まずは、私が楽しむことから /保育士の人生
2026-10-27 18:03

まずは、私が楽しむことから /保育士の人生

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【ほいくプラスについて】

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まずは、私が楽しむことから。まずは、自分が楽しんでいる姿を見せること。
今日ご紹介するのは、そんな思いを大切にしてきた保育者、井上由美先生です。
由美先生は、周りの人から、パワフルで頑張り屋さん、そして愛情深い人だと言われています。
制作活動やピアノ、お絵かきが得意で、楽しいことを考えるのも大好きです。
子どもたちと話す時には、声の調子を変えたり、大げさに驚いてみせたり、
時にはわざとわからないふりをして、子どもたちから教えてもらうこともあります。
子どもが得意そうに、自分の知っていることを伝える。
その顔を見ると、由美先生も嬉しくなるのでしょう。
けれど、その明るさだけでは、由美先生という人のすべては語れません。
仕事にはこだわりがあり、苦手なことからも目をそらさず、学び直す努力を重ねてきました。
まずは自分が楽しむという言葉の奥にあるのは、子どもをただ笑わせたいという思いだけではありません。
子どもが自ら興味を持ち、試してみたくなるような保育をしたい、そんな願いがあるのです。
由美先生が幼稚園の先生を目指したのは、まだ幼いころでした。
小さな子のお世話をすることが好きで、自分が通っていた幼稚園の先生にも憧れていたそうです。
ピアノを弾いたり、物を作ったり、絵を描いたり、好きなことを活かせる仕事として幼稚園の先生に魅力を感じていました。
やがてその夢を叶え、子どもたちと過ごす日々が始まりました。
歌や絵、季節の行事、自分の得意なことを仕事にできる喜びは確かにありました。
特に製作活動では、由美先生らしい細やかな工夫が活かされます。
どんな材料なら手に取りやすいだろう。どこを準備しておけば子どもたちが自分で進められるだろう。
仕上がりの美しさだけではなく、作る途中に生まれる発見も大切にしたいと考えてきました。
職場では、製作物の仕上がりの丁寧さや仕事を進める速さを褒められることも多かったそうです。
ピアノの技術も評価され、行事の計画や運営、新人の先生の育成にも携わってきました。
製作活動について、後輩の先生から相談されることもありました。
どんなものを作れば子どもたちが楽しめるのか。
由美先生にとっては、得意なことを活かすだけでなく、自分が積み重ねてきた工夫を他の先生たちと分かち合う機会でもあったのでしょう。
子どもの年齢や興味に合わせて、どんな活動ができるかを一緒に考える。
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そして、先生同士でアイデアを出し合うことが、子どもたちの遊びの可能性を広げることにもつながっていきます。
一人の先生のアイデアが別のクラスの保育にも広がっていく。
そんなところにも保育者同士で学び合う面白さがあります。
由美先生は、仕事をため込まないよう、やるべきことを整理して進めるのを大切にしています。
それは、自分が楽になるためだけではなく、一緒に働く仲間と安心して保育に向かうためでもあるのでしょう。
頼りにされることが増えていく一方で、その毎日は決して楽なものではありませんでした。
朝早く出勤し、帰宅する頃には遅い時間になっている。
家に帰ってからも準備が残り、休日に仕事をすることもありました。
由美先生は、当時を振り返って、縁に自分の全てを捧げていたと話しています。
子どもたちのためにいいものを作りたい。行事を成功させたい。
その思いが強い分、つい頑張りすぎることもあったのかもしれません。
また、職場の人間関係や人の入れ替わりによって、保育以外のことに心を悩ませる時期もありました。
ただ、楽しく保育がしたいだけなのに。そんな思いを抱いたこともあったそうです。
それでも、子どもたちと過ごす日々には、由美先生が大切にしたいと思える光景がありました。
保育の現場では、予定通りに一日が進むことの方が珍しいものです。
遊びに夢中になって気持ちが切り替わらなかったり、思いがけないところで子ども同士のやり取りが始まったりします。
子どもたちは至って神経。でも、大人から見ると思わず笑顔になるような出来事もあります。
一日の終わり、エプロンのポケットから子どもが遠手で渡してくれた石ころやどんぐりが出てくることもありました。
子どもにとっては、見つけた宝物を大好きな先生に届けた特別な時間だったのかもしれません。
忙しさの中にもそういう小さな出会いがあります。
計画を守ることだけに気を取られず、今ここで子どもが何を面白がっているのかを見つめる、その姿勢が由美先生の保育を支えてきました。
そんな由美先生にも苦手だと感じる保育がありました。
絵画活動です。自分自身は絵を描くことが好きなのに、いざ子どもたちと活動すると、どこか受け身な雰囲気になってしまう。
先生に言われたから描いているように見え、自分から表現したいという気持ちを十分に引き出せずにいました。
由美先生は無理に描かせたり、大人の考える正解へ導いたりしたくはありませんでした。
そこで先輩の保育を見学させてもらうことにしたのです。
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声の描け方や席の配置、材料の準備、お手本の見せ方、見過ごしていた一つ一つを確かめ、自分の保育を見直していきました。
そして子どもが何を描いても、まず受け止めるように意識しました。
大人の想像と違う絵でも、その子にとっては大切な表現です。
そこからどんなお話が広がるのか、興味を持って関わりました。
すると、子どもたちが自分のイメージを自由に描く姿が増えていきました。
中には、活動時間が足りなくなるほど夢中になる子もいたそうです。
この経験から由美先生は気づきました。
保育者が答えを用意することと、子どもの意欲を支えることは同じではないのだと。
絵が得意な先生でも、伝え方がうまくいかなければ学び直せばいい。
先生が成長することで、子どもの活動に新しい可能性が生まれる。
その手応えが由美先生自身の励みにもなりました。
普段の言葉書きにも工夫があります。
難しい説明を長く続けるのではなく、擬音を使ったり、声の調子を変えたり、
時にはオッチョコチョイなふりをして、子どもが思わず教えたくなる場面を作ります。
先生が一方的に教えるだけではなく、子どもの知っていることに耳を傾ける。
由美先生にとって楽しさとは、そんなやりとりの中から一緒に生み出していくものなのでしょう。
もちろん、楽しい活動や明るい声かけでは支えきれない場面もあります。
由美先生には今も心に残っている子どもとの出会いがあります。
その子は自分の気持ちを言葉で伝えることが難しく、集団での生活に戸惑う様子が見られました。
どうすれば安心して縁で過ごせるのだろう。
由美先生は日々の姿を見つめ、その子にあう関わりを考え続けました。
周りの子どもたちとの生活も大切にしながら、
どんな時に落ち着いて過ごせるのか、何に関心を向けているのかを確かめていきました。
そして縁で見られた変化や友達との関わりを保護者にも丁寧に伝えていました。
心配なことだけでなく、その日の表情や思わず微笑みたくなる出来事も共有したのです。
そんな日々の中で忘れられない出来事がありました。
それまで言葉で思いを伝えることが難しかったその子が初めて由美先生のことを呼んでくれたのです。
その時の嬉しさは今でも忘れられないと言います。
何かが出来るようになる瞬間にはそれまでの長い時間が重なっています。
表には見えにくい試行錯誤やその子自身の歩みがあるのです。
由美先生にとって初めての呼びかけはただ一つの出来事ではなく、
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目の前の子どもと向き合ってきた日々を感じる大切な記憶になりました。
別の子どもとの関わりでは行動の背景を考える大切さを学んだこともありました。
新しい環境に戸惑い、友達とのトラブルや大人に強く気持ちをぶつける姿が見られた子どもです。
どう関われば良いのだろう、由美先生は悩みましたが一人で答えを出そうとはしませんでした。
周りの先生たちと情報を共有し、協力を得ながらその子とじっくり向き合う時間を作っていきました。
すると少しずつ自分の気持ちやして欲しいことを伝える姿が見られるようになり、
友達と過ごす時間にも変化が生まれたそうです。
由美先生が感じたのは目立つ行動だけで子どもを判断しないことの大切さでした。
落ち着かない様子の奥に不安があるのかもしれない。まだ言葉にならない思いがあるのかもしれない。
理由を決めつけず子どもの立場から見てみる。
そうすることで次に必要な関わり方を考えることができます。
また、一人で抱え込まないことも大切でした。
保育者同士で見たことを伝え合えば、自分だけでは気づけなかった一面を知ることがあります。
由美先生が職員とのこまめなコミュニケーションを大切にしてきたのは、
子どもを支えるために先生たちが力を合わせる意味を知っているからなのでしょう。
由美先生の丁寧さは保護者との関係にも表れています。
連絡帳では、その日の出来事だけでなく子どもの様子が伝わるように心がけてきました。
どんな遊びに夢中になったのか、友達と何を楽しんだのか、
家庭では見られない一面が伝わるよう言葉を選んできました。
保護者から連絡帳を読むのが毎日楽しみだと言ってもらえたことも何度もあったそうです。
もちろん保護者との関係がいつも順調だったわけではありません。
思いがうまく伝わらず厳しいご意見をいただいたこともありました。
そんな時、由美先生が心がけていたのは、
相手の気持ちを受け止めながら必要なことを丁寧に伝えることでした。
そして、難しい寄り取りがあった後も、
そのことと子どもへの関わりは分けて考えるようにしていました。
子どもにとって縁が安心して過ごせる場所であること、
保護者にとっても我が子の様子を安心して聞ける場所であること、
そのために自分には何ができるのかを考えてきたのです。
日々の連絡帳や何気ない会話を通して子どもの姿を丁寧に伝えていく、
そうした関わりを続ける中で、
保護者との関係が少しずつ変わっていた経験もあったそうです。
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由美先生は、「信頼関係は一度の説明だけで完成するものではない。」と感じました。
相手の立場を想像し、自分の伝え方を振り返りながら、
誠実な関わりを積み重ねていくこと、
意見が違うときには子どもにとって大切なことを見失わない、
その姿勢が由美先生の保護者対応の土台になっています。
保育士という仕事を通して一番成長したと感じること、
由美先生はそれを相手の立場に立って考える力だと話しています。
子どもにも保護者にも同僚にもそれぞれの思いがあります。
自分には見えていない事情があるかもしれません。
同じ出来事でも感じ方は人によって違います。
だからこそ、自分の見方だけで判断せず、
相手にとって何が大切なのかを想像する、
身近な人からは一緒に話すと元気になる、
前向きな気持ちになれると言ってもらったこともあるそうです。
その言葉を由美先生はとても嬉しく感じたと話しています。
相手に合わせた言葉を選び、場を明るくする、
それは無理に元気づけることとは違います。
相手がどんな気持ちでいるのかを考えるからこそ、
伝わるものがあるのでしょう。
由美先生が保育士として大きな喜びを感じてきた場面の一つが、
卒園式です。
何度経験しても子どもたちの成長した姿を見ると胸がいっぱいになるそうです。
一緒に遊んだこと、悩みながら関わったこと、
初めて見せてくれた表情、そうした日々を知っているからこそ、
育つ姿が心に残ります。
由美先生は、子どもの今を支え、
未来の土台を育てることが保育士の大切な役割だと考えています。
そして、子どもにも保護者にも安心できる存在でありたいと願っています。
子育てには一つの決まった正解がありません。
周りの子と比べて不安になることもあるでしょう。
けれど、一人一人の歩みには違いがあります。
昨日はできなかったことに、今日は少し手を伸ばした。
自分の気持ちをいつもとは違う形で伝えようとした。
そんな姿に目を向けてほしいと、由美先生は思っています。
一方で、集団保育では、もっと丁寧に関わりたいと思っても、
時間や人位の制約があります。
子どものために努力し、専門性を高めている先生たちが、
もっと適切に評価されてほしいという願いもあります。
保育士は、ただ子どもと遊ぶ仕事ではありません。
観察したことを手がかりに、関わり方を考え、
環境を整え、家庭と縁をつなぎ、仲間と協力しながら日々の生活を支えています。
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由美先生が培ってきた力も、その一つ一つの仕事の中に現れています。
例えば、連絡中に短い文章を書くときも、
ただ出来事を並べるのではなく、子どもの姿をどのように伝えるかを考える。
行事の準備では、当日の楽しさと安全の両方に目を配る。
どれも目立つ仕事とは限りませんが、保育を支える大切な専門性です。
由美先生の仕事への誇りは、そうした日常の営みに根差しているように感じます。
かつて由美先生は、子どもから
先生のようになりたいと憧れの気持ちを伝えてもらったことがあるそうです。
その言葉は今も心に残っています。
子どもがどんな思いでそう話したのか、全てを知ることはできません。
でも、その子が由美先生の姿を見て何かを感じ取っていたのだとしたら、
それは保育者にとって嬉しいことですね。
由美先生は何でも完璧にできる先生だったわけではありません。
得意なこともあれば苦手なこともありました。
人との関係に悩み、思うように進まない仕事に向き合った日々もありました。
それでも子どもたちの発想に驚いたり、一緒に喜んだりしながら
自分にできることを探してきました。
まずは、自分が楽しんでいる姿を見せること。
その言葉はいつも笑っていなければならないという意味ではないのでしょう。
うまくいかない時にも学び直し、子どもと過ごす時間の中に新しい面白さを見つけていく。
そんな姿勢を表しているように感じます。
幼い頃に抱いた先生への憧れは、様々な出会いを経て
由美先生自身の保育館へと育っていきました。
井上由美先生、その人を表す言葉には明るさだけではなく
人の気持ちを考える優しさと努力を重ねてきた確かさがあります。
今日もどこかの保育室で先生と子どもたちの間に新しい発見が生まれていることでしょう。
何気ない一日の中にもその子にとって大切な時間があります。
皆さんの心にはどんな場面が残ったでしょうか。
子どもたちと笑い合う由美先生の姿でしょうか。
それとも悩みながらも一人一人に向き合ってきた姿でしょうか。
同じ保育の仕事をしていても、出会った子どもたちも経験してきたことも
大切にしている思いも違います。
そして、その歩みの中にはその先生にしか語れない物語があります。
今回の保育士の人生は井上由美先生の物語をお届けしました。
今日も最後までお聞きくださりありがとうございました。
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