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「怒り」の感情が流行遅れに!? 言葉が消えると感情も消えるのかな
2026-09-16 22:05

「怒り」の感情が流行遅れに!? 言葉が消えると感情も消えるのかな

移動中の読書にぴったりの文庫本をお探しのお便りにおこたえして、今夜の「勝手に貸出カード」は村田沙耶香さんの短編集『清潔な結婚』を選びました。


「怒り」という感情がすっかり時代遅れになった世界を描く「変容」や、クリーン・ブリード(清潔な繁殖)に興味を持つ夫婦の表題作。クスッと笑ってしまう独特な村田ワールドに浸りつつ、世の中からネガティブな言葉が消えていったらどうなるのだろう……と静かに思いを巡らせます。


韓国語の「シウォナダ」など、国によって違う感情を表す言葉の味わい深さや、講談社文庫の創刊55周年企画「STORY IN POCKET」の手軽な魅力もあわせて、夜のすきま時間にお届けします。


<今夜の勝手に貸出カード>

・村田沙耶香さん著『清潔な結婚』(講談社文庫)https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000429255


<配信内で触れた作品・書籍・記事>

・山本文緒さん著『絶対泣かない』(角川文庫) https://amzn.to/4gSDhDM

・カン・バンファさん著『ことばの波間で 日本語と韓国語のあいだ』(平凡社) https://amzn.to/4j43Zur

・講談社文庫55周年企画「STORY IN POCKET」のラインナップ(講談社NEWS) https://news.kodansha.co.jp/books/20151857

・村田沙耶香さんインタビュー「単細胞で、小説のことばかり考えてる。それが幸せ」(文春オンライン) https://bunshun.jp/articles/-/40?page=5


「真夜中の読書会」は毎週水曜日配信です。ぜひ番組のフォローと評価をお願いします。番組へのご感想、メッセージ、リクエストはInstagram の @batayomu からお寄せください。一つ一つ大切に読ませていただいております! 

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サマリー

今回の「真夜中の読書会」では、村田沙耶香さんの短編集『清潔な結婚』を特集。特に表題作に収録されている「変容」では、怒りという感情が時代遅れになった世界を描き、言葉が消えると感情も消えるのかという問いを投げかけます。また、韓国語の「シウォナダ」のように、国によって感情を表す言葉の多様性や、講談社文庫の55周年企画「STORY IN POCKET」の魅力にも触れています。

リスナーからの読書体験と文庫本リクエスト
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは。第260夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。 ペンネームあいこさんから頂きました。
こんにちは。いつもポッドキャスター楽しみにしています。 ありがとうございます。
バタやんさんのおすすめを受けて、移動中に本を読むことを始めました。 まずはご紹介いただいた、絶対泣かないでトライ。
とにかく読みやすいのと、どの編も心揺さぶられるお話で、移動中読書にぴったりでした。
もともと寝る前にベッドで読書が読書時間になっており、新刊好きミーハー気質のため単行本派でしたが、
移動中は絶対に文庫本が適していると感じ、文庫本のおすすめをいくつかお願いしたいです。 と頂きました。
【森】ありがとうございます。 山本文夫さんの絶対泣かないを読んでくださったんですね。嬉しいです。
文庫で何かいくつかというリクエストを頂きまして、山本文夫さんの絶対泣かないをご紹介した回もすごく反響があったんですよね。
たくさん再生されたんです。移動中に読むには文庫であること、それから山本文夫さんの絶対泣かないはかなり短い短編集、ショートショートに近いような短編集になっているので、それも含めて読みやすかったかなと思いました。
村田沙耶香『清潔な結婚』の紹介
さて今日の、今夜の勝手に貸し出しカードは、村田沙耶香さんの清潔な結婚という文庫にしました。
こちらはですね、講談社文庫から出ておりまして、これまでに発表された、すでに発表された短編に加えて、単行本未収録の作品を含む4編が収められた短編集になっています。
村田沙耶香さんの小説の魅力をコンパクトに味わえる、結構薄いんですね、一冊になっています。なんで、村田さんの名前は聞いたことあるけど、気になるけど読んだことないなという人にも、あるいはもうすでにファンで、初期の作品とかを改めて読んでみたいなという人にも、
村田ワールドの原点を知るような、そんな入門編的な一冊になっているかなと思います。
この真夜中の読書会で、村田沙耶香さんの本を紹介するのは、ちょっと初めてかもしれないですね。意外だけど、好きか嫌いかで言うと、すごく好みです。好きなんですけれども、
出産殺人とか生命式とか、最近だと世界99も、
だけどなんかタイミングを逃してしまったというか、リスナーの方のリクエストのお便りに対して貸し出しカードとして出しにくいからかな、なんか紹介できてなくてすみません。そんなわけで、今回はそんな一冊目として紹介するにもちょうどいいかなと思う。
短編集をご紹介したいと思います。兄弟作の清潔な結婚はどんな小説かと言いますと、性別、性愛にとらわれない、言うなれば仲のいい兄弟みたいな感じで、共同生活、結婚生活を送りたいなという希望をしている2人が、婚活サイトで知り合って結婚するんですね。
クリーンブリードという清潔な繁殖でしょうか、性愛を伴わない子作りに興味を持って病品を訪れるという話になってます。これはもうまさに村田さんらしい設定と言いますか、他の作品でも描かれている人工受精が主流になった世界観とかとも通じますし、
何というかこうディストピアのようなユートピアのような機械感を描かれた村田さんの真髄真骨頂が短く凝縮されたような小説だなと思いました。まずそのクリーンブリードっていう名前ネーミングが絶妙ですよね。
なんていうか、不気味さ、無機質さの中にある、ありえそうでありえなそうな感じというか、マーケティングで決めたのかなみたいな気持ち悪い名前が面白いなと思いまして。
私はこの表題作の清潔な血行もすごく面白かったんですけど、今日ちょっとご紹介したいのは一番好きだったのが最初の変容という作品です。この小説は一言で言うと怒りが時代遅れになった世界を描いた作品と言えるでしょうか。
「変容」:怒りが時代遅れになった世界
主人公は真琴という女性で、彼女は病気になった母親と家事ができない父親の世話をするために、2年ぐらい両親の世話をしてたんですけど、ひと段落して40歳で再びファミレスで働く、バイトをすることになるんですね。
そうすると、そのお店にワイルカスハラと呼ばれるような無茶苦茶なイチャモをつけてくるお客さんとか、血行したりとかするお客さんがいるわけですよ。
周りのバイトの子はみんな大学生とか若くて、その子たちはそれに対してすごく穏やかに、うそくさくもなく丁寧に対応してるんです。
それを見て、こんなに理不尽なことをお客さんから言われて、なんでムカつかないんだということを思うわけですね。私も読みながら思いましたけれども、そのバイトのなんとか君に、よくムッとしないね、さっきの人によくムッとしなかったね、とか言ったら、ムッとするって何ですか、みたいなリアクションを取られるんですね。
ムッとするという感情がピンときてないみたいなんですよ、どうやら。別の場面で別のバイトの女の子がまた、おじさんのお客さんに気がきかねえな、みたいなことを言われて、それを見てまた、よくカッとならないねって言ったら、カッとなる、カッとなるはて、みたいな感じで、
なんか昔、本とか教科書で読んだことあります、みたいなリアクション、返しをされるんですよ。だから、ムッとなるとかカットするって言葉が、今の若い子たちは、言葉としては知ってるけど、感情としてはピンときてない、どういう状態ですか、みたいな感じなの。
そんな設定だけですごいな、天才的な小説だなと思ったんですけれども、っていうのは、あの、若い頃に、この誠さんはファミレスでバイトしてたことがあったらしいんですね。でも、この誠さんみたいな介護をするとか、仕事してない時期があって、40代でまた、あの、若い頃にバイトしてたのと同じようなジャンルで、
働くってあり得ることだと思うんですよ。やることはあんまり変わってない、変わり映えはしないけど、周りのバイトの若い世代の子たちと話が合わなかったり、世代ギャップを感じたりするっていうこともあり得ると思うんですよ。
【森】息が漏れるという感じでしょうか。なので、愛子さんもぜひ、ちょっと読む場所には気をつけてくださいね。で、その誠さんは、その続きなんですけれども、誠さんは、あのムカムカする気持ちが、かすはらお客さんに絡まれてムカムカする気持ちが、全然、バイト仲間の若者と共有できなくて通じないから、さらに夫にもわかってもらえなくて、
夫も、なんか最近、俺、怒ってないな、みたいな感じで、怒るってなんだっけ、みたいになってるんですよ。だから同級生にその話をしたら、その同級生の女子が、
それは誠ちゃん、うちのパブリック・ネクスト・スピリット・プライオリティ・ホームパーティーに一度参加してみない?っていう謎の誘いを受けるんですね。パブリック・ネクスト・スピリット・プライオリティ・ホームパーティーってなんだよと思って、またちょっとニヤニヤしちゃって笑ってしまったんですけれども、
パブリック・ネクスト・スピリット・プライオリティ・ホームパーティーに行けば、今や時代遅れとなった古い感情を手放せるよ、みたいなプレゼンテーションを受けて、会費がなんと6万円ぐらいするそうなんですけど、パブリック・ネクスト・スピリット・プライオリティ・ホームパーティーに今行ってみようかな、行ってみたほうがいいかもしれないな、という気持ちになるわけです。
なるかな、どうだろう、私だったらと思ったんですけど、私は多分行っちゃうかもしれないな、1回は6万円の会員になる前に、1回は行ってみたいなと、パブリック・ネクスト・スピリット・プライオリティ・ホームパーティーなんとか、経験してみたいなと思うタイプかもしれません。
マコトさんはどうなるのかっていうのはちょっとね、せっかくなんで、短いから全部話しちゃいかねないから言わないでおきたいと思います。話がちょっとぶっ飛んではいるんですけれども、
今別の本で韓国語の翻訳家のカン・バンファさんの言葉の波までっていうエッセイを読んでるんですね。
で、その中で笑いっていうのは一番難しいという言葉が話が出てきまして、
原文の笑える文章を笑える訳で訳出するっていうのはすごく難しいことなんだって書かれていて、確かにそうなんだろうなと思いました。
そもそも文章で笑わせるって難しいことですよね。
こういう映像とかポッドキャストみたいな発話であれば、まで笑わせるとか、2人複数にいれば、掛け合いのスピード感とかまで笑わせるっていうことができますけれども、文章を読むっていうのはその人次第ですから、テンポとか口調とか間の取り方、語気の強さなんかも。
だから小説で笑わせるってすごいことだなと思って、村田沙耶香さんの小説は全部が全部じゃないかもしれないんですけど、時々こういうちょっとクスッとしちゃう、息を吐いちゃうようなところがあって、それがすごく楽しいですね。
感情と言葉の関係性、韓国語の「シウォナダ」
さて、今日はこの変容という短編の中から紙フレーズを読みたいと思います。
なんかすごくなもむなぁ。高岡くんがつぶやいた。わかる。なもむよね。彼女を見ていると。あんなに怒る人、久しぶりに見たもんなぁ。すごくなもんできたよ。私もすごいなもむ。
と書かれていて、なもむって何なんだよってなるんですけど、なもむってどういう意味っていうのはちょっと言わないでおきますね。私はこの小説を読んで、私なりの解釈でなもむってこういうことかなと思ったんですけど、それが合ってるかわかんないし、読まれた方は読まれた方の数だけなもむの解釈があるかもしれないなぁと思いました。
村田さんの小説は、全体的になもむなぁ、なもむのが多いかもしれない、なんか使ってみたいなという気持ちにさせられる言葉ですね。
少しまた話が飛ぶんですけれども、真面目な話をしますと、名前がついて初めてその感情が認識されて共有されるっていうことってあると思うんですね。
なもむが何かわかんない中で今共有をしていますけれども、名前がついて初めて流行ったり、みんなが使うようになって、こういう感情のことをこう言うんだってなっていく。最初は定義が曖昧だったのが、だんだん凝縮されてピントが合っていくみたいなことはあるなぁと思ってて、最近だと何かなぁ。
私もそんなについていけてないですけど、メロイとか、ちょっとこの意味を私自身正しく認識できているかわかんないんですけれども、さっき超メロついてなかったとか、〇〇さんはメロイよねとか、いやメロくないでしょみたいな議論を若い子がしているのを聞くのは楽しいですね。
ああそうか、あれはメロくてこれはメロくないんだとか、あの人はメロくてこの人はメロくないんだ、単純にかっこいいとかイケメンとかってこととも違うのかとかね、まあそういうこと自体は結構楽しいことですね。
この小説に出てくるバイト君がイラッとするって何すかみたいに、言葉が流行語として消費されて、今は使われない言葉になっているみたいなことになると、今使われている言葉も20年後とかだったら、
YouTubeとかいう懐かしいもので、私1回聞いたことありますみたいな言葉になるのかもしれないですよね、そのメロイとかも、まあそういうふうにこう言葉自体が今は使われないものになって、何かで読んだことあるとか、昔の〇〇で聞いたことあるみたいになって言葉が消えると、同時にその感情、感覚自体も無きものになるっていうのはあり得ることですよね。
あるいは、私は韓国ドラマもすごい好きですし、タイのドラマも最近はハマっててすごい見てるんですけど、韓国にはあって日本語にはない感情を表す言葉とか、タイ語にはあって、タイにはあって日本語にはない感情を表す言葉とかもあるわけですよね。
それが訳されているので何となくは理解できますけれども、本当にその国の方が使っている感覚ではないかもしれないっていう、さっきご紹介した言葉の波間でというふうに出てくるんですが、韓国語には塩なだという言葉があって、涼しいっていう意味で、冷房が効いてて涼しいとかって感覚に使うそうなんですけれども、
一方で暑いお風呂に入る時とか、辛いものを食べた時も塩なだっていうそうなんです。
あとさらになんかずっと不満に思ってた、もやもやしてたことをぶちまけた後も塩なだっていうらしいんですよ。
日本語の感覚だと全然一緒じゃないじゃんみたいな感じがするんですけれども、すっきりしたとか、清々したとか、爽やかだみたいな感覚なんですかね。
なんとなくわからんでもない、冷房が効いてて爽やかだな、涼しいなっていう感じと、辛いものを食べた時と、それかもやもやしてたことをはっきり言ってやったみたいな時は、同じ塩なだという感覚なのか、同じ言い方をするっていうこと自体面白いですよね。
言葉を知ると、ずっともやもやしてたことが解決したとか、ずっともやもやしてたあの人に言い返してやったとかっていう時に、これが塩なだかってなるかもしれないじゃないですか。
で、ああ塩なだしたんだよっていうのを誰かに共有できるってことですよね。
それはなんか、言葉で感情を定義する、感覚を定義するって面白いなと思ったんです。
何が言いたかったかというと、むっとしたとかイラっとしたとかってネガティブな感情なんで、良くないことではあるけど、共有することですごく連帯が生まれる言葉ですよね。
むっとしたよねとか、さっきイラっとしたでしょとか、ほんとイラっとするわーみたいなのって、誰かと悪口で連帯するのと同じで、ネガティブな感情ってその独特な言い回しで共有するってすごく結束を強める、分断も生む一方で結束も強めるものですよね。
怒る、怒るという感情があることを知っているから、怒らせないっていう気遣いも生まれたりするわけで、
というふうに考えると、村田さん流に言うならば清潔な世界じゃないけど、世の中からどんどんネガティブな感情や言葉を排除していこうってすればするほど、世の中は悪くなっていくんじゃないか、人と人の仲は悪くなっていくんじゃないか、なんてことをこの小説を読みながら考えたのでした。
講談社文庫55周年企画「STORY IN POCKET」
さてこの文庫ですね、高段車文庫、創刊55周年記念という企画でして、なんと550円なんですね。
このストーリーインポケットっていう企画ものなんですよ、高段車の人なので今日はすごくストレートな宣伝、珍しくストレートなPRをしてすいませんって感じなんですけど、
読みやすくて気軽に読める短編集を中心に550円というお手軽値段で観光していこう、月に2冊ずつぐらいのペースで観光していこうという企画ものになってまして、高段車文庫を代表するような人気作家の皆さんが短い小説を出していただいているという感じです。
これは8月に出たばっかりなんですが、4月からスタートしていて、1冊目は残念ながら先日亡くなってしまわれた東の慶吾さん、2冊目は赤川二郎さんだったかなと続いて、この後も池井戸純さんとか宮部美雪さんとか辻村美月さんとかが続く予定ということなので、
文庫で何かいくつか紹介してくださいというふうにリクエストいただいたので、よかったらこの高段車文庫55周年記念企画を店頭でチェックしていただけたらと思いました。
愛子さんリクエストありがとうございました。
エンディング
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、皆さんからのお便りをもとにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストメッセージはインスタグラムのバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは、高段車のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
バイバイ。
22:05

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