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2025-07-12 11:55

#772 【英語】非文法的な文が文法的になるとき from Radiotalk

関連エピソード
https://radiotalk.jp/talk/982491

主要参考文献
影山太郎 (2009)「言語の構造制約と叙述機能」『言語研究』136, 1-34.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gengo/136/0/136_1/_article/-char/ja

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育

サマリー

このエピソードでは、非文法的な文が属性序述の場合にどのように許容されるかについて議論されています。影山太郎の「言語の構造制約と序述機能」に基づいて、英語の例を通してその概念が具体的に説明されています。

母語話者の直感
母語話者は、その母語の 言語形式とか発話っていうのが正しいかどうか判断できます。
僕は日本語母語話者ですので、 発話とか文っていうのが
正しいかどうか、 別の言い方をすると、文法的か非文法的かっていうのが直感でわかるんですよね。
別にこれは僕に限ったことではなくて、 皆さんが日本語母語話者であれば、日本語についてそういった直感っていうのがあります。
正しいか正しくないかというと、ちょっと語弊があったりとか、 言語学っていうのは正しい日本語を定めているものだみたいな、
そういうふうに思われてしまうかもしれませんが、そういうことではなくて、 もうちょっとフラットにね、
母語話者というのは母語を文法的か非文法的か判断できる。 そういう前提で今日はお話ししていきます。
で、一見非文法的なものであっても、 ちゃんと使えるっていう場合があるんですよね。
結論を先に言うと、非文法的な発話とか言語形式であっても、
属性序述であれば許容されるという場合があります。
属性序述。これは時間の流れによって変化しないような、 一言で言えば状態を表すようなものが属性序述と言われます。
反対に自称序述と言われるのもあって、 時間の流れに沿ってどんどん展開していったり変化していくような、
そういったものを表すのが自称序述です。 この属性序述と自称序述については関連エピソードがあるので、
そちらも併せて聞いていただけたらいいんですが、 ここで言っておきたいのは繰り返しですが、
非文法的に思える形でも属性序述、すなわち何か状態を表したりとか、 あるいは普遍的なことを言ったりとか、
要は一般論的なことを言ったりとか、 そのものの性質とか状態を表す、そういった場合には許容されることがあるんですね。
今回参考にしている論文は影山太郎先生の 「言語の構造制約と序述機能」という論文です。
これは影山先生が日本言語学会の会長に就任する時にやった講演が元になっている論文で、
学術論文ですけど、結構読みやすいと思うので、 普段ね、そういうアカデミックなものを読まない方でも割と読めるんじゃないかなと思います。
BGM、かかれい。始まりました4月15日のツボ。 皆さんいかがお過ごしでしょうか。クリント・イースト・ウッドです。
今回テーマとなっている属性序述というのは繰り返しですけど、 その時間の流れによって変わっていかないような
普遍的、一般的、向上的な性質を述べるようなもので、 例えば
彼は青い目をしているとか言った場合、 この青い目であるっていうのはあまり時間とともに変わっていかないですよね。
今だけ青い目をしているとは言えないし、 青い目をするのをやめたり、青い目をし始めたりすることもできません。
こういうのが属性序述です。 反対の辞書序述っていうのは
例えばマニキュアをしているみたいなもので、 このマニケアをするっていうのは
マニケアをし始めることもし終えることもできるし、 爪の色がどんどん変わるっていう風に変化していくような、そういったものです。
英語の無生物主語
今回はちょっと英語を例にお話ししていこうと思います。 影山先生の論文には日本語の例ももちろんあるんですけど、
個人的に結構この英語の例が面白いなと思ったんですよね。 皆さん聞いたことあると思うんですが、英語では無生物種語っていうのが結構許されます。
人とか、あるいは生物以外のものが種語となるような、 もっと言うと他同士の種語になるような構文があります。
例えば、そのニュースが私を驚かせたみたいな。 the news surprised me みたいな。 日本語だと結構
いかにも翻訳帳っていう感じで、 そのニュースに私は驚いたっていう風に、 日本語だったら言いそうなものですよね。
ただ英語は the news っていうのが多動詞の種語になって、 私を驚かせるっていうような多動詞を使った文になってるんですよね。
で、こういった無生物種語の現象は sleep という動詞でも見られます。
sleep っていうのは、皆さんご存知のように眠るという意味があるんですけど、 その自動詞としてだけではなくて、多動詞としても使うことができます。
ただその場合、眠らせるというような感じじゃなくて、 寝ることができるというか、止まらせることができるみたいな、
そんな意味になります。 つまり this room sleeps 5 people とか言ったら、
この部屋は5人寝ることができる。 そういった無生物種語の文が可能です。
可能ですが、これが可能なのは属性叙述の時だけなんですね。 今みたいにこの部屋の性質として、特徴として、5人寝ることができる。
そういう時間的に変化しないような場合には sleep を多動詞で使うことができるんですが、
昨晩、この部屋で私の家族は眠ったとか言いたい時に this room slept my family last night みたいには言えないんですね。
その sleep の多動詞としての用法は、さっきも言ったように、 人を寝かせることができる、それだけ余裕があるみたいな意味なので
this room slept my family last night とか言えそうなんですけど、 ただこれは属性叙述じゃなくて自称叙述なので、
つまり、実際に起こった1回限りの出来事で私の家族が眠りについて起きるっていう時間的な展開があるわけですよね。
そういう自称叙述を表す時に sleep を多動詞で使うことはできません。
つまり非文となるんですが、属性叙述の時、部屋の性質を言う時なんかは 文法的になるんですね。
このように英語の無生物主語、公文と言われるものの中には その特定の時間が関わるような自称叙述では非文となって非文法的となって
属性叙述の時だけ許容されるというものもあります。
もう一つ英語の例で受け身文というのをちょっと考えてみようと思います。 受け身文っていうのは
特に英語だと他動詞の目的語が主語になるような そういった公文です。
例えば私の犬があなたのハンバーガーを食べたとか言う時は my dog ate your hamburger っていうのが目的語の your hamburger っていうのが主語になって
your hamburger was eaten by my dog とかなるわけですよね。 あるいは苦動詞と言われるような
look after 面倒を見るとか あるいは speak to 話しかけるみたいな
そういった 自動詞プラス前置詞である意味一個の他動詞みたいになっているような場合でも受け身文
っていうのは作ることができます。 I was spoken to by 誰誰みたいに。
なので前置詞句というか前置詞がついた名詞とかは その受動態の主語にはなれないんですよね。
my sister ate your hamburger with this fork 私の妹が君のハンバーガーをこのフォークで食べちゃったって言った場合
受け身文の主語になれるのは目的語である your hamburger だけです。
this fork このフォークっていう名詞は前置詞 with と出てきているので、これを主語の位置に持ってくる受動態にはできません。
無理やりやると this fork was eaten your hamburger with by my sister みたいになるわけですけど、これは非文法的ということになります。
が、この非文法的な前置詞付きの名詞が受け身文、受動態の主語になれることもあります。
それが属性助詞の時なんですね。
this fork has been eaten with とか言うと、このフォークは食べるのに使われているみたいになるわけですが、
こういうのを英語で異常受け身とかね言われることもあるそうです。 この異常受け身が許されるのは属性助詞、すなわち時間的には展開しない。
フォークが食べるのに使われているというそのフォークの性質を言うときには許容されるんですね。
で、さっきの妹が食べちゃったの場合は、一回こっきりの実際に起こった特定の出来事を指している事象助詞なので非文法的なんですね。
このように非文法的とされる、すなわち話者が直感でね、ダメだと判断するような文であっても属性助詞、何かの属性とか
性質とか、そういう向上的な事態を述べるような場合は許されるという、そんなお話でございました。
今回取り上げたのは英語のね、2つの現象でしたけど、論文本体には日本語含めいろんな言語の例がありますので興味のある方はぜひ読んでみてください。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。番組フォローもどうぞよろしくお願い致します。
お会いしてはシガ15でした。 またねー。
11:55

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