こんにちは、株式会社KAZAORIの矢澤彩乃です。 推し活未来研究所へようこそ。
この番組では、ますます盛り上がりを見せる推し活をビジネスの視点から、 そして時には私自身の経験も交えながら、楽しくそして深く紐解いていきます。
さて、今日のテーマはこちら。 ジャンプを読まなくなっても、なぜ漫画は売れる? 653万部から初回無料への大転換です。
今日は本題の前に一言お礼を。 先日、株式会社アピリッツさんのWBCカレッジで、推し活をサービス作りの視点から考える勉強会に登壇しました。
遊びに来てくださった皆さん、本当にありがとうございました。 実はそこでご一緒したサービスデザイナーの藤崎さんも、今日お話しする少年ジャンププラスを取り上げていたんです。
今回の会は以前から準備していたので、全くの偶然で本当にびっくりしました。 勉強会に参加された方は、当日のお話ともつなげながら楽しんでいただけると思います。
さて、皆さんは漫画好きですか? 私は紙で読むのが好きなんですが、最近はiPadでもよく読めようになりました。
昔は毎週月曜日にコンビニや駅の売店で、週刊少年ジャンプを買って目当ての連載を読み終わったら、他の漫画も順番に読んでいく。
そんな習慣があった方も多いんじゃないでしょうか。 私の学生の頃は、必ず月曜日にジャンプを持ってくる男子がいましたね。
そのジャンプは、1990年代の半ばには、一つの号で653万部も発行されていた雑誌なんです。
ところが、日本雑誌協会によると、2026年4月から6月に発売された紙のジャンプは、一号あたりの平均印刷部数が98万5千部となり、100万部を下回りました。
電子版の部数は含まれていません。
では、漫画そのものが売れなくなったのかというと、そうとも言い切れないんですよね。
国内のコミック市場では、今や売り上げの約76%が電子です。
少年ジャンププラスというアプリでは、連載中のオリジナル作品を1回目は全話無料で読めるようになっています。
紙の雑誌は売れにくくなり、アプリでは無料で読める。
それなのに、漫画の市場全体は前の年から大きくは減っていないんです。
さて、そのお金は一体どこから生まれているのでしょうか?
本題に入る前に、今回初めて聞いてくださる方もいらっしゃると思うので、少しだけ自己紹介させてください。
私は普段、推し活をテーマにしたビジネスをしていまして、例えばファンの皆さんがイベントを一緒に盛り上げられるプクートというサービスなどを提供しています。
それと同時に、ベーシストとしてアーティストさんのバックバンドでベースを弾かせてもらっていて、いわば押される側の空気感も肌で感じているんですよね。
この番組では、そんな押す側と押される側、両方の視点を持つ私だからこそ見えてくる推し活の面白さや可能性を皆さんと一緒に探っていきたいなと思って始めました。
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それでは本題に入っていきます。
まず、今の現状の数字を整理しておきます。
出版科学研究所によると、2025年の国内の紙と電子を合わせたコミック市場は推定販売金額で6,925億円でした。
この数字は国内のコミック販売額で、海外販売や原画展とかグッズの売り上げなどは含まれていません。
これは前年から実は1.7%減っている数字なんです。
電子は伸びている一方、紙の減少を補いきれず全体は少し縮んだ年だったということですね。
そのうち電子は5,273億円で、単行本と漫画雑誌、つまり紙で出版されたものを両方合わせた金額よりも大きくなっているんです。
毎週コンビニで雑誌を買う代わりにスマートフォンのアプリで1話ずつ読んだり、電子書店でオンラインの単行本を買ったりする人が増えていると見られているんですね。
漫画を読む人がいなくなったというより、お金を払う詐欺が紙の雑誌からスマートフォンへ移ってきているんじゃないかなと思います。
今日は漫画がどこでお金を生んできたのかを5つの場面に分けて見ていきたいと思います。
まずは653万部を発行していた頃のジャンプが、新人の作品をどう読ませていたのか。
次に連載が始まる前の作家に、編集者がどれだけ時間とお金をかけているのか。
そこから少年ジャンププラスの初回全話無料と、海外に日本と同じ日に最新話を届ける就営者の漫画プラスに進みます。
最後はすでに読んだ漫画の原画を、わざわざ入場料を払って見に行く原画展のお話です。
今回色々調べてみて、私が一番面白いと思ったのは、まだ誰も知らない新人の漫画をどうやって読んでもらい推しにまでなってもらうかという部分でした。
今では誰もが知っている人気作も、連載の第1話が載った時点では売れるかどうか誰にも分かりませんでした。
そんな段階の作家に誰が時間とお金を使っているのか、私自身は漫画業界の人間ではなく、今日はあくまで外から調べてみた立場で皆さんと一緒に順番に見ていけたらと思います。
まず、戦後のお話からしていきます。戦後の漫画では単行本を買うだけでなく、貸本屋で借りて読む文化から広がりました。
一冊が何人にも読まれるので、読者の人数と売れた冊数は同じではありません。
その一方で、手元において何度も読みたい人もいる。その都度借りて読むのか、本そのものを持つのかという違いは、今の漫画アプリにもつながっていますね。
1959年には、週刊少年マガジンと週刊少年サンデーが創刊されました。
月ごとではなく、毎週新しい号が出る。物語に触れる回数が増えるだけでなく、来週の発売日が待ち遠しいという楽しみが毎週の生活の中に生まれていきます。
1968年には、終焉写の少年ジャンプが創刊され、翌年には週刊になります。
後に、1995年、三四合併号は発行部数653万部を記録しました。
そんな巨大な雑誌が売っていたものは何だったのでしょうか。もちろんまずは面白い漫画です。
ただ、一冊の中に複数の作品が入っていること自体にも意味がありました。
例えば、好きなバトル漫画を目当てに買った人が、その前後に載っているスポーツ漫画やギャグ漫画も読む。
新連載をまだ好きでなくても型雑誌の中にあるから、少し読んでみる。
出版社は人気作品に集まった読者へ、次の作品を紹介できるんですね。
読者にとっては、新人の作品だけを買って失敗する心配をあまりしなくてよかったんですね。
一方、単行本は特定の作品に絞ってまとめて読める商品です。
雑誌で続きを追っていた人が最初から読み返すために買う。
友人から勧められた人が一巻から追いかけるために買う。
雑誌で読んだ漫画を単行本でもう一度買う理由がここにあるんですね。
単行本を持つと、途中で出てきた人物の名前を前の勘で確かめたり、伏線に気づいて読み返したりできますよね。
物語が長くなるほど、最初から手元に置きたい気持ちも生まれます。
ただ、連載が長いことは常に良いことではありません。
途中から入る人には関数の多さや、読む時間が負担になります。
すでに楽しんでいる人にとっては長く続くことが喜びでも、新しい人には今から追いつけないかもしれないと感じられるんです。
ここで雑誌の裏側へ目を移します。
毎週のページを埋めるだけなら、知られている作家だけを集めたくなりそうですよね。
ところが、それでは次の世代の作品が生まれにくい。
ジャンプが重視してきたのは、新人を起用することと、読者の反応を知ることでした。
2023年のジャンプの創刊55周年にあたって、編集長は周辺社の取材で、新人主義と読者アンケートの重要性を説明しています。
私が大事だなと感じたのは、アンケートが読者全員の答えだからというよりも、編集部の思い込みだけで決めずに、届いた反応を見ながら作品を考える仕組みがあることでした。
もちろん反応を集めれば、次のヒットが自動的に決まるわけではありません。
今週わかりやすく盛り上がった作品と、後で大きく効いてくる物語は、同じ評価軸では測りきれないんですね。
アンケートの結果を見た上で、この作品がこの先どう面白くなるかを判断するのは、最後は編集者や作家の仕事になりそうです。
漫画というと、一人の作家が机に向かい、ひらめきから名作を生む姿を思い浮かべるかもしれません。
もちろん作者の才能は中心ですが、連載を続けるためには、面白さを一緒に考える相手や、読者へ届くまでの仕事も必要になります。
ここで面白い比較があります。
2025年の経団連の対談で、週刊少年ジャンプと週刊少年マガジンの編集長経験者が、編集部の育て方の違いを話しています。
ジャンプでは、漫画作品の担当は基本的に一人、マガジンでは複数の担当がつくのが基本で、新人編集者はまず先輩が立ち上げた作品のサブ担当として入るというんです。
同じ日本の大手少年漫画誌でも、作品を支えるチームの組み方が違う。
どちらが正解という話ではなく、作家と編集者の関係をどう作るかには複数の方法があるんですね。
一対一なら対話の責任と持続性を持たせやすい。
複数なら違う角度の見方や目線、経験を持ち寄りやすいのだと思います。
編集者って具体的には見えにくい仕事ですよね。
集英社の職種紹介でも、新人の発掘、作家の取材の手配、単行本の制作、映像化や商品の監修などが並んでいます。
作家と一緒に作品を作る仕事と、その作品が単行本やアニメ、グッズになる時の仕事の両方になってるんですね。
例えば、読者に伝えたい感情があるのに、そこへつくまでの説明が長すぎる。
作者がよく知っている世界だからこそ、初めて読む人にはわからない部分がある。
そうした時、まだ何も知らない読者の立場で作品を読んで返す人がいる。
この往復にも時間がかかります。
経済的には、その時間はヒットする前に使う費用になるんです。
完成した本が売れるかどうかわからないうちから、作家と編集者が何度も話し合う。
書き直しもあれば連載にならない企画もある。
雑誌や出版社には売れた作品だけでなく、こうした試行錯誤を続けられるだけのお金と時間の余裕も必要なのかもしれません。
では、デジタルで無料公開する作品では、書く人も無料で働くのでしょうか?
ここはどうやら違うようです。
少年ジャンププラスが2025年の新人募集で公開した条件では、
モノクロの読切は1ページ9000円以上、連載は1ページ12000円以上の原稿料と案内されていました。
過去の実績も踏まえて相談するという条件です。
これはその募集で示された条件で、漫画業界全体の統一料金ではありません。
また、原稿料がそのまま作者の手取り利益になるわけでもないですよね。
作業を手伝ってくれる人への支払い、機材、資料、仕事場の費用などがあればそこから出ていきます。
だから1ページの金額だけで漫画家の暮らしを想像するのは難しそうですね。
でもこれはもっとバンドマンとしてなんとなく生活は苦しいだろうなぁというイメージはできますね。
つまり何が言いたいかというと、
読者がその場でお金を払わない作品にも作家への制作の対価が必要で、公開する側はまだ売れるかわからない作品へ先に費用を使っているんです。
さらに同じ募集では、連載中のオリジナル作品に入る広告売り上げを作家へ還元すると説明しています。
原稿を書いたことへの対価とは別に、読まれる場で生まれる収入にも関わる。
単行本の売上げだけを待つ形とは収入の入り口が違いますね。
ただし、広告で誰もが十分に稼げるという意味ではありません。
読者がどれだけ来るか、どんな広告が表示されるかで収入は変わりますね。
安定した制作費と人気が出た時の分け前をどう両立させるかは難しいところなのだろうと思います。
こうしてみると、出版のデジタル化は印刷費がなくなっただけの変化ではなさそうです。
作る段階で原稿料を払い、公開してからは広告や単行本で回収するというお金の流れに変わってきているんですね。
少年ジャンププラスは2014年に始まりました。
スパイファミリーなどのオリジナル連載で知られるアプリとウェブの媒体です。
スパイファミリーはスパイの男性が任務のため家族を作るところから始まり、妻にも娘にも秘密があるという作品ですね。
スパイファミリー私もすごくハマって、アーニャのグッズをたくさん持ってます。
そして大きな転換があったのは2019年です。
アプリ版で連載中のオリジナル作品を初回は全話無料で読める機能が導入されました。
これ1回目だけ無料っていうのがポイントで、全作品が永久に何度も無料という意味ではありません。
これを単なる大幅値下げとして見てしまうと、狙いが見えにくいのかもしれません。
連載漫画は最新話をみんなで同じ時期に読むという楽しみがあるんです。
学生の頃に雑誌のジャンプを読んで、今週の読んだとか話せるあの感覚ですね。
今週のあの場面はどういう意味だったのか、次に誰が動くのか、他の人と予想を話したり考察を話し合ったりする。
これは結末を知ってから読む楽しみとは別のものです。
ところが話題になった作品を途中から知った時、過去の話を読めなければその会話に入れません。
毎日少しずつ無料で読める場合でも、最新話に追いつく頃には話題が先へ進んでいるかもしれない。
初回全話無料は過去の話をタダにするだけでなく、話題になっているうちに最新話まで追い続けるようにする仕組みなんですね。
周囲社の10周年記事でも、できるだけ多くの人に最新話へ追いついてきて楽しんでほしいという狙いが説明されています。
読者を増やすことと同じ時期に読む人を増やすことは少し違うんですね。
私はこの校舎の方に連載ならではの楽しさを残そうとする工夫を感じました。
では、無料で読めるなら単行本が売れなくなるのでは?と感じますよね。
ただ、無料で読むことと単行本を買うことは同じ体験ではなさそうなんです。
更新日に一度だけ読む人と、まとめて読み返したい人では求めているものが違いますよね。
画面で出会った作品を本棚へ並びたい人もいる。作者の絵を大きな紙で見たい。貸せる形で持ちたいという人もいるでしょう。
同じ物語でも、読む自由度や、絵元に置く意味が違うんです。
だからといって、無料で大勢集めれば必ず有料の商品が売れるという法則ではありません。
読み返したいと思われる作品か、電子で買いやすい作品か、紙の本を欲しい人へ届けられるか、無料での出会いの先に何を用意するかで結果は変わります。
アプリで競争する相手も漫画だけではありません。同じスマートフォンに動画、ゲーム、SNSが入ってますよね。
アプリの中へ来てもらっても最初の数画面で関心が薄れるかもしれない。作品の数を増やせばそのまま発見される数も増えるわけではないんですね。
ここで雑誌の強みが別の形で戻ってきます。この場所を開くと知らなかった面白い漫画があるという信頼感です。
最初は人気作品を目当てに来た人が読み切りや新連載にも手を伸ばす。雑誌がアプリに変わっても人気作を読みに来た人に新人の作品を読んでもらう工夫はずっと続いてるんですね。
ページ数や更新頻度にも違いがあります。先ほどのジャンププラスの募集案内では、週間や各週間を基本にしながら月間や日間なども相談でき、
1話のページ数も作品に合わせられるとしています。分厚い一冊を毎週同じ日に作る場合と比べて作品ごとにリズムを選べる余地があるわけです。
ただ更新日やページ数が作品ごとにバラバラだと、読者は次の話をいつ読めるのか忘れてしまうかもしれません。
毎週の雑誌に自動的に載るわけではないので、次の更新を知らせたり、前の話を思い出してもらったりする工夫も必要になりそうです。
次に漫画の話を海外へ広げたいと思います。 今では日本のキャラクターを知る人が世界中にいますよね。
でもキャラクターを知っていることと原作漫画を読んでいることは同じではありません。 海外でアニメを見て好きになっても原作が自分の言葉で変えない。
翻訳版の最新刊が話題から大きく遅れている。 どこで正規版を読めるのかがわからない。
こうした距離があるとアニメの人気がそのまま漫画の売り上げに変わるわけではないんですよね。
2019年に始まった周詠者の漫画プラスというアプリがあります。 最大の特徴は日本で発売公開される漫画の最新話を
海外のファンもほぼ同時に翻訳された状態で読めること。 日本中国韓国を除く地域へ漫画を他言語で届けるサービスなんです。
対象作品の最新話を日本と同時に配信することで海外の読者も日本の読者と同じタイミングで話題に加われるようになりました。
日本だけでなく中国韓国も配信対象外なんですよね。 国によって漫画の届き方が異なる点も興味深いなと思いました。
そして漫画プラスの面白い具体例がカグラバチです。 刀を巡る戦いを描いている
岡園武さんの作品で、周詠者の担当者は海外での話題が先行し、 文脈出版の良い条件のオファーにもつながったと説明しています。
ここで大事なのは、国内の紙の売上が固まってから海外へ売るという流れ以外の順番があることです。
先にデジタルで読者の反応が見えて、それを踏まえて現地で本を出したい出版社が動く。 海外の反応が文脈版を作る判断材料になるんですね。
個別の契約金や利益率までは公表されていませんが、作品を知ってもらう順番が変わった例として興味深いと思います。
そして同時翻訳は、AIの時代になってもボタン一つで終わる仕事ではありません。
編集長のインタビューでは、原稿が完成すると各言語の翻訳へ回し、交換音などには近くへ訳を添えて対応することが説明されています。
ゆっくり時間をかけて作る翻訳単行本と更新日に間に合わせる連載版では、作業の条件が違うんだそうです。
漫画は文章だけ読めばいいものではありません。 短い吹き出しに言葉を収める、人物の口調がブレないようにする、まだ正体が明かされていない名前を後で困らないように訳す。
そうした判断を連載の速度に合わせて行っているんですね。 漫画プラスにはアプリで英語版作品を読む月額プランもあります。
2026年10月時点でアメリカのアプリストアに表示されている通常料金では、連載中の作品を中心に読むプランが月1.99ドル、完結作品も含むプランが月4.99ドルなんです。
仮に1ドル158円で計算すると月315円くらいのプランと月790円くらいのプランなんですよ。
地域や対象作品の条件があるため、世界中で同じ値段で全て読めるというわけではないんですが、ざっくりこのくらいの価格帯です。
これ私は思っていたよりもすごい安いなぁと思うんですが、皆さんはどう思いますか? ここにも今を一緒に追うことと過去の作品をいつでも読めることの分け方が現れていますよね。
連載中は追っていた人が後からもう一度読みたい、新しく入った人が評判の完結作品をまとめて読みたい、その違いをサービスの料金にも反映してるんですね。
そして世界を相手に探しているのは、書いてだけではないんです。 2022年に始まった漫画プラスクリエイターズという自分の漫画作品を投稿できるサービスで、世界中の人が英語やスペイン語で漫画を投稿できる
んです。
2026年9月までに投稿された作品は34,000を超えました。 そこで月齢賞の金賞に選ばれたのが、21歳のスペイン人作家オーミアンさんの読み切り
夏の嵐が来るです。賞金は100万円で、 2026年10月には日本語版が少年ジャンププラスで配信されました。
この投稿サービスの作品がジャンププラスに乗るのは3回目で、 スペイン語で投稿された作品では初めてだそうです。
こうしてみると、日本から海外へ出ていくのは完成した漫画だけではなく、 編集者が作家と一緒に作品を作っていく日本式の作り方そのものなのかもしれません。
最後は原画展の話です。 原画というのは漫画家が書いた印刷される前の元の絵や原稿のことです。
書かれている絵そのものは単行本やスマートフォンでも見られますよね。 それなのに、わざわざ会場まで出かけて入場料を払ってまで見に行く人が大勢いるんです。
漫画を無料で読める場所が増えた今、なぜそこにお金を払うのか考えてみたいと思います。
ここ1,2年を見ても人気漫画の展覧会は全国で続いています。 例えばジャンプで連載されたアクタミゲゲさんの呪術会戦展は2024年の東京渋谷を最初の会場に全国を回り30万人以上が訪れたとされています。
2026年12月からは最後の会場として新宿で完結展も予定されているんです。
同じくジャンプ作品の堀越光平さんの僕のヒーローアカデミア原画展も2025年の東京会場ではチケットが全日程売り切れたと報じられました。
ここで面白いのが、呪術会戦はデジタルで描かれた作品だということです。渋谷の会場では小回りやセリフ、画面構成を大まかに描いたネームが4400ページ以上、下書きが3000ページ以上プロジェクターで写し出さ
れていました。
紙の原稿が残りにくいデジタルの作品でも完成するまでの過程を見せることでお金を払って見に行く展覧会が成り立っているんですね。
2024年には東京六本木の国立新美術館でクランプ展も開かれました。
クランプはカードキャプター桜なので知られる女性4人の創作集団で、この展覧会には国内の会場を合わせて約35万人が訪れたとされています。
東京会場の当日券は一般2100円でしたが、開幕の特別観覧日には音声ガイドや特典が付いた3500円のチケットもありました。
同じ展示でも、いつ何と一緒に見るかで値段を分けているわけです。
実は私もこういう原画展とか行くのすごく好きで、過去には六本木で行われていたセーラームーン展やベルバラ展なんかも行ったことがあります。
先日は松本玲司さんの展覧会にも行ってきました。
銀河鉄道39の50周年プロジェクトとして、2025年から全国を回っている松本玲司展創作の旅路です。
私が行ったのは埼玉県所沢市にある門川武蔵のミュージアムの会場で、門川の複合施設所沢桜たんの中にある図書館と美術館と博物館が一つになったような施設なんですね。
会場には300点を超える原画や資料が並んでいて、松本さんが実際に使っていた画材や愛用していたものがたくさん展示されていました。
私が一番印象に残ったのは、会場というか空間の見せ方でした。
展示は松本さんが14歳の頃に描いた作品から始まって、上京して少女漫画を描いた時期、宇宙戦艦ヤマトの漫画版へと進み、その後銀河鉄道39第1話の原画が出てきます。
一人の漫画家がどんな順番で作品を生み出してきたのかを会場を歩きながらたどれる。本を一冊読むのとは違う体験だなぁと感じました。
特に後半の宇宙がテーマの作品になってくると、松本玲司さんの独特の宇宙の描き方などを感じることができて、とても引き込まれました。
ここで体験できるのは、作家の先生が実際に描いた線やニュアンスを自分の目で見る時間です。
今は古くなってボロボロになっている原稿や、ページの印刷では見落としていた書き込み、色の違い、原稿の大きさなど、漫画を読んでいる時には気に留めなかった作家の手仕事をしっかりじっくり見られるわけです。
そしてその場を体感する。これが特別な出来事になるんですよね。
こうした原画展は海外でも開かれています。
2026年10月にはニューヨークのブルックリン美術館で和田英一郎先生や高橋留美子先生などの原画600点以上を集めたアートオブ漫画展が始まりました。
漫画は翻訳されて読まれるだけでなく、絵そのものを見に来てもらう形でも海外へ出て行っているんですね。
ただし展覧会を海外へ運ぶには輸送、保険、展示の保全、現地の運営などの費用がかかります。
来場者の数にチケットの定価をかければ利益が出るという計算にはならないんです。
それでもデジタルで複製しやすくなったから原画の価値がなくなるわけではないという点はとても面白いですよね。
広く知っている人がいるからこそ本物を目の前で見たいという需要が生まれることもある。
スマートフォンで誰でも見られるようになったことが、かえって本物を見に行く理由にもなっているのではないかと思います。
漫画の経済は物語の結末を得るところでは終わらないんですね。
続きを待つ、読み返す、手元に置く、作家の仕事を見る、同じ作品でも楽しみ方ごとに別の商品を用意しているんです。
そう考えると無料で読める漫画と有料の原画展がどちらも成り立っている理由も見えてきます。
ここからは私なりに感じたことをお話しさせてください。
今回色々調べてみて感じたのは、漫画を読む場所が雑誌からアプリへ変わっても変わらない難しさがあるのではないかということです。
まだ好きになっていない作品にどう読者の時間を使ってもらうかという難しさです。
雑誌はすでに好きな作品と一緒に新しい作品を読んでもらえるようにしていました。
アプリは途中からでも連載に追いつけるようにした。
海外への同時配信は翻訳して日本と同じ日に読めるようにしています。
やり方はそれぞれ違いますが、どれも次の推しに出会うまでの手間を減らす工夫だったのではないでしょうか。
そして好きになってもらった後にも考えることがありそうです。
好きになった人が作品とどう関わりたいかということです。
毎回の更新を読むだけで満足する人もいれば、全巻を集めたい人も原画を見に行きたい人もいる。
深く好きになった人が全員同じものを欲しがるわけではないんですよね。
音楽でも無料で聴ける曲がたくさんある中で、ライブに行く人やグッズを買う人もいますよね。
だから無料で読んでいる人をまだお金を払っていない人とだけ見てしまうのは少しもったいないのではないかなと感じました。
誰かに勧めてくれるかもしれないし、大人になってから買ってくれるかもしれない。
一方で無料で読んでいる人が全員いつか買ってくれると考えるのも楽観的すぎるのかもしれません。
無料で届ける費用をどう支えてお金を払ってもらうときに何を用意するのか、そこを考え続けることが大事なのではないでしょうか。
そして調べながらずっと気になっていたのは、そのもっと手前でまだ売れるかわからない作品を作っている人たちのことでした。
大ヒット作がいくつあるかだけでなく、次の作家が書き続けられるか、編集者が作家と何度も話し合う時間を持てるか、漫画のこれからを考えるときには完成した人気作だけでなく、その前にある仕事にも目を向けていいの
ではないかなと私は感じました。
読む側として、紙か電子かのどちらかを選ぶというより、今の自分がどう楽しみたいかで選べばいいのかもしれません。
新しい作品を読み始めたいのか、昔の感を読み返したいのか、現行の線をじっくり見たいのか、そこから選べるようになったことは、今の漫画の豊かさなのではないかなと思います。
もししばらく漫画から離れていたなら、昔読んでいた一作だけをもう一度読んでみるのもいいですし、知らない作家の短い読み切りを一本読んでみるのも面白いと思います。
漫画の世界はずっと、そのちょっと読んでみようというきっかけをいろいろな形で作ってきたのかもしれませんね。
さて、漫画の楽しみ方が雑誌からアプリへ広がってきたお話、いかがでしたでしょうか。
ちなみに私は未だに好きな漫画は単コンポンで持ち続けてますし、中学生とか高校生の時に買った漫画たちが実家にもものすごい量がまだあります。
何回か片付けようとしたことがあるんですが、懐かしくて読み始めちゃって、あっという間に時間が経っていて全然片付かないっていうことが実は何回かありました。
あとうちは家族みんな割と漫画好きだったので、気になっている作品は父か母にプレゼンして、気に入ってもらえるとまとめて買ってもらえるということがありましたね。
今思うと収集壁は両親の遺伝かもしれません。
さて本日の番組を聞いての感想や、皆さんが初めて自分のお金で買った漫画、今も本棚に残している作品をぜひハッシュタグおしかつ未来研究所でシェアしてくださると嬉しいです。
ちなみに私が初めて自分で買った漫画は、近代一少年の事件もでした。
それでは今日のおしかつ未来研究所はこの辺で。最後までお聞きいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。