使役態とは何か?
今回のテーマは、使役です。使役というのは、日本語で言えば、動詞にせる、させるがつくものですね。
行くに対して行かせる。食べるに対して食べさせる。こういったものが使役なんですが、
もうちょっと広い意味で言うと、使役というのは、態の一種です。
態、voice の一種で、使役態と言われることもあります。
この voice というのは何なのかというと、平たく言えば、主語や目的語の配置転換と言えるようなものです。
例えば受動態、受け身文というのも、voice、態の一種で、
今回はあまり深く立ち入りませんが、受動態というのは、他動詞の目的語が主語となって、
もともと主語として出ていたものがオプションとなる。それが受動態と言われるものです。
ここで主語や目的語の配置転換というのが行われているんですね。目的語が主語となります、みたいなことが起こっています。
では、使役態ではどのような主語や目的語の配置転換が起こっているかというと、
新しく主語を導入するというのが使役態でやっていることです。
新しいメンバーが追加されるというふうに考えるんですね。
これは日本語のせるさせるに限った話ではなくて、いろんな言語で広く見られる現象で、そういったものを使役と呼んでいます。
使役態の仕組み:主語の追加
BGM、行けい。
始まりました。4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。どうもお疲れ様です。
使役態というのはさっきも言ったように、新しく主語を追加するというようなプロセスというかボイスです。
使役に限らずボイスというのは元となる文というのを想定するんですね。
規定の文というのがあって、そこから新しく文を作り変えるというのがボイスです。
さっきの受動態で言えば、学生が本を読む。
ここから受動態になると、本が学生に読まれるとなるわけですね。
さっきも言ったように受動態というのは、もともとの目的語、今のだと本というのが主語になって、もともとの主語の学生というのがオプションになります。
さらに動詞にれる、られるというのが付くのが受動態です。
では、使役体というのはどうなっているかというと、繰り返しですが、新しく主語を追加するというプロセスで、
元の文というのが例えば子供が行くというものだとすると、
そこに例えば親という新しい主語が追加されて、親が子供を生かせるというふうになるわけですね。
動詞が生かせるという、せるさせるの付く形になります。
もともと子供がと言っていた、この子供というもともとの主語が子供を生かせるというふうに目的語になっています。
今の例のように、行くというのは自動詞です。
そこから子供を生かせるというふうにをの付く名詞が出てくることになるので、
これは自動詞から多動詞を作るという一種の多動詞化ということもできるんですね。
使役態と結合価の変化
つまり、使役というのは新しく主語を追加する。
そのことによって、専門的な言い方をすると、動詞の結合化が一つ上がるんですね。
つまり、自動詞というのは主語しか取れない結合化1の動詞なんですけど、
生かせるということによって、主語と目的語2つの名詞を取ることができる結合化2の動詞にワンランクアップするというような、そういったボイスなんですね。
ただ日本語の場合は子供を生かせるということもできるし、子供に生かせるというふうに2でもともとの主語を表すこともできます。
このをとにの使い分けについては、過去のエピソードで多分話したことがあると思うんですが、
いずれにせよ、せるさせるがつくことによって動詞の結合化が増える、要はキャパシティが増えるということですね。
そのキャパシティが増えたところに、新しく主語が追加されると考えることもできると思います。
この新しい主語のことを詩益詩とかね、講座ということもあります。
で、生かせるの場合は、行くという字動詞が、その詩益によってね、生かせるとなることで主語と目的語、2つ名詞を取れるようになったわけですが、
例えば、食べるという動詞であれば、これはもともと結合化が2である、キャパが2である動詞で、
つまり、私がパンを食べるみたいに、私とパンと2つ名詞が出てくる動詞です。
これが食べさせるになるということは、さっきの理屈で言えば結合化がもう1個上がるので、3つ名詞を取ることができるということですね。
日本語における使役態の制約
また新しい主語として、親が登場して、親が子供にパンを食べさせる。
ここで登場人物が親と子供とパンと、3つある動詞ということができます。
ただ、日本語の場合は二重おかく制約といって、おがつく名詞が2回出てこられないんですね。
ですので、パンを食べると、もともとおがついてた名詞は、そのままパンをで残るんですけど、
このパンをというのがあるために、子供っていうのををで表すことはできないです。
つまり、親が子供をパンを食べさせるとは言えないんですね。
もともとの主語は、目的語というよりは間接目的語というか、にというものでマークされることになるんですね。
親が子供にパンを食べさせる。
これが自動詞であれば、もともとの主語はをで表されてましたね。
親が子供を生かせる。
しかし、他動詞を詞役化する、食べるを食べさせるにするときは、もともとおがつく名詞というか、もともと目的語が存在しているので、
子供にパンを食べさせるというふうにね、もともとの主語は目的語にはなれないということなんですね。
4月15日のツボ。
今お話ししたように、日本語では他動詞を詞役化したときに、もともとの目的語がそのまま目的語として残って、
もともとの主語がある意味、ちょっと格落ちした存在になります。
主語でも目的語でもない、にというもので表示されることになるんですね。
親が子供にパンを食べさせる。
他言語における使役態の多様性
しかし言語によっては、子供の方、つまりもともとの主語を目的語にして、
パンの方、もともとの目的語をオプションにする、格落ちの存在にするっていう言語もあるんですね。
日本語風に考えると、親が子供をパンで食べさせるみたいに、そういう言語もあるにはあります。
日本語で考えると、そっちのパターンでもいい気はするんですよね。
つまり、自動詞であれば、親が子供を生かせるっていう風に、
もともとの主語をオでマークしているので、子供がパンを食べるの場合でも、もともとの主語の子供っていうのをオで表示して、
親が子供をパンで食べさせるといった方が一貫性があると言えそうな気もします。
そういった言語も実際にあるんですね。
あるいは、動詞のキャパが本当に3になる、結合化が3である動詞を許すっていうタイプの言語もあります。
つまり、二重目的語っていうような、2つ目的語が出てくるような言語もあって、
これも日本語風に考えてみれば、親が子供をパンを食べさせたという風になります。
あるいはもうちょっと面白いパターンもあって、日本語と同じで目的語を2つ取れない、
つまり結合化がMAXにキャパが3は無理、そういった言語の場合、
もともとの目的語を動詞と一色たにしちゃうっていうタイプの言語もあるんですね。
これも日本語風に考えてみると、親が子供をパン食べさせたみたいな、そういう言い方もあるんですね。
これはパン食べさせたという風に、パンっていうのが動詞と一色たになることで、
主語として親、目的語として子供っていうのが出てきて、キャパは2のまんまなんですね。
このようにですね、詞役によって他動詞、キャパが2の動詞にもう1個新メンバーとして主語が追加されるときに、
そのキャパがオーバーしちゃうので、その時何が起こるかっていうのは言語によって様々だということですね。
もともとの主語をちょっと格落ちさせるのか、
あるいはもともとの目的語を格落ちさせるのか、
あるいは動詞と一色たにするのか、
いろんなパターンがあるというお話でございました。
まとめと次回予告
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。番組フォローまだの方はどうぞよろしくお願いいたします。
お相手はしがじゅうごでした。
またね!