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真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜にホッとできて、明日が楽しみになる、
をテーマに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
こんばんは、第162話を迎えました。
先日、ベンネームNISさんからのリクエストで、
おすすめの翻訳小説を教えてくださいといただいて、
ドイツの作家さん、シャル・ロッテ・リンクのシリーズをご紹介しました。
年末に、北欧ミステリーの巨匠、アーナル・デュル・インドリダソンの
犯罪捜査官、エーレン・デュルの人気シリーズを2冊続けて読んだんですよ。
湖の男と玄関の街っていう本なんですけど、
そしたら、やっぱり北欧ミステリーってすごい好きだなって思い出しまして、
こっちを紹介すればよかったかなと思い返したりして、
なので今日はちょっと追加で、おすすめの翻訳ものはのリクエストへのお答えとして、
北欧ミステリーの巨匠、アーナル・デュル・インドリダソンの魅力と、
北欧ミステリーの魅力についてたっぷりと語りたいと思います。
まず、私が最初に北欧ミステリーにはまったきっかけはですね、
刑事マルティンベックシリーズなんですね。
これは1960年代から70年代のスウェーデンの警察小説です。
警察小説の原型を作ったとも言われています。
役者の柳澤由美子さんのあとがきで知ったんですが、
1960年代までこういった犯人探しをメインとした小説は探偵小説と呼ばれてたんですね。
エドガー・ランポーとかコナンドイル、アガサ・クリスティとかも、
そういえば犯人を見つける主人公は名探偵でしたもんね。
このマルティンベックシリーズは警察の捜索官を主人公にしたことと、
警察内部の組織の話を描きながら、個性的な仲間たちが登場する群蔵劇でもあって、
そのあたりが画期的だったのかもしれないですね。
これこそよくある設定ですが、ベックは天才タイプじゃなくて、
家庭にもいろいろあったり、悩み多き中年って感じで、
その仲間たちと地道な操作で犯人に迫っていくっていう感じなんですよ。
50年前とは思えない、今読んでも全然古臭さを感じさせる図。
すごく面白いので、ぜひ皆さんもよかったら読んでみてください。
このマルティンベックシリーズにはまったのは、
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柳澤由美子さんの役質が素晴らしいっていうところが大きくて、
柳澤さんの役ならきっと読めるに違いないと次に手を伸ばしたのが、
アーナル・デュル・インドリー・ダソンさんの作品だったわけなんです。
最初に読んだのは湿地だったと思います。
そもそも北欧ミステリーっていうのは、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、
デンマーク、アイスランドの5カ国のミステリーのことを指して言うんですけど、
その国の元となっているのがガラスの鍵賞っていう、
5カ国で最も優れた推理小説に贈られる文学賞なんですね。
別名スカンジナビア推理作家協会賞だったかな。
ガラスの仮面じゃないですよ。ガラスの鍵賞です。
このガラスの鍵賞を私はとても信用しております。
北欧ミステリー一番有名なところだと、ドラゴンタトゥーの女とかでしょうか、ミレニアムシリーズですね。
あとは特装部旧シリーズとかも人気がありますけれども、
それらを受賞しているのがガラスの鍵賞で、
ガラスの鍵賞を唯一2回受賞っていう偉業を成し遂げているのが、
アーナル・デュル・インド・リダソンさんなんですね。
シャル・ロッテリンクのこと、役者の方がドイツのミヤベ・ミウキって言ったっていう話をしましたけれども、
アーナル・デュル・インド・リダソンさんはアイスランドの作家さんなんですけど、
アイスランドの松本成長って感じです、私の中で。
松本成長っぽいんですよ、北欧ミステリーって。
だから今日はアーナル・デュル・インド・リダソンが松本成長っぽいと思う理由からお話ししたいと思います。
アーナル・デュルと松本成長の私なりに思う共通点は3つあります。
まずアーナル・デュルはアイスランドの出身で、
このエーレン・デュル捜査官シリーズっていう作品は、
レイ・キャベルというアイスランドの港町を舞台にしているんですね。
この北欧ミステリーの楽しみの一つとして、
私はスマホを片手に出てくる地名をググってみる、
グーグルで検索いちいちしてみるんですけど、
そうすると街並みの写真が大体出てきてます。
すごい可愛いんですよ、なんかサンタクロースの絵本に出てくるような街並みがいろいろ出てきて、
あとはすごい寒そうっていう写真が出てきます。
その旅気分、いろんな行ったことない街を見ながら読むのも一興です。
それで戻って、共通点の一つ目は、
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アイスランドという国の国自体が日本と似たところがありまして、
アイスランドって人口が大体35万人って書いてあったかな、ちょっととかで、
国土は北海道より少し大きいくらいの、
割と小さな島国なんですよね。
北海で言うとイギリスより上だからだいぶ寒そうですけれども、
そんな割と小さな島国っていうところも日本と似ていますし、
辿っていったらみんな知り合いかもみたいな、
小さなコミュニティの中で事件が起こるから怖いわけですよ。
ちょっと敗多的な一面もあると言いますか。
二つ目の共通点は、社会的弱者の置かれた痛み、
逃げ場の無さを描くっていう点ですね。
限界の街っていう小説は、
タイ人の母親を持つ少年が殺される事件なんですけど、
移民問題とか人種差別が背景にあるのかないのかっていうのが、
事件の解決のテーマになっています。
北欧というと福祉国家のイメージがありますし、
人道的にも移民を受け入れていたり、
平和的に軍隊を持たないとかね。
実際アイスランドもそうみたいなんですけど、
国の方針としてはそうであっても、
一人一人の国民、昔からずっと先祖代々住んでいる人たちには、
心の奥底では抵抗感があったりとか、
受け入れがたい部分とかってきっとあって、
そういう人間の持つどうしようもない悪意とか、
抑圧された支配欲、差別、軽蔑する気持ちとか、
そういった社会の病理を事件解決のミステリーの要素を交えながら、
静かに描いていくっていうのが、
アーナル・デュル・インド・リダソンの特徴で、
そこはまさに松本成長的と私が思う心髄ポイントなんです。
もう一つアーナル・デュルの作品で、
緑衣の女では貧困家庭の家庭内暴力、DVとかレイプの話が出てきて、
その描写も含めてかなりしんどい作品なんですけれども、
まよどくリスナーの皆さんにはぜひ読んでいただきたい、
そして今こそ読んでいただきたいテーマかなと思ったりしました。
広派なタッチで貧困家庭とか女性、社会的弱者の置かれた痛み、
逃げ場の無さを描くっていうのも松本成長的だなと私は思いますね。
最後は警察小説としての面白さなんですね。
マルティンベックにも通じるところがありますけれども、
チームで事件を解決していくっていうところと、
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主人公が天才じゃない、
主人公のエーレンドゥル捜査官は冴えない中年っていう感じなんですけど、
娘はドラッグ中毒で、息子もアルコールの問題を抱えているっぽいですし、
捜査仲間たちもそれぞれに家庭とかパートナーとの問題を抱えているんですよね。
犯罪に対して警察組織の難しさというか、
組織で働く人という一面もありますし、
そういう意味では松本成長に限らず、
例えば横山秀夫さんとか、
佐々木嬢さん、
本田哲也さんとか、
京城の直岡裕樹さん、
しずくいゆうすけさんとか、
あとゆずきゆう子さんとかね、
警察小説がお好きな方にはすごくお勧めですね。
今日はちょっとバラバラと紹介してしまったので、
タイトルを整理します。
アーナルジュルのエーレンディル捜査官シリーズは、
全部で7作品、翻訳出版されています。
1つ目が私も最初に読んだ「湿地」で、
これがガラスの鍵受賞作品です。
2つ目が「緑衣の女」で、
これもガラスの鍵受賞作ですね。
貧困家庭のDVを扱った作品です。
シリーズ第3弾が「声」という作品なんですけど、
これはホテルでサンタクロースの格好をした男が
めった刺しにされているという事件から始まるお話で、
声が私は一番好きかな。
4つ目が「湖の男」。
これは旧ソ連東ドイツという社会主義と資本主義の戦い、
時代に翻弄された一人の男の悲しい過去をめぐる話です。
これも松本成長館がある作品だなと思いました。
5つ目が「玄関の街」です。
これがタイ出身の母親を持つ男の子が殺されてしまうという話ですね。
6つ目が「サイン」。
自殺した女性の影に霊媒師がいるようでというお話で、
ちょっとオカルトチックというか怖さのあるお話です。
で、最新作、7作目が「悪い男」。
これは最近刊行されたばかりで1月19日刊行となっていますから、
私もまだ実は読んでいないんですけれども、
ハンモトの東京草原社さんの紹介文によると、
ハモドで喉を切り裂かれた若い男の死体が発見された。
男はレイプドラッグと言われる薬を所持しており、
場合はレストランで出会った女性に薬を混入した飲み物を飲ませて
意識を失わせレイプしていた常習犯らしい被害者による復讐家とあります。
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また今読むべきテーマっぽいなぁと思ってアマゾンで予約していたんですけど、
今日時点でまだちょっと届いてないので楽しみにしています。
さて今日はアナルドゥルの玄関の街から紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
あなたたちはこのことが忘れられる消えてしまうことを望んだんじゃありませんか。
自分たちには関係ないこととなることを
あなたたちは人々の持っている軽蔑や無関心の力を借りて
この恐ろしい殺人事件の上にベールをかけようとした
そういうことではないですか。
とあります。
これはエーレンデュル捜査官が犯罪を隠そうとした人に向かって言ったセリフなんですね。
誰に言ったかを言ってしまうとネタバレになってしまうので伏せておきますけれども
誰かをかばうためになかったことにしようとしてたことを
主人公のエーレンデュル捜査官が指摘する場面なんですよ。
このエーレンデュル捜査官は割と大人しい人というか
冴えない中年という言い方をしましたが
キレッキレっていうタイプじゃないんですね。
だけど時々こうして激しい怒りというか
フツフツとした怒りみたいなので
犯人を叱りつけるという瞬間があって
そこがすごく好きですね。
古畑忍三郎とか刑事庫論亡とかでもあるじゃないですか
普段の捜査の途中はのらりくらりというか
ちょっとボンクラっぽく犯人には見せていたのに
常よる最終的な場面では
あなたのしたことは間違っている、許されないということを
ビシッて言う時があって
あれいいですよね。すごくグッときます。
そんなところもあり、語る質があるので
こういう冬の寒い時期に
ぜひ読んでいただきたいなと思います。
アーナルドゥル・インドリダソンさんは
毎年コンスタントに作品を発表されているタイプの作家さんみたいで
まだ日本語訳に訳出されていない作品が
10作品以上あるらしいので
すごく楽しみです。
さて、お時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では
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また来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
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おやすみー。