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”十年に一度の傑作”は、一気読みを許さない。文章を味わう喜びに満ちていた
2026-08-12 16:41

”十年に一度の傑作”は、一気読みを許さない。文章を味わう喜びに満ちていた

今夜は旅のお供におすすめの、とっておきの文庫本を勝手に貸出いたします。

ご紹介するのは、クリストフェル・カールソンさん著、棚橋志行さん訳の『暗殺の冬』(文春文庫)。 スウェーデンの田舎町を舞台に、30年前の未解決事件と家族の秘密を追う重厚な北欧ミステリーです。

「北欧の小説は難解そう」「翻訳長編は敷居が高い……」という方にこそ手に取っていただきたい3つの理由や、犯罪学者でもある著者カールソンさんが描く「犯罪の真相究明のあとに続く人生と感情的な真実」についてお話しします。

<今夜の勝手に貸出カード>

・クリストフェル・カールソンさん著、棚橋志行さん訳『暗殺の冬』(文春文庫) https://amzn.to/4fR3zpy 


★文藝春秋さんのサイト(池上冬樹さんによるあとがき掲載ページ)はこちら https://books.bunshun.jp/articles/-/10934


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サマリー

今回の「真夜中の読書会」では、クリストフェル・カールソン著、棚橋志行訳の北欧ミステリー『暗殺の冬』が紹介されます。30年前の未解決事件と家族の秘密を追うこの作品は、犯罪学者でもある著者が描く人間心理の深淵と、事件の真相究明の後に続く人生の感情的な真実が魅力です。登場人物が整理され、時系列で丁寧に描かれ、季節や天候と重ねた繊細な心理描写が、読者に文章を味わう喜びを与えます。速読を許さない、じっくりと味わうべき一冊として推薦されています。

番組紹介と推薦図書『暗殺の冬』
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、第256夜を迎えました。
今夜はお便りのご紹介はちょっとお休みをしまして、
最近読んだ本の中からおすすめの一冊を、勝手に皆さんに貸し出したいと思います。
今夜の勝手に貸し出しカードは、
クリストフェル・カールソンさん著、
棚橋志向さん役の暗殺の冬という本にしました。
はい、私先週ちょっと夏休みをいただいてまして、
旅行に持って行って読んだんです。
文庫本なので、遠出のお供りもおすすめですし、
ぜひじっくり時間のある時に読んでいただきたいなと思って、
今日ご紹介します。
この小説はジャンルで言うと、北欧ミステリー、北欧のワールですね。
スウェーデンの田舎町を舞台に、
30年前の未解決事件と家族の秘密を追う、
クライムノベルという感じでしょうか。
この番組でも何回かお話ししたかもしれないんですけど、
私、北欧ミステリーがすごく好きなんですね。
この小説は北欧ミステリーを読んだことがない、
あるいはちょっと難解そうで気が進まないなっていう方にこそ、
ぜひ一冊目として読んでみてほしいなと思いました。
その一冊目としてもおすすめの理由は、
この後ちょっとゆっくりお話ししたいと思います。
推薦の理由と書評
まず何でこれを私が買ったのかと言いますと、
帯に10年に一度の傑作とありまして、
文芸評論家の池上ふゆきさんがですね、
すごく絶賛されてたのをネットで読んだんですね。
文春文庫版の後書きの文章が、
そのまま文春さんのサイトに掲載されていて、
それを読んだんですよ。
ちょっと後で読めるように概要欄にリンクを貼っておきますね。
よかったら読んでみてください。
それを読んで、わーこれは面白そうだと思って、
すぐにポチりまして、
まあでもちょっとじっくり読みたいタイプだなと思ったんで、
旅行とかまでちょっと撮っといたっていう、
波待ち本状態だった本です。
その池上さんのやっぱり書評が素晴らしくて、
せっかくなんでちょっと読みますね。
自読されればわかるが、カールソンは将来の巨匠クラスの文体とブロッドとキャラクターを持つ、
一行一行文章を味わう喜びがある。
主人公の行動と思考に思いを重ね、
自分の人生を振り返らせる深深とした人生感傷がある。
文学性のみならずミステリーとしても面白く、
読み始めたらやめられなくなる。
事件の進展に興奮しながらも決して速読を許さない。
細部が濃密で読み応えがあり、
注意深くゆっくりと読むことになるからだ。
とあります。
ほーって感じで、文芸評論家の方っていう、
人の評論の仕方はさすがだなと思ったんです。
それはどれどれで読んでみようってなりまして、
ゆっくりと味わってみたというところです。
あらすじと物語の構成
さて、ちょっと簡単にあらすじをご紹介したいと思いますね。
ネタバレにならない程度に。
1986年のストックホルムで、
スウェーデンのパルメ首相が暗殺されたという事件がありまして、
それと同じ夜に田舎町のハッランドという都市の、
地元の警察に女をレイプした、またやるよっていうような電話がかかってくるんですね。
その地元警察の警官のスベン刑事は、
現場に急行して泥道に車を発見し、
そこに女性も発見するんですけれども、
女性は精算な状態で、残念ながら息を引き取ってしまいます。
そしてさらに次にという犠牲者が出てしまいまして、
しかし決定的な証拠がつかめないまま、犯人を特定できず、捜査は打ち切られてしまうんですね。
時は流れて30年ほど後になり、
スベン刑事の息子が、ビドルという息子も警官になって、
その未解決事件と向き合うことになるというお話です。
簡単に言うと、スウェーデンの小さな町で起こった連続事件を30年以上かけて、
お父さんと息子と2代に渡って真相を追うというミステリーなんですけど、
ただの謎解きで終わらせない、ちょっとトリッキーな構成になっています。
すごくストレートにこの小説をプロットというか、ストーリーだけを描くならば、
父のパートがあり、息子のパートがありという二部構成になっていて、
息子のパートで事件を解決する、真相に突き止めるという風な筋書きにすれば良いところを、
このお父さんと息子の2人を俯瞰するこの町で起こった出来事を小説にしようとする作家という第三者の語り手がいまして、
その第三者を置いているというところがちょっとトリッキーなんですけれども、
この作家を視点にしている意味は、私の解釈では、
このお父さんと息子の2人の他にもう1人のキーマンとして女性の警官がいるんですね。
この彼女に話を聞くという、この作家が彼女にインタビューをするということで、
自然に成立させているという、そこが見事だなという風に思いました。
この物語のポイントは、最初の事件が起こったのと同じ日に、同じ夜にスウェーデンの国を揺るがすような大事件、
事件の背景と登場人物
首相が反殺されるということが起こっていて、歴史的な事件が起こっていて、
警察も報道機関もそっちにかかりきりになってしまって、
そのせいで小さな町の事件に対して初動が雑になったといいますか、
ちょっとそこに集中して労力をかけられていなかったということがあったわけなんですよ。
だから事件も未解決になってしまったし、救えたんじゃないか、
その後さらに2人3人と犠牲者が出ずに特定できたんじゃないか、救えたんじゃないかという異言を残す形となり、
さらに小さな町ゆえに重い十字架を引きずったスベン警官は、
その罪悪感が自分の体を蝕んでいくんですね。
すごい捜査途中から体調が悪そうなんですけど、ずっと咳き込んでて、
その描写も結構胸にグッと来るものがありました。
この小説をぜひ北方ミステリーファンじゃない方にも読んでみてほしいと思った理由を3つお伝えしたいと思います。
まず1つ目は、登場人物がとてもシンプルなことです。
北方ミステリーでハードルが高いなって私が一番思うのは、
名前がとても難しくて、かつあまり聞きなじみの、
日本人にとってあまり聞きなじみのない名前が多いので、
長くて、かつ名前を見ただけでは女性なのか男性なのか想像もつかなかったりして、
そういうところがちょっと読みづらいなと思ってしまうポイントなんですけれども、
この小説はですね、結構出てくる人がすっきりと限られてまして、
とにかく覚えておいてほしいのは、父スベンと息子ビドル、
それからもう一人の女性警官のエビル、エビーか、エビーっていう人がいて、
作家である私っていうその4つの視点が、4人の視点が終えれば、
あとは被害者とかその家族とか、しっかり名前が覚えきれてなくても大丈夫ですっていうことと、
ものすごい本格的だなって思ったのが、各章の始まりに主な登場人物一覧っていうのが毎回ついていまして、
だから途中で中断しても、誰が誰だったっけってなんなくて済むっていうのがすごいですね。
私はこの主な登場人物一覧を見て、ここに書いてある誰々の妻とか、
誰々の元夫とか、何々の近くに住む女性とかっていうふうに書かれている説明を見ながら、
その書きぶりとか順番から犯人を推測するっていうのが好きなんですけども、
この章ごとについている主な登場人物は、書かれている章と書かれていない章があったりして、
出てきたり出てこなかったりするということも含めて、ちょっといろいろしさに富んでいるなっていう想像をかきたてる、
この人が犯人なんじゃないかっていうのをかきたてるという意味で、なかなか新しい試みだなというふうに思いました。
物語の描写と読書体験
さてさて2つ目はですね、物語は時系列に描かれていて、丁寧に冒頭に1900何年って書かれていて、
時間がわかりやすくなっています。こういう過去の事件を追う、何十年前の未解決事件を追うっていうタイプの小説って少なくないと思うんですけど、
今と昔が行ったり来たりするのが多い気がします。でもこれはしっかり時系列で進んでいくので、とてもわかりやすいですし、
30年前は父スベン警官の視点、30年後は息子のビドル警官の視点、そして今現在作家の私っていうふうに、
和写もしっかりわかれているので、ごちゃにならずに進んでいきます。3つ目は季節とか天候の描写と重ねた繊細な心理描写ですかね、文章が本当にとても綺麗なんですね。
ちょっと読みますね。
3月とともに春が訪れ、太陽がマルベックの冷たい大地を温めた。
というように、色が変わっていく、特にここはとても寒い時間が長いからだと思うんですけども、ちょっと温かさが訪れるとかをすごく丁寧に描いていたりしますね。
太陽が冷たい大地を温めたっていうのもいいなと思いましたし、
9月が来た。木の葉が黄色くなり始めた。この変化には時を超越した何かがあった。毎年早晩こうなることはわかっている。そこに心を癒された。
今にも泣き出しそうな空とかっていう風に、その季節だったり天候の移り変わりっていうのが登場人物の描写とリンクをしていて、とても余韻を残す描き方になってますね。
私は付箋派なので本に線は引かないんですけど、線を引きたくなるような描写がすごくたくさんたくさんある本でした。
噛むたびに味わいがあるっていう感じですかね。
10年に一度の傑作っていう帯を見たとき、私が想像したのは息もつかせないスリリングな展開。一気読み間違いなしみたいなものだったんですけれども、
池上さんが速読を許さないと表現した通り、じっくりゆっくり味わいながら読むのが正解な本なんでしょうね。
ストーリーとか犯人探し自体に重きがあるというよりも、心理描写を味わうっていうところにこの本の醍醐味があるなと思いました。
作品のテーマと著者について
さて、そろそろ紙フレーズを読みたいと思います。
嘘には嘘の時がある。真実にも真実の時がなくてはいけない。
とあります。
多くの小説とかニュース記事もそうですかね。事件の解決とか犯人の特定、あるいは裁判の判決をもって結論という風になりますけれども、
実際にはそうした一定の結論が出た後にもそれぞれの生活が続いていて、それぞれの人生があるわけですよね。
著者のカールソンさんという方は犯罪学を学ばれていて、ストックホルムの大学で犯罪学の準教授も勤めているようなんですけれども、
彼は実際の事件は小説のようにすっきりと解決することは少なくて、失敗とか見逃しとか、人間のエゴに左右されるんだという風なことを語っていました。
フィクション独特の劇的な展開、劇的な結末、大どんでん返しとかっていう展開よりも、
現実の操作の人間のエゴとか泥臭さとか不完全さとか曖昧さを描くっていうことにこだわっているっていうのはそういうとこなのかなと思いましたね。
その時はその時の真実と信じていたことがあって、その人にとって真実と思っていたことがあって、それは嘘をついてたわけじゃないっていう。
でも今となってみれば、そうじゃなかったってことは誰しもあると思うんですよね。
物理的な事実と心情的な真実は違うと言いますか。
カールソンさんは1986年生まれとあるので、40歳か39歳ですかね。
これを書かれたのは30代後半、中盤らしいんですけれども。
なので10年に一度の傑作と言わず、この先も次々どんどん傑作を生み出していってほしいなと思いました。
暗殺の冬、ぜひ読んでみてください。
エンディング
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
さてそろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、皆さんからのリクエストをもとにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストはインスタグラムのバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。
16:41

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