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#902 人(動作主)の「道具らしさ」? from Radiotalk
2026-10-10 10:53

#902 人(動作主)の「道具らしさ」? from Radiotalk

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サマリー

人を道具のように扱うことへの反感とは別に、言語学的には人と道具がそれほど遠くないのではないかという観点から、意味役割の「動作主」と「道具」を説明する。日本語では道具が格助詞「で」で表されやすい一方、英語では “this key opens this door” のように道具が主語になれる。さらに「相撲取り」「魔法使い」と「塵取り」「筆入れ」、英語の singer と slicer を比較し、人と道具が同じ派生過程を持つ例を示す。対象に変化を与える点で、両者の境界は明確でない可能性があるとまとめる。

意味役割としての動作主と道具
人を道具扱いすると非常に怒られるというか、反感を買いそうですけど、ただ言語学的に見ると、人と道具っていうのはそんなに大差ないんじゃないかなという気がしてきました。本当に最近の話です。BGMです。
始まりました、志賀十五の壺。皆さんいかがお過ごしでしょうか。忘れられた巨人です。
人と道具が大差ないとは一体どういうことなんだとお怒りになる方もいらっしゃるかもしれません。
お気持ちはごもっともというかね。僕も最初はそっち派だったというかね。人と道具なんて全然違うもんだと思ってたんですけど。
まずは意味役割という用語というかね、述語についてお話ししようと思います。意味役割、セマンティックロールとかシーマティックロールとか言われるもので、過去のエピソードでも多分取り上げたことがあるんですけど。
意味役割というのは文中における名詞の持つ意味とか役割のことで、主語とか目的語とはちょっと違うものなんですね。
例えば動作集という意味役割がよく考えられて、主語になりやすいと言われています。
動作集というのは意思を持って何らかの動作を行う、事態を引き起こす、開始するような、そんな登場人物のことで、意思を持って何らかの動作をするので、基本的に人間が動作集になりやすいんですよね。
例えば、彼は走るとかいった場合の彼とか、太郎は本を読むとかいった場合の太郎、これらはどちらも動作集で動作を行う人です。
で、どちらも主語として現れているんですよね。
意味役割には動作集以外にもたくさん設定されていて、詳しくは過去のエピソードを聞いていただきたいんですけど、そんな中に道具という意味役割もあります。
これイメージしやすいというか、まさに道具を表す名詞のことを道具という意味役割として設定するんですよね。
トンカチで殴るとか、ドライバーで開けるとか、こういったものが道具と言われる意味役割です。
ただここで注意が必要なのは、意味役割っていうのは文中で決まってくる意味のことなので、トンカチっていうのはいつでも道具という意味役割を与えられるわけではありません。
確かにトンカチっていうのは道具で、トンカチで組み立てるといった場合のトンカチは道具という意味役割ですが、
トンカチを壊すといった場合は、このトンカチは非動者、patientという意味役割になります。
非動者っていうのは動作の影響を受ける、その対象みたいなものでよく目的語として現れるんですけど、
動作種とよく対になる、ペアになるような意味役割です。
今回のエピソードでは非動者、patientはちょっと脇に置いておいて、
どちらかというと動作種と道具っていうのに焦点を当てようと思います。
この道具っていうのは日本語ではでという格助詞で表されやすいです。
英語の道具主語と日本語の「で」
もしかしたら100%かもしれませんけど、
日本語であれば道具という意味役割はでで表されやすいです。
英語であればwith a hammerとかwith a penとかpenでとか、
前置詞withあるいはbyもあるかもしれませんけど、
そういった前置詞で表されやすいんですね。
日本語にしろ英語にしろ、このでとかあるいはwithという前置詞とか、
そういったもので道具というのは表されやすい、いわば脇役的な存在です。
しかし英語では道具が主語になるような文というのもあり得て、
このキーがこの扉を開けるみたいな言い方ができるんですよね。
日本語だとどうですかね。
鍵という道具を主語にして、この鍵がこのドアを開ける。
この鍵でドアが開くっていう風に、やっぱり道具はでの方がかなり自然な気はするんですが、
英語だとthis keyが主語で、opens this doorみたいな言い方ができるんですよね。
この文の主語に表れているthis keyは意味役割としては道具なんですけど、
動作詞とちょっと似てるんですよね。
文の構造としてはI open this door、私がこの扉を開けるのをIと同じ主語として表れているので、
そういった意味で動作詞と道具っていうのは近しいような感じがします。
ただ違いとしては、I open this doorについては、Iっていうのは意思を持ってドアを開けているわけですけど、
this key opens this doorでは、この鍵っていうのが意思を持ってドアを開けているわけではないので、
意思性の有無というか、あるいは事態をコントロールできるかどうかという点において、
動作詞と道具っていうのは違いがあるんですけど、どちらも英語では主語として表れることができます。
This key opens this doorという言い方ができるので、英語において、
道具という意味あかりが主語として現れ得る、ある意味動作詞っぽい、つまりちょっと人っぽい、
そのように言うことができますが、それは英語の事情であって、
英語では無生物主語みたいな構文が許されるというのもあるし、
日本語だとやっぱり道具は主語になりづらいんじゃないかと思うので、
さっき言ったように、この鍵でドアが開くっていう風に、やっぱり道具はでっていうのが一番しっくりくると思うんですよね。
なので、確かに英語においては道具っていうのはやや人っぽいところもあるかもしれないなと常々思っていたんですが、
人名詞と道具名詞の派生
意外と日本語でも道具っていうのは人に結構近いんじゃないかなと思い始めて、
例えば、相撲を取りとか魔法を使いとか、この取るから取り、使うから使いみたいに、
いわゆる動詞の連体形ですね。連体形でもって名詞を派生するっていうことが日本語でよくあります。
相撲を取り、魔法を使い。
どちらも相撲を取る、魔法を使うという文からある意味派生していると考えることができて、目的語プラス動詞ですよね。
それで相撲を取る人、魔法を使う人っていう風に、人を指す名詞を派生する、作り出すことができます。
この相撲を取りや魔法を使いと全く同じやり方で、道具を表す名詞を派生することもできて、
塵取りとか筆入れとか、どちらも塵を取る筆を入れるから、塵取り筆入れとなっていて、
作り方としては相撲を取り魔法を使いと全く一緒なんですよね。
どちらも目的語プラス動詞に由来する複合語で、
人を表すのか、道具を表すのかっていうのは、おそらく予想できないと思います。
相撲を取りが人を表して、塵取りが道具を表すっていうのは、語彙的な問題というか、覚えなきゃいけない問題で、
プロセスとしては人も道具も全く同じやり方で派生しています。
これは英語でも同じことが言えて、英語でERをつけて名詞を派生する、人を表す名詞を派生するっていうことがありますよね。
singからsingerとかplayからplayerとか、これは人を表すわけですけど、
sliceから派生したslicerは、これはスライスする道具のことなので、
singerは人でslicerは道具ですけど、作り方は全く一緒です。
このように考えると、人と道具っていうのは、その境界っていうのは、もしかしたらそんなに明確ではないのかもしれません。
考えてみれば、人、あるいは動作集も道具も、何か対象に変化を与えるという点では共通しているというか、根っこはつながっている部分はあるので、
そこにもしかしたら本質的な違いはないのかもしれませんね。
というわけで今回のエピソードはここまでということで、また次回のエピソードでお会いいたしましょう。
ご視聴、番組フォローまだの方はよろしくお願いいたします。
お相手はシガ15でした。
10:53

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