授業構想の基本
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育について、ゆるっと配信しています。
先日、オンライン交流会に参加した際に、その中で若手の先生が、国語の授業ってどうやって作るのかという質問をぶつけられたというお話をされていたので、提案者の方が、私はちょっとびっくりしたんですよね。
そんなのがわからなくて授業してるのかという、ちょっと衝撃的な質問だったので、私なりに自分はどうやって授業を構想しているかということをまとめてお話ししたいと思いました。
で、たちまちね、走れメロスをやったんで、それを具体例としてどうやって授業を作っていくかということについて、たらたらとおしゃべりしたいと思います。
まず、授業を作る際に、走れメロス、指導目標を先に決めます。指導目標というのは、教員がこの単元を通じて、この教材を通じて、生徒にどういう力をつけさせたいかということですね。
で、これは私、大学の時にいろんな理論を習って、あるいは自分でも、基礎理論研究会という研究会に先輩たちが参加されていたのに混ぜてもらって、国語教育についてかなり勉強してきた思い出があるんですけれど、
それがもう実践者となってもはや30何年、自分の中でもその時の理論のいちいち覚えてないけど、そのことがベースとなって授業を構想しているので、理論のことをちょっと思い出すのは相当時間がかかるし、また再度文献に当たらないといけないのでごめんなさい。
実践者としてのお話になるということで、ご了解お願いいたします。
まず、指導目標としては、価値目標、技能目標、態度目標というこの3つを設定します。
いちいち紙に書いたりしなくて、自分の頭の中でイメージしてから始めるわけなんですけど、これは小清水実さんという方の3つの指導目標になります。
今回、はしれメロスの価値目標は、登場人物の心情を理解することを通して、人間の多面的な在り方とか、人と人との信頼関係について、そういうことをまた自分の中で再度認識を改めるとともに、人間理解を深める、自己理解であるとか、他者理解を深めるという、人間に関する認識を改めるというところをメインの価値目標に置きました。
技能目標については、やっぱりはしれメロスというのは、いろんな語彙もたくさん獲得できますし、表現技巧もたくさんあります。
そういう、本当に読んだりするというスキルを養成する。それから態度目標というのは、小説の世界を読み味わうことを通して、これから自分で小説を読んでいく態度を養う、自分から読んでいく態度を養う、そういったことを態度目標に設定してスタートします。
ここまでできたら、今度は生徒の学習目標を考えるわけですね。私は、セラ・ヒロアキ先生の目標の二重構造過論ということをいつも念頭によって考えているので、先生の目標は指導目標、生徒の目標は学習目標と分けて考えて、生徒に提示するときは、例えばですね、指導目標を提示することはありません。
だって、登場人物の心情を理解しようとか、例えばね、それを生徒に投げて、生徒本気になると思います?これ先生の目標ですよね。なので、私は指導目標と学習目標は分けて考えています。
じゃあ、生徒に学習目標をどうやって意識させるのかということですけど、今回の走れメロスという小説は、この小説自体に魅力があるので、まず生徒の中から主体性を引き出すために、とにかく先に読んじゃう。
もう魅力的な小説なので、生徒はぐいぐい引き込まれるように、まず初読を読んじゃいます。そうすると、やっぱり感動するんですよね。で、なんで感動するのかというのが言語化できなかったりするので、みんな初読の感想で感動した感動したかっこいいとか結構書いてるわけなんですよ。
じゃあ、みんななんで感動するのかね、この小説って。ということで、一番最後にこの小説勉強して、自分でこの小説の素晴らしさとか感動ポイントとかかっこいいと思ったこと、それぞれあると思うんだけれど、なんでそれが感動できたのかっていうのを最後書いてもらうよっていうふうにスタートします。
で、この走れメロスっていうのはやっぱりあの中学校2年生の教科書、定番中の定番なわけなんですけど、中学校2年生っていう時期はね、本当に思春期真っ盛りで、友達といさかいをしたり、それから友達の裏切りにあったり、喧嘩したり、信頼できなかったり、様々な人間的葛藤が疾風怒涛のように襲い来る。
本当にそういう時期なので、この時期の生徒に人間理解を深めさせるっていうことは本当に価値あることであり、生徒自身も人間というものをどう捉えたらいいんだろうっていうふうなことをやっぱり考えると思うんですよね。
だからこの走れメロスで沸き起こった感動とか、それから自分自身の感想を深掘りしていくっていう、走れメロスの毎深掘り考察をしようっていうようなことを学習目標にします。
これが今回の私の今の生徒を目の前にしての学習目標です。
授業の展開
だからやっぱり生徒の実態とか生徒の生活状況とか、それから生徒の問題意識と学習者の目標をちゃんとぴったり合わせることがすごく大事で、生徒は自分でなんでこの話感動したんだろう、なんでこれかっこいいんだろう、それを突き詰めてみたい。
そして自分も友情っていうことに問題意識を感じてたから、友情について考えてみたいって思ったときにやっぱり本気になって考えると思うので、学習者の目標っていうのはこういうふうに設定して私はいつもスタートします。
じゃあパフォーマンス課題どうしようかなっていうところなんですけど、そういうふうになると結局走れメロスの毎深掘り考察をしようっていうことになりますよね。
私はこの毎深掘り考察をしようっていうのをフレームリーディングっていう言葉で一番最後に紹介して、自分自身の目の付けどころフレームをゲットして考察しようっていうふうに導くことにしました。
皆さんパフォーマンス課題どういうふうにされてますかね。パフォーマンス課題ありきでやってる人もいらっしゃるんじゃないかなって私いろんな人の実践を見て思うんだけれど、例えばリライトさせようとかミュージカルにしようとか絵本にしようとかそういう楽しいパフォーマンス課題を設定してされる人もたくさんいるんじゃないかと思います。
これも学習目標とピタッと合っていればいいと思うんですよ。
ただ私がいつも思っているのはリライトさせるにしても、小説をいろいろ読んでいてどういうふうな作りが、例えば小説として優れているのかとかですね、どういう作りがミュージカルとしていいのか、どういう絵本が優れているのかっていうことをちゃんと生徒自身が持っていないと。
そういう創作においての知恵とか経験とかある程度ないと。
自分の読書量がベースにないとこういうリライト、ミュージカル、作成、絵本っていうのがうまく噛み合わないんじゃないかと思っています。
なので私はあんまりリライトっていうのを1回か2回ぐらいしかさせたことがない。
ということで果たしてパフォーマンス課題っていうのがパフォーマンス課題ありきの設定になってないかどうかっていうのは点検したほうがいいと思いますね。
ということでこれで学習目標は決まりました。
展開はいろんな展開の仕方があると思うんですけれど、もう私は最近はスローリーディングっていうのをこの1年間やってて、本当に前から順番に生徒が引っかかりそうなところで、あるいは生徒の所得の感想で引っかかっているところ、疑問に思っているところ、感動ポイント、そういったところで立ち止まりながら発問を投げかけてやっていきます。
最後まで行きました。
この間感想を書いてもらったんですよ。ここまで一番最後まで行って気づき感想を書いてみようということで、だいたい140字から200字ぐらい感想を書いてもらうんですけど、これが結構よかったので紹介したいと思います。
メロスとセリヌンティウスが言ったありがとうがいろいろな思いが込められていてすごく深いなと思いました。
信頼し合ってありがとうというのがすごくよかったなと思いました。
メロスとセリヌンティウスの関係みたいになれる人が欲しいなと思いました。
授業設計の洞察
この子はたぶん友達関係にいろいろ悩んでたり疑問を持ってたりしたんだと思うんですよ。
やっぱりこういうふうな関係っていうのを作っていきたいなっていうふうに人間理解が深まった瞬間だと思います。
それから最初は王への怒りから始まり途中に諦める不実な気持ちもあるが、最後は信頼や快心で終わったいい作品だと思いました。
人の性格をこの3日間で変えられるのがやっぱり一番衝撃的なことでした。
これ結構面白いツッコミですよね。
3日間で人の性格が変えられるっていう心情変化と性格が変わったってことをかなりメタ認知してて、
若干小説に対してのツッコミも入っているので結構面白い視点だと私は思いました。
それからどんなに人を信じている人であるとしても自分自身が命の危険や行き詰まってしまったら
意図的ではなかったとしても相手を疑ってしまうことがあって、それを償おうとすることがすごいと思いました。
この子も人間関係のトラブルとかあった時にどうしたらいいかっていう時にこの償うという言葉を覚えたんですよね。
これでやっぱり人間関係に対して自分がどう接していくかっていう一つのヒントを得て認識が改まった瞬間だと私は思いましたね。
それからハシレメロスという物語は他の物語と違って頭の中に内容が入り込んでくるすごく興味深いストーリー性をしていると思います。
キャラクター一人一人の性格を調べるのも楽しく、今までの文章の中で一番考えることができた文章だと思いました。
一つ一つのキーワードに意味が込められており、それを探すのも楽しかった。
ということでやっぱりスローリーディングで一つ一つ深掘っていったっていうのが良かったっていうのが今回私として読み取れたのでこれを選んでみましたし、
友情と執念の力
やっぱりハシレメロスという小説っていうのがもう本当にこの中学校2年生にぴったりなんですよ。
本当にもうこれは定番教材の価値として非常に高いものを感じました。
それから、人は口から言葉を出すだけでなく行動に移してやってのけ、証明をすることで初めて相手に衝撃を与えることができ、
相手も最初はやばい奴でも一つのきっかけで改心できること、させられる力が人間にはあり、
そのためにはまず気持ちや執念が大切なんだなぁと思いました。
どうですか、なんか本当に深い感想が書いてあってびっくりしたわけなんですけれど、
本当に実感したんだと思うんですね。やってみせないといけないっていう指摘とか、
気持ちや執念っていうところはメロスがすごく執念を持ってこの時間に間に合うっていうそういうミッションを取り組んだってことを一緒になって読んでたっていうのがよくわかるそういう感想だと思います。
最後、この走れメロスからは友情というものはそれを見ている第三者の価値観や心情を変化させることだけではなく、
もしかしたらこの世界が世界を変えてしまうような強力な力なのかもしれないと思った。
また、このような物語文にはその作者の技術を結集させたものだと改めて感じた。
ということで、本当この世界を変えてしまうような強力な力っていうところにこの子の感動の大きさを感じました。
やっぱり一つ一つスローリーディングで引っかかりどころ、何か恐ろしく大きな力のために走っているみたいなところがありましたよね。
大きなもののために走っているっていうそういうふうな言葉に引っかかって、その時にすごく集中して考えて自分の世界を広げたんだなってこの感想を読んで思いました。
ということで、授業作りについて語りましたけれど、この後フレームリーディングを行う予定にはなっていますが、それはまだ実施しておりませんので、また別の機会に配信したいと思います。
今日はちょっと長めな配信になってしまいましたけれど、若手の先生、授業作りについてのちょっとした参考になったら嬉しく思います。
それでは今日の配信はここまでです。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。