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2025-12-04 04:47

医療機関のDX化推進へ新たな支援枠組みを検討|厚労省が方向性案を提示

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令和7年11月27日に開催された第205回社会保障審議会医療保険部会において、厚生労働省医政局から「業務効率化・職場環境改善の更なる推進に関する方向性について(案)」が示されました。2040年に向けて医療従事者の確保がますます困難となる中、医療界全体での業務効率化を実効あるものとするため、国は制度的対応を含む新たな施策の方向性を検討しています。なお、本資料は同年11月25日の第121回社会保障審議会医療部会でも提示されたものです。

今回示された方向性案は、大きく2つの柱で構成されています。第1の柱は「医療機関の業務のDX化の推進」です。この柱では、国・自治体による支援等として6項目、医療機関の責務の明確化として1項目が検討事項として挙げられています。第2の柱は「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」です。以下、各項目の内容を解説します。

医療機関の業務DX化推進に向けた国・自治体による支援等(6項目)

厚生労働省は、業務DX化に取り組む医療機関の裾野を広げるため、6つの支援策の方向性を提案しています。いずれも「〜してはどうか」という検討段階の提案です。

第1に、多くの医療機関を支援する新たな枠組みの創設が提案されています。従来の試行的・先進的な取組への支援だけでなく、業務のDX化に取り組む多くの医療機関を対象とした支援体制を構築することが検討されています。DX化の効果発現には一定期間を要するため、継続的な支援の在り方も論点となっています。

第2に、統一的な基準によるデータ収集の実施が提案されています。DX化を推進するにあたり、効果等のエビデンスを蓄積することが重要とされています。具体的には、労働時間の変化、医療の質や安全の確保、経営状況に与える影響等に関する必要なデータを収集することが検討されています。

第3に、診療報酬上求める基準の柔軟化が提案されています。上記のエビデンスの蓄積を行いながら、業務の効率化を図る場合における基準の見直しを検討するとされています。

第4に、適正価格での機器・サービス導入を支援する仕組みの構築が提案されています。医療機関が製品やサービスの価格・機能・効果を客観的に把握できる環境を整備することが検討されています。

第5に、都道府県の医療勤務環境改善支援センターの体制拡充・機能強化が提案されています。業務効率化や職場環境改善に取り組む医療機関への伴走支援を強化することが検討されています。

第6に、計画的に取り組む病院の公的認定制度の創設が提案されています。業務効率化・職場環境改善に積極的に取り組むことが、医療従事者の職場定着にプラスとなり、労働市場における医療従事者の確保の面でより有利になるよう、対外的にも発信できる仕組みを整えることが検討されています。

医療機関の責務の明確化

国・自治体による支援等に加え、医療機関の責務についても見直しが検討されています。現行制度では、病院又は診療所の管理者は、医療従事者の勤務環境の改善その他の医療従事者の確保に取り組む措置を講ずるよう努めることとなっています。今後は、これらに加え「業務効率化」にも取り組むよう努めることとしてはどうか、と提案されています。

タスク・シフト/シェアの推進と医療従事者養成体制の確保

第2の柱として、タスク・シフト/シェアの推進と医療従事者の養成体制確保に関する方向性が示されています。

タスク・シフト/シェアについては、医療機関における取組がさらに定着するよう、国等の支援を受けて業務のDX化に取り組む際には、併せてタスク・シフト/シェアの実施や業務プロセス自体の見直しを進めることとしてはどうか、と提案されています。

医療従事者の養成体制については、地域において医療関係職種を安定的に確保できるよう検討を進めることが提案されています。具体的には、各地域の人口減少の推移や今後の地域医療構想等を踏まえた各医療関係職種の需給状況を見通しつつ、遠隔授業の実施やサテライト化の活用などをはじめ、地域における安定的な養成体制を確保するため国・都道府県等が取り組むべき事項について検討を進めることとされています。

医療関係職種の魅力向上に向けた3つの対応

医療水準を維持しつつ、より少ない人員でも必要な医療が提供できる体制、また医療関係職種が意欲・能力やライフコースに合わせた働き方・キャリアの選択が可能となる体制を構築するため、3つの対応が提案されています。これらは、若者・社会人にとって医療関係職種がより魅力あるものとなることを目指しています。

第1に、養成課程への参入しやすさの向上が挙げられています。医療関係職種の各資格間において現在でも可能となっている既修単位の履修免除の活用や、養成に係る修業年限の柔軟化など、若者・社会人にとっても参入しやすい養成課程となるよう、まずは課題等を把握し、各職種の状況に応じた支援の在り方を検討することとされています。

第2に、キャリア・スキル向上等への支援が挙げられています。意欲・能力やライフコースに合わせて、更なるキャリア・スキルの向上を目指す者や、育児・介護等の事情を抱えて働く者への支援、そうした者が地域や職場でより能力を発揮できる環境整備やセカンドキャリアとして働く上でのマネジメントに関するリカレント教育等の在り方について、具体的に検討を進めることとされています。

第3に、歯科衛生士・歯科技工士の業務範囲等の見直しが挙げられています。歯科衛生士・歯科技工士の業務範囲や、歯科技工の場所の在り方については、現在進めているそれぞれの業務のあり方等に関する検討会において具体的に検討を進めることとされています。

まとめ

今回示された方向性案は、「医療機関の業務のDX化の推進」と「タスク・シフト/シェアの推進等、医療従事者の養成体制の確保、医療従事者確保に資する環境整備等」という2つの柱で構成されています。DX化については、新たな支援枠組みの創設、エビデンス蓄積のためのデータ収集、診療報酬基準の柔軟化、適正価格での導入支援、伴走支援の強化、公的認定制度の創設という6項目の支援策が検討されています。また、医療機関の責務として業務効率化を追加することも提案されています。これらはいずれも検討段階の提案であり、今後の審議会等での議論を経て具体化される見込みです。



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サマリー

厚生労働省は、日本の医療機関のDX化を推進するための方向性案を示しています。この案は、医療業界全体の底上げを目指し、人材育成と業務効率化の確立を図っています。

医療機関のDX化推進
2040年、日本の医療がまあ崩壊の危機にあるなんて言われてますよね。
えー、深刻な問題ですよね。
そんな未来予測に対してですね、国が一つの設計図みたいなものを示したと。
今日はこの資料を一緒に読み解いていきたいんですが、昨年11月に出された厚生労働省の方向性案。
これ一体何が書かれているんでしょうか。
早速見ていくと、大きな柱の一つは、医療機関の業務のDX化推進。
デジタルで現場の負担を減らそうと。
そうですね。
具体的に6つの支援策があるとありますが、こういうのって結局体力のある大きな病院ばかりが恩恵を受けて、
本当に助けが必要な地方のクリニックには届かないなんてことになりがちじゃないですか。
ええ、まさにそこが重要なポイントなんです。
実は今回の案で非常に興味深いのが、その点を意識しているところなんですね。
これまでの支援って、どちらかというと先進的な取り組みをする一部の病院が対象でした。
でも今回は、多くの医療機関を対象に、もっと裾野の広い枠組みを作ろうとしているんです。
なるほど、アプローチを変えてきたと。
そうなんです。業界全体で底上げしようっていう、そういう意図が見えますよね。
他にも公的認定制度っていうのも面白いですよ。
公的認定制度。
職場環境の改善に積極的な病院に、国がお墨付きを与えるっていう。
お墨付きですか。それが採用につながるだろうと。
期待としてはそうですね。ただ、このお墨付き制度。
聞こえはいいですけど、現場からは、それよりもまず給与とか人員配置をっていう声が聞こえてきそうです。
ああ、確かに。
ええ、なので本当に魅力的なインセンティブになるのか、その実効性が問われますね。
なるほど。DXで業務を効率化するのは一つの手ですよね。
でも、どんなにすごいツールがあっても、それを使う人がいなければこれ意味がない。
そこが二つ目の柱である人材の話につながってくるわけですね。
まさにその通りです。
人材育成と業務効率化
テクノロジーと人はセットで考えないと意味がないというのが、この案の核心部分なんです。
タスクシフトシェアという言葉が出てきますが、これちょっと難しく聞こえますよね。
ちょっと分かりにくいです。
要は専門家が本当にその人でなければできない仕事に集中できるようにしようっていう、そういう考え方です。
ほうほう。
例えば、これまでお医者さんがやっていた診断書の作成の一部を専門のトレーニングを受けたクラークの方に任せる。
ああ。
これだけでも医師の負担は大きく減って、もっと患者さんと向き合う時間が増えるじゃないですか。
なるほど。人を増やすだけじゃなくて、今いる人の働き方を変えると。
まさに。それに加えて、そもそも医療業界に入ってくる人を増やそうという提案も具体的です。
と言えますと。
特に注目なのが、養成家庭への参入しやすさの向上ですね。
一度社会に出た人でも学び直せるように、就業年限を柔軟にしたり、他の資格の単位を流用できるようにしたり、間口を広げようとしてるんですね。
テクロロジーと人、両輪で改革を進めると。
でもその二つって時に対立しませんか?
例えば、DXを進めれば人の仕事が奪われるって現場から反発が起きる可能性もある。
その辺りのバランスってどうなんでしょう?
あー、鋭い指摘ですね。そこは間違いなく今後の大きな論点になるでしょう。
この提案が目指してるのは、仕事を奪うんじゃなくて、人の能力を拡張するDXのはずなんです。
能力を拡張する?
ええ。単純作業は機械に任せて、人はもっと創造的で、コミュニケーションが必要な業務に集中する。
そのビジョンを現場と共有できるかが成功の鍵になりますね。
ここまでを整理すると、今回の提案は単なるつけ焼き屋場の対策じゃないと。
そうですね。
テクノロジーによる効率化と働き方と人材育成の改革という二つの戦略で、
日本の医療システムそのものを長期的に変えようという国の強い意思表示と言えそうですね。
ええ。もちろん、これらはまだ案の段階です。
でも、2040年という未来から逆算して、今から制度レベルで手を打とうとしている。
この方向性自体がこれまでとは違う大きな一歩だと思います。
これからこれがどう具体化していくのか、しっかり見ていく必要がありますね。
さて、今日の話を踏まえて、あなたに一つ考えてみてほしいことがあります。
もし、医療現場のDXと働き方の見直しが本格的に進んだとしたら、
これからの医療従事者に求められるスキルは、従来の専門知識や技術以外に一体どんなものになるのでしょうか。
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