この歌詞がすごいー井上陽水篇
2026-07-31 16:16

この歌詞がすごいー井上陽水篇

元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎と毎日新聞出版代表取締役社長・山本修司、2人のジャーナリストによるラジオコラム。毎月第四金曜日には、元作詞家志望だったという経歴も生かして、潟永秀一郎がヒット曲の歌詞を読み解く「この歌詞がすごい」をお送りします。

※RKBラジオで毎週金曜日に放送している『立川生志金サイト』内のコーナーです。

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サマリー

本コーナーでは、井上陽水の初期の楽曲に焦点を当て、その歌詞が持つ社会風刺や個人の尊重といったテーマを深く掘り下げています。特に「傘がない」や「東へ西へ」では、当時の社会情勢と個人の心情の対比が描かれ、「夢の中へ」では人生で本当に大切なものは何かを問いかけます。また、「氷の世界」では、デジタル化が進む現代においても色褪せない手紙の情緒と、失われた恋の余韻が描かれ、井上陽水作品の普遍的な魅力を伝えています。

はじめに:井上陽水特集の開始
さて、今日でね、7月も終わりということで、まあ、大阪のワールドカップ盛り上がりましたけど、もうそれもね、過去のこと。早いね。
そうでしたね。 そして、その7月最後の金曜日ということは、もう恒例でございます。元サンデー毎日編集長、潟永秀一郎さんの、この歌詞がすごいということなんですが、今年はですね、日本のレジェンドたちの足跡からJ-POPの歴史を振り返っていただいているんですけども、
今日はですね、前回吉田拓郎さんと並び、立つもう一人のレジェンドということです。おはようございます。
おはようございます。熊本地震でですね、多くの方々が被災されて、犠牲者も出る中で、歌の話で本当に恐縮なんですけれども、少しでも気分転換になればと通常通り、進めさせていただきます。
「傘がない」:社会から個人へ
ということで1曲目はですね、拓郎さんの結婚しようよと並んで、社会から個人へ、フォークソングの方向性を決定付けたとも評されるこの曲です。
今日のレジェンドは井上陽水さん。流れているのは結婚しようよと同じく1972年にリリースされた傘がないです。
はい。陽水さんのデビューアルバムにして名盤の誉れ高いアルバム断絶のラストソングですね。
いきなり余談で恐縮なんですけれども、TBS系列の日曜朝の名物番組サンデーモーニングで、よく司会の前場さんの隣に座ってらっしゃる寺島実郎さん。
陽水さんの一つ上の78歳なんですけれども、その寺島さんが大学院生当時、結婚しようよとこの傘がないの2曲を聴いて、
政治の季節が終わったことを確認したと後に振り返っていらっしゃいます。
前回もお話ししましたが、激化した70年安保闘争はこの年72年の浅間産総事件以降急速に市民の支持を失ってしぼんで、
多くの若者は社会問題に距離を置く白毛の世代になったと言われました。
じゃあなぜ傘がないがそれを象徴する曲と受け止められたのか。
それはこの歌詞です。冒頭ですね。都会では自殺する若者が増えている。
今朝来た新聞の片隅に書いていた。だけども問題は今日の雨。傘がない。
あのそうなんですね。新聞は今日も社会問題を報じているけど、僕にとっての問題はそんなことより、
雨の中彼女に会いに行く傘がないことなんだっていう。まさに社会より個人を言い切ったことです。
君のこと以外は考えられなくなる。それは良いことだろうと。
さらに2番で畳みかけてテレビでは我が国の将来の問題を誰かが深刻な顔をしてしゃべっている。
だけども問題は今日の雨なんだよって。2番でも畳みかけるんですね。
で上の世代はそれを自己中心的とかしらけてるとか表したんですけれども、そうなのかなと思いました。
周りがみんなそうだからと何か熱に浮かされたように闘争を語るのだって流されているんじゃないのと思っていた人は、
当時も実は少なくなかったんですね。
だからこそのヒットで、それはある意味個人の尊重っていう新憲法の理念がこの時代ようやく普遍化した証だったのかもしれません。
というのも日本ではこの歌ができたつい20年ほど前まで、人が率直に個人の思いを言うことがはばかられる時代があったからです。
先日亡くなった三羽昭博さん、私も大好きな方でしたけれども、三羽さんが著書の中でこんなエピソードを記してらっしゃいます。
記者のデッキに立って出世しようとしている兵隊さんを死ぬなよ帰ってこいよとしがみついて見送る母親が憲兵に引きずり倒されぶん殴られて鉄の柱に頭をぶつけて血を流している。
それを平礼しながら見ている子供の気持ち、死に赴こうとしている子供の気持ち、どんなだったろうかと思いますと、無事に帰ってきてくれっていうお母さんがぶん殴られた時代です。
それが敗戦で一変して価値観全てひっくり返って、じゃあ何が正しいんだという混乱からようやく脱して、愛する人とただ幸せに暮らしたいっていう本来の思いに立ち返ったんじゃないかとまで言ったら言い過ぎかもしれませんが、
ただ少なくとも髪が伸びたら結婚しようよとか社会問題より僕は君に会いたいんだとか堂々と歌える世の中の方が真っ当だと私は思います。
「東へ西へ」:高度経済成長期への皮肉
ごめんなさい余談が長くなりましたが歌に戻ります。続いてもう一曲この曲です。
東へ西へ断絶に続く陽水さん2枚目のアルバム、陽水2センチメンタルの収録曲で、傘がないと同じ1972年のリリースです。
まず歌の時代背景から説明すると当時は高度経済成長期のピークでサラリーマンは企業戦士と呼ばれ乗車率300%を超えた都会の通勤電車は殺人ラッシュと呼ばれました。
まさにそれを歌っているのは2番で電車は今日もすし詰め伸びる線路が拍車をかけるっていうのはただでさえ満員なのに郊外の宅地開発や鉄道の延伸で乗客が増えて通勤時間もさらに長くなるっていう状況ですね。
続くいつも満員、床に倒れた老婆が笑うっていうのは実際に老婆がいるわけではなくてその異様さ、不条理さの比喩でしょう。そんな日々を送る彼の唯一の支えは日曜になれば彼女に会えることというのが1番で。
当時土曜日は反動ですけれども午後休みでしたから、帰宅後多分爆睡しちゃったんでしょうね。これが昼寝でその反動と明日会えるっていう期待で彼は寝つけません。
明けて翌日のことが3番で。ようやく会えたというのに睡眠不足の彼は満開の桜と彼女の明るさについていけずに戸惑うばかりだっていう。流してみるとそういう歌です。
だから頑張れみんな頑張れっていうサビはじゃあ励ましかというと違いますよね。その後夢の電車は東へ西へと続きますからつまりそれでいいのっていう皮肉ですね。
そうまでしてみんな何を目指してるんだっていう当時の競争社会に対する強烈な皮肉でしょう。本当に大事なものは何ですかっていう問いかけでもあると思います。
ちなみに今この歌を聴いて思うのは我が国の総理大臣ですね。働いて働いて働いてで睡眠は1日3時間未満だとおっしゃってますけれども。
先月徹夜3回やっただけで体調を崩した同い年の私としてはですね。寝てくださいと。本当に大事なことは何か少し立ち止まってみてはいかがですかと言いたくなりますね。
働いて働いて働いて国民にとっていいことをしないのはダメですよね。
「夢の中へ」:人生で本当に大切なもの
ということで今世の中がもうスピードで変わるからこそ刺さる歌をもう一曲この歌です。
ご存知夢の中へ。前の2曲の翌1973年に発売され陽水さん初のシングルヒットになりました。
アルバムでは75年発売の最初のベスト版グッドページズに収録され89年に斉藤幸さんが歌ってリバイバルヒットしましたよね。
これも歌詞は実に深くてですね。テーマを一言で言うと人生で本当に大事なものは世間とか会社とか自分の外側じゃなくて心の中にあるんじゃないっていう問いかけですよね。
冒頭有名な探し物は何ですか見つけにくいものですかっていうフレーズ。探し物っていうのはもちろんあのメガネとかスマホじゃないですよね。
モノって言ってますがこれは夢とか生きがいとか自分とは何かとかの置き換え。隠雇って言いますけども隠雇でしょう。
すると続く探すのをや探すのをやめた時見つかることもよくある話ではそんなに焦らないでちょっと肩の力を抜いたらどうですか。
夢の中へ夢の中へ行ってみたいと思いませんかっていうサビはあれこれ悩むのはもうやめて自由になろうよっていう呼びかけに聞こえます。
言葉もメロディーも軽やかなんだけど実はすごく鋭くて深い歌だと思います。
高度経済成長期から半世紀を経た今ですが今もDXだとかAIだとかみんな社会の変化の速さについていけずに必死ですけれども家族だとか愛だとか本当に大事なものは変わってないはずで幸せはそこにあるはずでしょって考えさせてくれる今も響く名曲ですね。
井上陽水の社会性とロマンティシズム
ここまで真っ向から社会と対峙した安保闘争当時のフォークソングとは違うモニカルで第三者的な要粋さんの社会派のフォークソングですが、その後この新しいアレでは同じく73年の氷の世界。
すみません今ちょっと音声が途切れてしまいました。
1973年の氷の世界まで聞こえました。
その他74年の闇夜の国からとかですね89年の最後のニュースなどがこのシニカルな第三者的な社会の見方っていう流れの中にあるんですけれどもそうしたの社会性はやっぱり初期に色濃くてだんだん独特のロマンティシズムを感じる曲の方が増えてきてですね。
でこの流れには81年のジェラシーとか82年のリバーサイドホテルとか90年の少年時代とかこう続いていくはいということで最後はそのロマンティシズムに目指す初期の名曲この曲です。
「氷の世界」:手紙の情緒と失われた恋
この模様です。
のこの島の片思いとどっちにしようか迷いましたけれどもこちらを選んだのは収録された1973年発売のアルバム氷の世界が日本で初めてLPレコードって言ってももうもはや若い人には通じませんが今でいうアルバムですね。
アルバムで100万枚突破の記録を打ち立てた歴史的名盤だからです。
またこの歌は社会のデジタル化の中ですっかり廃れた紙の手紙ならではの距離感や情緒の上に成立していますからその意味でも歴史的です。
はいじゃあ歌詞ですけれども寂しさのつれずれに手紙をしたためていますあなたにと歌い出されて2人の関係性がわかるのは2番遠くで暮らすことが2人に良くないのはわかっていました。
今で言う遠距離恋愛で寂しさだけを手紙に詰めてふるさとに住むあなたに送るんですがおそらく寂しいのは彼だけでそれはあなたにとってニヤキタ文字っていう言葉で伝わります。
それが季節の中で埋もれてしまうというのは彼女の暮らしの中にはもう彼への思いはないということそして最後の季節は巡りあなたを変えるは彼女はもう愛し合った頃の彼女ではないことを伝えますよね。
寂しい。
当時も電話はあったんですけど彼が電話を選ばなかったのはおそらくもう彼女の心が離れていることを痛いほどわかっているからでしょう。
その意味で手紙っていうのは恋を諦めるのにはちょうどいい優しい時間と余韻をくれる文化でしたね。
即座に嫌とか嫌いとか言われませんから返事が来なくてもね嫌われてるのかなもしかしたら出してないだけかなとかそういう余韻があったんです。
そして陽水さんの歌の大きな魅力の一つがこの余韻だと私は思います。
いろんな歌に余韻を感じるんですね。
まとめ:井上陽水の初期名曲
ということで今日は拓郎さんとともに日本のフォークソングを変え今に続くJ-POPの源流の一つとなった陽水さんの初期の名曲4曲をお届けしました。
被災地の一日も早い復旧と平穏な暮らしが戻ることを祈って今日のこのコーナーは閉じさせてください。
はいありがとうございました。
この歌詞がすごい今月は井上陽水さんについて歌詞の解説してもらいました。
元サンデー毎日編集長型永州一郎さんでした。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
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