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2025-11-29 05:31

【2040年に向けて】介護人材確保の新戦略|福祉人材確保専門委員会が示す4つの柱

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2040年には65歳以上の高齢者数がピークを迎え、介護と医療の複合ニーズを抱える85歳以上人口が増加します。一方で生産年齢人口は減少し、介護の担い手確保は喫緊の課題となっています。このような状況を踏まえ、社会保障審議会福祉部会の福祉人材確保専門委員会は、令和7年11月11日に「議論の整理」をとりまとめ、第31回福祉部会に報告しました。

この報告書は、地域差を踏まえたプラットフォーム機能の充実、多様な人材の確保・育成、中核的介護人材の確保・育成、外国人介護人材の確保・定着という4つの柱で構成されています。介護関係職種の有効求人倍率は令和7年9月時点で4.02倍と、全職業の有効求人倍率(1.10倍)と比較しても非常に高い水準にあり、都道府県によっては8倍台となる地域もあります。本稿では、この報告書の主要なポイントを解説します。

地域差を踏まえたプラットフォーム機能の充実

都道府県が設置主体となり、介護人材確保に関するプラットフォームを制度として構築する方針が示されました。このプラットフォームは、地域の関係者が情報を収集・共有・分析し、協働して課題解決に取り組むための仕組みです。

プラットフォームの構造は重層的な設計となっています。第1層は都道府県単位で関係者が人材確保の課題を認識・共有する場として機能します。第2層は市町村単位や複数市町村の圏域単位など、より狭い地域で設置され、「人材確保・定着」「職場環境の改善、生産性向上・経営支援」「介護のイメージ改善・理解促進」などの個別課題に応じたプロジェクトチームとして活動します。

このプラットフォームには、市町村、ハローワーク、福祉人材センター、介護労働安定センター、介護事業者、介護福祉士養成施設、職能団体などの関係者が参画します。福祉人材センターがコーディネーター的な中核的役割を担い、関係者の取組を連携させることが想定されています。これにより、情報の収集・共有・分析から課題の発見、取組の実施、効果検証、改善までのPDCAサイクルを回すことが可能となります。

多様な人材の確保・育成・定着のための取組

若者・高齢者・未経験者などの多様な人材を確保・育成するため、情報発信・広報戦略の強化と、テクノロジー活用による業務改善の2つのアプローチが提案されています。

情報発信については、テクノロジー導入や社会的課題への対応など、介護現場における最新の取組を積極的に発信することが重要です。テクノロジーの導入により、介護職員の負担軽減と利用者と関わる時間の確保が両立できている事例があります。また、職場体験やインターンシップを通じて、地域の関係者に福祉現場を理解してもらう取組も重要とされています。

人材の定着支援については、テクノロジーの活用による介護の質の向上と業務負担軽減に加え、いわゆる「介護助手」の活用が提案されています。業務の整理・切り出しにより介護の直接業務とその他業務を明確化し、周辺業務を介護助手が担うことで、タスクシフト/シェアを進め、業務改善・生産性向上を図ります。この取組は人手不足解決だけでなく、介護の専門性の明確化にもつながるものと位置づけられています。

中核的介護人材の確保・育成と資格制度の見直し

中核的介護人材の確保・育成については、山脈型キャリアモデルの深化、介護福祉士の届出制度拡充、複数資格取得の促進という3つの方策が示されています。

山脈型キャリアモデルとは、サービスや経営のマネジメントを行う役割に加え、認知症ケア・看取りケア等の特定のスキルを極めることや、地域全体の介護力向上を進めることなど、介護人材が目指す複数のキャリアパスを示すものです。中核的介護人材が担うべき具体的役割・機能や必要な資質・能力の整理と、これを身につけるための研修体系の整備が必要とされています。

介護福祉士の届出制度については、現行の潜在介護福祉士への復職支援に加え、現任の介護福祉士にも届出の努力義務を課すことが提案されています。これにより、地域における介護人材の実態把握や必要なキャリア支援を行う仕組みへと発展させることが目指されています。

介護福祉士養成施設卒業者の国家試験義務付けの経過措置については、令和8年度卒業者までとされている現行の経過措置の取扱いが議論されました。資格の質の担保・専門性の向上等の観点から終了すべきとの意見と、養成施設の入学者確保・介護人材確保等の観点から延長すべきとの意見の両方が示されています。今後、介護福祉士養成施設の役割も勘案しながら、必要な対応が講じられる見込みです。

外国人介護人材の確保・定着策と准介護福祉士の在り方

外国人介護人材の確保・定着については、プラットフォーム機能を活用した地域ごとの支援策が提案されています。特に小規模法人における外国人介護人材の受入れが課題となっており、海外現地での働きかけなどの確保策や、日本語教育、文化の違いへの対応、生活環境整備などの定着策を地域ごとに検討することが必要です。

令和7年4月からは、一定の要件のもとで技能実習生と特定技能外国人が訪問系サービスに従事することが可能となりました。緊急時の対応やトラブルの未然防止に向けたリスク管理、利用者・家族からの同意取得、ハラスメント対策としてのマニュアル整備等が重要とされています。

准介護福祉士については、国家試験に合格していない者に付与される資格であり、フィリピンとのEPA(経済連携協定)締結時の経緯から創設されたものです。本専門委員会では、資格に対する社会的評価・資質の担保や、介護福祉士の専門職としての地位の向上・確立の観点から廃止すべきとの意見が示されました。フィリピン国政府との関係等も考慮しながら、適切な対応が検討される予定です。

まとめ

福祉人材確保専門委員会の議論の整理は、2040年に向けた介護人材確保の方向性を示す重要な報告書です。都道府県主導のプラットフォーム構築による地域連携の強化、多様な人材の確保とテクノロジー活用による業務改善、中核的介護人材の育成と資格制度の見直し、外国人介護人材の支援体制整備という4つの柱が提示されました。

今後、この報告書の内容は社会保障審議会福祉部会でさらに議論を深めるとともに、介護保険部会その他関係審議会等においても議論が進められます。処遇改善なしに人材確保はなしえないとの意見が多くの委員から示されており、福祉・介護分野の処遇改善や専門性の評価も重要な課題として引き続き検討されることになります。



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サマリー

このエピソードでは、2040年の介護人材確保のための新しい戦略について議論され、4つの柱が提案されます。特に地域プラットフォームの活用や多様な人材の確保、中核人材の育成、外国人材の受け入れを通じて、介護業界の課題への対応が検討されます。

介護人材確保の背景と最初の柱
さて、今日は専門委員会の報告書をもとに、2040年の介護機器という、かなり大きなテーマを深掘りしていきたいと思います。
この報告書、何だか4つのピースからなるパズルを提示しているように見えまして、問題は、この4つのピースを組み合わせた時に、本当に2040年の機器を救う絵が完成するのかどうか、一つずつ見ていきたいなと。
そうですね。ただその前に、まずこのパズルの背景がいかに切迫しているか、ちょっと一つの数字で見てみましょうか。
はい、お願いします。
令和7年9月時点のデータなんですけど、介護職の有効求人倍率が4.02倍。
4倍?
ええ。で、全職業の平均が1.10倍ですから、いかにこの数字が大きいか。
なるほど。都道府県によっては、もう8倍を超えているところさえあるんです。
8倍ですか。それはもう危機的というか異常事態ですね。
まさに。では、その状況を打開するための最初のピース、地域ごとのプラットフォームとは、これは一体何なんでしょうか。
はい。これはですね、都道府県が司令塔のような役割を担ってですね。
司令塔。
ええ。市町村ですとか、ハローワーク、それから地域の介護事業者が連携して、地域全体で人材を確保育成していく、共同作戦本部みたいなイメージですね。
ああ、なるほど。個々の事業所がバラバラに動くんじゃなくて、面で捉えていこうと?
その通りです。情報を共有して、地域の実情に合った対策をPDCAサイクルで回していこうという狙いがあります。
なるほど。ただ、その箱ができても肝心の中身、つまり人をどう集めるのか、それが次の焦点ですよね。
報告書では二つ目のピースとして、多様な人材の確保を挙げていますが、ここで介護助手というちょっと面白いアイディアが出てきます。
そうなんです。この介護助手というのは、介護職員がその資格を要するような専門的なケアに集中できるようにですね。
はい。
例えば清掃ですとか、配膳、ベッドメイキングといった周辺業務を切り出して、別のスタッフになってもらおうという考え方です。
多様性と報酬の重要性
ああ、業務を切り分ける。
ええ、そうすることで未経験の方とか、あるいは体力に少し不安がある高齢の方でも、介護現場で活躍する道が開けるんじゃないかと。
その介護助手ですか。聞こえはいいですけど、それによって、かえって専門職と非専門職の間に壁ができてしまったりとか。
ええ。
あるいはその助手の方の待遇が低く抑えられたりする、そういうリスクはありませんか。報告書はそのあたりは。
いや、非常に鋭いご指摘です。報告書もそのリスクは当然認識していて、だからこそテクノロジーの活用ですね。
テクノロジー。
はい。業務全体の負担軽減とセットで進める重要性を強調しています。あくまでチーム全体の生産性を上げるための分業であって、新たな格差を生むものであってはならないということですね。
なるほど。そして3つ目のピースが中核人材の育成。ここで山脈型キャリアモデルというまた面白い言葉が出てきました。
ええ。
キャリアというと1本の箱を登るイメージですけど、山脈、つまり異音な山頂を目指していいということですかね。
まさにその通りなんです。これまでは管理職を目指すのが主なキャリアパスでしたけど、それだけじゃなくて、
はい。
例えば認知症ケアのスペシャリストとか、かんみりケアのプロフェッショナルといった専門性を極める多様なキャリアの峰々を用意すると。
ああ、なるほど。
これで現場の専門職として長く働き続けたいという人のモチベーションを支える狙いがあるんです。
あなたも1つの道だけじゃなくて選択肢があった方がキャリアを考えやすいですよね。
それは個人的にもすごく惹かれる考え方ですね。そして最後のピースが外国人材。ここはやはり一筋縄ではいかない課題がありそうですね。
特に体力のあまりない小規模な事業所にとって、海外での採用活動から来日後の日本語教育、生活支援までを単独で行うのは非常に困難なんです。
そうでしょうね。
そこで最初のピースであった地域プラットフォームが生きてくるわけです。
ここでつながるんですね。
そうなんです。地域ぐるみで採用とか研修、住居のサポートなんかを行うことで、小さな事業所でも外国人材を受け入れやすくする。すべてがつながってるんですよね。
なるほど。個々の点の発想から地域全体で支える面の発想へ。そしてキャリアも一本道という線ではなく、多様な働き方を許容する立体的な構造へと。
国がやろうとしているのは、介護という業界のOSを根本から入れ替えるような大きなパラダイムシフトなんですね。
そういうことだと思います。ただ忘れてはならないのが、報告書の中で多くの委員が口をそろえて指摘している点があるんです。
どう言いますと。
どんな宿便を作っても処遇改善なしに人材確保はありえないと。
このパズルには実は最も重要かもしれない給与というピースがまだ明確には描かれていないんですよ。
どんなに素晴らしい戦略を立てても、その担い手となる人を引きつける魅力、つまり仕事の価値に見合った対価がなければ、結局は絵に描いた餅になってしまうと。
この報告書が本当に問いかけているのは、その4つの戦略のさらに先にあるその根本的な問題なのかもしれないですね。
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