カーンの言葉とジョン・ハンコック・センター
Traveling Beyond Covers
案内役のソフィです。
本が言葉以上の世界になり、ページをめくるたび、旅はさらに深まっていきます。
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時刻は朝5時58分を回りました。
おはようございます、ソフィです。
今朝も言葉の向こう側へお供します。
人生とは芸術であり、演劇であり、音楽であり、そして何より、人なのです。
ファズラー・ラーマン・カーン
建物の重さや風の力を受け止める骨組みの設計をする技術者です。
この言葉は、1972年のアメリカの建築専門誌に掲載されました。
1960年代のシカゴ、カーンは建築家のブルース・グラハムとともに、ある高層ビルの設計に取り組んでいました。
それは、ジョン・ハンコックセンターです。
100階建てのビル。
オフィスと住宅を一棟にまとめた理由
当初の計画では、オフィスと住宅を別々の2棟にする予定でした。
けれども、2つの大きな建物を並べると敷地の大半が埋まってしまいます。
互いに日差しを遮り、窓からの視線も気になる。
低い階の住宅には通りの騒音も届きます。
そこでグラハムが提案したのは、2棟を1棟にまとめることでした。
巨大なX字の骨組みと風への対策
下の階にはオフィスを、上の階には住まいを。
この計画を支える仕組みを、カーンが考案したのです。
100階もの高さになると、建物には大きな風の力がかかります。
必要なのは、重さを支えながら、横から吹き付ける風にも耐える骨組みです。
カーンは建物の外側に並ぶ柱を、斜めの鉄骨で大きく結びました。
地上から見上げると、巨大なXの形がいくつも重なって見えます。
柱と鉄骨がつながることで、建物の外側全体が1本の筒のように働く。
風の力をその筒で受け止める仕組みです。
外側の骨組みにその役割を持たせると、内側の柱を減らすことができます。
人が使える空間が広がり、部屋の配置にも自由が生まれました。
大きなXは建物を支えると同時に、このビルを一目で見分けられる特徴にもなりました。
さらにビルの形は、上へ行くほど細くなっています。
広い床が必要なオフィスと、窓の近くに部屋を設けたい住宅。
そこでの過ごし方に合わせて、階ごとの広さが決められたのです。
カーンとグラハムは、骨組みと部屋の配置を一緒に考えていました。
建物の形には、その中で人がどう暮らすかという工夫が重なっています。
人の暮らしを支える建物
当時の記事には、カーンの講演の様子も記されています。
スクリーンには、高層ビルの歴史や新しい構造を説明する写真。
やがて映るのは、混み合った街。
そして、木々や噴水があり、人の集まる広場でした。
カーンは高く建てることで、地上に人が使える場所を残そうとしていました。
技術を語る講演の中にも、街を歩き、そこで過ごす人たちが登場していたのです。
人生とは、芸術であり、演劇であり、音楽であり、そして何より、人なのです。
100階のビルを支える大きなX。
その内側には、働く場所があり、帰ってくる部屋があります。
カーンにとって、建物を支えることは、そこで続く一人一人の日常を支えることだったのかもしれません。