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もし、また働けなくなったら。保育士さちさんの人生ノート。
夜になると、さちさんには、ついやってしまうことがありました。
貯金額を見る。認差を開く。そして、このペースだったら、何年後にいくらになるんだろう、と計算する。
昨日も見たのに、今日もまた見る。数字が大きく変わっているわけではありません。
それでも気になってしまいます。
さちさんは、15年近く保育の現場で働いてきました。
保育士という仕事が好きです。責任の大きさに対して給料が見合っていない。
そう感じることはあっても、辞めたいわけではありませんでした。
できるなら、体力が続く限り続けたい。
そんなさちさんが、夜になると何度もお金を確認するようになったのには、理由がありました。
一度、働けなくなった経験があったからです。
仕事を休む。収入が止まる。それまで毎月入ってきた給料が当たり前ではなくなりました。
そして、一つの不安が残ります。
もし、また働けなくなったら。
保育士として働けなくなったとき、収入まで全部止まってしまう。
だったら、保育以外にも自分を支えられる方法を持っておきたい。
さちさんは少しずつ、別の道を探し始めました。
実は、さちさんが副業を考えたのは、これが初めてではありません。
保育士として働きながら、ベビーシッターをしたこともありました。
療育の現場でアルバイトをしたこともあります。
どちらも、これまでの経験を生かせる仕事でした。
働けば、その分だけ収入は増えます。
実際、増えたお金で大阪旅行にも行きました。
働いた分だけ、普段とは違う楽しみに使えるお金が増える。
それは素直に嬉しいことでした。
ただ、続けていくと、別の問題も出てきました。
ベビーシッターは思うようにマッチングしない。
仕事が決まれば、そこまで通わなければならない。
療育のアルバイトは土曜日。
平日は保育士としてフルタイムで働く。
そして土曜日も別の現場で働く。
お金は増えるんだけど、しんどい。
収入を増やすために働く時間も増えていきました。
体力を使って働いて、さらに体力を使って収入を増やす。
一度働けなくなった経験がある幸さんにとって、
それだけでは、もしもの時の答えにはなりませんでした。
そこで今度は、家にいてもできそうなこと、
体を動かさなくても続けられそうなこと、
そんなものを探すようになります。
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在宅ワークも試してみました。
資格の勉強もしました。
その一つが、母規です。
けれど、慣れない数字、聞き慣れない言葉、
勉強していてもなかなか頭に入ってこない。
わからない自分にだんだんイライラしてきます。
そんな時、母規の資格を取っても、
それだけで採用してくれるところはなかなかないと思うよ、
と言われました。
じゃあこれを取った先に何があるんだろう、
またわからなくなりました。
ベビーシッター、領域のアルバイト、
在宅ワーク、資格の勉強、
何もしていなかったわけではありません。
その時の自分にできそうなものを見つけては試していました。
でも、もし保育士として働けなくなっても、
これなら自分を支えられる、
そう思えるものはまだ見つかっていませんでした。
そんな中、幸さんには以前から気になっていたものがありました。
保育士として働きながら、
今までとは違うことを学ぶという選択肢です。
何度も目にはしていました。
気になってないよう見ることもありました。
でも、その度に結局閉じる、
私には無理だろうな、そう思っていたからです。
これまで長く続けてきたのは保育の仕事です。
子どものことなら経験してきたことがある。
保護者対応も後輩の相談に乗ることもしてきた。
でも、そこから一歩外に出れば、
自分に何ができるのかは分かりませんでした。
新しいことを始めても、
結局何も身につかないんじゃないか、
できるのは一部の人だけなんじゃないか、
そう考えると気にはなるけれど、
自分から近づこうとは思えませんでした。
だから、見る、閉じる、また気になって見る、
そしてまた閉じる、
そんなことをしばらく繰り返していました。
でも一方で、本気で長く続けられる
別の働き方を探している自分もいました。
だからこそ、気になっていた選択肢も
完全には忘れられませんでした。
ある日、いつものようにその内容を見ていた時です。
幸さんは、
とりあえず話だけ聞いてみようかな、と思いました。
何か特別な出来事があったわけではありません。
今日から人生を変えようと決意したわけでもない。
怖くなくなったわけでも、
急に自信がついたわけでもありません。
後から、
あの時どんな気持ちだった?と聞かれても、
幸さん自身、無だったかもしれないと言います。
それくらい大きな決意ではありませんでした。
でも何度も見て、何度も閉じていたものを
その日は閉じなかった。
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自分には無理と決める前に、
一度だけその先を聞いてみることにしました。
そこで知ったのは、
自分と同じように保育の現場で働きながら、
50代、60代になってからも
新しいことを始めている人がいることでした。
それを聞いて、
じゃあ私にもできるのかもしれない、
ほんの少しそう思いました。
もちろん、
絶対できるに変わったわけではありません。
できないと思うから、
できるかどうかまだ分からないくらい。
でも幸さんにとっては、
それで十分でした。
保育士を辞めたいわけではありません。
今の仕事はできるだけ長く続けたい。
その気持ちは変わりません。
ただ、
一度働けなくなったことで、
今の仕事だけに自分の収入を全て預ける怖さも知りました。
だから今の道を捨てるのではなく、
その隣にもう一つの道を作ってみる。
最初は月に2万、3万でもいい。
もしまた働けなくなることがあったとき、
私にはこっちもあると思えるものを
少しずつ持っておきたい。
幸さんはずっと見てみぬふりをしていたものに
初めて一歩だけ近づいてみることにしました。
ところが初めて見ると、
私にもできるかもしれないと思えた日は
そう長くは続きませんでした。
分からない。
考えても分からない。
自信のないことになると、
幸さんはとことん自信がなくなります。
頭が真っ白になる。
考えようとしても思考が止まる。
何が分からないの?と聞かれても、
何が分からないのかが分からない。
質問していいよ?と言われても、
何を質問したらいいんだろう?
そこでまた止まります。
そんな日が何度もありました。
やることはある。
分かっている。
でももう考えたくない。
幸さんはソファーに寝転がります。
スマホを開いて旅行の投稿を見る。
綺麗な景色。
行ってみたい場所。
温泉。
次から次へと見ていく。
それでも足りなければゲームをする。
頭の中にあるのは、
私には無理だったんだ。
もう嫌だ。
何やってもダメなんだ。
そんな言葉です。
やらなければいけないことはなるべく考えない。
しばらく現実逃避です。
でも一時間くらい経つと、
ふと我に帰ります。
あ、私何してたんだ。
やらなきゃ。
と気合を入れ直すわけではありません。
前向きな言葉を自分にかけるわけでもありません。
ただ、
あ、戻ろう。
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そんな感じでまた続きを始めます。
そしてまた別の日には泊まる。
ソファーに寝転がる。
旅行を見る。
ゲームをする。
一時間くらいしてまた戻る。
新しいことを学ぶ毎日は、
前向きに走り続けるようなものではありませんでした。
保育なら15年近く経験があります。
目の前の子供の姿を見て、
なぜ今この行動をしているのか考える。
関わってみる。
違ったら別の方法を試す。
それでもわからなければ誰かに相談する。
何年も繰り返してきた中で身についた感覚があります。
でも新しいことになるとそうはいきませんでした。
今までなら当たり前にできていた
考えて動くということさえ急に難しくなる。
わからないことを前にすると
何から考えればいいのかさえわからなくなる。
15年近く働いてきても
初めてのことの前ではまた一からでした。
そして周りには自分よりできているように見える人がいます。
進むのが早い人。
自分の考えをすぐ言葉にできる人。
結果が見え始めている人。
見るたびに落ち込みました。
実はこれは始めたばかりの頃だけでの話ではありません。
4ヶ月ほど経った今でも落ち込むことがあります。
人には人のペースがある。
私は私のペースでやろう。
そう思っていても結果がついてこなければやっぱり落ち込む。
講師からここは成長したねと声をかけてもらうこともあります。
嬉しい。
でも同時に私はこれだけしか進んでいないと
周りと比べてしまう自分もいます。
成長したと思うところは?
そう聞かれてもさちさんはすぐには答えられません。
何だろう?
自分ではよくわからないそうです。
それでも今日もまだやめてはいません。
止まって落ち込んで時々ソファーに逃げて
そして1時間くらいしたらまた戻る。
今はその繰り返しです。
学び始めてからおよそ4ヶ月。
さちさんは思っていたような結果が出なくて落ち込むこともあります。
自分に期待できなくなる日もあります。
だから新しいことに挑戦して自信がつきましたとはまだ言えません。
平日は今までと変わらずフルタイムで保育士として働いています。
1日働いて家に帰ればもちろん使われている日もあります。
今日はもう何もしたくない。そう思う日もあります。
それでも今は保育士として働く毎日の中に
今までとは違うことを考える時間もあります。
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何かが大きく変わったわけではありません。
朝になればまた保育の現場へ行く。
そんな今までの日常の隣にもう一つ
自分のこれからを考える時間が増えました。
そんな毎日をさちさんは今も続けています。
その理由は始めた時と大きくは変わっていません。
保育士が好きだから。できるなら体力が続く限り続けたいから。
そしてもしまた働けなくなる時が来たとしても
生活まで一緒に止まらないようにしたいから。
その一方で将来について考える内容は少し変わってきました。
以前はいくら貯めたら大丈夫なんだろう。
老後までにあといくら必要なんだろう。
そんな数字を何度も確認していました。
もちろん今もお金は大切です。
でもそのお金で何をしたいのか
その先の生活も考えるようになりました。
まずは両親に旅行をプレゼントしたい。
仕事を休んでいた時一番近くで支えてくれた両親です。
旅行が好きな二人に今度は自分から旅行を送りたい。
離れて暮らしているから会えるのは年に数回。
もう少し余裕ができたら会いに行く回数も増やしたい。
そして自分にも月に一回くらい近場の温泉に行きたい。
働いて疲れてまた働いて。
それだけで終わるのではなく
自分が楽しむためにもお金と時間を使いたい。
BBシッターや両育のアルバイトをして
増えたお金で大阪に行った時のように
働いて得たものが自分の楽しみにつながる嬉しさを
サチさんは知っています。
ただそのためにずっと体力を削って働き続けるのは難しい。
だから今これまでとは違う道を少しずつ歩いています。
いくらあれば安心かだけを考えていたところから
私はどんな生活をしたいのか
そこまで考えるようになりました。
保育士を続けたい。
でももしまた働けなくなった時に
収入まで全部止まるのは怖い。
だから今の仕事を続けながら
もう一つの道を探してみる。
サチさんが選んだのはそんな働き方でした。
まだその途中です。
自信がついたとも結果が出たとも言い切れません。
今日も誰かと比べて落ち込むかもしれない。
またソファーに寝転がって
現実逃避する日もあるかもしれません。
それでも、
あ、私何してたんだ?とまた戻ってくる。
今のサチさんはそんな風にこの道を歩いています。
今の仕事を大切にしながら
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その先の人生のために別の道も作っておく。
あなたはこれからの自分に
どんな選択肢を残しておきたいですか?
先生の人生ノート
今回は保育士サチさんの
もしまた働けなくなったら
あなたのノートには今どんな道が書かれていますか?