読書会の始まり
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
今晩は第235夜を迎えました。新年最初の放送です。
今年もどうぞよろしくお願いします。さて最初のお便りをご紹介しましょう。
ペンネームショーと申します。バタやんさん、こんにちは。いつも楽しく拝聴しています。
こんにちは。ありがとうございます。先日第219夜を聞かせていただきました。
配信の中でご自身が読書イップスのような状態に陥っていると話されていましたが、僕も全く同じです。
以前は電車での通勤中や病院での待ち時間など少し空き時間があれば本を読んでいましたが、最近はなかなか集中して読めなくなってしまいました。
読書をするにはカフェに行く意識して時間を作らないといけません。
そんな僕でも気軽にサクッと読めるようなライトな文庫本をリクエストさせていただけたら嬉しいですといただきました。
ありがとうございます。今夜の勝手に貸し出しカード、今年最初の貸し出しカードは山本文夫さんの絶対泣かないという本にしました。
この本はですね、ごくごく短い小説が収められた短編集になっています。
1995年に刊行されて、そして文庫になって、つい昨年末にですね、真相改定版の文庫が出てたんですね。
それで、山本さんの新しい文庫が出てるって思って買って読んでみたんですけど、つい最近文庫になったわけじゃなくて真相改定版だったわけなんですね。
でもなんかこう読み進めていたら、翔さんが書いてらっしゃった通り、
そうだ昔は病院の待ち時間とか、ちょっとした空き時間にこういう文庫を読んでたなっていうのをすごい懐かしく思い出したんですよね。
私中高生の頃かな、歯の矯正をしていたんですけど、
歯医者さんの待合室でよく本を読んでたのかな、なんかすごくその待合室の情景とスリッパーがあって、ちょっとした絵本とかもあるような本棚があって、
歯医者さん独特の匂いとともに記憶がワーッと蘇ってきて、でも実際にこの本を歯医者さんの待合室で読んだわけじゃないんですけど、なんか記憶が重なってくる感じがあって不思議だなと思いました。
それで翔さんにこの本を紹介しようと思ったんです。
どんな本か簡単に解説しますと、この本は15編かな、短いショートショートに近いような小説が並んでまして、体育の先生とか銀行員とか、デパートの店員さんとか秘書とか、いろんな職業についている女性の日常を切り取ったような短編集になってます。
働いていると起こる、お客さんとの葛藤とか、同僚とのちょっとした出来事とか、あるいは昔の友達と会った、少し引っかかっている出来事とか、そういう大事件ということではないんですけれども、主人公の心境が変わる瞬間みたいなのを作り取ったショートショートになっています。
主人公がどれも女性なのでヒロインなんで、女性向けの働く女性向けの小説かなっていう感じもしたんですけれども、翔さんは多分男性かなと思いましたが、あんまりそこを気にせず楽しんでいただけるかなと思ったのと、
まさに意識をしてこれから読むぞ、みたいな気合を入れなくてもサクッと読めるという意味で、私もこういうのが今読みたかったんだって思えた一冊なんです。
ここ最近の真夜読で紹介した本は結構ドシンとした渾身の一冊みたいなのが多かったのでね、浜中さんの家族とか、やぶの中とか、インザメイガーチャーチ、プライズとベストブックで紹介したような本は、どれも渾身の長編って感じだったんで、
読む側、受け止める側にもかなりの気力がいる、体力がいる、気合が必要な本が多かったなと思いまして、それはそれでね、すごい貴重な体験ですけれども、でもなんかこの山本文夫さんの短編集を読んだら、こんなに負担のかからない読書ってあるんだ、そうだった、そうだった、あったあったっていう。
そして昔は、やっぱこういう感じの小説をいろいろ読んでたなって思ったんですよね。
その言ってた中高生の頃は確かにちょうどこの1995年とか90年代前半だったんで、時代的な背景とともに記憶と重なったのかなと思いますけれども、スマホがなかったっていうのは大きかったように思いますね。
ちょっとした時間を潰すのにスマホを眺めるという選択肢がなかった分、文庫本の、しかもこんな感じのショートショート、短い、どこから読んでも、どこでやめてもいいようなのをよく読んでた気がします。
原田宗則さんとか清水義則さんとか、短くてちょっとシュールでオチがあるみたいなのは好きで読んでた感じがしますね。
あとは新幹線に乗る時とかも、新幹線の東京駅で文庫を買おうかなっていうのとかすごい楽しみでしたけど、今はね、ちょっとした電車の中とかはやっぱりスマホを見ちゃいますもんね。
絶対泣かないがどんな話が出てくるかも説明しなくちゃですね。15個ある中で私の特に好きなやつを紹介しますと、表題にもなっている絶対泣かないというタイトルの一編がありまして、これは秘書が主人公で、彼女は女社長に雇われたばかりなんですね。
その女社長の会食のために秘書としてレストランを予約するんですけど、その店がひどかったっていうふうに社長から怒られているっていうところが始まります。
その社長は自分のことを気に入っているんだかいじめているんだかわかんないなって思ってるんだけど、実はその人と自分ヒロインの間には雇われる前に繋がりがあってという話なんですね。
で、後の話もそういうことだったんだっていうちょっとしたサプライズ的なものが用意されているんですけれども、終わり方がなんというか見事なんですが、鮮やかなエンディングっていうほど分かりやすいオチじゃないパターンが多くて、
もっと言うと、私が予想した終わり方とはちょっとずれたところに着地するものが多いんですよ。
着地らしい着地じゃないふって終わるみたいなのもあったりして、そこがなんとも絶妙で、私この文庫を買ったばっかりで読み始めてすぐに、あれこの本読んだことあるかもって思ったんですけど、
よくあるんですけどね、1個も結末が思い出せなかった。
書いてある前の文庫をもしかしたら借りた、図書館とかで借りたとか、単行本の時に借りて読んだとかだったのかなって思ったけど、ちょっと全然どれも結末が思い出せなかったから新鮮な気持ちで読みました。
ひどい、ひどいですね。ひどいけど、読んだ後にズドンってこうならない、そのぐらい負担をかけない読書体験、読語館に、やっぱり山本さんってすごいなぁというのを改めて思いました。
さて今日はこの本の文庫の跡書から紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
読書体験の価値
恋に落ちるように仕事に没頭するのも素敵だけれど、例えば感じの良い友達みたいな仕事、あるいはそんなに仲良くないけれど、一緒に暮らしている家族みたいな仕事、そんな風に自分と仕事に距離を持って接するのもいいなと最近思うようになってきました。とあります。
この本はいわゆるお仕事小説が集まった短編集でもあるんですね。
歴々の女性が恋愛、結婚、プライベートとお仕事、それから時代的なところもありますけれども、あからさまに外見で値踏みをされつつ、しかし自分なりのプライドを持ってどう働いていくか、どう生きていくか、みたいなお話が詰まっています。
だからこういうちょうどお正月明けみたいな仕事もやる気が出ないな、着替えんのめんどくさいなっていうエンジンのかからない感じの時に、ものすごくちょうどいい短編集だなと思って今日ご紹介しました。
いろいろあるけど頑張ろうっていう気になれる小説でもある一方、ちょっとカツを入れられすぎないっていうのもちょうどいい暖かい感じがする一冊です。
今読んだ歌書は山本文夫さんが読者の方に向けて、あなたはあなたの仕事が好きですかと問いかけて、必ずしも好きである必要ないっていうふうに最初に答えながら続く文章なんですね。
読書も恋愛みたいに夢中になって没頭して身も心もしばらく持っていかれるみたいな体験ももちろん最高だけど、ちょっとした時間つぶしに読んで読んだそばから忘れちゃうみたいな感じもいいよね、そういう距離感の付き合いもいいよねって思ったのでした。
ショウさんリクエストありがとうございます。またそういったちょっとした隙間を埋めてくれる本に出会ったらご紹介しますね。
今年もいろんなタイプの重い軽い新しい懐かしい、いろんなジャンルの小説に限らずですけれども、本や漫画を皆さんと共有できたらと思っています。
あ、そう一個お知らせなんですけど、小さいお知らせなんですけど、この番組の各回のサムネイルを、サムネイルってわかりますか?タイトルの横にちょこっと並んでいる実際写真、アイコンのことですけど、その回で紹介した本の表紙の写真があれば、なるべくその本の表紙の写真にして変えてみたんです。
だからちょっと過去回を遡ってみていただくと、どの回でどの本を紹介しているか聞かなくてもわかりやすくなりました。
いつもタイトルに、各回のタイトルに本の著者名を入れていないので、自分でもどの回で誰のどの本を紹介したかわかんなくなってしまうこともありまして、入れてみて、ちょっと皆さんに便利に過去回を遡ってまた聞いていただけたら嬉しいなと思ってます。
ただ、タイトルに本のタイトルとか、著者、作家さんの名前を入れない、あまり入れないっていうのは私なりのこだわりがあって、
読んでない人を知らない人を排除しないようにって思っていて、読んでなくても、その本に興味がなくても、その作家さんの名前を知らなくても聞いていただけたら嬉しいなと思ってますし、読んだことある気になってもらえたらいいなと思ってまして、
でも、皆さんの使いやすいように便利に聞いていただきやすいように、今年もちょこちょこいろんなブラッシュアップをしていきたいなと思っています。ではではまた本年もリクエストや感想のお便り楽しみにお待ちしております。
さて、そろそろお時間になってしまいました。 真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、リスナーの方からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストはインスタグラムのアカウントバタヨムからお寄せください。 お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。 おやすみなさい。おやすみ。