で、じゃあまずそもそも前提とは何かっていう話なんですけど、
ちょっとここで○×クイズをしましょう。
はい。
この例文。
現在のフランス王はハゲである。
英語だとThe present king of France is bald.
っていう文なんですけど、
これ○だと思います?×だと思います?
ほう。
現在のフランス王はハゲである。
ですね。
うーん。
まあ、しんかぎか。
もうちょっとちゃんと言うと。
えー。
今フランスって王様がいる制度ではないと思うので、
はい。
大統領制なので、
なので、なんかハゲ、大統領はハゲかもしれないんですけど、
フランス王はハゲかって言われると、
偽になるんですかね。
偽になるか真偽不能になるか、
その辺なのかなって思いましたけど。
はい。素晴らしい感覚ですね。
実はこの文に真偽が付けられるか否かっていうのは、
言語学、特に意味論の世界ですげえ大きな議論になったことがあるんですよ。
あ、そうなんですね。
はい。
で、最初にこれ偽じゃね?って言ったのが、
哲学者のバートアランド・ラッセルですね。
うん。
このラッセルさんはこの文を要素に分解したわけですよ。
はい。
まずフランス王が存在する。
そしてそれが一人である。
で、そいつがハゲだっていうことをこの文は言っていると。
そうですね。
で、この3つの中でフランス王が存在するっていうのと、
そいつが一人であるっていうのはまず嘘なわけじゃん。
存在してないわけじゃん。この世に今の。
今この世にフランス王は存在してないはずなので。
これが嘘なんだから、この文全体も嘘だよねって言ったのがラッセルさんなんですよ。
でもところがそこに反論を提示したのがストローソンさんっていう人で、
ストローソンさんは私たちが実際に現在のフランス王はハゲだって言われたら、
待て待て待て待てそもそも王様なんかいないんじゃないっていう方が適切な反応だよねっていう。
そうですね。そもそも論としてっていう感じにはなるかなと。
そう。だからストローソンさんはこれ審議が判定できない。
1か0か分かりませんっていうのが正しい答えなんじゃないかっていう風に言って、
この2人がバチバチの論争を繰り広げたっていう過去があるわけですね。
そうですね。真か偽かどっちでしょうかっていう質問に答えなくちゃいけないんだったら、
真では絶対にないので偽だと思うんですよ。
ただそこでこうあるじゃないですか。AでしょうかBでしょうか答えはどっちもでしたみたいなクイズとして、
その選択肢いけるんだっていう風になると審議判定不能って言いたくなる気持ちもわかるなって思うので、
なんかその2人がバチバチになるのはわかる気がします。
そうなんですよね。このストローソンさんが定義したこのプレサポジション前提っていうのは、
ある文を真か偽か判定するために前段階としてお互いに共有されてなきゃいけない情報を言語学的に前提プレサポジションと呼びましょう。
っていう風に定義したわけですね。これがない時、これが成立してない時っていうのは会話自体がうまくいかなくなっちゃうよっていう話をしたんですよ。
結構この理論っていうのは有名で、限界の意味いろいろあるんですよっていう話をしたんですけど、その前提の部分の研究を大きく進めたバチバチの議論だったわけです。
最初にもち子さんにまた僕のおやつ盗み食いしたでしょうって言ったじゃない。
それに対してもち子さんがちょっと待ってちょっと待って一回もそんなことしたことないんだけどって答えたのもある意味このストローソンさんの考え方に近い。
実際我々その会話の中で前提が合ってないっていう風に感じるとそういう反応を示すわけですよね。
その方が健全ですよね。そのグライスさんの話になっちゃうかもしれないんですけど、お互いこういい人間であろうとするみたいな話あったじゃないですか。
強調の原理ですね。
それからしてもいや待ってずれてるかもっていうのを指摘してあげるっていうのはすごいそこにむしろ寄り添ってるのかなっていう風な印象を受けました。
そうかもしれないですね。
これストローソンさん以降この前提かどうかを一つテストするのに英語でwait a minutetestって呼ばれるんですけどちょっと待ってテストっていうのをやるんですよ。
ある文が前提か否かっていうのを判断するときにちょっと待ってって言ってそこに疑義をかけられるかどうかっていうので前提を判断するなんていうことのテストの大元になった議論の一つでもあります。
この前提って結構面白くて本来さっきみたいにあらぬ前提が提示されたとき人間はちょっと待ってちょっと待ってそれ前提違うよっていう風にストップをかけにかかるんですけどそうじゃないときって結構割とそれを自動的にアダプトしちゃう。
自動的に受け入れちゃうことがあるんですよね。
例えばごめんもちこさん今日の収録遅刻しちゃったうちの猫病院に連れて行っててって言ったらもちこさん私が猫飼ってるって知らなくてもこの人猫飼ってるんだっていう風に解釈するでしょ。
そうですね。
そこでわざわざちょっと待ってちょっと待ってあんた猫飼ってるのって聞かなくない?
めっちゃ親しかったらですよね。
待って待っていつから猫飼っとんのやっていうのが突っ込める間からかどうかにはよりますけどわざわざそこで突っ込む感じはしないと思います。
みたいに結構自然と認識のズレを許容できる範囲の話であればさっきのフランス王存在してないのにフランス王って言ってるとか食べたことないのにまたおやつ食べたとかって言ってなければそういう風に自動的に解釈するっていうことができるわけですよね。
でまた最初の例に戻るんですけどまたおやつ食べたでしょうのまたとかまだとかもうとかあとはやめる。
例えばジョンはタバコを吸うのはやめたみたいに言った時タバコを吸ってたことは前提になってるわけですよね。
とかメアリーはしっかり勉強しなかったことを後悔したみたいに言った時勉強しなかったことがもう事実として組み込まれるわけじゃないですか。
こういうやめるとか後悔するとかあとさっきのまたとかもうとかっていうのをプレサポジショントリガー前提トリガーって言ってこいつらが引き金ですよね。
こいつらが文の中に入ってくるとその中に前提を生み出すっていうことができるようになる。
我々はそれを結構うまく適応して日常のコミュニケーションなめらかにやってるんだよっていうのがこの前提の面白いところというか前提の研究で言われているような話なんですね。
その単語使ったってことはみたいなのありますもんね。
終わるって言ったらすでに始まってたんだなみたいなところだったりとか。
まだやってないよって言ったらこれからやるつもりなんだなとかね。
そういうふうに前提を人間うまく使いながらうまく前提の適応をしながら。
だからよっぽど変な前提が提示されない限りは前提の適応っていうのをうまくやりながら人間コミュニケーションをとってるわけですよね。
結構これってすごいことだと思いません?
そうですねなんかやっぱり協力的だと思いますよ人間は。
やや生前説的な仮説ではありますけど協調の原理もありますし。
っていうのが前提の概要というかざっくりした説明でございます。
この前提って結構ずるいキャッチコピーに使われてるなって僕思ったんですよ最近。
例えばなぜできるビジネスマンは毎朝〇〇を読むのかとか。
あるいはまだ高い家賃を払い続けてますかとか。
あとはSNSで話題のあの商品がついに上陸みたいなのとか。
ああいうのってみんな消費者に前提をすり込んでくるなと思って。
例えばなぜできるビジネスマンは毎朝〇〇を読むのかみたいなのだとできる人は〇〇を読んでいるっていう前提を勝手にすり込んでくる。
もうそういうのみんな知ってるでしょみたいな感じでキャッチコピーにすり込んでくるなって思って。
だから結構こういうの見たときに前提の悪行に騙されちゃいけないなって思って。
なるほどちょっと今すぐパッとは思いつかなかったんですけど。
でも結構そういう煽る系のSNSのコマーシャルだったりとか。
短い時間でキャッチにしなきゃいけないってなるとわざわざ言ってる暇がないんでしょうね。
その根拠がいらないというかそこを前提をすり合わせる時間ですよっていう風に始めないというか。
例えばなんでしょうじゃあできるビジネスマンが日経新聞を毎朝読んでるとしましょう。
平均年収何百万円の人の日経新聞を読んでいる率は85%でした。
一方年収がこちらのセグメントの人はこれだけ下がりました。
つまりできるビジネスマンは読んでるんですってわざわざ広告で言ってる暇ないんですよね。
そうなった時にもう一旦こういう前提で行くからねっていう。
すっ飛ばすというかそこにこう。
広告業界とかだとそういうところもおそらく研究されてるんでしょうけど。
なんかこううまくやってるのかなっていう風な感じは今パッと聞いた感じだとそんな印象は受けましたね。
そうだからこういうキャッチコピーって結構ね電車の中連れ広告とかで見るじゃないですか。
これ結構その前提をアコモデートする前提に適応するっていう人間のそのコミュニケーション能力をある意味ハックしてるというか。
うまく使ってるコピーだなと思って。
なんかこうあるじゃんなんかあの人は○○するだけで痩せているみたいなとかさ怪しいなって思うんだけど。
実はそのビジネスできるビジネスマン毎朝日経を読んでるみたいなやつってそんなにこう違和感がないというか。
なんかそういう感じがするっていうのもあって。
なんか前提の擦り込み前提の適応を強要されているときそこが本当にその前提は正しいのかどうか疑う力って現代社会で大事じゃないかなと思って。
この前提の話ちょっとやってみたいなと思って。
気づける力というかねそこに隠れてるっていうのがある意味埋もれがちなんでしょうね。
言語学の話知ってるとさそういうのに気がつきやすかったりするじゃないっていうのも含めてちょっとこの日常にあふれるずるいキャッチコピーから前提を探してみるっていうのも意外と中摺広告見てて遊べるなと思ったんで。
ぜひ皆さんにやってみていただきたいなと思って今日持ってきました。
では今日の101号室の言語学はこんなところで次のコーナーに行ってみましょう。
ミッドナイトオフィスアワー。
このコーナーでは大学のオフィスアワーの時間になぞらえて私系の質問にお答えしていくコーナーとなっております。
今日もお便りが来ておりますのでもち子さんお便り読みをお願いします。
はいラジオネーム5歳さんからのお便りです。
Kさんもち子さんこんにちは。
第20回関西のヨルトル問題方言フェチの私にとってとても嬉しい回でした。
私自身もヨルトルネイティブなので実際に何々しよるはB動詞プラスingという英語の授業があったのを思い出しつつ楽しく聞かせてもらいました。
そして番組後半でもち子さんが話されていたチョルですが私は愛媛県の方言話者でチョルネイティブでもあるのでどんな風に使っているか少し考えてみました。
状態動詞しっチョル動作動詞はしっチョルどちらも問題なく使える気がします。
達成動詞家が立っチョルは微妙です。
どんどん家が工事建築されている様子は家が立ち寄ると言います。
立っチョルというとそういえば気づいたら家が立っていたという官僚のニュアンスに聞こえます。
その場合家が立っとると言っても同じです。
到達動詞壊れチョルも同様にすでに壊れているという感じがします。
こちらも壊れとるとも使えますね。
私は一体いつこんな難しくて正確な使い分けを習得したんでしょう。
改めて考えれば考えるほど法則やルールが曖昧で自分でもわからなくなってきてしまいました。
これは余談なのですが山口県には県民の語尾によく使われるチョルから名付けられたチョルルというゆるキャラがいて可愛いです。
とお便りいただきました。
はいご再産いつもお便りありがとうございます。
これももち子さんの呼びかけにお答えしてきっとこの方書いてくれたんですよ。
どうです?
ありがたいです。
まず何が私これすごい感動してるかっていうと
ヨルトル問題やった回の時にベンドラーの動詞分類やったじゃないですか。
難しかったやつ状態動詞動作動詞達成動詞到達動詞っていう4種類をきちんとここでテストとして使ってくださっているっていうことに私非常に感激したんですけども。
なんかこのチョルの動きというか何にくっつけるかっていうことを見るとやっぱりトルと同じで官僚っぽいニュアンスで使われてるのかなっていうふうに見えますよね。
なので官僚のそのトルとチョルで何か変化があるのかどうか違いがあるのかどうかってことはちょっとここからだけだと読み取れないんですけど。
なんかこれを聞いてくださっている方がこれだけこのテストを言語学的なテストをですよちゃんとベンドラーの動詞分類に基づいてやってくださったっていうことがちょっと私としては感動ポイントだなと思って聞いてました。
そうですねそしてやはりネイティブの強さと言いますか同じ日本語なので全然お便りも読めましたしあるんですけど私はやっぱりそのやこのタッチョルって言ったらこういうニュアンスだなっていうニュアンスまではないので。
こうエセ関西弁になってしまったりとかエセ方言になってしまうんだなっていうところでこういわゆるネイティブスピーカーの頭の中をこう覗かせてもらうにはこうやってテストしてもらうしかないんだなっていうのを改めて身近なところで体験をさせてもらえたような気がしました。
そうですねなんかこういう言語学的なテストってその例えばベンドラーの動詞分類もそうですけど何かこう一つ基準があったときにこれの動詞だったらいけるなとかこの形だったらいけるなこの形はいけないなっていうことを考えてみるだけでもそれがもう一つの観察になりますしまたネイティブにしかできないっていうところがねこう悔しいけどすごいところで面白いところでこの方も言ってくださってますけど不思議なことに3歳4歳くらいまでにはこの動詞はできない。
原型を習得し始めるんですよね人間それって結構すごいことだなぁってずっとやっぱり思っていて誰も彼もがその人の方言のネイティブスピーカーなので今どうしてもね方言っておじいちゃんくさいとか田舎っぽいみたいな感じで敬遠されがちなところもあると思うんですよ。
だけどどの方言もね言語学者から言わせると等しく面白い一つの言語体系なのでぜひこの自信を持って皆さんに方言使っていただきたいなっていう気持ちがありますね。
方言苦手とかないですもんね。自分がネイティブのやつで話せないとかないじゃないですか。
どうしても標準語が増えていく中でパッシブボキャブラリーになっちゃうものはあると思うんです。言われたらわかるけど自分は使わないなになっちゃう。
周りの人がそういうふるさと変えた時は出るけどみたいなバイリンガルの方も多くいらっしゃいますもんね。
そうですね。だからアクティブに使わないものになっていってしまってるっていうのは時代の側面もあって仕方のない部分ではあるかなとは思うんですけど
そういうとこ自信を持って使ってもらえた方が嬉しいし言語学者としては面白い発見があったりするんですよね。
私方言的には甲州弁山梨県の出身なので日本一可愛くないと一時期言われたことのある甲州弁のネイティブスピーカーなんですけど
例えば東京出てきてびっくりしたのは私背中が痒い時に背中をかじってって言うんですよね。
かじるって書くことをかじるって言うんですけどやっぱりこのかじるにしかないニュアンスがあるんですよ。わかりますかね。
背中を書くでは伝えられない。
背中を書くじゃやっぱりちょっと背中の痒みはちょっと取れないなみたいな。背中はかじってほしいものだしとかっていうのってやっぱあると思うんで
そのネイティブにしかない感覚っていうのは大事にしてほしいなっていうふうに思いますね。
ぜひまたこのチョル問題についても引き続きお便り募集したいと思いますので。
そうですね。関西スピーカー関西ネイティブ。
ぜひこの動詞は使えるけどこの動詞はダメだとかこの時タッチョルはいいけどこの時タットルはおかしいとかぜひあったらお送りいただければなというふうに思います。
さてそろそろ101号室の明かりを消す時間です。もち子さん今日の前提のお話いかがでしたか。
私これ結構アンジャッシュを思い出しましたね。
コントオブエラーのね。
なんかあれも時々日常でアンジャッシュみたいなこと起こす時あるじゃないですか。
ありますね。
あれもやっぱりお互いが前提がないわけでもなく無視してるわけでもなくただ持ってる前提がまるで違うのにそこを確認せずとも話が進んでいってしまうから
どんどん大変なことになっていくっていうのがミソだと思うんですよね。
確かに。
だから実はピッタリハマっちゃって会話が成り立っちゃってる時ほどたぶんさっきのうちの猫がさって言ったら気づけるじゃないですか猫いたんだみたいな。
そういうトリガーすらない前提みたいなのもあるのかなって思っていて。
だからやっぱりアンジャッシュって面白かったよなっていうのを思い出しながら前提について思いを馳せておりました。
あーそこでアンジャッシュ出てくんのもちこさん賢いねー悔しいなーそっちから入ればよかったわー。
あの前ノンスターのルド分解やったじゃないですかあれも結構やっぱりそのノンスタイルのあれっていうのでやっぱり人気だったんですよね結構いろんな方に聞いていただいてちょっとごめん台本反省やられたわ。
やったー。
やっちまったわ。
なんかお笑い芸人の人ってこれをこうリズメでやってるんじゃなくてルド分も感覚的にやってるよねって話計算もされてたと思うんですがなんかアンジャッシュのお二人もよっしゃ前提でエラーを起こしてやるぜではない中ででも彼らのお決まりのパターンなんですよね。
そうですね学校の先生とお医者さんの先生で話をしててどっちも先生って呼んでるからそこはあってんだけどお医者さんの方はその小児科の話をしてる学校の先生の方は自分の子供たちの話をしてるみたいなその微妙な前提の食い違いみたいなね。
そうそうそうそうだからそれを決定的に隠しながらその決定だになるところを隠しながらあの彼女が来たと思ってるのとそば屋が来てるみたいな出前のやつとかもあったりすると思うんですけどなんかそれが前提の隠し方であったりとかそこが隠れちゃうと絶妙に噛み合ってしまうみたいなところだったりが上手い生きてる時代がね平成にまだ片足を突っ込んでる感じが出てしまってあれなんですけど。
令和のお笑いとはまた違うよなぁなんて思いながら聞いていました。
ちょっとあの改めてそれアンジャッシュ回撮りましょう。
ぜひぜひ。
ちょっとこれ私失敗失敗です。もしかしたらこれあの本ちゃんで出さずにサブちゃん行くかもしれないですね。
お蔵入り会になるかもしれない。
お蔵入り会かもしれない。
やられたーそっちから行けばよかったーごめんガチ反省。
そのところでぜひ皆様にも日常に潜む前提ですね。
ちょっと意識して見ていただけたらいいかなというふうに思います。
はい番組ではリスナーの皆さんからの素朴な疑問や番組の感想などをお待ちしております。
詳細は概要欄にあるGoogleフォームズのリンクまで番組のフォローと高評価もよろしくお願いします。
はいそれから番組公式Xもございます。
XのIDはDSRLOOM101、大文字でDSR、小文字でROOM、数字で101です。
皆様からのお便りお待ちしております。
それではまた次回お会いしましょう。
ディープストラクチャーラジオお相手はアセスタントのもちこと。
言語学者のKでした。