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2025-08-23 11:58

#784 ヒト特有の「投げる」の言語学 from Radiotalk

関連エピソード
https://radiotalk.jp/talk/1068004

主要参考文献
NHK スペシャル取材班 (2012)『ヒューマン: なぜヒトは人間になれたのか』東京: 角川書店.
岡本進 (2016)「フィジー語の複他動詞と投擲動詞」『思言 東京外国語大学記述言語学論集』12, 31-39.

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育

サマリー

投げる行為は人間特有のものであり、距離や力加減を計算する複雑さが伴います。これにより脳の発達に寄与し、言語においても多動詞としての機能があります。

投げる行為の複雑さ
投げるという行為は、実は複雑な行為で、自分と相手というかターゲットの距離を測ったり、場合によっては相手のターゲットの動きを読んだり、その投げたもの、石なりボールなりが当然受ける重力、そういったものをすべて計算して、自分の筋肉を動かして、ものを投げることになります。
さらに、場合によっては全速力で投げたりとか、優しくふわっと投げたりとか、そういった複雑なことを我々は投げるという時にやっています。
投げるというとね、スポーツがまずは思い浮かびますかね。野球、現代のプロ野球なり大リーグなりではね、160キロを超えるような強速球を投げる選手がいるわけですけど、当然スポーツのために我々は、我々というか人類は投げるという行為を始めたわけではないでしょう。
そういうお遊びのためではなくて、獲物を取ったりとか、自分の身を守るためだとか、あるいは威嚇するためだとか、そういった目的のためにものを投げていたはずです。
当然石とかでしょうね、最初はね。人は投げるという行為を覚えたから脳が発達していったという、そういう説もあるんですね。
さっきも言ったように投げる時に相手との距離を測ったりとか、力加減とか、そういったことを計算しなきゃいけないので、非常に複雑なことをやっているわけです。
脳が大きくなったからそういう投げる行為ができるようになったのか、あるいは投げる行為をしているうちに脳が追いついてきたのか、あるいは同時並行的なのか、それは鶏と卵的なところがあるわけですが、
投げるという行為と脳のその容量の増加っていうのに相互作用があったという、そういう説もあるんですよね。
人間以外の動物で物を投げるっていうのはあんまり見られません。
唯一例外として鉄砲魚っていうのがいますね。 水を口から吹き出して餌を取るというか、獲物を仕留めるっていう魚がいますけど、
せいぜいそれぐらいで何かターゲットに向かって、腕を使って物を投げるっていう生物はいないんですよね。
つまり投げるという行為が我々人という種を特徴付けているということができるかもしれません。
BGMです。始まりました4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。ネビル・ロングボトムです。
さっきも言ったように投げるという行為は人という種におそらく固有のものですけど、
ただ人体の構造にちゃんと合ってるかどうかっていうのはどうなんですかね。
というのが野球のピッチャーとか結構故障をしたりしてますよね。
当然投げすぎっていうのもあるんでしょうけど、肘が肩より上の位置に来るっていうのがどうなんですかね。
人体の構造上、負荷がかかりやすい姿勢なのかもしれません。というか、そういうのをどこかでチラッと見たことある気がします。
そういう人体に負荷がかかるかもしれませんが、投げるという行為は人特有のもので、
言語と目的語
おそらくどんな言語にでも投げるっていう単語はあるんじゃないかと思います。
動詞ですね。日本語にも当然投げる、古語だったらおそらくなぐだと思いますけど、そういう大和言葉があります。
おそらくどんな言語でも投げるというのは多動詞じゃないかなと思いますね。
多動詞というのはつまり目的語が出てくるということですけど、必ず投げるものっていうのがあるので、石なりボールなり、
それは投げるという動詞にかなり必須な要素ではないかと思います。
日本語でも石を投げる、英語でもthrowですよね。throw a stoneっていう風にやっぱり多動詞で出てきますよね。
で、面白いのがフィジー語の投げるという動詞で、フィジー語にも投げるっていう動詞はあるんですよね。
で、さらに目的語が出てくる多動詞です。なので日本語や英語と同じなんですけど、その目的語に出てくるのが、石とかボールとかっていうその、
何て言うんですかね、投げるものではなくて、敵とかキャッチャーとか獲物とか、あるいは壁とか、
そういうターゲットの方なんですね。 ターゲットの方が目的語になるということは、日本語風に考えると、
キャッチャーを投げる、みたいな言い方になるってことですね。 まあ当然日本語だと違和感があるというか、日本語でキャッチャーを投げるっていうと、
なんかね、その乱闘のシーンでキャッチャーを背負い投げしちゃったみたいな、そんな感じに聞こえると思うんですが、
フィジー語の投げるという動詞、ビリカという言い方をしますけど、 このビリカっていうのの目的語で出てくるのは、ターゲットのキャッチャーであって、
キャッチャーを投げるという言い方をすると、キャッチャーに向かって投げるという解釈になります。
じゃあボールの方はどうやって表すかというと、 これは
英語の前置詞のwithみたいなもので表されるので、 ですので、
ボールで持ってキャッチャーを投げる。 そういう言い方になります。で、これで意味としてはボールをキャッチャーに投げるという言い方になるんですね。
もう少しこれを専門的にね、お話ししていくと、
投げるという動詞は副多動詞であるということができます。 多動詞の中でも副多動詞。
どういうことかというと、 目的語っぽい要素が2つある動詞であるということです。
さっきも言ったように、投げるという動詞には まずボールみたいな、あるいは石みたいな、その投げるものっていうのが必須の要素として考えられますが、
それと同時に、投げつけられる対象、ターゲットもまた必須の要素と考えられるんですね。
で、こういうのを副多動詞と言います。 主語のほかに2つ目的語っぽいものがある、
必須の要素があるときに、どっちを目的語にするかっていうのが言語によって変わってきて、
日本語と英語の場合は、投げるものの方ですね、石やボールの方を目的語として選択してますが、
フィジー語の方は投げつけられるもの、対象の方を目的語として選択していると、そういう説明の仕方ができます。
2つある目的語っぽい要素を思い切って目的語にしちゃう、両方目的語にしちゃうっていう選択肢もあります。
二重目的語と言ったり、英語で言うとこの第四文型ですかね。
つまり、give me a bookみたいなものです。 このgiveみたいな動詞もまた副多動詞とよく考えられていて、
さらに言うと典型的な副多動詞と考えられていて、 つまりgive、与えるっていうのは、
平たく言えばプレゼントとその受け取り手っていうのが必須の要素と考えられるんですよね。
英語の場合は、その2つ、プレゼントも受け取り手も両方目的語にしちゃうという、
そういう文型もあります。 副多動詞については過去に関連エピソードがありますが、
さらにね、ちょっと踏み込んで専門的な言い方を知っておくと、 副多動詞の
ボールとか石とかプレゼントとか、そういったものはアルファベットでTと言われることがあります。
で、受け取り手とか投げつけられる対象、ターゲットの方は アルファベットでRと言われることがあって、
このTとR、それぞれどっちを目的語にするかというので、 型が変わってくるんですよね。
日本語みたいにTの方を目的語にする型のことをインディレクティブ。
フィジー語みたいにRの方を目的語にするのを セカンダティブという言い方をします。
これについては関連エピソードがあるので、 ぜひ合わせて聞いていただけたらと思います。
シャープで言うと589ですね。 ぜひ聞いてみてください。
フィジー語みたいなセカンダティブ型、 つまりRが目的語になる、ターゲットが目的語になるっていうのは、
日本語の感覚ではちょっとつかみづらいというか、 ただ日本語でもRの方が目的語になる、
そういうふうに見える動詞もあります。 あくまでイメージとしてですけど、それは撃つという動詞で、
端的に言えば犯人をピストルで撃つ。 こういった場合、犯人というRの方が
目的語でOというのでマークされていて、 ピストルがTと言えるかどうかはちょっと微妙ですけど、
そのピストルそのものを移動させているわけではないんですけど、 このTっぽいのがピストルでというふうに、
でというので表示されているんですよね。 フィジー語の投げるっていう動詞もイメージとしてはこれに近いと思います。
犯人をピストルで撃つ。 これがセカンダティブ型と言えます。
日本語の撃つという動詞はインディレクティブの方もいけて、 つまり
Tの方を目的語にして犯人にピストルを撃つという言い方もできます。 イメージとしてはこんな感じじゃないかなと思いますね。
というわけで今回は投げるという動詞についてのお話でございました。 関連エピソードもぜひ聞いてみてください。
番組フォローも忘れずよろしくお願いいたします。 お相手はSIGA15でした。
またねー!
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