探究型授業の意義
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと配信しています。
今日は334回、探究型の授業構造と国語教育における目標の二重構造というタイトルでお届けしたいと思います。
結構、夏休みを通じて緩い、それからライトな話題が多かったので、そろそろガチの国語教育についてしゃべってみたいと思います。
私は、先日8月31日、東京の二度目文化中高等学校というところで、ロイロノートの出版記念イベント、「ロイロ×個別最適化」というイベントに登壇してきました。
私は、探究型ということで出版した本に書いてしまったので、国語の教材を探究型にする取り組みについての実践報告を行いました。
目的は、個別最適化とか探究型というのを今、先進的な取り組みということで、皆さん一生懸命追求していらっしゃるんだけど、難しくてなかなかと思って二の足を踏んでいる人も多いのではないかと。
そういうことで、正面にがっつり探究とか個別最適化というふうにやるんじゃなくて、今の授業の作り方で既に取り組んでいることをもうちょっと工夫するだけで、実は個別最適化とか探究型になるんじゃないかというような実践の提案になっています。
今回は特に意識したのは、やっぱり探究型というのと、それから私がずっと取り組んできた大村浜先生の単元学習とのつながりを皆さんにお示しして、今ある授業でちょっと工夫するだけで探究型になっていくということをつかみ取ってもらうということに主眼を置きました。
導入部分からいろいろワークをやったりお話をしたり、私の教員としてのヒストリーを語ったりということで、私という人間をしてもらって、皆さんとのコミュニケーションを取りながら進めていこうというふうに企画してやりました。
メインのところはですね、じゃあ皆さん探究型の学習ってどういうのかご存知ですよねということを提示して、これはみんなわかっていると思うんですけど、最初に課題を設定して、それから情報を収集して、整理分析をして、そしてまとめ表現をすると、こういうサイクルをくるくる回していくのが探究型学習という風なことなんですけれども、
これはもう本当に皆さんご存知のパターンなんだけど、大村浜先生、それから私が指示しているセラヒロアキ先生がおっしゃっている単元学習というのは、これとほぼ似ていますというお話をしました。
私が指示しているセラヒロアキ先生は、目標の二重構造過論というのを唱えていらっしゃって、生徒の目標と先生の目標は違うという二重構造になっていると、こういうふうなことを唱えていらっしゃって、私もそれを意識して授業づくりをしているわけです。
このポッドキャストでも多分20回前後のところで目標の二重構造過論についてお話をしていると思うので、概要欄にリンクを貼っておきますけれども、探究型の学習とそれから今回の単元学習イコール、特にセラヒロアキ先生の目標の二重構造過論、これを関わりづけながらお話しすると、
まず課題の設定。ここは生徒が何々についてもっと理解したい、考えたい、追求していきたい、謎を解きたいという問いですね。
これを主体的に生徒がいろんな情報を収集して整理したり分析したりして解決に向かっていき、最終的に生徒はまとめ表現をして当初の課題を解決していくという目標に向かって進んでいくわけです。
これが生徒の目標なんですね。学習目標なんです。これを達成するために先生は支援していくわけですけど、それが指導者の指導目標になっていて、例えば言葉の意味を理解するとか、それから文と文のつながりを意識して用紙をつかむとか、そういったのが先生の目標。
そしてこの文章を通してどういうふうな認識の変革があったかというのが先生の目標。それからこういうふうな学習を通じて、これからこういうふうなことについてどんどん追求していく態度を養おうというのが指導者の目標になるわけです。
生徒は表現技巧を味わっていこうとか、それからこういうふうな認識を変革しようということを目標にして学習するのではなく、こんなことについて謎を解き明かしたいということを目標にして学習していくわけで、
先生の目標と学習者の目標は違っていて二重構造になっているというのが、セラ・ヒロアキ先生の目標の二重構造過論ということになるわけです。
これを一緒くたにして、先生の指導目標を生徒の学習目標に掲げているという実践がよくあるので、皆さんもそういうふうなのをチェックしてみていただければと思うんですけど、私はこういう考えでやっていますね。
今回は壁に残された伝言という教科書教材に出会わせて、生徒自身の生活実態から課題を掘り起こしました。
これまで受けてきた平和学習についてカードに書いて提出箱に提出してみんなで発表して共有して、なんで印象に残ったり感動を覚えたりしてみんな記憶に残っているんだろうというようなことを考えさせて、
うちはね、うちの土地は平和学習にすごい熱心なところだから、こういうことを考えると、そういえばなんでこういうことをいつまででも覚えてるんだろうというのを結構思っちゃう。
そういうふうな生徒が多いんですよね、やっぱりこの広島という土地はね。
なので今回は広島というそういう土地柄もあって、平和についてなんでこんなに考えたりする機会を持って今でも覚えているんだろう。
印象に残ったり感動を覚えたりしたっていうのはなぜなんだろうというのを追求する中で、印象に残って感動を人に与えるそういったレポートってどんなのかなっていうのを考えることを通して、
最終的には自分でピースにミニレポートでそれを表現してみましょうっていうね、そういう課題を設けたわけです。
生徒はね、やっぱりカタシの源を読んだとか、アニメのこういうのを見たとか、それからこの世界の片隅でっていうやつを、そこに出てきたお坊さん、そこに取材に行ったとか、そういったことをいろいろ出し合って、なんでこんなに印象に残るんだろうっていうのはそういう気持ちになっていったようです。
そんな中でカードを分析したりして個別最適型の学習したり、それから導入の工夫を共有ノートで分析させたり、それから壁に残された伝言は、チョークの文字が黒字に反転するんで、その白黒の反転のメカニズムっていうのを図式化させたり、
そうやってロイロノートや他のICTアプリを活用しながら、共有とそれから個別最適と、共同学習、インプットとアウトプットを繰り返しながら深めていきます。
教育への示唆
そして最終的には印象に残ったあるいは感動を覚えるその平和の学習というのはどういう条件があるのかっていうのをみんなで発表して共有した後は実際に自分でピースミニレポートを書こうというね、そういった形になっていくわけですね。
生徒は一生懸命印象に残るようなピースミニレポートとか感動を与えるようなそういった平和のレポートっていうのはどういう条件があるのかなって、一生懸命追求しながら知らず知らずの間に壁に残された伝言っていうテキストを読んで、そこの優れた表現をしっかりと分析したり、
それから白黒反転のメカニズムっていうところを論理的に分析したりっていう、それから最後のまとめで無限の連鎖っていうのがあるんですけど、そういったことで自分たちの平和学習を再定義しながら、
指導者の目標を知らず知らずの間に自分たちが目標に向かって学習を進めていく中で、技量が身についていくっていう設計になっているのが目標の二重構造化論による単元学習なわけですよね。
そういったことをお示しして、今やってらっしゃる授業でちょっとだけ変えて、ちょっとだけICTを入れれば個別最適とか単級型になるんですよっていうことをお示ししました。
ということでガチガチのガチガチに今日は語っていきましたけれども、今流行りでとても先進的な取り組みとされている個別最適学習とか、それから共同的な学びとか自己調整学習とか、
そういったことって実は大村浜先生がずっと単元学習の中でやっていらっしゃったことで、しっかりした授業をきちっと作っていれさえすれば自然に個別最適とか自由進度とか、そういったことは知らず知らずそこに入っちゃっているわけですね。
特に自己調整学習っていうのは、後で学習の振り返りをした時に、こうすればよかった、ああすればよかった、だから次はこうしようっていう、そういうふうなものになれば、指導者の目標が達成できたかどうかの見取りにもなるわけです。
だから私が結局言いたいのは、今流行りだと言われていることも実はもう先進はやっていたと、言葉を変えたり見方を変えたりレンズを変えたり、そうすれば自ずとそれはつながっていたと、こういうことが言いたかったわけですね。
なので私としては両方をしっかり見ながら、つながりを考えながら、やっぱりいろんな人のものの見方考え方、いろんな国語教育の切り取り方、そういったのをお互いがお互いにディスカッションしたり対話をしたりすることによって、より授業づくりが深まっていくのかなと思っています。
若手の人は若手の人で、自分たちの授業づくりをどんどん進化させていってほしいんだけれども、私からすると、長年国語の教育をやっている私からすると、古きを温めて新しきを知るというかね、そういった恩子知心というのに習うのも非常にいいんですよということを言ったイベント登壇の内容でした。
それでは今日の配信はここまでです。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。