国民全員に「顔の著作権」が与えられる?
近年、AIによるディープフェイク技術が発達し、勝手に顔や声が使われる被害が世界中で急増しています。
そんな中、デンマークでディープフェイク対策として、国民に自分自身の身体・顔・声に対する権利を与えるよう著作権法を改正するという発表があり、欧米で大ニュースになりました。
しかし、著作権とは本来、思想や感情を創作的に表現したものを守る法律であり、生まれ持った「顔」は創作物ではないため保護の対象にはならないはずです。
なぜデンマークは、この常識外れとも言える「顔の著作権」を法律に組み込もうとしたのか? そして、なぜその法改正はEUからの指摘などにより現在ストップしてしまっているのか?
今回も弁護士の光股とインターンの濱守が、電話帳の保護から始まった北欧特有の「増築を繰り返してきた」著作権法の不思議な歴史をたどりながら、ディープフェイク規制をめぐる日本や世界の最新事情を徹底解説します。
下記のnoteでも深堀り解説の記事を書いていますので合わせてご参照ください。
https://note.com/prospire/n/n164c82a16d8b
■お便りフォーム
https://prospire-law.notion.site/2f023c21bcd58017a664f65bcf615325?pvs=105
お便りはこちらから!
■参考
・法務省「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会取りまとめ報告書―生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針―」(令和8年8月7日)
https://www.moj.go.jp/content/001468286.pdf
・最高裁第一小法廷平成24年2月2日判決(ピンク・レディー事件、平成21年(受)第2056号)
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-81957.pdf
・デンマーク著作権法改正法案(草案・2025年7月7日公表、デンマーク文化省意見公募資料)
https://hoeringsportalen.dk/Hearing/Details/70269
・デンマーク著作権法改正法案のEU技術規則通知(TRIS 2025/0654/DK、2025年10月31日。
https://technical-regulation-information-system.ec.europa.eu/en/notification/27420
・欧州司法裁判所2004年11月9日大法廷判決(Fixtures Marketing対Svenska Spel事件、C-338/02)
https://curia.europa.eu/juris/liste.jsf?language=en&num=C-338/02
・Torben Lund(1961),『Ophavsret』,G.E.C.Gads Forlag
https://jura.ku.dk/jurabog/pdf/juridiske-monografier/lund_ophavsret_1961.pdf
・Peter Schønning(2003),『Ophavsretsloven med kommentarer〔3.udgave〕』,Thomson GadJura
https://jura.ku.dk/jurabog/pdf/juridiske-monografier/Schoenning_Ophavsretsloven_2003.pdf
・SOU 19『Upphovsmannarätt till litterära och konstnärliga verk』(1956)
https://lagen.nu/sou/19
・Henry Olsson,「Intellectual Property Rights for Non-Original Databases – The EC Directive and the Scandinavian Experience」,WIPO/CR/VIL/99/2(1999)
https://www.wipo.int/edocs/mdocs/copyright/en/wipo_cr_vil_99/wipo_cr_vil_99_2.pdf
・P. Bernt Hugenholtz,「Deepfake Bills in Denmark and the Netherlands: Right idea, wrong legal framework.」,Kluwer Copyright Blog(2025年8月6日)
https://legalblogs.wolterskluwer.com/copyright-blog/deepfake-bills-in-denmark-and-the-netherlands-right-idea-wrong-legal-framework/
・Dirk Visser,「The Dutch and Danish proposals for legislation on deepfakes」(2025年7月17日)
https://www.itenrecht.nl/artikelen/the-dutch-and-danish-proposals-for-legislation-on-deepfakes
・欧州議会調査局(EPRS),「The Danish approach to copyright and deepfakes: A model for the EU?」,PE 782.611(2026年1月)
https://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/ATAG/2026/782611/EPRS_ATA(2026)782611_EN.pdf
・半田正夫=松田政行編(2015),『著作権法コンメンタール1〔第2版〕』,勁草書房
https://www.keisoshobo.co.jp/book/b207743.html
・著作権審議会第8小委員会(出版者の保護関係)報告書(平成2年6月)
https://www.cric.or.jp/db/report/h2_6/h2_6_main.html
・公正取引委員会「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」(令和5年9月21日)
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2023/sep/230921newcontent.html
・CNN.co.jp「デンマーク、ディープフェイク対策の法案整備 全国民の外見と声に財産権認める内容」(2025年6月28日)
https://www.cnn.co.jp/tech/35234861.html
・GIGAZINE「デンマークがディープフェイク対策で国民に自身の身体・顔・声に対する権利を与えるよう著作権法を改正すると発表」(2025年6月30日)
https://news.livedoor.com/article/detail/29067031/
・TIME「Denmark Seeks to Give People Copyright to Their Own Features in Effort to Combat AI Deepfakes」(2025年6月27日)
https://time.com/7298425/ai-deepfakes-denmark-copyright-amendment/
■その他の媒体
となりの弁護士放送局は、各種媒体でも配信中
【YouTube】
https://www.youtube.com/@tonaben2509
【spotify】
https://open.spotify.com/show/1pK65p4wL34eAXRRxIdgKy
【Apple Podcast】
https://podcasts.apple.com/us/podcast/となりの弁護士放送局/id1841828320
【Amazon music podcast】
https://music.amazon.co.jp/podcasts/ede15d1a-4fb3-4abd-98e7-3ff91d9b1121/となりの弁護士放送局
【Listen】
https://listen.style/p/tonaben2509
■目次
顔に著作権?
著作権の大原則
増築の歴史285年
ついに人間が入居?
「その法律で規定すべきじゃない」
「顔の著作権」で守りたかったこととは
■プロフィール
【弁護士 光股 知裕(みつまた ちひろ)】
・X / @CMitsumata
https://x.com/CMitsumata
・プロスパイア法律事務所(東京弁護士会)
〒102-0082東京都千代田区一番町6-1 ロイアル一番町A202
https://prospire-law.com/
TEL:03-5357-1763
FAX:03-5357-1764
メール:contact@prospire-law.com
【インターン生 濱守(はまもり)】
・プロスパイア法律事務所のインターン生
・法律勉強中
・少し知的財産法の勉強をしている
感想
まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!
サマリー
デンマークがディープフェイク対策として、身体・顔・声のデジタル模倣を著作権法に組み込もうとした背景を扱う。顔や生まれ持った声は本来、思想や感情を創作的に表現した著作物ではないため、「顔の著作権」という報道は正確ではないと説明する。北欧では1741年の書籍海賊版対策から始まり、電話帳や時刻表などのカタログ、写真、EUのデータベース権を著作権法に取り込んできたため、今回も同じ延長で人間の外見や声を加えようとした。法案は、全ての自然人について本人の同意なしにリアルなデジタル生成模倣を公衆に提供することを禁じ、死後50年保護し、風刺やパロディを例外とする内容だった。日本では肖像権を憲法13条に基づく判例法として扱う一方、死者の保護などに限界がある。デンマークでは削除請求など既存の著作権手続を使える利点があったが、EUは著作権以外の手段を検討するよう指摘し、法案は選挙や政権交代も重なって停止している。ドイツ、アメリカ、オランダの対応も紹介され、ディープフェイクを規制する目的は共有されながら、刑法・新しい権利・既存法のどれで対応するかは定まっていない。
コメント
似ているエピソード
タイトル・AI要約・文字起こしの話題をもとにおすすめしています。
-
【7限目】パロディやオマージュは基本NG
著作権の時間
日本の著作権法におけるパロディやオマージュの厳しさを掘り下げ、Xジャパンの楽曲との類似性について問題提起されている事例を...
-
🌋表現の自由と著作権の足枷〜世界本弱肉強食也。〜
薩摩訛りの耳毒ラジオ
共通する話題: 著作権
著作権の成り立ちと、クリエイターの権利を守るという建前について語る。著作権を厳格に法整備すると、守られる条件が増えて表現...
-
生成AIと著作権、2つの問題点 #312
デジクリ|デジタルクリエイティブの話
共通する話題: 著作権
生成AIと著作権に関する二つの主要な問題点が議論されました。一つは、2019年の著作権法改正がクリエイターとの十分な議論なしに...
-
🌋著作権について改めて調べてみた
薩摩訛りの耳毒ラジオ
共通する話題: 著作権
著作権 · AIと著作権 · 活版印刷と著作権の歴史 · 著作権とビジネス
-
【8限目】著作権の一部は非親告罪
著作権の時間
共通する話題: 著作権 · 海賊版
ポッドキャストにおける著作権の重要性と法的変化について議論されます。特に、2018年に施行された一部非申告罪により、著作権侵...
-
#29 「声のパブリシティー権」認める判決――じゃあ私の声は?
ネジネジ低空飛行 — ゆるバイポーラー thinking aloud —
9月30日の東京地裁判決で、声もパブリシティ権の保護対象になり得ると初めて示されました。須田健次郎さんのTikTok動画削除請求...
-
[シン・中学生でもわかる著作権#24]パロディ作品って著作権侵害になる?
弁護士キタガワの身近な法律勉強会!
チーズはどこへ消えた? · バター
-
AIが生成した画像の著作権についての最新情報まとめ
聴くだけフリーランス講座
AI活用・IT・デジタルの話
-
AIクリエイティブの著作権は誰のもの?
KOHIMOTO Cast
共通する話題: 著作権
AIによって生成されたコンテンツの著作権について、文化庁の資料を基に解説します。著作権はアイデアではなく「表現」を保護し、...
-
#107 著作権侵害しているポッドキャスト番組をみつけたらどうするか
ピョン吉のAI日誌
共通する話題: 著作権
ポッドキャスト番組では、リスナーのピョン吉さんからのメッセージをもとに音楽利用の著作権侵害について議論が深まります。特に...