いかという制約のランキングっていうのが言語ごとに違うというのが最適性理論の考え方で
例えば英語で bed といった場合この do というのは有声音でドイツ語と違って語末に出てきているわけですが
英語の場合は忠実性制約の方が強いのでインプットの bed のまま bed で実現しています
ただ英語の場合もこうだは無声シーンでなければならないという有表性制約はあるんですが
それは忠実性制約よりは弱い制約であるというふうに考えるんですね
インプットからアウトプットに至るまで制約がいくつかあるんですがその制約は違反してもいいもので
でさらにその制約にはランキングというのがあって候補者の中から
その中でもマシな違反をしたものがアウトプットとして実現すると考えるのが最適性理論でございます
ほんの入り口のお話でございました
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう
番組フォローまだの方はよろしくお願い致します
お相手はシガ15でした
またねー
