ゴミ箱とゴミの箱の基本分析
ゴミ箱とは、ゴミを入れる箱のことですよね。 ゴミ箱、すなわちゴミの箱と言えそうだし、
実際どっちで言ってもおかしくはないというかね。 ゴミ箱をちょっと動かしてでも、ゴミの箱をちょっと動かしてでも、
意味は通じることは多いと思います。 普通はゴミ箱と言ってね、わざわざゴミの箱とは言わないとは思います。
今回はゴミ箱とゴミの箱を言語学的に分析して、その違いというのを見ていこうと思います。
端的に言えば、ゴミ箱というのは複合語ですね。 これで一単語になっているわけですが、ゴミの箱というのは
空ですね。空と言われるフレーズと言われる単位で、 レベルが違うというような感じなんですよね。
複合語と空のレベルの違いというのは、果たしてどういったとこで観察されるでしょうか。
BGMです。 始まりました4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
能神ネウロです。 わかりやすい見た目というか、形式上の話からしていくと、
当然ですが、ゴミ箱とゴミの箱。 空の方には能というのが入ってますよね。これがまず一点。
もう一つは、ゴミ箱というふうに、箱が箱というふうに連濁が起こっています。
さらに言えば、箱というのは単体で発音するときは、少なくとも共通語では、 はこというふうに、ひく、たかというアクセントパターンですが、
ゴミ箱のときは、たかひくというアクセントになっているという点で、
連濁とアクセントという点で、複合語と空というのは異なります。
これはわざわざ言うまでもないというかね、別に特に言語学やってなくても気づくことだと思いますので、
統合論的にはどのように異なるかというのを見ていこうと思います。
今までの話は、音の話とかね、 硬い言い方すれば携帯音韻論的な違いっていうことだったんですが、
統合論的に見ていきます。 統合論っていうのは、
要は単語を並べるやり方、どういうふうに単語を並べていくかっていう話で、
今回は他の単語との関わり合いみたいな、そういった話になります。
ゴミ箱、ゴミの箱、どちらも大きい、大きいじゃなくてもいいんですけど、
大きいみたいな形容詞で修飾することができます。 大きいゴミ箱、大きいゴミの箱。
どちらも問題なく言えるんですが、
公社の方、つまり区の方、大きいゴミの箱というのは、 解釈が2通りありますよね。
一つは箱自体が大きいという解釈です。大きいゴミの箱。 箱自体がドラム缶ぐらいあって、そこにゴミを入れていくという解釈。
もう一つは、ゴミが大きいんだという解釈ですね。 大きいゴミの箱。
これは箱自体も必然的に大きくなっちゃうかもしれませんが、 粗大ゴミ的な、
冷蔵庫とか洗濯機とかを入れる、そういう大きいゴミを入れる箱としての大きいゴミの箱。
2通りの解釈ができるんですね。 つまり、大きいというのがゴミという名詞にかかるのか、
あるいは箱という名詞にかかるのかで、 大きいゴミの箱というのは解釈が変わってきます。
これはどうですかね。大きいというのが同時にゴミも箱も出色することは、 多分できないと思うので、
そういう時は大きいゴミの大きい箱っていうしかないと思うんですが、 いずれにせよ解釈は2通りあります。
それに対してゴミ箱の複合語の方は、大きいゴミ箱。 こちらは箱自体が大きいという解釈しかできません。
つまりゴミが大きい、洗濯機や冷蔵庫がゴミであるみたいな解釈ができなくって、 箱が大きいという解釈しかありえないんですね。
これはゴミ箱というのがもう一単語になっちゃってて、 ゴミ箱のというか、ゴミ箱という単語のゴミという要素はもう自立性がないんですね。
なので、そのゴミ箱の中のゴミ、 それをめがけて大きいで就職することはできない。それが複合語です。
語の緊密性のテスト
それに対してゴミの箱といった場合、このゴミっていうのはきちんと自立性がありますので、 形容詞で就職されることもできるということです。
このようにゴミ箱で、複合語で、もう一色体になっちゃってる、 一体化してしまってるっていうのを専門的に語の緊密性が高いということがあります。
ゴミ箱において、ゴミと箱っていうのは緊密性が高いので、 そのゴミ単体を就職することはできないということですね。
これはさっきの携帯音韻的な話にもつながっていて、
一つの説明の仕方として、連濁が起こったりとか、 アクセントが変わったり、馬鼓となったりするのは語の緊密性が高いからであるということができるかなと思います。
語を就職するのは形容詞だけではありません。 形容詞以外にも、例えば関係説で就職できたりするわけですが、
そういった場合も事情は一緒で、「燃えるゴミの箱」と言ったら、これはどうですかね。 普通は燃えるゴミを入れるそのための箱っていう解釈になると思います。
ただ、燃えるっていうのが箱にかかっているとも一応解釈はできると思うんですよね。 燃えるゴミの箱。
ゴミの箱というものが燃えますと言っているってことですね。 これがさっきの大きいの場合と一緒で、燃えるっていうのがゴミにも箱にもかかることができるということです。
ただ常識として、燃えるゴミを入れる箱という方が自然な解釈になると思います。
それに対して、複合語の方、ゴミ箱の方は、燃えるゴミ箱というと、おそらく箱が燃えるという解釈の方が自然で、
燃えるゴミを入れとくための箱っていうのも多分言えるんだと思うんですよね。 燃えるゴミ箱。
その燃えるゴミ、これ全体で一単語みたいになって、それと箱っていうのが複合語を成して、燃えるゴミ箱。
どうかな、ちょっと厳しいですかね。 ちょっとこの辺は解釈が揺れる気がするんですが、
ゴミ箱っていうのはやっぱりこれで一つの複合語ですので、 燃えるゴミ箱って言ったら、燃えるっていうのがゴミだけを収縮することはできないというふうに考えられます。
4月15日のツボ。
語の緊密性の高さを測るテストとして、代名詞で置き換えられるかどうかっていうのもあります。
句だったら、ゴミの箱っていうのは、それの箱と言えるんですよね。 日本語だとあんま言わないかもしれませんが、言えなくはないです。
それに対して、ゴミ箱はそれ箱っていうふうに、 複合語の中のゴミをそれという代名詞に置き換えることはできないんですよね。
これも繰り返しですけど、やっぱりゴミ箱で、もうこれで一つの単語になっちゃってるので、 その中身をどの項の操作することはできないということです。
それと、複合語と句の関係で言うと、
複合語の中に句が入ってはいけないっていうような、そういった制約もあるんですね。
専門的には句排除の制約っていうそのままの名前がついてるんですけど、 どういうことかというと、
こういうのは具体的に考えた方がいいんですが、
例えば、いい例かどうかわかんないですけど、
メガネかけてる人で、メガネケースを持っている人は結構多いと思うんですよね。
これも一応複合語です。
それとは別に、メガネ拭きを入れとくためのケースっていうのを持っている人もいるかもしれません。
それは、メガネ拭きケースということになります。
メガネケースよりはちょっとマイナーかもしれませんが、メガネ拭きケースということもできると思います。
さらに人によっては、一つのケースの中にメガネもメガネ拭きも入れてるっていう、そういうパターンもあると思うんですよね。
つまり、メガネとメガネ拭きのケース。
これは句ですよね。
メガネとメガネ拭きのケース。
で、こっからのを削除して、複合語を作ろうとするとできなくって、
メガネとメガネ拭きケースというと、一つはメガネで、もう一個はメガネ拭きを入れとくためのケースっていう解釈にしかならなくって、
句でメガネとメガネ拭きのケースといった場合は、今の解釈もありますけど、
ケースが一個だけあって、それにメガネとメガネ拭きを入れてるんだっていう、そういう解釈もできるんですね。
句だったらOKです。
ただ、複合語はメガネとメガネ拭きケースとは言えなくって、
つまり、メガネとメガネ拭きっていうこの2つをまとめて、ケースっていうのと複合語を形成することはできないということです。
今回のエピソードはゴミ箱とゴミの箱から始まりましたけど、
意味としてはあんまり違いがないような気がするものでも、
いろんな単語と組み合わせてみたりすると違いが現れたりするっていうね、そういったお話でございました。
そういう統合的なテストっていうのがね、言語学ではよく使われたりします。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。
番組フォローも忘れずよろしくお願いいたします。
お相手はシガ15でした。
またねー
