1. 真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室〜
  2. 我慢しろと言われたわけじゃな..
我慢しろと言われたわけじゃないのに。「自分を生きる」のはどうしてこんなに難しいの
2026-05-20 35:30

我慢しろと言われたわけじゃないのに。「自分を生きる」のはどうしてこんなに難しいの

EP.248▶︎今夜のお話: ステップファミリーの「アウェイ」な奮闘 / 都会から漁師町へ、自分だけが外側にいる孤独 / 夫との冷え切った関係と、叶わない夢 /「家族のケア」に滲む感情のグラデーション / 家父長制的な構造に削り取られる「私」の意志 / 完璧なベビーシッターが見せた意外な素顔 / 一穂ミチ『恋とか愛とかやさしさなら』と韓国文学

▶︎今夜の勝手に貸出カード

・キム・ユダムさん著 / 小山内 園子さん 訳『ケアする心』(白水社)

https://www.hakusuisha.co.jp/book/b672576.html

1983年韓国・釜山生まれ。2016年にデビューした実力派作家キム・ユダム氏による、育児、介護、家事労働など、家族や他者を「ケア」することに明け暮れる女性たちの姿を描いた10篇の短編集です。

▶︎あわせて読みたい「家族や夫婦」に関するおすすめの本

・一穂ミチさん『恋とか愛とかやさしさなら』(文藝春秋)

・チョン・イヒョンさん著、斎藤真理子さん訳『優しい暴力の時代』(河出文庫)

・朝比奈あすか『普通の子』さん(朝日新聞出版)

▶︎番組概要

夜眠りにつく前の“聴くだけ読書会”。講談社のバタやんこと川端里恵がおすすめの本や心に響くフレーズをご紹介します。毎週水曜日の夜に、リスナーの方のお悩みや気分のリクエストにおこたえして、本を1冊、勝手に貸し出しいたします。読んでも、読まなくても、”あしたが楽しみになる”読書の時間を共有する図書室です。ぜひフォローをお願いします。

▶︎本のリクエスト、番組へのメッセージはインスタのDMよりお送りください

https://www.instagram.com/batayomu/

▶︎番組ハッシュタグ#真夜中の読書会

▶︎MC: バタやん(川端里恵・KODANSHA)

1979年生まれ。2002年に講談社に入社。広告営業、女性誌「with」「VOCE」「FRAU」「mi-mollet」編集部などを経て、今は人事・総務を担当しています。文芸編集者も漫画編集者も経験していないけど、本と漫画と雑誌を読むのが好きです。メンタルケア心理士。 ※講談社の出版物に限らず紹介します。発言や感想は、完全に個人の見解で会社を代表するものではありません。 X|@batayan_mi Instagram|@batayomu

▶︎noteで紹介した本をまとめています| https://note.com/batayan_mi

▶︎YouTubeでも配信はじめました! → https://www.youtube.com/@batayomu


感想

まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!

サマリー

このエピソードでは、ステップファミリーとして夫の連れ子2人と自身の子供1人を育てながら、夫との関係が悪化し、孤立感や将来への不安を抱えるリスナーからの相談が紹介されます。都会から漁師町への移住というアウェイな環境での奮闘や、子供への願望が叶わない辛さ、離婚さえも考えてしまう心情が語られます。これに対し、韓国の作家キム・ユダムの短編集『ケアする心』が推薦されます。この作品は、家族のケアにまつわる女性たちの複雑な感情のグラデーションを描いており、特に「ケアは一方にばかり強いられてはいけない」というメッセージがリスナーの状況に寄り添うものとして紹介されます。また、一穂ミチの『恋とか愛とかやさしさなら』も、予期せぬ出来事に直面した際の選択を迫られる点で関連書籍として触れられています。

00:00
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室へようこそ。
リスナーからの悩み相談:ステップファミリーの葛藤と孤立感
こんばんは、第248屋を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。ペンネームはるなさんからいただきました。こんにちは、はじめまして。
ポッドキャストで真夜中の読書会をよく聞いております。内容がじんわりと心に入り、おすすめされる本も深く相手の方を考えていて好きです。ありがとうございます。
私の悩みも聞いていただきたく、おすすめの本を知りたいと思い、メッセージを送ります。
私の家はステップファミリーです。夫の連れ子が2人いて、再婚してから生まれた男児もいます。私と夫の仲は悪く冷え切っています。
ママ子で困ることが多かったのですが、結局わかってもらえず、夫とは喧嘩してばかりです。ママ子2人とはほとんど会話はなく、私だけ仲間外れみたいです。あえて私も別行動して過ごしています。
夢である子どもが2人欲しいと思っていたことも、夫は2人目は男子として欲しくないと、その最大の願望すら叶わないのかと日々つらいです。我慢だらけの日々でもあります。
都会から田舎の漁師と結婚し、ギリの父も、玄関が違いますが、同じ家に住んでおります。ギリの父は好きです。しかし心は日々のストレスで休まりません。
経済面での苦労はなく、専業主婦ですが、いつか離婚するとかも考えています。大好きだった元彼も思い出します。
家がブロックされているので、何もできませんが、心は落ち着きません。こんな私にお勧めの言葉や本はありますでしょうか。忙しい中すみませんが、ご検討いただけたら嬉しいです。
ありがとうございます。そうでしたか。セップファミリーという、単純ではないご家庭の家の中の人間関係、そして都会から都心から郊外の方へ田舎の漁師の町へ移住っていう、大変なアウェイな環境で奮闘されてきたんですね。
そのご自身だけが外側にいるような素材感と、そしてそこに引き入れたはずの、最も味方でいてほしいはずの旦那さんとの関係が今はうまくいっていない、冷え切っているということと、経済的な苦労はないっていらっしゃるだけに、余計にヒリヒリとしたお気持ちを感じるお便りでした。
さて、今夜の勝手に貸し出しカードは、キムユダムさん、超幼い園子さん役のケアする心という本にしました。
なぜこの本を選んだのか、今日はまず最初にご説明しますね。
この本は、韓国の、現代の韓国の女性たちが直面する家族のケアという名の、逃げ目、逃げ場のない労働と感情の被弾を千列に描いた10個の短編が集まった短編集になっています。
裏表紙にも少し解説がされていて、その役者のおさないさんの後書きからの引用が載っているんですけど、そこもちょっと読みますね。
愛着から嫌悪感まで、それは時に憎しみにも至る、キムユダムは小説のキャラクター造形を重視している作家だが、実に多彩な本書の登場人物に共通点があるとすれば、ケアにまつわる感情のグラデーションを体験していることだろうとあり。
家族のケア、世話をする、面倒を見る、一緒に暮らすっていうことには、いろんな感情のグラデーションがあって、愛も愛着もあるけれども、嫌悪も、嫌悪感も、憎しみも、まあ、手続きであるという、そんな本なんです。
だから、えっと、救われるとか、なんか、ハウツーがわかるとか、元気が出るとか、そういうタイプの本じゃないんですけど、ぜひよかったら、はるなさんにも読んでみていただきたいなっていう、読んでご感想を聞きたいなっていう気持ちで、こちらの方を選びました。
10個の短編の中で、はるなさんが共感する人がいるかもしれないし、いないかもしれないし、より一層憎しみが増したり、理不尽さが、理不尽さの輪郭がくっきりしちゃうかもしれないんですけれども、ただ韓国の小説なだけに、これは私の印象なんですけど、
日本と韓国の近しいところもあれば、違うところもあると言いますか、日本と家族の考え方とかが似ているところもあるけど、全然違うところもあったりして、コミュニケーションの取り方とかには、やっぱりちょっと国柄的なところに違いはあるし、こういう式たりがあるんだなとかっていうのは、やっぱり異国な部分もあるので、
よりファンタジー、フィクションとして、従順に楽しめるっていう感じがしました。
10個短編が収録されているんですけど、ぜひこれを読んでほしいなと思った1つご紹介しますね。
アンというタイトルで、安心のアン、安全のアン、一文字でアンというタイトルがついています。
この主人公は新聞記者をしていた女性で、お母さんは工学歴で塾を経営していたかなんかで、ちゃんと専門職になれと、ちゃんと仕事をしてキャリアを詰め、みたいな感じで育てられてきた主人公が、
一方で、長男の嫁として嫁いだおばさんという人がいて、この人が冒頭、亡くなったっていうところから始まるんですけど、
そのおばさんは旧家、一家を長男の嫁として守れと、自己犠牲の権限みたいに、嫁の務めを果たしてきた女性なんですよ。
そんな2人のお母さんというか、お母さん像からいろんな吹き込まれて、女性像からいろいろ吸収して育ってきた私っていうのは、
ミニシアター好きのちょっと趣味人って感じの旦那さんと結婚するんですね。
趣味もあってカルチャー好きでっていう、仲良し夫婦になれるかと思いきや、そこにはですね、夫の母、つまり義母が登場して、3人の女性からいろいろ影響を受けると。
それからその旦那さんも結構実はかなり過不調性というか、旧来型の価値観を持っている男性で、
その主人公の私が結婚当初から実家に、彼の実家に行ってご飯をみんな食べるっていうのはちょっと嫌がってると、
君は一人っ子で寂しく育ったから、大勢でご飯を食べる喜び幸せを知らないんだ、みたいなこと言われちゃって、
いやいや、私は一人っ子だけど別に寂しく育ってねえわ、みたいなね、そんな感じで結婚当初からギクシャクし始めるんですね。
一方で実の母親からも、なんであんたは医学部に行かなかったのかとか、
昔のことを蒸し返してチクチク言われたりなんかして、それに反発して、今の夫の家はすごい良い人たちばかりだとか言っちゃったりして、
そうやって自分の本音を話せる、自の自分を出せる場所を、自分でどんどん扉を閉めていっちゃうんですよね。苦しい、苦しいですね。
だけど、ああ、なんかわかるなあ、っていうか想像つくなあ、あるよね、そういうことっていう感じがする小説です。
この主人公の私が物語の最後にどういう選択をとるのかっていうのは、ぜひ読んでみてください。
さて、もう一つぐらいご紹介したいなと思います。
私がこの中で一番好きなのは、表題タイトルにもなっているケアする心という一編です。
これはどんなお話かと言いますと、生後8ヶ月の女の子を子育て中の主人公が、職場復帰、復職を目指してベビーシッターを探すんですね。
でもなかなかいい人が見つからない。なんかこう、逆にこちらが値踏みをされているようなベビーシッター候補の人からマウント取られている感じがして、
ママさんがちゃんとわかってないからさ、みたいなこと言われたりして、嫌な思いをするんですよ。
そんな中で、同じ団地に住んでいるマダム、高齢の女性が、私が面倒見ましょうかって言ってくれて、すごい人で、ちゃんとした人で、はい、よかったってなるんですけど、
ある日、思いがけずベビーシッターをしてくれているマダムの思いがけない一面を見知ってしまうんですね。
これは何かっていうのはちょっと言わないでおきますね。
そういうところが、この小説だが、サスペンス感がありますね。団地の情景とかも、目に浮かぶ感じがしますし、
聞くともなく聞いてしまった、探りを入れたかったわけじゃないんだけど、偶然知ってしまった彼女の意外な一面を知って、
さてどうするっていう話ですよ。やっと見つかったベビーシッターね。
私ならどうするかな、何て言うかな、何て話すかなって、すっごい考えちゃう小説でした。
これを読みながら、市穂道さんの恋とか愛とか優しさならっていう小説、あれもすごく面白かったんですけど、それのことを思い出しました。
恋とか愛とか優しさならっていう市穂道さんの小説は、本屋大賞にもノミネートしてたんですけれども、
どういう話かっていうと、婚約した彼氏が、とても素敵な彼氏が電車で女の子を盗撮してたってことで捕まってしまって、
それを知ってさてどうするって話なんですね。よかったらこれもぜひ読んでみてください。
主人公が自分の考えとか自分の気持ちとかもちろんあるんですけど、それとは別に家族、周りの人や親友とかがいろいろ言ってくるんですよね。
そうするとやっぱり自分の気持ちって上書きされたりとかして、さてどうするかという選択の先はぜひ見てみていただきたいんですけれども、
このケアする心もやっぱり周りの人が子育てって周りの人がいろんなことを言ってきたりする場面もあるんですけど、
何が頭に来るかっていうと、夫の人、旦那さんがベビーシッター探しでなかなかいい人にあたらず苦労してる時も、
他人事っぽいって言いますか、ちょっと正論言ってくるだけみたいな。
マダムグが見つかる前に来てくれたベビーシッターさんがいて、
もしかして家の石鹸とか家の備品をくすねてるかもしれない疑惑っていうのがあって、それで夫に相談するんですけど、
そんなことで目くじら立てなくてもそのくらい許してやれよ的な軟気な感じなんですよ。
その旦那さんは。
イラついてるお前がバカって言われてるような、そこまでは書かれてないんですけど、なんかそういうのを感じることってありますよね。
その辺の細かい描写が、キム・ユダムさんの本当に上手なところで、それぞれのキャラクター描写がとても繊細に組み立てられてるなって思うとこなんですけど、
役者のボサナイさんの役が自然で上手なんだと思うんですね。
ママとイライラさせられます。
この主人公ミヨンさんって言うんですけど、ミヨンさんのまた職場の面倒を見てる後輩の女の子もタイミング悪くやらかしたり、お客さんにちょっとやらかしたりして、
ミヨンさんと一緒になってその仕事のことでも家のことでも息取ったりホッとしたりハラハラしたりして読みました。
さて、そろそろこの本から今日紙フレーズをご紹介したいと思います。
今日は冒頭でもご紹介した後書きから、著者のキム・ユダムさんがこの本の根底にあるのは何ですかっていう問われたインタビューに対して答えた箇所を少し読みますね。
ケアする心が一方にばかり強いられてはいけないという点を特に強調しておきたいです。
かせられた負担の重さ、振り当てられた人生の理不尽、ケアにあえぐ人に寄り添う物語が本書には集まっている。
本書が今様々なケアに終わり、多くの葛藤を抱えた方々へのケアとなることを役者として心から願っているとあります。
このキム・ユダムさんの言葉、ケアする心が一方にばかり強いられてはいけないという点を特に強調しておきたいですと、この最後に後書きにあって、ああ、そういう物語だったんだっていうのも私も気づいたんです。
ケアって言うと、健常者がそうでない人に施すとか、上の人が下の人に施すみたいなイメージもあったりしますけれども、お互い対等で心地よく感じよく過ごすということだとしたら、
一方がすごく我慢をしたり、言葉を継ぐんだりすることでは成り立たないし、察してくれよということでは成り立たなくて、歩み寄りとか気遣いとか、時に気持ちを上げるようなことを言ったりとかいうことは必要で、
ケアを一方にばかり強いられてはいけないという著者の強い意思が、この小説たちにはあって、
あなた、ケアを受ける側というか、一緒に心地よく過ごすということで言うと、あなたも気を使ったり、ほがらかに振る舞ったり、感謝を示したりしないといけないよね、すべきだよねっていうようなことを言ってくれる、代弁してくれるっていう小説のように感じました。
ハルナさんの頂いたお便りの何かが解決してはいないんですけど、今日の番組の中で。ただ、なんかもっとムカついたり、イラッとしたり、家族の想定からは外れる行動を取ったっていいし、知らないぞと知らんぞっていう気持ちがね、なんかこの本を読んで後押しされるといいなと思ってご紹介しました。
リクエストありがとうございました。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、皆さんからのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストお便りは、インスタグラムのバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは、講談社のバタヤムこと川端理恵でした。
また、水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。
おやすみー。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは。
第248話を迎えました。
今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームはるなさんからいただきました。
こんにちは。
はじめまして。
はじめまして。
ポッドキャストで真夜中の読書会よく聞いております。
内容がじんわりと心に入り、おすすめされる本も深く相手の方を考えていて好きです。
ありがとうございます。
私の悩みも聞いていただきたく、おすすめの本を知りたいと思い、メッセージを送ります。
私の家はステップファミリーです。
夫の連れ子が二人いて、再婚してから生まれた男児もいます。
私と夫の仲は悪く冷え切っています。
ママ子で困ることが多かったのですが、結局わかってもらえず、夫とは喧嘩してばかりです。
ママ子二人とはほとんど会話はなく、私だけ仲間外れみたいです。
あえて私も別行動をして過ごしています。
夢である子どもが二人欲しいと思っていたことも、夫は二人目は男子として欲しくないと、その最大の願望すら叶わないのかと日々辛いです。
我慢だらけの日々でもあります。
都会から田舎の漁師と結婚し、霧の父も、玄関が違いますが同じ家に住んでおります。
霧の父は好きです。
しかし、心は日々のストレスで休まりません。
経済面での苦労はなく、専業主婦ですが、いつか離婚するとかも考えています。
大好きだった元彼も思い出します。
ブロックされているので何もできませんが、心は落ち着きません。
こんな私にオススメの言葉や本はありますでしょうか。
忙しい仲すみませんが、ご検討いただけたら嬉しいです。
といただきました。
ありがとうございます。
そうでしたか、セップファミリーという、単純ではないご家庭の家の中の人間関係、
そして都会から都心から郊外の方へ田舎の漁師の町へ移住っていう、
大変なアウェイな環境で奮闘されてきたんですね。
そのご自身だけが外側にいるような蕎麦感と、
そしてそこに引き入れたはずの、最も味方でいてほしいはずの旦那さんとの関係が甘く言っているということと、
経済的な苦労はないっていらっしゃるだけに、
余計にヒリヒリとしたお気持ちを感じるお便りでした。
推薦図書『ケアする心』の紹介と作品分析
さて、今夜の勝手に貸し出しカードは、
キム・ユダムさん、超幼い園子さん役の
「ケアする心」という本にしました。
なぜこの本を選んだのか、今日はまず最初にご説明しますね。
この本は、現代の韓国の女性たちが直面する家族のケアという名の、
逃げ目、逃げ場のない、
労働と感情の被弾を、
占列に描いた、10個の短編が集まった短編集になっています。
裏表紙にも少し解説がされていて、
その役者のおさないさんの後書きからの引用が載っているんですけど、そこもちょっと読みますね。
愛着から嫌悪感まで、それは時に憎しみにも至る、
キム・ユダムは小説のキャラクター造形を重視している作家だが、
実に多彩な本書の登場人物に共通点があるとすれば、
ケアにまつわる感情のグラデーションを体験していることだろうとあり、
家族のケア、世話をする、面倒を見る、一緒に暮らすということには、
いろんな感情のグラデーションがあって、
愛も、愛着もあるけれども、
嫌悪感も、憎しみも、
手続きであるという、そんな本なんです。
だから、救われるとか、
ハウツーがわかるとか、元気が出るとか、
そういうタイプの本じゃないんですけど、
ぜひよかったら、春名さんにも読んでみていただきたいなっていう、
読んでご感想を聞きたいなっていう気持ちで、
こちらの方を選びました。
10個の短編の中で、春名さんが共感する人がいるかもしれないし、
いないかもしれないし、
より一層憎しみが増したり、
理不尽さが、理不尽さの輪郭がくっきりしちゃうかもしれないんですけれども、
ただ、韓国の小説なだけに、
これは私の印象なんですけど、
日本と韓国の近しいところもあれば、
違うところもあると言いますか、
日本と家族の考え方とかが似ているところもあるけど、
全然違うところもあったりして、
コミュニケーションの取り方とかには、
やっぱりちょっと国柄的なところに違いはあるし、
こういう式たりがあるんだなとかっていうのは、
異国な部分もあるので、
よりファンタジー、フィクションとして、
従順に楽しめるっていう感じがしました。
10個短編が収録されているんですけど、
ぜひこれを読んでほしいなと思った1つご紹介しますね。
安っていうタイトルで、
安心の安、安全の安、一文字で安というタイトルがついてます。
この主人公は新聞記者をしていた女性で、
お母さんは工学歴で塾を経営していた中で、
ちゃんと専門職になれと、
ちゃんと仕事をしてキャリアを積めみたいな感じで、
育てられてきた主人公が、
一方で長男の嫁として、
とついだおばさんっていう人がいて、
この人が冒頭亡くなったっていうところから始まるんですけど、
そのおばさんは、
一家を長男の嫁として守れと、
自己犠牲の権限みたいに、
嫁の務めを果たしてきた女性なんですよ。
そんな2人のお母さんというか、
お母さん像からいろんな吹き込まれて、
女性像からいろいろ吸収して、
育ってきた私っていうのは、
ミニシアター好きの趣味人って感じの旦那さんと結婚するんですね。
趣味もあってカルチャー好きでっていう、
仲良し夫婦になれるかと思いきや、
そこにはですね、夫の母、つまり義母が登場して、
3人の女性からいろいろ影響を受けると。
それからその旦那さんも、
結構実はかなり過不調性というか、
求来型の価値観を持っている男性で、
その主人公の私が結婚当初から、
彼の実家に行ってご飯をみんな食べるっていうのはちょっと嫌がってると、
君は一人っ子で寂しく育ったから、
大勢でご飯を食べる喜び幸せを知らないんだ、
みたいなこと言われちゃって、
いやいや、私は一人っ子だけど、
別に寂しく育ってねえわ、みたいなね。
そんな感じで結婚当初からギクシャクし始めるんですね。
一方で実の母親からも、
なんであんたは医学部に行かなかったのかとか、
ちょっと昔のことを蝕かえして、
チクチク言われたりなんかして、
それに反発して、
今の夫の家はすごい良い人たちばかりだとか言っちゃったりして、
そうやって自分の本音を話せる、
自の自分を出せる場所を、
自分でどんどん扉を閉めていっちゃうんですよね。
苦しい、苦しいですね。
だけど、ああ、なんか分かるなあ、っていうか想像つくなあ、あるよね、
そういうことっていう感じがする小説です。
この主人公の私が物語の最後に、
どういう選択を取るのかっていうのは、
ぜひ読んでみてください。
さて、もう一つぐらい、
ご紹介したいなと思います。
私がこの中で一番好きなのは、
表題タイトルにもなっている、
ケアする心という一編です。
これはどんなお話かと言いますと、
生後8ヶ月の女の子を子育て中の主人公が、
職場復帰、復職を目指してベビーシッターを探すんですね。
でもなかなか良い人が見つからない。
逆に、こちらが値踏みをされているような、
ベビーシッター候補の人からマウント取られている感じがして、
ママさんがちゃんとわかってないからさ、
みたいなことを言われたりして、
嫌な思いをするんですよ。
そんな中で、同じ団地に住んでいるマダム、
高齢の女性が、
私が面倒見ましょうかって言ってくれて、
すごい良い人で、ちゃんとした人で、
はい、良かったってなるんですけど、
ある日、思いがけずベビーシッターをしてくれているマダムの、
思いがけない一面を見知ってしまうんですね。
これは何かっていうのは、ちょっと言わないでおきますね。
そういうところが、ちょっとこの小説だが、
サスペンス感がありますね。
団地の情景とかも、目に浮かぶ感じがしますし、
聞くともなく聞いてしまった、
探りを入れたかったわけじゃないんだけど、
偶然知ってしまった彼女の意外な一面を知って、
さてどうするっていう話ですよ。
やっと見つかったベビーシッターね。
その、私ならどうするかな、
何て言うかな、何て話すかなって、
すっごい考えちゃう小説でした。
これを読みながら、
いちほみちさんの、恋とか愛とか優しさならっていう小説、
あれもすごく面白かったんですけど、
それのことを思い出しました。
恋とか愛とか優しさならっていう、
いちほみちさんの小説は、
本屋大賞にもノミネートしてたんですけれども、
どういう話かっていうと、
婚約した彼氏が、とても素敵な彼氏が、
電車で女の子を盗撮してたってことで、
捕まってしまって、
それを知って、さてどうするって話なんですね。
よかったら、これもぜひ読んでみてください。
主人公が自分の考えとか、
自分の気持ちとか、もちろんあるんですけど、
それとは別に、家族、周りの人や親友とかが、
いろいろ言ってくるんですよね。
そうすると、やっぱり自分の気持ちって、
上書きされたりとかして、
さてどうするかという、
この選択の先は、
ぜひ見てみていただきたいんですけれども、
このケアする心も、
やっぱり周りの人が子育てって、
周りの人がいろんなことを言ってきたりする場面も、
あるんですけど、
何が頭に来るかっていうと、
夫の人、旦那さんが、
ベビーシッター探しで、
なかなかいい人にあたらず苦労している時も、
他人事っぽいって言いますか、
ちょっと正論言ってくるだけみたいな、
まだ見つかる前に来てくれた、
ベビーシッターさんがいて、
もしかして家の石鹸とか、
家の備品をくすねているかもしれない疑惑があって、
それで夫に相談するんですけど、
そんなことで目くじら立てなくても、
そのくらい許してやれよ的な、
呑気な感じなんですよ、
その旦那さんは。
イラついているお前がバカって言われているような、
そこまでは書かれてないんですけど、
なんかそういうのを感じることってありますよね。
その辺の細かい描写が、
キム・ユダムさんの本当に上手なところで、
それぞれのキャラクター描写が、
とても繊細に組み立てられているなって、
思うところなんですけど、
役者のね、
おさないさんの役が自然で上手なんだと思うんですね。
ママとイライラさせられます、
この主人公ミヨンさんって言うんですけど、
ミヨンさんのまた職場の面倒を見ている後輩の女の子も、
タイミング悪くやらかしたり、
お客さんにちょっとやらかしたりして、
ミヨンさんと一緒になって、
その仕事のことでも家のことでも、
息取ったりホッとしたり、
ハラハラしたりして読みました。
「ケアする心」のメッセージとリスナーへのエール
さて、そろそろこの本から、
今日紙フレーズをご紹介したいと思います。
今日は冒頭でもご紹介した後書きから、
著者のキム・ユダムさんが、
この本の根底にあるのは何ですか?
という問われたインタビューに対して、
答えた箇所を少し読みますね。
ケアする心が一方にばかり強いられてはいけない、
という点を特に強調しておきたいです。
かせられた負担の重さ、
振り当てられた人生の理不尽、
ケアにあえぐ人に寄り添う物語が、
本書には集まっている。
本書が今様々なケアに終わり、
多くの葛藤を抱えた方々へのケアとなることを、
役者として心から願っているとあります。
このキム・ユダムさんの言葉、
ケアする心が一方にばかり強いられてはいけない、
という点を特に強調しておきたいです。
この最後に後書きにあって、
ああ、そういう物語だったんだ、
というのも私も気づいたんです。
そうなんですよね。
ケアっていうと、
健常者がそうでない人に施すとか、
上の人が下の人に施す、
みたいなイメージもあったりしますけれども、
お互い対等で心地よく、
感じよく過ごすということだとしたら、
一方がすごく我慢をしたり、
言葉を継ぐんだりすることでは成り立たないし、
察してくれよということでは成り立たなくて、
歩み寄りとか気遣いとか、
時に気持ちを上げるようなことを言ったりとか、
言うことは必要で、
ケアを一方にばかり強いられてはいけない、
という著者の強い意思が、
この小説たちにあって、
あなた、ケアを受ける側というか、
一緒に心地よく過ごすということで言うと、
あなたも気を使ったり、
ほがらかに振る舞ったり、
感謝を示したりしないといけないよね、
すべきだよね、というようなことを、
言ってくれる、代弁してくれる、
という小説のように感じました。
春名さんのいただいたお便りの何かが、
解決してはいないんですけど、
この本を読んで、後押しされるといいなと思って、
ご紹介しました。
リクエストありがとうございました。
番組エンディングと次回予告
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会、おしゃべりな図書室では、
皆さんからのお便りをお送りしました。
本や漫画、紙フレーズをご紹介しています。
リクエストお便りは、
インスタグラムのバタヨムからお寄せください。
お届けしたのは、講談社のバタヤムこと川端理恵でした。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
35:30

コメント

スクロール