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#41『岐山の女』地元の絆が、19億円の不正に変わるまで(ゲスト:窪田新之助さん))
2026-10-14 40:02

#41『岐山の女』地元の絆が、19億円の不正に変わるまで(ゲスト:窪田新之助さん))

【本日紹介の一冊】

『岐山の女』(講談社、窪田新之助・著)

▼書籍の詳細・ご購入はこちら
https://link.amazon/B0gsemZ7L

【エピソード概要】

困ったときに頼れる人がいる。家族のことまで気にかけてくれる。そんな助け合いのつながりを通って、不正なお金も動いていくとしたら――。

今回のBIBLIO JAMは、『対馬の海に沈む』の著者・窪田新之助さんを迎えて、新刊『岐山の女』の著者インタビューをお届けします。

山口県の徳山で、半世紀以上にわたって第一生命のトップセールスとして活躍した正下文子さん。89歳になろうとしていたときに発覚した不正の被害は、会社の調べで24人、19億5100万円にのぼりました。彼女はなぜ、それほどまでに信頼されていたのか。銀行との関係や顧客の暮らしに入り込む営業を通して、地域で欠かせない存在になっていく過程をたどります。

もう一つの柱は、書き手としての窪田さんです。正下さんに自身の祖母を重ねた個人的な取材の動機や、農業ジャーナリストからノンフィクション作家へと名乗りを変えた理由に迫ります。本人に話を聞けないなか、祝賀会の席順や学校史を手がかりに人物へ近づいていった取材手法、そして巨額の事件を「枝豆」から書き始めた狙いまで伺いました。

対談の後半では、前作との共通点から、不正がどういう状況で起こりやすくなるのかについて考えます。現場が気づいていても止められなかったのはなぜなのか。会社の中だけを見ていては捉えきれない、地域のつながりと人間の複雑さを掘り下げます。

【チャプター】

() 今回は著者インタビュー

() 89歳、19億円の不正

() 男たちの信用社会を外から動かす

() 女性たち、それぞれの生きる道

() ノンフィクションの作家性とは?

() 「終わった」事件を掘り下げる

() 言葉にしにくいものを書く

() 取材する自分も、物語の中にいる

() キーになった一冊・気になる書き手

() 不正は、なぜ起きるのか?

() お金と、必要とされること

() もし、一つだけ聞けるなら


【関連書籍】

『対馬の海に沈む』(窪田新之助/集英社)
https://link.amazon/B0gx87b7G

※書評はこちら

『農協の闇』(窪田新之助/講談社現代新書)
https://link.amazon/B03GzyQFa

『保身 積水ハウス、クーデターの深層』(藤岡雅/KADOKAWA)
https://link.amazon/B0hqhg5xq

【出演】

ゲスト:窪田 新之助(ノンフィクション作家)
ナビゲーター:内藤 順

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#ノンフィクション #金融 #事件 #第一生命 #岐山の女 #JA #対馬の海に沈む #不正 #投資詐欺 #窪田新之助

感想

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サマリー

窪田新之助さんの著書『岐山の女』をもとに、山口県徳山で第一生命のトップセールスだった松下文子さんの不正事件を聞く。松下さんは会社を通さず顧客から資金を集め、被害は24人、19億5100万円に及んだが、長年の営業実績と地域で築いた信頼のため、発覚後も地元で一面的に恨まれていたわけではなかった。保険販売にとどまらず、顧客の家や会社に通い、贈り物や暮らしの相談にも関わることで、松下さんは「なくてはならない人」になっていった。山口銀行から顧客を紹介される仕組みや、男性中心の信用社会の外側にいた女性だからこそ可能だった働きかけも、彼女の影響力を広げた。

『岐山の女』が描く19億円の不正
89歳、19億円、泥のシーン。 女帝と怪物みたいな扱いになった。
そんな枠はどこにもないのに、お金の行方は今もこれ分かってないんですよ。
あの、さぞ悪い人なんだろうなと思って、読み始めたんですけども。
なんか読み進めるうちにですね、なんか将暐さん自身も、何かの被害者みたいなね。
いや、この題材って、描こうと思ったら、それこそ細木和子みたいに描くことができるじゃないですか。
だから、そういうことではない。
将暐文子と、この私の祖母がですね、同じ年なんですよ。
この問題の分には、全てが発覚しても、みんながみんな恨んでいるわけではない。
選ばない方が答える。
謎として残してください。
こんにちは。ビビルジェム始まりました。
この番組は、話題の新刊ノンフィクションをじっくり深掘りしていくポッドキャスト番組です。
今日はですね、いつもの場所を離れて、埼玉県の本庄に来ております。
なんとですね、ノンフィクション作家の久保田信之助さんが、新しい新刊を出されたということで、著者インタビューという形でお送りさせていただきたいと思います。
久保田さんどうぞ。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
久保田さんとお会いするのはね、初めてですよね。
でも、前作の、津島の海に沈む。
この本がですね、本当に衝撃的な一冊でして。
当時から非常に注目させていただいておりましたので、今日はいろんなお話を聞かせていただければと思います。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
それでですね、今日の一冊はですね、久保田さんの新刊。
こちらですね、既産の女、高段社から刊行された一冊になります。
まずですね、こちらどういう本なのか、久保田さんご自身の言葉でご説明いただけますか。
はい、皆さん初めまして。久保田信之助です。
今回、高段社から出した既産の女はですね、第一声明のトップセールスがですね、驚愕の不正をしたというお話になります。
面白い点がちょっと2点あって、一つは不正が発覚した時に89歳で、高齢だったというところと、
それからお客さんから彼女はお金を騙し取ってたんですけれども、その金額が19億円ということで、
この2点がですね、当時世間の地獄を集めた話になります。
私がちょっとなんでこの本を書こうかなと思ったというきっかけなんですけれども、
それは第一声明側で2020年事件が起きた直後にですね、調査報告書をまとめたんですけれども、
その時にお客さんたちが騙されたのは、彼女が圧倒的な営業実績があって会社から評価されていたというそういった部分とかですね、
彼女は山口県を舞台にトップセールスを挙げていったんですけれども、
地元の製材界に深いつながりがあったということで、実績と信頼が非常にあったということで、
それでみなさん信じてお金を預けたという話なんですけれども、
気になったのが、そもそも実績ってどうやって作られたのかということとですね、
それだけの信頼を築き上げるのはどうやってやってきたのか、
多分そこを読み解かないとこの事件は解決しないんじゃないかとか、
真実にはたどり着かないんじゃないのかなと思って、そういった思いから取材を始めました。
僕はこの事件を起こした政法理事の松下文子さんという方ですけれども、
最初は豪欲に満ちた、さぞ悪い人なんだろうなと思って読み始めたんですけれども、
読み進めるうちに松下さん自身も何かの被害者みたいなようにも見えてきたというところで、
いわゆる加害者の見え方が一冊の中で、ここまで変わっていく本って珍しいなと思って読んでいたんですね。
先ほど加藤さんからもご説明ありましたけども、
聞いてる方のためにちょっと事件の骨組みみたいなところを短くお話してみたいなと思います。
松下文子さん、いわゆる山口県の徳山地方で、
反省基地を第一線で働いた第一生命のトップセールスの方ですね。
特別な肩書を持っていて、いわば会社の顔みたいな存在だったと。
ところが2020年に松下さんが会社を通さないで、
お客さんから個人的にお金を集めていたということが明るみに出るんですね。
会社の調べで分かった被害人数が24人。
先ほどありましたけど19億5100万円と。
しかも松下さん89歳になろうとしていたということで、
本にも書いてあるんですけども、松下さんはお客さんにこういうふうに持ちかけてたんですね。
私には会社が用意した高い利息がつく特別額があると。
だから金を預けないかと。そんな枠はどこにもないのに、
でも配当はなぜか払われてたんですよね、長い間ね。
それが遅くとも2018年ぐらいからですね、
滞り出すんですよ、配当はね。
松下さん、しかも何も語らないまま2023年に亡くなられてしまうということで、
お金の行方は今もこれ分かってないんですよね。
そうですね。
地域に根づいた営業と信用
最初にお伺いしたいのが、お金を預けた人たちにとって、
松下さんってどんな存在だったんですかね。
いわゆる保険を売りに来る人っていうところから最初始まったんですけど、
だんだんとそういう人物ではなくて、いわゆる松下さんっていう呼ばれ方をするようになるんですよね。
それぐらいは親しくなっていったんですけれども、
どうやって親しくなっていくかというと、
お客さんの家にまず挨拶に行って、
それで営業をかけて保険を取る。
取って終わりではなくて、ここからがすごいところなんですが、
お客さんの家に週に2回、3回、あるいはお客さんの会社に日産する。
そこで一緒にお茶を飲みながら雑談する。
それだけではなくて、家を実施した後、すぐに手紙を書きまして交換する。
挨拶状を出すとかですね。
まずそういったところからだんだん仲良くなっています。
これが本の中で書いていることなんですけども、
その先に保険の営業っていうことだけではなくて、
彼女は服を売ったりとか、宝石を売ったりとか。
それはお客さんの求めに応じて、保険以外のものを扱っていくということで、
そういった生活保険だけではなくて、生活全般の面倒を見ていくという、
そんな存在になっていくという。
だからいわゆる昔の、できる人ですよね、要はね。
できる人。
なくてはならない人であるってことも事実ですよね。
そんな人がどうやって犯罪に手を染めるようになっていったのかというところですよね。
そうですね。
生計さんの営業を支えていたのが、
実は地元の地銀の山口銀行というところが大きなファクターを握っているわけですよね。
融資を受けるお医者さんだったりとか経営者さんを、
銀行側が生計さんに紹介しているというルートがあったということで、
生計さんはその山口銀行の各支店を訪れて、支店長にお客さんの紹介を頼むんですね。
女性が信用社会を動かす方法
この本ってある意味ジェンダーの話でもあるっていうのが僕は思うんですよね。
銀行でも会社でも、この当時っていうことも踏まえて、
信用を動かしているのはやっぱり男たちの社会だったと。
生計さんってその外にいる女性ですし、保険外交員、あくまでも外交員であるというところで、
この男たちの信用で動く世界で、生計さんが顧客を広げて銀行の中にまで影響力を持つ上で、
女性であるっていうことがどういうふうに働いたんですかね。
そうですね。通常やっぱり会社の中ですと序列があって、
下っ端の者が上の者に意見を述べるというのは、いきなり頭取りに述べるということはまずできないことなんですけれども、
生計さんはそこは関係ない人間でしたので、ある意味裏ルートを使うことができたっていう。
だからアウトサイダーであったからこそできたアプローチということですね。
そうですね。その中でぜひ本を読んでいただきたいんですけれども、銀行側の頭取りに直接取り入れる術を見つけていって、
そこで保険を広げていくという。その辺がなかなか包括ですけれども、優れたところですよね。
そうですね。そういうのっておそってできるものじゃないですね。
できるものじゃないですね。
やっぱり育ちだったりとか、転生のものだったりとか、そういうのがあったわけですよね。
保険業界ってトップを抑えるみたいなところが大事だと思うんですよね。
でもやっぱり地方社会ほどそういうところが強いので。
その地域のドンを抑えるかと。
そういう意味であると、王道のやり方をやってきたのかなと。
王道のやり方をアウトサイダーとしてやってきたってことですよね。
あそこがすごいですよね。
これ1965年なんですよね。翔平さんが保険の世界に入られてたの。
前の東京オリンピックの頃。
この頃って女性が仕事で認められるにはどういう道があったんですかね。
当時の会社組織っていうのは男性中心の給与体系だとか、
少子性の体系ができたので、認められるにはそことは別の道を探るしかない。
その一つにやっぱり保険会社っていうのがあったかなと思います。
当時の保険会社って、一説には戦争で亡くなった方の未亡人が入ったりとか、
あるいは家業が、旦那さんもサラリーマンなんですけれども、
奥さんが空いてる時間を使ってやるとか、
そういう中で保険業界に入って、こうなり内力を遂げていくみたいな。
だから地元の奥さん連中の中でも、ある程度幅を大き化してる人が割と成り上がりやすいというか、
その下地みたいなのがあったってことですよね。
同じ時代に山口県で政法理事として働いてた、
将棋さんとちょっとライバル的な存在の女性も本に登場するじゃないですか。
同じような仕事をしてても、将棋さんのようにならなかった人もいるっていった意味でいくと、
空さん、その二人の差ってどういうところにあると思いますか。
そうですね。先ほど将棋文庫のやり方は一つの王道みたいなのをお伝えしたと思うんですけど、
それは銀行なり組織のトップに食い込んでいって、
そこからトップダウンで保険の契約を獲得してという、こういうやり方なんですよね。
一方でライバルだった人というのは、一から積み上げていく。
つまり企業の経営者にとって本当に何が必要なのかとかですね。
いわゆる経営上の問題からまずと向き合って、
ちゃんと必要な商品を売っていくという、その辺のやっぱり違い。
割とボトムアップ型のアプローチですね。
営業とトップダウンからいくのと、ボトムアップ、両方あると思うんですけど、
ひょうげさんがトップダウンだとしたら、この方はちょっとボトムアップでアプローチしていったってことですね。
細部から事件と人物を再構成する
ここからは書き手としての久保さんにお伺いしたいなと思います。
こういう事件って普通は社会の闇みたいな一言で片付けられると思うんですよ。
でもこの本ってとにかく銀行の人事の内事が前の日に漏れていたとか、
医師会と銀行の中でどういう融資の取り決めがあったとか、
あと神社で祝賀会の時にどういう席順だったか、すごくディテールまで一つ一つ細かく書かれているなと思ったんですけど、
やっぱりここまで細かく書くということで、どういうところを伝えたかったって何かありますか。
そうですね。結構やっぱり細部に大事なことが詰まっている。
神はディテールに宿るって言いますね。
そうですね。事件の全体像が見えない中で、なるべくその細部を見ていこうと。
例えば祝賀会での席地っていうのは、何かそこには意味がある。
つまり並んでいる順番からして、彼女との近さ、遠さみたいなのが伺えるんじゃないかと。
その中で上下文庫に誰が支援してきたのかとか、そういうのがもしかすると見えてくるかもしれないっていう。
やがてそういうのが見えてくるんですけども、だからこそ細部をきちんと書き込むっていうことをしました。
前作もそうですけど、本作もいわゆる主人公となる人が、もう取材できない状況にあるからこそみたいなところもありますよね。
その周辺の情景みたいなところから、やっぱり類推しながら積み上げていって、一つのストーリーというか、そういうものにするっていうことですよね。
この本自体を書いていて、ぶっちゃけ聖絵さんに感情移入してこないもんですか?書いていて。
感情移入はないと言うと嘘ですね。
そもそもちょっと話が逸れるかもしれないんですけど、この作品を書こうと思った、もう一つの取材を始めようと思った動機があって。
それは上下文庫と私の祖母が同じ年なんですよ。
半年ぐらい生まれた月は違うんですけど。
なんで89歳で大きな作業をしたのかっていうのが、祖母と重なってしまってですね。
それで取材を始めてみると、上下文庫の生き方と祖母の生き方っていうのは割と重なるところがあってですね。
そうなんですか。
いわゆる男性優位の社会の中で、どうやって女性としての生き方をついていくかっていうので、あの手この手を尽くしていく。
例えばお見合いをたくさん取り持って地域社会の中で自分の立場を築いていくとか。
ハブ的な役割をするってことでポジションを形成していく。
そうですね。本にはあまり書いてないんですけれども、ある意味祖母のことを知りたいと思ったし、
あの時代の女性の自立して生きていこうとする姿っていうのをもう少し理解したいなと思った。
ということは一つ格同期でしたね。
パーソナルなものも背景にあったということですね。
面白いですね。
おばあさんとはどういうところが重なるんですか。
家畜なところ。
女性として自分で稼いで生きていく。
祖母の場合は専業主婦だったんですけれども、株式入り投資をやってですね。
それで自分の家というか、旦那さんにあまり頼らずに。
旦那さんの稼ぎもあるんですけども、自分で家を建ててしまう。
へー。
すごいですね。
農業ジャーナリストから作家へ
それでですね、この本の中にノンフィクション作家としての自分の仕事は、
先がその出来事はもう終わったと思っているところからむしろ始まるっていう一文があって、非常に印象深かったんですね。
報道も、新聞報道なんかももう終わっていたし、会社の調査報告書が出るってところで、
会社的にもある程度一区切りみたいな状況だったと思うんですけども、
そういった状況の中で、さらにそこから久保田さんが追いかけようと思ったきっかけってどういうところなんですかね。
これいくつかご説明しないといけないと思うんですけども、
一番大事なところはやっぱり自分のアンテナに引っかかったっていうところですね。
何かあるぞっていう、そういう嗅覚みたいなのが働いたってことですね。
前作の本でもそうだったんですけども、やっぱり巨大組織における一人の不正っていうのが長年起きてきたっていうのは、
やっぱり何かあるなっていうところがまず一つ。
それからもう一つは今申し上げた、祖母と同い年だったっていうところですね。
世の中のいろんな事件が起きている中で、どんどんどんどんその事件ってニュースで報じられて消えていくっていう。
でもそれは法律だとか制度に照らし合わせたときにそれを犯したから報じられるわけですけども、
実際にはでもそこに至るまで過程があって、そこにやっぱり面白いものがあるというのが自分は思っているところなんですね。
だから終わったものところから始まるっていうのはそういう意味ですし、
もう少し言うとそういうやり方を教えてくれたのは、私は民族学っていうのを大学でやってたんですけども、
これは宮本恒一が父親から教わった言葉でもあるんですよ。
だからもう人が見終わったと思うところを後から見ていけばいいっていう。
そういう教訓を受けて、彼は調査をしてるんですけども。
そうなんだ。宮本恒一もね。
そうですね。言ってますけど。
そういう姿勢は大事にしたいなとずっと思っているところです。
以前は農業ジャーナリストって名乗ってて、
つしまの時からノンフィクション作家っていう経歴ですよね。
これ、農業ジャーナリストからノンフィクション作家に名乗りを変えるタイミングとかきっかけってどういうことがあったんですか?
そうですね。タイミングは今、内藤さんがお話しされたように、
つしまの海に沈むからノンフィクション作家に変えた。
それまでは私は2004年に日本農業新聞という会社に入りまして、
ずっと日本の農業と農作業の問題を追ってきました。
それというのは主には農業における構造問題、構造調整の問題をやりたいと思って、
ずっと農業ジャーナリストという肩書きで、
日本の農業のシステムのおかしさをずっと書いてきたつもりなんです。
それで2012年に会社を辞めてフリーランスになってからも、
同じ肩書きで取材を続けてきました。
そういった中で、2022年の8月に農協の暗闇という本を講談社から出しました。
この時に農協の仕組み、特に保険のおかしさに端を発する組織の腐敗のことを書いたんですけれども、
この時まではずっとシステムのことを追ってきたんですが、
その後に津島で起きた事件のことをやるようになって、
だんだん最初にやっているうちはシステムのおかしさを追求していこうかなと思ったんですけれども、
だんだん不正をした西山弱者あるという、この本の主人公ですけれども、
彼の人間とそこに取り巻く人たちの方に関心がより強くなりまして、
これはシステムを描くけれども、それを舞台にした人間のありさまを描いた方が面白いなと思って、
その時に人間と社会を描いていく作家になろうかなと。
それで農機場の作家になろうようにしたんですね。
でもそれがすごく描き味に出てますよね。
西山さんも犯罪を犯した人なんですけれども、
何か大きなシステムの抗えない何かというのが少なからずあって、
そこを描かないのがフェアじゃないんじゃないかという思いですか?
そうですね。
やっぱりそうなんだ。
それって新聞とか雑誌ではすぐに読めないところだと思うんですよね。
限られたページ数とかだとどうしたらやっぱり書けない。
やっぱり本一冊ですよね。
この300何十ページ書きましたけど、
それぐらいやっぱり分量じゃないと書けないところなのかなと思います。
ジャーナリストとノンフィクション作家ってどう違いますか?
ノンフィクション作家でももちろんジャーナリストの要素を持っている方もいるし、
その逆もあるのかもしれないですけど、
私はジャーナリストというのは、
世の中の構造的な問題を追っていく性格が強いものだなと。
ノンフィクション作家というのはシステムだけでは書けない、
言葉にしにくい、つかみにくいけれども、
それを言葉に変えていくような印象を持っていますね。
あとは取材対象との向き合いみたいなところって、
ジャーナリストとノンフィクション作家って違いますか?
基本的なところは一緒だと思うんですよね。
事物、事件とか人間に真摯に向き合うというところが最も大事だなと思いますし、
信頼されないといけないなという意味では一緒だと思うんですけれども、
ただ、私はこういうことを言っていいのかわからないんですけど、
ノンフィクション作家というのはある種の感性というのがすごく大事な気がしていて、
それはこの事件をどう受け止めるかとか、
この人間が話している言葉とか見ぶりとかをどう捉えるかという、
そういう些細な一つ一つの言動に対しての感度が大事で、
それをどう言葉にしていくかということですね。
それが物語を作っていくのかという。
だからどちらかというと、作能的ロジックみたいなところを重視するジャーナリスト。
テピカルに分けられるものではないと思いますけれども、
作能的ロジック型のジャーナリズムみたいなことと、
あとはそれだけじゃなくて有能的であったりとか、
エモーショナルな部分をどういうふうに刺激するかというところでの違いみたいなところがあるんですかね。
内藤さんのまとめのほうがうまい。
そうですね。
出発点で取材したときに完成の最終形のどこくらいまでが仮説として、イメージとしてお持ちだったんですか。
当初予想していたことは全く違っていて、
違ったんですね。そうなんですね。
こういったあれですけど、津島の海に沈むみたいな話になるのかな。
でもそれだと同じになっちゃうの嫌だなと思って、思いながらでも。
同じになっちゃうかもな。同じ日本だし、同じ地方の話だし。
その路線っていうのはずっと持ちながら取材していて、
割ともう後半に至るまでそういった噂はあったんですよね。
何を言ってるか読んだことない方はあれかもしれないですけど。
読んでください。
ただそれは結局何も事実として出てこなくて、
一体何なのかなっていうのは最後まで分からなかったんですよ。
書いていっているうちに途中から書き始めて、
うちにだんだん分かってきて、追加取材をしていって本当だったんだなっていう感じになって。
なるほどね。面白いな。
この本の中で久保さん自身もよく出てくるじゃないですか。自分自身も。
正月さんのお父さんのことを聞くために美容院に飛び込んだりとか、
昔の養老施設まで足を運んだりとか。
取材している自分をここまでこの本の中に書き込む、入れ込むって、
これどういう狙いがあるんですか?
それを書かないと取材の過程が全く分からないっていうのが一つあって、
特にこの事件については資料が少ないんです。
なので自分の足を使って回るしかなくて、
そこの中にとにかく発見がどんどんあるもんですが、
そういったものを見てもらうほうが話を追いやすいのかなと。
ある種、自分自身を書き込むってことで表現回しみたいな、
このストーリーとして表現回しみたいなこともしているというのはそういうことですね。
そうしたほうが伝わりやすいんだろうということなんですね。
たぶん事件の全部を知ってる人がいれば、それはその人に語らせて直接書けるかもしれないけど。
代弁する人がいないんですよ、この事件については。
いろんなパーツを組み合わせて図を絵かび合わせないといけないから、
その全ての共通項を入れ込もうと思うと自分自身になる、ご自分になるってことですね。
なるほど、面白いですね。
枝豆から始める事件の描写
あとこの本って、消費者さんを一言で説明するよりも、
贈り物とかお金の届け方とか、そういうところで見せてるケースがすごく多いじゃないですか。
配当の現金が最初は貸し売りの底に入っていて、後に宅配便に届くとか、
こういう場面を書くときに、説明を足すっていうテキストで説明を書くってことと、
あとは場面で情景を描くっていう、この使い分けってどういうふうに考えてるかとか、
なんかこだわりとかってありますか?
いくつかあって、一つは場面として描いたほうが面白いこともあるので、
それは場面で説明する。ただ場面が続くとリズムが悪くなると思っていて、
その辺は場面、それから事実を担当しているという、
そういうのは感覚的にやっているってことですね。
なるほど、面白いですね。
この本って、事件が明らかになった後も、
お金を預けていたうちに枝豆が届くっていう、あの場面から始まるじゃないですか。
この枝豆の部分を最初に置いたのって、どういう狙いがあるんですか?
そうですね。お金の話ですよね、今回は。
89歳、19億円っていう、ちょっと驚ろしい。
すでに事件当時の報道も、女帝とかそういった報道だったんです。
テレビも再現VTRとかされて、怪物みたいな扱いになったんですけど、
そういう印象がどうしてもつまとう中で、
枝豆っていう、いわゆる食べ物で会おうとしていて、
その対比っていうのが面白いのかなと思って。
最初に描きがちな、ティピカルな先入観を、
枝豆で一回排除した状態でストーリーを始めたいっていう。
結構謎になるじゃないですか。いわゆるお金に対する。
しかも受け取る側にとっては何を問じるかみたいな印象があると思うんですよ。
この題材って、描こうと思ったら、それこそ細木和子みたいに描くことだってできるじゃないか。
だからそういうことではないっていうところを、最初に枝豆を入れることで、
ある種何か方向性を定めていったみたいな感じですか?
あともう少し、これも大事だと思うんですけど、
枝豆が僕は全て、枝豆が答えだと思うんですね。
だから問いを最初に上げて答えが。
なるほど。
ある種遠観だと思うんですけど、
これは描き手としてのやり方なのかなと思いますね。
これは詳細はあんまりここでしゃべりませんね。
そうですね。
読んでのお楽しみというね。
僕もちょっと言いたいんだけど。
はい、わかりました。
この本を書く上で、キーになった一冊って、あげるとしたら何かありますか?
そうですね、迷うんですけど。
一番大事だったのは、中須小学校っていうですね。
中須小学校の歴史があるんですよ。
いわゆる小下文子が住んでいたところの小学校。
彼女のお父さんが勤めていたり、あるいは兄弟がそこの学校に出ていたりして。
それを読んでいくと、まず家族関係が分かったり。
それだけじゃなくて、家族の気候文があるんですよ。
そういうものを読むと、一体どういう家庭で育ってきたのか。
それでようやく分かる。
なるほど。
それ以外あまり資料がなくて。
本当ですよね。
ご家族も小下ですし、されなかったので。
小下さんのご家族はですね。
なので、文献から頼っていくしかない。
それで見えてきたところがあるし、それが事件ともつながっていくというところで、非常に重要な資料でした。
なるほどね。
これ、例えば参考文献でレイモンド・チャンドラー長いお別れって書いてあるじゃないですか。
これ、どういう繋がりなんですか?
謎として残しておいてください。
わかりました。
『対馬の海に沈む』との共通点
久保さんが今意識されているノンフィクション作家ってどなたですか?
藤岡忠さんっていう方で。
週刊限内の記者の方で保身という本を書いている方なんです。
藤岡さんは実は今回の本の取材を手伝ってくださったり。
そうなんですね。
アドバイスをくださった方なんですね。
なぜ藤岡さんのお名前を挙げたかというと、私はずっと農業ジャーナリストとして活動してきたんですけども、
ノンフィクションの世界とか、ジャーナリズムの世界っていうのが、
世界っていうかですね、手法があまり分かっていなくて。
業界心に痛むんですから。
例えばオープンソースの使い方とかですね。
そういうのをあまりちゃんと勉強してこなかったんです。
藤岡さんと出会っていろいろ教わる中で、
取材のやり方とかその作法というのをとにかく非常に教わったんですね。
だからとても勉強になりましたし、今でもそういう意味で教わっているという感じですね。
それでですね、前作の「津島の海に沈む」と今回の「木産の女」を読んで、
僕はやっぱり当たり前ですけど、事件の構図に重なるところがあるなというふうに感じたわけですね。
前作の「津島の海に沈む」は、長崎県の津島でJAの共済の営業で日本一の実績を上げた西山さんというのが、
海に転落して亡くなると。
その直後に巨額の応料の疑いが明らかになるという話なんですよね。
僕は似てると感じるのは、どちらも地方の話、どちらも閉じたコミュニティみたいなのがあって、
あとは生命保険とか共済みたいに生活に密着したような金融商品が絡んでいるというところがあるなと。
やっぱりこの重なりって、くんさんどういうふうに感じてますか。
同じ似てるところというのは巨大組織で、片山JAグループという1000万人を超える組合がいる。
第一生命もトップ5に入るという巨大な保険会社というところは似てますよね。
その中でもう一つ共通しているのは、片方は津島で起きたし、もう一つは山口県の今は湘南市という、
両方とも東京から離れた場所で起きたという点では似てるなと。
じゃあなんでこういう似たような不正が起きたのかというところで、
共通しているのは組織は築いていた。
組織は築いていたか、あるいは現場の職員は築いていたというところが一緒なんですけども、
それをじゃあなぜやっぱり止められずに、しかも長年不正が続いたのかという。
この辺が面白いところなんですね。
そこで気づかされるのは、組織は築いていて、ダメだけれども止められない。
じゃあその止められないことって何なのかというと、やっぱりその土地土地の監修だったり地域制だったり。
そこが要は組織にとっての儲けにもなっている。
だからこそ見て見ぬふりをする。
地域共同体が不正を止められなくする
だから共同体の論理が勝っちゃうんですよ。
勝ってしまう。
いわゆる法人としての会社の論理よりも。
地方に行けば行くほど、その地方の共同体の論理が強まる傾向には少なからずありますよね。
なんかその気持ちってわからなくもないのが、
例えば自分の知り合いに警察官がいるんだよ、ラッキーみたいな感覚ってどこかしらあるじゃないですか。
そういうのとちょっと近いですよね。
だからその地方の共同体の中に行くと、
生命保険会社の営業である前に2県先の隣のおじちゃんおばちゃんであって、
その人がたまたま生命保険にも勤めているっていう関係になると、
そこの論理がどっちが勝つかっていうところで強弱が変わってくるっていう。
不正をする人が生きてるのは組織っていうのはあくまで組織の一員でしかなくて、
彼らはでも家族がいて、友人がいてっていう感じで、
つながりっていうのは地域に置いてるところがやっぱり違うと思うんですよね。
そうなんですよね。
だからその地域の人を助け合うようなそのつながりが、要は不正のルートになってしまう。
この怖さっていうか、奥深さですよね。
奥深さ。
生計の件が、キサンの女の話が面白いのは、
この不正が明るみになって24人が被害になったっていうことが明るみになりながらも、
でも地元では支持されてる、尊敬されてるっていう。
全てが発覚してもみんながみんな恨んでるわけでもないっていうのが如実にわかるじゃないですか。
なるほどね。
生計さんと長く付き合っていた知人の方は、
生計さんっていうのがずっとトップであり続けたいと願っている人だったんだというふうに振り返ってるんですよね。
被害にあった形によると、顧客への贈り物ってむしろ回数が増えてくるじゃないですか。
僕ここに生計さんの承認欲求みたいなものも感じるわけですよね。
10歳過ぎても生計さん第一線に立ち続けて、
このトップの座を下りるとか、後更新に受け渡していくとか、
そういう選択肢ってなかったんですかね。
それでも実際にはやっていまして、
彼女の娘も第一生命のセルフなんですよね。
そういう行き渡しというのは少しずつやっていたというか。
なるほどね。
でもやりつつも、自分は自分として輝いていきたい。
そういう思いっていうのも、89歳になる直前までずっと持ち続けてたってことですよね。
本に出てくる人脈を動かして大きな契約を取るっていう話。
僕は昭和の武勇伝のように読んだんですよね。
そういう武勇伝とか実績みたいなのが、
今回周りの人が異変を確かめようとする判断に、
どういうふうに影響したっていうふうに見てますか。
ある種の巨像を作っていくことに役立ったのかなと思ってますね。
将棋の場合は、単に武勇伝だけじゃなくて、
実績、会社からの特別な肩書きがあったもんですが、
実はあったんですよね。
だから、昔の武勇伝とか神話的なお話って、なかなか厄介ですよね。
何かをくむらせますよね。
なるほどね。
じゃあ最後に一つだけ質問させてください。
もし将棋さんに今一つだけ質問ができるよということがあったとしたら、
久保さん何を聞きますか。
そうですね。将棋文子はこの問題が発覚したときに、
娘が内部告発したってされてるんですね。
それを知ったときの彼女の気持ちを聞きたいと思います。
なるほどね。
保険の詐欺事件と言いますと、
企業のガバナンスの問題として片付けられることが多いと思うんですね。
でも会社の中だけを見ていると見落としてしまうというのも一方であって、
この本はそういう地域という共同体の力学だったりとか、
あとは一緒に動いていた銀行の思惑みたいな、
そういうところも重ね合わせて描いていると。
そういう風に重ねてみることで、
初めて人間の複雑さだったりとか、
社会の複雑さみたいなのが起こりになってくるような一冊じゃないかなと思います。
キサルの女、高段車から出ている一冊です。
ぜひ手に取ってみてください。
今日の収録は埼玉県の某市よりお送りいたしました。
久保さんどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
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