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2025-06-24 11:33

#767 規則的な音法則がもたらす不規則性と、不規則な類推がもたらす規則性 from Radiotalk

主要参考文献
吉田和彦 (2024)『言語を復元する: 比較言語学の世界』東京: 筑摩書房.

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育

サマリー

このエピソードでは、音法則と類推が言語変化に及ぼす影響を考察しています。音法則は規則的に適用されながら不規則性を生み出し、類推は不規則に働きつつ規則性をもたらす逆説的な関係が示されています。

音法則とその影響
言語は変化していくものです。 話者がそれを食い止めようと思っても、なかなか食い止められないというね、そういった変化もあると思います。
今、我々が話している日本語だって、平安時代の古文で習うような日本語とは大きく変化してますよね。
その変化の原動力、源、要因として音法則というのがあります。
この番組でも取り上げたことがあるのは、例えば日本語で、波行の音が、それこそ平安時代は F に近いようなファフィフフェフォーだったと考えられていて、
さらにそれが上代日本語、奈良時代以前の日本語だとパピプペポーだったと考えられているとか、
逆に言えば、パーからファー、そしてハーという風に、アルファベットで書けば P、F、H のように音が変わっていったと考えられています。
これが音法則と言われるものです。
他の音法則の例として、英語の大母音推移というものもあります。これも過去に取り上げたことがありますが、
母音が高くなっていくっていうようなね、そういった変化が英語でありました。
見るっていう単語の see っていうのがありますけど、綴りの上ではというかね、ローマ字読みすれば say となりそうですけど、
実際あれは say と読んでたんですよね。で a という母音が高くなって e になって say が c になっちゃったと。
そういった組織的な音変化、音法則が英語でもありました。そういった音法則とは別に
言語の変化を促す要因というものがあります。それが類推と言われるものです。
この類推というのは歴史とした言語学の用語で、一言で言えば別の
規則を採用しちゃうみたいなもので、 日本語だったら
違うっていう動詞がありますけど、 これは動詞なので否定形は違わないとか
過去形は違ったとなりそうなものですが、 昨今、否定形は違くない
過去形は違かったっていう風にね、そういう言い方をする人もいると思います。
これは違うという動詞なんですけど、形容詞の活用パターンを類推で編み出して寒くない
寒かったと同じように違くない、違かったという そういう言い方が変化が生まれているということになります。
BGMです。 始まりました4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。ペヨンジュンです。
皆さんにぜひお勧めしたい本がありまして、 言葉を復元するという吉田和彦先生の本です。
これがね最近、ちくま学芸文庫から、文庫として出ております。 言葉を復元する。
これは歴史言語学ないし比較言語学の一般向けの本ですが、 一般向けですけど結構高度なことも扱ってるっていうような本だと思います。
比較言語学について日本語で書かれているものの中でも、 かなりお勧めできるものじゃないかなと思います。
その吉田和彦先生の言葉を復元するの中で、 冒頭お話しした音法則と類推の話が出てくるんですけど、
その中で面白い言い方をなさっていて、 音法則は規則的に適用されるが不規則性を生み出す。
他方、類推は不規則に働くが規則性をもたらす。 これはなかなか面白いパラドックス、逆説だと思います。
言われてみれば確かにその通りで、 前半の方から見てみますと音法則は規則的に適用される。
これは昔音法則に例外なしっていう青年文法学派と言われる人たちが言ったことでもあるんですけど、
音法則っていうのはかなり組織的に、 言語の体系全体に及ぶようなもので、
さっき言った日本語の波行の音がパーからファーになってさらにハーになったっていうような変化も日本語全体に適用されているもので、
ある単語ではPからFに変化したけど、 別の単語ではPのまま残ってるっていうようなことはないんですよね。
あるいは英語の大母音推っていうのも、 母音全体が高くなっていったっていうような変化なので、
ある単語では母音は高くなったけど、 別の単語ではそのまま残ったっていうようなことはないです。
で、それがなぜ不規則性を生み出すかっていうのはちょっとこの後お話ししますが、
もう一個、累推は不規則に働くっていうのも確かにその通りで、
さっきの日本語のね、「違う」っていう動詞が形容詞の活用になるっていうのは、
違うっていうそのピンポイントの単語で起こっている変化であって、動詞全体に適用されているわけではありません。
その理由付けっていうのはいろいろできるとは思うんですが、 どっちかというと個別的な事態なんですよね。
類推の働き
ただその結果、「違う」っていう単語は 形容詞の活用をするという規則的な変化をもたらしています。
この吉田克彦先生の言葉を復元するはもっぱらインドヨーロッパ語族の話なので、
ちょっとこの音変化とね、累推について日本語で考えてみるとどうなるかなぁと思ったんですよね。
音変化は、さっき言ったように日本語がね、
波行の音がPからFを経てHになっているっていうようなのが当てはまるわけですけど、
さっき言ったようにそれは規則的に適用されるわけですが、 なぜそれが不規則性を生み出すことになるかというと、
連濁っていうのを考えてみると結構ね納得できるんですよね。
連濁っていうのは、 寺っていうのが山寺になるような、そういった濁音になる現象ですけど、
今言った寺が寺になるのは、 詩音に注目するとTがDになっているわけですよね。
これは同じ破裂音で、 調音位置もハグキーで一緒で、
結構シンプルな言い方をすれば、 破裂音の優勢音科ということができます。
濁音というのは音声学的に言えば優勢音で、 あるいは母音管に挟まれた時に無精破裂音が優勢破裂音になる、優勢化しているということもできると思いますが、
いずれにせよ無精破裂音が優勢破裂音になっています。 紙が手紙になるのも一緒ですね。
母がガーになるのも無精破裂音が優勢破裂音になっています。 ただ問題は波行の連濁の時で、
ハナっていうのが連濁するとキリバナとかになるんですよね。 これはハっていうのは摩擦音で、
バっていうのはこれは優勢破裂音です。 もしハナというのがパナという発音だったら、
パがバになるっていうのは他の連濁と同じように 無精破裂音の優勢化ということができるんですけど、
パはファを経てハになっちゃったために摩擦音になっちゃって、 その破裂音の優勢音化っていう規則から逸脱しちゃってるんですよね。
そういった意味で音法則は不規則性を生み出しているということができると思います。
PがFを経てHになったっていうのは、これはかなり規則的なものですが、その結果 連濁という現象では
無精破裂音の優勢化というその規則からは逸脱した不規則なことになっちゃってます。
では次に、類推は不規則に働いてその結果規則性をもたらすとは一体どういうことか考えてみると、
さっきの 違かったとかでもいいんですけど、
例えば、 見れとか食べれという言い方をする人もいると思います。
見ろ、食べろという、ろという命令形ではなくて、 見で、食べれという、れで終わる命令形を使う人も
まあこれ地域差とかね、世代差あると思いますがいらっしゃると思います。 これは類推ということができて、
動詞の中には、一般に五段動詞と言われているものは Aで終わる形が命令形なんですよね。
家庭形と一緒と言ってもいいかもしれないですけど、 行け、飲め、叫べとかこういったものは Aで終わる命令形です。
それとの類推で、家庭形と同じAで終わるのが命令形だという類推が働いて、
見ればと同じ見れが命令形、食べればと同じ食べれが命令形になっているということです。
ただこの規則は、おそらくすべての一段動詞と言われる動詞に 適用されているわけではないと思います。
一部の、例えば見れとか食べれみたいな、一部の動詞に適用されている、 不規則に適用されています。
が、その結果、見れとか食べれっていうのは、 五段動詞と同じ一種の規則を持ったものとして
実現してるんですよね。 これなかなか面白いですよね。
不規則に適用された結果、規則性が生み出されているっていうのは、 こういうことだと思います。
今日お話しした音法則と類推っていうのは、 言語を変化させる大きな2つの原動力ということができます。
言語変化の原動力
なかなか目に見える変化っていうのは、 言語では起こりづらいとは思うんですけど、
そういったことを気にして暮らしてみるのも良いんではないでしょうか。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。 番組フォローまだの方はよろしくお願い致します。
お相手はシガ15でした。
またねー!
11:33

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