中央社会保険医療協議会(中医協)総会において、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直しに関するシミュレーション結果が示されました。令和6年度改定以降、内科系症例の評価が課題となっていたことを受け、A・C項目への治療項目の追加と救急搬送受入件数に応じた加算という2つの方策が検討されています。
今回のシミュレーションでは、これらの見直しにより手術なし症例や救急搬送受入の多い病院で該当患者割合が増加する傾向が確認されました。急性期一般入院料1では基準①で平均7.1ポイント、基準②で平均6.9ポイントの上昇が見込まれます。地域包括医療病棟についても、基準そのものの変更と項目追加により、内科的疾患を多く診療する病院の評価改善が期待されます。
シミュレーションの背景と方針
令和6年度診療報酬改定後、内科系症例の重症度、医療・看護必要度の該当割合低下が指摘されていました。中医協総会での議論を踏まえ、今回のシミュレーションは3つの柱で構成されています。
第一の柱は、内科系疾病に関連したA・C項目への治療・薬剤等の追加です。日本内科学会からの提案項目を基本としつつ、外来で実施される割合が多い項目と比較的実施が容易で診療行為に影響を与えるおそれのある項目は除外されています。追加候補には、中心静脈注射用カテーテル挿入、吸着式血液浄化法、経食道心エコー法などの検査・処置が含まれます。
第二の柱は、救急搬送受入件数による加算の導入です。病床あたりの年間救急搬送受入件数に一定の係数(0.005)を乗じた割合を該当患者割合に加算する仕組みが検討されています。この方式は、入院や入院期間延長へのインセンティブを生じにくくする利点があります。
第三の柱は、地域包括医療病棟における基準の見直しです。肺炎や尿路感染症など入院頻度の高い内科的疾患ではA3点以上となる割合が他の手術なし症例より低いことから、「A2点以上又はC1点以上」への基準変更が検討されています。
A・C項目追加の具体的内容
内科学会が提案するA・C項目への追加候補は、医師の診療負荷が高い症例で頻回に行われる診療行為と医薬品です。選定にあたっては、内保連負荷度ランクでD・Eランクの疾患における実施割合の高さ、モラルハザードの起きにくさ、入院での算定割合の高さが考慮されました。
C21(救命等に係る内科的治療)への追加候補には、中心静脈注射用カテーテル挿入、脳脊髄腔注射(腰椎)、腰椎穿刺、吸着式血液浄化法、持続緩徐式血液濾過などが含まれます。これらは重症内科患者の管理に不可欠な処置です。
C22(別に定める検査)への追加候補には、経食道心エコー法、負荷心エコー法、EBUS-TBNA、気管支カテーテル気管支肺胞洗浄法検査などが含まれます。循環器・呼吸器領域の専門的検査が中心となっています。
C23(別に定める手術)への追加候補には、内シャント設置術、胸水・腹水濾過濃縮再静注法、胃瘻造設術、経皮的胆管ドレナージ術などが含まれます。内科的管理を要する患者に対する処置が網羅されています。
A6(専門的な治療・処置)への追加候補には、アザシチジン、カルフィルゾミブ、ボルテゾミブなどの抗悪性腫瘍剤が含まれます。血液内科領域の治療薬が中心です。
急性期一般入院料1のシミュレーション結果
急性期一般入院料1におけるシミュレーション結果は、病院の特性によって変化量が異なることを示しています。
基準①(A3点以上又はC1点以上)について、全体の平均は現行28.3%から35.4%へと7.1ポイント上昇しました。病床あたり救急搬送数が多く手術なし症例も多い病院では9.2ポイントの上昇となり、最も大きな改善効果が見られます。一方、救急搬送数が少なく手術症例が多い病院では4.7ポイントの上昇にとどまりました。
基準②(A2点以上又はC1点以上)についても同様の傾向が見られ、全体の平均は現行36.7%から43.6%へと6.9ポイント上昇しました。救急搬送受入の多い病院では約9ポイントの上昇が見込まれる一方、救急搬送受入の少ない病院では約5ポイントの上昇となっています。
これらの結果は、A・C項目の追加と救急搬送受入件数による加算が、手術なし症例と救急搬送の両方が多い病院において特に効果的であることを示しています。
急性期一般入院料2~5のシミュレーション結果
急性期一般入院料2~5においても、同様の傾向が確認されました。
急性期一般入院料2では、全体の平均が現行27.2%から32.8%へと5.6ポイント上昇しました。救急搬送数が多い病院では約8ポイントの上昇が見込まれます。
急性期一般入院料3では、全体の平均が現行23.3%から29.0%へと5.7ポイント上昇しました。手術なし症例が多く救急搬送も多い病院では7.5ポイントの上昇となっています。
急性期一般入院料4では、全体の平均が現行24.5%から28.9%へと4.4ポイント上昇しました。救急搬送数の多い病院での効果がより顕著です。
急性期一般入院料5では、全体の平均が現行15.9%から18.4%へと2.5ポイント上昇しました。上昇幅は他の入院料より小さいものの、救急搬送の多い病院では約4ポイントの改善が見込まれます。
地域包括医療病棟のシミュレーション結果
地域包括医療病棟については、基準そのものの変更とA・C項目追加、救急搬送受入加算を組み合わせたシミュレーションが実施されました。
現行の基準は「A3点以上」「A2点以上かつB3点以上」「C1点以上」のいずれかですが、肺炎や尿路感染症などの内科的疾患ではA3点以上となる割合が非常に低い状況にあります。このため、急性期一般入院料1の基準②と同様の「A2点以上又はC1点以上」への変更が検討されています。
シミュレーション結果では、全体の平均が現行21.5%から28.1%へと6.5ポイント上昇しました。特に手術なし症例が多く救急搬送も多い病院では9.3ポイントの上昇が見込まれます。この変更により、高齢者救急における内科的疾患の受入れがより適切に評価されることが期待されます。
救急搬送受入件数による加算の仕組み
救急搬送受入件数による加算は、入院延長へのインセンティブを生じさせない設計となっています。
計算方法は、病床あたりの年間救急搬送受入件数に係数0.005を乗じるものです。例えば、100床の病棟で年間1,000件の救急搬送を受け入れている場合、10件÷床÷年となり、これに0.005を乗じると5%の加算となります。元の該当患者割合が15%であれば、加算後は20%となります。
加算には上限が設けられており、各入院料の該当患者割合の概ね1/2を超えないよう設定されています。急性期一般入院料1では10%、急性期一般入院料4では7%が上限となっています。
この方式の利点は、外来で対応した救急搬送も含めて評価できる点にあります。入院させなかった場合や早期退院した場合も評価対象に含まれるため、不要な入院や入院期間延長のインセンティブが生じにくい構造となっています。
内科系症例の評価における課題
内科系症例では、外科系症例と比較してA項目・C項目の該当割合に大きな差があります。
急性期一般入院料2~6における内科系症例では、A項目2点以上の割合が18.8%にとどまり、外科系症例の22.6%を下回っています。A項目3点以上では、内科系が9.8%、外科系が14.5%とさらに差が広がります。
C項目についてはより顕著な差があります。外科系症例ではC項目1点以上の割合が44.7%であるのに対し、内科系症例ではわずか1.9%にとどまっています。手術を伴わない内科的治療が現行の評価体系で十分に反映されていないことがわかります。
肺炎や尿路感染症といった高齢者に多い疾患では、さらに該当割合が低くなります。急性期一般入院料1における肺炎等では、A項目2点以上の割合が24.2%、C項目1点以上の割合がわずか0.4%です。尿路感染症ではA項目2点以上が17.2%、C項目1点以上が1.1%と、内科症例全体よりもさらに低い水準にあります。
まとめ
今回のシミュレーション結果は、A・C項目の追加と救急搬送受入件数による加算が、内科系症例の評価改善に一定の効果を持つことを示しています。
急性期一般入院料では、手術なし症例が多く救急搬送受入も多い病院において、該当患者割合が大きく上昇する傾向が確認されました。一方、救急搬送受入の少ない病院では該当患者割合の上昇幅が小さく、病院の特性による影響の違いがより明確になることが予想されます。
地域包括医療病棟については、基準そのものの変更により内科的疾患を主として診療する病院の評価が改善される見込みです。高齢者救急を担う病棟の役割と評価のバランスが取れた制度設計が期待されます。
中医協では引き続き、これらのシミュレーション結果を踏まえた該当患者割合の基準設定について議論が行われる予定です。令和8年度診療報酬改定に向けて、内科系症例と救急応需体制の適切な評価に関する議論の動向に注目が集まっています。
Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe
サマリー
今回のエピソードでは、重症度や医療・看護必要度の評価基準の改定に関するシミュレーション結果が詳しく解説されています。特に、地域の救急を支える内科病院が正当な評価を受けられる可能性について触れられています。