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#67 ファンがヒットをつくる時代|AKB48・FRUITS ZIPPERに学ぶ「参加」の推し活ビジネス【推し活未来研究所】
2026-10-19 30:54

#67 ファンがヒットをつくる時代|AKB48・FRUITS ZIPPERに学ぶ「参加」の推し活ビジネス【推し活未来研究所】

ファンは、いつ「見る人」から「ヒットをつくる人」になったのでしょうか。
松田聖子・中森明菜の時代から、モーニング娘。、AKB48、FRUITS ZIPPERまで。テレビ、CD、劇場、総選挙、握手会、SNSをたどりながら、ファンの「参加」がビジネスを動かす仕組みを考えます。
応援が楽しい体験であり続けるために、ファンと作り手の役割の境界にも目を向けます。

▼ 今回の内容
ファンがヒットをつくる時代
ファンは何にお金と時間を使うのか
テレビがアイドルを届けた時代
モーニング娘。と5万枚のCD
AKB48の劇場と「自分が見つけた」感覚
総選挙は何を数えていたのか
1,200円のCDと、買えないもの
FRUITS ZIPPERとSNSで広がる参加
応援を責任にしないために
10月22日・渋谷での無料イベント
エンディング

▼ 10月22日(木)〜 渋谷で登壇します
「推し活ビジネス」をUXでひも解く会
矢澤綾乃 × 藤崎光(株式会社アピリッツ)
会場:渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー24階
完全オフライン開催・参加無料。詳細、お申し込みはこちら。
https://wbccollege.connpass.com/event/408671/

▼ 関連回
「CD特典商法」の限界を、本気で調べてみた
https://note.com/oshikatsu_labo/n/nf2fbda82a3f2

▼ 主な参考資料
AKB48公式:『名残り桜』発売記念 個別握手会
https://www.akb48.co.jp/news/detailpage/434657261
ハロー!プロジェクト公式:「愛の種」と5万枚の手売り
https://helloproject.com/news/7768/?pc=1
FRUITS ZIPPER公式:東京ドーム公演「ENERGY」チケット案内
https://fruitszipper.asobisystem.com/news/detail/64651
WIRED:KAWAII LAB. 木村ミサさんインタビュー
https://wired.jp/article/kawaii-lab-misa-kimura-interview/

『推し活未来研究所』🎧 毎週月曜あさ7時配信
ビジネスとカルチャーをつなぐ「推し活」の世界を、現場の経験とデータからお届けします。

▼ パーソナリティ
矢澤 綾乃|株式会社KAZAORI 代表取締役・現役ベーシスト
推す側と推される側、両方の経験から推し活ビジネスを探っています。
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#推し活 #AKB48 #FRUITSZIPPER

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サマリー

このエピソードでは、1970年代以降の女性アイドルを通じて、ファンが使えるお金と時間、そして参加の方法がどう変化したかをたどります。テレビ時代は『スター誕生!』や松田聖子・中森明菜のように、視聴者は複数の媒体で魅力を受け取りましたが、デビューや楽曲を直接決める権限は限られていました。モーニング娘。の『愛の種』では、5日間で5万枚を手売りする条件がデビューの物語と購入を結びつけ、AKB48では劇場、総選挙、握手会によって、発見・順位・対面という参加が細分化されました。 AKB48の総選挙は、CDや会員サービスなどに投票権を結びつけ、票数が必ずしも人数や売上を意味しない仕組みでした。近年の握手会では、1200円のCDに参加権が付く一方、時間や枚数、行動に細かな制限があり、近さを提供するほど運営と本人の時間が上限になります。FRUITS ZIPPERは、SNSでファンや一般の人が踊ったり共有したりできる曲作りを進め、メンバーの個性を肯定する『ニュー可愛い』によって、女性も自分の表現を重ねられる入口を広げました。 SNSで無料参加が可能になっても、東京ドーム公演のような有料体験には、曲を知る以上に他の曲やメンバー、同じ時間を過ごしたいと思える関係が必要です。最後に、応援で未来を変えられるという感覚が、ファンに過剰な責任を負わせる危険も語られます。作り手とファンの役割を分け、何にお金を払い何が得られるかを明確にしながら、双方が無理なく長く続けられる距離を作ることが重要だとまとめています。

ファンの参加が変えてきたアイドルビジネス
こんにちは、株式会社KAZAORIの矢澤彩乃です。推し活未来研究所へようこそ。 この番組では、ますます盛り上がりを見せる推し活をビジネスの視点から、そして時には私自身の経験も交えながら、楽しくそして
深く紐解いていきます。
さて、今日のテーマはこちら。 ファンがヒットをつくる時代、AKB48・FRUITS ZIPPERに学ぶ参加がビジネスを動かす仕組みです。
松田聖子さんや中森明菜さんをテレビで見ていた時代、モーニング娘。のメンバーを友達と話していた時代、そしてAKB48の総選挙が大きな話題になった時代、同じアイドルを応援するでもファンができることは変わ
ってきました。
2026年2月にも、AKB48では劇場で1200円のCDを買うと、対象メンバーの中から希望する人と握手できる参加券を渡すイベントが案内されました。
一方で、SNSで知った曲を自分も踊り、そこからアイドルのファンになる入り口もあります。 歌を聴くことに、会うこと、順位を動かすこと、自分も表現することが重なる。
いったいどこでこうなったのでしょうか?
本題に入る前に、今回初めて聞いてくださる方もいらっしゃると思うので、少しだけ自己紹介させてください。
私は普段、お仕事をテーマにしたビジネスをしていまして、例えばファンの皆さんがイベントを一緒に盛り上げられるプクートというサービスなどを提供しています。
それと同時に、ベーシストとしてアーティストさんのバックバンドでベースを弾かせてもらっていて、いわば押される側の空気感も肌で感じているんですよね。
この番組は、そんな押す側と押される側、両方の視点を持つ私だからこそ見えてくる、お仕事の面白さや可能性を皆さんと一緒に探っていきたいなと思って始めました。
YouTubeのチャンネル登録、そしてポッドキャストのフォローもぜひよろしくお願いします。
そして本日は最後にお知らせもあるので、ぜひ最後まで聞いてくださいね。
それでは本編に入っていきましょう。
テレビ時代のアイドルと複数の接点
今日は日本の女性アイドルを中心に、1970年代以降を見ていこうと思います。
あらゆる歌手やグループを並べるより、ファンが何にお金と時間を使えるようになったかを具体的な出来事で考えてみたいと思います。
よく、昔のアイドルは遠い存在で、今は近い存在になったと言われますよね。
それはわかりやすいのですが、少しだけ荒い見方でもあります。
昔にもコンサートへ通い、手紙を書き、周りのファンと一緒に応援する人はいました。
今も東京ドームのような大きな場所でしか会ったことがない人や、画面越しにだけ楽しむ人がいます。
変わったのは、全員が均等に近づいたということではなく、近づき方や参加の仕方が商品や制度として細かく用意されるようになったことだと思うんです。
誰がアイドルを選ぶのか、ファンが応援すると何が変わるのか、その時どこへお金が入るのか、この3つを追うとテレビ、CD、劇場、スマートフォンの役割が見えてきます。
そして今のアイドルを男性ファンだけで説明することもできません。
女性が憧れたり、服やメイクを参考にしたり、自分の表現を重ねたりする楽しみ方もある。
応援の理由が増えれば、売るものや届け方も変わるんですね。
それではまずこの番組から。
1971年10月、日本テレビでスター誕生が始まりました。
歌手を目指す人が出場し審査を受けるオーディション番組です。
森まさこさん、桜田純子さん、山口桃江さん、後には中森明さんなど、この番組を経て歌手になった人がいます。
歌手の完成した姿だけを見せるのではなく、まだ知られていない人がこれから選ばれていくところをテレビで見せる。
視聴者はデビュー後の1曲目より前からその人を知ることができるんですね。
この時点で、アイドルとファンの関係にはすでに成長を見守る楽しみがあるんです。
これは今のオーディション番組の原点と言えるかもしれません。
最近のアイドルは未完成を売るけど、昔は完成した人だけだったときれいに分けることはできません。
ただ、選ぶ権限の置き方は大切です。
オーディションに審査員がいて、その後には芸能事務所やレコード会社との仕事がある。
見ている側が好きになったとしても、その気持ちがそのままデビューや次の曲の中心を決める投票になるわけではありません。
テレビはまだ知らない歌手と全国の視聴者を出会わせる強い場所でした。
番組に出る機会を得ることが歌を知ってもらうための大きな入り口になる。
だから制作する側と芸能活動を支える側の関係がとても重要になるんですね。
民放の無料放送では、視聴者が歌手を見るたびに本人へ料金を払うわけではありません。
番組を支える広告の授業があり、その露出からレコードやコンサートなどへの関心が生まれる。
見る場所と買う場所が分かれていたんです。
ここで1980年代にデビューした松戸聖子さん、1982年にデビューした中森明さんを思い出してみてください。
歌だけでなく衣装、髪型、表情、テレビでの話し方まで魅力として記憶している方も多いのではないでしょうか。
同じ新曲でもレコードを聞く、テレビで歌う姿を見る、雑誌の写真や記事を読むという違う接点がありました。
音楽の魅力と人物の魅力を複数の媒体で受け取るんです。
雑誌明星の歴史を調べた研究でも、テレビと結びついてスターを扱う内容や読者層が変化していく過程が分析されています。
テレビを見れば情報は全部足りるということではなかったんですね。
違う形で、もっと知りたい人のための商品が別で存在していたわけです。
お金の窓口も分かれます。
レコードを買えばレコードの流通へ、雑誌を買えば出版の流通へ、
コンサートに行けば工業へ、
全部同じ歌手を好きな気持ちから生まれても、同じ財布へ直接入るわけではありません。
歌手を支える事務所、音楽を作る人、レコード会社、出版社、番組の作り手、
いろいろな人がその人の魅力を違う商品にして届けます。
アイドルが歌唱だけの職業ではないように見えるのは、こうした仕事の広がりとも関係していると思います。
さらに同じ研究では、1975年から明星の読者人気投票がアイドル人気投票と名前を変え、
その年に始まった日本テレビ音楽祭のトップアイドル賞と連動したことも紹介されています。
昔のファンも見るだけだったわけではない。
ただ好きな人に賞を届ける投票と、次の楽曲で歌う人を決める投票では動かすものが違います。
だからテレビで何度も見る人はたくさんの入り口を持てる。
一方、その入り口へ入れるかどうかをファンが直接変えられる範囲は限られていました。
その後、1985年にフジテレビで始まった夕焼けにゃんにゃんとおにゃんこクラブのように、
番組とグループの活動が密接に結びついた形も現れます。
歌う時だけでなく、番組にいる姿を繰り返し見ることでメンバーごとの印象が積み重なる。
少しずつ一人の大スターだけでなく、複数人から自分の好きな人を見つける楽しみがテレビの中でも見えやすくなっていきます。
ただしこの段階もテレビから離れたのではありません。
テレビが見せる人と見せ方を新しくしている。
次に出てくるモーニング娘。はそのテレビの中で購入する行動を物語の行方に結びつけました。
モーニング娘。と『愛の種』5万枚の物語
1997年、テレビ東京のアサヤンのオーディションきっかけにモーニング娘。が結成されます。
もともとはモーニング娘。を作るためのオーディションではなかったというのは有名な話です。
別のオーディションの最終候補の11人に残りながら選ばれなかった5人が別のチャンスを経てグループになったんですね。
そこで課された条件がインディーズのシングル愛の種を5日間で5万枚手売りすること。
それを達成すればメジャーデビューが決まるというものでした。
公式によると販売は1997年の11月3日、大阪のHMV震災バス店から始まり、福岡、札幌を経て11月30日、4日目の名古屋球場で5万枚を完売。
東京での発売を待たずに目標を達成しています。
普通CDの売上は発売した後に結果として出てきます。
でも愛の種ではあらかじめ目標があり、達成すると次の活動へ進める。
買う側にとっては良い曲だから買うことに加えて、この5人が先へ進む条件に参加する意味が生まれます。
CDを手に入れる行動が番組で見ている物語の続きへ繋がるんですね。
そして、まだ知られていない5人が全国の人にただCDを買ってくださいと言って回った話でもありません。
テレビがその人たちを知る機会と、なぜ今買うことが大事なのかという背景を先に作っていました。
テレビで家庭を知り、現場へ行って買い、その結果をまた番組で見届ける、この往復があったんですね。
全国へ届く放送の力と、その場所へ来た人が直接購入する行動が繋がっています。
どちらかがなくなると違う企画になりますよね。
放送だけなら応援していても行動に移さない人はいる。
現場だけなら最初に彼女たちを知ってもらう範囲が限られる。
この2つが組み合わさって購入が出来事になったんですね。
もちろん、買った人の理由は全部同じではありません。
曲が好きな人も、番組の続きが気になる人も、直接見て応援したくなった人もいる。
全員をデビューさせるために買った人と決めつける必要はありません。
ビジネスとして見ると、これは売り上げではなく、関心の強さを確かめる機会でもあります。
実際に時間を使って会場へ来てお金を払う人がいる。
その事実が次の活動を進める材料になります。
一方、5万枚という目標を達成したら、そこから先もずっと売れ続ける保証があるわけではありません。
デビュー後の曲を作り、歌やダンスを磨き、次も聴きたいと思ってもらえる仕事が必要です。
買うことを物語の条件にする仕掛けは強いです。
でもその先の作品や活動がなければ、1回の企画で終わってしまう。
モーニング娘。の歴史では、加入や卒業があり、グループの姿が変わりながら活動が続いていきます。
ここでも、1人の歌手だけを追う場合との違いがあります。
グループの名前と曲を受け継ぎながら、今いるメンバーがその時代の姿を見せる。
長く見ている人には企画の楽しみがあり、新しく入った人には初めての出会いがある。
ただ、変化すれば全員がそのまま応援し続けるというわけではありません。
好きなメンバーが卒業して離れる人もいるでしょうし、新しいメンバーをきっかけに入る人もいる。
個人への愛着とグループへの愛着が重なるところに、継続の難しさと強さがあります。
愛の種の5万枚はファンが財布を開くことで、未来に関われるというわかりやすい出来事でした。
この感覚は次のAKB48を見る時にかなり手がかりになります。
AKB48の劇場と総選挙
AKB48は2005年12月8日、秋葉原の専用劇場で公演を始めました。
コンセプトは、会いに行けるアイドルです。
全国に知られてから大きなコンサートを開く。
その順序とは別に、まず公演を見られる場所を持ち、そこへ繰り返し来てもらうことから始めたんですね。
公式サイトには、初演の観客は7人だったと記されています。
また、2020年の公式案内では、劇場の本来の店員は250人と説明されています。
テレビの全国放送と比べると、1回で届けられる人数は小さい。
でも同じ場所に足を運んで、変化を見られるという別の強さがあります。
テレビではカメラが映す人を見ることになりますが、劇場では観客が自分で誰を見るかを選べます。
歌っている中心の人だけでなく、横で踊る人、表情が変わった人に気づくこともある。
今日はあの人が良かった。前に見た時より歌が変わった。
そうした発見が次に行く理由になり得るんですね。
全国的に有名かどうかより、自分が見つけたという感覚が育つ場所なんです。
ただ、小さな劇場だけで大勢の人に一度に届けるには限界があります。
店員を超えていれるわけにはいかず、出演する人の体と時間にも限りがあるんです。
近さを大切にするほど、同時に売れる数をどこまで増やせるかという問題にぶつかるんですね。
そこで活動は劇場だけに収まりません。
CD、テレビ、コンサート、イベントと入り口が増えていく。
その中で特に注目を集めたのが2009年に始まった選抜総選挙です。
これは地上波で生中継もされて一大イベントになりましたよね。
しかもこれは政治の選挙ではなく、次のシングルを表に立って歌う選抜メンバーやカップリング曲を歌うメンバーをファンの投票によって決める企画です。
それが地上波で生放送するってすごい時代でしたよね。
投票数と握手会が生む参加の仕組み
そして選抜というのは、多くのメンバーの中からその楽曲を表に立って歌う人たちを選ぶこと。
中心のポジションはセンターと呼ばれています。
2014年の総選挙では渡辺真由さんが159,854票で1位になりました。
この数は159,854人という意味ではなく、集まった票の数です。
なぜ人数と票を分ける必要があるのでしょうか。
投票できる権利が商品やサービスに結びついていたからです。
2014年の公式案内にはCDに入っている投票用のシリアルナンバーに加えて、公式ファンクラブやモバイル会員、映像配信のツキノ会員など複数の投票経路が並んでいます。
CDだけから投票したわけではないんですね。
だから票の数にCDの定価をかけて、これが総選挙の売上だと計算することはできないんです。
投票へつながる支出はあっても、入り口の料金を支払う先も投票以外に得るサービスも違うからです。
それでもこの制度で何が売られていたかわかります。
音楽や会員サービスと一緒に、自分が押す人の出番や位置を動かすための参加機会が用意されていたんです。
愛の種の手売りでは、5人がデビューできるかを支える構図でした。
この総選挙では複数の人の中で誰を押し上げるかという比較と順位が入ってくる。
応援の結果が他のメンバーとの関係の中で数値として見えるようになります。
この違いは大きいですよね。
同じ1枚を買うことでも作品を手に入れることと押す人への1票を加えることでは気持ちの向きが変わります。
さらに順位が発表される日そのものが見るための出来事にもなります。
結果を知りたい。本人が何を話すのが聞きたい。そのために投票していない人も関心を持つ。
販売、参加、結果発表が別々ではなく繋がった企画になるんですね。
投票に参加した人には自分もその場面を作ったという感覚が生まれうるんですね。
一方見ている人は次は自分も何かしたいと思う入り口ができます。
ただし順位はその制度で集まった票の結果です。
歌の上手さ、人としての価値、全ての視聴者の好みを一つに測った数字ではありません。
制度が何を数えるのかを知っておくとすごい数字に驚きながらもその人を数字だけで見ずに済みます。
総選挙が過去の大きな話題になっても、会う機会を商品と結びつける仕組みは今も別の形で続いています。
2026年2月、AKB48はシングル名残桜の発売を記念した劇場での個別握手会を案内しました。
開催は発売日当日の2月25日。この会の対象は税込1200円の通常版です。
会場でCDを1枚買うと希望メンバーの参加権を1枚受け取り、1枚で1回の握手会に参加できるという内容でした。
ここでは抽選の当選確率を上げる商品と指定された参加権を受けている商品を分けて考える必要があります。
どのイベントも同じルールではありません。
この会は販売する部や枚数に限りがあり、参加するメンバーや時間の条件も決められていました。
聞き手からすると同じCDをもう1枚持つ意味が音源とは別のところに生まれているんですね。
権の枚数に応じた参加機会が増えるからです。
ただこの案内では1回に複数枚購入した場合はその分の権をまとめて使うというルールでした。
自由に何度も並び直せると考えるのも正確ではありません。
そして参加権で買えるのは案内された条件の中でのイベントの参加です。
ファンとアイドルの距離が近くなりすぎることでアイドル本人の私生活に踏み込むような質問をしたり、
これだけお金を使ったんだからと考え出すファンも一部いるようなんですね。
どんなにお金を使っても相手の私生活や気持ちを自由にできる権利がつくわけではありません。
当たり前のようですが距離が近くなるほどここを明確にすることが大事になると思います。
ちなみにこの1枚買うごとに参加できる権利が1つ増える仕組みの裏側については以前ノートで詳しく書いたことがあります。
2026年8月、キューティーストリートの武道館公園で会場や近くの施設にCDが捨てられているのが見つかり、その日のうちに販売方法が変わるという出来事がありました。
CDが音楽を聴くためのものというより、特典や抽選の権利を入れる容器になった時、何が起きるのか。
気になった方は概要欄にリンクを貼っておくのでぜひ読んでみてください。
そしてこのイベントの公式案内を読むと、短い時間で進行すること、アクションの仕方、手荷物、暴言や撮影の禁止など細かいルールがあります。
これらは近く会うための障害というより、多くの人が同じように参加し、メンバーとファンの両方を守るための運営なんですね。
遠くから見るコンサートと順番に対面するイベントでは必要な準備が全然違います。
一人が長く滞在すれば次の人の時間に影響する。
会う回数を増やせても本人の1日は増やせません。
近さを売る商売には人の時間がそのまま上限になるという特徴があります。
ここで劇場と総選挙と握手会を並べてみると、同じ応援でもできることが違うとわかります。
劇場では同じ空間で歌や成長を見る。
総選挙では選ばれ方に参加する。
握手会では短い時間でも直接会って言葉を交わす。
それぞれに価値があり、同じものの高い版と安い版というだけではありません。
ファンの中には歌と踊りが好きだから公演だけ行く人もいるでしょうし、会話は緊張するから映像を楽しむ人もいる。
好きな気持ちの強さをお金を払う方法の違いで順位付けする必要はないはずです。
FRUITS ZIPPERとSNS時代の参加
運営側にもどこへ力を置くかという選択があります。
背面のイベントは本人を好きな人にとっては魅力的です。
でも同じメンバーが全員と長く会うことには限界があります。
ではまだそのグループを知らない人へどう広げるか。
その人たちが楽しめる曲や映像を作って、まず広く触れてもらう。
その役割を強く担うようになったのがSNSです。
ただ会える仕組みからSNSへ完全に後退したわけではありません。
2026年にも対面イベントの案内があるように古い接点と新しい接点は同時に存在しています。
画面で知り会場で好きになることもあれば会場で出会って日々の投稿を追うこともある。
距離は近いか遠いかの一本の物差しだけでは測れないんですね。
SNSの時代のアイドルを考えるためにフルーツジッパーを見てみましょう。
2022年に結成した7人組のグループです。
名前は知らなくても、私の一番可愛いところという曲はSNSで聞いたことがある方も多いと思います。
この曲がきっかけで一気に知られるようになりました。
プロデュースしているのは木村美沙さん。
読者モデルを経て自身もアイドルグループムスビズムのリーダーだった人です。
木村さんはインタビューでこう話しています。
コロナ禍でライブが思うようにできなかった。だからこそ今までのアイドルファンではない人に届けたい。
そこでこの曲は最初からSNSで広がることを意識して作ったと。
しかもこの曲がうまくいってからは歌割りや振付を決める段階でスマホの画面でどう撮れば映えるかまで考えるようになったそうです。
曲ができてからバズるのを待つのではない。スマホの画面に収まる姿まで作る時点で決めているんですね。
ここがテレビとの大きな違いです。
テレビの時代、私たちは番組が流す映像を見る側でした。
でもSNSでは曲を聴いた人がその曲を使って自分で踊って動画を投稿できます。
例えば学校の友達が踊っている動画を見てこの曲なんだろうと思う。
そこからグループを知る。アイドル本人ではなくファンや一般の人の動画が入り口になるんですね。
モーニング娘。の時代はCDを買うことが応援でした。
AKBでは投票することが応援になった。
そしてSNSでは曲を使って踊ることや動画をシェアすることが応援になります。
お金を払わなくても参加できるようになったわけです。
ただテレビが終わってSNSの時代になったというのは言い過ぎですね。
SNSで知ったグループをテレビで見て名前を覚えることもある。
逆にテレビで気になって動画を探すこともある。両方が行ったり来たりしてるんです。
では真似したくなる曲には何が必要なのか。
短い同じ言葉を繰り返すというだけではないと思います。
このフレーズ言ってみたい。
友達と一緒に踊りたい。
あの服真似したい。
聞いた人が自分の毎日に持ち込みたくなる部分があるかどうか。
そこが大事なんですね。
もう一つ木村さんが大切にしているのがニュー可愛いという考え方です。
メンバーの個性を一つに揃えるのではなく、違いをそのまま肯定する。
例えばかっこいい雰囲気のメンバーがいたとして、その人が無理に可愛く振る舞う必要はない。
その人らしさを残したままの可愛いがあっていいという考え方です。
だからファンもただ遠くから見るだけでなく、この子みたいなメイクをしてみたいと自分に重ねられる。
男性が女性アイドルを応援するという形だけでは説明できない人気の理由がここにあります。
とはいえ、SNSでたくさん見られればそれでビジネスが成り立つわけではありません。
スマホで数秒の動画を見ることと、実際にライブ会場へ行くことは全く別のことだからです。
フルーツジッパーは、2026年2月1日、初めての東京ドーム単独公演を開きました。
タワーリコードのレポートによると、約5万人が集まり、ライブは約3時間。
チケットは指定席が12,000円。
さらにファンクラブ選考なので、指定席を買った人の中から抽選で1万7,500円のいい席にアップグレードできる仕組みもありました。
数秒の動画なら、今すぐタダで見られます。
でもドーム公演に行くには、1万円以上払って予定を分けて遠くまで足を運ぶ。
ここには大きな段差があります。
その段差を越えてもらうには、あの1曲を知っているだけでは足りません。
他の曲を聴きたい、メンバーに会いたい、その日をみんなと一緒に過ごしたい。
そう思ってもらえる関係を時間をかけて育てる必要があるんです。
応援をファンの責任にしないために
ここまで昭和の時代から、モーニング娘。AKB48、そしてフルーツジッパーまで見てきました。
改めて振り返ると、昔は歌を売っていたのに、今は歌以外のものを売っているという話ではないんですよね。
松田聖子さんや中森明菜さんの時代も、歌だけでなく衣装や髪型、テレビでの姿、雑誌の記事まで全部ひっくるめて好きになっていました。
変わったのはファンにできることです。
テレビの前で見守る時代があって、モーニング娘。ではCDを書くことでデビューの物語に関われるようになった。
AKBでは劇場で会う、握手する、投票するというように参加の仕方が細かく分かれたんですね。
そしてSNSでは、自分で踊って広める側にも回れるようになりました。
つまり女性アイドルの歴史は、ファンにどんな役割を渡してきたかの歴史でもあるんです。
ここで私が気になるのは、「あなたの応援で未来が変わる。」という言葉です。
この言葉はすごく楽しいんですよね。
無名の頃から応援していた子たちが大きな舞台に立ったら本当に嬉しい。
自分の投稿がきっかけで友達がファンになったらそれも楽しい。
でも裏返すとちょっと重くもなるんですよね。
もっと買わなかったから負けた。もっと広めなかったから届かなかった。
そんな風にファン一人一人が責任を背負い始めたら、楽しいはずの推し活が苦しくなってしまいます。
実際最近のXのコメントなどで、こういった類の言葉も見受けられました。
短くなりすぎて、自分が押さないといけないという風に感じている方もいるんだなと思ったこともありました。
売り方を考えるのも宣伝するのも、本来は会社や作り手の仕事です。
ファンが推しの未来を全部背負う必要はないんですよね。
だけどその境界線がだんだん曖昧になってきているのかもしれないなと最近感じることもありました。
私は推し活をビジネスにしている立場なので、ここははっきり言いたいんですが、
一度にたくさん買ってもらうことと、何年も安心して好きでいてもらうことは同じじゃないんですよね。
会える回数を増やすなら、本人とスタッフの時間が必要になる。
投票するなら、それで何が決まるのかをはっきりさせる必要がある。
SNSで広げたいなら、ファンがやらされているのではなく、楽しいからやっていると思える余地が必要です。
距離は近ければ近いほどいいというものではないんですね。
何にお金を払って何が手に入るのかが分かること、そして推しの自由と自分の生活がちゃんと残ること。
それが長く楽しめるちょうどいい近さなんじゃないかなと思います。
一瞬だけ大きく盛り上げるより、ファンも推しも無理なく長く続けられる仕組みを作ること。
推し活ビジネスで本当に大事なのはそこだと私は思っています。
時代が変わって応援の形は変わっても、どれもその人の毎日の中で大切なものですよね。
方法は変わっても誰かの表現に自分の時間を重ねるという気持ちはきっと変わっていないと思います。
渋谷イベントのお知らせ
そう思うと自分が知らない世代のアイドルやそのファンのことも少し身近に感じられる気がします。
さて本日の推し活未来研究所いかがでしたか?
ここで冒頭にお話ししていたお知らせです。
10月22日の木曜日、夜7時から渋谷でイベントに登壇することになりました。
こちらは完全オフラインリアル開催のみです。
テーマは推し活ビジネスをデザインで紐解く会。
推し活ってものすごく大きな市場になりましたよね。
でもその一方で、昨日まで大好きだった人がある日いきなりアンチになり、一つの発言で炎上したり、気づいたら静かに離れていっていたり。
普通の買い物ではまず起きないようなことが推し活ではよく起きるんです。
なぜ人はそこまで熱狂するのか。
そしてなぜその好きが嫌いに変わってしまうのか。
今回は株式会社アプリッツでサービスデザイナーをされている藤崎さんと一緒にこの熱狂、炎上、罹犯をユーザー体験、つまりデザインの視点から読み解いていきます。
私が推し活とは何なのか、最新の推し活市場の動きをお話しして、藤崎さんがそれをデザインから見るとこう考えられるんじゃないかと返してくれるような形になるんじゃないかなと思っています。
現場の話とデザインの見方を行ったり来たりする会になりそうです。
リアル開催だけなので、普段はお話できないようなこともちょっと踏み込めるんじゃないかなと思っています。
私もこれすごく楽しみにしていて、会場は渋谷駅直結の渋谷桜ステージです。
終わった後には懇親会もあります。そしてなんと参加費も懇親会費も無料です。
ぜひお仕事帰りにお立ち寄りください。
推し活のお仕事をしている方はもちろん、自分のサービスにファンを作りたいと考えている方にもきっとヒントがあると思います。
お申し込みのリンクはノートと概要欄に貼っておきますね。
会場でリスナーの皆さんに直接お会いできたら本当に嬉しいです。
ぜひ懇親会でお酒でも飲みながらいろいろお話ししましょう。
それでは今日の推し活未来研究所はこの辺で。最後までお聞きいただきありがとうございました。
それではまた次回お会いしましょう。
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