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2025-10-22 23:08

EP226.「こうしたほうが良い」に疲れたら。心にフタをせずに感情労働に向き合うには?

「長年の確執があった老年の母親の介護に、複雑な思いが拭えない」というお便りに。最も近い関係かつ思い通りにならない相手と対峙する負荷について考えます。恩蔵絢子(おんぞうあやこ)さんの『感情労働の未来』をご紹介します。


<今夜の勝手に貸出カード>

・『感情労働の未来〜脳はなぜ他者の”見えない心”を推しはかるのか?』恩蔵絢子


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サマリー

ポッドキャスト第226夜では、感情労働とその影響について語られ、特に介護や家庭内での感情の負担が取り上げられます。また、温蔵綾子の著書『感情労働の未来』が紹介され、感情的知性を高めることの重要性が示されます。このエピソードでは、感情労働と必要な言葉の使い方について議論され、特に介護の経験から学んだことが共有されます。さらに、災害時における会社の対応や感情の重要性が強調され、聞き手には考えさせる内容になっています。

感情労働の影響
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
今晩は第226夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。ペンネームニャロメさんからいただきました。バタやんさんいつも楽しみにしています。
ポッドキャストの影響か紹介された本は図書室で予約がいっぱいです。初めてメッセージ送らせていただきます。といただきました。ありがとうございます。
数年前に早期退職した50代の女性です。80代の母が一人暮らしをしており、私が他の子供より母に近いところに住んでいるため、必然的に支援のキーパーソンになっています。
子供の頃から兄へのエコヒーキがひどくネグレクトのように育ってきた私としては、ものすごく葛藤を抱えながら母と対峙しています。
なるほどそれはそれは大変ですね。ちょっとどこまで開示していいかわからないので、少しディテールを割愛してご紹介しますね。
お母様は節約をすごく生きがいにされてきたようなところがあって、ヘルパーにお金がかかるということを嫌がり、子供が親の面倒を見るべきだ、病院につきそうべきだといった圧をかけてくる。
一方で万引きの毛があったり、お兄様の方にお金を保険金とかを酌明しているようであったり、心穏やかでいられないことがたたられるわけです。
長年の冷えた親子関係のため、真に大切にしたいと思って支援をしているわけではありません。そんな自分も悲しいなと思います。
支援はこれからが本番。親ではなく高齢者の支援と割り切ろうと思うのですが、未熟者の私はモヤモヤしてしまいます。この未熟さを何とかしてくれる本があればご紹介ください。よろしくお願いします。
ありがとうございます。こちらのリクエストはかなり前にいただいていて、でもものすごく心に残っていて、何かご紹介できるといいなぁと思っていました。
やっとこれはという本に出会えたので、今日ご紹介します。
介護に関するモヤモヤについては、やろめさんの他にも何度かお便りいただいたことがありまして、今はもう終わったけれども後悔が残っていますという方もいらっしゃれば、今まさに最中だから全然違う気分転換になるものといったお便りもあって、そういった方にも届くといいなと思って、
今日こちらの本を紹介したいと思います。今夜の勝手に貸し出しカードは温蔵綾子さんの感情労働の未来。脳はなぜ他者の見えない心を押し量るのかという本にしました。
この本はですね、超新刊だと思うんです。多分先週店頭に並んだばかりくらいかなと思うんですけれども、私も書店で手に取ってはじめに立ち読みして、これはと思って買ったんです。ちょっと読みますね。
充実した日常を送り適度に休みも取っているはずなのに疲れが取れない。定期的に会ってランチをする仲間たちがいるのに喜びを感じるというより疲れている。仕事に打ち込みフィットネスに通って体を鍛えてスタイルに気をつけていてもなんだか虚しい。
リアルでもSNSでも24時間いつも他人から評価されている気がする。自分がいるようでどこにもいないとありました。ちょっと長く読んじゃいましたけど、これは本当に今の自分のことだって思ったんですよ。皆さんもどうでしょうか。私もと思った方もいらっしゃるかな。
これを読むまで自分が疲れているとはあまり思ってなかったんです。ここにある通り充実はしているし休みもちゃんと取れてます。評価されているという自覚もあるし、体を鍛える時間もちゃんと取ってる。
だけどどこかで自分がいないみたいな感じがするっていうのがね。それが感情労働によって消耗しているんだなとは思っていなかったんですけども、そう言われればそうかもしれないと思いつつ買って帰って読んだらすごい一気に読んでしまいました。
この感情労働という言葉は1983年に社会学者のアーリー・ラッセル・ホックシールドさんが提唱した言葉だそうです。ホックシールドさんの元の本がこの本の中でも何度かご紹介されているんですけれども、
体を動かす、体を使うことがお金になる肉体労働と、頭を使うことがお金になる知的労働と並んで感情を使うこと、感情を使って他の人を気持ちよくしたり、他の人の気持ちに働きかけるっていうのも大変な労働ですよねっていうのを定義付けたのがこのホックシールドさんというわけなんですね。
感情労働を求められる代表的な職業としては客室乗務員、飛行機のフライトアテンダントさんですとか、看護師さんもそうですかね。
共通するのは自分が本当に感じているのとは違う感情表出が求められるっていうのが感情労働であるというふうに説明されています。
単的に言うと嫌なことがあっても嫌な顔をせずに感じよくやれっていうことですかね。
そのホックシールドさんが初めて感情労働っていう言葉を使った本が管理される心っていう本だそうでして、
その中にある航空会社が感情労働の品質を担保するためにですね、感情労働を商品サービスとして提供する質を担保するために客室乗務員たちの感情をコントロールしている訓練を行っているっていう話が出てきて、
へーと思って読んだんですけれども、例えばお客さんから失礼な言い方で頼み事をされてもイラッとしないで対処するためにどうするかどう考えるかみたいな話なんですよ。
具体的にですね、絶え間なく頼み事をしてくるお客さんを迷惑な客じゃなくて、非公の恐怖の犠牲者と考えるとかですね、どうしても怒りが収まらないときはこの人と一緒に家に帰る必要ないんだからと考えてみましょうみたいなノウハウを提供しているそうで、
なかなかちょっとこれはね、ちょっと人事部的には心がざわつく訓練だなと思いましたけれども、この本が出たのは1980年代ですからね、今はちょっとカスハラ防止条例、カスタマーハラスメントなんていう言葉も広まって、
こんなに何でもかんでもお客様の言いなりにならなきゃいけない、笑顔じゃなきゃいけないっていう教育からはちょっとずつ変わってきているのかなとは思いますけれども、一方でサービスの感じが悪かったらすごい悪かったって、SNSに書かれたり口コミの点数がすごい下がったりみたいなリスクは逆に言うと1980年代にはなかったリスクですから難しいですね。
たぶん今でも少なからずこういう時の対処の仕方とか、なんか受け流し方といったあれですけれども、あるでしょうね、各サービス業をされている方には対応は丁寧に、でも気持ち的にはどういう風に受け流すかみたいなのは習ったりする機会もあるのかなと思ったりしました。
こういったこの人は○○なんだと思うことにするとかっていうやり方は表層演技といって、その時その時の自分の感情をなだめたり、その場をやり過ごすにはすごく有効な手段だと思うんですけれども、ずっと続けているととても疲弊してしまうということもこの本の中に同時に指摘されていました。
それはそうですよね。その場はやり過ごして一緒に帰るわけじゃないしとか、あの人も自分が飛行機が怖いからこういう風になってるんだろうとか、こういうことだったってことにしようって思ったらやり過ごせるけれども、ずっとずっと小さく自分の感情に嘘をついているみたいなものですから、そこにはギャップがあって、その結果が冒頭にご紹介したような、
何をやっても疲れが取れない、自分がないみたいに感じる状況になってしまう人もいる、なってしまうケースもあるっていうことなのかもしれないですね。
この本はホックシールドさんが指摘した、企業が個人の感情を搾取するっていう、それまであまりみんなが意識してこなかった感情的な負荷の大変さ、感情労働の大変さっていうのを改めて掘り下げながら、
そのホックシールドさんの指摘から40年くらい経っていますので、今の最新の脳科学とか人工知能AIの発展やSNSが人の感情にどう影響するかを加えて分析している本になっています。
家庭内の感情作業
なぜ今日この本をニャロメさんに紹介したかったかっていうのをちょっと説明しますと、今までちょっと触れた客室乗務員とか看護師さんとか介護士さんとかっていった人々は、もちろん大変な職業ですけれども、職業として仕事の場で求められる感情労働ですよね。
それとは別に家庭の中や友人同士っていう私的なプライベートな領域で行われる相手の気持ちを考えて行動する感情労働のことを感情作業というふうに呼んで、感情労働と感情作業は区別をして、ホックシールドさんは解説をしておられたそうです。
今はそこはあまり区別していなくて、脳は感情労働と感情作業は区別しないらしいんですけれども、しかしその負荷の高さという点で言うと、最も私的なつのつながりにおいての感情作業は最も激しいとも書かれていて、
まあなるほどなというか、そうでしょうねと思いました。
その仕事の場で会う人たちっていうのはやっぱりどこかで割り切れるところもありますけれども、最も私的なつながり、私的な領域で行われる求められる感情労働っていうのが一番激しい感情激しい労働であるっていうことなんですね。
最も私的なつながりの端的なところがお母様とか肉親ですよね。
という意味でちょっとこの本をご紹介させていただきました。
さらにこの本は思い通りにならない一人のことで悩むっていうこと、その人の面倒を見たり関わるっていうことについて、
農家学的なアプローチですごく寄り添うとしている本だというふうに私は受け止めました。
この本すごくいいなって思ったのは、この温蔵彩子さん、著者の方の文章自体が非常に感情労働が効いている。
効いているっていうのがいい言い方じゃないかもしれないですけど、感情労働がきめ細やかに働いている文章だなって思ったんですよ。
この本でいうところの感情的知性の高さを感じる文章だなと、ちょっとなんか上から見せみたいですけど、すごく感動したんですよね。
農家学とか人工知能とかちょっと専門的な話が続いていて、わからないなとか、私の日常には遠い話だなとかっていうふうにやや白けた気持ちに陥る。
ちょっと前に、例えばこういうことですとか、こういうふうに思われた方もいらっしゃるかもしれないんですけど、とは書かないが、こんな実験がありましてっていうふうに白けた気持ちになったり、
頭のいい人たちの関係ない話だなって思わせないような気持ちを救い取ってくれる。
たとえ話とか話の展開がとても効いていて、私が読んでいる私の頭の中がバレたんだろうかと思うくらいでした。
っていうのも多分なんですけど、御曹さんご自身が認知症になったお母様を8年介護されて亡くなられるまでの8年間介護されたご経験があるそうなんです。
ただ、とてもお母様と関係性が良かったようなので、今回お便りいただいたニャロメさんと一緒ではないとは思ったんですけれども、
ただ思い通りにならない人と対峙する、毎日向き合う、そして自分を見失うことなくっていうことに、ちゃんと価値を見出したいっていう気持ちが研究されていることの、
この本の原動力になっているのかなと思って読みました。
さて、ではそろそろこの本から紙フレーズをご紹介したいと思います。
自分が何に感動するかはあらかじめわからない。感動する瞬間は選べない。私はこんなことで心が動くんだと感情が動いてみて自分のことがわかる。
というふうにあります。この本の中に感情的知性が高いかどうかっていうのを自分で測るチェックテストがついてまして、
面白いのでぜひやってみてくださいと思ったんですけど、高いか低いかっていうのを出すこと自体が大事というよりも、
このチェック項目の一つ一つが味わい深い、こういうことが感情的知性が高いっていうのにつながるのかっていう感じで、
特にこの温蔵さんが注目してほしいっていうのが今言ったところでして、これは9項目目にあたるんですけれども、
私は自分の感情が動いたらそれに気づくことができるっていうのは1個の項目になっていて、
なるほどなぁって思いましたけど、30個以上あるんですよ。33かな項目があって、
介護と必要な言葉
でもなんで温蔵さんはこれに注目してくださいって書かれたのかなっていうのはちょっと気になったんですけど、
最後まで読んだら後書きにちょっとそのヒントというか、もしかしたらそういうことなのかなって思うことがありました。
後書きにだけご自身の介護の話がご経験がちらっと出てきていて、
そのお母様の介護をサポートしてもらっている先生からある時に、最近必要な言葉しか使ってないじゃないかっていうことを指摘されたと。
つまり必要な言葉っていうのは、着替えてねとか食べてねとかちゃんと何々してみたいなことですよね。
必要な言葉以外っていうのは、花が綺麗だねとか、金木犀かな、いい匂いだねとか、そういう言葉で感情が動いたってことを共有するような会話ですかね。
これは今日ご紹介した介護をうまくやりこなすためのチップスみたいなのが書いてある本ではないので、すぐに役立つかっていうとそういうことでもないですし、
今言ったことでやり過ごせという意味で紹介したわけではないんですけど、これを読んで確かに自分自身も必要な言葉しか使ってなかったかもしれないと思ったんですよね。
家族とか会社の身近な人たちとかに対して、感じた自分の心が動いたっていうことを言葉にする機会とか気づく機会って非常に少なくて、こんな仕事をしてても少なくて、
さらにそれを誰かにその場でちょっとパッと共有する。綺麗だねとか、いい匂いしたねみたいなのを言う機会ってとても少ないんだなぁって、それもあって疲れていたのかもしれないと思いました。
ちょっと話がそれるんですけど、今ちょっと直下型地震がもうすぐ来るかもしれないとか言われているじゃないですか、ちょっと天候もすごい読めない感じになってますし、大きな災害が近々起こるかもしれないというのはいつ起こってもおかしくないような感じだと思うんです。
そうした中で会社として会社はどう対応するのかっていうのを、社員の安全を守るとか、社業を守るみたいな意味で総務は検討しなきゃいけなくてですね。
2011年の東日本大震災とか、コロナとか、ノトの震災なんかも含めてこの十数年で起こった大きな災害いくつかありますけれども、会社でどんな混乱と被害があって、どんなことをやらなきゃいけなかったか、あるいは何を決めておけばよかったかということを、今まとめようとしていろんな人に話を聞いているんですね。
それはそれで非常にためになる話なんですけれども、そうするとあれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、これも決めとかなきゃ、みたいな話になって、それはつまり必要な言葉ばかりですよね。必要なことだらけ。
必要なことが多すぎて、ちょっと最近いっぱいいっぱいになってたんですけれども、起こる前からやらなきゃいけないことが多すぎて、でもそういう必要なことだらけの打ち合わせの中で、東日本大震災の時に本のための紙を手配して印刷するっていうのがとても大変だったっていう話になって、
石巻には製紙工場、紙パルプを作ってくださっている大事な大きなお取引先さんがあって、でも被害を受けて生産が難しくなってしまって、やっと復旧して最初に出来上がった大きな大きな紙のロールの状態の紙のロールに復興っていう大きな因果をしてあって、
最初に出来上がった復旧して、最初に出来た紙で高段車の本を吸っていただいたっていう話が出てきたんですよ。その話を聞いてちょっとそのメンバーと何とも言えない熱い気持ちが湧いてきまして、
何でしょうね、嬉しかった、嬉しかったって言ってないかもしれない、嬉しいとかありがとうとか、よかったとか、ほっとしたとか、いろんな感情ですよね。その紙が週刊少年マガジンのための用紙だったのか、置き取り文庫、あるいは高段車文庫のための用紙だったのか、ちょっと聞きそびれちゃったんですけども、
それぞれレーベルごとにお決まりの用紙というものがありまして、それぞれに作ってくださっている工場があるので、その工場が復旧するっていうのがそのレーベルも本当の意味で復旧するっていうことでもあるんですよ。
最初の紙で何を吸っていただいたかわからないけど、そのページを読んで心を動かした人がまた感情が動いた人がまた多分いるはずで、そうやって災害っていうたくさんの感情が強い感情が動いた時だったし、そのために鮮烈な記憶にそれぞれなってますよね。
そうだった、そうだったっていうことを思って、それまで必要なことを話し合うっていう言葉だけでしか打ち合わせをしてこなかった時は、なんだかとても追い込まれていたんですけれども、感情の話をしだしたら、急に自分的にはやる気になったというか、そうだよね、僕たちは人の感情のために仕事をしているんだよっていう気持ちにも、
そのメンバーとなったっていうのがありまして、っていうのをこの本を読んだ時にまた思い出して、やっぱりすごく仕事でも家庭でも必要なことを話し合うみたいなのにどんどんなっちゃうから、
ほっておくと感情のことを時々共有するっていうの大事だし、その時自分がどういう感情になったか気づけるっていうのが、ほっとくと摩耗しちゃうんだなっていうのに気づいたっていうお話でした。
ちょっと今日は割愛しちゃったんですけど、AIは感情をどう扱うのかとか、SNSが若い人に若い柔らかい思春期の時の感情にどういう影響を与えるのかとかっていうところもかなり興味深い本でしたので、よかったらぜひ手に取ってみてください。
リクエストありがとうございました。とても大変な、そして非常に報われにくい状況に対応されているにゃろめさんにとって、少しでも報われる感情が動く言葉とかがあるといいなと思ってご紹介しました。ありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、リスナーの方からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストはインスタグラムのアカウント、バタヨムからお寄せください。
お届けしたのは講談社のバタヤンこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみ。
23:08

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