中央社会保険医療協議会(中医協)総会は、令和8年1月14日に令和8年度診療報酬改定における物価対応の具体的な配分方法を議論しました。今回の改定では、物価高騰への本格的な対応として、診療報酬に特別な項目を設定する方針が示されています。本稿では、外来・入院それぞれの物価上昇対応の仕組みと、施設類型ごとの配分ルールを解説します。
物価対応分は+0.76%(2年度平均)が設定され、このうち令和8年度以降の物価上昇への対応として+0.62%、高度医療機能を担う病院への特例対応として+0.14%が配分されます。さらに、令和6年度改定以降の経営環境悪化への緊急対応分として+0.44%が措置され、病院に+0.40%、診療所・薬局に合計+0.04%が配分されます。外来診療では初・再診料とは別に物価上昇に関する評価が新設され、入院診療では入院料グループごとの物件費率に基づいて配分額が算出されます。
物価対応の全体像と施設類型別配分
令和8年度診療報酬改定では、物価対応分として+0.76%が設定されました。これに加えて、令和6年度改定以降の経営環境悪化を踏まえた緊急対応分として+0.44%が別途措置されます。配分は施設類型ごとの費用構造を反映し、病院に手厚い設計となっています。
物価対応分+0.76%の施設類型別配分は、病院+0.49%、医科診療所+0.10%、歯科診療所+0.02%、保険薬局+0.01%となります。この配分は、各施設類型の費用関係データに基づいて算出されており、物件費の割合が高い病院により多くの財源が配分されています。
緊急対応分+0.44%についても、施設類型ごとにメリハリのある配分が維持されます。病院には+0.40%、医科診療所には+0.02%、歯科診療所には+0.01%、保険薬局には+0.01%が配分されます。この配分は、令和7年度補正予算による物価上昇支援の効果を減じることのないよう設計されています。
高度医療機能を担う病院(大学病院を含む)には、+0.14%の特例的な対応が措置されます。この特例対応は、医療技術の高度化の影響を先行的に受けやすく、汎用性の低い医療機器等の調達が必要なことから物価高の影響を受けやすいという特性を踏まえたものです。
外来における物価上昇対応の仕組み
外来診療に対する物価上昇への対応は、初・再診料等とは別に新たな評価項目を設定する方式がとられます。この方式は、段階的な対応を可能にし、経済・物価動向に応じた柔軟な調整を実現します。
令和8年度以降の物価上昇への対応については、初・再診料に加え、訪問診療料や初・再診料の評価が包括される診療報酬項目においても、物価上昇に関する評価が算定可能となります。評価の水準は、医科診療所・歯科診療所の改定率を踏まえて設定されます。令和9年度には、この評価が令和8年度の約2倍になることが想定されています。
令和6年度診療報酬改定以降の経営環境悪化への対応分については、令和8年度改定時に初・再診料等の評価に含める形で対応されます。これは、令和7年度補正予算による一時的な支援から、診療報酬による恒常的な評価への移行を意味しています。
病院・有床診療所の外来における物価上昇対応では、初再診時の評価は診療所と同一水準が適用されます。ただし、病院の外来は診療所とコスト構造が異なるため、初再診時の評価で不足する外来分の物価上昇分については、入院時の評価で補正する仕組みが導入されます。
入院における物価上昇対応の算出方法
入院診療に対する物価上昇への対応は、入院料グループごとの物件費率に基づいて配分額を算出する精緻な方式が採用されます。この方式は、令和元年の消費税補填における対応を参考にしつつ、入院料ごとの算出に改良されています。
入院料グループは、医療機能に応じて5つに分類されます。特定機能病院グループは特定機能病院入院基本料が対象となります。急性期グループは一般病棟入院基本料、救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料などが含まれます。回復期グループは地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料が対象です。慢性期グループは療養病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料、緩和ケア病棟入院料などが含まれます。精神グループは精神病棟入院基本料、精神科救急急性期医療入院料、認知症治療病棟入院料などが対象となります。
物件費率の算出にあたっては、各機能グループの病棟が病院の大半(例えば80%以上)を占める病院のデータを用いて算出されます。物件費には、特定保険医療材料以外の診療材料費、食費等を除く委託費、減価償却費、光熱費等のその他経費が含まれます。
入院料ごとの物価上昇対応額は、以下の手順で算出されます。まず、入院基本料・特定入院料ごとに入院1人1日あたりの診療報酬総額(入院料、入院料加算、特掲診療料を含む)を算出します。次に、この金額に入院料グループごとの物件費率・委託費率を乗じて、1人1日あたりの物件費・委託費を算出します。最後に、算出した物件費・委託費に物価上昇率(物件費は年2.0%、委託費は年3.2%)を乗じて、物価上昇分に相当する金額を算出します。
令和7年度補正予算との整合性確保
入院診療における令和6年度改定以降の経営状況悪化への対応は、令和7年度補正予算による支援の考え方を踏まえて配分されます。施設類型ごとのメリハリを維持することで、補正予算の効果を減じないよう設計されています。
回復期、精神、慢性期の入院料については、入院1日あたり定額を配分する方式がとられます。この方式は、補正予算における「1床あたりでの支援」の考え方を継承したものです。回復期では地域包括ケア病棟入院料、精神では精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料、精神科救急・合併症入院料に救急加算相当分が上乗せされます。
急性期の入院料については、財源を一体化した上で、3類型に配分する方式が採用されます。第1類型は特定機能病院の急性期病床、第2類型は急性期病院の急性期病床、第3類型はその他の病院の急性期病床です。各類型への配分額は、補正予算における配分額に応じて算出され、さらに1人1日あたりの入院費に応じた配分が行われます。
まとめ
令和8年度診療報酬改定における物価対応では、物価対応分+0.76%が設定されました。これに加えて、令和6年度改定以降の経営環境悪化への緊急対応分+0.44%が別途措置されます。外来診療では初・再診料とは別に物価上昇に関する評価が新設され、入院診療では入院料グループごとの物件費率に基づいて配分額が算出されます。高度医療機能を担う病院には+0.14%の特例対応が措置され、令和7年度補正予算との整合性も確保されています。経済・物価の動向が見通しから大きく変動した場合には、令和9年度予算編成において加減算を含めた調整が行われる予定です。
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サマリー
令和8年度の診療報酬改定では、物価高に対応するために0.76%の引き上げが行われ、特に病院への配分が手厚いことが解説されています。柔軟性のある報酬の仕組みで、入院療グループごとに精密な配分がなされ、医療現場のコスト構造が反映されることが重要なポイントです。