00:00
子どもも保護者も保育士も、大切にしたい保育の形。
こんにちは、保育士の人生。今週もお聞きいただきありがとうございます。
今週は、保育士として12年目を迎えた橘美由紀さんのお話をお届けします。
テーマは、保育士としての志です。
美由紀先生は、子どもに何かをするとき、まず目線を合わせます。
これから何をするのかを一つ一つ説明して、その子の意思を確かめてから進める。
仕事の中でずっと大切にしてきたことだそうです。
ただ、この姿勢を毎日の保育で続けるのは、簡単なことではありません。
子どもの様子だけでなく、時間や周りの状況にも気を配る必要があるからです。
そして、美由紀先生の視線は子どもだけに向いているわけではありません。
子育てに悩む保護者の話を聞き、縁での様子を伝え、一緒に次の一歩を考える。
それも保育士の大切な役割だと感じています。
今日は、美由紀先生の3つの思いを一緒にたどっていきましょう。
子ども一人一人の意思を尊重すること、家庭と縁がパートナーであること、
そして保育士の専門性を社会に伝えていきたいということです。
美由紀先生の経験は、これが正解というものではありません。
どんな気持ちで関わり、何を大切にしてきたのか、その歩みにゆっくり耳を傾けてみてください。
まずは、美由紀先生が保育の道を選んだ頃のお話からです。
美由紀先生は、幼稚園に通っていた頃の担任の先生が強く印象に残っていたそうです。
弟がいたこともあって、小さい子のお世話をするのが好きでした。
子どもに囲まれて働くことはきっと幸せだろう。
そう感じて、保育士や幼稚園教諭を目指すようになりました。
新卒で入った保育園では、担当生の保育に出会います。
この出会いが、美由紀先生の保育の見方を大きく変えました。
子どもとの向き合い方も、それまでとは変わっていったといいます。
目の前の子どもの姿をよく見て、今どんな関わりが必要なのかを考える。
担当生の保育との出会いは、美由紀先生が保育士として歩む中で、何度も立ち返る原点の一つになっています。
ここで、美由紀先生の人柄についても少しご紹介しましょう。
美由紀先生は、「ピアノは人並みに弾ける。」と控えめにお話します。
一番好きなのは、遊びの環境を考えることです。
03:02
子どもがどんな遊びに手を伸ばすだろう、どんな場所なら落ち着けるだろう、
そう想像しながら環境を整えて、整えた後も子どもの姿を見ながらまた考える、
その過程に魅力を感じているそうです。
職場では、「仕事はテキパキしている。安心して任せられる。」と言われ、
パソコンの対応や新人のフォローを頼まれることが多かったと言います。
後輩や同僚から、上司との付き合い方や保育の方向性について相談されることもありました。
日々の保育だけでなく、同じ現場で働く人の困りごとにも向き合ってきたのですね。
ご自身の性格は、頑固、慎重派、せっかちだと表現します。
せっかちな面は自覚していても、子どもと向き合うときには返事や反応をじっと待つ、
子どものペースを大切にするところに、美由紀先生らしさが現れています。
身近な人からは、芯が強く思いやりのある人だと言われるそうです。
仕事を離れれば、ライブ観覧や旅行を楽しむことも、
頼られる保育士としての姿だけでなく、好きなことを大切にする素顔も美由紀先生の魅力です。
次に、美由紀先生の保育館についてです。
集団で過ごす保育には、次の活動や食事の準備など、どうしても大人側の時間の流れがあります。
そんな中でも、美由紀先生は子どもの思いを置き去りにしないよう心がけてきました。
これから何をするのかを子どもに伝え、意思を確かめてから進める。
これは、子どもが何もかも自分で決めるという意味ではありません。
安全や生活の流れは大人がしっかり支えた上で子どもの反応を受け取る、そういう関わりです。
説明は、大人が決めたことを知らせて終わりではありません。
子どもの希望や表情を確かめ、言葉だけでなく見ぶりにも目を向けます。
返事を待つ時間も、子どもの気持ちを受け止める関わりの一部だと考えています。
もちろん、安全のために子どもの希望を叶えられない場面もあります。
そんな時も理由を伝えて、子どもが分かるように関わることを大切にしているそうです。
一番に挙げたのは、子どもの小さな成長を保育士同士で分かち合えた時です。
保護者から感謝された時、
家でも子どもが美由紀先生の名前を話していると聞いた時、
06:01
子どもが泣きついて、先生大好きと伝えてくれた時、
子どもの初めてに立ち会い、成長を間近で感じられることを保育士の魅力だと話します。
こんなエピソードもあります。
ある発表会で、劇の最後に歌った曲を気に入った子どもがいました。
その子は、保護者に楽譜が欲しいと伝えたそうです。
美由紀先生が楽譜を渡すと、その日から家で練習を始め、やがてピアノ教室にも通うようになりました。
しばらくして保護者から、「今でもその曲が好きで、ピアノも上達しました。」と聞いたそうです。
一つの歌がきっかけで、子どもの興味が広がり、長く続いている。
その姿を知って、美由紀先生は心から嬉しく感じたと言います。
ここからは、美由紀先生の志がよく現れている場面をいくつかご紹介します。
まずは、ある子どもと職員との関係づくりのお話です。
3級に入る前に関わっていた子どもが、クラス外の後、他の職員になかなか心を開けずにいました。
食事も入民も、基本的に美由紀先生が担当する状態が続いていたそうです。
慣れた大人がそばにいることは、子どもにとって安心につながります。
けれど、特定の職員だけに関わりが集中したままでは、この先の生活を支える上で心配も残ります。
美由紀先生は、「このままではいけない。」と考えました。
そこで、美由紀先生と子ども、そしてもう一人の保育士の3人で遊ぶ時間を作ります。
遊びの中で少しずつ距離を縮めていきました。
無理に引き離すのではなく、美由紀先生自身が少しずつ離れ、他の保育士に任せる時間も延ばしていったそうです。
子どもの安心を損なわないこと、そして別の大人との関係も育てること。
美由紀先生は、その両方を諦めず、段階を考えながら関わりました。
3級に入る頃には、その子は心を開ける保育士を見つけ、自分から指名するようになっていたそうです。
次は環境づくりのお話です。
子どもたちが疲れた時に休めるように、くつろげるペースを作ったことがありました。
そこに敷いた布団について上司から、「危険ではないか。」と指摘を受けたそうです。
美由紀先生は、すぐに撤去はしませんでした。
安全に配慮しながら数日間、子どもたちの様子を近くで見守ったのです。
その間、子どもが転ぶことはありませんでした。
09:00
外から戻った後、食事の前に疲れて布団に横になる子がいました。
人形遊びに布団を使う子もいました。
大人が想定した休憩のほかにも、子どもたちはこの場所を遊びに活用していたのです。
実際の使われ方を確かめた上で、環境について考えることができてよかった、美由紀先生はそう感じたそうです。
最後は子どもの発想に驚いたお話です。
別の先生が髪色を変えた時、ある子どもが、「どうやって髪の色を変えたの?」と尋ねました。
すると、そばにいた別の子どもが、「クレヨンで塗ったんじゃない?」と答えたそうです。
大人なら髪を染めたのだとわかります。
けれど子どもは、自分の知っている経験と結びつけて、思いもよらない答えを出す。
美由紀先生は、その発想を正すより先に、「どう考えたんだろう?」と驚き、面白さを感じたと言います。
3つの場面に共通しているのは、決めつけずに目の前の相手と状況をよく見ていることです。
子どもの様子を見て動く、保護者の話を聞いてから提案する、周りの職員にも目を向ける、
そうして場面ごとに次の動きを考えていきました。
子どもの意思を確かめる姿勢は子どもだけでなく、保護者や同僚との関係にもつながっています。
自分の考えだけで進めず、相手の反応を受け取り、必要な時には周りと相談する、
その柔軟さも美由紀先生が現場で培ってきた力です。
続いて、保護者との関わりについてです。
美由紀先生は、保育士の存在意義の一つは、保護者の孤独を防ぐパートナーであることだと考えています。
ある時、食事について悩みを抱えている保護者がいました。
美由紀先生は、まずしばらく話を聞きます。
その上で、縁での子どもの様子も丁寧に伝えました。
話を重ねるうちに、保護者も少しずつ一緒に改善策を考えられるようになったそうです。
保護者の様子を見ながら提案すると、一つずつ試してくれました。
子どもの姿にも少しずつ変化が見えてきます。
その小さな変化を保護者と一緒に喜べたといいます。
話を聞くことから始めて、相手の気持ちに合わせて提案し、その後の様子を共に見ていく。
美由紀先生にとってこれが大切な流れになりました。
けれど、始めからうまくいっていたわけではありません。
経験が浅かった頃は、保護者が美由紀先生に相談しづらいのか、上野保育士に相談することがありました。
美由紀先生は、萎縮しそうになりながらも、毎日子どもの様子を伝え、会話を続けます。
12:06
すると、年度の後半には子どもの悩みも話してもらえるようになりました。
物を辞せずに向き合い続ければ、保護者が答えてくれることもある。美由紀先生はそう学んだそうです。
もともと人見知りで、相手から話しかけられるのを待つことが多かったという美由紀先生。
そして、今は共通の話題を探して、自分から声をかけることを大切にしています。
無理に悩みを聞き出すのではなく、まず言葉を交わして話しやすい関係を作る。
毎日の挨拶や短いやりとりが、保護者が安心して相談できるきっかけになっていきます。
そうした日々を重ねる中で、保護者から、「安心して毎日任せられます。」と言われたことがありました。
美由紀先生にとって、とても嬉しい言葉です。
毎日のやりとりが信頼につながる。家庭と縁、それぞれが見ている子どもの姿を持ち寄って一緒に考えていく。
そんな関係を大切にしています。
美由紀先生には、子育て中の親御さんに伝えたい言葉があります。
完璧にやろうとしなくていい。
自分自身の出産と育児を通して、親もすべてが初めてで、子どもと一緒に成長していけばいいだと気づいたそうです。
保護者を支える立場でありながら、自分も親として迷い、学んできた。
その経験が、保護者の気持ちを想像しながら話を聞きたいという思いにつながっています。
ここからは、美由紀先生がこれから大切にしていきたい志についてです。
子どもの意思を確かめること、保護者の話を聞くこと、そして家庭と縁が一緒に子どもの育ちを支えること。
こうした日々の関わりが、美由紀先生の保育の軸になっています。
美由紀先生は、保育士を子どもの一生の土台を築く専門職だと考えています。
預かる人にとどまらず、遊びを通して子どもの生きる力や人と関わる力を育む専門職として知ってほしい、そう願っています。
子どもの姿を見て、環境や声かけを考える。
遊びの中で子どもが自分で考えたり、工夫したりする機会を支える。
自分の関わりが子どもの育ちにプラスの影響を与えられる。
美由紀先生は、そのことに誇りを感じています。
保護者の孤独を防ぎ、家庭と縁が手を取り合って子どもの育ちを豊かにするパートナーであること、
それも美由紀先生が伝えたい保育士の役割です。
そして、医療や看護の仕事のように専門性が社会に認められること、保育士が尊敬され憧れられる仕事になること、
15:09
美由紀先生はそんな未来を望んでいます。
一方で、現場にはもどかしさもあります。
やりたい保育と安全や時間との間のジレンマ、責任の重さと処遇との隔たり、
丁寧に関わりたいと思っても、時間や周りの状況に追われてしまうことがあります。
だからこそ、保育士の気持ちだけに頼るのではなく、配置や業務の在り方が見直されてほしい、
現場に心の余裕が還元されてほしい、美由紀先生はそう願っています。
子どもが好きだから我慢して当然、そんなふうに自己犠牲を美徳にしない文化に変わってほしい、
業務の多さや昔からこうしてきたという慣習も見直してほしい、
責任の重さに見合う処遇と丁寧な保育を続けられる心の余裕がほしい、
そして子どもの声に耳を傾け、保護者や同僚と相談しながら保育を考える時間がほしい、
それが美由紀先生の願う心の余裕です。
もちろん美由紀先生もずっと順調だったわけではありません。
保育士になったばかりの頃は、長い勤務時間や新しい生活、
そして組んでいた上司との関係に悩み、やめたいと思うことが何度もあったそうです。
それでも働きながら話を重ね、少しずつ認めてもらいました。
その上司とは、後に3度も一緒に組むことになります。
退職するときには、先生と見た子どもたちは特別に感じると言われたそうです。
その言葉を聞いて美由紀先生は、やめずに続けてよかったと心から思いました。
人前で話すことが苦手だった自分も、働く中で少しずつ変わったと美由紀先生は振り返ります。
子どもたちや大勢の保護者の前で話す経験を重ねました。
今も緊張はするけれど、冗談を交えたり、その場に合わせて伝え方を変えたりできるようになりました。
マニュアル通りに話すだけでなく、自分の思いを胸にしまいこまずに伝えられるようになったこと、
それも美由紀先生が感じる成長の一つです。
やめたいと思った日も、人前で話すのが苦手だった自分も、
子どもたちや保護者、そして同僚と過ごす時間の中で少しずつ変わってきました。
美由紀先生にとって、保育の現場は子どもの育ちを支える場所であると同時に、
自分自身が学び、成長してきた場所でもあります。
だからこそ、美由紀先生は子どもと向き合う保育士が、
心の余裕をもって働き続けられることを大切に考えています。
18:05
子どもを支える大人が支え合い、ゆとりをもって子どもと向き合うこと、
それが子どもの育ちを支えることにつながるからです。
ここまで美由紀先生の志をたどってきました。
子どもの意思を尊重すること、保護者の不安に耳を傾けること、
そして保育士自身も大切にされる環境を求めること、
お話をたどると、これらは別々の思いではないことがわかります。
子どもを取り巻く大人が支え合い、保育士にも心の余裕があること、
それが子どもの育ちを支えると美由紀先生は考えているからです。
今日のお話を聞いて、ご自身の保育や子育てについて何か思い浮かんだことはあったでしょうか。
子どもの意思を確かめるために明日一つできることは何でしょう。
保育士は子どもと家庭のそばで育ちを支える仕事です。
美由紀先生が願うようにその専門性が広く伝わり、
保育士自身も大切にされる環境につながっていてほしいと思います。
今週のポッドキャストは、保育士としての志をテーマにお届けしました。
最後までお聞きいただきありがとうございました。