同化の基本
本日のテーマは、「同化と異化」です。それぞれ英語で、アシミレーションとディスミレーションという言い方をします。
言語学の中でも、音声学や音韻論の用語で、そのまんまといえばそのまんまですね。
同化っていうのは、要は同じようになる、似てくるっていうことで、異化っていうのはその反対に似てるものが異なるようになるっていうことです。
同化にしろ異化にしろ、発音の変化ということができます。
その発音の変化が何で起こるかというと、よく言われるのは言語の経済性のためである。
つまり、平たく言えば楽をしたいがために楽なような発音を追い求めるあまり、発音が変化してしまうということです。
そういった説明で大体納得できるんじゃないかなと思いますが、この言語の経済性っていうのも突き詰めれば結構奥が深い問題ではあります。
今回は同化と異化について英語を例に取り上げます。
過去のエピソードで同化現象の話はしたことがある気がします。
探せば多分あると思うんですが、今回は特に英語の同化と異化それぞれ見ていきます。
BGMです。
始まりました。4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
同化現象というのは繰り返しですけど、発音が同じになってしまうということでございます。
ただその同じになるっていうのが、完全に同じ発音になる場合もあれば、部分的に同じになる場合もあるっていう感じです。
そういうのを部分同化と言ってもいいと思います。
同化だ、異化だ、同じだ、異なるだと言ってますけども、これは2つの音が隣り合った時にどっちかの音に合わせて片方の音が変化してしまうことを、同化や異化という言い方をするんですね。
まず同化から見ていきますが、英語でわかりやすいのは否定を表す窃盗児ではないかと思います。
ミッション・インポッシブルのinですね。これはpossibleをinで否定しているわけです。
ちょうど可能が不可能になると同じようにpossibleがimpossibleになっていて、このimpossibleのinっていうのは不可能の不と同じ否定を表す窃盗児ということができると思います。
このinというのは他の単語でも見られて、また映画ですけどね、インデペンデンスデイのinも一緒です。
independentっていうのはdependentの否定なので、dependentっていうのが依存しているみたいな形容詞ですね。
それの否定でindependentで、言ってみれば非依存みたいな言い方で独立したという形容詞independentができています。
これもなかなか面白いですね。独立っていうのが依存ありきだっていうようなことですよね。
もしかしたらその辺は文化的な背景とかが言語に絡んでくるかもしれませんが、いずれにせよ、impossibleのinとindependentのinは同じ窃盗児、否定を表す窃盗児ということができます。
ただ同じ窃盗児なんですが、実現の仕方、実際の発音というのが異なっています。それはつづりに反映されています。
impossibleの方はimで、independentの方はinですよね。mとnで、つづりが違って実際に発音も違います。
これがまさに同化現象というもので、どういうことかというと、impossibleはpossibleという単語についているわけですが、このpの発音ですね。
pという発音が専門的には両心音といって両唇を使う音です。
それに合わせる形で、鼻音ですね。鼻の心音が唇を使うmという発音になって、impossibleという発音になっています。
これは調音位置の同化ということができて、発音する位置に合わせているという感じですね。この場合は窃盗児の方が合わせているという感じです。
independentの方も同様に、dependentのdの音は専門的には歯茎音、ないし歯茎音と言われて、それに合わせて鼻音が歯茎音のnになってindependentとなっています。
鼻音という調音方法、発音の仕方は共通しているんですが、その発音する位置、調音位置が同化しているという、そういったタイプの同化現象です。
この英語の否定のinについては、もう一個バリエーションがあって、incapableみたいなものです。
capableというのは有能なで、それの否定ですからincapableというのは無能なみたいな意味になるんですよね。
incapableというのは、つづりの上では、capableというのはcで始まるんですよね。
その前のinというのはinと書かれます。
ただここでつづりに惑わされてはダメで、capableの最初のqという発音は専門的には難工外音という音で、
それに合わせてincapableは、つづりはnで書きますけど、発音としてはいわゆるngの発音、これも難工外音と言われる音になります。
つづりではncですけど、発音の仕方としては、capableの難工外のqに引きずられて、b音も難工外になっているという、これもやっぱり超音位置の同化現象です。
超音位置の同化じゃなくて、超音方法が同化するということもあります。
英語の異化現象
これが同じinで確かめられて、不規則なのイレギュラーとかですね。これはレギュラーの否定でイレギュラーとなっているわけですけど、
これはinregularとはなってないんですよね。 b音じゃなくて、つづりではirと書きますよね。
ここで否定のset字のinがirというrの発音に変わっているのは、超音位置というよりは超音方法が変わっているということができます。
同じようにlegalの否定のillegalっていうのも、これはlで同化現象が起こっていて、こういうrとかlの場合は超音位置というよりは超音方法の同化が起こっています。
こういうふうに英語の否定のset字、inっていうのは、いろんな実現の仕方があります。
それはset字がくっつく頭のシーンの超音方法や超音位置に同化しているからということができます。
ただここでちょっと注意が必要なのは、formalとinformalを見比べたときにinformalのつづりはinと書くんですよね。
で、fっていうのは唇を使う音なんですけど、つづりはimとはなりません。
これはfの音は、impossibleのpとかと違って摩擦音と言われるもので、そういった摩擦音の場合には同化現象は起こらないと、そういった注意が必要です。
今まで同化現象を見ていきましたが、反対の異化現象にはどんなものがあるかというと、
この異化現象は多分英語に限らずですけど、流音でよく観察されるんですね。つまりLやRでよく観察されます。
例えば英語で形容詞を作るのにAL、つづりでALというのをつけることがあります。
accidentからaccidenterとか、cultureからculturalとか、functionからfunctionalとか、いくらでもあるんですけど、
このARで終わる形容詞化の設備字がLで終わる単語につくときは、ALじゃなくてARになるんですね。
これはLが連続することを避けるためだと考えられます。
そういったものは例えばpopularとか、単数のsingularとか、サークルに対するcircularとか、こういったものはLで終わる単語にARがくっついています。
この場合はALの方がデフォルトで、あらゆるものにALがくっつくんですが、Lで終わる単語にくっつくときに限ってARに変わると、そういうふうに説明するのがいいんではないかと思います。
ALとAR、別個のものとは考えないんですね。その実現の仕方が別個であると、そういうふうに考えます。
こういうのを特に言語学では異形態とか言います。
しかしこのLとARの連続っていうのはそんなに発音しづらいんですかね。
実際には連続しているというよりは間に母音が挟まったりしているわけですけど、日本語にはLとARの区別がそもそもないので、
実感としてこのLとARの異化現象っていうのはピンとこないんですけど、
たださっきも言ったように英語以外の言語でもあることなので、多分発音しづらいんでしょうね。
というわけで今回は同化現象と異化現象のお話でございました。
エピソードのまとめ
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。番組フォローも忘れずよろしくお願い致します。
お相手はSIGA15でした。
またねー。