すぐに答えを出さない勇気 ~1枚の折り紙と『保育の余白』~ /保育のとなり
2026-10-30 17:49

すぐに答えを出さない勇気 ~1枚の折り紙と『保育の余白』~ /保育のとなり

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こんばんは。すぐに答えを出さない勇気 ~1一枚の折り紙と保育の余白~~ス 保育のとなりです。
この時間は保育の出来事を綺麗な結末に並べ直すための時間ではありません。
子どもと過ごす中で、大人の側に残った小さなひっかかりや言葉になりきらない迷いに少しだけ座ってみる時間です。
今日お話しするのは、ある保育士の創作上の記録です。
ここに出てくる子どもも、大人も、場所も、実在の誰かではありません。
けれどもし、似たような夕方や、似たような迷いを知っている方がいたら、
その記憶を無理に結論へ運ばず、隣に置くように聞いていただけたらと思います。
語り手の私は、仮に私とだけ名乗ります。
1日の保育が終わり、子どもたちが笑顔で帰っていた後の静かな保育室、
散らばった資材を片付けたり、日誌に向かったりしているとき、
あるいは帰り道の電車で窓の外を眺めているとき、
ふとある子どもの立ち姿や消化しきれなかった涙が、
胸の奥にポツンと残り続けていること、ありませんか?
今日のあの対応、あれでよかったんだろうか?
もっと早く気持ちを切り替えさせてあげるべきだったんだろうか?
大きなトラブルもなく、無事に講演を完了できたはずなのに、
なぜか自分自身の手元には、すっきりと割り切れない小さなざらつきや問いだけが残っている。
この番組では、「こうすれば一瞬で切り替えられます。」というノウハウや、
模範回答をお話しすることはありません。
また、「もっと頑張ろう。」とか、
子どもを助けようといった一方向的な励ましをお届けするわけでもありません。
一日の終わりに残ったその小さな問いをうやむやにせず、
あの子があそこまでこだわっていたものは一体何だったんだろう?
私の焦りはどこから来たんだろう?と静かに抱え直すこと、
その迷いや揺れこそが一人の子どもをどこまでも大切に見ようとする
保育の探求の始まりなのだと私は思っています。
すぐに解決しない感情を子どもと一緒に抱えながら、
私たちが保育を続けていくために大切にしたい
心の余白について皆さんと一緒に考えていけたら嬉しいです。
今日皆さんにお話ししたいのは、ある日の午後の保育で起きた出来事と、
その日の夜、私の胸の中にずっと残り続けた一つの問いについてです。
その日の午後の自由遊びの時間、子どもたちからの何か作りたいというリクエストを受けて、
03:00
廃材を使った制作遊びを行うことになりました。
空き箱やトイレットペーパーの芯、プラスチックのカップなどをテーブルいっぱいに広げると、
子どもたちは目を輝かせて、自分の表現したい世界に向かって手を伸ばし始めました。
クラスの中に手先がとても器用で、制作遊びが大好きな男の子がいました。
仮にE君と呼びますね。
E君は、自分の作る作品に対して非常に強いこだわりを持っていて、
頭の中に描いたイメージを形にするために、
廃材選びから道具の使い方まで妥協せずにじっくりと取り組む子でした。
その日もE君はある作品を作ろうと廃材を探していたのですが、
どうしても使いたい一つしかない特定の廃材パーツがありました。
しかし時を同じくして別のお友達もそのパーツを手に取ろうとしていたのです。
僕が先に使おうと思ってた。私もこれで作るの。
お互いに譲れない思いがあり、強い主張が見つかり合いました。
私は二人の間にしゃがみ込み、どうしようかと話し合いを重ねました。
互いのやりたいことを聞き合った末、
二人で納得してジャンケンで決めようということになったのです。
ルールを守り公平にジャンケンをした結果、E君は負けてしまいました。
その廃材パーツはお友達の手に渡り、
お友達は嬉しそうに自分の席へ持っていきました。
ジャンケンというルールには納得して応じたものの、
頭の中に描いていた完璧なイメージが崩れてしまったE君の胸の中には、
悔しさと失意があふれ出しました。
その場に座り込み、ぼろぼろと大粒の涙をこぼし始めたのです。
代わりの廃材を提案してみたり、別の形にしてみると声をかけたりしてみましたが、
E君の耳には届きません。
彼にとってそのパーツでなければならなかった。
彼の妥協できないこだわりとプライドが涙となってあふれ出ていたのです。
そのまま気持ちを切り替えられないまま、
無情にも自由遊びの時間が終了し、公営の準備をする時間になってしまいました。
周りの子どもたちが片付けを始め、
カバンを背負う中でE君はまだ涙をしゃくりあげていました。
このままお迎えの時間を迎えてしまっていいんだろうか。
少しでも気分転換をして笑顔で返してあげたい。
そう焦った私はE君の手を優しく引き、
気分転換になればと園内を静かに散歩してみることにしました。
06:01
廊下を歩き金魚のいる水槽を見たり、外の景色を眺めたり、
でもE君の表情は固いまま、涙も引きませんでした。
大人の用意した安易な気分転換では、
彼の心にぽっかり空いた穴は埋まらなかったんです。
散歩の途中、誰もいない静かな米室の前に差し掛かった時でした。
E君がピタッと足を止め、
部屋の机の上に置いてあった折り紙のケースをじっと見つめました。
私は静かに部屋に入り、箱から折り紙を一枚取り出してE君に手渡しました。
E君は何も言わず床にしゃがみ込むと、
涙であふれた手でその一枚の折り紙を折り始めました。
慎重に端と端を合わせ、ぎゅっとアイロンをかけるように指先で折っていく。
角を合わせ静かに折り進め、ほんの数分で一つの兜を折り上げました。
完成した折り紙の兜を手のひらに乗せたE君はふっと深く息を吐きました。
そして私の方を見上げて静かにこう言ったんです。
「できた。おうち帰る。」
さっきまであんなに彼を縛りつけていた強い涙が嘘のように消え、
その顔にはどこかすっきりとした区切りのついた表情が浮かんでいました。
その後、荷物をまとめてお迎えに来た保護者の肩のもとへ、
E君は自分の足で穏やかに帰っていきました。
その日の片付けを終え、大金のタイムカードを押した帰り道、
私は暗くなり始めた街を歩きながら胸に残った小さなざらつきと向き合っていました。
私はあの時何に焦っていたんだろう。
E君は最後のあの一枚の折り紙で一体何を受け取ったんだろう。
自分の内側を静かに紐解いていきました。
E君がじゃんけんに負けて泣き出した時、私はかわいそうにと思いながらも、
同時に心の中で焦っていました。
もうすぐ片付けの時間なのに、
公演準備に間に合わない、不機嫌なままお迎えに引き渡したくない。
私は一見、E君の気持ちに寄り添って散歩に連れ出したり、
声をかけたりしているように見えて、
実はトラブルを早くきれいに解決して、
大人の望ましいスケジュールの中に彼を収めたいという自分の都合に追われていたのではないか。
大人が用意した別の配材や園内の散歩という気晴らしは、
E君にとっては自分が本当に感じていた悔しさや作りたいという情熱を
09:00
大人から早くうやむやにされそうになっている感覚だったのかもしれません。
E君のあのポロポロと流れた涙、
それは単なるわがままでも不機嫌でもありませんでした。
手先が器用で、ものづくりに対して一一倍強い情熱とプライドを持っている彼だからこそ、
イメージ通りに作れなかったことが深刻悔しかった。
自分のこだわりを妥協したくなかった。
あの涙は、彼が自分自身の感性と真剣に向き合っていた、
極めて尊い感情の葛藤だったんです。
それなのに、私はその重みをじっくり味わう間もなく、
早く切り替えさせようと焦ってしまっていた。
散歩の途中で出会った、あの一枚の折り紙。
E君は散歩で気分が変わったから泣き止んだのではありませんでした。
別室の静かな空間で、たった一枚の折り紙に集中し、
自分の手で端と端を合わせ、自分の手で作品を完成させた。
自分の手で何かを完成させることができた。
作れなかったという不全感を自分の手で作り上げる体験によって埋めることができた。
E君は自分の内側にある作りたいという強い衝動を自分の力で消化させ、
自分で自分の感情に区切りをつけたんです。
大人がいくら言葉を並べても、無理やり散歩に連れ出しても、
彼の感情は解決しませんでした。
彼が必要としていたのは大人の手際の良い解決策ではなく、
自分の感情が着地するまで自分のペースで葛藤し、
自分で納得できる道を見つけるための時間と空間の余白だったのだと気づかされました。
子どもの感情を大人の手で無理にコントロールしようとしていたのではないか。
夜の静けさの中で自分の見たての浅さに胸がキューッと痛みました。
でも深呼吸をしながら捉え直したんです。
この失敗感や胸の痛みは、決して自分はダメな保育士だと自分を責めて終わるためのものではない。
目の前のいい君が生きている深い感情の時間をもっと大切に守りたいと
心から願っているからこそ生まれた専門職としての切実な問いなのだと。
胸に残ったあの不全感は私に保育の余白という大切な視点を教えてくれるかけがえのない道しるべに変わっていきました。
あの日の出来事と一日の終わりの深い問い直しを経て
私の中の子どもへの眼差しや立ち振る舞いは少しずつ変化していきました。
12:06
以前の私のように子どもの機嫌を早く直さなければいけない
トラブルを時間内にきれいに解決しなければいけないという焦りを手放せるようになったんです。
子どもが葛藤したり悔しくて泣いていたりするとき
自分の中に湧き上がる早く何とかしてあげなきゃという衝動を一度お腹に収め深く息を吐く
そして、この子は今自分の感情と必死に向き合っている大切な時間を生きているんだなと捉え
その感情が自分自身の力で着地するまで
焦らずに余白を持って佇む練習を重ねるようになりました。
保育の現場では大人の思い通りにスケジュールが進まないことや
子どもの気持ちがすぐに晴れない場面がたくさんあります。
昔の私なら、そうした解決しない時間をどうにかして動かそうとしていたでしょう。
でも、今の私は知っています。
すぐには解決しない感情を抱える時間の中にこそ
子ども自身が自分の力で感情と折り合いをつける力や
心のたふさを育むかけがえのない目が潜んでいることを
そして、私たち保育士の専門生徒は
子どもを器用にコントロールして問題を即座に消し去ることではない。
子どもの抱える悔しさや悲しみを安易に眺めて消そうとしないで
彼らが自らの力で感情の波を乗り越えて着地点を見つけるまで
信じて隣に佇み続けることなのではないのでしょうか。
そのためには私たち大人自身の心に余白が必要なのではないか。
1日の保育が終わった後、今日のあの対応はどうだったかな。
あの子は本当は何を感じていたんだろうと静かに振り返り
自分の見たてを問い直す時間を持つこと。
完璧な対応なんてその場ではできません。
間違えることもあれば焦ってしまうことだってあります。
でもその日の終わりに自分の関わりを疑い
子どもの佇まいの裏にある真意に思いを馳せ
また次の日に新しい眼差しで子どもと出会い直す。
この観察・判断・精査の瞬間を繰り返していくことこそが
保育士としてのプロフェッシャルな成長であり
揺れながらも保育を続けていくための確かな軸なのだと感じています。
何かを作りたいという思いを抱え
15:01
一枚の折り紙で自ら区切りをつけたいいくん。
彼が見せてくれたあのすっきりとした横顔は
今でも私が答えを急ぎそうになった時に
立ち止まらせてくれる大切な原点になっています。
大人が子どもを思い通りに指導するのではない。
子どもの存在や彼らが自ら葛藤を乗り越えていく姿によって
大人側の見方や佇まいが深められていく。
その静かな相互作用の中にいられることの愛おしさを
今の私は静かに感じています。
今日のお話が皆さんの忙しい毎日の隙間に
ほんの少しの静かな風と温かな光を届けることができていたら幸いです。
もし今これをお聞きの保育に関わる方の中で
今日子どもをうまく切り替えさせてあげられなかったな
不機嫌なまま引き渡してしまったかもしれないと
一日の終わりに一人静かに悩んでいる方がいたら
どうぞそのご自分を責めないでくださいね。
あの時あの子は本当はどうしたかったんだろう
私のあの関わりはどうだったのかな
そうやって帰り道や夜の部屋で思い返し
胸を痛めているその姿こそが
あなたが子ども一人一人の心に
どこまでも誠実に向き合うとしている
何よりの証拠ではないでしょうか。
その胸の中にある小さな問いや痛みは
明日あなたがその子をもっと深く
愛おしく見るための優しい光になってくれます。
失敗したなと思う日があっても
うまく言葉をかけられなかった日があっても
それはあなたが目の前の子どもを大切にしたいと
心から願っているプロフェッショナルであることの証です。
今夜はどうぞ頑張った自分の心と体を
今日も一日お疲れ様と温かく撫でてあげてくださいね。
そして明日もまた目の前の子どもたちの声や
言葉にならない思いにそっと耳をすませながら
自分のペースで子どもたちの隣に立たずんでいきましょう。
あなたの今日が静かに満たされ
明日もまた子どもたちとの時間に
優しい光が差し込みますように。
今日の保育の隣はここまでです。
今夜も答えではなく一つの問いをそばに置いて終わります。
17:49

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