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2025-11-01 10:32

#804 「立てる」と「立たせる」はどう違う?あなたの知らない他動詞と使役の境界 from Radiotalk

主要参考文献
井上和子(編)(1989)『日本文法小事典』東京: 大修館書店.

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#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育

サマリー

このエピソードでは、日本語の使役動詞に焦点を当てています。特に「立てる」と「立たせる」の違いや、それに関連する他動詞と自動詞の関係について深く掘り下げています。また、存在動詞の使役形や、有生物と無生物の明確な区別についても論じています。

使役動詞の基本概念
今回のエピソードのテーマは、使役です。特に日本語の使役文について考えていこうと思います。
要は、せるさせるが動詞にくっついた形で、行くから行かせるとか、食べるから食べさせるとか、
そういうふうに、一種の新しい動詞を作ることになります。 その際、もともと主語だったものが、
をとかにで表示されることになります。 私が行くから私を行かせる、
あるいは私に行かせる、食べるだったら私が食べるから私に魚を食べさせるというふうになります。
せるさせるがつく動詞が自動詞、行くみたいな自動詞の場合は、私を行かせる、私に行かせるというふうに2つをとにと選択肢があるんですが、
食べるっていうのは、これは他動詞で魚を食べるっていうふうにをがつく名詞が出てくるんですよね。
そういう他動詞の場合は、食べさせるとなった場合、私に魚を食べさせるっていうふうに、もともとの主語にはにしかつけません。
をっていうのがすでにあるから使えないっていうふうに考えてもいいと思います。
では動詞だったら何でもかんでもせるさせるをつけて、刺激にできるのかというとそういうわけでもなさそうです。
BGM、行けい。
始まりました4月15のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。鏡の中のマリオネットです。
せるさせるがつくことができない動詞として、あるというのがあります。
あるっていうのは存在動詞ですね。本がある。これを詞役にして本をあらせるとは、なかなか言いづらいんではないかと思います。
本をあらせる。
じゃあ存在動詞だったら詞役はつくれないのかというとそういうわけでもなくて、あるに対しているというのは、いさせるというのが使えます。
お前がいる。お前をいさせる。ということは、あるが詞役がダメでいるが詞役オッケーってことは、
もともとの主語が本みたいな無生物の時は詞役がダメで、人間を含む有生名詞だったら詞役がオッケーということなんではないかという気もします。
さっき挙げた例でもそうで、私をいかせるとか私に食べさせるっていうふうに、
このいかせる食べさせるの例を見ても、やっぱりもともとの主語が人間を含む有生物なのでオッケーなんじゃないか。
しかしこれはそうとも言い切れないんですね。 有生物でなくても無生物であっても詞役文で出てくることがあって、
車を走らせるとか、 雨を降らせるとか、こういったものは車や雨が
詞役文で出てきています。 これはどう考えるかというと、
走るあるいは降るに対して、 これらは自動詞ですけど、
それらに対する他動詞っていうのがないんですよね。 どういうことかというと、例えば立つっていうのは他動詞があります。
立てるです。あるいは、 上がるに対しては上げるという他動詞があります。
一方、走ると降るっていうのは、そういう他動詞形っていうのを持ちません。 他動詞のペアがないので、
その他動詞のペアのないところというか、穴を埋めるために 詞役が使われていると考えることができます。
走らせる、降らせるっていうのは、 走るや降るの他動詞がないところを埋めるために使われているということです。
そういう他動詞がないところで出てくる詞役形、 走らせるや降らせるみたいな場合は、
無生物であっても詞役形を使うことができます。 さっき言ったように立つに対して立てるっていう、こういう他動詞のペアがある場合は、
無生物であれば看板を立てるっていう言い方ができるんですよね。 詞役形を使って看板を立たせるっていうのは、
結構微妙というか、看板というのが何か擬人化されたようなものに感じられるんではないかと思います。
看板というのが意思を持ってて、それを立たせるっていうような、そんな印象ではないでしょうか。 これが人だったらいいんですよね。
生と老化に立たせる、こういう場合はつまり有生物であれば詞役の立たせるというのが使えて、
無生物であれば看板を立てる他動詞を使います。 ただ走るや降るの場合は、
立てるに相当するような他動詞のペアっていうのがないので、 車を走らせる、
雨を降らせる、無生物であっても詞役形を使えるということなんですね。
強制力のニュアンス
まあこのあたりは言語は結構うまいことできているというかね、 多動詞がないところを詞役の派生形を使ってうまくカバーしているっていうことでございます。
さて、先ほど立てると立たせるの例でお話ししたように、看板を立てる、生徒を立たせる、
無生物であれば他動詞、有生物、人間であれば詞役形を使うということなんですが、
似たような例は、着せると着させるでも見られます。 着るという自動詞に対して、
他動詞形は着せるです。服を着せる。 で、詞役形は着させるとなります。
着せると着させる。ちょっと頭がこんがらがりそうですが、この場合も ちょっと無生物と有生物の対応みたいなのがちょっとあって、
人形に服を着せるとは言えますが、 人形に服を着させるっていうのは、やっぱり人形がちょっと意思を持って自分で服を着るみたいなね、
そんなイメージになると思います。 つまり詞役形、せるさせるがついた形っていうのは、意思を持ったものに何かをやらせるっていう、
そんなニュアンスが強いのではないかと思います。 逆に他動詞の着せるっていう方は、人形に服を着せるももちろん言えますけど、
子供に服を着せるっていう言い方もできます。 このあたりはどうですかね。
子供に服を着せる。子供に服を着させる。 やっぱり着させると言った方が、ちょっと子供の実習性に任せたようなとこがあって、
服を着せるっていうのは、まぁ多少無理やりみたいな感じが伴うんではないかと思います。
つまり、他動詞の方が強制力が強くって、詞役形の方が強制力が弱まるみたいなことですね。
で、そういったことは日本語だけではなくて、あらゆる言語で言われていて、 より直接的に対象に働きかけるような場合は、
形態的にも、つまり形の上でもより密接な形で表されて、強制力がちょっと弱まる、より間接的な影響を与える場合は、
形態的にも形の上でもやや長いというか、冗長な形式を取りやすいと言われています。 着せると着させるもそうだし、
あるいは、子供をバスから降ろすと、子供をバスから降りさせる。 この降ろすと降りさせるっていう他動詞と詞役形も、
降ろすの方がより直接的に持ち上げてね、移動させてるっていう感じで、降りさせるっていうのは、
後頭で降りてくださいって言って、降りる動作を促してるっていう感じがするんではないかと思います。
で、他動詞の降ろすっていうのは、これはもう他動詞なので、つまり合意的な問題で、降りさせるっていうのは自動詞の降りるの
派生形なので、やっぱりちょっと 緩いというか、冗長な形式なんですよね。
で、その形の上での緊密さみたいなのが、 直接相手に影響するかどうかっていうのと、相関してるっていうようなことが言えるんではないかと思います。
言語はよく詩的だって言われるんですよね。 平たく言えば、形と意味の間に別に関係はないっていうことなんですけど、
ただ、今の話は、形の上での緊密さと 影響力の緊密さみたいなのが
一応関係しているとはね、言えそうです。 このあたりもね、言語の面白いところではないでしょうか。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。 番組フォローも忘れずよろしくお願い致します。
お相手はシガ15でした。
10:32

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