BC106『訂正可能性の哲学』と自己啓発

Jan 28, 2025 goryugo

今回は『訂正可能性の哲学』を取り上げました。主に紹介したのは第1部の内容で、最後に少し倉下の考え(自己啓発の課題)も提示してあります。本編は 07:30 あたりからスタート。倉下の読書メモは以下のページで確認できます。◇ブックカタリストBC106用メモ | 倉下忠憲の発想工房家族と思想本書で一番ビビっときたのが、エマニュエル・トッドの家族と社会体制の関係を補助線にしながら、私たちは「家族」的なものの外側には出られないのではないか、と提示された部分です。家族の外に出たと思ったら、そこにも家族があった。フラクタルな構造としても面白いですし、私たちの思考・思想が生まれ育った環境に強く制約されているという点でも示唆に富む提示です。その上で、です。私たちたちが生まれ育つ環境そのものが動いている、という点も見逃せません。生活の実態として「家族」的なものが今後変化していくならば、私たちの共同体の思想もその土台から動いていくことが考えられます。おそらくそれは、希望を形作る可能性でしょう(もちろん、絶望に転じる可能性も同時にあるわけですが)。たとえば、金田一蓮十郎の『ラララ』では、恋愛ではない形で結婚した夫婦が養子を迎え入れるという「家族」の形を提示していますが、そのようなさまざまな形態の家族が増えていけば、私たちの共同体思想も変わっていくのかもしれません。訂正可能性本書の中心となるのが「訂正可能性」であり、それは「閉じていながら、開いている」という二重の性質を持ちます。また、「訂正可能性」を持つためには、つまり「訂正される」という可能性を担保するためには、それが持続・継続していく必要があります。開きと閉じの二重性、そして継続性・持続性。そうした性質が大切だよ、ということを真理の追究や功利主義などとは違った立場から本書は提示してくれています。ごく卑近な実感としてもその提示には頷けるものがあります。たとえばこの「ブックカタリスト」は、あるブックカタリストっぽさを維持して続けていくことが大切でしょう。ある日聴いたら「楽にめっちゃ儲けられる方法」などが語られていたら残念感が半端ありません。一方で、そのブックカタリストっぽさは常に更新され続けていくことも必要です。同じでありながら、変化もすること。それがシンボル(ないしブランド)にとって重要な要素です。それと共に、やっぱり配信を続けていくことも大切です。というよりも、同じでありながら、変化もすることは続けていくからこそ可能なのです。単に続ければいいというものではないし、単に変化すればいいものでもないし、単に変わらなければいいものでもない。これらの複合において、はじめて可能になるものがある。そういう意味で、本書の提案は哲学的面白さ以上に、実践的活動において大切な話だと個人的には感じました。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC105 2024年の配信を振り返る(後半)

Dec 31, 2024 goryugo

いよいよ年末です。今回も前回に引き続き一年間の配信を振り返ってみました。7月から11月までの配信の振り返りです。2024年の配信(後半)* 2024年07月02日:BC093「自分の問い」の見つけ方* 2024年07月16日:BC094 『熟達論』* 2024年07月31日:BC095『BIG THINGS』から考える計画問題 * 2024年08月13日:BC096 人間の色覚と色について* 2024年08月27日:BC097『生産性が高い人の8つの原則』* 2024年09月24日:BC098 『ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学』* 2024年10月08日:BC099 論文を書くとはどういうことか* 2024年10月22日:BC100ブックカタリスト・ビギンズ* 2024年11月05日:BC101 『プリズナー・トレーニング』* 2024年11月19日:BC102 積ん読の効能* 2024年12月03日:BC103 『肥満の科学』こうして振り返ってみると、7月からの倉下の紹介本はかなり「実用書」に偏っていたと思います。言い換えれば、思想・哲学的な話が少なかった印象。ごりゅごさんも同様に、「体」の話が多かったですね。こういうのはテーマ・リーディングというほど明確な目的意識がないにしても、なんとなくそうなっちゃうという感じがあります。そのときそのときの自分の勢いとか流れみたいなものが傾向をつくるわけですね。そういう流れは、意識的に生み出すのもそう簡単ではないので、そういう波がやってきたら素直に乗ってみるのも一興だと思います。「そのとき読みたい本を読む」というのは、そういう駆動力を最大限に活かす読み方です。というわけで、今年もありがとうございました。そして、来年からもよろしくお願いいたします。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC104 2024年の配信を振り返る(前半)

Dec 17, 2024 goryugo

いよいよ年の瀬です。今回は一年間の配信を振り返ってみました。さすがに量が多いので、前後編に分けてお送りします。今回は前編で、1月から6月までの配信の振り返りです。2024年の配信(前半)* 2024/01/02:BC080『観光客の哲学』と『哲学の門前』から考える読書について* 2024/01/16:BC081 『ピダハン』と『ムラブリ』から考える価値観への文化の影響* 2024/01/30:BC082『思考を耕すノートのつくり方』から考えるノウハウのつくり方* 2024/02/13:BC083 『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』と『残酷すぎる人間法則』の2冊から考える人間関係* 2024/02/27:ゲスト回BC084 jMatsuzaki さんと『先送り0(ゼロ)』* 2024/03/12:BC085『文学のエコロジー』から考える文学の効用* 2024/03/26:BC086『体育館の殺人』から考える新しい読書について* 2024/04/04:BC087 『音楽の人類史:発展と伝播の8億年の物語』* 2024/04/23:BC088『CHANGE 変化を起こす7つの戦略』* 2024/05/07:BC089『たいていのことは20時間で習得できる』と『成功する練習の法則』から考えるスキルを獲得するというマインドの獲得* 2024/05/21:BC090『人生が整うマウンティング大全』と『話が通じない相手と話をする方法』から考える「話の聞き方」* 2024/06/04:BC091『センスの哲学』* 2024/06/18:BC092 『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』全体として、脈絡がぜんぜんないような、それでいて何かしらの通奏低音は感じられるようなそんなラインナップでした。たとえば、BC083の人間関係と、BC090のコミュニケーションの話はつながっています。加えて、BC088の人の行動に変化を与えるときに小さな集団に注目するという話も関係しているでしょう。もっと言えば、BC081の文化と価値観の話も、自分自身と所属している共同体との関係としても拡張できそうです。そんな感じで、まったく同一のテーマの本ではなくても、「近場をうろうろする」ように読書をしていると新たなつながりが見えてくるものですし、それは「より大きな視点で捉えること」「自分なりのテーマを語ること」にもつながってきます。というわけで、本を読むこととは本を読み続けることである、という倉下のテーゼが出てくるわけですが、それ以上に、自分が話したはずのことをぜんぜん覚えていないという体験は、読書に限らず年末に一年の振り返りをしているとたびたび起こる楽しい体験で、だからこそ積極的に記録を残していきたいなという気持ちが高まってきます。皆さんも、ぜひ一年の活動の振り返りをやってみてください。あと、「ブックカタリストの配信で、これが今年印象に残った!」といったコメントもお待ちしております。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC103 『肥満の科学』

Dec 3, 2024 goryugo

面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。今回は、プリズナー・トレーニングに続いての「運動・健康シリーズ」として『肥満の科学』について語りました。前回紹介したプリズナートレーニングは、想像以上に多くの人が興味を持っていただけたみたいで、ごりゅごも仲間が増えてとても嬉しくなっています。そして、自分の興味関心というのはやはり波があるもので、筋肉を付ける、強くなる、という部分に興味を持つと、そのまま似たようなことへのアンテナ感度が高まってきます。で、今回のテーマは「肥満」です。人は、なぜ太るのか。そして、なぜ運動が重要なのか。約2年前にも、なぜ太るのか。なぜ運動が重要なのか、という話は紹介しています。BC056 『運動の神話(上)』 - by goryugo and 倉下忠憲@rashita2 - ブックカタリストBC060『運動しても痩せないのはなぜか』『科学者たちが語る食欲』が、今回はこれとはまた違った観点での紹介であったところが面白い。結果的には、どの本も同じようなことを言っているんだけれども、それぞれちょっとずつ、理由や、やることが違う。結局のところ、人体は超複雑です。現代の科学で「すべてを解き明かす」なんてことはおそらく出来ないし、仕組みがすべて分かったとしても、ひとりの人間の認知の能力で、それを理解して、コントロールし切ることは不可能だろうな、とも思います。と同時に、だからこそ人体の仕組みを知ろうとすることは面白いし、そこから学んだことを実践して「うまくいく」ときが面白い。自分がこの分野に興味を持つ大きな理由は、そういう部分なのかな、と感じます。今回出てきた本はこちらで紹介しています。📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC102 積ん読の効能

Nov 19, 2024 goryugo

今回のテーマは「積ん読の効能」。『積ん読の本』で語られていたことを眺めながら、本を積むこと、本棚に本を並べることについて考えます。積ん読とは何か?「積ん読」は、なんとなく意味がつかめる言葉ではありますが、本を読む生活を送っている人の感覚からすれば、「読むつもりはあるが、まだ読めていない」状態をさすことが多いようです。辞書などのようにそもそも読了するような目的を持たない本が読み切られていなくても、それは──感覚として──積ん読とは呼ばないわけです。言い換えれば、読もうと思って買ってはいるが、その思いがまだ達成されていないわけで、そこに罪悪感が発生する余地があるわけですが、その点を気に病んでいる方はほとんどいらっしゃいませんでした。そんなことを気にしていても埒が明かないということはたしかです。では、なぜそんな状態が生まれてしまうのか。つまり、読もうと思って買っているのに、読めていないという「読書の渋滞」のようなことが生まれてしまうのか。本書を読めば多方面からの分析が可能だとわかります。* 本を読む経験が増えると、読みたい本が等比級数的に増える* 新刊で見つけたうちに買っておかないと書店からなくなる* 書店からなくなると「見えなくなる」ので本の存在自体を忘れる* 絶版になれば入手も難しくなる* 日常的に広告情報に触れているので「読もう、読みたい」と思える本の数が増えている* 大人になると忙しくなるので本を読むための時間が減少する以上のような複合的な要因で、読むスピード > 買う本の量 という「積ん読不等式」が成立してしまうわけです。でも、たとえそうであっても構わない。その主張を補強する理由もさまざまなものが本書では見つけられます。知のインデックスそうした理由のうち、私個人として採用したいのが「知のインデックス」をつくるという山本貴光さんの意見です。何かしらの本があり、何某氏が書いており、何かしらの主張がなされている、ということがとりあえず自分の脳内に入っている。そういうインデックスができていれば、必要になったときにその本に手を伸ばすことができます。現在ではほどんどの本の書誌情報はググれば見つけられますが、逆に言えばググらなければ出てきません。そして、脳内の発想はググらずに起こる現象なのです。自分の脳の奥深くに沈んでいるもの。別のメタファで言えば、記憶のネットワークに織り込まれているもの。それが「使える知識」であり、知のインデックスはその文脈において役立ちます。そう考えると、私の知的関心はある本の中にどんな記述があるのかよりも、たとえばGTDとツェッテルカステンとPARAとメタ・ノートがあるとして、それらはどのような連関にあって、その連関から何が言えるのかを考えることにあります。いつ誰が、どのように論じてきたのか。そういう流れを踏まえることも大切にしたい。そんな風にして「本々」(Books)を眺めようと思ったときに、本棚も「自分のノート」として使っていこうとする試みは、はたいへん面白いと感じました。というわけで、私は「私の本棚」の運用についてヒントを得たわけですが、他の方は他の形で違ったヒントが得られる本だと思います。本の収集癖を強く持っていない方でも楽しめる一冊です。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC101 『プリズナー・トレーニング』

Nov 5, 2024 goryugo

プリズナー・トレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ→Amazon:https://amzn.to/47B8nvq面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。今回は、プリズナー・トレーニングについて語りました。ブックカタリストの配信回数も3桁に到達し、気分的には「ブックカタリスト2.0」というところ。そのスタートに(個人的にはとてもふさわしいと思っている)本を運良くいいタイミングで紹介することが出来たな、と感じています。ブックカタリストでこれまで紹介してきた本は大半が「真面目な本」だったんですが、ブックカタリストのテーマは「面白かった本について語るPoadcast」であり、それがマジメっぽい本であるとか、むずかしそうな本、賢そうな本であると言うこととはなんの関係性もないのです。とは言え、100回も回数を重ねていると、どうしても方向性が固まってきてしまい、そこから外れた本を選びづらくなってしまうと言うのもまた事実。101回の今回は、そこを打破する為にもいつもとはちょっと違う感じである、ということが重要だと感じていたのです。とは言え、個人的には内容と言うか本編のノリ自体は基本的にほぼいつもと同じ感じにはなっていると思うし、なによりも今回の本はこれまでの「運動」「ダイエット」「練習」などといったテーマで紹介してきたブックカタリストの本の「実践編」みたいな見方も出来るわけです。なによりも、実際にごりゅごはこの本を多いに楽しんで読めているし、読み終えてからも常に手元ですぐに読めるようにしていて、筋トレを行う前や後など、折りに触れてしょっちゅう何回も読み返しています。「運動しないとなー」みたいな感覚はもう10年以上も持っていて、これまではずっと「健康の為にしゃーないから運動する」でした。これが今はついに(大人になってから初めて?)楽しくて、やりたくて、自分自身で積極的に筋トレをする、ということができるようになりました。諦めない気持ちというのは、わりと大事なのかもしれない。今回出てきた本はこちらで紹介しています。📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC100ブックカタリスト・ビギンズ

Oct 22, 2024 goryugo

記念すべき第百回は、いつもと趣向を変えて二人の読書の略歴を語ってみます。二人が紹介した本は……。出てきた本をぜんぶ列挙しようとしたんですが、あまりに数が多くなったのであきらめました。倉下は赤川次郎『三毛猫ホームズの推理』からスタートするミステリ系統を出発に、神坂一『スレイヤーズ!』から始まるライトノベル・SF・異世界転生もの系統、野口悠紀雄 『「超」勉強法』から始まるノウハウ・自己啓発系統、村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』から始まる文学・ハードボイルド系統が、青年期の読書を構成していました。事前のメモではそれくらいでだいたいカバーできていると思ったのですが、大学時代はプログラミング言語の本を読み漁っていましたし、コンビニ店長時代では経営学・経済学の本にも手を伸ばしていました。これらも系統ではあるでしょう。かなり多岐にわたっています。ごりゅごさんはむしろもっと限定的で『三国志』ものを契機に歴史物を中心に読んでおられて、途中潜伏期間があった後、Obsidianによるノーティング技術の向上およびブックカタリストのスタートを契機にして再び読書欲が盛り上がってきたというお話でした。その一つの契機に「インターネットが未来をワクワクさせてくれるというビジョンがあった」という話は非常に印象的だと感じます。人を本を読む気にさせるものは、やはりそういうワクワク感なのでしょう。「知的好奇心」と言ってしまうとあまりにも漠然としますが、読書というのは平静・冷静な知的活動ではなく、ある種のワクワク感に駆動されるドライブなのだと思います。読書に歴史ありそんな風にそれぞれの人にはそれぞれの読書の経歴があります。歴史と呼んでもよいでしょう。私が今、一冊の本と対峙するとき、その背後には常に私の歴史が蠢いています。その本を読みたいと思うかどうか、読んだ後どう評価するか。そうした反応は歴史に由来するわけです。だから同じ本でも読みたいと思うかどうか、面白いと思うかどうかは人によって違ってきます。個性による違いというよりも、歴史による違いなのです(あるいは、個性とはそれぞれの人の歴史である、とも言えるでしょう)。広義で言えば、読書はたしかに「インプット」な活動です。でも、その表現では「歴史」の感覚が立ち上がってきません。均質的ではなく、個別的な活動。一度きりではなく、連続性のなかにある活動。それが読書です。だから、「本を読むことは、本を読み続けることである」なんてことが言えるかもしれません。ぜんぜん関係ないですが二人の読書の歩みはまったく違っているのに、人生の歩み方においてすごく重なる部分があることが今回わかりました。しかし、考えてみれば、本当になにもかもがまったく違っているならば、こうして二人でポッドキャストをしていることはなかったでしょう(政府が命令して無作為に選んだ二人にポッドキャスト運営を強制しないかぎりは)。重なる部分があるからこそ、活動を同じくしている。でも、多くの部分で違いがある。たぶん組み合わせというのは、そういう感じのときうまくいくんじゃないかな、なんて思います。皆さんも自身の読書のヒストリーを振り返り、自分のヒストリーで語ってみてはいかがでしょうか。ご意見・ご感想はコメントおよびTwitter(現X)、Blueskyのハッシュタグ#ブックカタリストにてお待ちしております。では、今後もブックカタリストをよろしくお願いします。サポータープランへのご加入も、ご検討くださいませ。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC099 論文を書くとはどういうことか

Oct 8, 2024 goryugo

今回は「論文を書くとはどういうことか」をテーマに、論文についての二冊の本を紹介しました。* 『論文の書きかた (ちくま学芸文庫 サ-55-1)』* 『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』それぞれ独自の魅力を持つ二冊です。書誌情報『論文の書きかた (ちくま学芸文庫 サ-55-1)』* 著:佐藤健二* 佐藤 健二(さとう・けんじ):1957年、群馬県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中途退学。東京大学名誉教授。博士(社会学)。専攻は、歴史社会学、社会意識論、社会調査史、メディア文化など。著書に、『読書空間の近代』(弘文堂)、『風景の生産・風景の解法』(講談社選書メチエ)、『流言蜚語』(有信堂高文社)、『歴史社会学の作法』(岩波書店)、『社会調査史のリテラシー』など。* 出版社:筑摩書房* 出版日:2024/5/11)* 目次* 第1 章 論文とはなにか* 第2 章 「論」と「文」の結合* 第3 章 〈文〉で論ずることの厚み* 第4 章 主題・問題意識・問題設定* 第5 章 通念の切断と思考の運動* 第6 章 観察と対話の組織化* 第7 章 調査研究のさまざまな局面* 第8 章 2 項対立のあしらいかた* 第9 章 リレーショナル・データベースとしての社会* 第10 章 「クダンの誕生」の経験をふりかえる* 第11 章 リテラシーの発見* 第12 章 読書空間のなかで書く* 第13 章 コピペと引用の使いこなし* 第14 章 見えかたをデザインする* 第15 章 研究倫理の問題* 第16 章 編集者として見なおす『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』* 著:阿部幸大* 日本の文学研究者。筑波大学人文社会系助教(2024年時点)。北海道出身。* 出版社:光文社* 出版日:2024/7/24* 目次* 原理編* 第1章 アーギュメントをつくる* 第2章 アカデミックな価値をつくる* 第3章 パラグラフをつくる* 実践編* 第4章 パラグラフを解析する* 第5章 長いパラグラフをつくる* 第6章 先行研究を引用する* 第7章 イントロダクションにすべてを書く* 第8章 結論する* 発展編* 第9章 研究と世界をつなぐ* 第10章 研究と人生をつなぐ* 演習編『論文の書きかた (ちくま学芸文庫 サ-55-1)』本書は「論文を書くとはどういうことか」をさまざまな角度から論じていく一冊で、その場しのぎに論文を書き上げるためのテクニックではなく、研究活動の一環に論文の執筆をおき、その中でいかに研究を進めるのか=論文を書くのかが検討されていきます。重厚な論述であり、著者の思考が垣間見れる面白さもあり、話題が枝葉のように広がっていて、それらがいちいち楽しめる魅力も持ち合わせています。個人的には「文」に注目した論考が心に残りました。自分なりにまた展開させていきたいと感じます。『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』きわめてテクニカルでプラクティカルな一冊。それでいて著者の熱さも伝わってきます。「まったく新しい」という看板に偽りはありません。一冊目の本に比べると重厚な論述感は小さいものの、シャープで説得的な論考は一気に引き込まれます。でもって、アドバイスが非常に役立つ。学術寄りの知的生産を行うなら必携の一冊でしょう。こちらも単に表面的なノウハウを提示して終わりにするのではなく、論文を書くときに必要な「頭の使い方」を提示してくれている点が魅力です。個人的には、本編でも語ったようにアカデミックではないライティングの方向性を検討してみたいと思います。 This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC098 『ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学』

Sep 24, 2024 goryugo

面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。今回は、『ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学』について語りました。スマホの登場によって、私たちにどんな変化が起こっているのか。iPhoneが出たばかりの頃の自分は、それによるよい変化にしか注目していませんでしたが、最近はそこから起こる「よくないこと」にも注目するようになってきました。特に、スマホという「最強の暇つぶしツール」を手に入れた我々は、いつのまにかほんのわずかな時間の退屈を耐えることができなくなり、結果的にこれまで以上に「退屈」という問題に悩まされるようになっている。そんな問題意識を持って、この本を読んだ印象です。自分が変わったなあ、と思うのは、こういう「〜について考えるためにこの本を読もう」みたいな観点で本を選ぶことができるようになった、ということです。自分の読書力が上がったかどうかは、客観的に評価する手段はないんですが「気になってることを考えるために本を読む」ことがきちんと言語化できるようになったというのは、明確に進歩だと思います。これは、ちゃんと他人に誇れる変化。なんだかんだもう、100回近くもずっと本について話してたら、なにか変化はあるよね。それを身をもって体験できたことは大きいです。ブックカタリスト100回記念イベントというわけで、詳細はまたお送りする予定ですが、まもなく到達するブックカタリストの100回を記念して、東京のどこか(東京駅近辺の予定)で、100回到達記念イベントを行う予定です。テーマは「ブックカタリストの語り方(仮)」開催日は、11月17日の午後から夜にかけて。詳細が決まり次第、またご連絡いたします!今回出てきた本はこちらで紹介しています。 📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe

BC097『生産性が高い人の8つの原則』

Aug 27, 2024 goryugo

今回はチャールズ・デュヒッグの『生産性が高い人の8つの原則 (ハヤカワ文庫NF)』を取り上げました。いわゆる「ライフハック」な考え方がたっぷりな一冊です。書誌情報* 原題* SMARTER FASTER BETTER: the secrets of being productive in Life and Business(2016/3/8)* 単行本版* あなたの生産性を上げる8つのアイディア 単行本 – 2017/8/30 * 著者* チャールズ・デュヒッグ* ジャーナリスト。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA取得。「ロサンゼルス・タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」のライターを務め、現在は「ニューヨーカー・マガジン」その他に寄稿。2013年には「ニューヨーク・タイムズ」のリポーターのチーム・リーダーとして、ピュリッツァー賞(解説報道部門)を受賞。最初の著書『習慣の力〔新版〕』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)は「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラー・リストに3年間も留まった。第2作である本書も2016年、同リストにランクインした。* 翻訳* 鈴木晶* 『愛するということ』、『猫に学ぶ――いかに良く生きるか』、『ラカンはこう読め! 』など多数。* 出版社* 早川書房* 出版日* 2024/3/13* 目次* 第1章 やる気を引き出す―ブートキャンプ改革、老人ホームの反乱と指令中枢* 第2章 チームワークを築く―グーグル社の心理的安全と「サタデー・ナイト・ライブ」* 第3章 集中力を上げる―認知のトンネル化、墜落したエールフランス機とメンタルモデルの力* 第4章 目標を設定する―スマートゴール、ストレッチゴールと第四次中東戦争* 第5章 人を動かす―リーン・アジャイル思考が解決した誘拐事件と信頼の文化* 第6章 決断力を磨く―ベイズの定理で未来を予測(して、ポーカーに勝つ方法)* 第7章 イノベーションを加速させる―アイディア・ブローカーと『アナと雪の女王』を救った創造的自暴自棄* 第8章 データを使えるようにする―情報を知識に変える、市立学校の挑戦* 付録―本書で述べたアイディアを実践するためのガイド「生産性を高める」とはインターネットの仕事術系情報では「生産性向上」や「productivity」といった言葉をよく見かけるわけですが、そのたびに私は「むむっ」と警戒フィルターを発動させます。というのも、単にそれが「タスクをたくさんこなすこと」を意味しているのではないか、あるいは生産性向上のためのツールを使うことそのものが目的になっていないか、という懸念があるからです。実際、一時間のうちに実行できるタスクが10から20に増えたとしても、そのタスクが効果を上げていないことは十分ありえるでしょうし、タスク以外の目を向けるべきものから目を逸らしてしまっていることもあるでしょう。はたしてそれは望ましい「改善」と言えるのでしょうか。一方で、たしかに効果的(エフェクティブ)な状態というのはあって、メールを書こうとして、なかなか取り掛かれずに、インターネットを彷徨っている間に、新しいツールの情報を見かけて喜び勇んでダウンロードしてしまっている、という状態はあまり効果的な時間の使い方ではないとは言えるので、何一つ改善を試みようとしないというのも、それはそれで違う気がします。本書では、「生産性を高めるのに必要なのは、今よりももっと働き、もっと汗を流すことではない」という明瞭な指針が掲げられていて、「まさにその通り」と強く感じられます。以下のような定義も登場しますが、* 最少の努力で、最大の報いが得られる方法を見つけること* 体力と知力と時間をもっと効率よく用いる方法を発見すること* ストレスと葛藤を最小限にして成功するための方法を学習すること* 大事な他のことをすべて犠牲にすることなく、何かを達成することこれに納得できる人もいれば、そうでない人もいるでしょう。それでも「生産性とは、いくつかの方法を用いて正しい選択をすることである」という根本的な方向性については同意できるのではないでしょうか。さらに言えば──本編でも語っている通り──、「正しい選択をするために、自分は有効な方法を使っている」という感覚を持つことが、人生全般にわたる「やる気」の高め方なのかもしれません。This is Lifehacks. This is a public episode. If you'd like to discuss this with other subscribers or get access to bonus episodes, visit bookcatalyst.substack.com/subscribe