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2025-12-02 11:43

#813 宮岡伯人の『「語」とはなにか』【言語学者とその思想 vol. 3】 from Radiotalk

主要参考文献
宮岡伯人 (2002)『「語」とはなにか エスキモー語から日本語をみる』東京: 三省堂.
宮岡伯人 (2015)『「語」とはなにか・再考 日本語文法と「文字の陥穽」』東京: 三省堂.

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サマリー

宮岡伯人の著書『語とはなにか』を通じて、日本語における語の概念やその難しさについて説明しています。特に、節語と節字の違いを明確にし、助詞や助動詞の扱いに関する課題にも触れています。

語の概念と背景
「語とはなにか」まさにそんなタイトルの本があります。今回ご紹介するのは、宮岡伯人という先生で、「語」
一般的には単語と言われることが多いと思いますが、ワードですね。これについて特に日本語について考えていこうと思います。
宮岡先生の「語とはなにか」は三聖堂から出てて、2回出てるんですね。2002年に最初のが出て、
「語とはなにか 最高」というのが2015年に出ています。 これは改訂版というよりはもう別物と考えていいぐらいのもので、
なかなか読むのに気合がいるタイプの本です。 宮岡先生はエスキモ語が専門で、
岩波新書で気軽に読める本も出されてるんですけど、この「語とはなにか」っていうのはかなり手強い本ではないかと思います。
日本語っていうのは、語っていうのがわかりづらい言語と言えます。 語とはなにかの中でもそういった話は出ていて、
表記の面で文字の面で日本語は、 語っていうのが捉えづらくなってて、要は分かち書きしないんですよね。
英語とか、あるいは他の外国語であれば、語と語の間にスペースを入れるので、これが単語だっていうのが非常に分かりやすいですが、
日本語は表記上分かち書きしません。 ですので、
例えば、食べさせなかったらしいね。 これは何語から出来上がっているか、全体で一単語と見るのか、それともどっかで切れ目が入るのか、
さらに言うと、学校文法であった助詞とか助動詞っていうものは、 あれは語と言えるのか、それとも節字と言った方がいいのか、つまり語の一部と見た方がいいのか。
この辺が日本語学の抱える大きな問題なんですよね。 三岡先生にとって語とは形であって、語は意味ではないというようなことを
書いてらっしゃるんですけど、その辺はまた別の機会で深掘りできたらするとして、 今回はさっきもちょっと言った助詞とか助動詞とか、
そのような名前で片付けられてしまっている要素を、 どのように語化そうでないのか、見分けるか、みたいなお話をしようと思います。
BGMです。 始まりました4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
節語と節字の識別
ヴィクトワールシュヴァルブラムラを賛成です。 日本語の助詞とか助動詞って言われるものの中には、節語と節字がごちゃ混ぜになってしまっています。
節語というのはあくまで語であって、それに対して節字っていうのはある語のパーツ、一部なんですよね。
で、この2つを明確に区別する必要があります。 特に日本語はさっきも言ったように書き言葉で分かち書きをしないので、
それが語なのか、それとも語の一部なのかっていうのが非常にわかりづらいです。
で、さらに日本語は節語っていうのをたくさん使う言語なんですけど、 そのあたりの意識が、
母語話者はもちろん研究者ももしかしたら希薄かもしれないんですよね。 節語っていうのはあくまで語です。
英語だとcriticと言われて、あんまりこの辺はなじみない方も多いと思うんですけど、
あくまで語ではあるんですが、音声的には前の要素や後ろの要素とくっつくものが、
寄りかかるものが節語、criticと言われるものです。 例えば日本語の格助詞と言われているもの、
がーとかおーとかにーとか、 これは節語です。
猫がーとか猫おーといった場合の、このがーとかおーというのは節語なんですね。
そういった節語の特徴として、これは服部志郎という先生が立てている原則があって、
節語という言い方を服部先生はしてないんですけど、間に別の要素が割り込むことができたら節語だっていう原則が一つあります。
猫がーだったら猫だけがーっていう風にだけっていうのが入ってこれるので、
これは節語ということができるんですね。 ちなみにこのだけというのも節語で、
服部原則の別のものとして、いろんな品詞にくっつけるものは、
それは節語であるというのがあります。 だけっていうのは猫だけみたいに名詞にくっつくこともできますが、
食べただけとか赤いだけみたいに動詞や形容詞にもくっつくことができるので、
節語ということができるんですね。 一方、
節字にはどういったものがあるかというと、 食べたーのたーみたいなものです。
これは節字。もうちょっと細かく言うと、 過去を表す動詞の屈折節字なんですね。
これは食べとたーの間にだけっていうのは入ることできません。 食べだけたーとか言えなくて、言うとしたら食べただけだし、
あるいはたーが別の要素、他の品詞にくっつくこともなくて、 猫たーみたいな言い方もできません。
この服部原則を使って、2つのらしいっていうのを区別することができるんですね。
男らしいっていうのと、男らしいっていうのと。 アクセントのパターンが違うので、別個のその要素だっていうのはわかるんですが、
文法的にも、男らしいっていうのは節字で、 男らしいっていうのは節語ということができます。
さっきも言ったように、間に別の要素が入れるときは節語なので、 男らしい、これにはだけみたいなのが入って、
男だけらしいということができるし、 さらにこのらしいっていうのは、
動詞にもくっつけるので、食べるらしいとか、 寒いらしいとか、他の品詞にもくっつけるので、これは節語であるということができます。
その一方で、男らしいって言った場合、このらしいっていうのは節字で、 新しい形容詞を作っているということができるんですね。
派生節字で、男らしい。 で、これは名詞から形容詞を作り出す、派生する、そういう節字ということができます。
なので、男らしいで、一単語であるということですね。
さて、宮岡細人先生は、節語と節字をその区別するテストとして、
ひねりと再立ち上げというのを提案しています。 これはさっきのハットリ原則の
間に要素が入れるかどうかの、逆というか、裏表を成しているようなもので、 さっきの食べただったら、食べとたの間に別の要素が入ってこられないんですよね。
例えば、節語のはとかもみたいなものは、 食べとたの間に割り込んで、食べはた、食べもたとは言えません。
言えませんが、それはそのまま挿入することができないだけであって、 言おうと思えば、食べはしたとか、食べもしたということができます。
で、これはたっていうのが、したっていうふうに、 形式的なするという動詞の力を借りてますよね。
学校文法の問題点
で、食べるの場合はちょっとわかりづらいですが、 書いたの場合だったら、
書きはしたとか、書きもしたっていうふうに、 書いっていうこの音尾の形から書きという連用形になります。
この連用形の形になるのがひねりでするとか、 したの力を借りて作り直すことを再立ち上げと呼んでおります。
このひねりと再立ち上げっていうのは連動しているというかね、 セットみたいなものですね。
で、このひねりと再立ち上げが観察されるのは節字境界です。
まあこの場合節微字なわけですけど、 その節微字の境界でひねりと再立ち上げというのは観察されます。
これは節語の場合には起こらないことで、 さっきのらしいだったら、
読んだらしい、そのらしいの前に読んだだけらしいっていうふうに、 そのまんまだけっていうのが入ってこられるので、らしいは節語なんですよね。
で、同様のことは否定のないでも言えて、 書かないは、書かはないは言えませんが、書きはしないっていうふうに、
やっぱり連用形としないというね、ひねりと再立ち上げで はっていうのを挿入することができます。
ですので書かないのないは節字なんですよね。 それに対して寒くない、
形容詞の否定の場合は寒くはないっていうふうに、 そのまんまはを挿入することができます。
ですのでこの形容詞の否定のないは少なくとも節字ではありません。
節語というかどうかはちょっと議論があるかもしれませんが、 少なくとも節字ではないんですね。
このひねりと再立ち上げによって節字かどうかっていうのが判断できるわけですが、
学校文法ではこの節字と節語っていうのを 明確に区別せずに
助詞助動詞というブラックボックスに全部ぶち込んじゃってるんですよね。 なので過去の他、
散々扱った、食べた、書いたの他は節字ということがわかったわけですけど、 学校文法では助動詞と呼んでるし、
で同じ助動詞に読んだらしいというね、 節語のらしいも入っちゃってるので、
かなりしっちゃかめっちゃかなんですよね。 というわけで今回は宮岡先生のひねりと再立ち上げをご紹介しました。
もし気合のある人は語とは何かぜひ手に取ってみてください。 それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。
番組フォローまだの方はよろしくお願い致します。 お相手はシガ15でした。
またねー
11:43

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