「何もない」と思っていた15年/ 先生の人生ノート
2026-10-21 16:29

「何もない」と思っていた15年/ 先生の人生ノート

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保育士として15年働きながら「自分には保育しかない」と感じていたまいさんが、園の外の働き方に触れ、自分では価値がないと思っていた経験の中に新たな可能性を見つけ、これからの働き方を考え始める過程を届けます。

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何もないと思っていた15年 保育士まいさんの人生ノート
ある日、まいさんはスマホで一つの求人を見つけました。 求人を出していたのは、まいさんが大好きなゲーム実況者が関わる会社
ここで働きたい、そう思って募集されている仕事を見ていきました。 好きな会社で働けるかもしれない、そんな期待も少しあったそうです。
ところが、募集条件には事務経験5年、 マーケティング経験5年、
企画運営の経験、そして大卒以上、そんな言葉が並んでいました。 まいさんは社会人になってから15年近くずっと保育士として働いてきました。
事務経験もない、マーケティング経験もない、 大学も出ていない
条件だけを見れば応募できる仕事はほとんどありませんでした。 それでも何とかして入れないのかなぁ、そう思ったそうです。
経験はない、条件にも当てはまらない、でもやる気はある。 働きたいのになぁ、そんな気持ちで求人票を眺めていました。
15年近く社会人として働いてきた。それなのに保育園の外へ出ようとした瞬間、 自分には何もないように見えました。
一般企業の求人を見るようになって、まいさんは昔の自分の選択について考えることが増えました。 大学行っておけばよかったのかなぁ。
今になってそう思うこともあります。 でも当時のまいさんが憧れていたのは保育士でした。
だから保育を専門的に学ぶために専門学校へ進みました。 そして憧れていた保育士になりました。
そこから15年近く社会人になってから経験した仕事はずっと保育です。 だからあの頃のまいさんにとって保育の専門学校へ行くことはとても自然な選択でした。
その選択があったから今の自分がいる。 保育士になったこと自体を後悔しているわけではありません。
今でも子どもはやっぱりかわいい。 毎日予想もしないことが起きます。
面白い。 昨日できなかったことが今日突然できることもある。
考えていた保育が思い通りにいかない日もある。 なんでそうなるの?と思わず笑ってしまうこともある。
そういう毎日をまいさんは今も好きだと話します。 やりがいもある。できることなら保育士という仕事をこれからも続けたい。
でも15年前と今の自分は同じではありません。
年々疲れが取りにくくなりました。 腰も痛い。
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子どもたちと一緒に走ることも以前よりきついと感じるようになりました。 体だけではありません。
精神的にもしんどいなぁと思うことが増えていきました。 それでも給料は決して高くありません。
好きだから続けたい。でもこの働き方をずっと続けられるのか。 そんな思いからまいさんは少しずつ保育園の外にある仕事にも目を向けるようになりました。
一般企業への転職を考える中でまいさんは今の自分にないものを何か身につけなきゃと考えるようになりました。
そこで始めたのが母規の勉強でした。 一般の仕事でも使えそうな資格があれば保育以外の仕事を選ぶときにも少しは選択肢が増えるかもしれない。
そう考えたそうです。 ところがこれが思っていた上にわかりません。
数字、計算、聞き慣れない言葉。 考えてみればこの15年間まいさんが仕事で見続けてきたのは数字ではありませんでした。
目の前にいる子供たちでした。
いつもより少し元気がない。
今日は食事の進みが遅い。
いつも一緒に遊んでいる友達と少し距離がある。
言葉にはならないけれど何かいつもと違う。
そんな小さな変化を見ながら考える。
関わってみる。
違ったら別の方法を試す。
それでもわからなければ誰かに相談する。
それを何年も繰り返してきました。
でも母規の問題を前にすると全然わからない。
数字を見ることも計算することもほとんどしてこなかった15年。
わからない自分に戸惑いました。
そしてもう一つ。
仮に頑張って資格を取れたとしても不安は残りました。
資格を取ったとして私本当にその仕事ができるのかな。
資格を一つ取っただけで知らない仕事が急にできるようになるわけではない。
縁の外へ出るなら保育とは別の何かを新しく身につけなければならない。
まいさんはずっとそう考えていました。
でもその考え方とは少し違う働き方を知ります。
新しいものをゼロから身につけるだけではなく、
これまで経験してきたことを価値に変える働き方。
まいさんにとってはそれまで考えたことのない捉え方でした。
なぜなら自分の15年を縁の外でも使える経験として見たことがなかったからです。
私がやってきたことって何かに使えるの?
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答えはわかりませんでした。
でもわからないまま初めて自分が積み重ねてきたものを持って縁の外へ出てみることになりました。
実際に始めてみるとそこには保育園とは違うことがたくさんありました。
まず知らない言葉が出てくる。横文字も多い。
そして今までとは違うスマホの使い方も出てきます。
パソコンも必ず使わなければならないというわけではありません。
でもこっちの方がやりやすそう。
使えた方がもっとやりやすいかもしれない。
そう思う場面があります。
だから使いたい。でも慣れていない。
これまでスマホも誰かと連絡を取る。写真を撮る。
まいさんにとってはそれくらいの使い方が中心でした。
便利そうなのはわかる。使えたらもっとやりやすそうなのもわかる。
でもこれどうやるの?そんなところからのスタートでした。
そしてもう一つ、まいさんが苦戦したのが言葉にすることでした。
もともと自分は読解力がない。
言語化も苦手。そんなふうに思っていました。
保育園では先生同士ならこれバーってやって、そこをサッとお願い。
そんな言葉でも同じ現場にいるからなんとなく伝わることがあります。
そして子どもたちと話すときも
ブーブーきたね。キラキラしているね。ビューンって言ったね。
擬音や擬態語を使って子どもと一緒に感覚を共有することがあります。
だからまいさんにとってきれいな文章で説明することは
日々の保育の中ではそれほど多くありませんでした。
でも園の外ではなんとなくこんな感じだけでは伝わらないことがあります。
頭の中にあるものを相手にもわかる形にして言葉にする。
私こんなに言葉が出てこないんだ。そう感じることもあったそうです。
横文字はわからない。機械の操作にも慣れていない。
言葉にするのも難しい。やっぱり園の外で働くって簡単じゃない。
そんな中でまいさんには一つだけ思っていたよりすんなりできることがありました。
それが自分が経験してきたことを文章にすることでした。
まいさんは自分のことを文章が得意な人だとは思っていませんでした。
むしろ国語全般が苦手。読解も苦手。言葉にすることも苦手。ずっとそう認識していました。
でも自分が経験してきたことを文章にする。
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これについては他のことほど苦戦しませんでした。
保育士として15年近く働いてきたこと。子どもたちとのこと。
仕事の中で悩んだこと。自分自身がこれまで経験してきたこと。
そういうことなら書くことがありました。
まいさんは少し笑いながらこんな風に話します。
15年の経験もあるし、私の人生はわりとハードモードだったから。
だから書こうとすると出てくるものがありました。
それは新しく勉強して手に入れたものではありません。
ずっと自分の中にあったものでした。
ただまいさん自身はそれが何かの役に立つなんて思っていませんでした。
大変だった経験。悩んだ経験。失敗した経験。
保育士として積み重ねてきた時間。
それらはただ自分に起きたことでした。
それを価値のあるものとして見たことはなかったそうです。
縁の外に出るなら何か新しいスキルを身につけなければならない。
ずっとそう思っていました。
でも、外へ出て初めて新しく手に入れるものだけではなく、
すでに持っていたものの中にも使えるものがあることに気づきました。
文章が得意です。と胸を張って言えるほどの自信が急についたわけではありません。
それでも少なくとも、私は国語が苦手だから文章なんて書けない。
それだけではなくなりました。
15年という時間の見え方がほんの少し変わり始めました。
もう一つ、まいさんには自分では価値だと思っていなかったものがあります。
声です。まいさん自身は自分の声が好きではありませんでした。
滑舌が悪い。聞き取りにくい。自分ではそう思っていました。
でも、人から落ち着いている声だねと言ってもらうことがありました。
自分ではマイナスだと思っていたものを別の人は違う角度から見ていました。
もちろん声を褒められたからといって、それが保育士として15年間働いた結果だとは言えません。
文章が書けたからといって、15年の保育経験すべてがそのまま縁の外で使えるわけでもありません。
でも、まいさんにとって一つの発見になりました。
自分ができないと思っていること。自分が何の役にも立たないと思っていること。
それは自分から見えている自分の姿でしかないのかもしれない。
縁の外に出たことで、今までとは違う角度から自分を見る機会が増えました。
12:04
そして、今までただの経験だったものを、これってもしかしたら使えるのかなと少しずつ考えるようになりました。
まだ全部を見つけたわけではありません。むしろ自分では気づいていないものの方が多いのかもしれません。
一度は一般企業への転職を考えたまいさん。今は転職についてはほとんど考えなくなりました。
あれだけ働きたいと思った好きな会社も、今は憧れの一つ。好きなものは好きなままでいい。そんなふうに考えるようになりました。
そして、保育士はやっぱり続けたい。そう思っています。やりがいがあるし、かわいいし、面白い。そこは今も変わっていません。
変わったのは、保育士としてのこれからの働き方です。
以前は収入を上げたいと思ったとき、責任のある立場を目指すことも考えていました。
経験を積む、役職に就く、責任を増やす、それが保育士として働き続けながら収入を上げる道の一つだと思っていました。
でも、責任ある立場で働く人たちを近くで見てきました。
その大変さも知っています。
自分自身も15年近く現場に立つ中で、体力的にも精神的にも以前とは違うものを感じるようになりました。
だから今は、無理に上を目指さなくてもいい。そう思うようになったそうです。
保育士を続けることと、ずっと同じ場所で、ずっと同じ働き方をして、さらに責任を増やしていくこと、それは同じではありません。
年齢が変われば、働き方が変わってもいい。生活が変われば、大切にしたいものが変わってもいい。
そして、15年間の経験を生かす場所も、縁の中だけとは限らない。
今のまいさんは、保育士を辞めるためではなく、保育士として積み重ねてきたものを持ったまま、自分に合った働き方を少しずつ探しています。
15年働いた先で、さらに上へ行くのではなく、少し横へ道を広げてみる、そんな選び方もあるのかもしれません。
私には何もない。縁の外を見たとき、まいさんはそう感じていました。
今も、15年間の経験が、これから何につながるのか、すべてわかったわけではありません。
でも、一つだけ、依然とは違います。
自分の経験を保育園の中でしか使えないものと決めつけなくなりました。
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長く続けている仕事ほど、できることが当たり前になっていきます。
できて当然、知っていて当然、わざわざ誰かに話すほどでもない、
そうやって自分で自分の経験に価値をつけなくなってしまうことがあります。
でも、場所を少し変えてみたら、見る角度を少し変えてみたら、
その当たり前は違うものに見えるのかもしれません。
そして、経験を広げるということは、今までとは全く違う自分になることではなく、
今までの自分が持っていたものを別の場所から見つけ直すことなのかもしれません。
まいさんもまだ途中です。
これからどんな働き方を選ぶのか、15年間で積み重ねたものをどんな形で使っていくのか、
その答えはまだ決まっていません。
あなたが今、仕事だからできて当たり前と思っていること、
もし今いる場所の外から見たら、どんなふうに見えるのでしょうか。
先生の人生ノート、今回は保育士まいさんの何もないと思っていた15年、
あなたのノートには今、まだ自分でも気づいていないどんな経験が眠っていますか。
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