「紅白リレー」/ 保育士の感動エピソード
2026-10-16 18:40

「紅白リレー」/ 保育士の感動エピソード

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紅白リレー 運動会の練習で、勝つたびに大きく喜ぶ子どもたちがいました。 一方で、何度練習しても負けてしまい、ゴールした瞬間に涙をこぼす子もいました。
年長クラスの紅白リレー。赤組のアンカーはA君、白組のアンカーはB子ちゃんでした。 初めての練習では、A君が余裕のある表情で走っていました。
ところが、最後の最後でB子ちゃんがA君を追い抜き、白組が勝ちました。 その時のA君は、とても悔しそうでした。
2回目の練習から、A君は最後まで気を抜かず、一生懸命走るようになりました。 今度は、赤組が勝つことが続きます。
B子ちゃんは、ゴールした瞬間に涙をこぼすようになりました。 勝ちたい。最後まで諦めたくない。自分のチームのために走りたい。
子どもたちそれぞれの気持ちがリレーの中に現れていました。
今日は、勝った・負けたという結果だけではなく、練習を重ねる中で子どもたちの気持ちや関わりがどのように変わっていったのか、
紅白リレーを通して見えたグラスの育ちについてお話しします。
紅白リレーは、子どもたちにとって、ただ走るだけの競技ではありませんでした。
自分の番が来るまで、友達の走る姿を見て待つ。 バトンを受け取ったら、次の友達につなぐ。
そして、自分の走りがチームの順位につながる。
一人一人が走る競技でありながら、友達と一緒に取り組む競技でもあります。
年長になって運動会の練習にも少しずつ慣れていく子どもたち。
走る順番を覚え、バトンを受け取る位置を確認し、次の友達へ渡す練習をしていました。
練習が始まったばかりの頃は、勝つと飛び上がって喜び、負けると悔しがる姿がありました。
勝敗がつくと、子どもたちの表情は大きく変わります。
それは、勝ちたい気持ちがあるからこそです。
自分が一生懸命走ること、友達にバトンをつなぐこと、チームのみんなと勝つこと、子どもたちはそれぞれの思いを胸に走っていました。
最初の練習で安価を務めたA君は、走り始めたとき、どこか余裕のある表情に見えました。
赤組が少し前を走っている。自分が最後まで走れば、そのまま赤組が勝てる。そんなふうに感じていたのかもしれません。
しかし、ゴールの直前で、白組のB子ちゃんが追いつきました。
そして、A君を追い抜いてゴールしました。
白組の勝ちでした。A君の表情は、さっきまでの余裕とは違っていました。
アンカーとして最後を走り、勝てると思っていたところで抜かれた。その悔しさがA君の顔に現れていました。
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その次の練習から、A君の走りは変わりました。
前のように余裕を感じさせる走りではなく、最後まで気を抜かず、一生懸命走るようになりました。
悔しかった経験が、A君の次の走りにつながっていたのだと思います。
一方で、B子ちゃんにとっては、勝つことが続いたわけではありませんでした。
2回目、3回目と練習を重ねても、赤組が勝つことが続きました。
B子ちゃんはアンカーとして最後まで走り切りました。
けれど、ゴールした瞬間、涙をこぼしながら戻ってくる姿がありました。
悔しい。どうして勝てないんだろう。
その言葉をB子ちゃんが口にはしませんが、涙を流す姿から、勝ちたい気持ちや、思うようにいかない悔しさが伝わってきました。
私たち保育士も、何とか走る順番を考えました。
できるだけ差が大きくならず、最後に接戦になるようにできないか。
子どもたちの走る力を見ながら、順番を工夫しました。
それでも練習では、赤組が勝つことが続きます。
順番を変えれば、必ず結果が変わるわけではありません。
走る子どもたちのその日の様子や、バトンの受け渡し、走る時の勢いによっても結果は変わります。
私たちは、園長先生とも相談し、メンバーを交代するのではなく、走る順番を工夫しながら、子どもたちがそれぞれの力を出せるように考えていきました。
その間にも、子どもたちは何度も走りました。
勝った時の喜び、負けた時の悔しさ、バトンを受け取る緊張、友達にバトンを渡した後の安心、
練習の度に子どもたちのいろいろな気持ちが、クラスの中に重なっていきました。
練習を重ねていたある日、白組のC君が小さな声でこう言いました。
「〇〇君が遅いから負けるんだよ。」
周りの子に聞こえたのか聞こえていなかったのか分からないくらいの声でした。
けれど、私はその言葉に気づきました。
C君ははっきりと誰かを責めようとしてというよりも、負けが続く悔しさの中で思わず心の声を漏らしたように見えました。
もちろん、その言葉を聞いた子どもがどんな気持ちになるかを考えると聞き流してよい言葉ではありません。
その場で、「そんなことを言ってはいけないよ。」とすぐに伝えることもできたと思います。
けれど、その時の私はすぐにC君を正す言葉をかけるのではなく、まずは練習を終えたみんなに話をしました。
みんな一生懸命走ったね。一人一人がバトンをつなぐために一生懸命走っていたね。
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二つのチームがみんなで力を合わせて走っているところ、とってもかっこよかったよ。
そう伝えながら私はC君の方を見ました。
C君は何も言いませんでした。ただじっと私の目を見ていました。
その表情からC君が何を感じていたのか、正確には分かりませんが、しっかりお話を聞いている姿がそこにありました。
私の言葉が届いたのかどうかもその場では分かりません。
私はC君の気持ちを決めつけず、返事を求めず、その場でそれ以上問い詰めることもしませんでした。
それからも練習は続きました。赤組が勝つ、白組が負ける。
B子ちゃんが悔しそうにする、A君が最後まで走る。
一度の言葉でクラスの雰囲気がすぐに変わったわけではありません。
子どもたちが一度話を聞いただけで全てを理解したわけでもありません。
でも、練習を重ねる中で少しずつ声が変わっていきました。
走っている友達に向けて、
「頑張れ!大丈夫!大丈夫!」と声をかける姿が増えていきました。
バトンをつなぐときには次の友達が待っています。
走り終えた子はその友達の走る姿を見守ります。
自分の走る順番が終わってもそこで終わりではありません。
チームの友達が最後まで走る姿を見て声を送っていました。
その中でC君の番が来たときのことです。
C君は走り始めたところで少しつまずいてしまいました。
前を走る友達との距離が空いてしまいます。
その瞬間、C君の表情が曇ったように見えました。
走り終わった後も、いつもは口数の多いC君がうつむき気味に黙っていました。
自分の走りで差が開いてしまった。
もしかしたら自分のせいで負けると思ったのかもしれない。
そう見えましたが、C君の本当の気持ちは本人にしかわかりません。
その場で周りの子どもたちはC君を責めませんでした。
C君が遅かったからだよ、という子もいませんでした。
誰かを責める言葉も聞こえてきませんでした。
少なくとも子どもたちの間には、
友達を責める言葉ではなく、応援する言葉が少しずつ増えていました。
そして、ある日の練習前、いつも負けてしまうことが続いていた白組の子どもたちが突然みんなで手を出しました。
誰かにこうしようと言われたわけではありません。
私が声をかけたわけでもありません。
子どもたちは手を重ねるようにして輪になりました。
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がんばるぞ、おう!
白組が自分たちからエンジンを組んだのです。
その姿を見て私は驚きました。
それまで子どもたちはそれぞれ自分の走る番を頑張っていました。
でも、その時は走る前にみんなで気持ちを合わせているように見えました。
その声を聞いた赤組も負けてはいませんでした。
赤組の子どもたちもみんなで手を出し、輪になって声を上げました。
エイエイ、おう!
二つのチームがそれぞれの場所で気持ちを一つにしていました。
白組も赤組も勝つために声を出していました。
けれど、そこには相手を責める様子はありません。
一人で走る子をみんなで応援する。
一人の走りをチームみんなで受け止める。
その姿を見て私は子どもたちの中で何かが育っているのだと感じました。
ただ、そのことを私が最初の言葉をかけなかったからだと簡単に結びつけることはできません。
子どもたちは毎日の練習や友達とのやり取りを通して、
自分たちなりに感じ、考えていたのだと思います。
やがて本番の日を迎えました。
練習では初めに白組が勝った日がありました。
その後は赤組が勝つことが続き、
白組が勝てないまま運動会当日を迎えました。
本番でも子どもたちはバトンをつなぎながら走りました。
バトンの受け渡しでもたつく場面もありましたが、最後のアンカーへ。
赤組のA君と白組のB子ちゃんがゴールへ向かって走ります。
そしてB子ちゃんが先にゴールテープを切りました。
白組の勝ちでした。
いつも練習では負けていた白組が本番で勝ったのです。
B子ちゃんは両手をいっぱいに上げ、胸を張ってゴールをしました。
その表情はとても嬉しそうでした。
練習では悔しくて涙をこぼしていたB子ちゃん。
何度も負けて思うような結果が出ない日もありました。
そのB子ちゃんが本番では仲間と一緒に勝利を喜んでいました。
その姿を見て私たちも嬉しくなりました。
一方、赤組のアンカーA君も最後まで一生懸命走りました。
けれど練習では何度も勝っていた赤組が本番では僅かな差で負けてしまいました。
A君は唇をキュッと結んだままその場に立っていました。
泣くことも相手を責めることもありません。
ただ、悔しさを胸にしまうように口を開かず、白組の勝ちを告げる言葉を黙って聞いていました。
何度も勝っていた赤組が本番では負けた。
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その結果をA君はすぐに言葉にすることなく受け止めているように見えました。
C君は白組の勝ちを素直にとても喜んでいました。
その場に誰かを責める声はありません。
文句を言う子もいませんでした。
勝ったチームも負けたチームもそれぞれの気持ちを抱えながらその日の結果を受け止めていました。
この紅白リレーを通して、私は子どもたちの成長は目に見える結果だけでは測れないのだと改めて感じました。
リレーの結果だけを見れば、白組は練習でなかなか勝てませんでした。
けれど、本番では白組が勝ちました。
でも、白組が勝ったという一言の中には子どもたちが過ごした時間が入りきりません。
最初の練習でA君が感じた悔しさ。
最後まで気を抜かず走るようになった姿。
B子ちゃんが何度も走り、悔し涙を流したこと。
C君が小さな声で口にした言葉。
自分の走りで差が開いた時、黙っていたC君の姿。
友達を応援する声が増えていったこと。
そして、練習前に子どもたちが自分たちでエンジンを組んだこと。
一つ一つは小さな場面です。
でも、場面が重なってクラスの姿になっていきました。
私はC君が〇〇君が遅いから負けるんだよと言った時、すぐにそのことを言ってはいけないと伝えることもできました。
友達を責める言葉は聞いた相手を傷つけることがあります。
そうした言葉が聞こえた時、保育者が言葉の影響を伝え、相手の気持ちを一緒に考えることは大切です。
その一方で、子どもの言葉が出てきた背景には、悔しさや焦り、勝ちたい気持ちがあるかもしれません。
言葉だけをすぐに正して終わるのではなく、その子がどんな気持ちで口にしたのかを見ようとすることも必要です。
あの時、私はみんなに、「一人一人が一生懸命走っていたね。」と伝え、C君を見つめました。
それで良かったのか、その場でC君に直接声をかけた方が良かったのか、言葉を聞いた子達の気持ちを確かめた方が良かったのか、今でも一つの正解があったとは言い切れません。
子どもの気持ちを受け入れることは、どんな言葉もそのままにして良いということではありません。
また、見守ることは何もせずにいることとも違います。
子どもたちの間で何が起きているかを見つめる。
傷ついている子がいないかに気づく。
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言葉のやりとりが続く時や、誰かが苦しそうにしている時は、必要な言葉を届ける。
その上で、子どもたちが自分たちで考え、関わり合う余地も残しておく。
その両方を大事にしたいと思いました。
保育士が子どもに伝える言葉はもちろん大切です。
けれど、保育士の言葉だけで子どもが成長するのではありません。
友達と一緒に過ごすこと。
同じ競技に取り組むこと。
うまくいかない経験をすること。
そして、そこからもう一度やってみること。
そうした時間の中で、子どもたちは自分なりに考えていきます。
今回のリレーでも、子どもたちは勝つためにどんな風に走るかだけではなく、
友達とどう過ごすかを学んでいたのかもしれません。
はじめは、自分が勝つことや自分のチームが勝つことに気持ちが向いていた子どもたち。
練習を重ねる中で、友達の走りを見守り、
「がんばれ!大丈夫!」と声を届けるようになりました。
一人一人が走るだけだったリレーが、
みんなで応援し、みんなでバトンをつなぐリレーへと変わっていたように感じます。
もちろん、子どもたちが全員同じ気持ちになったわけではありません。
勝ちたい気持ちも、悔しさの表し方も一人一人違います。
B子ちゃんは涙をこぼし、A君は口ぶりをつむんで黙っていました。
C君も自分の走りの後、いつもより口数が少なくなっていました。
その違いがあるまま、子どもたちは同じクラスの仲間として練習を重ねていきました。
誰かの悔しさを急いで消そうとするのではなく、
その気持ちを抱えながらもう一度走る、
友達の姿を見て応援する、
そうした積み重ねがクラスの中に生まれていたのだと思います。
何度も走り、何度も悔しい思いをして、
友達の姿を見て応援する声を聞く、その繰り返しの中にありました。
運動会の本番で子どもたちが勝ったか負けたか、それはその日の結果です。
でも、結果だけでは見えない成長がありました。
勝ちたい気持ちも、悔しい気持ちも、
それぞれの子どもが自分なりに抱えながら仲間と一緒に最後まで走った紅白リレー、
結果だけでは見えない相手を応援し、仲間の姿を受け止めていく子どもたちの成長を感じました。
運動会は勝敗が決まる行事です。
けれど、子どもたちが持ち帰るものは、勝った、負けたという結果だけではないのだと思います。
悔しさを抱えながら走ったこと、
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友達の声に背中を押されたこと、
自分たちで気持ちを一つにしようとしたこと、
誰かを責めずに最後まで一緒に走ったこと、
その一つ一つが子どもたちの心に残っていくのかもしれません。
保育士としてすぐに正しい答えを伝えることも大切です。
けれど、子どもたちの姿を見つめ、必要な時に支えながら、
その子たち自身が関わり合っていく時間を信じることも大切にしたいと思います。
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