【令和8年度改定】薬局の評価体系が大きく変わる|調剤基本料・地域支援体制加算の見直し4つのポイント

Dec 7, 2025 岡大徳

中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)において、調剤報酬の見直しに関する議論が行われました。「患者のための薬局ビジョン」策定から10年が経過したものの、処方箋集中率85%以上の薬局割合はむしろ増加しており、門前薬局から地域薬局への移行が進んでいません。この現状を踏まえ、医薬品提供拠点としての薬局の評価体系の見直しが検討されています。今回の議論では、調剤報酬簡素化、調剤基本料関係、地域支援体制加算関係、在宅薬学総合体制加算関係の4つの領域で論点が示されました。調剤基本料については収益状況を踏まえた見直しが、地域支援体制加算・在宅薬学総合体制加算については都市部とそれ以外の地域における届出状況の差を踏まえた実績要件の見直しが、それぞれ検討されています。調剤報酬簡素化|複雑化した体系の整理調剤報酬体系の複雑化が課題として指摘されており、簡素化の検討が求められています。令和6年度改定の答申書附帯意見では、診療報酬体系が複雑化していること、医療DXの推進において簡素化が求められていることを踏まえ、患者をはじめとする関係者にとって分かりやすい診療報酬体系となるよう検討することとされました。現行の調剤報酬では、服薬管理指導料と在宅患者訪問薬剤管理指導料で類似の加算が設けられているなど、体系が複雑になっています。例えば、重複投薬・相互作用等防止加算は調剤管理料に、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は在宅薬剤管理に、それぞれ別の項目として設定されています。このような複雑な体系は、患者にとって分かりにくいだけでなく、薬局の事務負担増加にもつながっています。今後の改定では、類似の評価項目の整理・統合が議論される可能性があります。調剤基本料関係|門前薬局・医療モールの適正化と敷地内薬局の取り扱い調剤基本料については、収益状況を踏まえた評価の見直しと、処方箋集中率の算出方法の適正化が主な論点です。医療経済実態調査の結果によると、調剤基本料2を算定する薬局と医療モール内の薬局の損益率が他の分類より高いことが明らかになりました。特に、処方箋集中率85%以上かつ月当たり処方箋受付回数2,000回以下で調剤基本料1を算定している薬局は、備蓄品目数が少ないにもかかわらず、令和6年度改定後も損益率が微増しています。特別区の薬局では改定後に損益率・損益差額がいずれも増加しており、地域による収益格差が生じています。処方箋集中率の計算方法についても問題が指摘されています。門前薬局であるにもかかわらず、意図的に遠方の高齢者施設等の入居者の処方箋を受け入れることで処方箋集中率を下げ、より点数の高い調剤基本料を算定するケースが存在します。また、医療機関が3つ以上存在する医療モールでは、上位3医療機関の合計集中率70%という基準を下回りやすく、現行の算定要件では適切に評価できていません。一方、敷地内薬局(特別調剤基本料A)については、令和6年度改定後に損益率・損益差額がマイナスに転じました。ただし、へき地等における自治体開設診療所の敷地内薬局については、地域医療を維持するために必要な存在であるケースもあり、一律の適用が適切かどうか検討が必要とされています。地域支援体制加算関係|都市部とそれ以外の届出格差への対応地域支援体制加算については、都市部とそれ以外の地域における届出状況の差を踏まえた実績要件の見直しが論点です。特別区や政令指定都市以外の地域では、地域支援体制加算の届出割合が低い傾向にあります。特に医療資源の少ない地域では、患者数が少ないため、実績要件の基準が高い地域支援体制加算3・4の届出割合が特に低くなっています。現行の実績要件は処方箋1万枚当たりの年間回数で設定されているため、処方箋受付回数が少ない薬局では要件を満たすことが困難です。地域支援につながる施設基準として、薬局の面積要件やセルフメディケーション関連機器の設置も検討されています。備蓄品目数は平成22年度の500品目から現在は1,200品目に引き上げられており、備蓄のために必要なスペースは約2.4倍になりました。在宅患者への医薬品提供のための無菌調製設備(クリーンベンチ等)やバイオ後続品の保管に用いる保冷庫を設置する場合には、より大きな面積が求められます。在宅薬学総合体制加算関係|地域の実情に応じた実績要件の検討在宅薬学総合体制加算についても、都市部とそれ以外の地域における届出状況の差が課題です。特別区・政令指定都市と比較して、それ以外の地域にある薬局では在宅薬学総合体制加算の届出が少ない傾向があります。在宅薬学総合体制加算1では在宅薬剤管理の実績24回以上/年、加算2ではさらにかかりつけ薬剤師指導料等の算定回数24回以上/年が求められます。患者数が少ない地域では、これらの実績要件を満たすことが難しい状況です。常勤薬剤師数と在宅関連業務の実施状況にも関連があることが示されています。夜間・休日の処方箋応需や小児特定加算を算定する調剤の実施など、在宅に関連するレセプト対応は、常勤薬剤師数が多いほど取り組まれている傾向があります。しかし、現在の在宅薬学総合体制加算には常勤薬剤師数に係る要件がなく、地域の実情を踏まえた要件設定が検討されています。まとめ中医協では、医薬品提供拠点としての薬局の評価体系について、4つの領域で見直しの議論が進められています。調剤報酬簡素化では複雑な体系の整理が、調剤基本料関係では門前薬局・医療モールの適正化と敷地内薬局の取り扱いが、地域支援体制加算・在宅薬学総合体制加算関係では都市部とそれ以外の地域における届出格差への対応が、それぞれ主な論点です。薬局ビジョンが目指す「門前からかかりつけ、そして地域へ」という方向性を実現するため、立地に依存した経営から地域医療に貢献する薬局への転換を促す評価体系への見直しが検討されています。薬局経営者は、これらの議論の動向を注視しながら、地域支援体制や在宅業務の充実に向けた準備を進めることが重要です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

薬局ビジョン10年の現実|門前薬局はなぜ増え続けるのか

Dec 6, 2025 岡大徳

2015年に策定された「患者のための薬局ビジョン」は、すべての薬局がかかりつけ薬局としての機能を持つことを目指しました。しかし、ビジョン策定から10年が経過した現在、門前薬局や医療モール型薬局の設立が続いています。中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)では、薬局のあり方について議論が行われました。中医協の資料によると、処方箋集中率が高い薬局の割合はむしろ増加しています。85%以上の集中率を持つ薬局は2015年の32.5%から2024年には39.3%へと上昇しました。また、薬局・薬剤師の偏在により、地方での医薬品提供体制の脆弱化と、都市部での小規模薬局の乱立という二極化が進んでいます。薬局ビジョンが掲げた目標と現状のギャップ2015年10月に公表された「患者のための薬局ビジョン」は、「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」への転換を掲げました。このビジョンでは、2025年までにすべての薬局がかかりつけ薬局の機能を持つこと、2035年までに立地も地域へ移行することを目標としています。かかりつけ薬剤師・薬局に求められる基本機能は3つあります。第一に、ICTを活用した服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導です。第二に、24時間対応・在宅対応の体制整備です。第三に、医療機関をはじめとする関係機関との連携です。これらの基本機能に加えて、健康サポート薬局として健康サポート機能を発揮すること、専門機関と連携した高度薬学管理機能を持つことも期待されています。しかし、ビジョン策定後の10年間で、目標に向けた進展は限定的でした。2016年の診療報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」が新設され、その後の改定でも対物業務から対人業務への転換が図られてきました。それにもかかわらず、多くの薬局は依然として立地に依存した経営を続けています。処方箋集中率の推移が示す課題処方箋集中率が高い薬局、いわゆる門前薬局の割合は増加傾向にあります。厚生局届出データによると、処方箋集中率95%以上の薬局は2015年の14.0%から2024年には17.3%へと増加しました。同様に、85%以上の薬局も32.5%から39.3%へと上昇しています。この増加傾向は、診療報酬改定による政策誘導が十分に機能していないことを示しています。対物業務から対人業務への切り替えを進めてきたにもかかわらず、特定の医療機関からの処方箋を集中的に受け付ける薬局のビジネスモデルは変わっていません。さらに、薬局が医療モールを経営する事例も出てきており、立地依存型の経営がむしろ強化されている面があります。薬局・薬剤師の偏在がもたらす問題薬局・薬剤師の地域偏在は、地方と都市部の双方で異なる課題を生じさせています。地方・過疎地域では薬局・薬剤師の不足が深刻です。都市部では小規模薬局の乱立が問題となっています。地方・過疎地域における課題は、医薬品提供体制の維持困難です。服薬指導や在宅サービスへのニーズに応えることが難しくなっています。薬剤師1人または薬局1つが欠けるだけでも地域全体に及ぼす影響が大きく、医療提供体制が脆弱化しています。都市部における課題は、小規模乱立による非効率化です。十分な機能を有さない薬局の設置が増え、薬局1つあたりの処方箋枚数が減少しています。医薬品の配送効率も低下し、流通に負荷をかけています。過剰な流通在庫は、供給不安発生時に医薬品不足を助長する要因にもなります。患者が薬局を近さのみで選ぶ傾向が強まり、薬歴の一元化が成立しにくい状況も生まれています。まとめ薬局ビジョン策定から10年が経過しましたが、「立地から機能へ」の転換は進んでいません。処方箋集中率が高い薬局の割合はむしろ増加し、薬局・薬剤師の偏在による課題も顕在化しています。令和6年改定後の中医協における付帯意見では、地域の医薬品供給拠点としての役割を担い、かかりつけ機能を発揮して地域医療に貢献する薬局の整備を進めるため、調剤報酬のあり方について引き続き検討することが示されています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

【中医協報告】令和7年度消費税補てん状況|診療所・歯科で補てん不足が継続

Dec 5, 2025 岡大徳

令和7年11月28日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第631回)において、「医療機関等における消費税負担に関する分科会」から消費税補てん状況の報告がありました。この報告は、令和8年度診療報酬改定に向けた重要な基礎資料となります。本記事では、報告内容のポイントを医療機関種別ごとに解説します。今回の調査結果では、病院全体の補てん率が104.9%と100%を超過した一方、一般診療所は93.5%、歯科診療所は90.1%と補てん不足が継続しています。開設者別でみると、一般診療所の医療法人・その他が87.4%と最も低い補てん率となっています。物価上昇による課税経費の増加が医療機関経営に影響を与えていることが明らかになりました。補てん状況把握の目的と方法今回の調査は、令和元年10月に実施された消費税率10%引き上げに伴う診療報酬による補てん(5%→10%部分)の状況を把握するために実施されました。調査の目的は、消費税負担と診療報酬による補てんのバランスを確認し、令和8年度改定における対応を検討することです。調査対象は、第25回医療経済実態調査に回答した医療機関等です。収入面では、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)から抽出した消費税上乗せ項目の算定回数に上乗せ点数を乗じて算出しています。支出面では、医療経済実態調査の課税経費データを使用しています。補てん率の算出方法は、収入のうち診療報酬本体へ上乗せされた消費税分(A)を、支出のうち課税経費の消費税相当額(B)で除した値(A/B)です。補てん率が100%を超えていれば補てん過剰、100%未満であれば補てん不足となります。医療機関種別ごとの補てん状況令和6年度の全体結果をみると、医科全体の補てん率は101.5%でした。この数値は医療機関種別によって大きく異なります。病院全体の補てん率は104.9%であり、消費税負担を上回る補てんがなされています。病院種別では、精神科病院が109.7%と最も高く、一般病院が105.5%、特定機能病院が101.2%と続きます。一方、こども病院は90.3%と100%を大きく下回っており、病院種別中で最も補てん不足の状態にあります。一般診療所の補てん率は93.5%であり、前年度の96.8%から低下しました。開設者別にみると、個人開設は115.9%と補てん過剰ですが、医療法人・その他は87.4%と大幅な補てん不足となっています。この87.4%という数値は、今回調査した全区分の中で最も低い補てん率です。歯科診療所の補てん率は90.1%で、医療機関種別全体でみると最も低い水準です。前年度の96.6%から大きく低下しており、物価上昇の影響を強く受けていることがうかがえます。開設者別では、個人が93.6%、医療法人・その他が85.3%となっています。保険薬局の補てん率は103.7%であり、100%を超過しています。ただし、前年度の107.5%からは低下傾向にあります。DPC病院と非DPC病院の違い病院の補てん状況は、DPC対象病院か否かによっても異なります。DPC病院(一般病院)の補てん率は99.2%であり、ほぼ100%に近い水準です。特定機能病院(DPC)は101.2%と若干の補てん過剰ですが、こども病院(DPC)は90.3%と補てん不足が顕著です。こども病院は高度な専門医療を提供するため、課税経費が高くなる傾向にあることが要因と考えられます。非DPC病院では、一般病院が111.9%、精神科病院が109.7%と、いずれも補てん過剰の状態にあります。非DPC病院は規模が小さい傾向にあり、初・再診料や入院基本料の算定比率が高いことが、補てん過剰の要因となっています。令和5年度と比較すると、DPC病院(一般病院)は100.3%から99.2%へ、こども病院は98.2%から90.3%へと、いずれも補てん率が低下しています。これは物価上昇により課税経費が増加したことを反映しています。令和8年度改定に向けた論点今回の報告では、令和8年度診療報酬改定に向けたいくつかの論点が示されています。第一に、消費税率は令和元年10月以降変わっていない一方、診療報酬改定を重ねてきていることです。令和元年以降、令和2年度に+0.55%、令和4年度に+0.43%、令和6年度に+0.88%のプラス改定が行われており、消費税上乗せ項目の一部も改定されています。第二に、物価上昇により課税経費が増加していることです。特に医療材料費、食材料費、光熱水費等の高騰が医療機関経営に大きな影響を与えています。補てん率の低下は、この物価上昇を反映したものと考えられます。第三に、医療機関種別や開設者別によって補てん状況に大きな差があることです。一般診療所の医療法人・その他は87.4%、歯科診療所の医療法人・その他は85.3%、こども病院は90.3%と、補てん不足の医療機関への対応が課題となっています。まとめ令和7年度の消費税補てん状況把握結果は、病院全体では補てん過剰である一方、一般診療所・歯科診療所・こども病院では補てん不足が継続していることを示しました。特に法人開設の医療機関で補てん不足が顕著であり、一般診療所の医療法人・その他(87.4%)、歯科診療所の医療法人・その他(85.3%)は深刻な状況にあります。物価上昇により課税経費が増加する中、令和8年度診療報酬改定においては、補てん状況の医療機関種別間・開設者別のバラつきをどのように評価し対応するかが重要な論点となります。今後の中医協での議論の動向に注目が必要です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

医療機関のDX化推進へ新たな支援枠組みを検討|厚労省が方向性案を提示

Dec 4, 2025 岡大徳

令和7年11月27日に開催された第205回社会保障審議会医療保険部会において、厚生労働省医政局から「業務効率化・職場環境改善の更なる推進に関する方向性について(案)」が示されました。2040年に向けて医療従事者の確保がますます困難となる中、医療界全体での業務効率化を実効あるものとするため、国は制度的対応を含む新たな施策の方向性を検討しています。なお、本資料は同年11月25日の第121回社会保障審議会医療部会でも提示されたものです。今回示された方向性案は、大きく2つの柱で構成されています。第1の柱は「医療機関の業務のDX化の推進」です。この柱では、国・自治体による支援等として6項目、医療機関の責務の明確化として1項目が検討事項として挙げられています。第2の柱は「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」です。以下、各項目の内容を解説します。医療機関の業務DX化推進に向けた国・自治体による支援等(6項目)厚生労働省は、業務DX化に取り組む医療機関の裾野を広げるため、6つの支援策の方向性を提案しています。いずれも「〜してはどうか」という検討段階の提案です。第1に、多くの医療機関を支援する新たな枠組みの創設が提案されています。従来の試行的・先進的な取組への支援だけでなく、業務のDX化に取り組む多くの医療機関を対象とした支援体制を構築することが検討されています。DX化の効果発現には一定期間を要するため、継続的な支援の在り方も論点となっています。第2に、統一的な基準によるデータ収集の実施が提案されています。DX化を推進するにあたり、効果等のエビデンスを蓄積することが重要とされています。具体的には、労働時間の変化、医療の質や安全の確保、経営状況に与える影響等に関する必要なデータを収集することが検討されています。第3に、診療報酬上求める基準の柔軟化が提案されています。上記のエビデンスの蓄積を行いながら、業務の効率化を図る場合における基準の見直しを検討するとされています。第4に、適正価格での機器・サービス導入を支援する仕組みの構築が提案されています。医療機関が製品やサービスの価格・機能・効果を客観的に把握できる環境を整備することが検討されています。第5に、都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制拡充・機能強化が提案されています。業務効率化や職場環境改善に取り組む医療機関への伴走支援を強化することが検討されています。第6に、計画的に取り組む病院の公的認定制度の創設が提案されています。業務効率化・職場環境改善に積極的に取り組むことが、医療従事者の職場定着にプラスとなり、労働市場における医療従事者の確保の面でより有利になるよう、対外的にも発信できる仕組みを整えることが検討されています。医療機関の責務の明確化国・自治体による支援等に加え、医療機関の責務についても見直しが検討されています。現行制度では、病院又は診療所の管理者は、医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に取り組む措置を講ずるよう努めることとなっています。今後は、これらに加え「業務効率化」にも取り組むよう努めることとしてはどうか、と提案されています。タスク・シフト/シェアの推進と医療従事者養成体制の確保第2の柱として、タスク・シフト/シェアの推進と医療従事者の養成体制確保に関する方向性が示されています。タスク・シフト/シェアについては、医療機関における取組がさらに定着するよう、国等の支援を受けて業務のDX化に取り組む際には、併せてタスク・シフト/シェアの実施や業務プロセス自体の見直しを進めることとしてはどうか、と提案されています。医療従事者の養成体制については、地域において医療関係職種を安定的に確保できるよう検討を進めることが提案されています。具体的には、各地域の人口減少の推移や今後の地域医療構想等を踏まえた各医療関係職種の需給状況を見通しつつ、遠隔授業の実施やサテライト化の活用などをはじめ、地域における安定的な養成体制を確保するため国・都道府県等が取り組むべき事項について検討を進めることとされています。医療関係職種の魅力向上に向けた3つの対応医療水準を維持しつつ、より少ない人員でも必要な医療が提供できる体制、また医療関係職種が意欲・能力やライフコースに合わせた働き方・キャリアの選択が可能となる体制を構築するため、3つの対応が提案されています。これらは、若者・社会人にとって医療関係職種がより魅力あるものとなることを目指しています。第1に、養成課程への参入しやすさの向上が挙げられています。医療関係職種の各資格間において現在でも可能となっている既修単位の履修免除の活用や、養成に係る修業年限の柔軟化など、若者・社会人にとっても参入しやすい養成課程となるよう、まずは課題等を把握し、各職種の状況に応じた支援の在り方を検討することとされています。第2に、キャリア・スキル向上等への支援が挙げられています。意欲・能力やライフコースに合わせて、更なるキャリア・スキルの向上を目指す者や、育児・介護等の事情を抱えて働く者への支援、そうした者が地域や職場でより能力を発揮できる環境整備やセカンドキャリアとして働く上でのマネジメントに関するリカレント教育等の在り方について、具体的に検討を進めることとされています。第3に、歯科衛生士・歯科技工士の業務範囲等の見直しが挙げられています。歯科衛生士・歯科技工士の業務範囲や、歯科技工の場所の在り方については、現在進めているそれぞれの業務のあり方等に関する検討会において具体的に検討を進めることとされています。まとめ今回示された方向性案は、「医療機関の業務のDX化の推進」と「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」という2つの柱で構成されています。DX化については、新たな支援枠組みの創設、エビデンス蓄積のためのデータ収集、診療報酬基準の柔軟化、適正価格での導入支援、伴走支援の強化、公的認定制度の創設という6項目の支援策が検討されています。また、医療機関の責務として業務効率化を追加することも提案されています。これらはいずれも検討段階の提案であり、今後の審議会等での議論を経て具体化される見込みです。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

【令和8年度】国民健康保険料の賦課限度額1万円引き上げを提案|110万円へ

Dec 3, 2025 岡大徳

令和7年11月27日に開催された第205回社会保障審議会医療保険部会において、令和8年度の国民健康保険料(税)の賦課限度額の見直しが議論されました。高齢化に伴う医療費増加を背景に、中間所得層の負担に配慮しながら、高所得層により多くの負担を求める方向性が提案されています。この記事では、賦課限度額引き上げの仕組みと令和8年度の改定案を解説します。令和8年度の賦課限度額については、医療分(基礎賦課分)で1万円引き上げ、合計110万円とする案が示されました。この引き上げにより、賦課限度額超過世帯割合の増加を抑制できます。また、中間所得層の保険料負担の伸びを軽減する効果が期待されます。賦課限度額とは何か賦課限度額とは、国民健康保険料(税)の年間上限額のことです。この制度は、保険料負担の公平性と被保険者の納付意欲のバランスを取るために設けられています。国民健康保険制度では、保険料負担は負担能力に応じた公平なものである必要があります。しかし、受益との関連において、被保険者の納付意欲に与える影響や、制度の円滑な運営を確保する観点から、保険料負担に一定の上限を設けています。令和7年度の賦課限度額は合計109万円で、内訳は医療分92万円(基礎賦課額66万円+後期高齢者支援金賦課額26万円)と介護分17万円です。賦課限度額の引き上げは、中間所得層の負担軽減に直結します。医療給付費等が増加する中で、保険料率の引き上げのみで必要な保険料収入を確保した場合、高所得層の負担は変わらず、中間所得層の負担が重くなります。一方、賦課限度額を引き上げれば、高所得層により多く負担していただくことで、中間所得層に配慮した保険料設定が可能となります。賦課限度額引き上げの基本方針賦課限度額の引き上げは、法律に基づき毎年度検討されています。被用者保険とのバランスを考慮しながら、段階的な引き上げが行われてきました。この引き上げの根拠は、社会保障改革プログラム法(平成25年法律第112号)と社会保障制度改革国民会議報告書(平成25年8月)にあります。これらを踏まえ、毎年度、事務レベルワーキンググループや医療保険部会での議論を経て、国保保険料(税)の賦課限度額の引き上げが行われています。引き上げの際には、3つの観点が考慮されます。第一に、被用者保険におけるルールとのバランスです。被用者保険では、最高等級の標準報酬月額に該当する被保険者の割合が0.5%から1.5%の間となるよう法定されています。このため、国保においても将来的に賦課限度額超過世帯割合が1.5%に近づくように段階的に引き上げる方針が取られています。第二に、医療の基礎賦課分、後期高齢者支援金分、介護納付金分の超過世帯割合が前年と比較して増加しているか、それぞれにばらつきが見られるかを基準として引き上げ幅が設定されます。第三に、過去の実績として、過去20年間で最大の引き上げ幅は4万円となっています。令和8年度の改定案令和8年度は、医療分の基礎賦課分を1万円引き上げ、合計110万円とする案が提示されました。介護納付金分は据え置きとなります。具体的な改定内容は以下のとおりです。医療分(計)は92万円から93万円へ1万円引き上げられます。このうち、基礎賦課分は66万円から67万円へ1万円引き上げ、後期高齢者支援金等賦課分は26万円で据え置きです。介護納付金賦課分も17万円で据え置きとなり、合計は109万円から110万円へ1万円引き上げられます。この改定の背景には、限度額超過世帯割合のバランス調整があります。令和8年度においては、限度額(合計額)の超過世帯割合が引き上げ前で1.45%となる一方、基礎賦課分の超過世帯割合が1.7%を超えています。令和7年度と比較した超過世帯割合の増加をできるだけ抑えるとともに、区分間のバランスを整える観点から、基礎賦課分の1万円引き上げが提案されました。なお、子ども・子育て支援納付金分については、令和8年度から新設される予定です。この納付金分の限度額は、令和8年度予算編成過程で決定される納付金総額を踏まえた上で、被用者保険におけるルールとのバランスを考慮し、超過世帯割合が概ね0.5から1.5%の間となるように決定されます。収入別の保険料への影響令和8年度の改定は、中間所得層と高所得層で異なる影響をもたらします。中間所得層では保険料上昇を抑制し、高所得層では限度額到達により負担増となります。年収400万円世帯の保険料への影響は次のとおりです。賦課限度額を引き上げた場合、合計保険料は33万8千円となり、前年度比で5.7%の増加です。一方、据え置きの場合は33万9千円で5.9%の増加となります。この差は、引き上げにより中間所得層の保険料の伸びが抑えられることを示しています。限度額該当世帯(高所得世帯)への影響も確認します。引き上げ後の合計保険料は110万円となり、前年度比で0.9%の増加です。据え置きの場合は109万円で増減なしとなります。高所得世帯が追加で1万円を負担することで、中間所得層の負担軽減が実現します。賦課限度額に達する収入水準についても把握しておく必要があります。令和8年度に医療分(93万円)に達する収入は、給与収入・年金収入ともに約1,170万円、所得換算で約980万円です。この水準を超える世帯が限度額の適用を受けることになります。まとめ令和8年度の国民健康保険料の賦課限度額については、医療分(基礎賦課分)で1万円引き上げ、合計110万円とする案が医療保険部会で議論されました。この改定案は、中間所得層の保険料負担の伸びを抑制しながら、高所得層に応分の負担を求めるものです。賦課限度額超過世帯割合のバランス調整も図られています。今後、子ども・子育て支援納付金分の限度額設定も含め、令和8年度予算編成過程で最終決定される予定です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

【速報】医療費適正化計画に腰痛症への鎮痛薬処方が追加|プレガバリンの適正使用とは

Dec 2, 2025 岡大徳

2025年11月27日に開催された第205回社会保障審議会医療保険部会において、第4期医療費適正化計画における医療資源の効果的・効率的な活用が議論されました。本稿では、新たに「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」に追加される腰痛症へのプレガバリン処方と、今後の対応方針について解説します。今回の議論では、神経障害性疼痛を除く腰痛症に対するプレガバリン処方が、抗菌薬処方に続いて適正化の対象に追加される方針が示されました。この追加により、都道府県ごとの医療費見込みの推計式にプレガバリンの薬剤費が組み込まれます。また、厚生労働省は研究班と連携して「効果が乏しい医療」の探索を継続し、医療技術評価分科会で学会等からの提案募集を行う方針です。第4期医療費適正化計画における医療資源活用の枠組み第4期医療費適正化計画(2024〜2029年度)では、医療資源の効果的・効率的な活用が重要な柱として位置づけられています。この枠組みでは、2種類の医療が適正化の対象となっています。1つ目は「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」です。この代表例として、急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方があります。2つ目は「医療資源の投入量に地域差がある医療」です。白内障手術や化学療法の外来での実施状況、リフィル処方箋がこれに該当します。白内障手術については、OECDにより多くの国で90%以上が外来で実施されている一方、日本での外来実施割合は全国平均54%にとどまり、都道府県ごとに実施状況が様々であることが指摘されています(第165回医療保険部会資料より)。腰痛症に対するプレガバリン処方の追加今回新たに追加されるのは、腰痛症(神経障害性疼痛を除く)に対するプレガバリン(商品名:リリカ錠)の処方です。プレガバリンは本来、神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛を適応とする薬剤であり、薬理作用はカルシウムチャネルα2δ遮断薬です。神経障害性疼痛では有効なケースもありますが、非神経障害性腰痛では効果が限定的であることが先行研究で指摘されています。この追加は、国内の診療ガイドラインとも整合しています。腰痛診療ガイドライン2019では、急性腰痛および慢性腰痛に対するCaチャネルα2δリガンドについて質の高い論文は存在しなかったとされています。また、有害事象に対するメタアナリシスでは、Caチャネルα2δリガンドはプラセボと比較して有意に頻度が高いことが示されています。プレガバリンの添付文書においても、効能・効果は神経障害性疼痛と線維筋痛症に伴う疼痛に限定されています。重要な基本的注意として、めまいや傾眠、意識消失等があらわれる可能性があり、自動車事故に至った例もあることから、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意することが記載されています。適正化計画基本方針への具体的な追記内容今回の見直しにより、医療費適正化計画の基本方針には以下の内容が追記されます。急性気道感染症・急性下痢症に対する抗菌薬処方に加えて、神経障害性疼痛を除く腰痛症患者に対するプレガバリン処方が「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」として明記されます。医療費見込みの推計式にも変更が加わります。従来の抗菌薬処方や白内障手術・化学療法の外来実施に関する推計式に、腰痛に対するプレガバリン処方の薬剤費が追加されます。具体的な推計式は、都道府県ごとに「当該県の令和元年度の腰痛に対するプレガバリン処方の薬剤費÷当該県の令和元年度の入院外医療費(÷2)×当該県の令和11年度の入院外医療費(推計)」となっています。基本方針では留意点も示されています。個別の診療行為としては医師の判断に基づき必要な場合があることに留意しつつ、地域ごとに関係者が実情を把握し、医療資源の効果的・効率的な活用に向けた検討を進めることが重要とされています。今後の対応方針と診療報酬への影響厚生労働省は、研究班等と連携して「効果が乏しい医療」の探索を継続する方針を示しています。厚労科研「レセプト情報・特定健診等情報を用いた医療保健事業・施策等のエビデンス構築等に資する研究」等において、先行研究の調査やNDBを活用した実態分析が進められています。先行研究の収集に加えて、医療技術評価分科会での取り組みも予定されています。令和8年度診療報酬改定の次の改定に向けた対応として、医療技術の評価の一環で学会等から提案を広く募集することになりました。国内の関連学会に取り扱いを照会し、診療報酬上の留意事項通知や疑義解釈との整合を確認した上で、整合性等があることを確認できたものは医療費適正化計画へ記載され、関係学会調整後に中央社会保険医療協議会で診療報酬上の取扱について個別に議論される見込みです。医療保険部会(2025年9月18日、9月26日、10月2日開催分)では、低価値・無価値医療への対応についてさまざまな意見が出されています。費用対効果や経済性を考慮した医薬品の使用促進や、治療や薬剤の臨床上の有効性を適切に評価する制度設計の重要性が指摘されています。まとめ第4期医療費適正化計画において、神経障害性疼痛を除く腰痛症に対するプレガバリン処方が「効果が乏しいというエビデンスがあることが指摘されている医療」に追加される方針が示されました。この追加は、国内の腰痛診療ガイドライン2019やプレガバリン添付文書との整合性を確認した上で行われるものです。厚生労働省は来年度以降も研究班と連携して適正化対象の探索を継続し、医療技術評価分科会での学会からの提案募集も進める方針です。医療現場においては、エビデンスに基づく処方の重要性が改めて求められることになります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

【2026年度実施】OTC類似薬の自己負担見直しと国保改革の3つの柱を解説

Dec 1, 2025 岡大徳

令和7年11月27日、第205回社会保障審議会医療保険部会が開催されました。本部会では、骨太方針2025および三党合意を踏まえ、医療保険制度の持続可能性確保に向けた具体的な制度設計が議論されています。本稿では、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しと国民健康保険制度の取組強化という2つの重要テーマについて解説します。今回の議論では、OTC類似薬について保険給付を維持しつつ別途負担を求める方向での検討が進められています。国民健康保険制度については、子どもの均等割保険料軽減を高校生年代まで拡充することや、保険料水準統一の加速化、保険者努力支援制度へのマイナス指標導入が提案されています。これらの改革は令和8年度からの実施を目指しており、医療機関経営や患者負担に大きな影響を与える可能性があります。OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しOTC類似薬の保険給付見直しは、現役世代の保険料負担軽減と医療保険制度の持続可能性確保を目的としています。骨太方針2025では、2025年末までの予算編成過程で十分な検討を行い、早期に実現可能なものについて2026年度から実行するとされました。本節では、費用負担の在り方、配慮が必要な者の範囲、対象となるOTC類似薬の範囲という3つの論点について整理します。費用負担の在り方については、薬剤そのものを保険給付の対象外とはしない前提で検討が進められています。医療保険部会での議論では、OTC医薬品への変更や保険適用除外とした場合、患者の自己負担がかなり増えるケースがあるとの指摘がありました。このため、保険の枠内に置きつつ、選定療養のような形で別途負担を求める仕組みが検討されています。患者団体からも、OTC類似薬については保険適用とした上で患者負担を変更する方法が弊害が少ないとの意見が出されました。配慮が必要な者の範囲については、新たな負担を求めない対象として複数の類型が論点として提示されています。子どもについては、成人年齢が18歳以上であることやこども医療費助成制度の普及を踏まえ、18歳以下の者を配慮対象とすることが検討されています。また、医療費に着目して公的な支援を受けている方、長期にOTC類似薬の利用を必要とする方、入院患者についても配慮が必要とされています。患者団体ヒアリングでは、がん患者や難病患者、アレルギー疾患患者など、OTC類似薬を日常的・長期的に使用する方への経済的負担増大への懸念が示されました。OTC類似薬の範囲については、医療用医薬品とOTC医薬品の同等性をどう判断するかが課題となっています。成分が一致していても、用法・用量、効能・効果、対象年齢、投与経路、剤形など様々な違いがあり、単純に保険適用から外すことは難しいとの意見があります。一方で、OTC医薬品を購入する方との公平性や医療保険制度の持続可能性の観点から、OTCで代替可能なものはできるだけ広い範囲を対象として検討を進めるべきとの意見も出されました。国民健康保険制度の取組強化国民健康保険制度は、被保険者の高齢化や所得水準の低さ、小規模保険者の多さなど構造的な課題を抱えています。人口減少・少子高齢化に伴い地方公共団体の人材不足も深刻化しており、保険者事務の持続可能性確保が急務となっています。本節では、医療費適正化のインセンティブ強化、子育て世帯の保険料負担軽減、持続的な国保運営のための取組強化、国保組合に係る見直しについて解説します。医療費適正化のインセンティブ強化については、保険者努力支援制度(都道府県取組評価分)の見直しが決定されました。現行の普通調整交付金は、理由にかかわらず医療費に応じて配分額が増減される仕組みとなっており、医療費適正化のインセンティブが働かないとの指摘がありました。地方団体からは、普通調整交付金が担う所得調整機能は重要であり、政策誘導に使われるべきではないとの意見が出されています。このため、保険者努力支援制度の医療費適正化のアウトカム評価指標において、令和8年度分からマイナス指標を導入し、医療費適正化のインセンティブがより働くようメリハリを強化することとされました。子育て世帯の保険料負担軽減については、均等割保険料の軽減対象を高校生年代まで拡充することが提案されました。現行制度では令和4年4月から、未就学児に係る均等割保険料について5割を公費(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)により軽減する措置が講じられています。全国知事会、全国市長会、全国町村会からは、対象年齢の18歳までの引上げや軽減割合の拡充を求める要望が出されており、今回の拡充はこれらの要望に応えるものです。持続的な国保運営のための取組強化は、保険料水準の統一と事務負担軽減の2つの柱で構成されています。保険料水準統一については、令和8年度の国保運営方針中間見直しに向けて、納付金ベースの統一や完全統一に係る目標年度の設定・前倒しの検討を含め、議論を加速化することとされました。納付金ベースの統一は令和12年度保険料算定までの達成が目標とされ、完全統一は令和15年度までの移行を目指しつつ、遅くとも令和17年度までの移行が目標とされています。財政安定化基金についても、保険料水準統一や制度改正により納付金が著しく上昇する場合等に取崩しを認め、従来の3年間よりも長い期間での積戻しを可能とする見直しが提案されています。市町村の事務負担軽減については、都道府県国保連合会の役割強化が検討されています。また、国民健康保険の資格喪失日を1日前倒しし、資格喪失の原因たる事実が発生した日を資格喪失日とする運用見直しも提案されました。これは令和7年度地方分権提案で報告された支障事例を踏まえたもので、保険者間の資格重複による軽減判定への影響を解消することが目的です。国保組合に係る見直しでは、負担能力に応じた負担を進める観点から定率補助の見直しが提案されています。現行の補助率下限13%を原則としつつ、以下の3要件すべてに該当する国保組合には、例外的に12%(平均所得270万円以上)または10%(平均所得280万円以上)の補助率を適用することとされました。3要件とは、①保険料負担率(被保険者一人当たり保険料÷国保組合の平均所得)が低いこと、②積立金が多いこと(かつ被保険者数3,000人以上)、③医療費適正化等の取組の実施状況が低調であることです。併せて、健康保険適用除外に係る手続の簡素化や、補助率判定に用いる所得上限額を1,200万円から2,200万円に見直すことも行われます。まとめ第205回医療保険部会では、医療保険制度の持続可能性確保に向けた重要な改革の方向性が示されました。OTC類似薬については、保険給付を維持しつつ別途負担を求める制度設計が進められ、子どもや慢性疾患患者、低所得者への配慮が図られます。国民健康保険制度については、保険者努力支援制度へのマイナス指標導入による医療費適正化インセンティブの強化、子育て世帯支援の拡充、保険料水準統一の加速化により、制度の安定性向上が目指されています。これらの改革は令和8年度からの実施に向けて、今後さらに具体的な制度設計が進められる見込みです。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

医療費2.4〜8.3兆円削減の可能性:健康を守りながら実現する5つの改革案

Nov 30, 2025 岡大徳

日本では社会保障費の負担増が社会問題化しており、医療費の適正化をどのように達成するかが重要な論点となっています。高額療養費の自己負担上限引き上げが議論されていますが、重症患者に負担を強いる前に、軽症患者の不要不急な医療利用を抑制する方策を検討すべきではないでしょうか。このような問題意識のもと、日本医療政策学会は2025年11月23日、「医療費適正化の実現に必要なエビデンスに関するレポート」を発表しました。本レポートでは、国民の健康に悪影響を与えることなく、2.4〜8.3兆円(総医療費の5〜17%)の医療費削減が可能であると提言しています。具体的には、70歳以上の自己負担割合3割への引き上げで1.3〜6.7兆円、OTC類似薬の保険除外で3,300億〜6,500億円、無価値・低価値医療の削減で7,800〜9,000億円の削減効果が見込まれます。これらに加え、外来への包括支払制度導入とエビデンスのある予防医療の保険収載という5つの改革が提案されています。70歳以上の自己負担割合引き上げ:1.3〜6.7兆円の削減効果本レポートで最も大きな削減効果が見込まれるのは、70歳以上の自己負担割合を一律3割に引き上げる施策です。医療サービスの価格が上がれば需要が減るという経済学の原則は、医療分野でも確認されています。東京大学の重岡仁氏の研究によると、医療サービスの窓口での自己負担額が10%増加すると、需要は約2%減少します。この需要の変化を「価格弾力性」と呼び、日本のデータでは外来医療で-0.34〜-0.15、入院医療で-0.166〜-0.057、高齢者では-0.26〜-0.048と報告されています。自己負担割合を引き上げても、健康への悪影響はないか、あっても小さいことが複数の研究で示されています。この背景には、自己負担割合の増加で影響を受けるのが主に軽症患者であるという点があります。手術や抗がん剤などの重症医療は高額療養費制度でカバーされるため受診控えは起こりにくく、風邪での外来受診など軽医療サービスが抑制されると考えられます。厚生労働省のデータを用いた試算では、価格弾力性を-0.2と仮定した場合に約6.7兆円、-0.04と仮定した場合でも約1.3兆円の医療費削減効果が期待できます。ただし、この試算が有効なのは高額療養費制度が適切に機能している前提であり、同制度が弱体化すれば重症患者の受診控えによる健康被害が生じる可能性があります。OTC類似薬の保険除外:3,300億〜6,500億円の削減効果2番目の改革案は、OTC類似薬の全てまたは一部を保険収載から外すことです。OTC類似薬とは、風邪薬・湿布・胃腸薬・ビタミン剤など、薬局で処方箋なしに購入できるOTC医薬品と効果やリスクが似ているにもかかわらず、健康保険でカバーされている医薬品を指します。これらに支出されている医療費は3,200億円〜1兆円規模と報告されており、五十嵐らの推計では、狭い定義で3,278億円、広い定義で6,513億円に達します。OTC類似薬が保険から外されても、患者はドラッグストアで比較的安価に購入できます。OTC医薬品は一般的に軽症患者が使う薬であるため、受診控えが起きても健康被害はないか小さいと考えられます。さらに、OTC類似薬にはそもそも効果がないものも含まれています。例えば風邪はウイルス感染であり、総合感冒薬には回復を早める効果がありません。また、湿布は年間54億枚も処方されていますが、12週間以上の長期使用に関しては有効性のエビデンスが不十分です。無価値・低価値医療の削減:7,800〜9,000億円の削減効果3番目の改革案は、効果がないことが証明されている医療サービスの保険収載を見直すことです。日本では新しい薬や医療機器が承認されると多くの場合自動的に保険適用となり、その後の研究で効果がないと判明しても保険から除外されることは稀です。この硬直的な制度が、効果の低い医療の積み重ねと医療費増加を招いています。研究チームの調査では、52種類の無価値医療に年間2,100億〜3,300億円の医療費が使われていると推計されました。具体的には、湿布(特にサリチル酸使用や長期使用)に456億円、深刻な兆候のない腰痛への早期画像検査に316〜369億円、安定冠動脈疾患への経皮的カテーテル治療に103〜640億円などが挙げられています。これに加え、後発品が存在する先発品の使用も低価値とみなされます。ジェネリック医薬品への完全置換で約4,400億円、バイオシミラーへの完全置換で約1,300億円の削減が可能です。これらを合計すると、7,800〜9,000億円程度の削減が患者の健康を悪化させることなく実現可能であり、総医療費の約1.6〜1.9%に相当します。外来への包括支払制度導入4番目の改革案は、外来医療に包括支払制度を導入することです。日本の外来は出来高払いを採用しており、医療サービスの提供量を多くするほど医療機関の利益が増える仕組みになっています。この制度では過剰医療のインセンティブが働き、外来受診回数や入院日数が欧米の2〜3倍となっています。日本で「医師不足」が叫ばれる背景には、医師数自体の不足ではなく、業務量が多すぎる「相対的医師不足」があります。包括支払制度では、かかりつけ患者の総数に対して月額定額が支払われるサブスクリプションモデルとなります。例えば、安定した糖尿病患者の推奨されるHbA1c測定頻度は6ヵ月に1回ですが、日本ではより頻回に行われています。包括支払いになれば、受診頻度もHbA1c測定頻度も欧米と同水準の3〜6ヵ月に1回に変わると考えられます。医療機関の売り上げが減少しても、人件費・光熱費・検査機材コストが下がるため、収益を維持しながら医療費を削減できる可能性があります。ただし、包括支払制度には過小医療のリスクがあります。この問題を解決するため、ペイ・フォー・パフォーマンス(P4P)の併用が必要です。P4Pは医療の質や患者アウトカムを測定し、質の高い医療が行われていない場合に経済的ペナルティーを与える制度であり、「量」ではなく「価値」に対して報酬を支払う仕組みを実現します。エビデンスに基づく予防医療の保険収載5番目の改革案は、エビデンスのある予防医療を保険収載することです。日本では歴史的背景から、健康保険がカバーするのは治療的な医療サービスのみで、ワクチンや検診などの予防医療は保険でカバーされていません。これは世界的に見て特殊な制度であり、医療提供者に予防を推進するインセンティブがありません。エビデンスのある予防を保険収載し、予防も治療も分け隔てなくカバーすることで、この問題を解消できます。予防医療の約2割は健康増進効果だけでなく医療費削減効果があると報告されています。現在、「日本予防医療専門委員会(JPPSTF)」が日本人にとってエビデンスのある予防医療サービスのリスト作成を進めており、このリストに含まれるサービスが保険収載されれば、健康増進と医療費削減の両立が期待できます。まとめ本レポートは、高額療養費制度を維持しながら医療費を適正化する5つの改革案を提示しています。70歳以上の自己負担割合引き上げ、OTC類似薬の保険除外、無価値・低価値医療の削減、外来への包括支払制度導入、エビデンスに基づく予防医療の保険収載という5つの施策を組み合わせることで、国民の健康に悪影響を与えることなく、2.4〜8.3兆円の医療費削減が可能です。皆保険制度の根幹である高額療養費制度を守りつつ、軽症患者の不要不急な医療利用を抑制することが、持続可能な医療制度を実現する鍵となります。出典:津川友介・加藤弘陸・五十嵐中・宮脇敦士・玉田雄大・後藤励「医療費適正化の実現に必要なエビデンスに関するレポート」JHPRA Working Paper, 2025-1, 一般社団法人日本医療政策学会, 2025年11月23日 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

【2040年に向けて】介護人材確保の新戦略|福祉人材確保専門委員会が示す4つの柱

Nov 29, 2025 岡大徳

2040年には65歳以上の高齢者数がピークを迎え、介護と医療の複合ニーズを抱える85歳以上人口が増加します。一方で生産年齢人口は減少し、介護の担い手確保は喫緊の課題となっています。このような状況を踏まえ、社会保障審議会福祉部会の福祉人材確保専門委員会は、令和7年11月11日に「議論の整理」をとりまとめ、第31回福祉部会に報告しました。この報告書は、地域差を踏まえたプラットフォーム機能の充実、多様な人材の確保・育成、中核的介護人材の確保・育成、外国人介護人材の確保・定着という4つの柱で構成されています。介護関係職種の有効求人倍率は令和7年9月時点で4.02倍と、全職業の有効求人倍率(1.10倍)と比較しても非常に高い水準にあり、都道府県によっては8倍台となる地域もあります。本稿では、この報告書の主要なポイントを解説します。地域差を踏まえたプラットフォーム機能の充実都道府県が設置主体となり、介護人材確保に関するプラットフォームを制度として構築する方針が示されました。このプラットフォームは、地域の関係者が情報を収集・共有・分析し、協働して課題解決に取り組むための仕組みです。プラットフォームの構造は重層的な設計となっています。第1層は都道府県単位で関係者が人材確保の課題を認識・共有する場として機能します。第2層は市町村単位や複数市町村の圏域単位など、より狭い地域で設置され、「人材確保・定着」「職場環境の改善、生産性向上・経営支援」「介護のイメージ改善・理解促進」などの個別課題に応じたプロジェクトチームとして活動します。このプラットフォームには、市町村、ハローワーク、福祉人材センター、介護労働安定センター、介護事業者、介護福祉士養成施設、職能団体などの関係者が参画します。福祉人材センターがコーディネーター的な中核的役割を担い、関係者の取組を連携させることが想定されています。これにより、情報の収集・共有・分析から課題の発見、取組の実施、効果検証、改善までのPDCAサイクルを回すことが可能となります。多様な人材の確保・育成・定着のための取組若者・高齢者・未経験者などの多様な人材を確保・育成するため、情報発信・広報戦略の強化と、テクノロジー活用による業務改善の2つのアプローチが提案されています。情報発信については、テクノロジー導入や社会的課題への対応など、介護現場における最新の取組を積極的に発信することが重要です。テクノロジーの導入により、介護職員の負担軽減と利用者と関わる時間の確保が両立できている事例があります。また、職場体験やインターンシップを通じて、地域の関係者に福祉現場を理解してもらう取組も重要とされています。人材の定着支援については、テクノロジーの活用による介護の質の向上と業務負担軽減に加え、いわゆる「介護助手」の活用が提案されています。業務の整理・切り出しにより介護の直接業務とその他業務を明確化し、周辺業務を介護助手が担うことで、タスクシフト/シェアを進め、業務改善・生産性向上を図ります。この取組は人手不足解決だけでなく、介護の専門性の明確化にもつながるものと位置づけられています。中核的介護人材の確保・育成と資格制度の見直し中核的介護人材の確保・育成については、山脈型キャリアモデルの深化、介護福祉士の届出制度拡充、複数資格取得の促進という3つの方策が示されています。山脈型キャリアモデルとは、サービスや経営のマネジメントを行う役割に加え、認知症ケア・看取りケア等の特定のスキルを極めることや、地域全体の介護力向上を進めることなど、介護人材が目指す複数のキャリアパスを示すものです。中核的介護人材が担うべき具体的役割・機能や必要な資質・能力の整理と、これを身につけるための研修体系の整備が必要とされています。介護福祉士の届出制度については、現行の潜在介護福祉士への復職支援に加え、現任の介護福祉士にも届出の努力義務を課すことが提案されています。これにより、地域における介護人材の実態把握や必要なキャリア支援を行う仕組みへと発展させることが目指されています。介護福祉士養成施設卒業者の国家試験義務付けの経過措置については、令和8年度卒業者までとされている現行の経過措置の取扱いが議論されました。資格の質の担保・専門性の向上等の観点から終了すべきとの意見と、養成施設の入学者確保・介護人材確保等の観点から延長すべきとの意見の両方が示されています。今後、介護福祉士養成施設の役割も勘案しながら、必要な対応が講じられる見込みです。外国人介護人材の確保・定着策と准介護福祉士の在り方外国人介護人材の確保・定着については、プラットフォーム機能を活用した地域ごとの支援策が提案されています。特に小規模法人における外国人介護人材の受入れが課題となっており、海外現地での働きかけなどの確保策や、日本語教育、文化の違いへの対応、生活環境整備などの定着策を地域ごとに検討することが必要です。令和7年4月からは、一定の要件のもとで技能実習生と特定技能外国人が訪問系サービスに従事することが可能となりました。緊急時の対応やトラブルの未然防止に向けたリスク管理、利用者・家族からの同意取得、ハラスメント対策としてのマニュアル整備等が重要とされています。准介護福祉士については、国家試験に合格していない者に付与される資格であり、フィリピンとのEPA(経済連携協定)締結時の経緯から創設されたものです。本専門委員会では、資格に対する社会的評価・資質の担保や、介護福祉士の専門職としての地位の向上・確立の観点から廃止すべきとの意見が示されました。フィリピン国政府との関係等も考慮しながら、適切な対応が検討される予定です。まとめ福祉人材確保専門委員会の議論の整理は、2040年に向けた介護人材確保の方向性を示す重要な報告書です。都道府県主導のプラットフォーム構築による地域連携の強化、多様な人材の確保とテクノロジー活用による業務改善、中核的介護人材の育成と資格制度の見直し、外国人介護人材の支援体制整備という4つの柱が提示されました。今後、この報告書の内容は社会保障審議会福祉部会でさらに議論を深めるとともに、介護保険部会その他関係審議会等においても議論が進められます。処遇改善なしに人材確保はなしえないとの意見が多くの委員から示されており、福祉・介護分野の処遇改善や専門性の評価も重要な課題として引き続き検討されることになります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

【2025年最新】介護保険部会が示す3つの重点施策|身寄りのない高齢者支援・介護予防・過疎地域対策

Nov 28, 2025 岡大徳

令和7年11月17日に開催された第31回社会保障審議会福祉部会において、介護保険部会における議論の状況が報告されました。この報告は、第126回(令和7年10月9日)、第127回、第128回(令和7年11月10日)の介護保険部会での議論をまとめたものです。2050年頃には全世帯の5世帯に1世帯が高齢者単身世帯になると想定される中、身寄りのない高齢者等への対応が喫緊の課題となっています。介護保険部会では主に2つの論点が議論されています。第一に、身寄りのない高齢者等への支援に向けた地域ケア会議の活用推進と相談体制の充実です。第二に、介護予防の推進として通いの場の機能強化と多機能拠点の整備が検討されています。なお、過疎地域等における包括的な支援体制については、福祉部会での議論が介護保険部会に報告され、委員からの意見が出されています。身寄りのない高齢者等への支援体制の整備身寄りのない高齢者等への支援は、介護保険部会における最重要課題のひとつです。高齢者単身世帯の増加に伴い、生活支援、財産管理、身元保証、死後事務といった課題への対応が急務となっています。現状では、これらの課題に対してケアマネジャーが法定外業務(シャドウワーク)として対応せざるを得ないケースが増加しており、ケアマネジャーの専門性発揮を阻害する要因となっています。この課題への対応として、地域ケア会議の活用推進が検討されています。ただし、現状では地域ケア個別会議と地域ケア推進会議を連携できていない、または地域ケア個別会議での議論がそもそも十分ではないと回答した市町村が合わせて半数程度あります。地域包括支援センターが主導して地域ケア会議を開催し、身寄りのない高齢者等の生活課題を地域全体で協議する体制の構築が目指されています。先進的な取組事例として、3つの自治体が紹介されています。兵庫県朝来市では、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が中核となって地域ケア会議の中にワーキングを設置し、主任ケアマネジャー、司法書士、医師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー等の多分野の関係者による議論を経て「身寄りのない人を支える資源マップ」を作成しています。島根県出雲市では、市が住民主体の互助団体の連絡会と地域ケア会議を連動させる体系を整備し、生活支援コーディネーターを中心とした個別課題解決の場づくりを推進しています。愛知県岡崎市では、金融機関をコアメンバーとする「岡崎市SDGs公民連携プラットフォーム」を活用し、「終活応援事業」を創設しています。相談体制の充実に向けては、地域包括支援センターの総合相談支援事業において身寄りのない高齢者等への相談対応を明確化することが検討されています。介護保険部会の委員からは、地域包括支援センターの業務量過多や人材不足への対応として、国による財政支援と人材確保の強化を求める意見が出されました。介護予防の推進と多機能拠点の整備介護予防の推進は、高齢者の健康寿命延伸と地域の支え合い強化の両面から重要な施策です。「通いの場」は、住民主体の介護予防の取組を推進する場として、高齢者の社会参加を促すとともに、地域共生社会の実現に貢献してきました。2040年を見据えると、高齢化や人口減少のスピードは地域によって大きな差が生じることが想定されており、より効果的な介護予防の仕組みが必要とされています。この課題に対応するため、「介護予防・地域ささえあいサポート拠点」の整備に向けたモデル事業が実施されています。令和6年度補正予算(令和7年度繰越実施)で措置されたこのモデル事業では、介護予防を主軸としながら、障害、子育て、生活困窮分野の支援機能も併せ持つ多機能拠点の整備が検証されています。この拠点は、住民主体の通いの場の機能に加え、地域ささえあいネットワークとの連携により、地域の多様なニーズに対応することが期待されています。介護保険部会では、こうした多機能拠点の整備・運営を総合事業に位置づけることが検討されています。委員からは、老人保健施設を介護予防の活動拠点として活用する提案や、専門職の関与を確保するための具体的方策を求める意見が出されました。財源については、介護保険で対応する部分は介護予防に限定すべきとの意見や、地域支援事業の上限額廃止と必要な予算確保を求める意見が出されています。過疎地域等における包括的な支援体制過疎地域等における包括的な支援体制の整備については、福祉部会で詳細な検討が行われており、その議論の状況が介護保険部会にも報告されています。これらの地域では、担い手不足により地域の支え合い機能が脆弱化する一方、福祉ニーズの多様化・複雑化が進んでいます。現行の重層的支援体制整備事業は、各分野の配置基準を満たした上で追加的に事業を実施する必要があり、小規模自治体では実施率が低い状況にあります。令和7年6月13日閣議決定の「地方創生の基本構想」では、中山間・人口減少地域において介護・障害・こども・生活困窮分野の相談支援・地域づくり事業を一本化し、機能強化を図る制度改正の実施が盛り込まれました。福祉部会における議論では、相談支援と地域づくりを分野別の縦割りではなく機能別に構造化し、包括的な実施を可能とする仕組みの検討が進められています。介護保険部会の委員からは、この方向性について合理的であるとの評価がある一方、相談支援に当たる専門職が多領域にわたる相談支援に対応できるよう人材育成が大きな課題との指摘がありました。また、各市町村の実情を踏まえた体制構築の必要性も指摘されています。まとめ介護保険部会では、2040年を見据えた介護保険制度の見直しに向けた議論が進められています。身寄りのない高齢者等への支援については、地域ケア会議の活用推進と相談体制の充実により、地域全体で課題に対応する体制の構築が目指されています。介護予防の推進については、通いの場の機能強化と多機能拠点の整備がモデル事業として検証されています。過疎地域等における包括的な支援体制については、福祉部会での議論を踏まえ、相談支援・地域づくり事業の機能別構造化による対応が検討されています。今後も介護保険部会および福祉部会における議論の動向に注目が必要です。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe