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「できる人」から、「ともに考える人」へ / 先生の人生ノート
2026-10-05 15:39

「できる人」から、「ともに考える人」へ / 先生の人生ノート

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一人の保育士が人生の分岐点で行った選択をたどり、キャリアの多様な歩み方を届けます。

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できる人から、ともに考える人へ。
経験を重ねると、少しずつ任される仕事が増えていきます。
自分の仕事だけではなく、後輩に仕事を教えたり、相談にのったり、
さらに役割が変われば、自分だけではなく、チーム全体を見ることも求められるようになります。
今回ご紹介するかすみさんも、そんな役割の変化を経験してきた保育士の一人です。
かすみさんが理想としていたのは、子どもにも一緒に働く先生にも、優しく温かく関われる保育者でした。
けれど、経験を重ね、任される仕事が増えていく中で、
きちんとやらなければいけない、任された以上失敗してはいけない、
そんな思いも少しずつ強くなっていたそうです。
今日は、一人の保育士が、自分の仕事をこなす立場から、後輩を育て、チームを見る立場へと変わっていく中で、
何に悩み、どんな出会いを経験し、自分の役割をどう捉え直していったのか、かすみさんの歩みをたどっていきます。
保育士として経験を重ねていく中で、かすみさんは少しずつ、さまざまな仕事を任されるようになりました。
自分のクラスの保育だけではありません。
後輩に仕事を伝えたり、相談を受けたり、周りの先生たちを見ながら動くことも増えていきました。
任せてもらえることは、これまで積み重ねてきた経験を認めてもらえたということでもあります。
けれど、かすみさんの中では、任される仕事が増えるほど、ちゃんとやらなきゃという気持ちも大きくなっていきました。
思うように仕事ができなければ、自分自身に腹が立つ、周りの先生がうまくやっている姿を見て、素直に受け止められないこともあったそうです。
そして、自分を追い込めば追い込むほど、心の余裕はなくなっていきました。
本当は、優しく温かく関わりたい。そう思っているのに、周りの先生に冷たく接してしまう。
そんな自分に気づくたび、私ってこんな人だったのかな、と自分自身に失望することもありました。
保育は一人ではできません。
同じクラスの先生、違うクラスの先生、先輩や後輩、たくさんの人と協力しながら子どもたちを見ていく仕事です。
それなのに、チームで行う保育なのに、私はチームプレーができていない。
そのことが、かすみさんにとって大きな苦しさになっていきました。
このまま保育士を続けていていいのかな。私はこの縁にいていいのかな。
自分の得意なことも、自分の良さも、少しずつわからなくなっていたそうです。
03:05
一度現場を離れて、自分のこれからを考えた方がいいのかもしれない。そんなことまで考えるようになっていました。
そんな頃、かすみさんは、それまであまり接点のなかった一人の先輩と話をする機会がありました。
ここでは、はるか先輩と呼ぶことにします。
はるか先輩は、周りの先生のいいところを見つける人でした。
ただ、心の中で思うだけではありません。見つけた良さをきちんと言葉にして相手に伝える。そんな先生だったそうです。
ある日、かすみさんが思うような保育ができず、自分自身への苛立ちを見せてしまったことがありました。
そんなかすみさんに、はるか先輩はこう言いました。
かすみ先生ってすごいよね。本当に子供のためにって一生懸命で。がんばり屋さんで、私そういうところ尊敬してる。見習わないとって思うよ。
かすみさん自身が見ていたのは、うまくできなかった自分でした。
けれど、はるか先輩が見ていたのは、その奥にある子供たちに一生懸命向き合おうとする姿でした。
また、こんな出来事もありました。
人とのコミュニケーションを少し苦手としていた奈々先生。
ある時、周りの先生たちから、なんでこんなにコミュニケーションが取れないんだろ。ちょっと困っちゃうよね。
そんな言葉が出てきたことがあったそうです。
その場にいたはるか先輩は、苦手なんだもんね。しょうがないよ。私だって苦手なことたくさんあるし、迷惑かけちゃうこともあるから。
そう言った後、でもさ、奈々先生が作るものって本当に丁寧だよね。
私たちには作れないようなものも作ってくれるし、奈々先生がいるから、保育の幅も広がってる。
助かってるよね。いや、本当に尊敬するよ。
そう続けました。
すると周りからも、確かにあれはすごいよね。私もお願いしちゃうもん。という言葉が出てきたそうです。
一人の先生の出来ないことに向いていた視線が、その先生だからこそ出来ることへと変わっていく。
かすみさんはその様子をそばで見ていました。
そして少しずつ考えるようになりました。
自分はこれまで、出来ていないことに目を向きすぎていたのかもしれない。
それは周りの先生に対してだけではありません。自分自身に対しても同じでした。
私もこんな先輩になりたい。
そう思ったかすみさんは、まず人の良いところを意識してみることから始めました。
そして自分の苦手なことも全て隠そうとするのではなく、少しずつ周りに伝えるようにしました。
自分が苦手なことを知ってもらう。自分も相手の得意なことを知る。
06:05
そうすれば、お互いの力を使いながら働くことが出来るのかもしれない。
けれど、長く続けてきた考え方はすぐに変わるものではありませんでした。
そこでかすみさんが始めたのが、一日の終わりの一分間の振り返りでした。
その日自分はどんな風に人と関わったのか、そしてその日関わった人にはどんな良いところがあったのか、それを書き留めるようにしたそうです。
もちろん毎日続けられたわけではありません。
疲れている日もあります。気分が乗らない日もあります。
それでも、出来ていないことだけではなく、その人が出来ていることにも目を向けてみる、そんな意識を持つようになりました。
その後、はるか先輩は縁を退職しました。
けれど、はるか先輩の言葉や人との関わり方はかすみさんの中に残り続けました。
そして、月日が経ち、かすみさんはさらに大きな役割を任されるようになります。
リーダー職への昇格です。
これまでの自分の業務に加えて、リーダーとして周りの状況を見ながら後輩を育てていく、任される範囲がさらに広がりました。
ところが、そこで再び壁にぶつかります。
自分の仕事とリーダーとしての仕事、その両立に追われるうちに、また少しずつ余裕がなくなっていきました。
期日守って?どうしてもっと一人一人の発達を意識して保育しないの?後輩に対してそんな言葉が出てしまうこともありました。
もちろん、かすみさん自身も分かっていました。
後輩が悪いわけではない。まだ経験が浅く、不慣れなことだってあります。
自分だって最初から何でもできたわけではありません。
頭では分かっている。
それでも自分自身の仕事に追われ、リーダーとしての責任を感じるほど、ちゃんとしてほしいという思いが強くなっていきました。
そして気づけば、以前の自分に戻りかけていました。
あれだけ人のいいところを見ようと思っていたのに、また同じことを繰り返している。
かすみさんは思いました。
このままではダメだ。
そこで、ある人に会いに行くことにしました。
すでに縁を退職していた、はるか先輩です。
久しぶりに会ったはるか先輩に、かすみさんは今抱えていることを話しました。
リーダーになったこと、自分の仕事との両立がうまくいかないこと、
後輩に対して余裕を持って関われなくなっていること、
そしてまた以前の自分に戻ってしまいそうなこと。
09:03
はるか先輩は、「そうだよね。分かるよその気持ち。」と話を聞いてくれたそうです。
一通り話を終えた後、かすみさんはずっと聞いてみたかったことを尋ねました。
はるか先輩は、「どうしてそんなに人のいいところを見つけて、
リスペクトして、それを相手に伝えられるんですか?」
するとはるか先輩は、「私だってイラッとすることはあるよ。
この人とはどうしても相性が合わないって思うこともある。」
そう答えました。
そして突然、かすみさんに尋ねました。
ところで、かすみ先生が尊敬する人って誰?
少し考えてかすみさんは答えました。
母です。
かすみさんのお母さんは子育てをしながら仕事もしていました。
忙しい中でも家族の体のことを考え、ほとんど毎日手料理を作ってくれたそうです。
かすみさんが一人暮らしを始めてからは、
メールやLINEで簡単に連絡を取れる時代でも、
はがきや手紙を送ってくれました。
そこには手書きのレシピが添えられていることもありました。
そんな母がよく口にしていたのが、「めぐりめぐって自分のところに来るんだよ。」
という言葉でした。
もちろんかすみさんは母のすべてをそのまま真似したいと思っていたわけではありません。
自分のことも大切にする。
そして周りの人も大切にする。
優しさだけではなく、必要な時には強さも持つ。
そんな母のあり方に憧れと尊敬を感じていたそうです。
その話を聞いたはるか先輩は、
尊敬している人に近づきたいとか、こういう自分でありたいって考えるとき、
言葉だけで考えるより、身近な人を思い浮かべたほうがわかりやすいじゃん。
そして、大抵尊敬している人って自分がこうありたいと思っている姿でもあるんだよ。
そう話してくれました。
最後にはるか先輩はこんな言葉をかけました。
かすみ先生ってゼロか百の人だよね。
でも五十でもいいじゃん。そのほうが楽しくなるかもよ。
はるか先輩と別れた後、かすみさんは改めて、
自分がリーダーとして後輩にどう接していたのかを考えました。
自分が完璧でなければいけない。
だから周りにも同じように求めていたのかもしれない。
でも、できないことを指摘し続けるだけで後輩は成長できるのだろうか。
そこでかすみさんは考え方を少し変えてみることにしました。
できない時があってもすぐに責めない。
どうしてできないの?ではなく、どうしたらできるだろう?を一緒に考える。
12:00
そして後輩のできているところにも目を向ける。
ただ、これまでいろいろと厳しく言ってきた自分が突然、
すごいね、いいところだね、と言い始めても後輩は驚いてしまうかもしれない。
そこでかすみさんはまず身近なところから始めました。
例えば、園長先生や他の先生との会話の中で、
「〇〇先生ってすごく気が利くんですよ。
私が忘れていたことも声をかけてくれたから気づけて本当に助かりました。」
そんなふうに後輩ができていたことを周りの人にも伝えるようにしました。
以前のかすみさんなら、先に目についていたかもしれない、できていないこと。
でも今は、この先生だからできていることは何だろう?
そこにも目を向けようとするようになりました。
それは、はるか先輩が以前、
七先生の良さを周りに伝えていた姿ともどこか重なります。
けれど、ただはるか先輩を真似したのではありません。
後輩を育てる立場になった今のかすみさんだからこそ、
自分なりのやり方でチームとの関わり方を探し始めたのだと思います。
保育士として経験を積み、できる仕事が増えていく。
そして、後輩を育てる立場になり、やがてチームを見る立場になっていく。
役割が変われば、求められることも変わります。
かすみさんも最初からリーダーとしての答えを持っていたわけではありませんでした。
自分が仕事をきちんとこなすこと、
それが任された役割を果たすことだと思っていた時期もありました。
けれど、後輩を育てる立場になったことで、
自分一人ができることとチームで仕事をすることは同じではないと気づいていきました。
誰かのできないところを見つけて正すことだけが育成ではない。
その人ができることを見つけること。
そして、できないことがあれば一緒にどうしたらできるかを考えること。
自分がすべてを完璧にこなすのではなく、
それぞれの力を持ち寄りながらチームとして保育をしていく。
それもリーダーとして似合う役割の一つなのかもしれません。
もちろん今でも、かすみさんの中からゼロか百かで考えてしまう部分がすべてなくなったわけではありません。
余裕がなくなれば以前の自分が顔を出すこともあるそうです。
それでも、今また百を求めているかもしれない。
そう気づいた時には少し立ち止まる。
そして周りの先生たちに目を向けてみる。
自分にはないものを持っている人がいる。
自分が苦手なことを得意としている人もいる。
保育士として経験を重ねることは、
15:02
ただ自分一人でできることや増やしていくことだけではないのかもしれません。
経験を重ね立場が変わるたびに、
今の自分に求められている役割は何だろう、
そう問い直しながら自分の働き方を選び直していく。
かすみさんは今もその途中にいます。
先生の人生ノート
今回は保育士かすみさんの現場での役割が変わっていく中での選択をたどりました。
あなたのノートには今どんな問いがありますか?
15:39

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